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特許7293250バッテリを充電するための非線形ボルタンメトリベースの方法、およびこの方法を実施する高速充電システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】バッテリを充電するための非線形ボルタンメトリベースの方法、およびこの方法を実施する高速充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20230612BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20230612BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230612BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
H02J7/10 D
H02J7/10 H
H02J7/10 L
H02J7/02 H
H02J7/02 J
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/44 P
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020550942
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 IB2018059766
(87)【国際公開番号】W WO2019111226
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】10201710151Y
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】520200654
【氏名又は名称】ヤザミ アイピー ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラシッド ヤザミ
(72)【発明者】
【氏名】サンネヘン ゲダラ ツシッタ アセーラ バンダラ
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0043929(US,A1)
【文献】国際公開第2006/134722(WO,A1)
【文献】特開2014-006245(JP,A)
【文献】特開平07-250436(JP,A)
【文献】特開2016-010198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H01M10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非線形ボルタンメトリ(NLV)ベースのバッテリシステムを充電する方法であって、前記方法は前記バッテリシステムを充電するステップを含み、前記充電するステップは、
- 変化するステップ期間の間、前記バッテリシステムを、非線形的に変化し、ステップ毎に徐々に増加する特定の充電電圧値に設定するステップと、
- 前記バッテリシステムにより引き込まれる電流を測定し、充電電流の時間微分
【数1】
を検出し、引き込まれる前記電流の低下レートを監視するステップと、
- 前記バッテリシステム内の温度を測定するステップと、
- 前記測定された温度が安全性限界を上回るほど上昇したときは常に、期待温度範囲が確保されたときに再開するまで、ある期間にわたって、新しい充電を有して安定するように、充電が保留され、ゼロ電流を用いた緩和を前記バッテリシステムに適用するステップと、
- 直前の前記ステップ期間に対し、以下の式
【数2】
から計算される電圧の時間微分
【数3】
を適用することにより、新たな充電するステップについて次の充電電圧値を決定するステップと
を含み、ここで
- K n は、前記バッテリシステムの充電状態(SOC)および劣化状態(SOH)に基づいてステップ毎に変化し、
- αは、バッテリの異なる種類に基づいて、電流と電圧との間の非線形関係に適合するように調整可能な定数であり、
【数4】
は、直前の前記充電するステップの間に引き込まれる前記電流の前記時間微分の平均値であることを特徴とするバッテリシステムを充電する方法。
【請求項2】
前記バッテリシステムは、1つのセルを備え、またはマルチセルシステムからなることを特徴とする請求項1に記載のバッテリシステムを充電する方法。
【請求項3】
前記マルチセルシステムは、直列および/または並列セル構成で配置されたことを特徴とする請求項2に記載のバッテリシステムを充電する方法。
【請求項4】
セルの前記電圧は、2Vないし5Vの間に含まれることを特徴とする請求項2に記載のバッテリシステムを充電する方法。
【請求項5】
セル内の前記充電電流は、0ないし10Cの間に含まれることを特徴とする請求項2に記載のバッテリシステムを充電する方法。
【請求項6】
前記セル温度Tは、-20℃ないし+55℃の間に含まれることを特徴とする請求項2に記載のバッテリシステムを充電する方法。
【請求項7】
0% SOCから100% SOCまでの充電時間tchは、10分ないし2時間の間に含まれることを特徴とする請求項1に記載のバッテリシステムを充電する方法。
【請求項8】
SOCは、0%ないし100%の間に含まれることを特徴とする請求項1に記載のバッテリシステムを充電する方法。
【請求項9】
複数の充電-放電サイクル数は、200≦n≦2000であることを特徴とする請求項1に記載のバッテリシステムを充電する方法。
【請求項10】
前記非線形ボルタンメトリ(NLV)ベースの方法は、定電流(CC)、定電流定電圧(CCCV)、およびカスケードパルス充電(CPC)プロトコルと組み合わされることを特徴とする請求項1に記載のバッテリシステムを充電する方法。
【請求項11】
CCプロトコル、CCCVプロトコル、およびCPCプロトコルのいずれか1つが、前記NLVベースの方法の開始時、中間、および終了時に適用されることを特徴とする請求項10に記載のバッテリシステムを充電する方法。
【請求項12】
非線形ボルタンメトリ(NLV)ベースのバッテリシステムを充電するバッテリ充電システムであって、前記バッテリ充電システムは請求項1から11のいずれか一項に記載の充電する方法を実行し、
- 変化するステップ期間の間、前記バッテリシステムを、非線形的に変化し、ステップ毎に徐々に増加する特定の充電電圧値に設定する手段と、
- 前記バッテリシステムにより引き込まれる電流を測定し、充電電流の時間微分
【数5】
を検出し、引き込まれる前記電流の低下レートを監視する手段と、
- 前記バッテリシステム内の温度を測定する手段と、
- 前記測定された温度が安全性限界を上回るほど上昇したときは常に、期待温度範囲が確保されたときに再開するまで、ある期間にわたって、新しい充電を有して安定するように、充電が保留され、ゼロ電流を用いた緩和を前記バッテリシステムに適用する手段と、
- 直前の前記ステップ期間に対し、以下の式
【数6】
から計算される電圧の時間微分
【数7】
を適用することにより、新たな充電するステップについて次の充電電圧値を決定する手段と
を含み、ここで
- K n は、前記バッテリシステムの充電状態(SOC)および劣化状態(SOH)に基づいてステップ毎に変化し、
- αは、バッテリの異なる種類に基づいて、電流と電圧との間の非線形関係に適合するように調整可能な定数であり、
【数8】
は、直前の前記充電するステップの間に引き込まれる前記電流の前記時間微分の平均値であることを特徴とするバッテリ充電システム。
【請求項13】
前記バッテリシステムは、1つのセルを備え、またはマルチセルシステムからなることを特徴とする請求項12に記載のバッテリ充電システム。
【請求項14】
前記マルチセルシステムは、直列および/または並列セル構成で配置されたことを特徴とする請求項13に記載のバッテリ充電システム。
【請求項15】
セルの前記電圧は、2Vないし5Vの間に含まれることを特徴とする請求項13に記載のバッテリ充電システム。
【請求項16】
セル内の前記充電電流は、0ないし10Cの間に含まれることを特徴とする請求項13に記載のバッテリ充電システム。
【請求項17】
前記セル温度Tは、-20℃ないし+55℃の間に含まれることを特徴とする請求項13に記載のバッテリ充電システム。
【請求項18】
0% SOCから100% SOCまでの充電時間tchは、10分ないし2時間の間に含まれることを特徴とする請求項12に記載のバッテリ充電システム。
【請求項19】
SOCは、0%ないし100%の間に含まれることを特徴とする請求項12に記載のバッテリ充電システム。
【請求項20】
複数の充電-放電サイクル数は、200≦n≦2000であることを特徴とする請求項12に記載のバッテリ充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリを充電するための非線形ボルタンメトリ(NLV)ベースの方法に関する。それは、この方法を実施する高速充電システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
本特許出願は、2017年12月7日に出願された、シンガポール特許出願n°10201710151Yの優先権を主張する。
【0003】
「バッテリをより高速に充電するにはどうするか」は、バッテリ蓄電デバイスの始まり以来、数十年の間、十分に答えられずにいた問いである。より重要なことに、リチウムイオンバッテリをより高速に充電することが、モバイルデバイス技術の急速で大規模な使用、ならびに石油優位の自動車によって引き起こされる大気汚染を抑えることの緊急性に起因する、近年における電気自動車(EV)およびプラグイン電気ハイブリッド自動車(PHEV)の増大する需要のせいで、重大な懸案になった。したがって、今日の世界におけるリチウムイオンバッテリのための高速充電ソリューションは、10億ドルの価値のある技術革新である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】PCT出願#PCTIB2018/059705
【非特許文献】
【0005】
【文献】S.S Zhang, J.Power Sources 161 (2006) 1385 - 1391
【文献】Ronald Baroody, “Evaluation of rapid electric battery charging techniques”, university of Nevada Las Wegas, 2009
【文献】D. Ansean, V.M. Garcia, M. Gonzalez, “Efficient fast-charging strategies for Li- ion batteris”, University of Oviedo, Gijon, Spain
【文献】Venkatasailanathan Ramadesigan, Paul W.C. Northrop, Sumitava De, “Modeling and Simulation of Lithium-Ion Batteries from a Systems Engineering Perspective”, Washington University, St. Louis, Missouri 63130, USA
【文献】Elie Ayoub, Nabil Karami, “Review on The Charging Techniques of a Li-ion Battery”, University of Balamand, Koura, Lebanon
【文献】Martin Z.Bazant, “Theory of Chemical Kinetics and Charge Transfer based on Nonequilibrium Thermodynamics”, Masachusetts Institute of Technology, Cambridge Masachusetts 02139, United States, 2012
【文献】Liang He, Eugene Kim, Kang G. Shin, “*-Aware Charging of Lithium-ion Battery Cells”, The University of Michigan, Ann Arbor, MI, USA, 2016
【文献】D. Andrea, “Battery management systems for large Lithium-ion battery packs”, Artech House, 2010
【文献】Jiang JC, Zhang CP, Wen JP, et al. An optimal charging method for Li-ion batteries using a fuzzy-control approach based on polarization properties. IEEE Trans Veh Technol 2013; 62 (7):3000-9
【文献】Jiang JC, Liu QJ, Zhang CP, et al. Evaluation of acceptable charging current of power Li-ion batteries based on polarization characteristics. IEEE Trans Ind Electron 2014; 61 (12):6844-51
【文献】I.-S. Kim, The novel state of charge estimation method for lithium-ion battery using sliding mode observer. Journal of Power Sources, 163 (1):584-590, 2006
【文献】X. Hu, F. Sun, Y. Zou, “Estimation of state of charge of a lithium-ion battery pack for electric vehicles using an adaptive luenberger observer. Energies, 2010
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、現在の定電流定電圧(CCCV)高速充電技術と比較して改善された性能を有する、バッテリのための高速充電を可能にする、新しい非線形ボルタンメトリ(NLV)ベースの充電プロトコルを提案することである。
【0007】
本発明に従うと、バッテリシステムを充電するための方法は、
a.複数のバッテリシステム電圧「v」を測定するステップと、
b.複数のバッテリシステム充電電流「i」を測定するステップと、
c.複数のバッテリシステム温度「T」を測定するステップと、
d.充電時間tchを測定するステップと、
e.複数のバッテリシステム充電状態SOCを測定するステップと、
f.複数の充電-放電サイクル数「n」を測定するステップと、
g.
【0008】
【数1】
【0009】
などの関係を適用するステップであって、ここで、
【0010】
【数2】
【0011】
は、電圧の時間増加レート(V.s-1)であり、
【0012】
【数3】
【0013】
は、充電電流のレートの絶対値(mA.s-1)であり、
- Kは、0.006≦K≦300である可変パラメータであり、
- αは、0.01≦α≦100である調整可能な定数である、
ステップと
を含む。
【0014】
本発明の別の態様に従うと、
h.複数のバッテリシステム電圧「v」を測定するためのセンサと、
i.複数のバッテリシステム電流「i」を測定するためのセンサと、
j.複数のバッテリシステム温度「T」を測定するためのセンサと、
k.複数のバッテリシステム電圧「v」を測定するためのセンサと、
l.複数のバッテリシステム充電時間「tch」を測定するためのセンサと、
m.バッテリシステム充電状態SOCを測定するためのコンピューティングシステムと、
n.バッテリシステム充電-放電サイクル数を測定するためのコンピューティングシステムと、
o.
【0015】
【数4】
【0016】
などの関係を適用するためのコンピューティングシステムであって、ここで、
【0017】
【数5】
【0018】
は、電圧の時間増加レート(V.s-1)であり、
【0019】
【数6】
【0020】
は、充電電流のレートの絶対値(mA.s-1)であり、
- Kは、0.006≦K≦300である可変パラメータであり、
- αは、0.01≦α≦100である調整可能な定数である、
コンピューティングシステムと
を備えるバッテリ充電システムが提案される。
【0021】
バッテリシステムは、1つのセルを備えること、またはマルチセルシステムから成ることができ、直列および/または並列セル構成で配置されることができる。
【0022】
セルの電圧は、例えば、2Vないし5Vの間に含まれ、セル内の充電電流は、0ないし10Cの間に含まれることができる(nCレートは、
【0023】
【数7】
【0024】
時間のフル充電時間を可能にする一定の充電電流として定義され、すなわち、10Cレートの下では、充電時間は、
【0025】
【数8】
【0026】
時間=6分である)。
【0027】
セル温度Tは、-20℃ないし+55℃の間に含まれることができ、0% SOCから100% SOCまでの充電時間tchは、10分ないし2時間の間に含まれる。SOCは、0%ないし100%の間に含まれることができ、サイクル数は、200≦n≦2000である。
【0028】
リチウムイオンバッテリを高速に充電するための非線形ボルタンメトリ(NLV)ベースの適応充電プロトコル(ACP)が、約10分の時間でバッテリを充電するために開発された。これは、任意の種類のバッテリに適用されることができる、2つの高速充電方法の組み合わせである。それは、記憶なし充電モデルとしても、記憶ベースの充電モデルとしても機能する。バッテリの化学的性質についての履歴データが、利用可能である場合、このプロトコルは、最良の充電性能を提供するために、それらを使用するように、自動的に調整される。
【0029】
それが、いかなる履歴データまたは固有データも有さないランダムバッテリを充電することになった場合、それのΔSOCについてのクイック学習モデルは、それを迅速、安全に充電するのに妥当である。そればかりでなく、それは、充電のためのそれのプロトコルを調整するとき、ユーザの要件およびいくつかのシステム要件についても(それがそれらを検出する限り)検討する。したがって、これは、バッテリを高速に充電するための汎用プロトコルと見なされることもできる。
【0030】
この方法を使用すると、バッテリは、約10分の時間でフル充電されることができる。平均的なケースにおいては、それは、バッテリを約22ないし24分の時間で充電する。繰り返し試験を通して、この充電プロトコルは、容量減衰に大きく影響しないことが判明した。さらに、これは、任意の種類のバッテリを高速充電するためのモデルとすることができるが、それは、このプロトコルの原理が、バッテリに、それのΔSOCおよびSOHに応じて、任意の時点で、それ自体の好都合な電流を用いて充電させることであるからである。
【0031】
適応充電、非線形電圧変化、および緩和が、このプロトコルの重要な礎である。適応充電は、ユーザの時間要件、必要とされる充電容量、ならびにバッテリのSOCおよびSOHに基づいて、システムが充電のバランスを取ることを可能にする。適切な緩和パターンと結合された電圧の非線形変化は、バッテリに負担をかけずに、この方法が最大充電容量を獲得することを可能にする。セルインピーダンスが、放電終止(EOD)に向かって増加するにつれて(非特許文献1を参照)、プロトコルは、開始SOCにおいて、高速NLVステップ、または構成可能な定電流(CC)充電のどちらかを使用する。NLVベースの充電の終了時に、システムが、期待充電に達することができなかった場合、適応プロトコルは、バランス容量を獲得するために、別のCC充電を使用すべきかどうかを決定する。以下は、NLV充電について要約している。
【0032】
本発明のNLVベースの充電プロトコルは、定電流プロトコル(CC)、定電流定電圧プロトコル(CCCV)、および特許文献1において説明されているカスケードパルス充電プロトコルなど、他の高速充電プロトコルと組み合わせて適用されることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明のこれらおよび他の特徴および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、および添付の図面を見ることで、より良く理解されるようになる。
図1】本発明に従った、適応充電プロトコルを実施する高速充電システムの機能図である。
図2】NLVベースの充電プロセスの電圧プロファイルおよび電流プロファイルを示す図である。
図3】ACP-NLV充電プロトコル:プロセスフローを示す図である。
図4】初期SOCの可能性のある範囲を示す図である。
図5】電流変化のセグメントを示す図である。
図6】KおよびStepTimeをトレーニングするプロセスフローを示す図である。
図7】充電の初期部分の間の、第1の(1ないし2)分の間の[約0% SOCにおける]A K値プロファイルを示す図である。
図8】充電の初期部分の間の、(11ないし16)分の間の[約40% SOCにおける]A K値プロファイルを示す図である。
図9】充電の初期部分の間の、(23ないし25)分の間の[約95% SOCにおける]A K値プロファイルを示す図である。
図10】「終止電圧」を制御するプロセスフローを示す図である。
図11】ランダム試験1の電圧プロファイルおよび電流プロファイルを示す図である。
図12】ランダム試験1の電圧プロファイルおよび電流プロファイルを示す図である。
図13】NLV充電:ちょうど23.3分で660mAhまでフル充電されて終了されたNLV充電中の電流対K値、ランダム試験1を示す図である。
図14】NLV充電:ちょうど25.3分で660mAhまでフル充電されて終了されたNLV充電中の電流対K値、ランダム試験2を示す図である。
図15】Log10ベースの目盛でK値変化を示す図である。
図16】NLV充電:「K値」および「SOC対時間を示す図である。
図17】「K」値対SOCを示す図である。
図18】13450個のセルがちょうど22分で98%の充電を獲得した、ランダム試験3の結果を示す図である。
図19】電流の低下に対するK値電圧ランプ補償を示す図である。
図20】平均充電時間が23.45分のNLVベースの充電中における、充電容量および放電容量対サイクル数を示す図である。
図21】NLVを使用する充電サイクル数個の間の電流対時間を示す図である。
図22】NLVベースの充電サイクル数個にわたる電圧対時間を示す図である。
図23】2100mAhセルについて測定されたNLV充電プロファイルを示す図である。
図24】LIR13450円筒セルに対して行われた温度分析を示す図である。
図25】(平均)持続時間が36分のNLVのみの充電プロファイル/放電プロファイルを示す図である。
図26】30分高速充電を用いる日次充電スケジュールを示す図である。
図27】充電時間が36分の充電/放電容量またはセルを示す図である。
図28】充電時間が30分のNLV対CCCVの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
この適応充電プロトコル(ACP)は、バッテリを充電する期間にわたって、非線形ボルタンメトリ(NLV)ベースの制御に基づいている。それは、バッテリが、それ自体の劣化状態(SOH)および充電状態(SOC)に基づいて、異なる電圧レベルにおいて、容認可能な電流(アンペア)量で充電することを可能にする。したがって、バッテリ内への電流引き込みの量は、いかなるときも、このプロトコルによって決して制御されず、または強要されない。
【0035】
この方法を使用して、25分未満で、バッテリが(80%よりも多く)充電されることができることが予測可能であっても、それは、充電時のバッテリの劣化(SOH)に基づいて、延長または短縮されてよい。それは、ほとんどが異なるパターン/波形の高電流(I)を課している、他の高速充電方法[非特許文献2、3、5を参照]と比較して、より良い安全性も保証する。そのため、最も重要なことに、このACP方法は、それの劣化を考慮せずに、セルを通して大きい固定負荷の電子を引き込むことによって、バッテリに負担をかけない。
【0036】
リチオ化/脱リチオ化(インターカレーション/デインターカレーション)、溶媒およびセパレータを通したイオン/電子のシューティング/フローティング、内部インピーダンス(IR)などに対抗しての電荷の輸送など[非特許文献4、6を参照]、バッテリ粒子動力学の反応速度論における平衡は、バッテリがどれほど劣化しているか?/充電/放電の間にどれだけの電流が一度にバッテリシステムによって取られる/与えられることができるか?を決定する。この平衡は、「電流の変化率
【0037】
【数9】
【0038】
」と「電圧の変化率
【0039】
【数10】
【0040】
」との間の関係として表現されることができると我々は信じる。したがって、以下の関係が、このプロトコルを作り上げる際に使用され、
【0041】
【数11】
【0042】
ここで、
n:「K値」は、充電中のある期間のための定数であり、n≧0であり、
【0043】
【数12】
【0044】
(ボルト/秒):これは、充電プロセス中の電圧(V)の変化率であり[(Vstep終了-Vstep開始)/ステップ時間持続時間]、
【0045】
【数13】
【0046】
(mA/秒):これは、充電プロセス中の電流(I)の変化率の絶対値であり、
α:これは、0<α<100である調整可能な係数であり、それは、この式が、バッテリの異なる種類に基づいて、電流と電圧との間の非線形関係を得ようとする余地を作る。これは、充電プロセスに最も良く適するように、システムによってトレーニングされもする。
さらに、α=1についての関係は、
【0047】
【数14】
【0048】
と簡略化されることができる。
【0049】
リチウムイオンバッテリの文献から、バッテリの化学的性質が、電圧プロファイルの固有特性を提供することが明白である。(低いSOCを伴う)あるより低い電圧内においては、セルは、(高いインピーダンスのせいで)非常に低い電流を引き込もうとし、一方、より高い電圧(より低い分極を伴う高いSOC)においては、高電流を引き込むポテンシャルが、著しく高い[非特許文献1を参照]。いくつかのセルは、これらの高電流が許容されることができる、電圧範囲の非常に狭いフレームを有する。そのため、充電プロセス中に、期待容量(許容電流が、総充電時間を延長する、あるより低いレベルに低下する前に、可能な限り多くの容量)が獲得されるまで、可能な限りより長い時間にわたって、これらの範囲内にバッテリを保つために、高速充電が、適用されるべきである。
【0050】
以下で与えられるすべての例は、リチウムイオンバッテリに関連する。しかしながら、ACPは、限定されることなく、固体リチウム、NiMH、NiCd、LAB、アルカリ電池、NaS、NaNiCl2、レドックスフロー(ZnBr、VRB)、...を含む、すべての種類の再充電可能なバッテリに適用される。
【0051】
「NLV上のACP」は、非線形ボルタンメトリ(NLV)充電に基づいた適応充電プロトコル(ACP)のことである。プロトコルは、与えられた充電要件に対してより良く応答するように、それ自体の充電プロファイルを調整するために、いくつかのユーザ主導およびシステム/バッテリ主導の因子に適応するので、それは、適応的である。ユーザの期待充電時間(持続時間)、充電の期待パーセンテージ(100%、80%、または60%など)、可能な緩和時間、および初期充電状態(SOC)は、適応プロセスのユーザ主導の因子のうちのいくつかである。同様にシステム/バッテリ主導の因子となる、エントロピおよびエンタルピベースの方法を使用して、現在のSOCの識別が、自動的に処理されるようにも設計した。劣化状態(SOH)、宣言(公称)容量、安全性電圧範囲、電圧制御の利用可能な正確性、およびバッテリの分極プロファイルは、自動的に検出される/システム主導の因子のうちのいくつかである。
【0052】
NLV充電中、バッテリセルは、非線形に変化し、ステップ毎に徐々に増加する、ある電圧(CV)に設定される。したがって、バッテリは、一連のクイック充電ステップにわたる期間の間、非線形電圧(NLV)に基づいて、充電される。
【0053】
これらのステップの各々の間、セルは、まさに特定の時間における、それの充電状態(SOC)および劣化状態(SOH)の両方に基づいて、ある量の電流を引き込む。その後、電流は、徐々に低下する。あるステップにおいて、どれだけ速く電流が低下するかは、バッテリがそのNLVステップにとどまることをどれほど望むか、または望まないかについてのある手掛かりを提供する。このようにして、バッテリがより多くの電流を引き込みたがっているときは常に、より多くのステップ時間を割り当て、それがそれの引き込み電流を大幅に低下させようと試みるときは、より少ないステップ時間を割り当てることができる。
【0054】
あらゆるステップの後、それの新しい充電を有して安定するように、ゼロ(0)電流を用いた非常に短い緩和が、システムに適用され、したがって、OCVは、それの安定した(またはほぼ安定した)レベルまで低下する。これは、次のNLV充電ステップが、あらかじめ高電流を課すことなく、それのステータスに基づいて、最適な電流を獲得するための、より良い機会を生む[非特許文献7、8を参照]。このようにして、プロトコルは、あらゆるステップの後、(長すぎる緩和に多くの時間を浪費することもなく、可能な限り)安定かつ健全であるようにセルをトレーニングし、次のステップが、それが緩和なしに行われた場合よりも多くの電流を獲得するように、それをより良く準備する。しかし、あるステップについて、電流低下の量が、著しくない場合、システムは、次のステップに対して移動せずに、そのステップにより長くとどまることを可能にする。このケースにおいては、電流低下のレート、およびステップのそのような継続のための最大許容時間は、次のステップに対して移動する時間を決定するために、監視される。
【0055】
システムは、適応パラメータに基づいて、「ステップのそのような継続のための最大許容時間」を決定する。そのため、電流の急速な低下、または「ステップのための最大許容時間」の超過が、検出されたときは常に、システムは、次の充電ステップに対して移動する。したがって、フル充電のためにそれが要する実際の時間は、バッテリのSOCおよびSOHの両方に依存する。
【0056】
さらに、充電システムは、充電の終了を決定するために、3つのパラメータを要する。第1に、バッテリが、宣言および獲得された容量に基づいて、フル充電された場合。第2は、最大目標終止電圧に達した場合。「目標終止電圧」は、関連するバッテリの種類/化学的性質の分極データに基づいて、システムによって自動的に調整される。第3の任意選択の因子は、充電時の(ある時間窓にわたって検査することによる)リアルタイムパラメータに基づいて、充電状態を決定するための、充電プロファイルの自己学習モデルである。
【0057】
図1は、NLV充電プロセス中の電流および電圧のプロファイルを示している。いくつかのステップは、他と比較して、より長い時間をかけて、同じ電圧にとどまった。たいてい、これらのステップは、時間とともに大幅に低下することなく、より多くの電流を引き込む。そのため、システムは、より安定であり、セル内により多くの電流を受け入れ、より多くの電荷を輸送するポテンシャルを有する。加えて、最初に、各電圧ステップは、それがある高電流を引き込み始めるまでに、非常に短い持続時間を与え、急速に変化したことも明らかである。これは、より低いSOCにおいて高い分極に対抗する良い例でもある[非特許文献9、10を参照]。
【0058】
また、頻繁な緩和が、この期間中に適用された。同様の状況は、ステップが複数の緩和を伴って頻繁に変化させられた、終了時に見られることができ、これは、引き込まれた高電流がそれほど安定でなく、非常に急速に低下する傾向にあるときである。
【0059】
図2は、重要なプロセスのフロー図としての、NLVベースの充電プロセスを示している。以下のセクションは、これらの主要プロセスの各々についての詳細を説明する。
【0060】
[A]初期SOCの発見
システムは、SOC獲得に依存するので、これは、任意選択プロセスである。任意の外的方法を使用してこれを測定してもらうことは、システムがそれの性能を改善する助けにもなる。
【0061】
したがって、初期SOCを決定するために、いくつかの方法が探究された。ファジー論理を使用する熱力学ベースのSOC予測は、識別された正確でより高速な方法の1つである。他のいくつかの可能性のある方法は、参考文献[非特許文献11、12を参照]の中にも見出されることができる。そのため、システムは、0%(SOC)から100%(SOC)への充電を提供するばかりでなく、任意の部分的充電もサポートする。図3を参照すると、この初期SOCは(利用可能である場合)、初期「K」値を決定するために使用されることもできる。
【0062】
[B]ACP-NLV充電を初期化する
このプロトコルの初期化パラメータは、2つの主要セクションにカテゴライズされることができる。
1)ユーザ選好パラメータ
a)充電のための期待時間持続(ETD):15分で充電すべきか、それとも30分で充電すべきかなど。
【0063】
b)定電流[CC]利用を有効化する:これを選択することは、NLVベースの充電を適用する前に、CCベースの利用を使用することをシステムに強制する。しかし、これは、任意選択である。このCC充電のためのデフォルト電流は、3Cであり、時間持続は、3分である。しかし、それらは、構成可能である。
2)システムパラメータ
a)startVoltage:充電が開始する直前のバッテリのOCV。
【0064】
b)nlvStatedCapacity(SC):製造業者が定めた/実験的に判明したバッテリの容量。これは、Cレートを計算するために使用される。
【0065】
c)nlvStepInterval(CST):充電/nlv充電の1ステップの持続時間。NLV充電は、一連の短いステップを通してモデル化する。各ステップ中に、次の期待電圧が、計算され、充電され、関連パラメータを更新する。
【0066】
d)nlvStepsPerFrame(CFS):フレームと見なされるステップの数。
【0067】
フレームは、次の可能性のある電圧を決定するために、いくつかの数式(IおよびVの平均微分係数)を適用するように束ね上げられた、隣接ステップのセットである。フレーム全体は、最初は、フレーム内のステップの数(CFS)に等しい、一連の知られたLVベースの充電ステップによって満たされる。その後、あらゆるステップ(CTS)の後に、フレームの最終要素だけが、新しいデータを用いて更新され、他のすべての要素は、場所1つ後方にシフトされ、第1の要素を捨てさせる。これは、充電プロセス全体の間、実施される。
【0068】
e)frameCurrentArr:あらゆるステップ時間(CTS)持続の後に更新される電流のフレーム配列。
【0069】
f)frameVoltageArr:あらゆるステップ時間(CTS)持続の後に更新される電流のフレーム配列。
【0070】
g)nlvInitialSlopeDuration:これは、線形ボルタンメトリ(LV)ベースの充電のためにかかる時間持続である。
【0071】
h)lvEquation:NLV充電の[第1のフレームを満たすための]まさに第1のステージのためのLV値を生成するために使用される線形方程式。
【0072】
i)nlvEndTargetVoltage:LVベースの充電計算のための終止電圧。これは、デフォルトで4.2Vである。
【0073】
j)nlvInitVoltArr:LVベースの電圧ステップを有するフレームサイズ(CFS)の電圧配列。
【0074】
k)nlvKValue:それから開始する第1の/デフォルトのKn値[バッテリに対するLVベースの分析によって事前に定められることが仮定される]。後で、これは、より高速な充電をサポートするために、システムによってトレーニングされる。
【0075】
l)minVoltageおよびmaxVoltage(Vmax、Vmin):安全性目的でシステムによってサポートされる最小/最大電圧。
【0076】
m)cRateRealTime:引き込まれた電流に基づいて、リアルタイムCレートが測定される:例えば、Cレート=電流/nlvStatedCapacity
n)cRateMinExpected:上で定義されたETD時間でシステムがフル充電されるかどうかを予期するための最小必要Cレート。
【0077】
o)cRateDropThreshold:これは、単一の電圧ステップ内において許容される「電流のかなりの低下」である。Cレートがこのしきい値を下回るほど低下した場合、システムは、次のステップに対して移行する。
【0078】
p)nlvElapsedChargeTime:[nlvECT]は、任意の与えられた時間において充電のためにかかる時間持続である。
【0079】
[C]3分間、CC[定電流]充電を適用する
このモードが、選択された場合、高速充電に向けてバッテリを利用するために、3Cの定電流(CC)が、より短い期間にわたって適用される。デフォルト期間は、3分であるが、CC電流およびこの短い期間は、ともに構成可能である。
【0080】
CC充電の間、10ステップ毎の後に、緩和[C.1 休止、1ステップ時間(CTS)にわたって「0」電流]が、適用される。CCベースの充電が、ひとたび完了すると、次のプロセスに対して移動する前に、より長い緩和(3CTS)が、適用される。
【0081】
[D]初期フレーム、LVベースの充電
このステップは、NLV充電のための初期化/キックスタートプロセスとして使用される。次の非線形設定電圧を計算するためのNLVプロセスのために、電流値および電圧値のフレームが、必要とされる。したがって、開始ポイントとして、非常に短い期間(1フレーム持続時間)の間、バッテリを充電するために、他のいくつかの方法が、必要とされる。これは、高い分極が高速充電を妨げる、より低いSOC段階からバッテリを押しやる、いくらかの容量も獲得する。
【0082】
したがって、以下の方法のうちのいずれも、このキックスタートに適している。
【0083】
- 線形掃引ボルタンメトリ(LSV)ベースの充電
- 線形掃引アンペロメトリ(LSA)ベースの充電
- 定電流定電圧(CCCV)ベースの充電
- 特許文献1に記載のカスケードパルス充電プロトコル(CPC)
説明を簡潔にするために、キックスタート方法として、LSVが使用された。
【0084】
1.上述の緩和の後、バッテリの開始電圧(V start)を読み取る。
【0085】
2.バッテリの期待初期終止電圧(V init-end)を読み取る。これは、バッテリを害することなく、高電圧においてより大きい範囲を獲得するために、設定される。
【0086】
3.線形ボルタンメトリ(LSV)を使用し、充電プロセスを開始するために、電圧要素の配列[array-lv]を取得する。
【0087】
V next=V start+時間間隔×V slope
V slopeは、[ETD=20分の場合]20分の時間でバッテリを充電するためのものとして取られた。
【0088】
4.以下の構成パラメータを定義する。
【0089】
a.測定間隔(ts)
b.ステップ間隔(dt)[デフォルトでCTS]
c.フレーム当たりのステップの数(frame-size、CFS)
d.宣言容量(Capacity-stated)
e.許容される最大電圧(V max-end)
f.「frame-size」のVoltageFrame配列サイズ
g.「frame-size」のCurrentFrame配列サイズ
5.ステップからなるフレームをLV配列から取る。
【0090】
「frame-size」の要素からなるサブ配列を、ステップ3で定義された「array-lv」から選択する。
【0091】
6.1フレームの持続時間の間だけ、「array-lv」ベースの電圧シリーズを通して、線形ボルタンメトリベースの充電を適用し始める。各ステップにおいて電流および電圧を測定し、関連するフレーム配列に入れる。これらは、電流および電圧の変化の勾配を計算するために使用される。
【0092】
[E]データフレーム(V、I、T)および容量を更新する
あらゆるステップの後に、電圧(V)、電流(I)、および温度(T)の更新が、行われるべきである。したがって、各ステップについて、次のステップをトリガする直前に、更新が行われる。そのため、容量獲得を計算するために取られる電流は、そのCTS時間フレーム(デフォルトケースでは2秒)の間の最小電流である。さらに、
「パスXを更新する」から、毎回、次回の/新しい読み取りが、フレーム内の次の要素として記憶される。「プロセスD」は、CFS数の回数の間だけ続けられるので、フレームは、「プロセスD」の完了とともに、完全に満たされる。
【0093】
「パスYを更新する」から、あらゆる新しい/次の読み取りが、フレームの最終要素として記憶される。それのすべての先行データは、位置1つ押し返される。そのため、毎回、フレームのまさに第1のアイテムが、削除される。
【0094】
VoltageFrame配列およびCurrentFrame配列は、フレーム値を記憶するために満たされ、充電プロセス中、継続的に更新される。
容量を更新する。
【0095】
SOCを計算するための単純な方法は、リアルタイムにクーロンカウンティング
【0096】
【数15】
【0097】
を使用することであり、ここで、「I」は、電流であり、「dt」は、図5を参照すると、ステップの時間持続であり、Qnomは、セルの公称容量である。
【0098】
デフォルトの「ステップ時間」は、2秒として設定された。そのため、バッテリによるいくらかの電流引き込みのときは常に、関連する容量獲得は、上記の式に基づいて計算される(C=I×t、すなわち、電流×時間)。その後、それは、主要な容量獲得に更新される。これは、SOCを定めるために、その後、SOCを変更するためのパラメータを制御するために、プロトコルにおいて使用される。
【0099】
緩和ステップの間は、容量計算はない。
【0100】
[F]NLVに基づいて次の「設定電圧」を発見する[微分係数を計算する]
1.以下の計算のためにVoltageFrame配列およびCurrentFrame配列を使用し、「次のNLVベースの電圧(V-nlv-next)を定める。
【0101】
a.ランニングフレームについて電流の微分係数(d[I]/dt(mA/秒))の平均を計算する。
【0102】
b.「VoltageFrame」から最終電圧(「V-nlv-prev」)を取る。
【0103】
c.「K値」を定める。
【0104】
i.まさに第1の時間については、これは、この種類のバッテリに対する20分(ETD)のLV充電についてのLV分析に基づいて、事前に定められた値である。
【0105】
ii.後続の処理については、システムは、(引き込まれたCレート、ステップ内における電流低下のレート、およびSOCなど)パラメータのセットに基づいて、「K値」をトレーニングする(これは、「自己トレーニングされた「K」を管理する」についてのセクションの下で説明される)。
【0106】
d.以下のようにV-nlv-nextを定める。
【0107】
V-nlv-next=V-nlv-prev+K値×[{1/(d[I]/dt)(mA/秒)}×dt]
e.電流低下または増加があるかどうかを識別するために、先行するNLVステップを検査し、低下がある場合(Idrop=[(Ix+1-Ix)/Ix)])、次の電圧ランプのレートを低減させるために、電圧補償を適用する。
【0108】
V-nlv-next=V-nlv-next-Idrop×(V-nlv-next-V-nlv-prev)
2.充電中のバッテリの安全性を保障するために、温度Tも使用される。温度が安全性限界を上回るほど上昇したときは常に、充電は保留され、期待温度範囲が確保されたときに再開するまで、事前に定められた量の時間持続にわたって、システムに緩和させる。
【0109】
[G]NLVを用いて充電する
1.「V-nlv-next」をバッテリに設定する。
【0110】
a.この設定の後すぐに、電流(realtimeCurrent)および電圧(realtimeVoltage)を読み取る。
【0111】
b.「ステップ間隔」後、電流および電圧を読み取る。
【0112】
c.上記の2つを平均し、VoltageFrameおよびCurrentFrameの最終エントリを更新する。
2.Vを設定した後すぐに、引き込まれた電流を読み取り、いずれの予期せぬほど高い電流のケースにおいても、いかなる損傷も回避するために、安全性限界と比較する。さもなければ、次の「NLV-Set-Voltage」が設定されるまで、CTS持続時間にわたって待機する。電流に対する強制はない。システムは、それの最も細かい可能な頻度で、電流および電圧だけを測定する。
【0113】
[H]自己トレーニングされた「K」を管理する、[I]ステップ時間を管理する
【0114】
【数16】
【0115】
上記の式は、単一の充電ステップ毎に、NLVベースの設定電圧を決定するために使用される。しかし、Knは、因子のセットに基づいて、変化してもいる。以下は、それを制御するために使用される主要な因子である。
「期待Cレート:cRateExpected」は、フル充電を保証し、要求された時間持続内に、必要とされる量の容量を達成する。
【0116】
「充電時間」および「充電容量」についてのユーザの選好/要件に基づいて、システムは、継続的に維持されなければならない、または充電の全期間中の平均としての、最小Cレート(「期待Cレート」)を計算することができる。プロトコルは、この情報を使用して、それを、あらゆる充電ステップにおいてリアルタイム電流によってもたらされるCレート(「リアルタイムCレート:cRateRealTime(CRRT)」)と比較することによって、Knおよびステップ時間を制御する。
【0117】
高い「リアルタイムCレート」が引き込まれるときは常に、Knは、可能な限り低く保たれる。また、ステップ時間は、可能な限り大きく増加する。同時に、「ステップ時間」が、緩和を適用せずに、「ステップについての最大許容時間」を超えることは許されない。しかし、緩和の後であっても、システムが、高い「リアルタイムCレート」を引き込む場合は、「電流のかなりの低下」(これはシステムによって構成可能なパラメータである)が識別されるまで、それは、同じ電圧ステップが継続することを許容する。その後、それは、次の電圧ステップに対して移動することを決定する。
「経過充電時間:timeElapsedCharge」は、必要とされる充電が期待時間持続内に達成されることを保証する。
【0118】
これは、充電状態(SOC)の因子としても機能する。それが、期待充電持続時間の終了セグメントに達したとき、システムは、ステップ時間を低減させることによって、充電頻度を増加させ、非線形電圧変化を速やかに通り抜けるために、Knをより高い値に増加させる。
【0119】
しかし、システムが、「期待Cレート」の範囲付近または範囲内の電流を引き込む場合、システムは、ステップ時間およびKn値の公称範囲を保つ。
「Cレート消耗持続時間:timeWaitedForExpectedCRate」は、そのような高抵抗充電窓からシステムを出させようと試みる。
【0120】
システムが、ある電圧ステップにおける引き込み電流が、「期待Cレート」しきい値をかなり下回ることを検出したときは常に、それは、そのステップを可能な限り速やかに通過しようと試みる。したがって、「ステップ時間」は、低減される。
【0121】
しかし、これが、まさに初期段階において(低いSOCにおいて)発生した場合、Kn値は、電圧を大きい量から上げるために、大きく増加される。
【0122】
それが、充電の終了に向かって発生した場合、金属容器は、より大きい容量を獲得するために、まだ充電しなければならないので、Kn値は、適度なレベルに保たれる。ここで、「Cレート」の期待値は、同様に、それの最大期待値の半分まで落ちることができる。
【0123】
このケースにおいて、「ステップ時間」が低減されるとき、システムは、充電ステップの通り抜けをスピードアップしようと試みる。そのため、いくつかのケースにおいては、引き込まれる電流が、再び上がってよい。しかし、他のケースにおいては、それは、より低いCレートにとどまってよい。そのようなより低いケースにおいては、Kn値は、かなり容認可能なレベルの電流が、バッテリによって引き込まれることができるまで、非常に高い値に設定される。それが、高いCレート電流の引き込みに戻り始めるときは常に、Kn値は、引き下げられ、それにもかかわらず、この困難な期間を可能な限り速く通過する一方で、その期間内においてさえも、最大可能充電を獲得するために、「ステップ時間」は、小さく保たれる。
【0124】
上述の主張に基づいた我々の参照プロトコルのために我々が使用した制御ロジックおよび参照テーブルは、以下の通りである。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
【表5】
【0130】
図6のフローは、上記の表[1.1ないし1.5]に示されたパラメータに基づいて、K値およびStepTimeがどのように制御されるかを説明している。
【0131】
図7の通り、「デフォルトのK(K×k_TF)」および「デフォルトのステップ時間」は、NLVベースの充電におけるまさに第1のステップの間だけ使用される。後続のすべてのステップについては、上述のトレーニングアルゴリズムが、適用され、最良の適切な「K値」および「ステップ時間」を見つける。
【0132】
したがって、これらのパラメータは、バッテリのSOCおよびSOHに基づいて調整されることが保証され、それが、可能な引き込まれる電流が異なる原因となる。
【0133】
図7に例示されるように、引き込まれるCレートが非常に低いときは常に、K値は、急速に増加する。それにもかかわらず、電流は、バッテリがそれを扱うことが可能な空間においては、徐々に増加しようとした。
【0134】
また、Cレートが、高いとき、K値は、減少する。しかし、K値は、システムが、期待Cレートにより近いまたはそれを上回るCレートを有する電流を引き込もうとするときだけ、非常に低い値に減少する。
【0135】
図8によって例示されるように、SOCが、最大容量の約半分であるとき、バッテリは、高電流を引き込む高いポテンシャルを有するので、K値は、非常に低くなる。
【0136】
図9によって例示されるように、SOCが、最大容量に近いとき、K値は、急速に変動するようになり、高い引き込み電流を維持しようと試みる。
【0137】
[J]「目標終止電圧」を調整する
調整可能な「目標終止電圧」を有するというアイデアは、それのSOCおよびSOHに応じて、獲得容量を高めるためである。バッテリが、良好なSOHを有するときは常に、充電容量の大部分が、より低い電圧範囲内に引き込まれることができる。そのため、システムは、最初に、NLV充電のための退出ポイントとして、「デフォルト目標終止電圧」を設定する。
バッテリのリアルタイム電圧が、この「デフォルト目標終止電圧」に達したときは常に、システムは、そのときのリアルタイム電流によってもたらされるCレートをチェックする。その後、このCレートに基づいて、システムは、「目標終止電圧」を増加させて、充電を継続するか、それともこのポイントで充電を停止するかを決定する。Cレートに基づいて、これを決定するために、プロトコルにおいて検討される2つの方法が、存在する。
【0138】
固有の分極プロファイルベースの容認可能な「目標終止電圧」
ここでは、システムは、充電対象として使用されるバッテリ種類の分極プロファイルについての事前に処理された情報を必要とする。したがって、プロトコルは、異なるバッテリ種類に対して調整されるべきである。
【0139】
デフォルト「目標終止電圧」テーブル
これは、任意のバッテリ種類についての終止電圧のための汎用コントローラとしての役割を果たすことが意図される。また、このテーブルは、充電対象とされるバッテリ種類に対して、「固有の分極プロファイル」が利用可能でないときは常に使用されることができる、平均分極プロファイルとして作り上げる。それは、充電統計に基づいて、自らをトレーニングすることも意図する。
【0140】
以下の表1.6は、ここで説明された参照プロトコルのための「デフォルト終止電圧テーブル」として使用される。
【0141】
【表6】
【0142】
表1.6は、「デフォルト終止電圧」が4.65Vとして選択された場合の、終止電圧値に対応する。しかし、これは、やはり、カスタマイズ可能なパラメータであり、それは、システム/ユーザ選好の下で変化することができる。それにもかかわらず、我々は、バッテリ種類/化学的性質に基づいた、これのための範囲を有することを意図している。したがって、全体的な制御ロジックとして、「調整可能な終止電圧」を扱うことは、以下のように図10において示されることができる。
【0143】
[K]退出基準
充電プロセスをいつ停止するかを決定するための、3つの異なる基準が、存在する。
【0144】
1.システムがひとたび「最大終止電圧」に達したとき。
【0145】
2.バッテリがひとたび必要とされる最大容量を獲得したとき。
【0146】
3.学習ベースの電流プロファイル比較。
【0147】
電流プロファイルが、同様の退出状況中に見られたいずれかの先行する電流プロファイルのそれとほぼ一致する場合、学習アルゴリズムは、それの退出プロファイルを改善することを意図する。上記の3つの方法の利用可能性に応じて、退出するかどうかを決定するために、1、2、3と同じ優先順位が、検討される。
【0148】
[L]休止を管理する
休止の管理は、常にゼロ(0)電流をバッテリに適用している。充電サイクルは、この休止期間中、通り過ぎる。
【0149】
[M]NLVを退出する
ひとたび少なくとも1つの基準が満たされると、NLV充電は、停止する。しかし、容量獲得のどれだけに達したかに応じて、システムは、[2C定電流充電を用いる]CCの別のラウンドを体験するか、それとも再びNLVを体験するかを決定する。
【0150】
[N]終了CCを適用する
NLVによってもたらされる容量が、目標と比較して十分でない場合、さらなる容量を獲得するために、2Cでの定電流充電が、NLV充電の終了時に、2分間、適用される。この定電流およびそれの持続時間は、システムパラメータとして構成可能である。
【0151】
図11および図12を参照すると、これは、我々が意図的にそれを停止するまで、いかなる放出もなしに、24サイクルまで行った試験の平均プロファイルである。
【0152】
あるいは、CCプロトコル、CCCVプロトコル、および/またはカスケードパルス充電プロトコル(特許文献1を参照)が、本発明に従って、NLVプロトコルの開始時、中間、および終了時において、適用されることができる。
【0153】
マルチステージK値管理
K値は、バッテリがどれほど最良に上述の電流の期待Cレートを引き込むことができるかに基づいて、変更される。それが、非常に低いCレートを引き込む場合、K値は、電圧の突然の引き上げをモデル化するために、急速に増加していき、その後、高電流という結果となる。それが、期待Cレート以上を引き込む場合、K値は、非常に低く変更され、その高電流充電を用いて最大可能充電を獲得するために、最善を尽くす。他のケースにおいては、K値は、期待Cレートを常に可能な限り大きく維持するように、変更される。
【0154】
図13は、NLV充電:ちょうど23.3分で660mAhまでフル充電されて終了するNLV充電の間の電流およびK値対時間、ランダム試験1を例示している。
【0155】
図14は、NLV充電:25.3分で660mAhのためにフル充電されて終了するNLV充電の間の電流およびK値、ランダム試験2を例示している。
【0156】
対数目盛でのKの変化対時間が、図15に表されている。
【0157】
NLV充電について、「K値」およびSOCの変化対時間が、図16に表されており、一方、「K」値の進展対SOCが、図17に表されている。
【0158】
図18のグラフは、13450個のセルに適用された、NLVベースの適応充電プロトコルの充電プロファイルを示している。これは、700mAhの宣言容量のバッテリを、ちょうど28分で、99%充電まで充電し、695mAhの獲得容量であった。
【0159】
プロセス中、
- それは、そのプロセスの半分の間、2C超ベースの充電を獲得し、
- また、それのフル充電時間の4分の1が、3Cを上回る電流を引き込んでおり、これは、一番最後に生じた。
【0160】
プロトコルにおける働きを想像するために、強調されたセグメントが、さらに分析された。
【0161】
図19における強調されたセクションから約100のサンプルを分析する。
【0162】
- 選択されたK:これは、事前に選択され、ACPに注入されたKである。
【0163】
- 生成されたK:これは、上記のKを使用して、導出された「V-nlv-next」に基づいて、再計算されたKである。
【0164】
- 上記のKはともに、以下のグラフにおいて変化をはっきり目立たせるために、1000倍された。
【0165】
- 次のセクションにおいて示されるように、「生成されたK」対「選択されたK」に見られるこの変化は、電圧上昇が常に非常に小さい量(mV)であるので、精度誤差に起因する。
【0166】
上で示されたAセグメントおよびBセグメントが、次のセクションにおいて、詳しく検査された。
【0167】
- A:生成されたKは、この期間中、選択されたKと同じである。
【0168】
- B:生成されたKは、この期間中、選択されたKから逸れた。
【0169】
上記の「B」セグメントは、以下の表において、長方形の枠内に示される。
【0170】
「AVG(Abs(dI/dt))」および「dV/dt」が、充電プロセス中に収集されたそれぞれの電流変化および電圧変化に対して計算される。
【0171】
【表7】
【0172】
*さらに、[dI/dt(n-1)]および[dI/dt(n-2)]の形成は、以下の表から実現されることができる。
【0173】
【表8】
【0174】
上の表に見られるように、電流は、この「B」セグメントの間、低下した。したがって、dIおよびdvの両方が、突然の引き上げまたは低下の原因を作った。これは、それらの積において、乗算精度が逸脱を作る原因となった。
【0175】
充電容量と使用可能な放電容量の比較
図20は、放電容量が、バッテリの宣言容量の約97%である、約630mAhにおいて、ほぼ一定を維持することを示している。したがって、それは、このNLVベースの充電方法が、時間が経つにつれての容量減衰にあまり寄与しないことを証明する。
【0176】
これは、ほとんどが高電流を直接的に課すことに基づいた、他の競合する高速充電方法に対する、非常に良い利点である。
【0177】
図21および図22は、NLVベースの充電の複数のサイクルの後でさえも、電流および電圧の充電プロファイルが、依然としてほとんど同じままであることを示している。これは、この高速充電プロセスが原因でセルが損傷されることがないことを示す別の証拠である。
【0178】
図23ないし図28を参照すると、ACP充電の実験的試験が、30分の充電時間をかけて、1300サイクルまで、成功のうちに行われた。図28は、ACP充電が、CCCV充電よりも安全であることを、より具体的に示している。事実、数十サイクルの後、CCCVによって充電されたセルは、爆発したが、NLV ACPによって充電されたセルは、保たれた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28