(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】デュアルモード・アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B64D 29/08 20060101AFI20230608BHJP
B64D 29/06 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
B64D29/08
B64D29/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019095688
(22)【出願日】2019-05-22
【審査請求日】2022-04-20
(32)【優先日】2018-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジェイ.バードフ
(72)【発明者】
【氏名】レックス イー.エスティス
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06408740(US,B1)
【文献】米国特許第04399966(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 29/08
B64D 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1インターロック部を有する第1係合部を含むとともに、固定部材に固定可能な第1部分と、
前記第1インターロック部に噛合い係合する第2インターロック部を有することにより、前記第1係合部に離脱可能に支持されることが可能な第2係合部を含むとともに、可動部材に固定可能な第2部分と、
前記第1部分に作用可能に接続されており、前記第1部分が前記固定部材に固定されている場合に、前記第1係合部を前記固定部材に対して上方及び下方に移動させるよう動作可能な自動駆動機構と、を含み、
前記第1係合部に対して前記第2係合部が下方に向かう移動は、前記第1係合部によって制限され、
前記第1係合部に対して前記第2係合部が上方に向かう移動は、前記第1係合部によって制限され
ないことにより、前記第2インターロック部を前記第1インターロック部から離脱させて、前記可動部材及び前記第2部分が前記自動駆動機構を迂回するようにし、
前記第2係合部が前記第1係合部に支持されているとともに、前記第1部分が前記固定部材に固定されている場合、前記第2係合部は、
前記第1インターロック部と前記第2インターロック部との噛合い係合を維持したまま、前記第1係合部に伴って前記固定部材に対して上方及び下方に移動可能である、
可動部材アクチュエータ。
【請求項2】
前記第2係合部は、重力によって付勢されて、前記第1係合部に支持接触する、請求項1に記載の可動部材アクチュエータ。
【請求項3】
前記第2係合部は、前記第1係合部から上方に遠ざかるように手動で自由に移動可能である、請求項1又は2に記載の可動部材アクチュエータ。
【請求項4】
前記第1部分が前記固定部材に固定されている場合、前記可動部材アクチュエータは、前記第2係合部を前記固定部材から上方に遠ざかるように移動させるよう手動モード及び電動モードで動作可能であり、
前記手動モードは、前記第2係合部を前記第1係合部から上方に遠ざかるように離脱させることを含み、
前記電動モードは、前記自動駆動機構を介して、前記第1係合部と前記第2係合部を共に上方に移動させることを含む、
請求項1~3のいずれかに記載の可動部材アクチュエータ。
【請求項5】
第1係合部を含むとともに、固定部材に固定可能な第1部分と、
前記第1係合部に離脱可能に支持されることが可能な第2係合部を含むとともに、可動部材に固定可能な第2部分と、
前記第1部分に作用可能に接続されており、前記第1部分が前記固定部材に固定されている場合に、前記第1係合部を前記固定部材に対して上方及び下方に移動させるよう動作可能な自動駆動機構と、を含み、
前記第1係合部に対して前記第2係合部が下方に向かう移動は、前記第1係合部によって制限され、
前記第1係合部に対して前記第2係合部が上方に向かう移動は、前記第1係合部によって制限されず、
前記第2係合部が前記第1係合部に支持されているとともに、前記第1部分が前記固定部材に固定されている場合、前記第2係合部は、前記第1係合部に伴って前記固定部材に対して上方及び下方に移動可能であり、
前記第1部分は、さらに、ねじ付きロッドを含み、
前記第1係合部は、前記ねじ付きロッドと螺合するスリーブを含み、
前記第1部分が前記固定部材に固定されている場合、前記スリーブに対する前記ねじ付きロッドの回転により、前記スリーブが前記ねじ付きロッドに沿って並進移動して、前記スリーブが前記固定部材に対して移動する
、
可動部材アクチュエータ。
【請求項6】
前記第2部分は、中空管を含み、
前記第2係合部は、前記中空管に移動不能に接続されており、
前記ねじ付きロッドは、前記中空管を通って伸長するとともに、前記中空管に対して回転可能である、
請求項5に記載の可動部材アクチュエータ。
【請求項7】
前記第2係合部が前記第1係合部に支持されており、前記第1部分が前記固定部材に固定されている場合、前記スリーブ及び前記中空管に対する前記ねじ付きロッドの回転により、前記中空管が前記ねじ付きロッドに沿って並進移動するとともに、前記ねじ付きロッドが前記固定部材に対して移動する、請求項6に記載の可動部材アクチュエータ。
【請求項8】
前記中空管は、前記ねじ付きロッドに対して、螺合せず摺動可能に嵌合している、請求項6又は7に記載の可動部材アクチュエータ。
【請求項9】
前記第1部分が前記固定部材に固定されているとともに、前記第2部分が前記可動部材に固定されている場合、
前記ねじ付きロッドは、前記固定部材及び前記可動部材に対して回転可能であり、
前記中空管は、前記固定部材及び前記可動部材に対して回転不能であり、
前記第2係合部が前記第1係合部に支持されている場合、前記スリーブは、前記固定部材及び前記可動部材に対して回転不能である、
請求項6~8のいずれかに記載の可動部材アクチュエータ。
【請求項10】
前記第1係合部は、さらに、前記スリーブに形成された第1山部及び第1谷部を含み、
前記第2係合部は、さらに、前記中空管に形成された第2山部及び第2谷部を含み、
前記第1山部は、対応する第2谷部と係合し、前記第2山部は、対応する第1谷部と係合し、これにより、前記第1部分と前記第2部分が離脱可能に係合する、
請求項9に記載の可動部材アクチュエータ。
【請求項11】
前記第1山部と前記第2谷部の係合、及び、前記第2山部と前記第1谷部の係合により、前記スリーブと前記中空管の間の相対的な回転が防止される、請求項10に記載の可動部材アクチュエータ。
【請求項12】
前記第2係合部が前記第1係合部に支持されていない場合、前記スリーブは、前記固定部材及び前記可動部材に対して回転可能である、請求項9~11のいずれかに記載の可動部材アクチュエータ。
【請求項13】
前記自動駆動機構は、回転発動機を含む、請求項5~12のいずれかに記載の可動部材アクチュエータ。
【請求項14】
前記第1部分は、さらに、チャンバ・ハウジングを含み、
前記第1係合部は、前記チャンバ・ハウジング内で並進移動可能に設けられ、前記チャンバ・ハウジングを封止する第1ピストンを含み、
前記第2部分は、さらに、前記チャンバ・ハウジング内で並進移動可能な第2ピストンを含み、
前記第2部分は、さらに、ロッドを含み、前記ロッドは、前記第2ピストンに対して共に移動可能に接続されているとともに、前記可動部材に固定可能である、
請求項1~13のいずれかに記載の可動部材アクチュエータ。
【請求項15】
前記自動駆動機構は、リニアアクチュエータを含む、請求項14に記載の可動部材アクチュエータ。
【請求項16】
航空機のエンジン用のナセルであって、
ベースと、
前記ベースに移動可能に接続されており、閉位置と開位置の間で移動可能なドアと、
前記ベース及び前記エンジンのうちの少なくとも1つと前記ドアとの間を繋ぐよう接続された
、請求項1~15のいずれかに記載の可動部材アクチュエータと、を含
む、ナセル。
【請求項17】
前記ドアは、前記第2部分に下向きの圧縮荷重を印加し、
前記下向きの圧縮荷重によって前記第2係合部が付勢されて、前記第1係合部に支持接触する、
請求項16に記載のナセル。
【請求項18】
可動部材を固定部材に対して駆動する方法であって、
可動部材アクチュエータの第2部分に下向きの圧縮荷重を印加して、前記第2部分の第2係合部を付勢して、前記可動部材アクチュエータの第1部分における第1係合部に支持接触させることと、
前記第1係合部を、前記第1係合部に支持されている前記第2係合部とともに、前記固定部材に対して移動させ、これにより、前記第2係合部及び前記可動部材を前記固定部材に対して移動させることと、
前記可動部材アクチュエータの前記第2部分に対して、前記下向きの圧縮荷重よりも大きな上向きの引張荷重を印加して、前記第2係合部を前記第1係合部から離脱させ、前記第2係合部及び前記可動部材を前記第1係合部及び前記固定部材に対して移動させることと、を含
み、
前記第1部分は、さらに、ねじ付きロッドを含み、
前記第1係合部は、前記ねじ付きロッドと螺合するスリーブを含み、
前記第2部分は、前記可動部材に固定された中空管を含み、
前記第2係合部は、前記中空管に移動不能に接続されており、
前記ねじ付きロッドは、前記中空管を通って伸長するとともに、前記中空管に対して回転可能であり、
前記第1係合部を前記固定部材に対して移動させることは、前記ねじ付きロッドを前記スリーブに対して回転させて、前記スリーブ及び前記中空管を前記ねじ付きロッドに沿って並進移動させることを含む、方法。
【請求項19】
前記第1部分は、さらに、チャンバ・ハウジングを含み、
前記第1係合部は、前記チャンバ・ハウジング内で並進移動可能に設けられ、前記チャンバ・ハウジングを封止する第1ピストンを含み、
前記第2部分は、さらに、前記チャンバ・ハウジング内を並進移動可能な第2ピストンを含み、
前記第2部分は、さらに、ロッドを含み、前記ロッドは、前記第2ピストンに対して共に移動可能に接続されているとともに、前記可動部材に固定されており、
前記第1係合部を前記固定部材に対して移動させることは、油圧によって前記第1ピストン及び前記第2ピストンを前記チャンバ・ハウジングに沿って移動させることを含む、
請求項1
8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、アクチュエータに関し、より具体的には、航空機のエンジンナセルのドアを開閉するためのデュアルモード・アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の外部エンジンは、外部エンジンの内部部品を少なくとも部分的に覆って保護するナセルによって保護されている。ナセルには、一般的に、検査、修理、又は整備の際に外部エンジンの内部部品を露出させるために開閉可能な1つ以上のカウリングドア(cowling door)が設けられている。このようなドアは重いので、ドアの開閉を電動で補助する電動ドア開閉システムを備えるナセルもある。
【0003】
従来の自動ドア開閉システムでは、ドアが引っ掛かって動かなくなったり、誤動作が発生したりしやすい。従来の自動ドア開閉システムの中には、ドアの引っ掛かりや誤動作が発生した場合に手動で操作可能なものもある。他の従来の自動ドア開閉システムでは、ドアの引っ掛かりや誤動作が発生した際のシステムに出入りできるように、ナセルに予備のドアが設けられている。
【0004】
従来の自動ドア開閉システムによっては、手動操作の結果、意図しない事態が発生する可能性がある。例えば、油圧式アクチュエータを手動操作することで油圧式アクチュエータに空気が入り込む可能性があり、これにより油圧式アクチュエータの性能に悪影響が及ぶことがある。従来の自動ドア開閉システムの中には、空気の混入を防止するためにポンプ、逆止め弁、予備の流体が追加されているものもあるが、いずれも、システムのコスト、複雑さ、及び重量が増えることになる。同様に、予備のドアを設けることも、ナセルのコスト、複雑さ、及び重量が増えることになる。
【発明の概要】
【0005】
本願の要旨は、現在の技術水準に鑑みて開発されたものであり、具体的には、現時点で利用可能な技術では十分に解決されていない、自動ドア開閉システムの欠点に鑑みて開発されたものである。したがって、本願の要旨は、上述した従来技術の欠点の少なくともいくつかを克服する可動部材アクチュエータ、及び、それに関連する方法を提供するために開発されたものである。より具体的には、いくつかの実施例において、本開示の可動部材アクチュエータは、従来のシステムに比べて重量を削減し、複雑さを低減し、信頼性を高め、保守に要する時間コストを低減するものである。
【0006】
本開示の可動部材アクチュエータは、第1部分を含む。前記第1部分は、固定部材に固定可能であって、第1係合部を含む。前記可動部材アクチュエータは、さらに、可動部材に固定可能な第2部分であって、前記第1係合部に離脱可能に支持されることが可能な第2係合部を含む第2部分を含む。前記可動部材アクチュエータは、さらに自動駆動機構を含み、当該自動駆動機構は、前記第1部分に作用可能に接続されており、前記第1部分が前記固定部材に固定されている場合に、前記第1係合部を前記固定部材に対して上方及び下方に移動させるよう動作可能である。前記第1係合部に対して前記第2係合部が下方に向かう移動は、前記第1係合部によって制限される。前記第1係合部に対して前記第2係合部が上方に向かう移動は、前記第1係合部によって制限されない。前記第2係合部が前記第1係合部に支持されているとともに、前記第1部分が前記固定部材に固定されている場合、前記第2係合部は、前記第1係合部に伴って前記固定部材に対して上方及び下方に移動可能である。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例1を特徴付けるものである。
【0007】
前記第2係合部は、重力によって付勢されて、前記第1係合部に支持接触する。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例2を特徴付けるものであり、実施例2は、上述の実施例1による構成要件も包含する。
【0008】
前記第2係合部は、前記第1係合部から上方に遠ざかるように手動で自由に移動可能である。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例3を特徴付けるものであり、実施例3は、上述の実施例1~2のいずれによる構成要件も包含する。
【0009】
前記第1部分が前記固定部材に固定されている場合、前記可動部材アクチュエータは、前記第2係合部を前記固定部材から上方に遠ざかるように移動させるよう手動モード及び電動モードで動作可能である。前記手動モードは、前記第2係合部を前記第1係合部から上方に遠ざかるように離脱させることを含む。前記電動モードは、前記自動駆動機構を介して、前記第1係合部と前記第2係合部を共に上方に移動させることを含む。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例4を特徴付けるものであり、実施例4は、上述の実施例1~3のいずれによる構成要件も包含する。
【0010】
前記第1部分は、さらに、ねじ付きロッドを含む。前記第1係合部は、前記ねじ付きロッドと螺合するスリーブを含む。前記第1部分が前記固定部材に固定されている場合、前記スリーブに対する前記ねじ付きロッドの回転により、前記スリーブが前記ねじ付きロッドに沿って並進移動し、前記スリーブが前記固定部材に対して移動する。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例5を特徴付けるものであり、実施例5は、上述の実施例1~4のいずれによる構成要件も包含する。
【0011】
前記第2部分は中空管を含む。前記第2係合部は、前記中空管に移動不能に接続されている。前記ねじ付きロッドは、前記中空管を通って伸長するとともに、前記中空管に対して回転可能である。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例6を特徴付けるものであり、実施例6は、上述の実施例5による構成要件も包含する。
【0012】
前記第2係合部が前記第1係合部に支持されており、前記第1部分が前記固定部材に固定されている場合、前記スリーブ及び前記中空管に対する前記ねじ付きロッドの回転により、前記中空管が前記ねじ付きロッドに沿って並進移動するとともに、前記ねじ付きロッドが前記固定部材に対して移動する。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例7を特徴付けるものであり、実施例7は、上述の実施例6による構成要件も包含する。
【0013】
前記中空管は、前記ねじ付きロッドに対して、螺合せず摺動可能である。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例8を特徴付けるものであり、実施例8は、上述の実施例6~7のいずれによる構成要件も包含する。
【0014】
前記第1部分が前記固定部材に固定されているとともに、前記第2部分が前記可動部材に固定されている場合、前記ねじ付きロッドは、前記固定部材及び前記可動部材に対して回転可能であり、前記中空管は、前記固定部材及び前記可動部材に対して回転不能である。さらに、前記第2係合部が前記第1係合部に支持されている場合、前記スリーブは、前記固定部材及び前記可動部材に対して回転不能である。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例9を特徴付けるものであり、実施例9は、上述の実施例6~8のいずれによる構成要件も包含する。
【0015】
前記第1係合部は、さらに、前記スリーブに形成された第1山部及び第1谷部を含む。前記第2係合部は、さらに、前記中空管に形成された第2山部及び第2谷部を含む。前記第1山部は、対応する第2谷部と係合し、前記第2山部は、対応する第1谷部と係合し、これにより、前記第1部分と前記第2部分が離脱可能に係合する。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例10を特徴付けるものであり、実施例10は、上述の実施例9による構成要件も包含する。
【0016】
前記第1山部と前記第2谷部の係合、及び、前記第2山部と前記第1谷部の係合により、前記スリーブと前記中空管の間の相対的な回転が防止される。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例11を特徴付けるものであり、実施例11は、上述の実施例10による構成要件も包含する。
【0017】
前記第2係合部が前記第1係合部に支持されていない場合、前記スリーブは、前記固定部材及び前記可動部材に対して回転可能である。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例12を特徴付けるものであり、実施例12は、上述の実施例9~11のいずれによる構成要件も包含する。
【0018】
前記自動駆動機構は、回転発動機を含む。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例13を特徴付けるものであり、実施例13は、上述の実施例5~12のいずれによる構成要件も包含する。
【0019】
前記第1部分は、さらに、チャンバ・ハウジングを含む。前記第1係合部は、前記チャンバ・ハウジング内で並進移動可能に設けられ、前記チャンバ・ハウジングを封止する第1ピストンを含む。前記第2部分は、さらに、前記チャンバ・ハウジング内で並進移動可能な第2ピストンを含む。前記第2部分は、さらに、ロッドを含み、前記ロッドは、前記第2ピストンに対して共に移動可能に接続されているとともに、前記可動部材に固定可能である。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例14を特徴付けるものであり、実施例14は、上述の実施例1~4のいずれによる構成要件も包含する。
【0020】
前記自動駆動機構は、リニアアクチュエータを含む。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例15を特徴付けるものであり、実施例15は、上述の実施例14による構成要件も包含する。
【0021】
さらに、航空機のエンジン用のナセルが開示されている。前記ナセルは、ベースを含む。前記ナセルは、さらに、前記ベースに移動可能に接続されており、閉位置と開位置の間で移動可能なドアを含む。前記ナセルは、さらに、前記ベース及び前記エンジンのうちの少なくとも1つと前記ドアとの間を繋ぐよう接続された可動部材アクチュエータを含む。前記可動部材アクチュエータは、前記ドアを前記閉位置と前記開位置との間で移動させるよう動作可能である。前記可動部材アクチュエータは、固定部材に固定可能な第1部分であって、第1係合部を含む第1部分を含む。前記可動部材アクチュエータは、さらに、可動部材に固定可能な第2部分であって、前記第1係合部に離脱可能に支持されることが可能な第2係合部を含む第2部分を含む。前記可動部材アクチュエータは、さらに、前記第1部分に作用可能に接続されており、前記第1部分が前記固定部材に固定されている場合に、前記第1係合部を前記固定部材に対して上方及び下方に移動させるように動作可能な自動駆動機構を含む。前記第1係合部に対して前記第2係合部が下方に向かう移動は、前記第1係合部によって制限される。前記第1係合部に対して前記第2係合部が上方に向かう移動は、前記第1係合部によって制限されない。前記第2係合部が前記第1係合部に支持されているとともに、前記第1部分が前記固定部材に固定されている場合、前記第2係合部は、前記第1係合部に伴って前記固定部材に対して上方及び下方に移動可能である。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例16を特徴付けるものである。
【0022】
前記ドアは、前記第2部分に下向きの圧縮荷重を印加する。前記下向きの圧縮荷重によって、前記第2係合部が付勢されて、前記第1係合部に支持接触する。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例17を特徴付けるものであり、実施例17は、上述の実施例16による構成要件も包含する。
【0023】
さらに、可動部材を固定部材に対して駆動する方法が開示されている。前記方法は、可動部材アクチュエータの第2部分に下向きの圧縮荷重を印加して、前記第2部分の第2係合部を付勢して、前記可動部材アクチュエータの第1部分における第1係合部に支持接触させることを含む。前記方法は、さらに、前記第1係合部を、前記第1係合部に支持されている前記第2係合部とともに、前記固定部材に対して移動させ、これにより、前記第2係合部及び前記可動部材を前記固定部材に対して移動させることを含む。前記方法は、さらに、前記可動部材アクチュエータの前記第2部分に対して、前記下向きの圧縮荷重より大きな上向きの引張荷重を印加して、前記第2係合部を前記第1係合部から離脱させ、前記第2係合部及び前記可動部材を前記第1係合部及び前記固定部材に対して移動させることを含む。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例18を特徴付けるものである。
【0024】
前記第1部分は、さらに、ねじ付きロッドを含む。前記第1係合部は、前記ねじ付きロッドと螺合するスリーブを含む。前記第2部分は、前記可動部材に固定された中空管を含む。前記第2係合部は、前記中空管に移動不能に接続されている。前記ねじ付きロッドは、前記中空管を通って伸長するとともに、前記中空管に対して回転可能である。前記第1係合部を前記固定部材に対して移動させるとことは、前記ねじ付きロッドを前記スリーブに対して回転させて、前記スリーブ及び前記中空管を前記ねじ付きロッドに沿って並進移動させることを含む。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例19を特徴付けるものであり、実施例19は、上述の実施例18による構成要件も包含する。
【0025】
前記第1部分は、さらに、チャンバ・ハウジングを含む。前記第1係合部は、前記チャンバ・ハウジング内で並進移動可能に設けられ、前記チャンバ・ハウジングを封止する第1ピストンを含む。前記第2部分は、さらに、前記チャンバ・ハウジング内を並進移動可能な第2ピストンを含む。前記第2部分は、さらに、ロッドを含み、前記ロッドは、前記第2ピストンに対して共に移動可能に接続されているとともに、前記可動部材に固定されている。前記第1係合部を前記固定部材に対して移動させることは、油圧によって前記第1ピストン及び前記第2ピストンを前記チャンバ・ハウジングに沿って移動させることを含む。この段落における上記構成要件は、本開示の実施例20を特徴付けるものであり、実施例20は、上述の実施例18による構成要件も包含する。
【0026】
本開示の要旨について記載した特徴、構造、効果、及び/又は特色は、1つ以上の実施形態及び/又は実施態様において、任意の適当な形で組み合わせることができる。以下の記載においては、本開示の要旨の実施形態が十分に理解されるように、多くの具体的な詳細事項を提示している。当業者であればわかるように、本開示の要旨は、特定の実施形態又は実施態様の具体的な特徴、詳細、部材、材料、及び/又は方法のうちの1つ以上が無くても、実施可能である。場合によっては、ある実施形態及び/又は実施態様において追加の特徴及び効果が認識されることがあり、これらが、すべての実施形態又は実施態様に存在するものではない場合もありうる。また、場合によっては、本開示の要旨の態様を不明瞭にするのを避けるため、周知の構造、材料、又は動作については、詳細な図示又は説明を省いている。本開示の要旨の特徴及び効果は、以下の記載及び添付の特許請求の範囲から、より明らかになるであろう。あるいは、以下に記載の要旨を実施することによって知ることができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本開示の要旨の効果の理解を助けるために、上記に簡潔に説明した要旨について、添付図面に示す特定の実施形態を参照してより具体的に説明する。これらの図面は、本開示の要旨の典型的な実施形態を示しているに過ぎず、よって、その範囲を限定するものではないとの理解を前提とした上で、下記の図面を用いて本開示の要旨をより具体的かつ詳細に説明する。
【0028】
【
図1】本開示の1つ以上の実施例による可動部材システムを備えた航空機を示す概略ブロック図である。
【
図2】本開示の1つ以上の実施例による
図1の航空機が電動モードで動作している状態を示す概略ブロック図である。
【
図3】本開示の1つ以上の実施例による
図1の航空機が手動モードで動作している状態を示す概略ブロック図である。
【
図4】本開示の1つ以上の実施例による航空機のナセルの透視図である。
【
図5】本開示の1つ以上の実施例による航空機のナセルの正面図である。
【
図6】本開示の1つ以上の実施例による可動部材アクチュエータの一部を示す透視図である。
【
図7】本開示の1つ以上の実施例による
図6の可動部材アクチュエータの一部を示す断面透視図であり、
図6の線7-7に沿った断面を示している。
【
図8】本開示の1つ以上の実施例による航空機のナセルを示す透視図であり、可動部材アクチュエータが退避位置にある状態を示している。
【
図9】本開示の1つ以上の実施例による
図8のナセルを示す透視図であり、可動部材アクチュエータが中間位置にある状態を示している。
【
図10】本開示の1つ以上の実施例による
図8のナセルを示す透視図であり、可動部材アクチュエータが伸長位置にある状態を示している。
【
図11】本開示の1つ以上の実施例による
図8のナセルを示す透視図であり、可動部材アクチュエータが中間位置にある状態を示している。
【
図12】本開示の1つ以上の実施例による
図8のナセルを示す透視図であり、可動部材アクチュエータが手動モードで動作中であり、可動部材が部分開放位置にある状態を示している。
【
図13】本開示の1つ以上の実施例による
図8のナセルを示す透視図であり、可動部材アクチュエータが手動モードで動作中であり、可動部材が開放位置にある状態を示している。
【
図14】本開示の1つ以上の実施例による可動部材アクチュエータを示す断面透視図であり、電動モードで動作中の状態を示している。
【
図15】本開示の1つ以上の実施例による
図14の可動部材アクチュエータを示す断面透視図であり、手動モードで動作中の状態を示している。
【
図16】本開示の1つ以上の実施例による可動部材の作動方法を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書の全体を通じて、「一実施形態」、「実施形態」、又は、これに類する文言は、その実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。本明細書の全体を通じて「一実施形態において」、「実施形態において」、又は、これに類する文言が記載されている場合、必ずしもそうとは限らないが、すべて同じ実施形態について言及している場合もありうる。同様に、「実施態様」との用語が使用されている場合は、本開示における1つ以上の実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造、又は、特性を備える実施態様を意味するが、特段の記載が無い限り、1つの実施態様が1つ以上の実施形態に関連付けられている場合もありうる。
【0030】
図1~
図3を参照すると、いくつかの実施形態において、可動部材システム(retractable component system)101は、固定部材102と可動部材104を含む。可動部材104は、固定部材102に対して、第1位置(例えば、閉位置)と第2位置(例えば、開位置)との間で作動可能(例えば、移動可能)である。可動部材104の動作は、固定部材102と可動部材104との間を繋ぐよう接続された可動部材アクチュエータ106(即ち、デュアルモード・アクチュエータ)によって補助される。可動部材システム101は、別のシステムのサブシステムであってもよい。例えば、可動部材システム101は、航空機100の一部を構成するものでもよい。他の実施例では、可動部材システム101は、自動車、船舶、宇宙船などの他の種類の移動体の一部を構成するものでもよい。いくつかの実施例では、可動部材システム101は、建物、機械など、移動体以外の構造体の一部を構成するものでもよい。
【0031】
固定部材102は、可動部材104に対して固定されている。換言すると、可動部材104が固定部材102に対して相対移動するから、固定部材102は固定されているとみるのである。したがって、固定部材102は建物の一部などのように静止物である必要はなく、航空機の部材などのように可動体の一部であってもよい。
【0032】
可動部材104は、固定部材102に直接又は間接的に移動可能な態様で接続されうる。例えば、可動部材104は、例えば、パネルにヒンジ接続されるドアのように、固定部材102にヒンジ接続することができる。ただし、いくつかの実施例では、可動部材104は、可動部材104と固定部材102とを相互に接続する1つ以上の部材を介して、固定部材102に移動可能に接続される。
【0033】
また、可動部材104は、可動部材アクチュエータ106によって固定部材102と相互接続されている。可動部材アクチュエータ106は、概して、可動部材104を固定部材102に対して移動させるように構成されており、またそのように選択的に動作可能である。
【0034】
可動部材アクチュエータ106は、固定部材102に固定可能な(例えば、固定されるよう構成された)第1部分108を含む。第1部分108は、第1連結部(first coupling)113及び第1係合部(first engagement feature)115を含む。第1連結部113は、固定部材102に接続され、第1係合部115は、第1連結部113に接続される。このようにして、第1係合部115は、固定部材102に接続される。
【0035】
可動部材アクチュエータ106は、可動部材104に固定可能な第2部分110をさらに含む。第2部分110は、第2連結部114及び第2係合部116を有する。第2連結部114は、可動部材104に接続され、第2係合部116は、第2連結部114に接続される。このようにして、第2係合部116は、可動部材104に接続される。第2連結部114は、可動部材104と共に移動するよう接続されるので、可動部材104に固定されている場合、第2連結部114が移動すると、可動部材104も移動する。
【0036】
可動部材システム101は、第2部分110に対して、可動部材104から固定部材102に向かう圧縮荷重122を印加するよう構成されている。第2係合部116は圧縮荷重122によって付勢されて、第1係合部115に支持接触(supportable contact)する。可動部材アクチュエータ106の第2部分110は、部分的には第1係合部115によって制限された範囲において、第1部分108から遠ざかる方向及び近づく方向に移動自在である。より具体的には、第1係合部115は、第2部分110が第1部分108に近づく移動は制限するが、第2部分110が第1部分108から遠ざかる移動は、制限しない。いくつかの実施例では、可動部材104は、可動部材アクチュエータ106の上方に配置されて、可動部材アクチュエータ106の重量が可動部材104に掛かるので、これが圧縮荷重122の源になる。換言すると、第2係合部116は重力によって付勢されて、第1係合部115に支持接触する。このような実施例では、第2部分110が第1部分108に近づく移動(例えば、下方への移動)は、第1係合部115によって制限される。これに対し、第2部分110が第1部分108から遠ざかる移動(例えば、上方への移動)は、第1係合部115によって制限されない。
【0037】
第2部分110が第1部分108に近づく移動は、第1係合部115が第2係合部116に接触し、これを停止させることで制限される。第2部分110が第1部分108に近づく移動が下方への移動である場合、第1係合部115は、第1係合部115上に第2係合部116を支持することで、第2部分110が第1部分108に向かう移動を制限する。第2部分110の上方への移動、即ち、第1部分108から遠ざかる移動は、第1係合部115によって制限されないのに対し、第2部分110の下方への移動、即ち、第1部分108に近づく移動は、第1係合部115と接触することによって制限されるので、第2係合部116は、第1係合部115に離脱可能に支持されていると言える。
【0038】
第2係合部116が第1係合部115に支持されており(例えば、支持接触しており)、第1部分108が固定部材102に固定されている場合、第2部分110及び第2係合部116は、第1係合部115と共に固定部材102に対して上方及び下方に移動可能である。換言すると、第2係合部116が第1係合部115に支持されている場合、第1係合部115が上方に移動すると、これに伴って第2係合部116及び第2連結部114も上方に移動する。また、第2係合部116が第1係合部115に支持されている場合、第1係合部115が下方に移動すると、これに伴って第2係合部116及び第2連結部114も下方に移動する。
【0039】
固定部材102に対する第1係合部115の移動は、可動部材アクチュエータ106の自動駆動機構130によって補助される。換言すると、自動駆動機構130は、第1部分108の第1係合部115を固定部材102に対して(例えば、上方及び下方に)移動させるよう動作可能である。自動駆動機構130は、第1部分108に作用可能に接続されている。例えば、自動駆動機構130は、第1連結部113などを介して間接的に第1係合部115に接続することも、直接に第1係合部115に接続することもできる。いくつかの実施態様では、自動駆動機構130は、固定部材102に接続される。例えば、自動駆動機構130は、固定部材102に固定され、あるいは、一体的に構成される。ただし、他の実施例では、自動駆動機構130は、固定部材102と分離されている。
【0040】
既に述べたように、第1係合部115に支持されている場合、第2係合部116の移動は、第1係合部115が移動することで駆動される。第1係合部115と第2係合部116との間の支持接触により、第1係合部115の移動に伴って第2係合部116を移動させることができるとともに、第2係合部116が第1係合部115から下方に離脱することを防止することができる。ただし、この支持接触は、第2係合部116が第1係合部115から上方に離脱することを妨げない。したがって、第2係合部116は、第1係合部115から上方に遠ざかるように(例えば、手動により、あるいは、電動補助により)自由に移動可能である。したがって、第2係合部116及び可動部材104は、自動駆動機構130の動作とは独立して、固定部材102から上方に遠ざかるように自由に移動可能である。
【0041】
上記に鑑みると、可動部材アクチュエータ106は、第2係合部116及び可動部材104を固定部材102に対して移動させるように、電動モード及び手動モードで動作することができる。可動部材アクチュエータ106は電動モードと手動モードで動作可能であるので、可動部材アクチュエータ106は、デュアルモード・アクチュエータであると言える。
図1及び
図2を参照すると、電動モードでは、圧縮荷重122は、第2部分110に正味圧縮力(net compressive force)を作用させるのに十分である。第2係合部116は、圧縮荷重122によって作用する正味圧縮力で押圧されて、第1係合部115に支持される(即ち、支持接触する)。電動モードでは、自動駆動機構130を動作させて第1係合部115を移動させ、これにより、第2係合部116を移動させることができる。自動駆動機構130は、第1係合部115及び第2係合部116を、矢印124で示すように伸長あるいは上昇させるようことができる。加えて、自動駆動機構130は、第1係合部115及び第2係合部116を、矢印124とは反対の方向に後退あるいは下降させることができる。自動駆動機構130の動作は、航空機100に搭載されるか、航空機100の近傍に配置されるか、あるいは、航空機100から遠隔に配置されたコントローラを介して手動又は自動で制御可能である。
【0042】
図3を参照すると、手動モードでは、第2部分110に正味張力(net tensile force)が作用する。いくつかの実施例では、可動部材104の重力の一部により生じる圧縮荷重122は一定であり、よって、圧縮荷重122よりも大きな上向きの引張荷重126を第2部分110に加えると、正味張力が発生する。第1係合部115と第2係合部116と間の接触や係合は、第2係合部116が第1係合部115から上方に遠ざかる移動を制限しないので、上向きの引張荷重126が圧縮荷重122を超えて、第2部分110に正味張力が作用し始めると、第2係合部116が第1係合部115から上方に離脱する。このように第2係合部116を上方に離脱させると、自動駆動機構130の動作や第1係合部115の移動を介することなく、可動部材104を方向矢印124に示すように、固定部材102に対して上方向に上昇させることができる。離脱した状態で、上向きの引張荷重126を小さくして正味張力を減少させれば、第2係合部116及び可動部材104を、第1係合部115に向かって、すなわち固定部材102に向かって下降させることもできる。
【0043】
手動モードにおいては、引張荷重は、自動駆動機構130以外の動力源によって生成される。動力源は、単独あるいは複数の作業員などの人力によるものでもよい。あるいは、動力源は、フォークリフト、ジャッキ、その他の昇降部材による、人力以外の動力源であってもよい。
【0044】
いくつかの実施例によれば、可動部材アクチュエータ106は、第1部分108及び自動駆動機構130が適切に動作している限り、電動モードで駆動されて、可動部材104を上昇(例えば、開放)及び下降(例えば、閉鎖)させる。第1部分108又は自動駆動機構130のいずれかに誤動作が発生した場合に、可動部材アクチュエータ106の駆動は手動モードに切り換えて、第1部分108及び自動駆動機構130を適切に迂回して、可動部材104を昇降させることができる。第1部分108及び自動駆動機構130には、例えば、第1係合部115がロック(binding)したり、自動駆動機構130が動作不能になったり、自動駆動機構130への電力が失われれたり、など様々な誤動作の可能性がある。
【0045】
図16を参照すると、一実施形態によれば、可動部材104を固定部材102に対して駆動する方法400は、402において、可動部材アクチュエータ106の第2部分110に下向きの圧縮荷重122を印加し、これにより、第2部分110における第2係合部116を付勢して、可動部材アクチュエータ106の第1部分108における第1係合部115に支持接触させることを含む。方法400は、また、404において、第1係合部115を、第1係合部115に支持されている第2係合部116と共に固定部材102に対して移動させ、これにより、第2係合部116及び可動部材104を固定部材102に対して移動させることを含む。方法400は、さらに、406において、可動部材アクチュエータ106の第2部分110に対して、下向きの圧縮荷重122よりも大きな上向きの引張荷重126を印加して、第2係合部116を第1係合部115から離脱させ、第2係合部116及び可動部材104を第1係合部115及び固定部材102に対して移動させることを含む。
【0046】
図4及び
図5を参照すると、いくつかの実施形態では、可動部材システム101は、航空機100のエンジン203のナセル201である。ナセル201は、エンジン203の少なくとも一部を囲む流線型のハウジング又はケーシングである。固定部材102は、ナセル201のベース202及びエンジン203であり、可動部材104は、ナセル201のドア204(例えば、カウリングドア)である。ドア204は、ベース202にヒンジ接続されており、閉位置と開位置(図示の状態)の間で移動可能である。ドア204が開位置にある場合は、ドア204が開位置にあることにより露出するベース202の開口部からエンジン203に出入りすることが可能である。可動部材アクチュエータ106は、ナセル201の可動部材アクチュエータであって、ベース202又はエンジン203の少なくとも1つとドア204との間を繋ぐよう接続されている。いくつかの実施態様では、ナセル201は、エンジン203(及び/又はベース202)とナセル201のドア204との間を繋ぐ複数の可動部材アクチュエータ106を有する。ナセル201は、複数のドア204と複数の可動部材アクチュエータ106を有し、各可動部材アクチュエータが、エンジン203(及び/又はベース202)と対応するドア204との間を繋ぐように接続された構成でもよい。
【0047】
次に、
図6~
図13を参照すると、可動部材アクチュエータ106がナセル201の一部を構成する一実施形態では、第1連結部113は、ねじ付きロッド213であり、第1係合部115は、スリーブ215である。自動駆動機構130は、回転力又はトルクを生成するよう構成された回転発動機(rotary power generator)230である。回転発動機230は、ナセル201のベース202、又は、エンジン203に接続されている。ねじ付きロッド213は、回転発動機230と共に回転して、回転発動機230の回転力をねじ付きロッド213に伝達するように接続された発動機インターフェース270を含む。ねじ付きロッド213は、回転発動機230から回転力を受けると、その長手方向軸219周りにベース202に対して回転する。加えて、
図7に示すように、ねじ付きロッド213は、ねじ付きロッド213の長さのかなりの部分に亘る雄ねじ248を有する。ねじ付きロッド213は、所与の最大外径を有する。
【0048】
スリーブ215又はナットは、中空の筒状部材であり、その長さは、ねじ付きロッド213の長さよりもかなり短い。スリーブ215は、ねじ付きロッド213の雄ねじ248と螺合する雌ねじ250を有する。スリーブ215は、スリーブ215とねじ付きロッド213との間の回転係合が容易になるように、転がり軸受、又は、摩擦を低減するその他の構成を有していてもよい。雄ねじ248と雌ねじ250のピッチは、圧縮荷重122など、スリーブ215の軸方向に印加される荷重のためにスリーブ215がねじ付きロッド213に対して回転することを防ぎ、よって、スリーブ215がねじ付きロッド213の軸方向に沿って並進することを防ぐように設定されている。また、スリーブ215は、スリーブ215の係合端に形成された第1インターロック部240(例えば、噛合い係合部(castellated feature))を有する。一実施例では、第1インターロック部240は、複数の第1山部244及び複数の第1谷部245を含む。複数の第1谷部245の各々は、複数の第1山部244のうちの2つの間にそれぞれ位置しており、よって、スリーブ215の係合端の周方向に、第1山部244と第1谷部245が交互に配置されている。
【0049】
第2連結部114は、中空管214であり、第2係合部116は、この中空管214に移動不能に接続されている。中空管214は、中空管214の上端部252において、ナセル201のドア204に回転不能に固定されている。中空管214の上端部252は、中空管214をドア204に回転不能に固定するためのブラケットや、他の継手を備えることができる。図示の実施例では、第2係合部116は、中空管214の下端部216である。下端部216は、上端部252の反対側にある。中空管214は、中空管214の相当部分の長さに延びる円筒形通路を画成する。円筒形通路は、ねじ付きロッド213の最大外径よりわずかに大きい最小内径を有する。加えて、ねじ付きロッド213は、円筒形通路に沿って中空管214を貫通するとともに、中空管214内に配置された状態で中空管214に対して回転可能である。円筒形通路を画成する中空管214の内部表面には、ねじは切られていない。したがって、中空管214は、ねじ付きロッド213の雄ねじと螺合するのではなく、ねじ付きロッド213に沿って並進移動する(滑合する)よう構成されている。
【0050】
また、中空管214の下端部216は、中空管214の係合端に形成された第2インターロック部242を有する。一実施例では、第2インターロック部242(例えば、噛合い係合部)は、複数の第2山部246及び複数の第2谷部247を含む。複数の第2谷部247の各々は、複数の第2山部246のうちの2つの間にそれぞれ位置しており、よって中空管214の下端部216の係合端における周方向に第2山部246と第2谷部247とが交互に配置されている。
【0051】
スリーブ215の第1山部244は、中空管214における対応する第2谷部247に支持係合(例えば、噛合や入れ子式嵌合など)するよう構成されており、また、中空管214の第2山部246は、スリーブ215における対応する第1谷部245と係合するよう構成されている。これにより、第1部分108と第2部分110とが、離脱可能、且つ、回転不能に係合される。インターロック部は、インターロック部が自動的にアライメントするように、斜切り、あるいは、丸み付けすることができる。換言すると、中空管214がスリーブ215に支持されている場合、スリーブ215の第1インターロック部140と中空管214の第2インターロック部142の間の係合によって、スリーブ215と中空管214の間の相対的な回転が防止される。つまり、ドア204及びベース202に対する中空管214の回転がドア204によって防止されているので、スリーブ215の第1インターロック部140と中空管214の第2インターロック部142の間の係合によって、ドア204及びベース202に対するスリーブ215の回転も防止される。第1インターロック部140と第2インターロック部142は、互いに係合可能な山部及び谷部が交互に配置されて構成されているように図示されているが、他の実施例では、第1インターロック部140と第2インターロック部142は、係合した場合に、並進移動による離脱を妨げることなく、相互に回転することを防止できる他の構造でもよい。なお、第1インターロック部140及び第2インターロック部142が係合していない状態では、スリーブ215は、ドア204及びベース202に対して回転自在である。
【0052】
図8~
図13を主に参照すると、可動部材アクチュエータ106の様々な動作段階及び動作モードが示されている。
図8~
図11には、電動モードにおける可動部材アクチュエータ106の様々な動作段階が示されている。これに対し、
図12及び
図13には、手動モードにおける可動部材アクチュエータ106の2つの動作段階が示されている。
【0053】
図8を参照すると、可動部材アクチュエータ106が退避位置にある状態が示されており、これは、ドア204が閉位置にあることに対応する。ドア204の圧縮荷重122が可動部材アクチュエータ106に作用して、中空管214の下端部216をスリーブ215に接触させて、中空管214及びドア204がスリーブに支持されている。
【0054】
次に、
図9を参照すると、電動モードで、可動部材アクチュエータ106を伸長させてドア204を開放するには、回転発動機230を選択的に駆動して、ねじ付きロッド213をベース202及びドア204に対して第1回転方向(例えば、反時計回り)164に回転させる。中空管214の下端部216とスリーブ215とが係合しているので、スリーブ215がベース202及びドア204に対して回転することが防止される。したがって、ねじ付きロッド213が第1回転方向に回転すると、スリーブ215がベース202から矢印124に示す方向に遠ざかるように、ねじ付きロッド213に沿って直線的に並進移動する。中空管214はスリーブ215に支持されているので、中空管214も、ねじ付きロッド213に沿って並進移動(例えば、摺動)して、同じ方向にベース202から遠ざかる。これに応じて、ドア204がベース202から遠ざかり、開位置に向かって移動する。
【0055】
図10に示すように、スリーブ215及び中空管214がねじ付きロッド213に沿って並進移動されており、これにより、可動部材アクチュエータ106が最大限に伸長して、ドア204が開位置に移動した状態にある。スリーブ215とねじ付きロッド213とが螺合しているので、スリーブ215はねじ付きロッド213上の位置に一時的に固定される。この結果、ドア204が開位置に維持され、ナセル201によって保護されているエンジン203に作業員が近づくことができる。実際、ねじ付きロッド213に沿って並進移動するスリーブ215は、ねじ付きロッド213上のどの位置においても適切に一時的に固定することができる。
【0056】
図11を参照すると、電動モードでは、可動部材アクチュエータ106を後退させることによって、ドア204を部分開放位置や開位置から閉位置に移動させることができる。電動モードで可動部材アクチュエータ106を後退させてドア204を閉鎖するには、回転発動機230を選択的に駆動して、ねじ付きロッド213をベース202及びドア204に対して第2回転方向(例えば、時計回り)166に回転させる。第2回転方向は、第1回転方向と逆の方向である。ねじ付きロッド213が第2回転方向に回転すると、スリーブ215がベース202に向かって矢印162に示す方向に近づくように、ねじ付きロッド213に沿って直線的に並進移動する。中空管214がスリーブ215に支持されているので、中空管214もねじ付きロッド213に沿って並進移動して、同じ方向にベース202に向かって移動する。これに応じて、ドア204がベース202に向かって、また、閉位置に向かって移動する。
【0057】
次に、
図12及び
図13を参照すると、手動モードで、可動部材アクチュエータ106を伸長させてドア204を開放するには、ドア204に対して、下向きの圧縮荷重122より大きな上向きの引張荷重126を加える。中空管214の下端部216とスリーブ215との間の支持接触は、中空管214がスリーブ215から遠ざかる移動を妨げないので、可動部材アクチュエータ106に掛かる正味引張荷重によって、中空管214がスリーブ215から離脱し、ドア204がスリーブ215及び202から遠ざかるように矢印124が示す方向に移動する。図示はしていないが、手動モードでは、ドアに加える上向きの引張荷重126を小さくすることにより、可動部材アクチュエータ106を後退させて、ドア204を閉鎖することができる。上向きの引張荷重126を小さくすると、中空管214及びドア204がベース202に対して下降して、最終的には、中空管214がスリーブ215に接触し、支持される。
【0058】
図14及び
図15を参照すると、可動部材アクチュエータ106の別の実施形態では、第1連結部113は、チャンバ・ハウジング313であり、第1係合部115は、第1ピストン315である。第1ピストン315は、チャンバ・ハウジング313内に設けられ、チャンバ・ハウジングに沿って並進移動可能であり、チャンバ・ハウジングを封止するよう構成されている。より具体的には、チャンバ・ハウジング313は、ピストン室384を画成し、第1ピストン315は、このピストン室内において並進移動可能である。自動駆動機構130は、ナセル201のベース202などである固定部材102に対して、第1ピストン315を近づけたり遠ざけたりするように直線的に並進移動させるよう構成されたリニアアクチュエータ330である。リニアアクチュエータ330は、油圧式リニアアクチュエータ、電動式リニアアクチュエータ、電磁式リニアアクチュエータ、空圧式リニアアクチュエータ等の様々なリニアアクチュエータのうちの任意のもので構成することができる。図示の実施例では、リニアアクチュエータ330は、油圧式リニアアクチュエータであり、第1ピストン315をチャンバ・ハウジング313に沿って直線的に並進移動させるように調節可能に加圧された作動流体(hydraulic fluid)382を含む。リニアアクチュエータ330は、固定部材102に接続されている。
【0059】
図示の実施形態では、第1ピストン315は、ピストン室384を封止して、作動流体382が第1ピストン315の周りから漏出することを防いでいる。いくつかの実施例では、第1ピストン315は、ピストン室384の内表面に対して弾性変形してピストン室384を封止する少なくとも1つの封止材380を含んでいる。封止材380は、ガスケット、Oリングなど、封止する表面に対して封止材380が移動可能な態様で封止することができる、様々な封止材のうちの任意のもので構成することができる。第1ピストン315は、第1係合面を有し、いくつかの実施例では、当該表面は平坦である。
【0060】
図14及び
図15に示す実施形態では、第2連結部114は、ロッド314であり、第2係合部116は、ロッド314に対して移動不能に接続された第2ピストン316である。ロッド314は、第2ピストン316が接続された下端部とは反対側の上端部において、ナセル201のドア204などの可動部材104に対して回転不能に固定されている。ロッド314の上端部には、ロッド314を可動部材104に対して回転不能に固定するよう構成されたブラケットやその他の連結部を設けることができる。第2ピストン316は、ピストン室384内において、チャンバ・ハウジング313に沿って並進移動可能である。第2ピストン316は、第1ピストン315の第1係合面と係合し、これに支持されるよう(例えば、相補的に)構成された第2係合面を有する。いくつかの実施例では、第2ピストン316の第2係合面は平坦である。いくつかの実施例では、第1ピストン315及び第2ピストン316の間の支持接触は、第1ピストン315と第2ピストン316との間の相対的な回転を防止する必要はない。ただし、第1ピストン315と第2ピストン316の間の係合は、第2ピストン316が第1ピストン315及び固定部材102から遠ざかったり、離脱したりする方向に自由に移動可能であることを保証する。換言すると、第1ピストン315は、第2ピストン316が第1ピストン315に支持されている場合に、第2ピストン316が第1ピストン315及び固定部材102から遠ざかる移動を制限しない。
【0061】
図14では、電動モードで動作する可動部材アクチュエータ106が示されている。可動部材104が可動部材アクチュエータ106に圧縮荷重122を加えるので、第2ピストン316が押圧されて第1ピストン315に接触し、第1ピストンによって第2ピストン316、ロッド314、及び可動部材104が支持される。可動部材アクチュエータ106を伸長させて、可動部材104を移動させるには、リニアアクチュエータ330を選択的に駆動して、第1ピストン315を固定部材102に対して遠ざかる方向、又は、近づく方向に移動させる。第2ピストン316は第1ピストン315に支持されているので、第2ピストン316及びロッド314も、第1ピストン315と同じ方向に固定部材102から遠ざかるように、チャンバ・ハウジング313に沿って並進移動する。これに応じて、可動部材104が第1ピストン315と同じ方向に遠ざかるように移動する。
【0062】
図15を参照すると、手動モードでは、可動部材アクチュエータ106を伸長させて可動部材104を固定部材102から遠ざかるように移動させるには、下向きの圧縮荷重122より大きな上向きの引張荷重126を可動部材104に加える。第1ピストン315と第2ピストン316との間の支持接触は、第2ピストン316が第1ピストン315から遠ざかるように移動することを妨げないので、可動部材アクチュエータ106に掛かる正味引張荷重によって、第2ピストン316が第1ピストン315から離脱し、可動部材104が第1ピストン315及び固定部材102から遠ざかるように矢印124が示す方向に移動する。図示はしていないが、手動モードでは、可動部材104に加える上向きの引張荷重126を小さくすることにより、
図15の可動部材アクチュエータ106を後退させて、可動部材104を固定部材102に向かって移動させることができる。上向きの引張荷重126を小さくすること、第2ピストン316及び可動部材104が固定部材102に対して下降し、最終的には、第2ピストン316が第1ピストン315に接触し、支持される。
【0063】
上記に鑑みれば、可動部材アクチュエータ106は、望ましい時、あるいは、必要な時に、電動モードと手動モードとの間で選択的に切り換え可能な構成である。一実施例では、概して、可動部材アクチュエータ106は、可動部材アクチュエータ106の電動モードが動作不能になるなどして手動モードでの動作が必要でない限り、電動モードで駆動される。
【0064】
例示的な実施形態においては、可動部材システム101が航空機のナセルであり、可動部材104がナセルのドアであったが、他の実施形態においては、可動部材システム101は航空機における他のシステムであり、ドアは、貨物室のドアなど航空機における他のドアであってもよい。
【0065】
上記の説明において、「上」「下」「上側」「下側」「水平」「垂直」「左」「右」「上方」「下方」等の特定の用語が用いられている場合がある。これらの用語は、該当する場合において、相対的な位置関係の記載を明瞭にするために用いられている。ただし、これらの用語は、絶対的な関係、位置、及び/又は配向を示すためには用いられていない。例えば、ある物体について、「上側の」面は、その物体を反転させると「下側の」面になりうるが、それは、依然として同じ物体である。また、「含む」、「備える」、「有する」、及びこれに類する用語は、別段の明確な記載が無い限り、「含むがこれに限定されない」ことを意味する。列挙したアイテムのリストは、別段の明確な記載が無い限り、これらアイテムのいずれか又は全てが、相互に排他的であること、及び/又は、相互に包括的であることを意味するものではない。単数形を表す用語であっても、別段の明確な記載が無い限り、「1つ以上」を意味する。加えて、「複数の」との用語は、「少なくとも2つ」と定義することができる。さらに、別段の明確な記載が無い限り、本明細書で定義される複数の特定の特徴は、必ずしも、その特定の特徴の全体の組やクラスに属するすべての特徴を意味するとは限らない。
【0066】
加えて、本明細書において、ある要素が他の要素に「接続あるいは連結されている」とは、直接に接続されている場合も、間接的に接続されている場合も含む。直接に接続されているとは、ある要素が他の要素に接続されて、何らか態様で接触していることを意味する。間接的に接続されているとは、2つの要素が互いに直接的に接続されているのではなく、これら1つの要素が1つ以上の他の部材を介して接続されていることを意味する。さらに、本明細書で用いられている場合、ある要素が他の要素に固定されているとは、直接に固定されている場合も、間接的に固定されている場合も含む。加えて、本明細書で用いられている場合、「隣接する」とは、必ずしも接触を要件としない。例えば、ある要素は、他の要素に接触することなく、当該要素に隣接することができる。
【0067】
本明細書において、「少なくとも1つの」という語句がアイテムのリストと共に用いられる場合は、リストアップされたアイテムの1つ以上の様々な組み合わせを用いてもよいということであり、リストの各アイテムの1つだけを必要とする場合もあることを意味する。アイテムは、ある特定の対象、物、又はカテゴリーであってもよい。すなわち、「少なくとも1つの」は、あらゆる組み合わせのあらゆる数のアイテムをリストから使用してもよいが、リスト上の全てのアイテムを必要とするわけではないということを意味する。例えば、「アイテムA、アイテムB、及びアイテムCのうちの少なくとも1つ」は、限定するものではないが、アイテムA、アイテムAとアイテムB、アイテムB、アイテムAとアイテムBとびアイテムC、あるいは、アイテムBとアイテムCを含みうる。場合によっては、「アイテムA、アイテムB、及びアイテムCのうちの少なくとも1つ」は、例えば、限定するものではないが、2個のアイテムAと、1個のアイテムBと、10個のアイテムCであってもよいし、4個のアイテムBと7個のアイテムCであってもよいし、あるいは、他の適当な組み合わせであってもよい。
【0068】
明細書で用いられる場合、別段の明確な記載が無い限り、「第1」、「第2」等の語句は、単に標識として用いられており、これらの用語で言及しているアイテムに対し、順序、位置、又は階層的な要件を課すものではない。また、例えば「第2の」アイテムについて言及することによって、例えば、「第1の」アイテムやより小さい序数のアイテム、及び/又は、「第3の」アイテムテムやより大きい序数のアイテムの存在を要件としたり排除したりするものではない。
【0069】
本明細書において、特定の機能を実行するように「構成された(configured to)」システム、装置、構造、物品(article)、要素、部品、又はハードウェアは、一切の変更を要することなくその特定の機能を実行できるものを指し、その特定の機能を実行するのに何らかの変更を要するものを指すのではない。換言すれば、特定の機能を実行するように「構成された」システム、装置、構造、物品、要素、部品、又はハードウェアは、その特定の機能を実行することを目的として、具体的に、選択、作製、実施、利用、プログラム、及び/又は設計されたものを指す。本明細書において、「構成されている」ということは、システム、装置、構造、物品、要素、部品、又はハードウェアが既に備えている特性に言及するものであり、この特性により、当該システム、装置、構造、物品、要素、部品、又はハードウェアは、一切の変更を要することなくその特定の機能を実行することができる。本開示において、特定の機能を実行するように「構成されている」システム、装置、構造、物品、要素、部品、又はハードウェアは、この記載に加えて、あるいは、この記載に代えて、当該機能を行うように「適合化された(adapted to)」、及び/又は「動作可能な(operative to)」ものとして記載される場合もある。
【0070】
本明細書に含まれる模式的なフロー図は、論理的なフロー図として一般化して記載されている。したがって、図示おける順序、及び、標記のステップは、提示した方法の一実施形態を示しているに過ぎない。図示した方法における1つ以上のステップやその一部に対して、機能、論理、又は効果において均等である他のステップや方法も、想定可能である。加えて、使用した形式や記号は、方法の論理ステップを説明するためのものであり、当該方法の範囲を限定するものではないことが理解されよう。また、フロー図に用いられている各種矢印や線は、対応する方法の範囲を限定するものではないことが理解されよう。実際、いくつかの矢印あるいはその他の接続線は、図示した方法の論理的な流れを示唆しているに過ぎない。例えば、矢印は、図示した方法について列挙したステップ間における、不特定時間の待機又は監視期間を示すこともある。加えて、特定の方法を実行する際のステップは、図示した順の通りに実行される場合も、そうでない場合もある。
【0071】
また、本開示の主題は、その思想や本質的な特徴から逸脱することなく、別の具体的な態様でも実施可能である。記載した実施形態は、あらゆる面において、例示的なものであり、限定を課すものではない。特許請求の範囲の意味及び均等の範囲内に入るすべての変形は、その範囲内に包含されるべきである。