(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
H04L 25/02 20060101AFI20230608BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20230608BHJP
F24F 11/56 20180101ALI20230608BHJP
【FI】
H04L25/02 302B
H04L25/02 F
H04Q9/00 301Z
F24F11/56
(21)【出願番号】P 2020548287
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2019034744
(87)【国際公開番号】W WO2020066508
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2018179753
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中條 崇
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正人
(72)【発明者】
【氏名】駒崎 就哉
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-133627(JP,A)
【文献】特表2003-535344(JP,A)
【文献】特開2011-176436(JP,A)
【文献】特開平11-274987(JP,A)
【文献】特開2019-041384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
H04Q 9/00
F24F 11/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信装置と通信線によって接続された検出装置であって、
前記複数の通信装置からそれぞれ所定のパルス幅で送信され
、自装置へ直接届く信号と、前記通信線の末端近くに位置する前記通信装置を反射して届く信号とが重畳した重畳信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された前記
重畳信号の前記パルス幅をそれぞれ測定する測定部と、
前記測定部によって測定された複数の前記パルス幅に基づいて、前記通信線の末端近くに位置する
前記通信装置を末端通信装置として検出する検出部と、
を備える検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記受信部によって受信された前記信号の前記パルス幅が最も狭い前記信号を送信した通信装置を特定することにより前記末端通信装置を検出する
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記検出部によって前記末端通信装置が検出された場合、終端抵抗を設定させるための命令を示す第1命令を前記末端通信装置に対して出力する命令部
をさらに備える請求項1又は請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記命令部から前記第1命令が出力された場合、前記通信装置との通信における通信速度をより高速にするように通信設定を切り替える通信速度切替部
をさらに備える請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記通信速度切替部は、少なくとも1つの通信装置が増設又は撤去された場合、前記通信線によって接続された前記通信装置との通信における通信速度をより低速にするように通信設定を切り替える
請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記命令部は、前記第1命令を出力した場合、自検出装置との通信における通信速度をより高速にするように通信設定を切り替えさせるための命令を示す第2命令を、少なくとも1つの前記通信装置に対して出力する
請求項3から請求項5のうちいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記命令部は、自検出装置へ前記所定のパルス幅の信号を送信させるための命令を示す第3命令を前記複数の通信装置に対して出力する
請求項3から請求項6のうちいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記命令部は、少なくとも1つの通信装置が増設又は撤去された場合、終端抵抗の設定を解除させるための命令を示す第4命令を前記末端通信装置に対して出力する
請求項3から請求項7のうちいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記命令部は、少なくとも1つの通信装置が増設又は撤去された場合、前記通信線によって接続された前記通信装置との通信における通信速度をより低速にするように通信設定を切り替えさせるための命令を示す第5命令を前記末端通信装置に対して出力する
請求項3から請求項8のうちいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項10】
前記測定部によって測定された複数の前記パルス幅に基づいて、前記通信線の長さを推定する推定部
をさらに備える請求項1から請求項9のうちいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項11】
前記通信装置は、空気調和機の室内機に備えられた通信装置であり、
自検出装置は、前記空気調和機の室外機又は複数の前記室内機を管理する管理装置に備えられる
請求項1から請求項10のうちいずれか一項に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関する。
本願は、2018年9月26日に、日本に出願された特願2018-179753号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、1台の親機に対して複数台の子機が通信線によってバス接続された通信システムがある。例えば大型の建物等に設置される業務用の空調システムの場合、子機は室内機であり、親機は例えば室外機又は中央の空調管理装置等の管理装置である。このような空調システムでは、管理装置において、接続された各室内機の稼働に関する情報(例えば、設定温度情報及びセンサ情報等)が逐次取得されて一括管理されている。また、このような空調システムでは、複数の室内機の動作を管理装置によって一括制御することも可能である。この機能により、例えばオフィスビルにおいて、予め設定されたスケジュールに従い、労働者の出勤時間前にオフィスビル内のすべての室内機を一括で運転開始(ON)させ、退勤時間後にすべての室内機を一括で停止(OFF)させることができる。これにより、空調管理者等にとっての利便性が向上する。
【0003】
ところで、上記のようなバス接続方式が採用された通信システムでは、一般に通信線の末端に位置する親機及び子機に対して終端抵抗が設定される。通信が高速化され、通信配線長が伸びると、末端における通信信号の反射の影響が大きくなり、信号波形が乱れることがあるからである。これに対し、通信に最適な定数となる終端抵抗が通信線の末端の近くに位置する親機及び子機に対して設定されることにより、信号の反射が抑えられ、信号波形が乱れることなく通信を行うことが可能になる。
【0004】
但し、終端抵抗は、一度設置されたとしても、例えば、増設又は撤去されることにより通信線に接続された子機の台数が変わったり、長さ又は種類が異なる通信線に置き換えられたりした場合には、その都度、終端抵抗を設定させる子機の変更、あるいは設定変更を行わなければならない。従来、大型の建物等に設置される業務用の空調システムにおいては、空調システムの管理者等が、終端抵抗の設定を行うため、通信線の末端近くに位置する室内機を探し出す必要があった。しかしながら、このような空調システムでは、長い通信配線に多数の室内機が接続されているため、その中から通信線の末端近くに位置する室内機を人手によって探し出すことが容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平08-114349号公報
【文献】特許第2776624号公報
【文献】特許第3064168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、通信線の末端の通信装置を検出することができる検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の検出装置は、複数の通信装置と通信線によって接続される。検出装置は、受信部と、測定部と、検出部と、を持つ。受信部は、前記複数の通信装置からそれぞれ所定のパルス幅で送信され、自装置へ直接届く信号と、前記通信線の末端近くに位置する前記通信装置を反射して届く信号とが重畳した重畳信号を受信する。測定部は、前記受信部によって受信された前記重畳信号の前記パルス幅をそれぞれ測定する。検出部は、前記測定部によって測定された複数の前記パルス幅に基づいて、前記通信線の末端近くに位置する前記通信装置を末端通信装置として検出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る空調システム100の全体構成図。
【
図2】第1の実施形態に係る通信装置10による、通信線30の末端の近くに位置する通信装置20の検出について説明するための模式図。
【
図3】第1の実施形態に係る通信装置10による、通信線30の末端の近くに位置する通信装置20の検出について説明するための模式図。
【
図4】第1の実施形態に係る通信装置10による、通信線30の末端の近くに位置する通信装置20の検出について説明するための模式図。
【
図5】第1の実施形態に係る通信装置10による、通信線30の末端の近くに位置する通信装置20の検出について説明するための模式図。
【
図6】第1の実施形態に係る通信装置10の機能構成を示すブロック図。
【
図7】第1の実施形態に係る通信装置10に記憶された通信装置情報テーブルt1の構成の一例を示す図。
【
図8】第1の実施形態に係る通信装置10に記憶されたパルス幅記憶テーブルt2の構成の一例を示す図。
【
図9】第1の実施形態に係る通信装置20の構成を示す概略図。
【
図10】第1の実施形態に係る通信装置10の動作の一例を示すフローチャート。
【
図11】第1の実施形態に係る通信装置20のパルス信号出力処理における動作を示すフローチャート。
【
図12】第1の実施形態に係る通信装置20の終端抵抗設定処理における動作を示すフローチャート。
【
図13】第1の実施形態に係る通信装置20の通信速度切替処理における動作を示すフローチャートである。
【
図14】第1の実施形態の変形例に係る空調システム200の全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の検出装置を、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る空調システム100の構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る空調システム100の全体構成図である。
図1に示す空調システム100は、例えばオフィスビルに設置された空調システムである。
図1に示すように、空調システム100は、空気調和機の室外機である室外機1と、空気調和機の室内機である、室内機2-1と、室内機2-2と、室内機2-3と、を含んで構成される。なお、以下の説明において、室内機2-1と、室内機2-2と、室内機2-3と、を区別して説明する必要がない場合には、単に「室内機2」という。室外機1と各室内機2は、冷媒配管によって接続され、冷凍サイクルが構成される。また、室外機1と各室内機2間は通信線30によって接続され、室外機1および各室内機2は、信号のやり取りが可能になっている。
【0011】
このように、空調システム100は、1台の室外機1と、複数の室内機2と、を含んでいる。室外機1は、複数の室内機2の動作を一括して制御する。なお、1台の室外機1によって制御される複数の室内機2の台数は3台に限られるものではなく、任意の台数で構わない。
【0012】
室外機1は、通信上の親機となる通信装置10を含む。また、室内機2-1、室内機2-2、及び室内機2-3は、それぞれ、通信上の子機となる通信装置20-1、通信装置20-2、及び通信装置20-3を備えている。なお、以下の説明において、通信装置20-1と、通信装置20-2と、通信装置20-3と、を区別して説明する必要がない場合には、単に「通信装置20」という。
【0013】
図1に示すように、通信装置10と、通信装置20-1と、通信装置20-2と、通信装置20-3とは、通信線30によってバス接続方式で接続されている。室外機1のみが室外に配置され、各室内機2は室内に設置されることから、室外機1の通信装置10は、通常、通信線30の一方の末端に近い位置に設置される。
【0014】
通信装置10は、複数の通信装置20との通信を行う通信機能を有する。通信装置10は、通信装置20から送信された信号を受信することによって、例えば、室内機2の稼働状況を示す情報を取得したり、室内機2が設置された部屋の温度や湿度を示す情報を取得したりすることができる。また、通信装置10は、通信装置20に対して信号を送信することによって、例えば、通信装置20を介して室内機2の稼働状態を制御することができる。
【0015】
通信装置10は、後述する終端抵抗11を備える。したがって、通信装置10は、常に終端装置としての機能を有する。また、後で詳述するように通信装置10は、通信線30上で末端近くに設置された室内機の通信装置20を検出する検出装置としての機能も備えている。
また、通信装置20は、後述する、終端抵抗を含む終端抵抗設定部21を備える。終端抵抗設定部21は、通信装置10(検出装置)から送信された命令に基づいて、終端抵抗の設定又は設定解除の切替えを行う。したがって、通信装置20は、終端装置としての機能を有する場合と、そうでない場合とがある。
【0016】
通信装置10及び通信装置20は、いずれも、高速で通信を行うモードである高速通信モードでの通信と、これに対し相対的に低速で通信を行うモードである低速通信モードでの通信と、を切り替えて通信を行うことができる。
【0017】
空調システム100が稼働する前の初期状態において、全ての通信装置20の終端抵抗設定部21において、終端抵抗が設定解除された状態である。したがって、初期状態では、全ての通信装置20が終端装置としての機能を有していない状態であることから、通信線30によって伝達される信号の反射が発生しやすく、信号波形が乱れやすい状態にある。とくに高速に通信が行われる場合、信号の反射の影響が大きくなりやすいことから、初期状態においては、通信装置10及び通信装置20は、いずれも、低速通信モードに設定されている。
【0018】
通信装置10は、通信線30によって伝達される信号の反射を抑えて、高速通信モードで通信装置20との通信を行うことができるようにするための制御を行う。具体的には、通信装置10は、検出装置として動作して、通信線30の末端の近くに位置する一台の通信装置20(すなわち、通信装置20-3)を検出して、特定する検出機能を備える。そして、通信装置10は、検出された通信装置20の終端抵抗設定部21に対して、終端抵抗が設定された状態に切り替えさせるための命令を送信する。後述するように通信装置(検出装置)20は、通信線30の最も末端の近くに位置する通信装置20を特定できれば良いが、複数の通信装置20が同じような配線長である場合には、その区別は難しいため、末端の近くに位置する通信装置20を1台特定する。これによっても、十分な通信(波形)の安定性向上の目的は達成できる。
【0019】
通信線30の末端近くに位置する通信装置20の終端抵抗設定部21は、受信した命令に従って、終端抵抗が設定された状態に切り替える。これにより、通信線30の末端近くに位置する通信装置20が、終端装置となる。そして、通信に適切な定数となる終端抵抗が、通信線30の両末端近くに位置する通信装置10及び通信装置20において設定されること、信号の反射が抑えられ、信号波形が乱れることなく通信を行うことが可能になる。
【0020】
以下、通信装置10の検出装置としての機能による、通信線30の末端の最も近くに位置する通信装置20の検出方法について説明する。
【0021】
まず、通信装置10は、各通信装置20に対して順に、所定のパルス幅のパルス信号の出力を命令する。通信装置10は、各通信装置20から出力されたパルス信号を受信し、それぞれのパルス信号のパルス幅を測定する。そして、通信装置10は、測定された複数のパルス幅のうち、最も短いパルス幅を特定する。通信装置10は、特定されたパルス幅のパルス信号を送信した通信装置20を、通信線30の末端もしくは末端の近くに位置する通信装置20として検出する。
【0022】
図2、
図3、
図4、及び
図5は、第1の実施形態に係る通信装置10による、通信線30の末端近くに位置する通信装置20の検出について説明するための模式図である。
図2に示すように、例えば、通信装置20-1から所定のパルス幅wのパルス信号が送信された場合、通信装置10へ直接届くパルス信号Aがある。また、初期状態において、いずれの通信装置20においても終端抵抗が設定されていない状態である場合、信号の反射が生じることから、
図2に示すように、通信線30の末端に位置する通信装置20-3を反射して届くパルス信号Bがある。
【0023】
この場合、パルス信号Bが通信装置20-1から通信装置10へ伝送されるまでの移動距離は、パルス信号Aが通信装置20-1から通信装置10へ伝送されるまでの移動距離よりも長くなる。そのため、パルス信号Bは、パルス信号Aよりも遅れて通信装置10に届く。これにより、通信装置10は、時間的にずれがある状態で重畳した2つのパルス信号(パルス信号Aとパルス信号B)を1つのパルス信号として認識する。すなわち、
図2に示すように、通信装置10は、パルス信号Aとパルス信号Bとが重畳した、1つのパルス幅x(x>w)のパルス信号を受信したものとして認識する。
【0024】
図3は、通信装置20-1からパルス幅wのパルス信号が送信された場合に通信装置10によって認識されるパルス信号を示している。この場合、
図2に示したように、通信装置10によって認識されるパルス信号のパルス幅はx(x>w)である。
【0025】
図4は、通信装置20-2からパルス幅wのパルス信号が送信された場合に通信装置10によって認識されるパルス信号を示している。通信装置20-2からパルス信号が送信された場合、通信装置20-1からパルス信号が送信された上記の場合と比べて、パルス信号Bが通信装置20-1から通信装置10へ伝送されるまでの移動距離と、パルス信号Aが通信装置20-1から通信装置10へ伝送されるまでの移動距離との差は、より少ない。そのため、重畳した2つのパルス信号(パルス信号Aとパルス信号B)の時間的なずれは、
図3に示したパルス信号の場合と比べて、より少ない。そのため、通信装置10は、
図4に示すように、パルス信号Aとパルス信号Bとが重畳した、1つのパルス幅y(x>y>w)のパルス信号を受信したものとして認識する。
【0026】
図5は、通信装置20-3からパルス幅wのパルス信号が送信された場合に通信装置10によって認識されるパルス信号を示している。通信装置20-3からパルス信号が送信された場合、通信装置20-3は通信線30の末端の最も近くに位置することから、信号の反射は生じない。すなわち、パルス信号Aのみが通信装置10へ届く。そのため、通信装置10は、
図5に示すように、パルス幅z(x>y>w≒z)のパルス信号を受信したものとして認識する。なお、
図5に示すパルス幅が、通信装置20-3から送信された時点におけるパルス信号のパルス幅と同一のパルス幅wではない理由は、反射以外の原因(例えば、信号減衰)等によって、パルス幅が若干変化するためである。
【0027】
図3から
図5に示すように、通信装置10により近い通信装置20から送信されたパルス信号のパルス幅ほど、より長いパルス幅として通信装置10によって認識される。通信装置10から最も遠い(すなわち、通信線30において、通信装置10とは逆側の末端の最も近くに位置する)通信装置20-3から送信されたパルス信号のパルス幅が、最も短いパルス幅として通信装置10によって認識される。
【0028】
以上のことから、通信装置10は、測定された複数のパルス幅のうち最も短いパルス幅を特定し、特定されたパルス幅のパルス信号を送信した通信装置20を、通信線30の末端近くに位置する通信装置20として検出する。
【0029】
以下、通信装置10の機能構成についてより詳細に説明する。
図6は、第1の実施形態に係る通信装置10の機能構成を示すブロック図である。
図6に示すように、通信装置10は、終端抵抗11と、信号送受信回路12と、を含んで構成される。
【0030】
終端抵抗11は、
図6に示すように、2線式の通信線である通信線30に常時接続された状態である。したがって、終端抵抗11は、通信装置10を常時、終端装置として機能させる。
【0031】
信号送受信回路12は、検出装置としての主要部分であり、各通信装置20との間の通信における、信号の送受信を行う回路である。信号送受信回路12は、上述したように通信線30の一方の末端の最も近くに位置する通信装置10に備えられた信号送受信回路である。また、信号送受信回路12は、通信線30の他方の末端近くに位置する通信装置(以下「末端通信装置」という。)を検出する。信号送受信回路12は、各通信装置20に対して命令を送信することにより、各通信装置20における終端抵抗の設定状態を制御する。
【0032】
図6に示すように、信号送受信回路12は、制御部120と、命令部121と、送信部122と、受信部123と、測定部124と、記憶部125と、検出部126と、通信速度切替部127と、を含んで構成される。
【0033】
制御部120は、信号送受信回路12が有する各機能ブロックによる処理を制御する。これにより、例えば制御部120は、各通信装置20との間の通信における、信号の送受信を制御する。また、例えば制御部120は、末端通信装置を検出するための処理を制御する。また、例えば制御部120は、各通信装置20に対する各種の命令の送信を制御する。
【0034】
制御部120は、例えばCPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)等のプロセッサである。なお、制御部120は、例えば、LSI(Large-scale Integrated Circuit;大規模集積回路)やASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途向け集積回路)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、信号送受信回路12が有する各機能ブロックは、例えばCPU等のプロセッサである制御部120によって、記憶部125に記憶されたプログラムが実行されることによって実現される構成であってもよい。
【0035】
命令部121は、各通信装置20に対して送信される各種の命令の送信を制御する。命令部121は、送信部122を介して各通信装置20へ各種の命令を出力する。
図6に示すように、命令部121は、パルス信号出力命令部121aと、終端抵抗設定命令部121bと、通信速度切替命令部121cと、を含む。
【0036】
パルス信号出力命令部121aは、自己の通信装置10へパルス信号を出力させるための命令を示すパルス信号出力命令(第3命令)を各通信装置20に対してそれぞれ出力する。なお、パルス信号出力命令は、各通信装置20に対してブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信される構成であってもよい。なお、パルス信号出力命令に応じて各通信装置20から出力される信号は、試験的に出力されるテスト信号であり、いずれの通信装置20においても正確に同じ時間幅のパルスを出力するようにあらかじめ設定されている。
【0037】
終端抵抗設定命令部121bは、検出部126によって末端通信装置が検出された場合、終端抵抗を設定させるための命令を示す終端抵抗設定命令(第1命令)を末端通信装置に対して出力する。
【0038】
なお、終端抵抗設定命令部121bは、少なくとも1つの通信装置20が増設又は撤去された場合、終端抵抗の設定を解除させるための命令(第4命令)を末端通信装置に対して出力するようにしてもよい。その後、信号送受信回路12が、あらためて末端通信装置の検出を行い、検出された末端通信装置に対して終端抵抗を設定させる構成であってもよい。
【0039】
通信速度切替命令部121cは、終端抵抗設定命令部121bによって終端抵抗設定命令が出力された場合、自己の通信装置10との通信における通信速度をより高速にするように通信設定を切り替えさせるための命令(すなわち、高速通信モードに設定を切り替えさせるための命令)を示す通信速度切替命令(第2命令)を、各通信装置20に対して出力する。
【0040】
なお、通信速度切替命令部121cは、少なくとも1つの通信装置20が増設又は撤去された場合、自己の通信装置10との通信における通信速度をより低速にするように通信設定を切り替えさせるための命令(すなわち、低速通信モードに設定を切り替えさせるための命令)(第5命令)を、通信線30に接続された各通信装置20に対して出力するようにしてもよい。その後、信号送受信回路12が、あらためて末端通信装置の検出を行い、検出された末端通信装置に対して終端抵抗を設定させる構成であってもよい。
【0041】
送信部122及び受信部123は、各通信装置20と通信接続するための通信インターフェースである。なお、送信部122及び受信部123とは、1つのハードウェアによって構成される機能部であってもよい。
【0042】
送信部122は、制御部120による制御のもとで、各種の信号(パルス信号)を、通信線30を介して各通信装置20へ出力する。なお、各種の信号には、命令部121から出力される、上記の、パルス信号出力命令、終端抵抗設定命令、及び通信速度切替命令を示す信号も含まれる。
【0043】
受信部123は、各通信装置20から出力された各種の信号(パルス信号)を、通信線30を介して取得する。なお、各種の信号には、パルス信号出力命令を取得したことに応じて各通信装置20から出力されるテスト信号であるパルス信号も含まれる。受信部123は、テスト信号であるパルス信号を取得すると、取得された当該パルス信号を測定部124へ出力する。
【0044】
測定部124は、各通信装置20からそれぞれ送信されたテスト信号であるパルス信号を、受信部123から取得する。測定部124は、取得された当該パルス信号のパルス幅を測定する。測定部124は、各通信装置20からそれぞれ送信されたパルス信号のパルス幅の測定値を、記憶部125に記憶させる。例えば、測定部124は、記憶部125に予め記憶された、後述するパルス幅記憶テーブルt2に書き込むことにより、記憶部125に記憶させる。
【0045】
記憶部125は、信号送受信回路12において用いられる、各種のプログラム及びテータテーブルを記憶する。記憶部125は、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記録媒体(非一時的な記録媒体)である。また、記憶部125は、例えば、RAM(Random Access Memory)やレジスタなどの揮発性の記録媒体をさらに有してもよい。
【0046】
また、記憶部125は、以下に説明する、通信装置情報テーブルt1と、パルス幅記憶テーブルt2と、を記憶する。
【0047】
図7は、第1の実施形態に係る通信装置10に記憶された通信装置情報テーブルt1の構成の一例を示す図である。
図7に示すように、通信装置情報テーブルt1は、「識別番号」と「アドレス」との2つの項目の列からなる2次元の表形式のデータである。識別番号の項目に格納される値は、各通信装置20を識別するための識別番号である。例えば、通信装置20-1、通信装置20-2、及び通信装置20-3に対応付けられた識別番号が、それぞれ
図7に示す通信装置情報テーブルt1に記憶された「c1」、「c2」、及び「c3」であることを示している。
【0048】
また、通信装置情報テーブルt1は、各通信装置20に付与された識別番号と、通信装置10が各通信装置20と通信を行うために必要となるアドレスと、を対応付けるテーブルである。例えば、
図7に示すように、識別番号「c1」が付与された通信装置20-1のアドレスは「aaa.bbb」であることを示している。
【0049】
通信装置情報テーブルt1は、予め記憶部125に記憶されているテーブルである。通信装置10は、特定の通信装置20に対して信号を送信する場合、通信装置情報テーブルt1によって、送信先の通信装置20に対応するアドレスを参照する。そして、通信装置10は、参照されたアドレスを指定して信号を送信する。例えば、
図7に示すように、通信装置10は、「aaa.bbb」というアドレスを指定して信号を送信することによって、識別番号「c1」が付与された通信装置20-1に対して信号を送信することができる。
【0050】
図8は、第1の実施形態に係る通信装置10に記憶されたパルス幅記憶テーブルt2の構成の一例を示す図である。
図8に示すように、パルス幅記憶テーブルt2は、「識別番号」と「パルス幅」との2つの項目の列からなる2次元の表形式のデータである。識別番号の項目に格納される値は、上記の通信装置情報テーブルt1と同様に、各通信装置20を識別するための識別番号である。
【0051】
パルス幅記憶テーブルt2は、各通信装置20から出力されたテスト信号であるパルス信号のパルス幅をそれぞれ一時的に記憶させるためのテーブルである。パルス幅記憶テーブルt2は、初期状態においては少なくとも「パルス幅」の項目の値は格納されていない状態である。各通信装置20から出力されたパルス信号のパルス幅が測定部124によって測定されるごとに、パルス幅記憶テーブルt2に対して測定値を示すデータが書き込まれる。
【0052】
したがって、
図8に例示したパルス幅記憶テーブルt2は、識別番号「c1」が付与された通信装置20-1から出力されたパルス信号のパルス幅と、識別番号「c2」が付与された通信装置20-2から出力されたパルス信号のパルス幅については測定が完了しているが、識別番号「c3」が付与された通信装置20-3から出力されるパルス信号のパルス幅についてはまだ測定が行われていない途中の状態を示している。最終的には、すべての通信装置20からのパルス幅の測定が完了し、パルス幅記憶テーブルt2が埋まる。
【0053】
図8に例示したパルス幅記憶テーブルt2は、識別番号「c1」が付与された通信装置20-1から出力されたパルス信号のパルス幅の測定値が「1.4」(単位はms(ミリセカンド))であったことを示している。
【0054】
再び
図6に戻って説明する。
検出部126は、記憶部125に記憶されたパルス幅記憶テーブルt2を参照する。検出部126は、パルス幅記憶テーブルt2の「パルス幅」の項目に格納された値を参照することにより、最も狭いパルス幅の値を特定する。そして、検出部126は、パルス幅記憶テーブルt2の識別伴奏」の項目に格納された値を参照し、最も狭いパルス幅の値に対応付けられた識別番号の値を取得する。検出部126は、取得された識別番号が付与された通信装置20を、末端に近い末端通信装置として検出する。
【0055】
検出部126は、末端通信装置として検出した通信装置20を示す情報(例えば識別番号)を、終端抵抗設定命令部121bへ出力する。終端抵抗設定命令部121bは、検出部126から取得した情報に基づく通信装置20(末端通信装置)に対して、終端抵抗設定命令を出力する。
【0056】
終端抵抗設定命令部121bから終端抵抗設定命令が出力された場合、通信速度切替命令部121cは、全ての通信装置20に対して、通信速度切替命令を出力する。これにより、通信装置20において、通信装置10との通信における通信速度をより高速にするように通信設定が切り替えられる(すなわち、高速通信モードに切り替えられる)。なお、通信速度切替命令部121cは、少なくとも1つの通信装置20に対して通信速度切替命令を出力するようにしてもよい。
【0057】
通信速度切替部127は、終端抵抗設定命令部121bから終端抵抗設定命令が出力された場合、通信装置20との通信における通信速度をより高速にするように通信設定を切り替える(すなわち、高速通信モードに切り替える)。その後、通信装置10は高速通信モードで各通信装置20との間で通常の情報のやり取りを行う。
【0058】
なお、通信速度切替部127は、少なくとも1つの通信装置20が増設又は撤去された場合、通信線30に接続された通信装置20との通信における通信速度をより低速にするように通信設定を切り替える(すなわち、低速通信モードに設定を切り替える)とともに末端通信装置に対して終端抵抗を開放させるようにしてもよい。その後、信号送受信回路12が、あらためて末端通信装置の検出を行い、検出された末端通信装置に対して終端抵抗を設定させる構成であってもよい。末端通信装置の探索に低速通信モードを使用することで、通信装置10と各通信装置20間の通信の安定性を向上させ、測定部124でのパルス幅の測定精度を上げることができる。
【0059】
以下、通信装置20の構成について説明する。
図9は、第1の実施形態に係る通信装置20の構成を示す概略図である。なお、各通信装置20の構成は同一であるため、
図9には、通信装置20-2及び通信装置20-3のみを一例として示している。
図9に示すように、通信装置20は、終端抵抗設定部21と、信号送受信回路22と、を含んで構成される。
【0060】
終端抵抗設定部21は、終端抵抗を含んで構成される。終端抵抗設定部21は、通信装置10から送信された終端抵抗設定命令を取得する。終端抵抗設定部21は、終端抵抗設定命令を取得した場合、終端抵抗が設定された状態に切り替える。なお、
図9は、通信装置20-3は末端通信装置であることから、終端抵抗が設定された状態に切り替えられており、通信装置20-2は末端通信装置ではないことから、終端抵抗が設定解除された状態のままとなっている状態を示している。
【0061】
信号送受信回路22は、通信装置10との間の通信における、信号の送受信を行う回路である。また、信号送受信回路12は、通信装置10から送信されたパルス信号出力命令を取得する。信号送受信回路12は、パルス信号出力命令を取得した場合、所定のパルス幅wのパルス信号を通信装置10へ出力する。
【0062】
また、信号送受信回路12は、通信装置10から送信された通信速度切替命令を取得する。信号送受信回路12は、通信速度切替命令を取得した場合、通信装置10との通信における通信速度をより高速にするように通信設定を切り替える(すなわち、高速通信モードに切り替える)。
【0063】
以下、通信装置10の動作について説明する。
図10は、第1の実施形態に係る通信装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
図10に示される通信装置10の動作は、例えば空調システム100が稼働する前の初期状態において開始される。
【0064】
まず、制御部120は、変数iに1を代入する処理を実行する(ステップS001)。そして、制御部120は、通信装置10に接続された端末の台数がn台ならば、n回(すなわち、
図1に示した構成の場合には3回)、以下に説明するステップS002からステップS005までの処理を実行させる。
【0065】
パルス信号出力命令部121aは、パルス信号出力命令を、送信部122及び通信線30を介して、通信装置20-i(i=1~n)へ送信する(ステップS002)。
【0066】
ステップS002において送信されたパルス信号出力命令に応じて通信装置20-i(i=1~n)から送信されたパルス信号を、受信部123が受信した場合(ステップS003においてYES)、測定部124は、受信されたパルス信号のパルス幅を測定する(ステップS004)。一方、ステップS002において送信されたパルス信号出力命令に応じて通信装置20-i(i=1~n)から送信されるパルス信号を受信していない場合(ステップS003においてNO)、通信装置10は、当該パルス信号が受信部123によって受信されるまで待機する。
【0067】
測定部124は、測定されたパルス幅を示す値を、記憶部125に記憶されたパルス幅記憶テーブルt2に書き込むことにより、記憶部125に記憶させる(ステップS005)。
検出部126は、記憶部125に記憶されたパルス幅記憶テーブルt2を参照し、パルス幅が最も狭いパルス信号を出力した通信装置20-jを特定する(すなわち、
図1に示した構成の場合には通信装置20-jが特定される)(ステップS006)。
【0068】
終端抵抗設定命令部121bは、終端抵抗設定命令を、送信部122及び通信線30を介して、通信装置20-jへ送信する(ステップS007)。
通信速度切替命令部121cは、通信速度切替命令を、送信部122及び通信線30を介して、全ての通信装置20へ送信する(ステップS008)。
【0069】
通信速度切替部127は、通信装置20との通信における通信速度をより高速にするように通信設定を切り替える(すなわち、高速通信モードに切り替える)(ステップS009)。
以上で
図10のフローチャートが示す通信装置10における検出装置としての動作が終了する。
【0070】
以下、通信装置20の動作について説明する。
図11は、第1の実施形態に係る通信装置20のパルス信号出力処理における動作を示すフローチャートである。
図11に示される通信装置20の動作は、
図10に示したステップS002において通信装置10から送信されたパルス信号出力命令が、通信装置20において受信される際に開始される。
【0071】
信号送受信回路22は、通信装置10から送信されたパルス信号出力命令を、通信線30を介して受信する(ステップS101)。
信号送受信回路22は、所定のパルス幅(例えば、上記のパルス幅w)のパルス信号を、通信線30を介して通信装置10へ出力する(ステップS102)。
以上で
図11のフローチャートが示す通信装置20の動作が終了する。
【0072】
図12は、第1の実施形態に係る通信装置20の終端抵抗設定処理における動作を示すフローチャートである。
図12に示される通信装置20の動作は、
図10に示したステップS007において通信装置10から送信された終端抵抗設定命令が、通信装置20において受信される際に開始される。
【0073】
終端抵抗設定部21は、通信装置10から送信された終端抵抗設定命令を、通信線30を介して取得する(ステップS111)。
終端抵抗設定部21は、終端抵抗が設定された状態に切り替える(ステップS112)。
以上で
図12のフローチャートが示す通信装置20の動作が終了する。
【0074】
図13は、第1の実施形態に係る通信装置20の通信速度切替処理における動作を示すフローチャートである。
図13に示される通信装置20の動作は、
図10に示したステップS008において通信装置10から送信された通信速度切替命令が、通信装置20において受信される際に開始される。
【0075】
信号送受信回路22は、通信装置10から送信された通信速度切替命令を、通信線30を介して受信する(ステップS121)。
信号送受信回路22は、通信装置10との通信における通信速度をより高速にするように通信設定を切り替える(すなわち、高速通信モードに切り替える)(ステップS122)。
以上で
図13のフローチャートが示す通信装置20の動作が終了する。
【0076】
以下、第1の実施形態の変形例に係る空調システム200の構成について説明する。
図14は、第1の実施形態の変形例に係る空調システム200の全体構成図である。
【0077】
図14に示す第1の実施形態の変形例に係る空調システム200の構成が、
図10に示した第1の実施形態に係る空調システム100の構成とは異なる点は、通信線30が途中で分岐しており、通信装置20-4及び通信装置20-5をそれぞれ備える、室内機2-4及び室内機2-5を備えている点である。
【0078】
図14に示すように、第1の実施形態とは異なり、通信線30において通信装置10が設置された位置を一方の末端とすると、他方の末端は2つ存在する。すなわち、通信装置20-3及び通信装置20-5の2つの末端通信装置が存在することになる。
【0079】
この場合において、通信装置10から通信装置20-3へ向かう通信線30に沿って接続された通信装置20と、通信装置10から通信装置20-5へ向かう通信線30に沿って接続された通信装置20とを、通信装置10が予め区別することができる場合には、通信装置10は、通信装置10から通信装置20-3へ向かう通信線30に対する終端抵抗の設定と、通信装置10から通信装置20-5へ向かう通信線30に対する終端抵抗の設定とに、処理を2回に分けて、上述した第1の実施形態による処理を、それぞれ実行すればよい。
【0080】
一方、通信装置10から通信装置20-3へ向かう通信線30に沿って接続された通信装置20と、通信装置10から通信装置20-5へ向かう通信線30に沿って接続された通信装置20とを、通信装置10が区別することができない場合であっても、通信装置20-3及び通信装置20-5に対する終端抵抗の設定は可能である。
【0081】
この場合、通信装置10は、第1の実施形態と同様に、テスト信号であるパルス信号を全ての通信装置20から取得して、パルス幅をそれぞれ測定する。そして、通信装置10は、最もパルス幅が狭いパルス信号が出力された通信装置20、及び最も狭いパルス幅との差が所定の閾値より小さいパルス幅のパルス信号が出力された通信装置20を特定する。そして、通信装置10は、特定された複数の通信装置20に対して、終端抵抗が設定された状態に切り替えさせる。
【0082】
図14において、通信装置20-3及び通信装置20-5は、いずれも通信線30の末端の位置において通信線30に接続する通信装置である。したがって、
図5に示したように、通信装置20-3及び通信装置20-5から送信されるパルス信号では、いずれも反射が発生しない。そのため、基本的には、通信装置20-3及び通信装置20-5から送信されるパルス信号は、いずれもパルス幅zのパルス信号として、通信装置10によって認識されるためである。
【0083】
なお、上述したように、
図5に示したパルス幅(z)が、通信装置20-3から送信された時点におけるパルス信号のパルス幅と同一のパルス幅wではない理由は、反射以外の原因(例えば、信号減衰)等によって、パルス幅が若干変化するためである。例えばこのような変化が原因となって、通信装置20-3から出力されたパルス信号のパルス幅と、通信装置20-5から送信されたパルス信号のパルス幅とは、必ずしも完全に一致しないことがある。
【0084】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態においては、通信装置10が、各通信装置20から出力されたパルス信号(テスト信号)を取得し、最も狭いパルス幅として取得されたパルス信号を出力した通信装置20を、末端通信装置として検出する構成であった。
【0085】
一方、第2に実施形態に係る通信装置10は、各通信装置20から出力されたパルス信号(テスト信号)を取得する。そして、第2に実施形態に係る通信装置10は、測定されたパルス幅に基づいて、通信装置10とそれぞれの通信装置20との間の通信線30の長さを推定する推定部(図示せず)を備える。なお、この場合の推定方法としては、例えば、通信装置10と通信装置20との間の通信線30の長さと、当該長さの場合に通信装置10において受信されるパルス幅と、が対応付けられた情報を予め通信装置10が保持しており、当該情報に基づいて推定する方法が考えられる。
【0086】
第2に実施形態に係る通信装置10により、空調管理者等は、上記推定部によって通信線30の長さが最も長いと推定された通信装置20を末端通信装置と推定することができる。これにより、空調管理者等は、末端通信装置を容易に特定し、当該末端通信装置に対して終端抵抗を設定させることができる。
【0087】
以上、各実施形態について説明してきたが、上述した各実施形態においては、説明を簡単にするため、パルス信号の信号波形変化させる要因としては信号反射のみを対象とした。しかしながら、実際には、通信線30の長さ及び介在する通信装置20の台数等に応じて信号波形が変化する。例えば、通信線30の長さの長さが長くなるほど、抵抗成分によってパルス信号の振幅が減衰したり、容量成分等によって勾配が変化したりすることがある。
【0088】
しかしながら、いずれにしても、通信線30の長さの長さが長くなるほど(すなわち、通信装置20の位置が通信装置10からより遠方であるほど)、パルス幅が狭くなるようにパルス信号の波形が変化する。これにより、上述した各実施形態における末端通信装置の検出精度はより高くなる。
【0089】
なお、上述した各実施形態においては、用いられる信号が、0と1の値からなるパルス信号であるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、HBS規格(ホームバスシステム:EIAJ(日本電子機械工業界)規格、ET-2101)に準拠した通信等における信号の場合であっても、上述したような0と1の値からなるパルス信号に変換した上で、上述した各実施形態における処理を実行すればよい。
【0090】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、複数の通信装置20からそれぞれ所定のパルス幅で送信された信号を受信する受信部と、前記受信部によって受信された前記信号の前記パルス幅をそれぞれ測定する測定部と、測定された複数のパルス幅に基づいて通信線30の末端近くに位置する通信装置を検出する検出部と、を持つことにより、通信線30の末端の通信装置20を、人手を介さずに自動的に検出することができる。これにより、通信線30の末端の通信装置20に対して終端抵抗を設定することが可能になるため、通信装置10と各通信装置20との通信をより高速に行うことが可能になる。
【0091】
上述した実施形態における通信装置10の一部又は全部を、コンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
本実施形態においては、通常の通信を行う通信装置20と末端の通信装置20に対して終端抵抗を設定する検出装置とを兼用させることで、通信用の回路部品や通信の制御処理を簡略化させたが、この2つの装置を分断し、末端の通信装置20を検出し、その通信装置20に対して終端抵抗を設定させるだけの機能を備えた検出装置を別個に設けてもよい。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0093】
1 室外機
2 室内機
10 通信装置(検出装置)
11 終端抵抗
12 信号送受信回路
20 通信装置
21 終端抵抗設定部
22 信号送受信回路
30 通信線
100 空調システム
120 制御部
121 命令部
121a パルス信号出力命令部
121b 終端抵抗設定命令部
121c 通信速度切替命令部
122 送信部
123 受信部
124 測定部
125 記憶部
126 検出部
127 通信速度切替部
200 空調システム