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特許7292907カプセルトナーの製造方法及び粉体処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】カプセルトナーの製造方法及び粉体処理装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20230612BHJP
   G03G 9/093 20060101ALI20230612BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20230612BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
G03G9/08 381
G03G9/093
G03G9/087 325
B01J2/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019046074
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020148895
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 高志
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-000976(JP,A)
【文献】特開2014-219598(JP,A)
【文献】特開2016-129868(JP,A)
【文献】特開2017-021090(JP,A)
【文献】特開2018-045094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
B01J 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー母粒子の表面を樹脂微粒子で被覆したカプセルトナーの製造方法であって、
気体雰囲気下で液相エマルション樹脂微粒子とトナー母粒子との湿潤複合粒子を撹拌し、前記気体中に分散浮遊している前記湿潤複合粒子の温度を調節し、前記気体中に分散浮遊している前記湿潤複合粒子が流れるための流路内で相対湿度が30%以下の気体を導入しつつ排出させながら、前記湿潤複合粒子の温度を調節した調節温度より高い機内温度で流動させることによって、前記トナー母粒子の表面に前記液相エマルション樹脂微粒子を固定化した樹脂微粒子固定化トナーを生成し、膜化する工程を含み、
前記液相エマルション樹脂微粒子が含む水分率が、前記トナー母粒子と合計して2重量%以上かつ20重量%以下であり、
前記樹脂微粒子固定化トナーを固定化する固定化処理終了時の排気蒸気湿度を、相対湿度において導入する前記気体の5%以上かつ49%以下に制御することを特徴とするカプセルトナーの製造方法。
【請求項2】
前記液相エマルション樹脂微粒子が含むコート部数が、前記トナー母粒子に対して3重量%以上かつ7.5重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のカプセルトナーの製造方法。
【請求項3】
気体雰囲気下で液相エマルション樹脂微粒子とトナー母粒子との湿潤複合粒子を撹拌するための撹拌手段と、前記気体中に分散浮遊している前記湿潤複合粒子の温度を調節するための温度調節手段とを備えた撹拌装置を備え、
前記撹拌装置の前記気体中に分散浮遊している前記湿潤複合粒子が流れるための流路内で相対湿度が30%以下の気体を導入しつつ排出させながら、前記温度調節手段にて前記湿潤複合粒子の温度を調節した調節温度より高い機内温度で前記撹拌手段にて流動させることによって、前記トナー母粒子の表面に前記液相エマルション樹脂微粒子を固定化した樹脂微粒子固定化トナーを生成し、膜化し、
前記液相エマルション樹脂微粒子が含む水分率が、前記トナー母粒子と合計して2重量%以上かつ20重量%以下であり、
前記樹脂微粒子固定化トナーを固定化する固定化処理終了時の排気蒸気湿度を、相対湿度において導入する前記気体の5%以上かつ49%以下に制御することを特徴とする粉体処理装置。
【請求項4】
前記撹拌手段における撹拌部以外の温度が、前記温度調節手段による設定温度よりも2℃以上高くかつ前記機内温度以下であることを特徴とする請求項3に記載の粉体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー母粒子の表面を樹脂微粒子で被覆したカプセルトナーの製造方法並びに粉体処理装置及びカプセルトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置においては、軟化温度の低い結着樹脂を含むトナーを用い、低温定着を行う方法がある。低温定着を行うことで、定着装置に供給する電力を抑えることができる。しかしながら、軟化温度の低い結着樹脂を含むトナーは、熱により融着し易く、耐ブロッキング性が低下する。
【0003】
軟化温度の低い結着樹脂を含むトナー母粒子の表面に対して、トナー母粒子よりも軟化温度が高く耐熱性の高い樹脂微粒子で被覆して、カプセルトナーを製造することで、トナーの低温定着性を損なわずに、耐ブロッキング性を向上させる方法がある。
【0004】
このように樹脂微粒子をトナー母粒子の表面で被膜してなるカプセルトナーの製造方法としては、例えば、水系媒体中でトナー母粒子の表面に樹脂微粒子を付着させて加熱する方法、トナー母粒子の表面に樹脂微粒子を付着させて機械的衝撃力を与える方法、トナー母粒子の表面に樹脂微粒子を付着させて300℃以上の高温気流中で加熱する方法、トナー母粒子を撹拌しながら樹脂微粒子エマルションを噴霧する方法等が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、軟化温度の低いトナー母粒子の表面に軟化温度の高い樹脂微粒子を被覆した後、機械的衝撃力を付与することにより軟化温度の高い樹脂微粒子からなる被覆層を形成(樹脂微粒子を固着被覆)し、低温定着性と耐ブロッキング性とを向上させたトナーが開示されている。また、特許文献2では、樹脂微粒子を機械的衝撃力により芯粒子の表面に固定して、定着方法の改良と共に低消費電力で非オフセット性を向上させたトナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第2838410号公報
【文献】特開平2-163754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のカプセルトナー(樹脂微粒子被覆トナー)の製造方法では、長すぎる加熱時間や衝撃による過度の発熱によって、トナーの球形化が著しく、クリーニング性を低下させる問題があった。これに対し、従来のカプセルトナーの製造方法において、加熱時間を短くしたり、機械的衝撃力を小さくしたりすると、樹脂微粒子の融着(膜化)が不十分になる。そうすると、トナー母粒子から膜化が不十分な樹脂断片の樹脂微粒子が剥離又は固定化されていない樹脂微粒子が遊離して、トナー母粒子から離脱した樹脂微粒子が現像ローラーの表面に付着(融着)する問題があった。このため、新規なカプセルトナーの製造方法や、該製造方法に利用できる新規な粉体処理装置が望まれている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、トナー母粒子の表面を樹脂微粒子で被覆したカプセルトナーの製造方法であって、カプセルトナーの球形化を制御することができ、これによりクリーニング性を向上させることができる上、トナー母粒子からの樹脂微粒子の離脱を少なくすることができるカプセルトナーの製造方法並びに粉体処理装置及びカプセルトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために鋭意検討したところ、湿潤複合粒子を用い固定化処理中の排気蒸気湿度を制御することにより、トナー母粒子からの樹脂微粒子離脱を少なくすることができ、また凝集物などの発生も抑えることができ、機内融着も少ない状態で、円形度を制御したカプセルトナーを得ることができること見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明は、係る知見に基づくものであり、次のカプセルトナーの製造方法並びに粉体処理装置及びカプセルトナーを提供する。
【0011】
(1)カプセルトナーの製造方法
本発明に係るカプセルトナーの製造方法は、トナー母粒子の表面を樹脂微粒子で被覆したカプセルトナーの製造方法であって、気体雰囲気下で液相エマルション樹脂微粒子とトナー母粒子との湿潤複合粒子を撹拌し、前記気体中に分散浮遊している前記湿潤複合粒子の温度を調節し、前記気体中に分散浮遊している前記湿潤複合粒子が流れるための流路内で気体を導入しつつ排出させながら、前記湿潤複合粒子の温度を調節した調節温度より高い機内温度で流動させることによって、前記トナー母粒子の表面に前記液相エマルション樹脂微粒子を固定化した樹脂微粒子固定化トナーを生成し、膜化する工程を含み、前記液相エマルション樹脂微粒子が含む水分率が、前記トナー母粒子と合計して2重量%以上かつ20重量%以下であることを特徴とする。
【0012】
(2)粉体処理装置
本発明に係る粉体処理装置は、気体雰囲気下で液相エマルション樹脂微粒子とトナー母粒子との湿潤複合粒子を撹拌するための撹拌手段と、前記気体中に分散浮遊している前記湿潤複合粒子の温度を調節するための温度調節手段とを備えた撹拌装置を備え、前記撹拌装置の前記気体中に分散浮遊している前記湿潤複合粒子が流れるための流路内で気体を導入しつつ排出させながら、前記温度調節手段にて前記湿潤複合粒子の温度を調節した調節温度より高い機内温度で前記撹拌手段にて流動させるによって、前記トナー母粒子の表面に前記液相エマルション樹脂微粒子を固定化した樹脂微粒子固定化トナーを生成し、膜化し、前記液相エマルション樹脂微粒子が含む水分率が、前記トナー母粒子と合計して2重量%以上かつ20重量%以下であることを特徴とする。
【0013】
(3)カプセルトナー
本発明に係るカプセルトナーは、前記本発明に係るカプセルトナーの製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、カプセルトナーの球形化を制御することができ、これによりクリーニング性を向上させることができる上、トナー母粒子からの樹脂微粒子の離脱を少なくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】カプセルトナーの製造方法を実施する第1の実施態様に係る粉体処理装置の概略構成を示す正面図である。
図2図1に示す粉体処理装置のA-A’線に沿った概略断面図である。
図3】第2の実施態様に係る粉体処理装置に用いられる回収部の概略図である。
図4】第3の実施態様に係る粉体処理装置に用いられる回収部の概略図である。
図5】本実施の形態に係るカプセルトナーの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。従って、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0017】
<粉体処理装置>
[第1の実施態様]
図1は、カプセルトナーの製造方法を実施する第1の実施態様に係る粉体処理装置200の概略構成を示す正面図である。図2は、図1に示す粉体処理装置200のA-A’線に沿った概略断面図である。
【0018】
図1及び図2に示す粉体処理装置200は、トナー母粒子の表面を樹脂微粒子で被覆したカプセルトナーを製造するための粉体処理装置である。粉体処理装置200は、撹拌手段204と、温度調節手段203(温度調整用ジャケット203a)とを備えた撹拌装置201を備えている。
【0019】
撹拌手段204は、気体雰囲気下で液相エマルション樹脂微粒子とトナー母粒子との湿潤複合粒子を撹拌するためのものである。温度調節手段203は、気体中に分散浮遊している湿潤複合粒子の温度を調節するためのものである。撹拌手段204の流路202は、気体中に分散浮遊している湿潤複合粒子が流れるためのものである。
【0020】
粉体処理装置200は、撹拌装置201の流路202内で気体ARを導入しつつ排出させながら、温度調節手段203にて湿潤複合粒子の温度を調節した調節温度より高い機内温度で流動させる。こうすることで、トナー母粒子の表面に液相エマルション樹脂微粒子を固定化した樹脂微粒子固定化トナーを生成し、膜化する。これによりカプセルトナーを製造することができる。
【0021】
そして、粉体処理装置200は、樹脂微粒子固定化トナーを固定化する固定化処理終了時の排気蒸気湿度を、相対湿度において導入する気体ARの5%以上かつ49%以下に制御する。この例では、粉体処理装置200は、撹拌手段204(回転撹拌手段)と温度調節手段203とを備えた撹拌装置201(回転撹拌装置)の流路202内で、流動させることによって、トナー母粒子の表面に樹脂微粒子を固定化し、膜化することによりカプセルトナーを得るにあたり、液相エマルション樹脂微粒子が含む水分率が、トナー母粒子と合計して2重量%以上かつ20重量%以下である。
【0022】
このように、粉体処理装置200によれば、液相エマルション樹脂微粒子が含む水分率が、トナー母粒子と合計して2重量%以上かつ20重量%以下であるので、トナー母粒子からの樹脂微粒子離脱を少なくすることができる。また、凝集物などの発生も抑えることができ、機内融着も少ない状態で、円形度を制御したカプセルトナーを得ることができる。これによりクリーニング性を向上させることができる。
【0023】
また、粉体処理装置200では、樹脂微粒子固定化トナーを固定化する固定化処理終了時の排気蒸気湿度を、相対湿度において導入する気体ARの5%以上かつ49%以下に制御する。こうすることで、カプセルトナーの凝集物を低減させることができる。
【0024】
また、粉体処理装置200では、液相エマルション樹脂微粒子が含むコート部数が、トナー母粒子に対して3重量%以上かつ7.5重量%以下である。このように、コート部数を変更することで。水分率を変更した際も、排気蒸気湿度を制御範囲内に維持することができ、良好な品質及び円形度の粒子を製造することが可能となる。
【0025】
また、粉体処理装置200において、撹拌手段204と、温度調節手段203とを備えた撹拌装置201の流路202内で気体ARを導入しつつ排出させながら、温度調節手段203にて湿潤複合粒子の温度を調節した調節温度より高い機内温度で流動させるができる。こうすることで、撹拌手段204によって、トナー母粒子の表面に樹脂微粒子を確実に固定化させることができる。これにより、樹脂微粒子の離脱を抑えながら、カプセルトナーの球形化を実現させることが可能である。また、固定化された樹脂微粒子により形成される被覆層をトナー母粒子の表面に強固に付着させることができる。
【0026】
本実施の形態では、撹拌手段204における撹拌部208以外の温度が、温度調節手段203による設定温度よりも2℃以上高くかつ機内温度以下である。こうすることで、トナー母粒子の表面に樹脂微粒子をさらに確実に固定化させることができる。
【0027】
(撹拌手段)
流路202は、気体中に分散浮遊している湿潤複合粒子が循環できるように循環手段を構成している。すなわち、粉体処理装置200は、気体中に分散浮遊している湿潤複合粒子が流路202内を循環できるように構成されている。このような流路202を設けることによって、湿潤複合粒子の表面を確実に溶融させることができる。流路202は、湿潤複合粒子を撹拌する撹拌部208と、気体中に分散浮遊している湿潤複合粒子の流体が流過する流体流過部209とから構成される。撹拌部208は、内部空間を有する円筒形状の容器状部材であり、回転撹拌室とも称される。また、撹拌部208には、開口部210,211が形成される。開口部210は、回転軸部材218の軸線方向に位置する撹拌部208の一方側の面(前蓋部208a)における略中央部において、撹拌部208の面(前蓋部208a)を含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される。開口部211は、回転軸部材218の軸線方向に沿った側面(外周部208b)において、撹拌部208の側面(外周部208b)を含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される。流体流過部209は、撹拌部208を介して湿潤複合粒子が循環できる循環管203bを構成し、一端が開口部210と接続され、他端が開口部211と接続される。これによって撹拌部208の内部空間と流体流過部209の内部空間とが連通され、流路202が形成される。この流路202を、気体中に分散浮遊している湿潤複合粒子が流過する。流路202は、湿潤複合粒子が流動する方向である流体流動方向214が一定の方向となるように設けられる。撹拌部208の内部と流体流過部209の内部とから流路内部250が形成される。
【0028】
粉体処理装置200において、湿潤複合粒子は特に限定されるものではないが、粉体処理装置200をカプセルトナーの製造方法に利用する観点から、湿潤複合粒子として、後述するようなトナー母粒子や液相エマルション樹脂微粒子、さらにはこれらにより形成される湿潤複合粒子等を好適に挙げることができる。こうすることで、樹脂微粒子のトナー母粒子からの剥離を抑えることができ、粒度分布及び膜均一性に優れたカプセルトナーを得ることが可能である。
【0029】
また、湿潤複合粒子を分散浮遊させる気体ARとしては、特に限定されないが、空気、窒素等を挙げることができる。
【0030】
湿潤複合粒子を分散浮遊させる気体ARは、通常、流路202内に存在する気体及び軸封などを守るための供給空気を利用すればよいが、さらに追加の気体供給手段(図示せず)を流路202に接続することで、粉体処理装置200の作動中に供給することも可能である。
【0031】
粉体処理装置200において、湿潤複合粒子を分散浮遊させる気体ARの温度は、湿潤複合粒子や気体AR等が流動、循環している流体流過部209を構成する循環管203bの管内で測定されることが好ましく、例えば、粉体処理装置200においては、開口部210付近を流れる気体ARの温度を、湿潤複合粒子が分散浮遊している気体ARの温度とすることができる。
【0032】
本体内からの気体ARの排出においては、供給された気体ARに相当する分の気体ARを複数個所から排出させることも可能である。しかし、各場所において処理中の湿潤複合粒子が同時に排出されることから、特定の1箇所から気体ARを排出することが好ましく、さらには処理部以外への湿潤複合粒子の侵入が抑えられるよう気体ARは撹拌部208の中央付近(例えば、撹拌部208における撹拌羽根220の裏側の隙間208d)から排出することが好ましい。排出された気体ARには機内で処理された湿潤複合粒子の一部及び機内発生気体(蒸気)が混じることから気体ARの排出口にはバグフィルターが設けられていることが好ましい。
【0033】
本実施の形態では管理のし易さの観点から、一か所の排出部において気体ARの排出の状態を管理している。但し、それに限定されるものではなく、各装置構成において必要な手段を取ることができる。
【0034】
供給される気体ARは、通常は圧縮機(コンプレッサ)により圧縮された空気が用いられ、装置構成に応じて乾燥機(ドライア)を通過することで、湿度がある程度管理された状態となっており、一般に大気より低湿度である。
【0035】
粉体処理装置200は、蒸気を用いることから、供給される気体ARは一定量が安定的に供給されることが望ましい。湿潤複合粒子の処理では、蒸気が発生することから、供給される気体ARの湿度に対して余分に発生する蒸気が混じり、排出される気体ARの湿度は一般的には上昇する。
【0036】
温度調節手段203の温度(ジャケット温度)を低く抑えた場合は、露点に応じて排出される気体ARの湿度が減少する。
【0037】
本実施の形態においては、内部に処理する湿潤複合粒子がない状態で空転させた際の排気蒸気の(20℃における)相対湿度から、排出された後の気体ARの相対湿度を引いた値を排気蒸気湿度として定義する。
【0038】
そして、粉体処理装置200は、樹脂微粒子固定化トナーを固定化する固定化処理の終了時に排気蒸気湿度が相対湿度において導入する気体ARの5%以上かつ49%以下になるよう制御する。
【0039】
なお、大型の測定系においては機内の蒸気が排出されるまでにタイムラグが存在し、機内状態と測定系での状態とに乖離が生じる場合が存在する。この場合、予め定めた所定量の気体ARを供給した際に導入した気体ARと排出した気体ARとの時間差を測定し、その時間分を補正(延長)することが望ましい。例えば、乾燥した状態で導入した気体ARに、あるタイミングで湿気を含ませ、それが排出した気体ARに観測される時間差をもって補正を行うことができる。
【0040】
粉体処理装置200の作動中、気体中に分散浮遊している湿潤複合粒子は、流路202内を流体流動方向214に流れるが、例えば、撹拌手段204による回転撹拌を利用して湿潤複合粒子を流すことができる。
【0041】
撹拌手段204は、気体雰囲気下で湿潤複合粒子を撹拌するための手段であるが、上述したように、気体中に分散浮遊した状態の湿潤複合粒子を流路202内に流動させる場合にも利用できる。また、トナー母粒子と液相エマルション樹脂微粒子とを気体雰囲気下で撹拌することで、トナー母粒子の表面に樹脂微粒子を固着させる。これにより、トナー母粒子の表面に樹脂微粒子を固着させた樹脂微粒子固定化トナー(以下、カプセル粒子ということがある。)を形成させることができる。
【0042】
撹拌手段204は、回転軸部材218と、円盤状の回転盤219と、複数の撹拌羽根220とを備える。回転軸部材218は、回転軸線回りに回転する。回転軸部材218は、貫通孔221に挿通されるように設けられている。貫通孔221は、撹拌部208の面(前蓋部208a)に対向する後部208cにおいて後部208cを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される。回転軸部材218は、図示しないモータによって軸線回りに回転する円柱棒状部材である。回転盤219は、回転中心が回転軸部材218の回転軸線に一致又は略一致するように回転軸部材218に放射状に支持されている。回転盤219は、回転軸部材218の回転に伴って回転する円盤状部材である。複数の撹拌羽根220は、回転盤219の周縁部において支持され、回転盤219の回転に伴って回転する。
【0043】
複数の撹拌羽根220が設けられた回転盤219は、撹拌部208に収納されている。撹拌部208は、この例では、内部空間を有する円筒形状の容器状部材(所謂ステータ)とされている。複数の撹拌羽根220及び回転盤219は、撹拌部208の内壁との間隔が制御されている。本実施の形態では、機械的衝撃力を与える手法によりカプセルトナーを製造する方法では、撹拌部208の内壁との間隔を狭めて撹拌羽根220により湿潤複合粒子に機械的衝撃力を付与する。こうすることで、トナー母粒子の表面の樹脂微粒子の変形及び延展することで表面の膜化を起こさせることができる。
【0044】
撹拌手段204は、最外周における周速度を100m/sec程度の回転可能であるが、最外周における周速度は30m/sec以上かつ80m/sec以下程度であることが好ましい。最外周とは、回転軸部材218の径方向において、回転軸部材218からの距離が最も長い撹拌手段204の部分である。なお、貫通孔221は、流路内部250と流路外部とを繋いでおり、貫通孔221を介して、湿潤複合粒子を分散浮遊させる気体や機内発生した気体成分が、流路内部250から流路外部に排出される。
【0045】
(温度調節手段)
粉体処理装置200において、温度調節手段203は、気体中に分散浮遊している湿潤複合粒子に温度を伝えさせるための手段である。湿潤複合粒子に加熱成分を接触させることで、湿潤複合粒子を球形化させずに湿潤複合粒子の表面のみを溶融させることができる。ここで、湿潤複合粒子が、トナー母粒子及び樹脂微粒子を含み湿潤複合化されていることにより、撹拌手段204によってトナー母粒子の表面に付着している樹脂微粒子を固定化させることができ、樹脂微粒子の離脱を抑えながら、カプセルトナーの球形化が可能である。また、固定化された樹脂微粒子により形成される被覆層をトナー母粒子の表面に強固に付着させることができる。
【0046】
温度調節手段203は、処理中の湿潤複合粒子及び分散浮遊に使用される機中気体の温度を調節することができる。温度調節手段203としては、温度調整用ジャケット等の温度調整部を挙げることができる。温度調整用ジャケット等の温度調整部は、流路202に接続することによって流路内部250を流れる湿潤複合粒子に対して加熱成分を接触させることができる。粉体処理装置200は、温度調節手段203として温度調整用ジャケット203aを備えている。但し、これに限定されるものではなく、例えば、撹拌部208にも温度調節手段203を備えていてもよい。その際の温度調節は、一括して同じ温調手段(同一チラーからの温調流体による制御)で各箇所の温度調節を行ってもよいし、各箇所個別に別温度に調節を行ってもよい。
【0047】
(温度調整用ジャケット)
温度調整用ジャケット203aは、加熱手段及び冷却手段として利用できる。例えば、ジャケット内部の空間に加温媒を通せば、加熱手段として利用することができ、ジャケット内部の空間に冷却媒を通せば、冷却手段として利用することができる。温度調整用ジャケット203aは、流路202の外側の少なくとも一部に設けられ、ジャケット内部の空間に冷却媒又は加温媒を通して流路内部250の温度を調整する。温度調整用ジャケット203aは、流路202の外側全域に設けられることが好ましい。
【0048】
また、温度調整用ジャケット203aに複数のジャケット流路を設け、各ジャケット流路を個別に温度調整できるよう、別々の温度調節媒を通せる構成とすることができる。こうすることで、各ジャケット流路において温度差を設けることが可能となる。これにより、機内発生気体(蒸気)の制御を容易に行うことができることからより好ましい。
【0049】
(投入部及び回収部)
粉体処理装置200は、流路202に湿潤複合粒子を供給するための投入部206と、流路からカプセル粒子を回収するための回収部207とを備えることが好ましい。この例では、流路202の流体流過部209に、投入部206と、回収部207とが接続される。投入部206は、湿潤複合粒子を供給するホッパ206aと、ホッパ206aと流路202とを連通する供給管212と、供給管212に設けられる電磁弁213とを備えている。ホッパ206aから供給される湿潤複合粒子は、電磁弁213によって供給管212内の流路が開放されている状態において、供給管212を介して流路202に供給される。流路202に供給される湿潤複合粒子は、撹拌手段204による撹拌によって、一定の流体流動方向214に流過する。また、電磁弁213によって供給管212内の流路が閉鎖されている状態においては、湿潤複合粒子が流路202に供給されない。
【0050】
回収部207は、回収タンク215と、回収タンク215と流路202とを連通する回収管216と、回収管216に設けられる電磁弁217とを備えている。電磁弁217によって回収管216内の流路が開放されている状態において、流路202を流過するカプセル粒子は、回収管216を介して回収タンク215に回収される。また電磁弁217によって回収管216内の流路が閉鎖されている状態において、流路202を流過するカプセル粒子は回収されない。
【0051】
[第2の実施態様及び第3の実施態様]
図3及び図4は、それぞれ、第2の実施態様及び第3の実施態様に係る粉体処理装置に用いられる回収部230,240の概略図である。
【0052】
第2の実施態様の粉体処理装置及び第3の実施態様の処理装置は、第1の実施態様の粉体処理装置200の回収部207に代えて、それぞれ、他の回収部230及びさらに他の回収部240を用いることができる。
【0053】
回収部230及び回収部240は、第2の実施態様の粉体処理装置の本体及び第3の実施態様の粉体処理装置の本体とは直接接続されていても構わない。また、第2の実施態様の粉体処理装置の本体及び第3の実施態様の粉体処理装置の本体からカプセル粒子を取り出した後に別途使用しても構わない。
【0054】
図3に示す回収部230は、排出路231及び回収路232を介して粉体流路の粉体流過部に接続されるサイクロン233を備える。サイクロン233は、気体が渦を巻くように流れる装置であり、図3に示すように、上部に排気を行うための排気口233aと、下部にカプセル粒子を回収するための排出口233bとを備える。
【0055】
図4に示す回収部240は、排出路241及び回収路242を介して粉体流路の粉体流過部に接続されるバグフィルター243を備える。排出路241には、排風機244が接続されている。バグフィルター243は、カプセル粒子を回収しかつ気体を排出することが可能なフィルターを備えており、上部に排気を行うための排気口243aと、下部にカプセル粒子を回収するための排出口243bとを備える。
【0056】
図3及び図4に示す回収部230,240は、連続して用いることも可能である。例えば、図3に示す回収部230の後に図4に示す回収部240を用いることにより、効率的にカプセル粒子を捕集することが可能である。
【0057】
また、外部から外気を取り込むことで風速と流量とを確保し、回収したカプセル粒子の流動性を高めることができる。これにより、より効果的にカプセル粒子の分離捕集を行うこともできる。その際、カプセル粒子中に少量保持されている水分を排出気体に取り込ませて乾燥させることも可能である。
【0058】
<カプセルトナーの製造方法>
次に、図5を参照しながら、本実施の形態に係るカプセルトナーの製造方法を詳細に説明する。
【0059】
本実施の形態に係るカプセルトナーの製造方法は、円形度が0.96以下のトナー母粒子と、体積平均粒径が0.1μm以上かつ0.5μm以下の樹脂微粒子とを液体の存在下で複合し湿潤複合粒子を形成する湿潤複合粒子形成工程と、トナー母粒子の表面の樹脂微粒子を固定化及び膜化するカプセル化工程とを含む。
【0060】
本実施の形態に係るカプセルトナーの製造方法で製造されたカプセルトナーでは、トナー母粒子の表面に樹脂微粒子が水を介して付着されてなる湿潤複合粒子を用いる。こうすることで、水分を介した付着力を利用することができ、トナー母粒子の表面に機械的衝撃力及びそれを介した熱エネルギーにより樹脂微粒子の離脱を抑制した状態で固定化することが可能である。その後、樹脂微粒子固定化トナーの膜化により形成される被覆層を効果的に製造することができる。
【0061】
このため、幅広い円形度のトナー母粒子においても、体積平均粒径が0.1μm以上かつ0.5μm以下の樹脂微粒子を用いることで、後述するような本実施の形態に係るカプセルトナーを製造することができる。
【0062】
本実施の形態に係るカプセルトナーの製造方法は、上述した第1から第3の実施形態に係る粉体処理装置200を用いることで行われることが好ましい。この場合、湿潤複合粒子形成工程は、撹拌手段204を利用することにより行うことができる。
【0063】
本実施の形態によれば、樹脂微粒子の離脱の少ない状態で機械的衝撃力も高回転数まで利用可能であり、幅広い円形度のカプセルトナーを作製することが可能となる。また、湿潤複合粒子を用いるので、樹脂微粒子の離脱が少ない状態で機械的衝撃力を与えることが可能であり、円形度が高くなり過ぎない状態でカプセルトナーを製造することが可能である。しかも、温度調節を行うことで、強い機械的衝撃力利用した際も凝集物や機内融着を抑制することができる。これにより、遊離粒子のより少なく凝集及び機内融着も少ない状態でカプセルトナーを得ることができる。
【0064】
図5は、本実施の形態に係るカプセルトナーの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0065】
本実施の形態に係るカプセルトナーの製造方法は、トナー母粒子を作製するトナー母粒子作製工程S1と、樹脂微粒子を調製する樹脂微粒子調製工程S2と、液相エマルション樹脂微粒子とトナー母粒子とを複合する湿潤微粒子複合工程S3と、トナー母粒子に樹脂微粒子を被覆して膜化する(機械式)カプセル化工程S4と、カプセル粒子を回収する回収工程S5とを含む。なお、カプセルトナーの製造方法は、カプセル化工程S4と回収工程S5カプセル粒子との間においてカプセル粒子を乾燥させる乾燥工程S6を含んでいてもよい。
【0066】
(1)トナー母粒子作製工程
トナー母粒子作製工程S1では、カプセルトナーのコアとなり、表面が樹脂微粒子によって被覆されるトナー母粒子を作製する。トナー母粒子は、結着樹脂及び着色剤を含む粒子であり、その作製方法は特に限定されることなく、公知の方法によって得ることができる。トナー母粒子の作製方法としては、例えば、粉砕法等の乾式法、懸濁重合法、乳化凝集法、分散重合法、溶解懸濁法、溶融乳化法等の湿式法を挙げることができる。以下、粉砕法によってトナー母粒子を作製する方法を説明する。
【0067】
(粉砕法によるトナー母粒子作製方法)
粉砕法を用いるトナー母粒子の作製方法では、結着樹脂、着色剤及びその他の添加剤を含むトナー母粒子原料組成物を混合機で乾式混合した後、混練機によって溶融混練する。溶融混練によって得られる混練物を冷却固化し、固化物を粉砕機によって粉砕する。その後、必要に応じて分級等の粒度調整を行い、トナー母粒子を得る。
【0068】
混合機としては公知のものを使用でき、例えば、ヘンシェルミキサ(商品名、日本コークス工業株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)等のヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0069】
混練機としても公知のものを使用でき、例えば、二軸押出し機、三本ロール、ラボブラストミル等の一般的な混練機を使用できる。さらに具体的には、例えば、TEM-100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM-65/87、PCM-30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)等の1軸又は2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、日本コークス工業株式会社製)等のオープンロール方式の混練機を挙げることができる。
【0070】
混練物は、冷却固化した後、ハンマーミル又はカッティングミル等によって、重量平均粒径100μm以上かつ5mm以下程度の粗粉砕物に粗粉砕され、得られた粗粉砕物は、例えば、重量平均粒径15μm以下にまでさらに微粉砕される。粗粉砕物の微粉砕には、例えば、超音速ジェット気流を利用するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に粗粉砕物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機等を用いることができる。
【0071】
分級には、遠心力による分級及び風力による分級によって過粉砕トナー母粒子を除去できる公知の分級機を使用することができ、例えば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)等を使用することができる。
【0072】
(トナー母粒子原料)
前述のように、トナー母粒子は、結着樹脂と着色剤とを含む。結着樹脂としては、特に限定されるものではなく、黒トナー又はカラートナー用の公知の結着樹脂を使用することができ、例えば、ポリスチレン、スチレンモノマーと(メタ)アクリル酸系モノマー及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを共重合したスチレン-アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応を行って得られる樹脂を用いてもよい。結着樹脂は1種を単独で使用でき又は2種以上を併用できる。
【0073】
スチレン系樹脂を構成するモノマーは、スチレンモノマーを必須モノマーとし、必要により(メタ)アクリルモノマー及び/又はカルボキシル基含有ビニルモノマーを含有することが好ましい。ここで、スチレン系樹脂とは、スチレンモノマーの単独重合体又はスチレンモノマーと他のモノマーの共重合体を意味する。また、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。上記スチレンモノマーとしては、スチレン、アルキル基の炭素数が1~3のアルキルスチレン(例えば、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン)等を挙げることができ、2種以上を併用してもよい。好ましくはスチレンである。(メタ)アクリルモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1~18のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数1~18のヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1~18のアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル基含有ビニルモノマー等を挙げることができる。カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、モノカルボン酸〔炭素数3~15、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸〕、ジカルボン酸〔炭素数4~15、例えば(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸〕、ジカルボン酸モノエステル〔上記ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1~18)エステル、例えばマレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル〕等を挙げることができる。これら(メタ)アクリルモノマー及びカルボキシル基含有ビニルモノマーの中でも、炭素数が1~18のアルキル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、ジカルボン酸モノエステル及びそれらの2種以上の混合物が好ましい。
【0074】
ポリエステル樹脂を構成するモノマーとしては公知のものを使用でき、例えば多塩基酸と多価アルコールとの重縮合物等を挙げることができる。
【0075】
多塩基酸としては、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリト酸、ピロメリト酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、琥珀酸、アルケニル無水琥珀酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸類、これら多塩基酸のメチルエステル化物等を挙げることができる。多塩基酸は1種を単独で使用でき又は2種以上を併用できる。
【0076】
多価アルコールとしても、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等の脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等の芳香族系ジオール類等を挙げることができる。多価アルコールは1種を単独で使用でき又は2種以上を併用できる。
【0077】
多塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応は常法に従って実施でき、例えば、有機溶媒の存在下又は非存在下及び重縮合触媒の存在下に、多塩基酸と多価アルコールとを接触させることによって行われ、生成するポリエステルの酸価、軟化温度等が所望の値になったところで終了する。これによって、ポリエステルが得られる。多塩基酸の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用いると、脱メタノール重縮合反応が行われる。この重縮合反応において、多塩基酸と多価アルコールとの配合比、反応率等を適宜変更することによって、例えば、ポリエステルの末端のカルボキシル基含有量を調整でき、延いては得られるポリエステルの特性を変性できる。また、多塩基酸として無水トリメリト酸を用いても、ポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を容易に導入することができ、これによって、変性ポリエステルが得られる。ポリエステルの主鎖及び/又は側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基等の親水性基を結合させ、水中での自己分散性ポリエステルも使用できる。またポリエステルとアクリル樹脂とをグラフト化して用いてもよい。
【0078】
結着樹脂は、ガラス転移点が30℃以上かつ80℃以下であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移点が30℃未満であると、画像形成装置内部においてトナーが熱凝集するブロッキングを発生し易くなり、保存安定性が低下するおそれがある。結着樹脂のガラス転移点が80℃を超えると、記録媒体へのトナーの定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。
【0079】
また、結着樹脂は、軟化温度が80℃以上かつ150℃以下であることが好ましい。更に、結着樹脂は、酸価が0KOHmg/g以上かつ30KOHmg/g以下であることが好ましい。
【0080】
着色剤としては、電子写真分野で常用される有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料等を使用できる。着色剤の使用量は特に制限されないが、好ましくは結着樹脂100質量部に対して5質量部以上かつ10質量部以下である。
【0081】
トナー母粒子には、結着樹脂及び着色剤の他に電荷制御剤が含まれてもよい。電荷制御剤としてはこの分野で常用される正電荷制御用及び負電荷制御用の電荷制御剤を使用できる。電荷制御剤の使用量は特に制限されないが、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上かつ5質量部以下である。
【0082】
また、トナー母粒子には、結着樹脂及び着色剤の他に離型剤が含まれてもよい。離型剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、例えば、パラフィンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体等の石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等)及びその誘導体、低分子量ポリプロピリンワックス及びその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックス等)及びその誘導体等の炭化水素系合成ワックス、カルナバワックス等を挙げることができる。離型剤の使用量は特に制限されないが、好ましくは結着樹脂100質量部に対して1質量部以上かつ10質量部以下である。
【0083】
トナー母粒子作製工程S1において得られるトナー母粒子は、体積平均粒径が4μm以上かつ8μm以下であることが好ましい。トナー母粒子の体積平均粒径が4μm以上かつ8μm以下であると、高精細な画像を長期にわたって安定して形成することができる。
【0084】
また、トナー母粒子作製工程S1において得られるトナー母粒子は、通常、円形度が0.96以下であり、0.940以上かつ0.960以下であることが好ましい。
【0085】
なお、本実施の形態において、トナー母粒子の円形度及び後述するカプセルトナーの円形度は、例えばフロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(マルバーン社製)を用いて測定できるが、測定原理が同じであれば特に限定はしない。この装置の測定原理は、分散媒中の粒子をCCDカメラにて静止画像を撮像し、その画像から円形度計算等の計算を行うものである。チャンバーから投入された試料は、フラットシースフローセルに送られてシース液に挟まれて扁平な流れを形成する。セル内を通過する試料にストロボ光を照射しながら静止画像をCCDカメラで撮影する。撮像画像の画像処理により各粒子の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積Sや周囲長L等が計測される。これから円相当径と円形度が計算される。
【0086】
円相当径は、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことで、円形度は、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、円相当径から求めた円の面積をS、粒子投影像の周囲長をLとすると、次式で算出される。
【0087】
円形度=2×(π×S)1/2/L
シース液には、パーティクルシース「PSE-900A」(マルバーン社製)を、分散剤としては、市販の家庭用洗剤5質量%の水分散液を、分散器としては、該装置のオートサンプラー装置を用いて、試料を分散させ、これを上記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントで10000個のトナー母粒子又はカプセルトナーを計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、全粒径範囲として、トナー母粒子又はカプセルトナーの平均円形度を求める。
【0088】
(2)樹脂微粒子調製工程
樹脂微粒子調製工程S2では、トナー母粒子を被覆する層の形成に用いる樹脂微粒子を調製する。樹脂微粒子は、後述する膜化工程S4bにおいて、トナー母粒子の表面で膜化する材料として用いられる。樹脂微粒子をトナー母粒子の表面の膜化材料として用いることによって、例えば保存中にトナー母粒子に含まれる離型剤等の低融点成分の溶融による凝集の発生を防止することができる。
【0089】
樹脂微粒子は、例えば、樹脂原料であるモノマー成分の乳化重合反応によって得ることができ、又は樹脂をホモジナイザー等で乳化分散させて細粒化することによっても得ることができる。
【0090】
樹脂微粒子原料として用いられる樹脂としては、例えば、トナー材料に用いられる樹脂を用いることができ、例えば、ポリスチレン、スチレンモノマーと(メタ)アクリル酸系モノマー及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを共重合したスチレン-アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。樹脂微粒子としては、上記例示した樹脂の中でも、スチレン-アクリル系樹脂又はポリエステル樹脂を含むことが好ましい。スチレン-アクリル系樹脂は、軽量で高い強度を有し、更に透明性も高く、安価で、粒径の揃った材料を得易いなど多くの利点を有する。
【0091】
樹脂微粒子原料として用いられる樹脂としては、トナー母粒子に含まれる結着樹脂と同じ種類の樹脂であってもよいし、違う種類の樹脂であってもよいが、トナーの表面改質を行う観点から、違う種類の樹脂を用いることが好ましい。樹脂微粒子原料として用いられる樹脂として、トナー母粒子に含まれる結着樹脂と違う種類の樹脂を用いる場合、樹脂微粒子原料として用いられる樹脂の軟化温度が、トナー母粒子に含まれる結着樹脂、又は離型剤等のトナー母粒子に含まれる成分の軟化温度よりも高いことが好ましい。これによって、本実施の形態の製造方法で製造されたトナーは、保存中にトナー同士が融着することを防止でき、保存安定性を向上させることができる。また樹脂微粒子原料として用いられる樹脂の軟化温度は、トナーが使用される画像形成装置にもよるが、80℃以上かつ140℃以下であることが好ましい。このような範囲の軟化温度を有する樹脂を用いることによって、保存安定性と定着性とを兼ね備えたトナーが得られる。
【0092】
樹脂微粒子は、体積平均粒径がトナー母粒子の平均粒径よりも充分に小さいことが必要であり、0.1μm以上かつ0.5μm以下であることが好ましい。樹脂微粒子の体積平均粒径が0.1μm以上かつ0.5μm以下であることによって、可塑性に優れ、変形し易くなり、トナー母粒子の表面に均質な被覆層が形成される。樹脂微粒子の粒径は、動的光散乱法で測定した体積平均粒径を表す。
【0093】
樹脂微粒子は、ガラス転移点が50℃以上かつ80℃以下であることが好ましい。また、樹脂微粒子は、軟化温度が80℃以上かつ140℃以下であることが好ましい。
【0094】
(3)湿潤微粒子複合工程
湿潤微粒子複合工程S3では、トナー母粒子を被覆する層の形成に用いる樹脂微粒子を含む樹脂微粒子分散液(特に乳化重合により作成された場合はエマルション粒子分散液又はラテックス)をトナー母粒子の表面に複合化する。
【0095】
樹脂微粒子調製工程において製造に用いた液体に分散した状態をそのまま利用しても構わないし、その分散液を希釈して使用しても構わない。また、樹脂微粒子のみを取り出して別の容器中の水又は分散剤等を含む水溶液に再分散させても構わない。
【0096】
湿潤微粒子複合工程S3では、上記の樹脂微粒子の水分散液を用いてトナー母粒子の表面に複合化するには、計量して容器又は袋内にて混ぜる他、一般的な粒子混合器も利用可能である。
【0097】
湿潤微粒子複合工程S3で用いる混合機としては公知のものを使用でき、例えば、ヘンシェルミキサ(商品名、日本コークス工業株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)等のヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、ハイスピードバキュームドライヤやダイナミックドライヤー(商品名、川崎重工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0098】
湿潤微粒子複合工程S3において、液相と粒子相とが分離しない状態まで混合することにより湿潤微粒子複合化が終了する。
【0099】
その際、トナー母粒子と樹脂微粒子との粒径の比や液の粘度及び樹脂微粒子/トナー母粒子の重量比にもよるが、混合後の水分率は2%以上かつ40%以下が望ましく、より望ましくは25%未満である。水分率が40%を超えると、放置した際にトナー母粒子と樹脂微粒子とを複合化した後においても水分が移動して液溜まりを形成し、そこにトナー母粒子が集まることで粒子凝集体が形成される。ひどい場合には液相にトナー母粒子が分散した状態となる。一方、40%以下とすることで上記の発生を抑制することができ、さらに25%未満とすることで上記の発生をさらに抑制することができ、それだけ、最終のカプセルトナーの凝集物を低減させることが可能である。
【0100】
(3)カプセル化工程
(機械式)カプセル化工程S4は、微粒子固定化工程S4a及び膜化工程S4bからなる。これらは一連の機械的衝撃力により同時に進行することから、工程毎の明確な区分はできない。しかし、微粒子固定化工程S4aに関しては、剥離微粒子の発生が収まった時点により固定化の段階を区別できることから剥離微粒子が発生し、最大となる時点を境に、前半を固定化処理と呼ぶことにする。その後の処理中においても剥離した微粒子が少しずつ固定化されてはいるが、後半を膜化処理と呼ぶことにする。膜化に関しては機械処理されている間はトナー母粒子の表面にいる樹脂微粒子において絶えず進行している。
【0101】
以下に、図1及び図2に示す粉体処理装置200を用いて、カプセル化工程S4を説明する。
【0102】
カプセル化工程S4では、例えば、撹拌手段204の回転軸部材218が回転する状態で、投入部206からトナー母粒子及び液相エマルション樹脂微粒子の湿潤複合粒子を流路202に供給する。流路202に供給されたトナー母粒子及び液相エマルション樹脂微粒子は、撹拌手段204によって撹拌され、流路202の流体流過部209を流体流動方向214に流動する。
【0103】
本実施の形態に係るカプセルトナーの製造方法において、トナー母粒子100質量部に対する液相エマルション樹脂微粒子の混合割合は、5質量部以上かつ10質量部以下であることが好ましい。また、本実施の形態に係るカプセルトナーの製造方法においては、上記の湿潤複合粒子からカプセル粒子をより確実に形成させるため、撹拌時間は、1分以上かつ60分以下が好ましい。
【0104】
なお、カプセル化工程S4において、流路202の一部から処理中の粒子をサンプリングすることにより固定化処理の進行を確認することができる。例えば、流体流過部209に設けられたサンプリング機構222(専用の管)(図2参照)を内圧より減圧された状態にしてやれば流動中の粒子を取りだすことができ、専用のフィルター及び捕集管により採取可能である。また、直接に粒度分布測定装置に送り込むことも可能である。
【0105】
(3-5)回収工程
回収工程S5は、カプセル化工程S4によって形成されたカプセル粒子を回収する工程である。例えば、電磁弁217によって回収管216内の流路が開放されている状態において、回収管216を介して、カプセル粒子を回収タンク215に回収する。回収後に、撹拌手段204の回転を停止させる。
【0106】
回収工程S5では、回収タンク215に直接回収する他、サイクロン及び集塵フィルターによる補助手段を用いることもできる。このように、機内に追加して外気の取り込みを行うことで、効率よく内部の処理粉体を追い出し、捕集することもできる。
【0107】
以上のように、カプセル化工程S4を経て回収されるカプセル粒子をカプセルトナーとして使用することができる。なお、撹拌手段204は、カプセル化工程S4の間、最外周における周速度が30m/sec以上に設定されるのが好ましく、30m/sec以上かつ100m/sec以下であることがより好ましい。撹拌手段204の最外周における周速度が30m/sec以上であることによって、トナー母粒子を孤立流動させることができる。最外周における周速度が30m/sec未満であると、トナー母粒子及び樹脂微粒子を孤立流動させることができない。このため、トナー母粒子の表面を樹脂微粒子で均一に被覆することができなくなる。また、最外周における周速度が80m/secを超えると、球形化し易くなる。
【0108】
<カプセルトナー>
次に、本実施の形態に係るカプセルトナーを詳細に説明する。
【0109】
本実施の形態に係るカプセルトナーは、トナー母粒子と、該トナー母粒子の表面に形成される被覆層とを備える。
【0110】
本実施の形態において、カプセルトナーの円形度は0.96以下であり、0.94以上かつ0.96以下であることが好ましい。カプセルトナーの円形度が0.96以下であれば、クリーニング不良の発生を抑えることができる。一方、カプセルトナーの円形度が0.94未満では、帯電安定性が低下する場合がある。
【0111】
また、本実施の形態において、カプセルトナーの表面算術平均高さは0.1μm以上かつ0.5μm以下である。カプセルトナーの円形度及び表面算術平均高さが上記特定した範囲内であれば、カプセルトナーの球形化を抑えることができ、クリーニング性を向上させることができる。
【0112】
ここで、トナー(粒子)表面の算術平均高さ(Ra)とは、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さ1μmだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値である。Raが多いほど表面が粗い状態であり、小さいほど滑らかな状態である。測定装置としては、例えば株式会社キーエンス製 形状測定顕微鏡VK9510等を使用することができる。
【0113】
本実施の形態に係るカプセルトナーは、上述した本実施の形態に係るカプセルトナーの製造方法によって製造でき、これにより、カプセルトナーからの樹脂微粒子の剥離を効果的に防止することができる。
【0114】
本実施の形態に係るカプセルトナーにおいて、トナー母粒子は、上述の<カプセルトナーの製造方法>において説明したとおりである。また、被覆層は、樹脂微粒子の膜化により得られるが、ここで、樹脂微粒子は、上述の<カプセルトナーの製造方法>において説明したとおりである。
【0115】
本実施の形態に係るカプセルトナーは、電子写真方式を利用する画像形成装置において現像剤として使用できるが、被覆層を備えるトナー母粒子を一成分現像剤として使用してもよいし、該トナー母粒子に外添剤を外添したものを一成分現像剤として使用してもよい。また、本実施の形態に係るカプセルトナーとキャリアとの混合物を二成分現像剤として使用することもできる。
【0116】
外添剤は、トナーに流動性を付与すると共にトナーの帯電量を制御する機能を有しており、例えば、シリカ、酸化チタン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム等を挙げることができる。また、外添剤は、シリコーン樹脂、シランカップリング剤等により表面処理(疎水化処理)されているものが好ましい。
【0117】
本実施の形態に係るカプセルトナーを二成分現像剤として用いる場合、カプセルトナーとキャリアとを混合することにより、二成分現像剤を調製することができる。ここで、混合装置としては、例えばV型混合機(商品名:V-5、株式会社徳寿工作所製)等の粉体混合器を使用できる。また、カプセルトナーとキャリアとの配合比としては、例えば10:90~5:95の質量比であることが好ましい。なお、キャリアとしては、特に限定されず、二成分現像剤に通常使用されるキャリアを使用でき、例えば、フェライトキャリア等を挙げることができる。
【実施例
【0118】
以下に、実施例を挙げて更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。まず、各物性値の測定方法について説明する。
【0119】
(物性測定)
[結着樹脂及びトナー母粒子のガラス転移温度]
示差走査熱量計(商品名:Diamond DSC、Perkin Elmer社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121-1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量測定)曲線を測定した。得られたDSC曲線において、ガラス転移に相当する吸熱ピークより高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0120】
[結着樹脂の軟化温度]
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT-100C、株式会社島津製作所製)において、荷重20kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えて試料1gがダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化温度(Tm)とした。
【0121】
[離型剤の融点]
示差走査熱量計(商品名:Diamond DSC、Perkin Elmer社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121-1987に準じ、試料1gを温度20℃から昇温速度毎分10℃で200℃まで昇温させ、次いで200℃から20℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定した。2回目の操作で測定されるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの頂点の温度を離型剤の融点として求めた。
【0122】
[トナー母粒子の体積平均粒径]
電解液(商品名:ISOTON-II、ベックマン・コールター社製)50mlに、試料20mg及びアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(商品名:卓上型2周波超音波洗浄器VS-D100、アズワン株式会社製)によって超音波周波数20kHzで3分間分散処理して測定用試料を調製した。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:MultisizerIII、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径:100μm、測定粒子数:50000カウントの条件下に測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒径を求めた。
【0123】
[樹脂微粒子の体積平均粒径]
樹脂微粒子の体積平均粒径の測定には、動的光散乱法粒度分布測定装置(商品名:ナノトラック、日機装株式会社製)を用いた。測定用試料(樹脂微粒子)の凝集を防ぐため、ファミリーフレッシュ(花王株式会社製)を含む水溶液中に測定用試料が分散した分散液を投入して撹拌した後、上記装置に注入し、2回測定を行ってその平均値を求めた。測定条件としては、測定時間を30秒とし、試料粒子屈折率を1.49とし、分散媒を水とし、分散媒屈折率を1.33とした。測定用試料の体積粒度分布を測定し、測定結果から累積体積分布における小粒子径側からの累積体積が50%になる粒子径を樹脂微粒子の体積平均粒径(μm)として算出した。
【0124】
[樹脂微粒子のガラス転移温度]
示差走査熱量計(商品名:Diamond DSC、Perkin Elmer社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121-1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線において、ガラス転移に相当する吸熱ピークより高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0125】
[樹脂微粒子の軟化温度]
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT-500D、株式会社島津製作所製)を用い、試料1gを昇温速度毎分6℃で加熱し、荷重20kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えてダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化温度(Tm)とした。
【0126】
(実施例)
図5に示すフローチャートに従ってカプセルトナーを製造した。なお、カプセル化工程S4では、図1及び図2に示す粉体処理装置200を用いた。この粉体処理装置200は、株式会社奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS-3型を改造したものであり、具体的には、循環管203bにサンプリング機構222(専用の管)を備える、また、撹拌部208、外周部208b、循環管203b及び前蓋部208aをそれぞれ別の温度調節媒を流せる構造となっており、特定の各部の温度を制御することができる温度調整用ジャケット構造にした。なお、撹拌手段204は、撹拌部208の内壁との間隔が10mm以上開くように設置した。
【0127】
〔トナー母粒子作製工程〕
トナー母粒子作製工程S1では、スチレン-アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製)100質量部と、カーボンブラック(エボニックデグサ製:Nipex60)30質量部とを二軸混練機(池貝社製:PCM30型)で最高温度が150℃となるように溶融混練し、冷却後、カッティングミルで1mmのチップになるまで粗粉砕し、カーボンブラックのマスターバッチを得た。
【0128】
スチレン-アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製)75質量部、カーボンブラックのマスターバッチ25質量部、及びポリプロピレンワックス(三洋化成工業社製:550P)4質量部を、ヘンシェルミキサ(日本コークス工業社製)にて、撹拌羽根220の周速度35m/secで10分間混合し、材料混合物を得た。得られた混合物を、二軸混練機(池貝社製:PCM30型)で最高温度が175℃となるように溶融混練し、ドラムフレーカーで冷却することで、溶融混練物を得た。
【0129】
この溶融混練物をカッティングミル(オリエント株式会社製:VM-16)で粗粉砕した後、ジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)にて微粉砕し、更に風力分級機(ホソカワミクロン株式会社製)で分級することで、体積平均粒径が6.5μmであり、円形度が0.943のトナー母粒子(コア2)を作製した。なお、ガラス転移温度が50℃であった。
【0130】
同様にして衝突板式の粉砕機ミクロンジェット(ホソカワミクロン株式会社製)を用いて微粉砕し、体積平均粒径が6.6μmであり、円形度が0.939のトナー母粒子(コア1)を作製した。なお、ガラス転移温度が50℃であった。
【0131】
また、トナー母粒子(コア1)に対して機械式粉砕機ターボミル(ターボ工業社製)を用いて球形化処理を実施し、円形度が0.948のトナー母粒子(コア3)を作成した。
【0132】
コア1~3の円形度を装置方式と共に以下の表1にまとめて示す。
【0133】
【表1】
【0134】
〔樹脂微粒子調製工程〕
樹脂微粒子調製工程S2では、スチレンとアクリル酸とアクリル酸ブチルとを重合して、固形分40質量%濃度で体積平均粒径が0.10μmであるスチレン-アクリル酸-アクリル酸ブチル共重合体樹脂微粒子(ガラス転移温度65℃、軟化温度123℃)エマルション(ラテックスA)を得た。
【0135】
ラテックスAを所定の量を測り取り撹拌しながら純水を加えることで、それぞれ濃度の異なるラテックスB、ラテックスC、ラテックスDを得た。
【0136】
ラテックスA~Dの濃度を以下の表2にまとめて示す。
【0137】
【表2】
【0138】
〔湿潤微粒子複合工程〕
湿潤微粒子複合工程S3では、トナー母粒子(コア2)100重量部に対して、ラテックスA,B,C,Dをそれぞれ18.75重量部、25.00重量部、34.40重量部、43.35重量部を加えることで、コート部数3部~7.5部となる湿潤複合粒子を作成する。所定の量を計量し、ヘンシェルミキサ(商品名、日本コークス工業株式会社製)により5分間撹拌することにより、湿潤複合粒子A,B,C,D,A2-3,A2-4,A2-5を得た。
【0139】
ラテックスA~Dの濃度を重量部と共に以下の表3にまとめて示す。
【0140】
【表3】
【0141】
湿潤複合粒子Aをトレイ上に広げ大気下に開放し、水分率を徐々に減少させることで、追加の湿潤複合粒子N0~N2を得た。大気にさらされる時間によりその水分率を調整し、2日放置、4日放置及び2週間放置した後に密閉可能な容器に移し替え、その水分率を測定したところ、湿潤複合粒子N2が2.0重量%、湿潤複合粒子N1が1.4重量%、湿潤複合粒子N0が0.7重量%となった。
【0142】
〔カプセル化工程〕
カプセル化工程S4では、圧空源より導入空気を供給し、最外周における周速度80m/secにて撹拌羽根220を回転させながら空転し、機内空気の置換を行い、排出した空気湿度が安定するまで確認した。その際の排出した空気の相対湿度は10%RHであった。
【0143】
その状態から導入した空気に湿度供給装置AHCU-2(キッツマイクロフィルター社製)より一部加湿した空気を供給し、導入した空気の調湿を行い、排出した空気の相対湿度を30%RHに調整した。供給の切り替えから、排出した空気に検出されるまで20秒を要し、湿度が安定するまで1分を要した。
【0144】
最外周における周速度80m/secにて撹拌羽根220を回転させながら、湿潤複合粒子を投入部206から流路202に1分程度で供給し、5分間撹拌混合して、カプセル粒子を作成した。
【0145】
その際、流動中の粒子のサンプリングを1分おきに実施し、後ほど採取粒子の粒度をフロー式粒子像分析装置(FPIA)により確認し、個数粒径の2μm以下が占める割合により微粒子の剥離状態を評価し、微粒子剥離率(%)として評価した。
【0146】
微粒子剥離率が最大となるサンプリング時間を確認したところ、1分となったことから、ここまでの処理を固定化処理として扱い、排出した空気の検知が遅れる1分を合わせて測定していた2分時の排出した空気における相対湿度の数値から、導入した空気からの差分により排気蒸気湿度を求めた。
【0147】
〔回収工程〕
回収工程S5では、5分間の処理を実施したあと、最外周における周速度を保ったまま、電磁弁213を開放し、回収系へと流動粒子を送り込んだ。そのまま2分ほど運転を継続しながらハンマリングを行い、機内の粒子を追い出し、その後、回転を停止し、処理を終了した。
【0148】
回収工程S5により得られた処理粉体を実施例1~9のカプセルトナーとした。実施例1~9のカプセルトナーをFPIAにより測定したところ、円形度が0.940以上かつ0.960以下であり、遊離粒子は22%以下であった。
【0149】
実施例1~9のカプセルトナーを以下に示す方法で各種評価を実施した。
【0150】
(粒子剥離)
粒子剥離は、撹拌開始から最大となる微粒子(2μm以下)の個数粒径比率である。
○・・25%以下
△・・25%を超え40%以下
×・・40を超える
(遊離粒子)
遊離粒子は、回収されたカプセル粒子に含まれる微粒子(2μm以下)の個数粒径比率である。
○・・20%以下
△・・20%を超え30%以下
×・・30を超える
(凝集物)
凝集物は、回収されたカプセル粒子をメッシュにより除去分離し、確認した。詳しくは、回収された処理粉体1gを計量し、目開き54μmのメッシュ上に置き、反対面から吸引機によりカプセルトナーを吸引除去し、メッシュ上に残存する凝集物を確認した。
○・・あまり無い
△・・少ない
×・・多い
(機内付着)
機内付着は、融着するに至っていない微粒子(主に結露部分に付着。存在を目視確認)が付着している状態である。詳しくは、前蓋部208aを開放して機内を確認し、機内への粒子付着の状態を目視により確認した。機内付着は、粒子が流動せずに集まって装置内に付着している部分であり、主に周動部である撹拌部208以外に存在する。その付着粒子を除くと、その付着面に結露が見られたことから、結露した壁面に粒子が捕らわれていると推察できる。付着量の多い少ないを目視により判断した。
○・・ほとんどなし
△・・存在するが多くない
×・・多く存在する
(機内融着)
機内融着は、溶融して融着している材料が存在する状態である。詳しくは、前蓋部208aを開放して機内を確認し、機内への粒子融着の状態を目視により確認した。機内融着は、粒子が融けて装置内にこびりついており主に周動部である撹拌部208に存在する。撹拌により高温となることにより発生していると考えられる。融着によっても凝集物が発生する可能性があることから、融着の程度を目視により判断した。
○・・ほとんどなし
△・・存在するが多くない
×・・多く存在する
(総合評価)
出来栄え及び機内状態の中で一番悪いものにより品質の評価とした。なお、固定化処理時の粒子は流動している粒子のみがサンプリングされており、回収時に排出された粒子とは異なるため品質の項目からは除外している。
○・・良好
△・・使用上問題なし
×・・使用上問題あり
以上説明したことは、後述する表5及び表6についても同様である。
【0151】
カプセル粒子についての実施例1~9を比較例1~5と共に以下の表4にまとめて示す。
【0152】
【表4】
【0153】
[温度制御]
湿潤複合粒子A2について、周動部である撹拌部208のジャケット温度を15℃に設定し、その他の流動部である循環管203b及び前蓋部208a(非拌部)を周動部(撹拌部208)に対して+2℃以上にすること以外は実施例3と同様にカプセル化処理を行い、処理粉体を得た。
【0154】
(円形度)
△・・可、0.940以上、0.945未満、0.960を超える
◎・・最適、0.950以上、0.960以下
○・・良好、0.945以上、0.950未満
×・・不良、0.940未満、この場合、カプセル化行程そのものに不良がある可能性がある。
【0155】
実施例1,3,10~19を以下の表5及び表6にまとめて示す。
【0156】
【表5】
【0157】
【表6】
【0158】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、係る実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0159】
200 粉体処理装置
201 撹拌装置
202 流路
203 温度調節手段
203a 温度調整用ジャケット
203b 循環管
204 撹拌手段
206 投入部
206a ホッパ
207 回収部
208 撹拌部
208a 前蓋部
208b 外周部
208c 後部
208d 隙間
209 流体流過部
210 開口部
211 開口部
212 供給管
213 電磁弁
214 流体流動方向
215 回収タンク
216 回収管
217 電磁弁
218 回転軸部材
219 回転盤
220 撹拌羽根
221 貫通孔
222 サンプリング機構
230 回収部
231 排出路
232 回収路
233 サイクロン
233a 排気口
233b 排出口
240 回収部
241 排出路
242 回収路
243 バグフィルター
243a 排気口
243b 排出口
250 流路内部
S1 トナー母粒子作製工程
S2 樹脂微粒子調製工程
S3 湿潤微粒子複合工程
S4 カプセル化工程
S4a 微粒子固定化工程
S4b 膜化工程
S5 回収工程
S6 乾燥工程
図1
図2
図3
図4
図5