(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】肺炎球菌多糖体および免疫原性多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートでのその使用
(51)【国際特許分類】
C08B 37/00 20060101AFI20230612BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230612BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230612BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230612BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230612BHJP
A61K 39/09 20060101ALI20230612BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230612BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230612BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
C08B37/00 P
A61K47/64
A61K47/02
A61K47/22
A61K39/39
A61K39/09
A61P31/04
A61P11/00
A61K9/08
(21)【出願番号】P 2020513531
(86)(22)【出願日】2018-09-04
(86)【国際出願番号】 US2018049305
(87)【国際公開番号】W WO2019050813
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-07-12
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(72)【発明者】
【氏名】ポランボ,リチャード・ジェー
(72)【発明者】
【氏名】アビーグナーワードナ,チトラナンダ
(72)【発明者】
【氏名】ミュージー,ルイ・カフカ
(72)【発明者】
【氏名】コジンスキー,マイケル・ジェー
(72)【発明者】
【氏名】クイ,ヤドン・アダム
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2000/077254(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0050741(US,A1)
【文献】Radical serotype rearrangement of carried pneumococci in the first 3 years after intensive vaccination started in Hungary,European Journal of Pediatrics,2014年,p.1-9,DOI 10.1007/s00431-014-2408-1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
A61K
A61P
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造の繰り返し単位を
含む糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートであって;
【化1】
(式中、
Xは、それぞれ独立して、-CHOまたは-CH
2
NH-(タンパク質)を示し、
Yは、HまたはOAcを示し、
コンジュゲート中のYにおけるHとOAcの比は、1/0から0/1である)、
ここで、前記キャリアタンパク質は、CRM197、ジフテリア毒素フラグメントB(DTFB)、DTFB C8、ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)、TTのフラグメントC、百日咳トキソイド、コレラトキソイド、E.coli LT、E.coli ST、またはシュードモナス・エルギノーサ由来の外毒素Aであり、
さらにここで、前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートは、0.5~2.0の多糖体対タンパク質質量比を有する、多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項2】
前記キャリアタンパク質がCRM197である、請求項
1に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項3】
前記
キャリアタンパク質が、グリセロール-1-PO
4糖の炭素2位を介して前記多糖体にコンジュゲートされている、請求項
1に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項4】
多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートのコンジュゲーションの程度が、2~15である、請求項1に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項5】
多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートのコンジュゲーションの程度が、3~13である、請求項1に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項6】
前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートが、0.5~1.5の多糖体対タンパク質質量比を有する、請求項1に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項7】
前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートが、0.8~1.2の多糖体対タンパク質質量比を有する、請求項1に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項8】
前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートが、多糖体の総量と比較して50%未満の非共有結合多糖体を含む、請求項1に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項9】
前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートが、多糖体の総量と比較して25%未満の非共有結合多糖体を含む、請求項1に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項10】
前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートが、多糖体の総量と比較して20%未満の非共有結合多糖体を含む、請求項1に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項11】
前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートが、多糖体の総量と比較して15%未満の非共有結合多糖体を含む、請求項1に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項12】
多糖体が、25kDa~5000kDaの分子量を有する、請求項1に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項13】
多糖体が、50kDa~1000kDaの分子量を有する、請求項1に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項14】
多糖体が、100kDa~300kDaの分子量を有する、請求項1に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項15】
多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートのコンジュゲーションの程度が、3~13であり、
前記多糖体が、100kDa~300kDaの分子量を有し、
前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートが、0.5~1.5の多糖体対タンパク質質量比を有し、
前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートが、多糖体の総量と比較して15%未満の非共有結合多糖体を含み、そしてここで、
前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートが、1,000kDa~10,000kDaの分子量を有する、請求項1に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項16】
以下の構造の繰り返し単位を有する多糖体を含む、多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートであって、
【化2】
(式中、
Xは、それぞれ独立して、-CHOまたは-CH
2
NH-(タンパク質)を示し、
Yは、HまたはOAcを示し、
コンジュゲート中のYにおけるHとOAcの比は、1/0から0/1である)、
ここで、前記キャリアタンパク質は、CRM197であり、
さらにここで、前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートは、1,000kDa~10,000kDaの分子量を有する、多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項17】
前記キャリアタンパク質が、グリセロール-1-PO
4
糖の炭素2位を介して前記多糖体にコンジュゲートされている、請求項16に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項18】
多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートのコンジュゲーションの程度が、2~15である、請求項16に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項19】
多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートのコンジュゲーションの程度が、3~13である、請求項16に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項20】
前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートが、0.5~2.0の多糖体対タンパク質質量比を有する、請求項16に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項21】
前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートが、0.5~1.5の多糖体対タンパク質質量比を有する、請求項16に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項22】
前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートが、0.8~1.2の多糖体対タンパク質質量比を有する、請求項16に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項23】
前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートが、多糖体の総量と比較して50%未満の非共有結合多糖体を含む、請求項16に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項24】
前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートが、多糖体の総量と比較して25%未満の非共有結合多糖体を含む、請求項16に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項25】
前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートが、多糖体の総量と比較して20%未満の非共有結合多糖体を含む、請求項16に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項26】
前記多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートが、多糖体の総量と比較して15%未満の非共有結合多糖体を含む、請求項16に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項27】
多糖体が、25kDa~5000kDaの分子量を有する、請求項16に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項28】
多糖体が、50kDa~1000kDaの分子量を有する、請求項16に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【請求項29】
多糖体が、100kDa~300kDaの分子量を有する、請求項16に記載の多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)血清型16F由来の精製された莢膜多糖体、およびこの血清型由来の多糖体を有する多糖体-タンパク質コンジュゲートを提供する。この血清型由来の多糖体-タンパク質コンジュゲートは、多価肺炎球菌コンジュゲートワクチンに含まれ得る。
【背景技術】
【0002】
被包性細菌の一例であるストレプトコッカス・ニューモニエは、世界的に見て、重篤な疾患の重大な原因である。1997年、疾病管理予防センター(CDC)は、米国では、毎年3,000例の肺炎球菌性髄膜炎、50,000例の肺炎球菌性菌血症、7,000,000例の肺炎球菌性中耳炎および500,000例の肺炎球菌性肺炎が発生していると推定した。Centers for Disease Control and Prevention,MMWR Morb Mortal Wkly Rep 1997,46(RR-8):1-13を参照されたい。さらに、これらの疾患の合併症は重大となり得、いくつかの試験では、肺炎球菌性髄膜炎による死亡率は最大8%および神経学的後遺症発生率は25%と報告されている。Arditi et al.,1998,Pediatrics 102:1087-97を参照されたい。
【0003】
長年にわたって認可されてきた多価肺炎球菌多糖体ワクチンは、成人、特に高齢者および高リスク者の肺炎球菌疾患を予防する点で極めて有益であることが証明されている。しかし、乳児および幼児では非コンジュゲート肺炎球菌多糖体に対する応答が不良である。細菌多糖体はT細胞非依存性免疫原であり、乳児では弱い応答を誘発するか応答がない。キャリアタンパク質への細菌多糖体免疫原の化学的コンジュゲーションは、乳児の免疫応答をT細胞依存性の応答に変化させる。ジフテリアトキソイド(DTの化学的解毒版であるDTx)およびCRM197は、それらのアミノ酸配列にT細胞刺激エピトープが存在するため、細菌多糖体免疫原のためのキャリアタンパク質として記載されている。
【0004】
肺炎球菌コンジュゲートワクチンPrevnar(登録商標)は、当時幼児および乳児に侵襲性肺炎球菌疾患を引き起こしていた最も高頻度に単離された7つの血清型(4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23F)を含有しており、2000年2月に米国で初めて認可された。米国でのPrevnar(登録商標)の普遍的な使用に続いて、Prevnar(登録商標)に存在する血清型により、小児の侵襲性肺炎球菌疾患が大幅に減少した。Centers for Disease Control and Prevention,MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2005,54(36):893-7を参照されたい。ただし、世界の特定の地域ではPrevnar(登録商標)による血清型適用範囲には限界があり、米国では特定の血清型(例えば、19Aなど)が新たに出現していることを示すいくつかの証拠がある。O’Brien et al.,2004,Am J Epidemiol 159:634-44;Whitney et al.,2003,N Engl J Med 348:1737-46;Kyaw et al.,2006,N Engl J Med 354:1455-63;Hicks et al.,2007,J Infect Dis 196:1346-54;Traore et al.,2009,Clin Infect Dis 48:S181-S189を参照されたい。
【0005】
Prevnar13(登録商標)は、血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fを含む13価肺炎球菌多糖体-タンパク質コンジュゲートワクチンである。例えば、米国特許出願公開番号2006/0228380A1、Prymula et al.,2006,Lancet 367:740-48、および2008年10月25~28日にワシントンDCでの48th Annual ICAAC/ISDA 46th Annual Meetingで発表されたKieninger et al.,Safety and Immunologic Non-inferiority of 13-valent Pneumococcal Conjugate Vaccine Compared to 7-valent Pneumococcal Conjugate Vaccine Given as a 4-Dose Series in Healthy Infants and Toddlersを参照されたい。また、Dagan et al.,1998,Infect Immun.66:2093-2098 and Fattom,1999,Vaccine 17:126を参照されたい。
【0006】
S.ニューモニエは、莢膜多糖体の構造に基づいて90超の血清型に分類されている。既知の肺炎球菌莢膜多糖体構造の一覧は、Geno,2015,Clinical Microbiology Reviews 28:871-899に記載されている。
【0007】
現在の多価肺炎球菌コンジュゲートワクチンは、ワクチン中に存在する血清型に関連する肺炎球菌疾患の発生率を低下させるのに効果的である。しかし、ワクチン中に存在しない血清型を発現する肺炎球菌の有病率は増加している。したがって、今後のワクチンに含めるために、新たに出現した肺炎球菌血清型を同定および特性評価する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開番号2006/0228380A1
【非特許文献】
【0009】
【文献】Centers for Disease Control and Prevention,MMWR Morb Mortal Wkly Rep 1997,46(RR-8):1-13
【文献】Arditi et al.,1998,Pediatrics 102:1087-97
【文献】Centers for Disease Control and Prevention,MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2005,54(36):893-7
【文献】O’Brien et al.,2004,Am J Epidemiol 159:634-44
【文献】Whitney et al.,2003,N Engl J Med 348:1737-46
【文献】Kyaw et al.,2006,N Engl J Med 354:1455-63
【文献】Hicks et al.,2007,J Infect Dis 196:1346-54
【文献】Traore et al.,2009,Clin Infect Dis 48:S181-S189
【文献】Prymula et al.,2006,Lancet 367:740-48
【文献】Kieninger et al.,Safety and Immunologic Non-inferiority of 13-valent Pneumococcal Conjugate Vaccine Compared to 7-valent Pneumococcal Conjugate Vaccine Given as a 4-Dose Series in Healthy Infants and Toddlers
【文献】Dagan et al.,1998,Infect Immun.66:2093-2098 and Fattom,1999,Vaccine 17:126
【文献】Geno,2015,Clinical Microbiology Reviews 28:871-899
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ストレプトコッカス・ニューモニエ血清型16F由来の精製された莢膜多糖体、およびこの血清型を有する多糖体タンパク質コンジュゲートを提供する。本発明は、この血清型由来の莢膜多糖体の構造的同定に部分的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、一実施形態では、本発明は、以下の繰り返し単位を有する多糖体を提供し、
【化1】
式中、xは0.0~1.0のモル比を示す。
【0012】
ストレプトコッカス・ニューモニエ血清型16F由来の多糖体は、以下によって表すことができ、
【化2】
式中、nは繰り返し単位の数を表す。
【0013】
特定の実施形態では、多糖体は10~5,000の繰り返し単位を有する。特定の態様では、多糖体は、50~4,500、150~4,500または150~2,000の繰り返し単位を有する。
【0014】
特定の実施形態では、多糖体は、50kDa~4,000kDaの分子量を有する。特定の態様では、多糖体は、100kDa~3,500kDaまたは100kDa~1,500kDaの分子量を有する。
【0015】
特定の実施形態では、S.ニューモニエ血清型16F多糖体は、0.0~1.0、例えば、0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8または0.9から1.0までの少なくともいずれかのO-アセチル基と血清型16F繰り返し単位とのモル比を有する。
【0016】
本発明はさらに、上記実施形態のいずれかから生成される活性化多糖体を提供し、ここで、多糖体は、化学試薬によって活性化されてリンカーまたはキャリアタンパク質へのコンジュゲーションのための反応基を生成する。特定の実施形態では、活性化は、グリセロール-1-PO4糖のうちの1つ以上で起こる。特定の実施形態では、多糖体は過ヨウ素酸塩によって活性化される。この実施形態の特定の態様では、活性化は、グリセロール-1-PO4糖のいずれかまたは両方の炭素2位で起こる。
【0017】
本発明はさらに、上記で提供される多糖体または活性化多糖体がキャリアタンパク質にコンジュゲートされている多糖体-タンパク質コンジュゲートを提供する。特定の態様では、キャリアタンパク質は、CRM197、ジフテリア毒素フラグメントB(DTFB)、DTFB C8、ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)、TTのフラグメントC、百日咳トキソイド、コレラトキソイド、E.coli LT、E.coli ST、およびシュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)由来の外毒素Aから選択される。特定の一態様では、キャリアタンパク質はCRM197である。
【0018】
特定の態様では、多糖体-タンパク質コンジュゲートは、水性条件下、またはジメチルスルホキシド(DMSO)のような非プロトン性溶媒中で還元的アミノ化化学を使用して調製される。特定の態様では、多糖体-タンパク質コンジュゲートは、DMSO中の還元的アミノ化化学を使用して調製される。
【0019】
一実施形態では、本発明は、ストレプトコッカス・ニューモニエ血清型16F由来の非コンジュゲート多糖体または多糖体-タンパク質コンジュゲートと、ストレプトコッカス・ニューモニエ血清型1、2、3、4、5、6A、6B、6C、6D、7B、7C、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15A、15B、15C、17F、18B、18C、19A、19F、20、21、22A、22F、23A、23B、23F、24F、24B、27、28A、31、33F、34、35A、35B、35Fおよび38のうちの1つ以上に由来する非コンジュゲート多糖体または多糖体-タンパク質コンジュゲートとを含む多価免疫原性組成物を提供する。1つの下位実施形態では、多価免疫原性組成物は、非コンジュゲート多糖体または多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートを含むが、両方は含まない。1つの下位実施形態では、多価免疫原性組成物は、非コンジュゲート多糖体また多糖体-キャリアタンパク質コンジュゲートの混合物を含む。特定の下位実施形態では、本発明の多価免疫原性組成物は、最大4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85または90の血清型を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】S.ニューモニエ血清型16F多糖体の繰り返し単位構造の画像表示を示す。過ヨウ素酸塩の活性化部位は楕円で示されている。活性化多糖体では、繰り返し単位のあらゆる活性化部位が活性化されるわけではない。これは、グリセロール-1-PO
4糖の炭素2位を反映している。
【
図2A】A:50℃の重水(D
2O)中のS.ニューモニエ血清型16F由来の莢膜多糖体の600MHz 1次元
1H NMRスペクトルを示す。内部標準(DMSOおよびDSS-d
6)、残留水(HOD)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(IPA)およびアセテートから生じるシグナルを示す。*により標識された軽微なシグナルは、C-多糖体および/またはペプチドグリカンのようなS.ニューモニエ細胞壁残留物によるものである。
【
図2B】B:27℃の重水(D
2O)中のS.ニューモニエ血清型16F由来の酸化および誘導体化莢膜多糖体の600MHz 1次元
1H NMRスペクトルである。挿入図は、チオセミカルバジドによる誘導体化によって形成されたイミンシグナルの拡大である。内部標準(DMSOおよびDSS-d6)残留水(HOD)および緩衝液(シトレート)から生じるシグナルを示す。
【
図3】S.ニューモニエ血清型16Fの血清型同定に使用された1次元(1D)
1H NMR同一性領域を示す。各単糖残基からの繰り返し単位の各アノマープロトンのシグナル位置を示す。
【
図4】繰り返し構造の糖残基間の共有結合を確立する、脱-O-アセチル化S.ニューモニエ血清型16Fの部分的な2次元(2D)
1H-
13C多重結合相関NMRスペクトルを示す。図中ではグリコシド結合を確立する相関が表示されている。
【
図5】S.ニューモニエ血清型16Fの莢膜多糖体繰り返し単位内のホスホジエステル結合の確立を示す。
【
図6】酸化および誘導体化されたS.ニューモニエ血清型16Fの部分的な1D(上部)および2D
1H-
13C相関NMRスペクトルを示す。
【
図7】酸化および誘導体化されたS.ニューモニエ血清型16Fの部分的な1D(上部)および2D
1H-
13C相関NMRスペクトルを示しており、メチレン炭素からのシグナルのみを示している。誘導体化からの追加のメチレンのシグナルは丸で囲まれている。
【
図8A】酸化され精製され、チオセミカルバジドにより誘導体化された血清型16F多糖体の600MHzで取得されたNMRデータの複合を示す。
【
図8B】酸化され精製され、チオセミカルバジドにより誘導体化された血清型16F多糖体の600MHzで取得されたNMRデータの複合を示す。
【
図8C】酸化され精製され、チオセミカルバジドにより誘導体化された血清型16F多糖体の600MHzで取得されたNMRデータの複合を示す。
【
図8D】酸化され精製され、チオセミカルバジドにより誘導体化された血清型16F多糖体の600MHzで取得されたNMRデータの複合を示す。
【
図8E】酸化され精製され、チオセミカルバジドにより誘導体化された血清型16F多糖体の600MHzで取得されたNMRデータの複合を示す。A)イミンプロトンを示す1D
1Hスペクトル。B)7.5ppmのイミンシグナルから4.57ppmのシグナルへのクロスピークを示す2D勾配COSY。C)4.57ppmのシグナルに対する単一のクロスピークを示す2D TOCSYスペクトル。DおよびE)クロスピーク。(D)およびイミン(E)の炭素化学シフトを示す2D
1H-
13C相関スペクトル。
【
図9】CRM197にコンジュゲートされ、リン酸アルミニウムアジュバント(APA)で製剤化されたS.ニューモニエ一価血清型を用いて免疫したウサギのELISA IgG抗体価(投与後2)を示す。エラーバーは、幾何平均+95%信頼区間を表す。
【
図10】CRM197にコンジュゲートされ、リン酸アルミニウムアジュバント(APA)で製剤化されたS.ニューモニエ一価血清型を用いて免疫したウサギの血清型特異的OPA力価(投与後2)を示す。エラーバーは、幾何平均+95%信頼区間を表す。
【
図11】多価肺炎球菌コンジュゲートワクチン(2μg/PnPs)を用いて免疫したウサギの血清型特異的(S.ニューモニエ血清型16F、23A、23B、24F、31)免疫前、PD1およびPD2の幾何平均抗体価を示す。エラーバーは、各血清型(X軸)の幾何平均力価の2つの標準誤差を表す。
【
図12】多価肺炎球菌コンジュゲートワクチン(2μg/PnPs)を用いて免疫したウサギの血清型特異的(S.ニューモニエ血清型16F、23A、23B、24F、31)免疫前、PD1およびPD2のOPA希釈力価を示す。記号は個々の力価を示し、エラーバーは幾何平均力価(GMT)の95%信頼区間(CI)を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意差なし。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、NMR技術による新規肺炎球菌多糖体構造(類)の同定に部分的に基づいている。本明細書で提供される構造は、S.ニューモニエ血清型16Fの最初の同定または最初の正しい同定であると考えられている。
【0022】
S.ニューモニエ血清型16F多糖体は、そのそれぞれの株から生産され、精製された。生産(および精製)された多糖体を使用して、多糖体-CRM197コンジュゲートを作製した。S.ニューモニエ血清型16Fは、固有の多糖体構造を有し、これにより、固有のコンジュゲート作製プロセスが生じる。得られたコンジュゲートは、動物試験で免疫原性であることが実証された。
【0023】
本明細書で使用される用語「多糖体」(Ps)は、限定するものではないが、「糖」、「オリゴ糖」、「多糖体」、「リポ糖(liposaccharide)」、「リポオリゴ糖(LOS)」、「リポ多糖体(LPS)」、「グリコシレート」、「グリココンジュゲート」、「誘導体化または活性化多糖体またはオリゴ糖」などを含め、免疫学および細菌ワクチンの分野で一般的に使用される任意の抗原性糖要素(または抗原単位)を含むことを意味する。特に指定のない限り、本明細書で使用される多糖体の名称は、IUB-IUPAC Joint Commission on Biochemical Nomenclature(JCBM)Recommendations 1980に従う。JCBN,1982,J.Biol.Chem.257:3352-3354を参照されたい。
【0024】
本明細書で使用される「免疫原性組成物」とは、哺乳動物のような宿主に対して、体液性にもしくは細胞性に媒介された、または体液性におよび細胞性に媒介された免疫応答を誘発する能力を有する細菌莢膜多糖体または多糖体-タンパク質コンジュゲートのような抗原を含有する組成物を指す。免疫原性組成物は、細胞表面でのMHC分子に関連した抗原の提示により宿主を感作するのに役立ち得る。さらに、抗原特異的T細胞または抗体を作製して、免疫された宿主を将来にわたって保護することができる。したがって、免疫原性組成物は、細菌による感染から宿主を保護し、重症度を低下させることができ、または、細菌感染による死から宿主を保護することができるかもしれない。免疫原性組成物はまた、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を作製するために使用され得、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体は、対象に受動免疫を付与するために使用され得る。また、免疫原性組成物を使用して、動物の有効性モデルでまたはオプソニン食作用傷害アッセイを介して細菌を死滅させることによって測定されるように機能的な抗体を作製してもよい。
【0025】
本明細書で使用される場合、多糖体に関連する「単離された」という用語は、遠心分離、深層濾過、沈殿、限外濾過、活性炭を用いた処理、ダイアフィルトレーションおよび/またはカラムクロマトグラフィーの使用を含め、当技術分野で公知の精製技術を使用した、精製された多糖体からのS.ニューモニエ血清型特異的莢膜多糖体の単離を指す。一般に、単離された多糖体とは、タンパク質、核酸、および非特異的な内因性の多糖体(C多糖体)の部分的な除去を指す。単離された多糖体は、10%、8%、6%、4%または2%未満のタンパク質不純物および/または核酸を含有する。単離された多糖体は、型特異的多糖体に対して20%未満のC多糖体を含有する。
【0026】
本明細書で使用される場合、細菌莢膜多糖体に関連する「精製された」という用語は、遠心分離、沈殿および限外濾過のような手段による細胞溶解物からの多糖体の精製を指す。一般に、精製された多糖体とは、細胞片およびDNAの除去を指す。
【0027】
本明細書で使用される用語「Mw」は、重量平均分子量を指し、典型的にはDaまたはkDaで表される。Mwは、小さな分子が含有するよりも大きな分子の方がポリマー試料の総質量を多く含有することを考慮に入れる。Mwは、静的光散乱、中性子線小角散乱、X線散乱および沈降速度のような技術によって決定することができる。
【0028】
本明細書で使用される用語「Mn」は、数平均分子量を指し、典型的にはDaまたはkDaで表される。Mnは、試料の総重量を試料中の分子数で割ることによって計算され、ゲル浸透クロマトグラフィー、(Mark-Houwink方程式)による粘度測定、束一法(colligative methods)、例えば、蒸気圧浸透圧測定、末端基決定またはプロトンNMRのような技術によって決定することができる。Mw/Mnは多分散性を反映する。
【0029】
本明細書で使用される用語「モル比」は、典型的には、10分の1の位または100分の1の位までの小数として表される割合である。例えば、10分の1で表される0または0.1~1.0のモル比には、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0のいずれかが含まれる。
【0030】
本明細書で使用される略語「PnPs」は、肺炎球菌多糖体を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、本発明の免疫原性組成物とともに使用する場合の「含む」という用語は、アジュバントおよび賦形剤のような任意の他の成分の包含を指す(抗原混合物では「からなる」という言葉の制限を受ける)。本発明の多価多糖体-タンパク質コンジュゲート混合物とともに使用される場合の「からなる」という用語は、それらの特定のS.ニューモニエ多糖体タンパク質コンジュゲートを有し、異なる血清型由来の他のS.ニューモニエ多糖体タンパク質コンジュゲートを有しない混合物を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、糖上の「活性化部位」という語句は、部位が化学的に修飾されて反応基を形成することができることを意味する。活性化部位は、特定の部位で反応する活性化剤の好ましい傾向を考慮に入れる。
【0033】
本明細書で使用される語句「活性化多糖体」は、多糖鎖に反応基を形成するように化学的に修飾された多糖体を指す。活性化多糖体とは、利用可能なあらゆる活性化部位が化学的に修飾されていることを必ずしも意味しない。
【0034】
本明細書で使用される場合、多糖鎖上の「活性化の程度」という語句は、活性化された化学基の数と多糖鎖上の繰り返し単位の数との全体的な比を指す。
【0035】
特に指定のない限り、本明細書で提供されるあらゆる範囲は、列挙された下限および上限を含む。
【0036】
S.ニューモニエ血清型16Fの単糖分析では、構成成分として、Glc(グルコース)、Gal(ガラクトース)、Rha(ラムノース)、GlcN(グルコサミン)、GalN(ガラクトサミン)およびGro-P(グリセロールリン酸)が示された。Kamerling,2000,Pneumococcal polysaccharides:a chemical view,p.81-114.In Tomasz(ed),Streptococcus pneumoniae molecular biology&mechanisms of disease.Mary Ann Liebert,Inc.,Larchmont,NYを参照されたい。実施例で同定された構造は、ガラクトース、ガラクトサミンまたはグルコサミンが存在しないという点で以前に同定された単糖組成とは異なる。比較のための血清型16Aの完全な多糖体構造情報は、これまで入手することができなかった。
【0037】
S.ニューモニエ16F構造は、β-RhaにO-アセチル基が存在することを示している。実施例の分析は、O-Ac基が多糖体の繰り返し単位の約90%に存在することを示している。特定の実施形態では、16F血清型多糖体は、血清型16F多糖体1mM当たり0(すなわち、完全に脱-O-アセチル化されている)、または少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8もしくは0.9mMアセテートを有する。
【0038】
この血清型の構造を同定することにより、非コンジュゲート多糖体または多糖体-タンパク質コンジュゲートとして肺炎球菌ワクチンにそれらを組み込むことが可能になり得る。連鎖球菌および肺炎球菌多糖体を含むコンジュゲートワクチンは、当技術分野で周知である。例えば、米国特許第6,248,570号、米国特許第5,866,135号および米国特許第5,773,007号を参照されたい。
【0039】
莢膜多糖体
本発明の血清型からのストレプトコッカス・ニューモニエ由来の莢膜多糖体は、当業者に公知の標準的な技術により調製することができる。例えば、多糖体は、細菌から単離することができ、既知の方法によって(例えば、欧州特許番号EP497524および欧州特許番号EP497525を参照)、好ましくは、ホモジナイザーを使用して達成されるマイクロ流動化または化学的加水分解によって、ある程度までサイズ調整され得る。一実施形態では、各多糖体血清型に対応するS.ニューモニエ株を大豆ベースの培地で増殖させる。次いで、遠心分離、沈殿および限外濾過を含む標準的な工程によって個々の多糖体を精製する。例えば、米国特許出願公開番号2008/0286838および米国特許第5,847,112号を参照されたい。多糖体をサイズ調整して、粘度を低下させる、および/またはその後のコンジュゲート生成物の濾過性を改善することができる。化学的加水分解は、酢酸を使用して行われ得る。機械的サイジングは、高圧ホモジナイズ化せん断を使用して行われてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、コンジュゲーション前の精製された多糖体は、5kDa~4,000kDaの分子量を有する。分子量は、多角度光散乱検出器(MALS)と屈折率検出器(RI)とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により計算することができる。他のそのような実施形態では、多糖体は、10kDa~4,000kDa、50kDa~4,000kDa、50kDa~3,000kDa、50kDa~2,000kDa、50kDa~1,500kDa、50kDa~1,000kDa、50kDa~750kDa、50kDa~500kDa、80kDa~2000kDa、100kDa~4,000kDa、100kDa~3,000kDa、100kDa~2,000kDa、100kDa~1,500kDa、100kDa~1,000kDa、100kDa~750kDa、100kDa~500kDa、100~400kDa、100kDa~300kDaまたは100kDa~200kDaの平均分子量を有する。特定の実施形態では、S.ニューモニエ血清型16F由来の多糖体は、100kDa~200kDaの平均分子量を有する。
【0041】
特定の実施形態では、S.ニューモニエ血清型16F多糖体は、10~5000の繰り返し単位を有する。特定の態様では、多糖体は、50~3000、100~2500または100~2000を有する。特定の実施形態では、血清型16F由来の多糖体は、100~300の繰り返し単位または128~256の繰り返し単位を有する。
【0042】
特定の実施形態では、S.ニューモニエ血清型16F多糖体は、0.0~1.0、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8または0.9から1.0までの少なくともいずれかのO-アセチル基と血清型16F繰り返し単位とのモル比を有する。
【0043】
キャリアタンパク質
S.ニューモニエ血清型のうちの1つ以上に由来する多糖体はキャリアタンパク質(「Pr」)にコンジュゲートされ、小児、高齢者および/または免疫不全患者の免疫原性を改善することができる。多価組成物に複数の血清型が使用される場合、同じキャリアタンパク質または異なるキャリアタンパク質を用いて血清型が調製されてもよい。同じ血清型の各莢膜多糖体は、典型的には、同じキャリアタンパク質にコンジュゲートされる。
【0044】
本発明の特定の実施形態では、CRM197がキャリアタンパク質として使用される。CRM197は、ジフテリア毒素(DT)の非毒性変異体である。CRM197キャリアタンパク質は、残基52にあるフラグメントAの単一のアミノ酸置換によって非毒性にされるDTの変異体である。一実施形態では、CRM197キャリアタンパク質は、カザミノ酸および酵母エキスベースの培地で増殖させたコリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheria)株C7(β197)の培養物から単離される。別の実施形態では、CRM197は、米国特許第5,614,382号に記載された方法に従って組換えにより調製される。典型的に、CRM197は、限外濾過、硫酸アンモニウム沈殿およびイオン交換クロマトグラフィーの組合せにより精製される。いくつかの実施形態では、CRM197は、Pfenex Expression Technology(商標)(Pfenex Inc.,San Diego,CA)を使用して、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)において調製される。
【0045】
他の好適なキャリアタンパク質には、追加の不活化細菌毒素、例えば、DT、ジフテリアトキソイドフラグメントB(DTFB)、TT(破傷風トキソイド)、またはTTのフラグメントC、百日咳トキソイド、コレラトキソイド(例えば、国際特許出願公開番号WO2004/083251に記載される)、E.coli LT(熱不安定エンテロトキシン)、E.coli ST(熱安定エンテロトキシン)、およびシュードモナス・エルギノーサ由来の外毒素Aが含まれる。また、細菌の外膜タンパク質、例えば、外膜複合体c(OMPC)、ポーリン、トランスフェリン結合タンパク質、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA;国際出願特許公開番号WO02/091998を参照)、肺炎球菌付着因子タンパク質(PsaA)、A群もしくはB群のストレプトコッカス由来のC5aペプチダーゼ、またはヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)のプロテインD、肺炎球菌ニューモリシン(Kuo et al.,1995,Infect Immun 63;2706-13)、例えば、何らかの様式で無毒化されたply、例えば、dPLY-GMBS(国際特許出願公開番号WO04/081515を参照)またはdPLY-ホルモール、PhtX、例えば、PhtA、PhtB、PhtD、PhtE、およびPhtタンパク質の融合体、例えば、PhtDE融合体、PhtBE融合体(国際特許出願公開番号WO01/98334および国際特許出願公開番号WO03/54007を参照)も使用することができる。他のタンパク質、例えば、オボアルブミン、スカシ貝ヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、またはツベルクリンの精製タンパク質誘導体(PPD)、PorB(N.メニンギティディス(N.meningitidis)由来)、PD(ヘモフィルス・インフルエンザエのプロテインD;例えば、欧州特許番号EP0594610Bを参照)、またはその免疫学的機能等価体、合成ペプチド(欧州特許番号EP0378881および欧州特許番号EP0427347を参照)、熱ショックタンパク質(国際特許出願公開番号WO93/17712および国際特許出願公開番号WO94/03208を参照)、百日咳タンパク質(国際特許出願公開番号WO98/58668および欧州特許番号EP0471177を参照
)、サイトカイン、リンホカイン、増殖因子もしくはホルモン(国際特許出願公開番号WO91/01146を参照)、様々な病原体由来抗原に由来する複数のヒトCD4+T細胞エピトープを含む人工タンパク質(Falugi et al.,2001,Eur J Immunol 31:3816-3824を参照)、例えばN19タンパク質(Baraldoi et al.,2004,Infect Immun 72:4884-7を参照)、鉄取込みタンパク質(国際特許出願公開番号WO01/72337を参照)、C.ディフィシル(C.difficile)の毒素AもしくはB(国際特許公開番号WO00/61761を参照)、およびフラジェリン(Ben-Yedidia et al.,1998,Immunol Lett 64:9を参照)もまたキャリアタンパク質として使用することができる。
【0046】
キャリアタンパク質として、他のDT変異体、例えば、CRM176、CRM228、CRM45(Uchida et al.,1973,J Biol Chem 218:3838-3844);CRM9、CRM45、CRM102、CRM103およびCRM107、ならびにGenetically Engineered Toxins,Ed:Frankel,Maecel Dekker Inc,1992にNichollsおよびYouleによって記載された他の変異;Glu-148からAsp、GlnまたはSerおよび/またはAla158からGlyへの欠失または変異、および米国特許第4,709,017号または米国特許第4,950,740号に開示された他の変異;少なくとも1つ以上の残基Lys516、Lys526、Phe530および/またはLys534の変異、および米国特許第5,917,017号または米国特許第6,455,673号に開示された他の変異;または米国特許第5,843,711号に開示されたフラグメントを使用することもできる。
【0047】
多価ワクチンが使用される場合、抗原のうちの1つ以上に対して第2のキャリアタンパク質を使用することができる。第2のキャリアタンパク質は、好ましくは、非毒性かつ非反応原性であり、十分な量および純度で入手可能なタンパク質である。第2のキャリアタンパク質はまた、抗原の免疫原性を高めるために、抗原、例えばS.ニューモニエ多糖体とコンジュゲートまたは接合される。キャリアタンパク質は、標準的なコンジュゲーション手順に適しているべきである。一実施形態では、第1のキャリアタンパク質にコンジュゲートされていない各莢膜多糖体が、同じ第2のキャリアタンパク質にコンジュゲートされる(例えば、各莢膜多糖体分子が単一のキャリアタンパク質にコンジュゲートされる)。別の実施形態では、第1のキャリアタンパク質にコンジュゲートされていない莢膜多糖体が、2つ以上のキャリアタンパク質にコンジュゲートされる(各莢膜多糖体分子が単一のキャリアタンパク質にコンジュゲートされる)。そのような実施形態では、同じ血清型の各莢膜多糖体が、典型的には、同じキャリアタンパク質にコンジュゲートされる。
【0048】
コンジュゲーション
コンジュゲーションの前に、精製された多糖体を、糖をキャリアタンパク質と反応させて活性化多糖体を形成させることができるように、化学的に活性化され得る。本明細書で使用される用語「活性化多糖体」は、リンカーまたはキャリアタンパク質へのコンジュゲーションを可能にするために、以下に記載されるように化学的に修飾された多糖体を指す。精製された多糖体は、リンカーに接続されてもよい。活性化されるかリンカーに接続されると、各莢膜多糖体は、キャリアタンパク質に別個にコンジュゲートされてグリココンジュゲートを形成する。多糖体コンジュゲートは、既知のカップリング技術によって調製され得る。
【0049】
特定の実施形態では、S.ニューモニエ血清型16F多糖体の活性化は、グリセロール-1-PO4糖のうちの1つ以上で起こる。特定の実施形態では、多糖体は過ヨウ素酸塩によって活性化される。この実施形態の特定の態様では、活性化は、グリセロール-1-PO4糖のいずれかまたは両方の炭素2位で起こる。
【0050】
特定の実施形態では、多糖体はリンカーに結合され、リンカーの遊離末端がエステル基である多糖体-リンカー中間体を形成することができる。したがって、リンカーは、少なくとも1つの末端がエステル基であるリンカーである。もう一方の末端は、それが多糖体と反応して多糖体-リンカー中間体を形成することができるように選択される。
【0051】
特定の実施形態では、カップリングは間接的に、すなわち、リンカーへのカップリングの前に多糖体を誘導体化するために使用される付加的リンカーを用いて行うこともできる。多糖体は、多糖体の還元末端でカルボニル基を使用して付加的リンカーに結合される。このカップリングは、2つの工程、すなわち、(a1)カルボニル基を付加的リンカーと反応させる工程、および、(a2)付加的リンカーの遊離末端をリンカーと反応させる工程、を含む。これらの実施形態では、付加的リンカーは、典型的には両末端に第一級アミン基を有するため、還元的アミノ化によって第一級アミン基のいずれかを多糖体のカルボニル基と反応させることにより工程(a1)を起こさせることを許容する。多糖体中のカルボニル基と反応する第一級アミン基が使用される。ヒドラジドまたはヒドロキシルアミノ基が適している。典型的には、付加的リンカーの両末端に同じ第一級アミン基が存在する。この反応により、多糖体がC-N結合を介して付加的リンカーに結合される多糖体-付加的リンカー中間体が得られる。
【0052】
特定の実施形態では、多糖体の異なる基、特にカルボキシル基を使用して、付加的リンカーに多糖体を結合することができる。このカップリングは、2つの工程、すなわち、(a1)基を付加的リンカーと反応させる工程、および、(a2)付加的リンカーの遊離末端をリンカーと反応させる工程、を含む。この場合、付加的リンカーは、典型的には両末端に第一級アミン基を有するため、EDAC活性化によって第一級アミン基のいずれかを多糖体のカルボキシル基と反応させることにより工程(a1)を起こさせることを許容する。多糖体中のEDAC活性化カルボキシル基と反応する第一級アミン基が使用される。ヒドラジド基が適している。典型的には、付加的リンカーの両末端に同じ第一級アミン基が存在する。この反応により、多糖体がアミド結合を介して付加的リンカーに結合される多糖体-付加的リンカー中間体が得られる。
【0053】
一実施形態では、多糖体の化学的活性化、およびその後の還元的アミノ化によるキャリアタンパク質へのコンジュゲーションは、米国特許第4,365,170号、米国特許第4,673,574号および米国特許第4,902,506号、米国特許出願公開番号2006/0228380、米国特許出願公開番号2007/184072、米国特許出願公開番号2007/0231340および米国特許出願公開番号2007/0184071、ならびに国際特許出願公開番号WO2006/110381、国際特許出願公開番号WO2008/079653および国際特許出願公開番号WO2008/143709)に記載されている手段によって達成することができる。その化学は、酸化体の存在下でのTEMPOのような、アルデヒドに対する第一級ヒドロキシル基である任意の酸化剤との反応(WO2104/097099)、または過ヨウ素酸塩(過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウムまたは過ヨウ素酸を含む)のような、アルデヒドに対する2つのビシナルヒドロキシル基の反応による肺炎球菌多糖体の活性化を伴ってもよい。この反応は、反応性アルデヒド基の形成を伴う、炭水化物の第一級ヒドロキシル基の酸化またはビシナルヒドロキシル基の酸化的開裂をもたらす。
【0054】
この実施形態では、キャリアタンパク質へのカップリングは、タンパク質のリジル基への直接的なアミノ化を介した還元的アミノ化による。例えば、コンジュゲーションは、ニッケルの存在下で、活性化多糖体とキャリアタンパク質との混合物をシアノ水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤と反応させることにより行われる。コンジュゲーション反応は、水溶液下で、またはジメチルスルホキシド(DMSO)の存在下で起こり得る。例えば、米国特許出願公開番号US2015/0231270および米国特許出願公開番号US2011/0195086ならびに欧州特許番号EP0471177B1を参照されたい。次いで、水素化ホウ素ナトリウムのような強力な還元剤を加えて未反応アルデヒドをキャップする。
【0055】
還元的アミノ化には、2つの工程、すなわち、(1)多糖体の酸化による反応性アルデヒドの形成、(2)活性化多糖体とキャリアタンパク質との間に形成されたイミン(シッフ塩基)の還元による安定なアミンコンジュゲート結合の形成が含まれる。酸化の前に、任意に多糖体のサイズを縮小してもよい。機械的方法(例えば、均質化)または化学的加水分解が使用されてもよい。化学的加水分解は、酢酸を使用して行われ得る。酸化工程は、過ヨウ素酸塩との反応を含み得る。本発明の目的では、用語「過ヨウ素酸塩」には、過ヨウ素酸塩および過ヨウ素酸の両方が含まれ;この用語にはまた、メタ過ヨウ素酸塩(IO4
-)およびオルト過ヨウ素酸塩(IO6
5-)も含まれ、過ヨウ素酸塩の様々な塩(例えば、過ヨウ素酸ナトリウムおよび過ヨウ素酸カリウム)も含まれる。一実施形態では、莢膜多糖体は、メタ過ヨウ素酸塩の存在下、好ましくは過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)の存在下で酸化される。別の実施形態では、莢膜多糖体は、オルト過ヨウ素酸塩の存在下、好ましくは過ヨウ素酸の存在下で酸化される。
【0056】
一実施形態では、酸化剤は、ピペリジン-N-オキシまたはピロリジン-N-オキシ化合物のような、第一級ヒドロキシルを選択的に酸化する酸化体の存在下で安定なニトロキシルまたはニトロキシドラジカル化合物である(例えば、国際特許出願公開番号WO2014/097099に記載される)。上記反応では、実際の酸化体は、触媒サイクルにおけるN-オキソアンモニウム塩である。一態様では、上記安定なニトロキシルまたはニトロキシドラジカル化合物は、ピペリジン-N-オキシまたはピロリジン-N-オキシ化合物である。一態様では、上記安定なニトロキシルまたはニトロキシドラジカル化合物は、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ)またはPROXYL(2,2,5,5-テトラメチル-1-ピロリジニルオキシ)部分を有する。一態様では、上記安定なニトロキシルラジカル化合物は、TEMPOまたはその誘導体である。一態様では、上記酸化体は、N-ハロ部分を有する分子である。一態様では、上記酸化体は、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド、ジクロロイソシアヌル酸、1,3,5-トリクロロ-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン、ジブロモイソシアヌル酸、1,3,5-トリブロモ-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン、ジヨードイソシアヌル酸および1,3,5-トリヨード-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオンからなる群から選択される。好ましくは、上記酸化体はN-クロロスクシンイミドである。
【0057】
特定の態様では、酸化剤は、共酸化体としての2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ(TEMPO)フリーラジカルおよびN-クロロスクシンイミド(NCS)である(国際特許出願公開番号WO2014/097099に記載される)。したがって、一態様では、S.ニューモニエ由来のグリココンジュゲートは、以下の工程、すなわち、a)水性溶媒中で糖を2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ(TEMPO)およびN-クロロスクシンイミド(NCS)と反応させて活性化された糖を生成する工程、および、b)活性化された糖を1つ以上のアミン基を含むキャリアタンパク質と反応させる工程を含む方法によって得ることができる(上記方法は、以降「TEMPO/NCS還元的アミノ化」と呼ばれる)。
【0058】
任意に、クエンチ剤を加えることにより酸化反応がクエンチされてもよい。クエンチ剤は、ビシナルジオール、1,2-アミノアルコール、アミノ酸、グルタチオン、サルファイト、バイサルフェート、ジチオナイト、メタバイサルファイト、チオサルフェート、ホスファイト、ハイポホスファイトまたは亜リン酸(グリセロール、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、ブタン-1,2-ジオールまたはブタン-2,3-ジオール、アスコルビン酸など)から選択され得る。
【0059】
還元的アミノ化のためのコンジュゲーションプロセスの第2の工程は、安定なコンジュゲート結合(いわゆる還元的アミノ化)を形成するための還元剤を使用する、活性化多糖体とキャリアタンパク質との間のイミン(シッフ塩基)結合の還元である。好適な還元剤には、シアノ水素化ホウ素(例えばシアノ水素化ホウ素ナトリウム)または水素化ホウ素ナトリウムが含まれる。一実施形態では、還元剤はシアノ水素化ホウ素ナトリウムである。
【0060】
本発明の方法の特定の実施形態では、還元的アミノ化反応は、非プロトン性溶媒(または非プロトン性溶媒の混合物)中で行われる。一実施形態では、還元反応は、DMSO(ジメチルスルホキシド)またはDMF(ジメチルホルムアミド)溶媒中で行われる。凍結乾燥されている場合、DMSOまたはDMF溶媒を使用して、活性化多糖体およびキャリアタンパク質を再構成してもよい。一実施形態では、非プロトン性溶媒はDMSOである。
【0061】
還元反応の最後に、コンジュゲート中に未反応のアルデヒド基が残存し得、これは、好適なキャッピング剤またはクエンチ剤を使用してキャップまたはクエンチングされ得る。一実施形態では、このキャッピング剤またはクエンチ剤は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)である。好適な代替物には、ブレンステッド酸またはルイス酸の存在下でのトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化ホウ素ナトリウムもしくは水素化ホウ素亜鉛)、ピリジンボラン、2-ピコリンボラン、2,6-ジボラン-メタノール、ジメチルアミン-ボラン、t-BuMe’PrN-BH3、ベンジルアミン-BH3もしくは5-エチル-2-メチルピリジンボラン(PEMB)のようなアミンボラン、または水素化ホウ素交換樹脂が含まれる。
【0062】
非プロトン性溶媒中の還元的アミノ化を使用して調製されたグリココンジュゲートは、一般に多価肺炎球菌コンジュゲートワクチンに使用される。したがって、あらゆる血清型が非プロトン性溶媒中で調製されるわけではない多価組成物の特定の実施形態では、残りの血清型の還元反応は、水性溶媒(例えば、PBS(リン酸緩衝食塩水)、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、HEPES、(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、ビス-トリス、ADA(N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸)、PIPES(ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸))、MOPSO(3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、BES(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、DIPSO(3-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸)、MOBS(4-(N-モルホリノ)ブタンスルホン酸)、HEPPSO(N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N-(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸))、POPSO(ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-プロパンスルホン酸))、TEA(トリエタノールアミン)、EPPS(4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-プロパンスルホン酸)、ビシンまたはHEPBから選択される、pH6.0~8.5、7.0~8.0または7.0~7.5において)中で行われる。
【0063】
いくつかの実施形態では、本発明のグリココンジュゲートは、10kDa~10,000kDaの分子量を有する多糖体を含む。他のそのような実施形態では、多糖体は、25kDa~5,000kDaの分子量を有する。他のそのような実施形態では、多糖体は、50kDa~1,000kDaの分子量を有する。他のそのような実施形態では、多糖体は、70kDa~900kDaの分子量を有する。他のそのような実施形態では、多糖体は、100kDa~800kDaの分子量を有する。他のそのような実施形態では、多糖体は、200kDa~600kDaの分子量を有する。さらなるそのような実施形態では、多糖体は、100kDa~1,000kDa、100kDa~900kDa、100kDa~800kDa、100kDa~700kDa、100kDa~600kDa、100kDa~500kDa、100kDa~400kDa、100kDa~300kDa、150kDa~1,000kDa、150kDa~900kDa、150kDa~800kDa、150kDa~700kDa、150kDa~600kDa、150kDa~500kDa、150kDa~400kDa、150kDa~300kDa、200kDa~1,000kDa、200kDa~900kDa、200kDa~800kDa、200kDa~700kDa、200kDa~600kDa、200kDa~500kDa、200kDa~400kDa、200kDa~300、250kDa~1,000kDa、250kDa~900kDa、250kDa~800kDa、250kDa~700kDa、250kDa~600kDa、250kDa~500kDa、250kDa~400kDa、250kDa~350kDa、300kDa~1,000kDa、300kDa~900kDa、300kDa~800kDa、300kDa~700kDa、300kDa~600kDa、300kDa~500kDa、300kDa~400kDa、400kDa~1,000kDa、400kDa~900kDa、400kDa~800kDa、400kDa~700kDa、400kDa~600kDaまたは500kDa~600kDaの分子量を有する。
【0064】
特定の実施形態では、コンジュゲーション反応は還元的アミノ化によって行われ、コンジュゲーション反応の効率を高め、遊離シアン化物の除去を促進するためにニッケルが使用される。遷移金属はシアン化物と安定な錯体を形成することが知られており、シアノ水素化ホウ素ナトリウムによるタンパク質アミノ基とホルムアルデヒドとの還元的メチル化を改善することが知られている(S Gidley et al.,Biochem J.1982,203:331-334;Jentoft et al.Anal Biochem.1980,106:186-190)。ニッケルの添加は、残存する抑制性シアン化物と複合体を形成することにより、コンジュゲーション中のタンパク質の消費を増加させ、さらに大きく潜在的にさらに免疫原性の高いコンジュゲートの形成をもたらす。
【0065】
好適な代替化学には、1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)による糖の活性化によるシアネートエステルの形成が含まれる。したがって、活性化された糖は、直接またはスペーサー(リンカー)基を介してキャリアタンパク質上のアミノ基に結合され得る。例えば、スペーサーは、チオール化多糖体をもたらすシスタミンまたはシステアミンであり得、これは、マレイミド活性化キャリアタンパク質(例えば、GMBSを使用して)またはハロアセチル化キャリアタンパク質(例えば、ヨードアセトイミド[例えば、エチルヨードアセトイミドHCl]またはN-スクシンイミジルブロモアセテートまたはSIAB、またはSIA、またはSBAPを使用して)との反応後に得られるチオエーテル結合を介してキャリアに結合することができる。好ましくは、シアネートエステル(CDAP化学により作製されてもよい)は、ヘキサンジアミンまたはアジピン酸ジヒドラジド(ADH)と結合し、アミノ誘導体化糖は、カルボジイミド(例えば、EDACまたはEDC)化学を使用して、タンパク質キャリア上のカルボキシル基を介してキャリアタンパク質にコンジュゲートされる。そのようなコンジュゲートは、国際特許出願公開番号WO93/15760、国際特許出願公開番号WO95/08348および国際特許出願公開番号WO96/29094ならびにChu et al.,1983,Infect.Immunity 40:245-256に記載されている。
【0066】
他の好適な技術は、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボルネン、p-ニトロ安息香酸、N-ヒドロキシスクシンイミド、S--NHS、EDC、TSTUを使用する。多くは国際特許出願公開番号WO98/42721に記載されている。コンジュゲーションには、糖の遊離ヒドロキシル基とCDIとの反応(Bethell et al.,1979,J.Biol.Chem.254:2572-4;Hearn et al.,1981,J.Chromatogr.218:509-18を参照)、次いでタンパク質との反応によりカルバメート結合を形成することにより形成され得るカルボニルリンカーが含まれ得る。これには、第一級ヒドロキシル基へのアノマー末端の還元、任意に第一級ヒドロキシル基の保護/脱保護、第一級ヒドロキシル基とCDIとの反応によるCDIカルバメート中間体の形成、およびCDIカルバメート中間体とタンパク質上のアミノ基とのカップリングが含まれ得る。
【0067】
コンジュゲーション(還元反応および任意にキャッピングまたはクエンチング反応)に続いて、グリココンジュゲートは、当業者に公知の様々な技術によって精製(多糖体-タンパク質コンジュゲートの量に関して濃縮)されてもよい。これらの技術には、透析、濃縮/ダイアフィルトレーション操作、接線流濾過、限外濾過、沈殿/溶出、カラムクロマトグラフィー(イオン交換クロマトグラフィー、マルチモーダルイオン交換クロマトグラフィー、DEAEまたは疎水性相互作用クロマトグラフィー)および深層濾過が含まれる。例えば、米国特許第6,146,902号を参照されたい。一実施形態では、グリココンジュゲートは、ダイアフィルトレーションまたはイオン交換クロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィーにより精製される。
【0068】
本発明のグリココンジュゲートを特徴付ける1つの方法は、糖にコンジュゲートされるキャリアタンパク質(例えば、CRM197)中のリジン残基の数によるものであり、これは、コンジュゲートされたリジンの範囲(コンジュゲーションの程度)として特徴付けることができる。多糖体への共有結合によるキャリアタンパク質のリジン修飾の証拠は、当業者に公知のルーチンの方法を使用したアミノ酸分析により得ることができる。コンジュゲーションにより、コンジュゲート材料を作製するために使用されるキャリアタンパク質出発材料と比較して、回収されるリジン残基の数が減少する。好ましい実施形態では、本発明のグリココンジュゲートのコンジュゲーションの程度は、2~15、2~13、2~10、2~8、2~6、2~5、2~4、3~15、3~13、3~10、3~8、3~6、3~5、3~4、5~15、5~10、8~15、8~12、10~15または10~12である。一実施形態では、本発明のグリココンジュゲートのコンジュゲーションの程度は、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14または約15である。好ましい実施形態では、本発明のグリココンジュゲートのコンジュゲーションの程度は4~7である。いくつかのそのような実施形態では、キャリアタンパク質はCRM197である。
【0069】
本発明のグリココンジュゲートはまた、糖とキャリアタンパク質との比(重量/重量)によって特徴付けられてもよい。いくつかの実施形態では、グリココンジュゲート中の多糖体とキャリアタンパク質との比(w/w)は、0.5~3.0(例えば、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9または約3.0)である。他の実施形態では、糖とキャリアタンパク質との比(w/w)は、0.5~2.0、0.5~1.5、0.8~1.2、0.5~1.0、1.0~1.5または1.0~2.0である。さらなる実施形態では、糖とキャリアタンパク質との比(w/w)は0.8~1.2である。好ましい実施形態では、コンジュゲート中の莢膜多糖体とキャリアタンパク質との比は0.9~1.1である。いくつかのそのような実施形態では、キャリアタンパク質はCRM197である。本発明のグリココンジュゲートおよび免疫原性組成物は、キャリアタンパク質に共有結合的にコンジュゲートされていない遊離糖を含有してもよく、それにもかかわらずグリココンジュゲート組成物中に存在する。遊離糖は、グリココンジュゲートと非共有結合的に結合(すなわち、グリココンジュゲートに、非共有結合、吸着またはグリココンジュゲートに捕捉もしくはグリココンジュゲートによって捕捉)され得る。
【0070】
好ましい実施形態では、グリココンジュゲートは、多糖体の総量と比較して約50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%または15%未満の遊離多糖体を含む。好ましい実施形態では、グリココンジュゲートは、多糖体の総量と比較して約25%未満の遊離多糖体を含む。好ましい実施形態では、グリココンジュゲートは、多糖体の総量と比較して約20%未満の遊離多糖体を含む。好ましい実施形態では、グリココンジュゲートは、多糖体の総量と比較して約15%未満の遊離多糖体を含む。
【0071】
多価多糖体-タンパク質コンジュゲートワクチン
本発明の特定の実施形態では、多価多糖体ワクチンは、多価肺炎球菌ワクチンを提供するために、遊離多糖体、多糖体-タンパク質コンジュゲートの成分またはそれらの組合せとして、非コンジュゲートS.ニューモニエ血清型16F多糖体および/または血清型16F由来の多糖体-タンパク質コンジュゲートと、S.ニューモニエ血清型1、2、3、4、5、6A、6B、6C、6D、7B、7C、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15A、15B、15C、17F、18B、18C、19A、19F、20、21、22A、22F、23A、23B、23F、24B、24F、27、28A、31、33F、34、35A、35B、35Fおよび38のうちの1つ以上に由来する莢膜多糖体とを含む。本発明の特定の実施形態では、免疫原性組成物は、1つ以上のキャリアタンパク質に個々にコンジュゲートされた、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43または44のS.ニューモニエ血清型由来の莢膜多糖体を含むか、それから本質的になるか、それからからなる。好ましくは、特定の血清型に由来する糖は、複数のキャリアタンパク質にはコンジュゲートされていない。
【0072】
個々のグリココンジュゲートを精製した後、それらを配合して、本発明の免疫原性組成物を製剤化する。これらの肺炎球菌コンジュゲートは、別個のプロセスによって調製され、単一の投与製剤にバルク製剤(bulk formulated)される。
【0073】
医薬組成物/ワクチン組成物
本発明はさらに、薬学的に許容される担体およびアジュバントとともに、上記の多糖体S.ニューモニエ血清型の組合せのいずれかを含むか、本質的にそれからなるか、それからなる医薬、免疫原性およびワクチン組成物を含む組成物を提供する。
【0074】
本発明の多糖体-タンパク質コンジュゲートの製剤化は、当技術分野で認識されている方法を使用して達成され得る。例えば、個々の肺炎球菌コンジュゲートは、組成物を調製するために生理学的に許容されるビヒクルを配合され得る。そのようなビヒクルの例には、限定するものではないが、水、緩衝食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)およびデキストロース溶液を含む。
【0075】
好ましい実施形態では、ワクチン組成物は、塩化ナトリウムを含むL-ヒスチジン緩衝液と製剤化される。
【0076】
本明細書で定義されるように、「アジュバント」とは、本発明の免疫原性組成物の免疫原性を高めるのに役立つ物質である。免疫アジュバントは、単独で投与された場合に弱い免疫原性である、例えば、抗体価をまったく誘発しないか、弱い抗体価を誘発するか、細胞性免疫応答を誘発する抗原に対する免疫応答を増強し、抗原に対する抗体価を増加させ得、および/または個体の免疫応答を達成するのに有効な抗原の用量を低下させる。したがって、アジュバントは、しばしば免疫応答を促進するために投与され、当業者に周知である。組成物の有効性を高めるための好適なアジュバントには、限定するものではないが、以下が含まれる:
(1)アルミニウム塩(ミョウバン)、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなど;
(2)(ムラミルペプチド(以下に定義)などの特定の免疫刺激剤または細菌細胞壁成分の有無にかかわらず)水中油型エマルジョン製剤、例えば、(a)モデル110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics,Newton,MA)などのマイクロフルイダイザーを使用してサブミクロン粒子に配合された5%スクアレン、0.5%Tween 80および0.5%Span 85を含有する(様々な量のMTP-PEを含有してもよい)MF59(国際特許出願公開番号WO90/14837)、(b)サブミクロンエマルジョンにマイクロ流動化されるか、大きな粒径のエマルジョンを生成するためにボルテックスされた10%スクアレン、0.4%Tween 80、5%プルロニックブロックポリマーL121およびthr-MDPを含有するSAF、(c)2%スクアレン、0.2%Tween 80、ならびに米国特許第4,912,094号に記載の3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(MPL(商標))、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))からなる群からの1つ以上の細菌細胞壁成分を含有するRibi(商標)アジュバント系(RAS)、(Corixa,Hamilton,MT);(d)Montanide ISA;
(3)Quil AまたはSTIMULON(商標)QS-21(Antigenics,Framingham,MA)のようなサポニンアジュバント(例えば、米国特許第5,057,540号を参照)が使用されるか、ISCOM(コレステロール、サポニン、リン脂質および両親媒性タンパク質の組合せにより形成された免疫刺激複合体)およびIscomatrix(登録商標)(ISCOMと本質的に同じ構造を有するが、タンパク質を含まない)のようなそれから生成された粒子;
(4)Corixaから入手可能であり、米国特許第6,113,918号に記載されているアミノアルキルグルコサミンホスフェート化合物(AGP)またはその誘導体もしくは類似体などの細菌リポ多糖、合成脂質A類似体;そのようなAGPの1種は、水性形態または安定なエマルジョンとして製剤化されている529としても知られている(以前はRC529として知られていた)2-[(R)-3-テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル2-デオキシ-4-O-ホスホノ-3-O-[(R)-3-テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]-2-[(R)-3-テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-b-D-グルコピラノシドである;
(5)(1または複数の)CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチドなどの合成ポリヌクレオチド(米国特許第6,207,646号);
(6)サイトカイン、例えば、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18など)、インターフェロン(例えば、ガンマインターフェロン)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、共刺激分子B7-1およびB7-2など;ならびに
(7)補体、例えば、補体成分C3dの三量体。
【0077】
別の実施形態では、アジュバントは、上記のアジュバントのうちの2つ、3つまたはそれ以上の混合物、例えば、SBAS2(3-脱アシル化モノホスホリルリピドAおよびQS21も含有する水中油型エマルジョン)である。
【0078】
ムラミルペプチドには、限定するものではないが、N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノルムラミル-L-アラニン-2-(1’,2’-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(MTP-PE)などが含まれる。
【0079】
特定の実施形態では、アジュバントはアルミニウム塩である。アルミニウム塩アジュバントは、ミョウバン沈殿ワクチンまたはミョウバン吸着ワクチンであり得る。アルミニウム塩アジュバントは、当技術分野で周知であり、例えば、Harlow,E.and D.Lane(1988;Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory)およびNicklas,W.(1992;Aluminum salts.Research in Immunology 143:489-493)に記載されている。アルミニウム塩には、限定するものではないが、水和アルミナ、アルミナ水和物、アルミナ三水和物(ATH)、アルミニウム水和物、アルミニウム三水和物、Alhydrogel(登録商標)、Superfos、Amphogel(登録商標)、水酸化アルミニウム(III)、ヒドロキシリン酸アルミニウム(リン酸アルミニウムアジュバント(APA))、非晶質アルミナ、三水和アルミナまたはトリヒドロキシアルミニウムが含まれる。
【0080】
APAは、ヒドロキシリン酸アルミニウムの水性懸濁液である。APAは、塩化アルミニウムとリン酸ナトリウムとを1:1の体積比でブレンドして、ヒドロキシリン酸アルミニウムを沈殿させることにより製造される。ブレンドプロセス後、高せん断ミキサーを用いて材料のサイズを縮小して、単分散の粒径分布を達成する。次いで、生理食塩水に対して生成物をダイアフィルトレーションし、蒸気滅菌する。
【0081】
特定の実施形態では、市販のAl(OH)3(例えば、Denmark/Accurate Chemical and Scientific Co.,Westbury,NYのAlhydrogel(登録商標)またはSuperfos)を使用してタンパク質を吸着する。別の実施形態では、タンパク質の吸着は、タンパク質のpI(等電pH)および培地のpHに依存する。pIが低いタンパク質は、pIが高いタンパク質よりも強力に正荷電アルミニウムイオンに吸着する。アルミニウム塩は2~3週間かけてゆっくりと放出されるAgの貯蔵部を確立し、マクロファージの非特異的活性化および補体の活性化に関与し得、および/または(おそらくは尿酸の刺激を通じた)先天性免疫機構を刺激し得る。例えば、Lambrecht et al.,2009,Curr Opin Immunol 21:23を参照されたい。
【0082】
一価のバルク水性コンジュゲートは、典型的には一緒にブレンドされ、希釈される。希釈したら、バッチを滅菌濾過する。リン酸アルミニウムアジュバントを無菌的に加えて、血清型6Bを除くあらゆるS.ニューモニエ血清型の最終濃度4μg/mLを目標とし、これを8μg/mLの目標値まで希釈し、最終アルミニウム濃度を250μg/mLにする。アジュバント化された製剤バッチをバイアルまたはシリンジに充填する。
【0083】
特定の実施形態では、アジュバントは、CpG含有ヌクレオチド配列、例えば、CpG含有オリゴヌクレオチド、特にCpG含有オリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)である。別の実施形態では、アジュバントは、Coley Pharmaceutical Groupから入手することができるODN 1826である。
【0084】
「CpG含有ヌクレオチド」、「CpG含有オリゴヌクレオチド」、「CpGオリゴヌクレオチド」および同様の用語は、非メチル化CpG部分を含む長さ6~50ヌクレオチドのヌクレオチド分子を指す。例えば、Wang et al.,2003,Vaccine 21:4297を参照されたい。別の実施形態では、この用語の当技術分野で認められた任意の他の定義が意図されている。CpG含有オリゴヌクレオチドには、任意の合成ヌクレオシド間結合、修飾塩基および/または修飾糖を使用した修飾オリゴヌクレオチドが含まれる。
【0085】
CpGオリゴヌクレオチドの使用方法は当技術分野で周知であり、例えば、Sur et al.,1999,J Immunol.162:6284-93;Verthelyi,2006,Methods Mol Med.127:139-58;およびYasuda et al.,2006,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst.23:89-110に記載されている。
【0086】
投与/投与量
本発明の組成物および製剤は、全身または粘膜経路を介してワクチンを投与することにより、感染症、例えば肺炎球菌感染症に易感染性のヒトを防御または治療するために使用することができる。一実施形態では、本発明は、S.ニューモニエ莢膜多糖体コンジュゲートに対する免疫応答を誘発する方法であって、本発明の免疫原性組成物の免疫学的有効量をヒトに投与することを含む方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、肺炎球菌感染に対してヒトをワクチン化する方法であって、本発明の免疫原性組成物の免疫学的有効量をヒトに投与する工程を含む方法を提供する。
【0087】
特定のワクチンに対する成分の最適量は、対象の適切な免疫応答の観察を含む標準的な試験によって確認することができる。例えば、別の実施形態では、ヒトワクチン化の投与量は、動物試験からヒトデータに外挿することにより決定される。別の実施形態では、投与量は経験的に決定される。
【0088】
本発明の組成物の「有効量」とは、後続のチャレンジ中に、微生物、例えばS.ニューモニエの感染の可能性または重症度を顕著に低下させる抗体を誘発するのに必要な用量を指す。
【0089】
本発明の方法は、侵襲性感染症(髄膜炎、肺炎および菌血症)および非侵襲性感染症(急性中耳炎および副鼻腔炎)の両方を含む、微生物、例えばS.ニューモニエによって引き起こされる原発性臨床症候群の予防および/または軽減に使用することができる。
【0090】
本発明の組成物の投与には、筋肉内、腹腔内、皮内もしくは皮下経路を介した注射、または口腔/消化管、呼吸器管もしくは泌尿生殖器管への粘膜投与を介したもののうち1つ以上を含み得る。一実施形態では、肺炎または中耳炎の治療に鼻腔内投与が使用される(肺炎球菌の鼻咽頭保菌を比較的効果的に予防し、ひいては初期段階で感染を減弱させることができるため)。
【0091】
各ワクチン用量中のコンジュゲートの量は、重大な有害作用を伴うことなく免疫防御応答を誘発する量として選択される。そのような量は、肺炎球菌血清型によって異なり得る。一般に、多糖体ベースのコンジュゲートの場合、各用量は0.1~100μgの各多糖体、具体的には0.1~10μg、さらに具体的には1~5μgを含む。例えば、各用量は、100、150、200、250、300、400、500もしくは750ngまたは1、1.5、2、3、4、5、6、7、7.5、8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、20、22、25、30、40、50、60、70、80、90もしくは100μgの各多糖体を含むことができる。
【0092】
特定のワクチンに対する成分の最適量は、対象の適切な免疫応答の観察を含む標準的な試験によって確認することができる。例えば、別の実施形態では、ヒトワクチン化の投与量は、動物試験からヒトデータに外挿することにより決定される。別の実施形態では、投与量は経験的に決定される。
【0093】
一実施形態では、アルミニウム塩の用量は、10、15、20、25、30、50、70、100、125、150、200、300、500もしくは700μgまたは1、1.2、1.5、2、3、5mg又はそれ以上である。さらに別の実施形態では、上記のアルミニウム塩の用量は、組換えタンパク質1μg当たりである。
【0094】
一般に、各0.5mL用量は、4μgの血清型6B多糖体を除き、2μgの各S.ニューモニエ多糖体、約32μgのCRM197キャリアタンパク質(例えば、32μg±5μg、±3μg、±2μgまたは±1μg)、0.125mgの元素アルミニウム(0.5mgのリン酸アルミニウム)アジュバント、ならびに塩化ナトリウムおよびL-ヒスチジン緩衝液を含有するように製剤化される。塩化ナトリウム濃度は、約150mM(例えば、150mM±25mM、±20mM、±15mM、±10mMまたは±5mM)であり、そして約20mM(例えば、20mM±5mM、±2.5mM、±2mM、±1mMまたは±0.5mM)のL-ヒスチジン緩衝液である。
【0095】
本発明の方法のいずれかによれば、一実施形態では、対象はヒトである。特定の実施形態では、ヒト患者は、乳児(1歳未満)、歩き始めの幼児(約12~24カ月)または幼児(約2~5歳)である。他の実施形態では、ヒト患者は高齢患者(65歳超)である。本発明の組成物はまた、年長の小児、青少年および成人(例えば、18歳~45歳または18歳~65歳)に使用するのに適している。
【0096】
本発明の方法の一実施形態では、本発明の組成物は単回接種として投与される。別の実施形態では、組成物は、適切に間隔を空けて2回、3回または4回以上投与される。例えば、組成物は、1、2、3、4、5もしくは6カ月間隔で、またはそれらの任意の組合せで投与され得る。予防接種スケジュールは、肺炎球菌ワクチン用に指定されたスケジュールに従うことができる。例えば、S.ニューモニエによって引き起こされる侵襲性疾患に対する乳幼児のルーチンのスケジュールは、月齢2、4、6および12~15カ月である。したがって、好ましい実施形態では、組成物は、月齢2、4、6および12~15カ月での4回投与シリーズとして投与される。
【0097】
本発明の組成物はまた、S.ニューモニエ由来の1つ以上のタンパク質を含み得る。含めるのに適したS.ニューモニエタンパク質の例には、国際特許出願公開番号WO02/083855および国際特許出願公開番号WO02/053761で同定されたものを含む。
【0098】
製剤
本発明の組成物は、非経口的、経粘膜的、経皮的、筋肉内、静脈内、皮内、鼻腔内、皮下、腹腔内のような当業者に公知の1つ以上の方法によって対象に投与することができ、それに応じて製剤化することができる。
【0099】
一実施形態では、本発明の組成物は、液体製剤の表皮注射、筋肉内注射、静脈内、動脈内、皮下注射または呼吸器内粘膜注射を介して投与される。注射用の液体製剤は、溶液などを含む。
【0100】
本発明の組成物は、単回用量バイアル、複数回用量バイアルまたは事前充填シリンジとして製剤化することができる。
【0101】
別の実施形態では、本発明の組成物は経口投与され、したがって、経口投与に適した形態で、すなわち、固体または液体製剤として製剤化される。固体経口製剤には、錠剤、カプセル、丸薬、顆粒、ペレットなどが含まれる。液体経口製剤には、溶液、懸濁液、分散液、エマルジョン、油類などが含まれる。
【0102】
液体製剤用の薬学的に許容される担体は、水性もしくは非水性の溶液、懸濁液、エマルジョンまたは油類である。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびオレイン酸エチルのような注射用有機エステルである。水性担体には、水、アルコール性溶液/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液、例えば、生理食塩水および緩衝媒体が含まれる。油類の例は、動物、植物または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、オリーブ油、ヒマワリ油、魚肝油、別の魚油、または乳汁もしくは卵に由来する脂質である。
【0103】
医薬組成物は、等張性、低張性または高張性であり得る。しかし、注入または注射用の医薬組成物は、投与時に本質的に等張性であることがしばしば好ましい。したがって、医薬組成物は、保存のために好ましくは等張性または高張性であり得る。医薬組成物が保存のために高張性である場合、投与前に希釈して等張性溶液にすることができる。
【0104】
等張剤は、塩のようなイオン性等張剤または炭水化物のような非イオン性等張剤であり得る。イオン性等張剤の例には、限定するものではないが、NaCl、CaCl2、KClおよびMgCl2を含む。非イオン性等張剤の例には、限定するものではないが、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトールおよびグリセロールを含む。
【0105】
また、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤は、緩衝液であることが好ましい。いくつかの目的のために、例えば、医薬組成物が注入または注射用を意味する場合、組成物は、4~10、例えば5~9、例えば6~8の範囲のpHに溶液を緩衝することができる緩衝液を含むことがしばしば望ましい。
【0106】
緩衝液は、例えば、トリス、アセテート、グルタメート、ラクテート、マレエート、タータレート、ホスフェート、シトレート、カーボネート、グリシネート、L-ヒスチジン、グリシン、スクシネートおよびトリエタノールアミン緩衝液からなる群から選択され得る。
【0107】
緩衝液は、例えば、特に医薬製剤が非経口使用用である場合、非経口使用用のUSP適合緩衝液からさらに選択され得る。例えば、緩衝液は、一塩基酸、例えば酢酸、安息香酸、グルコン酸、グリセリン酸および乳酸;二塩基酸、例えばアコニット酸、アジピン酸、アスコルビン酸、炭酸、グルタミン酸、リンゴ酸、コハク酸および酒石酸、多塩基酸、例えばクエン酸およびリン酸;ならびに塩基、例えばアンモニア、ジエタノールアミン、グリシン、トリエタノールアミンおよびトリスからなる群から選択され得る。
【0108】
非経口ビヒクル(皮下、静脈内、動脈内または筋肉内注射用)には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液および固定油が含まれる。静脈内ビヒクルには、液体および栄養補給液、リンゲルデキストロースに基づくものなどのような電解質補給液などが含まれる。例は、界面活性剤および他の薬学的に許容されるアジュバントの添加の有無にかかわらず、水および油類のような滅菌液体である。一般に、水、生理食塩水、水性デキストロースおよび関連糖溶液、グリコール、例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール、ポリソルベート80(PS-80)、ポリソルベート20(PS-20)およびポロキサマー188(P188)が、特に注射用溶液に好ましい液体担体である。油類の例は、動物、植物または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、オリーブ油、ヒマワリ油、魚肝油、別の魚油、または乳汁もしくは卵に由来する脂質である。
【0109】
製剤はまた、界面活性剤を含有してもよい。好ましい界面活性剤には、限定するものではないが、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般にTweenと呼ばれる)、特にPS-20およびPS-80;DOWFAX(商標)の商品名の下に販売されているエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー、例えば、直鎖EO/POブロックコポリマー;反復エトキシ(オキシ-1,2-エタンジイル)基の数が様々であり得るオクトキシノール、オクトキシノール-9(Triton X-100またはt-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が特に興味深い;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA-630/NP-40);リン脂質、例えば、ホスファチジルコリン(レシチン);ノニルフェノールエトキシレート、例えば、Tergitol(商標)NPシリーズ;ラウリル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコール(Brij界面活性剤として知られる)から誘導されたポリオキシエチレン脂肪エーテル、例えばトリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30);ならびにソルビタンエステル(一般にSPANとして知られている)、例えば、ソルビタントリオレエート(Span 85)およびソルビタンモノラウレートが含まれる。エマルジョンに含めるのに好ましい界面活性剤は、PS-20またはPS-80である。
【0110】
界面活性剤の混合物、例えば、PS-80/Span 85混合物を使用することができる。ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(PS-80)のようなポリオキシエチレンソルビタンエステルとt-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X-100)のようなオクトキシノールとの組合せも適している。別の有用な組合せは、ラウレス9+ポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/またはオクトキシノールを含む。
【0111】
界面活性剤の好ましい量は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(PS-80など)0.01~1%w/v、特に約0.1%w/v;オクチルまたはノニルフェノキシポリオキシエタノール(Triton X-100、またはTritonシリーズの他の洗浄剤など)0.001~0.1%w/v、特に0.005~0.02%w/v;ポリオキシエチレンエーテル(ラウレス9など)0.1~20%w/v、好ましくは0.1~10%w/v、特に0.1~1%w/vまたは約0.5%w/vである。
【0112】
特定の実施形態では、組成物は、本質的に250μg/mLのAPA(リン酸アルミニウムアジュバント)とともにL-ヒスチジン(20mM)、生理食塩水(150mM)、およびpH5.8の0.2%w/vのPS-20からなる。PS-20は0.005から0.1%w/vの範囲であり得、製剤中のPS-20またはPS-80の存在は、製造のシミュレーション中、および一次包装を使用した出荷中の凝集を制御する。プロセスは、L-ヒスチジン、塩化ナトリウムおよびPS-20中の最大44のS.ニューモニエ多糖体血清型のブレンドを組み合わせることと、次いで、このブレンドされた材料とAPAおよび塩化ナトリウムとを、抗菌防腐剤の有か無で組み合わせることからなる。
【0113】
界面活性剤の選択は、異なる薬物製品および薬物物質に合わせて最適化する必要があり得る。15以上のS.ニューモニエ多糖体血清型を含有する多価ワクチンの場合、PS-20およびP188が好ましい。コンジュゲートの調製に使用される化学の選択も、製剤の安定化に影響を与える可能性がある。特に、以下に例示されるように、水性またはDMSO溶媒中で調製され、多価組成物に組み合わされた肺炎球菌多糖体-タンパク質コンジュゲートは、製剤に使用される特定の界面活性剤系に依存して安定性に顕著な差を示す。
【0114】
本明細書に記載の製剤では、ポロキサマーは、一般に、1,100Da~17,400Da、7,500Da~15,000Daまたは7,500Da~10,000Daの範囲の分子量を有する。ポロキサマーは、ポロキサマー188またはポロキサマー407から選択することができる。本発明の製剤中のポロキサマーの最終濃度は、0.001~5%w/vまたは0.025~1%w/vである。ポロキサマーを含む界面活性剤系は、ポリオールをさらに含まなければならない。特定の態様では、ポリオールはプロピレングリコールであり、1~20%w/vの最終濃度にある。特定の態様では、ポリオールはポリエチレングリコール400であり、1~20%w/vの最終濃度にある。
【0115】
製剤に適したポリオールは、ポリマー性ポリオール、特に、限定するものではないが、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを含むポリエーテルジオールである。プロピレングリコールは、約425Da~約2,700Daのモノマーの分子量の範囲で入手可能である。ポリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールモノメチルエーテルはまた、限定するものではないが、PEG200、PEG300、PEG400、PEG1000、PEG MME 550、PEG MME 600、PEG MME 2000、PEG MME 3350およびPEG MME 4000を含め、約200Da~約35,000Daの範囲の分子量の範囲で入手可能である。好ましいポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール400である。製剤中のポリオールの最終濃度は、1~20%w/vまたは6~20%w/vであってよい。
【0116】
製剤はまた、pH緩衝生理食塩水を含有する。緩衝液は、例えば、トリス、アセテート、グルタメート、ラクテート、マレエート、タータレート、ホスフェート、シトレート、カーボネート、グリシネート、L-ヒスチジン、グリシン、スクシネート、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)およびトリエタノールアミン緩衝液からなる群から選択されてもよい。緩衝液は、溶液を4~10、5.2~7.5または5.8~7.0の範囲のpHに緩衝することができる。特定の態様では、ホスフェート、スクシネート、L-ヒスチジン、MES、MOPS、HEPES、アセテートまたはシトレートからなる群から選択される緩衝液である。緩衝液は、例えば、特に医薬製剤が非経口使用用である場合、非経口使用用のUSP適合緩衝液からさらに選択され得る。緩衝液の濃度は、1mM~50mMまたは5mM~50mMの範囲である。特定の態様では、緩衝液は、5mM~50mMの最終濃度のL-ヒスチジンまたは1mM~10mMの最終濃度のスクシネートである。特定の態様では、L-ヒスチジンは20mM±2mMの最終濃度にある。
【0117】
生理食塩水(すなわち、NaClを含有する溶液)が好ましいが、製剤に適した他の塩には、限定するものではないが、CaCl2、KClおよびMgCl2ならびにそれらの組合せが含まれる。限定するものではないが、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトールおよびグリセロールを含む非イオン性等張剤が塩の代わりに使用されてもよい。好適な塩の範囲には、限定するものではないが、25mM~500mMまたは40mM~170mMが含まれる。一態様では、生理食塩水はNaClであり、場合により20mM~170mMの濃度で存在してもよい。
【0118】
好ましい実施形態では、製剤は、塩化ナトリウムとともにL-ヒスチジン緩衝液を含む。
【0119】
別の実施形態では、医薬組成物は制御放出システムで送達される。例えば、薬剤は、静脈内注入、経皮パッチ、リポソームまたは他の投与様式を使用して投与することができる。別の実施形態では、例えば、ポリマー材料は、微小球内またはインプラント内で使用される。
【0120】
本発明の組成物はまた、S.ニューモニエ由来の1つ以上のタンパク質を含み得る。含めるのに適したS.ニューモニエタンパク質の例には、国際特許出願公開番号WO02/083855および国際特許出願公開番号WO02/053761で同定されたものを含む。
【0121】
分析方法
HPSEC/UV/MALS/RIアッセイを使用したコンジュゲートの分子量および濃度分析
高速サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)によってコンジュゲート試料が注入および分離される。紫外線(UV)、多角度光散乱(MALS)および屈折率(RI)検出器を順次使用して検出が達成される。吸光係数を使用してUV280からタンパク質濃度が計算される。mL/gで報告された溶質濃度の変化を伴う、溶液の屈折率の変化であるdn/dc因子を使用して、RIシグナル(タンパク質および多糖体の両方によってもたらされる)から多糖体濃度がデコンボリューションされる。全試料ピークにわたる測定濃度および光散乱情報を使用するAstraソフトウェア(Wyatt Technology Corporation,Santa Barbara,CA)によって、試料の平均分子量が計算される。多分散分子の分子量の平均値には複数の形態がある。例えば、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mwおよびz平均分子量Mz(Molecules,2015,20:10313-10341)である。指定されない限り、本明細書全体にわたって使用される用語「分子量」は、重量平均分子量である。
【0122】
多糖体とキャリアタンパク質との間の共有結合の数の尺度としてのコンジュゲートされたタンパク質のリジン消費の決定
コンジュゲート試料のコンジュゲーションの程度を測定するためにWaters AccQ-Tagアミノ酸分析(AAA)が使用される。Eldexワークステーションにおいて気相酸加水分解を使用して試料を加水分解して、キャリアタンパク質をそれらの成分のアミノ酸に分解する。6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(AQC)を使用して遊離アミノ酸を誘導体化する。次いで、C18カラム上でのUV検出を伴うUPLCを使用して、誘導体化された試料を分析する。リジン以外の代表的なアミノ酸を使用して平均タンパク質濃度を得る。コンジュゲーション中のリジン消費(すなわちリジン損失)は、コンジュゲート中の平均測定リジン量と出発タンパク質中の予測リジン量との差によって決定される。
【0123】
遊離多糖体試験
コンジュゲート試料中の遊離多糖体(すなわち、CRM197とコンジュゲートされていない多糖体)を、遊離タンパク質、ならびにデオキシコレート(DOC)および塩酸とのコンジュゲートを最初に沈殿させることによって、測定する。次いで、沈殿物を濾過し、濾液を、遊離多糖体濃度について、HPSEC/UV/MALS/RIにより分析する。遊離多糖体は、HPSEC/UV/MALS/RIによって測定された総多糖体の割合として計算される。
【0124】
遊離タンパク質試験
ミセル動電クロマトグラフィー(MEKC)モードのキャピラリー電気泳動により、コンジュゲート試料中の遊離多糖体、多糖体‐CRM197コンジュゲートおよび遊離CRM197を分離する。簡潔には、試料を25mMボレート、100mM SDS、pH9.3を含有するMEKCランニング緩衝液と混合し、プレコンディションされた裸溶融シリカキャピラリーで分離する。分離を200nmでモニターし、CRM197標準曲線を用いて遊離CRM197を定量する。遊離タンパク質の結果は、HPSEC/UV/MALS/RI手順によって決定された総タンパク質含有量の割合として報告される。
【0125】
添付の説明および図面を参照して本発明の様々な実施形態を説明してきたが、本発明はこれらの正確な実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲または精神から逸脱することなく、当業者によって様々な変更および修正が行われ得ることを理解されたい。
【0126】
以下の実施例は、本発明を例示するが限定するものではない。
【0127】
[実施例]
[実施例1]
S.ニューモニエ莢膜多糖体の調製
肺炎球菌を培養する方法は、当技術分野で周知である。例えば、Chase,1967,Methods of Immunology and Immunochemistry 1:52を参照されたい。肺炎球菌莢膜多糖体を調製する方法も当技術分野で周知である。例えば、欧州特許番号EP0497524B1を参照されたい。以下に説明するプロセスは、一般に、欧州特許番号EP0497524B1に記載された方法に従い、特に変更された場合を除き、あらゆる肺炎球菌血清型に一般に適用可能である。
【0128】
肺炎球菌サブタイプ16Fの単離株は、Merck Culture Collectionから得た。必要に応じて、特異的抗血清を使用したQuelling反応に基づいてサブタイプを区別することができる。例えば、米国特許第5,847,112号を参照されたい。大豆ペプトン、酵母エキス、および、ヘミンを含まないグルコースを含有する動物成分不含培地からなる寒天プレート上に二段階で連続的に播種することにより、得られた単離株をさらにクローン単離した。大豆ペプトン、酵母エキス、HEPES、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カリウム、グルコースおよびグリセロールを含有する動物成分不含培地を使用した液体培養で、各血清型のクローン単離株をさらに増殖させて、プレマスター細胞バンクを調製した。
【0129】
肺炎球菌多糖体の各血清型の生成は、細胞増殖と、バッチ生産発酵、それに続く下流精製前の化学的不活化とからなった。大豆ペプトンまたは大豆ペプトン限外濾過物、酵母エキスまたは酵母エキス限外濾過物、HEPES、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カリウムおよびグルコースを含有する予め滅菌された動物成分不含増殖培地を含む振盪フラスコまたは培養ボトルを使用して、各血清型からの解凍された細胞バンクのバイアルを増殖させた。密閉振盪フラスコまたはボトル内で細胞増殖培養物を増殖させて、温度および撹拌制御によるガス交換を最小限に抑えた。600nmでの光学密度によって測定されるように、特定の培養密度を達成した後、大豆ペプトンまたは大豆ペプトン限外濾過物、酵母エキスまたは酵母エキス限外濾過物、塩化ナトリウム、リン酸カリウムおよびグルコースを含有する予め滅菌された動物成分不含増殖培地を含む生産発酵槽に細胞増殖培養物の一部を移した。温度、pH、圧力および撹拌を制御した。スパージングを使用しなかったため、気流オーバーレイ(Airflow overlay)も制御した。
【0130】
グルコースがほぼ枯渇した際に、化学的不活化剤、フェノールを加えることによりバッチ発酵を終了した。純粋なフェノールを0.8~1.2%の最終濃度まで加えて細胞を不活化し、細胞壁から莢膜多糖体を遊離させた。一次不活化は、温度および撹拌が継続して制御される発酵槽内で特定の時間にわたり起こる。一次不活化後、バッチを別の容器に移し、そこで、完全に不活化するために、温度および撹拌を制御しながらさらに特定の時間にわたり保持した。これは、微生物プレーティング技術によって、またはフェノール濃度および特定の時間の検証によって確認した。次いで、不活化されたブロスを精製した。
【0131】
Psの精製
肺炎球菌多糖体の精製は、いくつかの遠心分離、深層濾過、濃縮/ダイアフィルトレーション操作および沈殿工程からなった。特に指定のない限り、手順はいずれも室温で行った。
【0132】
カチオン性ポリマー(BPA-1000、Petrolite「Tretolite」および「Spectrum 8160」およびポリ(エチレンイミン)、「Millipore pDADMAC」など)を用いて、S.ニューモニエの発酵槽培養物からの不活化ブロスを凝集させた。カチオン性ポリマーは、不純物タンパク質、核酸および細胞片を結合した。凝集工程および熟成期間の後、遠心分離および複数の深層濾過工程によって、凝集した固体を除去した。精製したブロスを濃縮し、100kDa~500kDaのMWCO(分子量カットオフ)フィルターを使用してダイアフィルトレーションした。トリス、MgCl2緩衝液およびリン酸ナトリウム緩衝液を使用してダイアフィルトレーションを行った。ダイアフィルトレーションにより、残留核酸およびタンパク質が除去された。
【0133】
さらに、変性アルコールおよび/またはイソプロパノールを用いた酢酸ナトリウムおよびフェノール中の多糖体の再沈殿によって不純物を除去した。フェノール沈殿工程中、ダイアフィルトレーションした保持液に、リン酸ナトリウム生理食塩水緩衝液中の酢酸ナトリウムとフェノール(液状フェノールまたは固体フェノール)とを加えた。次いで、多糖体のアルコール分画を2段階で行った。第一段階では、調製物に低パーセントのアルコールを加えて細胞片および他の望ましくない不純物を沈殿させたが、粗多糖体は溶液中に残った。不純物は、遠心分離に続いて深層濾過工程により除去した。次いで、追加のイソプロパノールまたは変性アルコールをバッチに加えることにより、溶液から多糖体を回収した。沈殿した多糖体ペレットを遠心分離により回収し、粉砕し、粉末として乾燥させ、-70℃で凍結保存した。
【0134】
[実施例2]
多糖体のNMR構造分析
多糖体構造を決定するための戦略には、Abeygunawardana et al.,Determination of the Chemical Structure of Complex Polysaccharides by Heteronuclear NMR Spectroscopy in Advances in Biophysical Chemistry 1993,Vol 3,pages 199-249,JAI Press Inc.に記載されているように実質的に行われる複数工程のプロセスを含めた。標準の1Dおよび2D NMR技術を使用して、精製された多糖体を調査した。S.ニューモニエ16F血清型由来の多糖体がO-アセチルを含むと同定されたため、脱-O-アセチル化多糖体について詳細な分析を行った(塩基加水分解を使用してO-アセテート基を除去した)。最後に、31P NMRを使用して、ホスフェートの存在について多糖体を調査した。
【0135】
1H-1H COSY、二重量子フィルタ化核COSY(double quantum filtered homonuclear COSY)および全相関分光法(TOCSY)により、単糖残基の帰属を行った。異種核単一量子コヒーレンス分光法(heteronuclear single quantum coherence spectroscopy)(HSQC)、およびHSQC‐TOCSYの組合せにより、13C化学シフトを帰属した。多重度編集HSQCを使用して、メチレン基とメチン基とを区別した。HMBCおよびNOESY分光法の組合せにより、残基間結合を決定した。
【0136】
精製されたS.ニューモニエ血清型16F多糖体の1H NMRスペクトルは、1つの部位でのO‐アセチル化を示す1つのO-メチル共鳴を示した。O‐アセチル化の影響による化学シフト変化を分析することによって、精製された多糖体上のO-アセチル基の位置を決定した。0.8~0.5ppmの大きなダウンフィールド1H化学シフト変化は、O-アセチル置換を示している。長距離C‐H異種核多重結合相関(HMBC)および13C NMR分光法により、カルボニルをそれらのそれぞれの残基に帰属した。
【0137】
1DリンNMR分光法は、血清型16F多糖体が構造内にリンを含むことを示した。リン結合部位の帰属は、1H-31P HMBC分光法と多糖体の脱リン酸化型への化学シフト差とを組み合わせて行った。
【0138】
図2A、
図3、
図4および
図5のNMRデータに基づいて、血清型16F由来のS.ニューモニエ莢膜多糖体の構造を以下のように決定し、
【化3】
式中、nは多糖体を構成する繰り返し単位の数を表す。
【0139】
血清型16F多糖体の糖残基は、ラムノース(Rha)、グルコース(Glc)およびグリセロールを含む。
【0140】
イタリック体(pおよびf)は、ピラノース(6つの原子からなる閉環)およびフラノース(5つの原子からなる閉環)を指す。血清型16F多糖体の糖は、いずれもフラノースの形態ではない。
【0141】
αおよびβは、糖単位のアノマー炭素に結合したプロトンの立体配置を指す。糖単位で炭素原子を標識する場合、アノマー炭素は常に1番である(通常1~6)。αは、アノマープロトンが3D構造内でエクアトリアル位にあることを意味する。βは、アノマープロトンがアキシアル位にあることを意味する。
【0142】
矢印に関連付けられた数字は、個々の糖単位がどのように互いに接続されているかを示している。例えば、α-Rhap-(1→3)-α-Glcp-という命名は、ラムノースの1番炭素がグルコースの3番炭素に結合していることを意味する(pは、これらがいずれもピラノース環であることを意味する)。
【0143】
OAcに関連付けられている0.90は、繰り返し単位の約90%がその位置にO-アセチルを有することを意味する。
【0144】
[実施例3]
水溶液中の還元的アミノ化を使用したCRM197へのS.ニューモニエ血清型16F多糖体のコンジュゲーション
多糖体を溶解させ、サイズを縮小し、化学的に活性化し、限外濾過により緩衝液交換した。次いで、反応混合物中の塩化ニッケルを利用して、精製されたCRM197を活性化多糖体にコンジュゲートさせ、そして、得られたコンジュゲートは、最終の0.2ミクロン濾過の前に限外濾過により精製した。pH、温度、濃度および時間のような各工程内のいくつかのプロセスパラメーターを制御して、望ましい属性を有するコンジュゲートを得た。
【0145】
多糖体のサイズ縮小および酸化
精製された肺炎球菌莢膜多糖体粉末を水に溶解させ、0.45ミクロンで濾過した。溶解させた多糖体を均質化して、分子量を低下させた。均質化圧力とホモジナイザーを通過する回数とを、200bar/5回通過、続いて500bar/5回通過に制御して、目標分子量までサイズを縮小した。次いで、サイズが縮小された多糖体を濃縮し、そして、10kDa NMWCO接線流限外濾過膜を使用して、水に対してダイアフィルトレーションした。
【0146】
次いで、酢酸ナトリウム緩衝液を用いて多糖体溶液を22℃およびpH5に調整して、活性化による多糖体のサイズ縮小を最小限に抑えた。100mMメタ過ヨウ素酸塩ナトリウム溶液を加えることにより、多糖体の活性化を開始した。多糖体活性化の目標レベルを達成するために、加えられたメタ過ヨウ素酸塩ナトリウムは、多糖体繰り返し単位1モル当たりメタ過ヨウ素酸塩ナトリウム0.15モルであった(多糖体繰り返し単位1モル当たりのアルデヒドのモル数)。酸化反応は22℃で2時間進行させた。
【0147】
活性化された生成物を、10kDa NMWCO接線流限外濾過膜を使用して、10mMリン酸カリウム、pH6.4に対してダイアフィルトレーションした。限外濾過は2~8℃で行った。
【0148】
CRM197への多糖体のコンジュゲーション
酸化多糖体溶液を水および1.5Mリン酸カリウムpH7.0と混合した。選択した緩衝液のpHは、コンジュゲーション反応中の活性化多糖体の安定性を改善するためのものであった。前述のように(WO2012/173876A1)シュードモナス・フルオレッセンスでの発現により得られた精製されたCRM197を0.2ミクロンで濾過し、多糖体とCRM197との質量比0.7で緩衝多糖体溶液と組み合わせた。質量比を選択して、得られたコンジュゲート中の多糖体とCRM197との比を制御した。多糖体およびホスフェートの濃度は、それぞれ7.5g/Lおよび100mMであった。多糖体濃度を選択して、得られたコンジュゲートのサイズを制御した。次いで、溶液を0.2ミクロンで濾過した。100mM塩化ニッケル溶液を使用して、塩化ニッケルを約2mMまで加えた。シアノ水素化ホウ素ナトリウム(多糖体繰り返し単位1モル当たり2モル)を加えた。コンジュゲーションを122時間進行させて、多糖体およびタンパク質の消費を最大化させた。
【0149】
水素化ホウ素ナトリウムによる還元
コンジュゲーション反応後、バッチを約3.0g/Lの多糖体濃度に希釈し、2~8℃に冷却し、そして、1.2ミクロンで濾過した。バッチを、100kDa NMWCO接線流限外濾過膜を使用して、2~8℃で100mMリン酸カリウム、pH7.0に対してダイアフィルトレーションした。次いで、保持液中に回収したバッチを約2.0g多糖体/Lに希釈し、pH9.4の1.2M重炭酸ナトリウムを加えてpH調整した。水素化ホウ素ナトリウム(多糖体繰り返し単位1モル当たり1モル)を加えた。後に1.5Mリン酸カリウム、pH6.0を加えた。
【0150】
最終濾過および生成物保存
次いで、バッチを濃縮し、そして、300kDa NMWCO接線流限外濾過膜を使用して、150mM塩化ナトリウムpH7.0中の10mMヒスチジンに対して4℃でダイアフィルトレーションした。保持液バッチに0.05%(w/v)の濃度までポリソルベート20を加え、次いで、バッチを0.2ミクロンで濾過した。
【0151】
バッチを、0.03%(w/v)ポリソルベート20を含む、追加の150mM塩化ナトリウム、pH7.0緩衝液中の10mM L-ヒスチジンを用いて、1.0g/Lの多糖体濃度に調整した。バッチをアリコートに分注し、≦-60℃で凍結させた。
【0152】
表1は、水性条件下で上記の方法に従って調製されたS.ニューモニエ血清型16Fコンジュゲートの属性を示す。
【表1】
【0153】
[実施例4]
S.ニューモニエ血清型16F多糖体の活性化部位の同定
S.ニューモニエ血清型16F多糖体の活性化部位を、pH5の5mMシトレート緩衝液中で(水和)アルデヒドとチオセミカルバジド(TSC)とを反応させることによって同定した。TSCは、アルデヒド(および水和アルデヒド)と反応してイミン(二次アルジミン)を形成する。形成されたイミンプロトンは多糖体シグナルのダウンフィールドである固有の化学シフトを有し、このイミンプロトンを使用して多糖体の酸化部位を調べた。
【0154】
酸化血清型16F多糖体(実施例3に記載されるように調製された)をクエン酸ナトリウム緩衝液pH5で10mMの濃度に希釈し、次いで、チオセミカルバジド(最終濃度60mM)と反応させ、周囲温度で24時間連続して混合し、そして、次いで凍結乾燥させた。NMR分析のために、凍結乾燥させた試料を0.9mLの重水を用いて溶解させた。
【0155】
極低温に冷却されたプローブを使用して、27℃のプローブ温度で600MHzでNMR実験を行った。16トランジェントの90度パルスと、パルス間の10秒遅延(取得時間3秒を含む)とを使用して、1Dプロトンスペクトルを取得した。第1次元では4トランジェント、第2次元ではそれぞれ256および512インクリメントにより、TOCSYおよび勾配COSYデータを取得した。32トランジェントおよび512インクリメントにより、多重度編集gHSQCADを取得した。
【0156】
1Dプロトンスペクトルは、約7.48および7.49ppmで類似した線形およびピーク高さの重複トリプレットとしてイミンシグナルを示した(
図2B)。gCOSYおよびTOCSYデータは、イミンシグナルから4.57ppmを中心とするシグナルへのクロスピークを示している。gHSQCADデータから、プロトン化学シフト約4.57ppmで3つのシグナルが観察されるが、炭素化学シフトは異なる(
図6および
図7)。約107ppm(炭素)のダウンフィールドシグナルは、β-グルコースのアノマー炭素である。67.16および67.41ppmの他のシグナルは、メチレンであることが同定された(多重度編集gHSQCAD実験では、メチレン炭素はメチン炭素およびメチル炭素の逆の相を有する)。1Dスペクトルにおけるイミンシグナル(7.48および7.49ppm)の重複トリプレットと、メチレンシグナル(約4.57ppm
1H、約61.16、67.41ppm
13C)の相関は、ホスホグリセロール側鎖の酸化部位を同定する(
図8A~E)。イミンシグナルのピーク高さの類似性は、両ホスホグリセロール基が同様の酸化レベルを有することを示している。
【0157】
[実施例5]
ジメチルスルホキシド中の還元的アミノ化を使用したCRM197へのS.ニューモニエ血清型16F多糖体のコンジュゲーション
多糖体を溶解させ、目標分子量にサイズ調整し、化学的に活性化し、限外濾過により緩衝液交換した。活性化多糖体および精製されたCRM197を個別に凍結乾燥させ、そして、ジメチルスルホキシド(DMSO)に再溶解させた。次いで、再溶解させた多糖体およびCRM197溶液を組み合わせ、下記のようにコンジュゲートさせた。得られたコンジュゲートを、最終的な0.2ミクロン濾過の前に、限外濾過により精製した。pH、温度、濃度および時間のような各工程内のいくつかのプロセスパラメーターを制御して、望ましい属性を有するコンジュゲートを得た。
【0158】
多糖体のサイズ縮小および酸化
精製された肺炎球菌莢膜Ps粉末を水に溶解させ、そして、0.45ミクロンで濾過した。溶解させた多糖体をホモジナイズして、Psの分子量のサイズを縮小した。均質化圧力とホモジナイザーを通過する回数とを800~1000bar/5回通過に制御した。
【0159】
サイズが縮小された多糖体を濃縮し、そして、5または10kDa NMWCO接線流限外濾過膜を使用して水に対してダイアフィルトレーションした。
【0160】
次いで、多糖体溶液を、酢酸ナトリウム緩衝液を用いて22℃およびpH5に調整して、活性化による多糖体のサイズ縮小を最小限に抑えた。多糖体の活性化を、100mMメタ過ヨウ素酸塩ナトリウム溶液を加えることにより開始した。多糖体活性化の目標レベルを達成するために、加えられたメタ過ヨウ素酸塩ナトリウムは、多糖体繰り返し単位1モル当たりメタ過ヨウ素酸塩ナトリウム0.18モルであった(多糖体繰り返し単位1モル当たりのアルデヒドのモル数)。酸化反応は、22℃で2時間進行させた。
【0161】
活性化された生成物を、10mMリン酸カリウム、pH6.4に対してダイアフィルトレーションし、続いて5または10kDa NMWCO接線流限外濾過膜を使用して水に対してダイアフィルトレーションした。限外濾過は2~8℃で行った。
【0162】
CRM197への多糖体のコンジュゲーション
前述のように(WO2012/173876A1)シュードモナス・フルオレッセンスでの発現により得られた精製されたCRM197を、5kDa NMWCO接線流限外濾過膜を使用して、2mMホスフェート、pH7.0緩衝液に対してダイアフィルトレーションし、0.2ミクロンで濾過した。
【0163】
活性化多糖体は、5%w/vのスクロース濃度を有する6mg Ps/mLで凍結乾燥用に製剤化した。CRM197は、1%w/vのスクロース濃度を有する6mg Pr/mLで凍結乾燥用に製剤化した。
【0164】
製剤化されたPsおよびCRM197溶液は、個別に凍結乾燥させた。凍結乾燥させたPsおよびCRM197材料を、等量のDMSOに個別に再溶解させた。多糖体溶液に塩化ナトリウムを25~50mMの濃度まで添加した。多糖体溶液とCRM197溶液とをブレンドして、多糖体濃度1.5~2.0g Ps/L(多糖体のグラム数/リットル)および多糖体とCRM197との質量比1.5を達成した。質量比を選択して、得られたコンジュゲート中の多糖体とCRM197との比を制御した。シアノ水素化ホウ素ナトリウム(多糖体繰り返し単位1モル当たり1モル)を加え、22℃で2時間コンジュゲーションを進行させた。
【0165】
水素化ホウ素ナトリウムによる還元
コンジュゲーション反応に続いて、水素化ホウ素ナトリウム(多糖体繰り返し単位1モル当たり2モル)を加え、22℃で1時間インキュベートした。バッチを、約4℃で、約0.025%(w/v)ポリソルベート20を含む150mM塩化ナトリウムに希釈した。次いで、リン酸カリウム緩衝液を加えてpHを中和した。いくつかのバッチについては、バッチを濃縮し、そして、30kD NMWCO接線流限外濾過膜を使用して、150mM塩化ナトリウム、25mMリン酸カリウムpH7に対して約4℃でダイアフィルトレーションした。
【0166】
最終濾過および生成物保存
次いで、バッチを濃縮し、そして、300kDa NMWCO接線流限外濾過膜を使用して、0.015%(w/v)ポリソルベート20を含む150mM塩化ナトリウムpH7.0中の10mMヒスチジンに対して4℃でダイアフィルトレーションした。
【0167】
保持液バッチを0.2ミクロンで濾過し、次いで、0.015%(w/v)ポリソルベート20を含む、追加の150mM塩化ナトリウムpH7.0中の10mMヒスチジンで希釈し、アリコートに分注し、そして、≦-60℃で凍結させた。
【0168】
表2は、DMSO中で上記の方法に従って調製されたS.ニューモニエ血清型16Fコンジュゲートの属性を示す。
【表2】
【0169】
[実施例6]
一価コンジュゲートの製剤化
実施例3に記載されているように、肺炎球菌多糖体-CRM197コンジュゲートを調製した。個々のバルク多糖体濃度のバッチ容量および濃度に基づいて、個々の血清型の目標濃度を得るのに必要なバルクコンジュゲートの必要量を計算した。個々の血清型を賦形剤と組み合わせ、滅菌濾過し、そして、混合条件下でAPAに加えた。20mMヒスチジン、150mM NaCl、0.2%(w/v)PS-20、およびAPAの形態の0.250mg/mL(w/v Al)を含む各一価コンジュゲートワクチンの最終濃度は、4μg/mL(w/v PnPs)であった。
【0170】
[実施例7]
一価コンジュゲートニュージーランド白ウサギ免疫原性試験
ニュージーランド白ウサギ(NZWR)モデルにおいて、一価コンジュゲートの免疫原性を評価した。0日目および14日目(交互の体側部)に、各一価コンジュゲートワクチン0.25mlを用いて、成体ニュージーランド白ウサギ(NZWR、n=3/群)を筋肉内(IM)免疫した。免疫1回当たり、62.5μgのリン酸アルミニウムアジュバント(APA)とともに1μgのPnPs(CRM197にコンジュゲートされたS.ニューモニエ血清型16F多糖体)の用量で一価肺炎球菌ワクチンを投与した。試験開始前(免疫前)および14日目(投与後1、PD1)および28日目(投与後2、PD2)に、血清を採取した。病気または苦痛の徴候がないか、訓練を受けた動物ケアスタッフがNZWRを少なくとも連日観察した。NZWRに対するワクチン製剤は、安全で忍容性が高いとみなされた。動物実験はいずれも、国立衛生研究所のGuide for Care and Use of Laboratory Animalsの推奨事項に厳密に従って行った。NZWR実験プロトコルは、Merck&Co.,Inc(Kenilworth,NJ)およびCovance(Denver,PA)のInstitutional Animal Care and Use Committeesによって承認された。
【0171】
NZWR血清をELISAアッセイで試験して、1~2mg/mlの各PnPsコーティング濃度を使用してIgGの免疫原性を評価した。前述のプロトコルに基づいて、オプソニン化貪食作用アッセイ(OPA)によって機能的抗体を決定した。例えば、Caro-Aguilar et al.,2017,Vaccine 35:865-72およびBurton et al.,2006,Clin Vaccine Immunol 13(9):1004-9を参照されたい。
【0172】
S.ニューモニエ血清型16F多糖体を含有する一価肺炎球菌コンジュゲートワクチンは、ウサギに対して免疫原性であり(
図9)、各細菌株を死滅させる機能的抗体を産生する(
図10)ことが見出された。
【0173】
[実施例8]
ウサギ多価試験のための肺炎球菌コンジュゲートワクチンの製剤化
肺炎球菌多糖体-CRM197コンジュゲートを使用して、異なるコンジュゲートバルクブレンド調製物(S.ニューモニエ血清型16F、23A、23B、24Fおよび31由来のものを含む)からなる多価肺炎球菌コンジュゲートワクチンを調製し、総多糖体濃度84μg/mLに対して各血清型4μg/mLで、20mMヒスチジンpH5.8および150mM塩化ナトリウムおよび0.1%w/vのポリソルベート-20(PS-20)で製剤化した。肺炎球菌多糖体(PnPs)型(S.ニューモニエ血清型16F、23A、23B、24Fおよび31由来のものを含む)にCRM197タンパク質を個別にコンジュゲートすることによりコンジュゲートを調製した。個々のバルク多糖体濃度のバッチ容量および濃度に基づいて、個々の血清型の目標濃度を得るのに必要なバルクコンジュゲートの必要量を計算した。個々のコンジュゲートを、ヒスチジン、塩化ナトリウムおよびポリソルベート-20(PS-20)の溶液に加えてコンジュゲートブレンドを作製した。磁気撹拌棒を使用して、コンジュゲートブレンドを含む製剤容器を混合し、滅菌濾過して別の容器に入れた。次いで、製剤を、プラスチック製シリンジ、ガラス製シリンジまたはバイアルに充填し、2~8℃で保存した。
【0174】
[実施例9]
ニュージーランド白ウサギにおける多価肺炎球菌コンジュゲートワクチンの免疫原性
0日目および14日目(交互の体側部)に、実施例8に記載の多価肺炎球菌コンジュゲートワクチン0.5mlを用いて、成体ニュージーランド白ウサギ(NZWR、n=5/群)を筋肉内(IM)免疫した。免疫1回当たり各コンジュゲートPnPs 2μgで、多価肺炎球菌コンジュゲートワクチンを投与した。試験開始前(免疫前)および14日目(投与後1、PD1)および28日目(投与後2、PD2)に、血清を採取した。病気または苦痛の徴候がないか、訓練を受けた動物ケアスタッフがNZWRを少なくとも連日観察した。NZWRに対するワクチン製剤は、安全で忍容性が高いとみなされた。動物実験はいずれも、国立衛生研究所のGuide for Care and Use of Laboratory Animalsの推奨事項に厳密に従って行った。NZWR実験プロトコルは、Merck&Co.,IncおよびCovance(Denver,PA)のInstitutional Animal Care and Use Committeesによって承認された。
【0175】
多重化電気化学発光(multiplexed electrochemiluminescence)(ECL)アッセイを使用して、NZWR血清のIgG免疫原性を評価した。このアッセイは、電気化学的刺激により発光するSULFO-TAG(商標)標識を利用する、MesoScale Discovery(MesoScale Diagnostics,LLC,Gaithersburg,MDの一部門)によって開発された技術を使用する、Marchese et al.(Optimization and validation of a multiplex,electrochemiluminescence-based detection assay for the quantitation of immunoglobulin G serotype-specific antipneumococcal antibodies in human serum.Clin Vaccine Immunol.16(3):387-96(2009))によって記載されたヒトアッセイに基づいて、ウサギ血清に使用するために開発された。NZWR血清試料を試験するための二次抗体としてSULFO-TAG(商標)標識抗ウサギIgGを使用した。Opsotiter(登録商標)3ソフトウェア(UAB Research Foundation,Caro-Aguilar et al,2017、上記参照、Burton et al.,2006、上記参照)を使用する、アラバマ大学バーミングハム校のBacterial Respiratory Pathogen Reference Laboratoryでオンラインで入手可能な前述のプロトコルに基づいて、multiplexed opsonophagocytic assays(MOPA)によって機能的抗体を決定した。
【0176】
多価肺炎球菌コンジュゲートワクチン中の、S.ニューモニエ血清型16F、23A、23B、24Fおよび31から調製された多糖体-タンパク質コンジュゲートは、投与後1(PD1)および投与後2(PD2)のいずれでもウサギに対して免疫原性であることが見出された(
図11)。これらはまた、ワクチン型細菌株を死滅させる機能的抗体を生成した(
図12)。2μgの用量の多価肺炎球菌コンジュゲートワクチンを用いて免疫したウサギでは、免疫前のウサギ血清と比較して、4つの血清型についてPD1のMOPA力価が有意に高かった(
図12)。2μgの用量の多価肺炎球菌コンジュゲートワクチンを用いて免疫したウサギでは、免疫前のウサギ血清と比較して、5つの血清型いずれについてもPD2のMOPA力価が有意に高かった(
図12)。ダネットの検定を用いた一元配置分散分析によってLog変換されたデータを分析し、有意性を決定した。