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  • 特許-繊維強化複合材料およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】繊維強化複合材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/06 20060101AFI20230613BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B29C70/06
B29C43/34
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019073444
(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公開番号】P2020172031
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下山 悟
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 史宜
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-143404(JP,A)
【文献】特開2015-143405(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098530(WO,A1)
【文献】特開2016-049649(JP,A)
【文献】特開2012-211400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
B29B 11/16
B29B 15/08-15/14
C08J 5/04- 5/10
C08J 5/24
D04H 1/00-18/04
D06M 10/00-11/84
D06M 16/00
D06M 19/00-23/18
D02G 1/00- 3/48
D02J 1/00-13/00
D01F 9/08- 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維と熱可塑性樹脂を含有する繊維強化複合材料であって、炭素繊維を15~75重量%含有し、繊維強化複合材料の面方向の半裁断面において、湾曲した炭素繊維が複数存在し、かつ、面方向に対する垂直断面において3本以上の炭素繊維が束状にまとまった束状部位が複数存在する、見かけ密度が0.04~0.15g/cmである繊維強化複合材料。
【請求項2】
前記束状部位が、繊維強化複合材料の面方向に対する垂直断面において幅方向に5か所/cm以上存在する請求項1に記載の繊維強化複合材料。
【請求項3】
少なくとも、
(1)捲縮を付与した炭素繊維前駆体繊維のウェブをニードルパンチにより絡合し、炭素繊維前駆体繊維不織布を得る工程、
(2)炭素繊維前駆体繊維不織布を不活性雰囲気下で焼成し、見かけ密度が0.15g/cm未満の炭素繊維不織布を得る工程、
(3)炭素繊維不織布と熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートとを重ね、熱可塑性樹脂の融点以上の温度において加圧成形により熱可塑性樹脂を溶融含浸する工程、
(4)熱可塑性樹脂の融点以上の温度において圧力を解放してスプリングバックさせた後に冷却する工程
をこの順に有する請求項1または2に記載の繊維強化複合材料の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維と熱可塑性樹脂を含有する繊維強化複合材料とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素などの強化繊維とマトリックス樹脂からなる繊維強化複合材料は、比強度、比弾性率が高く、力学特性に優れること、耐候性、耐薬品性などの高機能特性を有することなどから、航空機、自動車等の他、一般産業用途においても利用されている。
【0003】
優れた力学特性を有する高い繊維体積含有率の炭素繊維強化複合材料として、例えば、炭素繊維と樹脂とからなる繊維強化複合材料であって、炭素繊維は単繊維状態でランダムに配向し、該炭素繊維が見かけ密度が0.25~1.5g/cmのシート形状を構成し、該シート表面の炭素繊維表面におけるESCAで測定したC1sピーク中に占めるCOO基、C-O基の比率の和が5%以上であり、かつ、炭素繊維の繊維体積含有率が20~80%である繊維強化複合材料(例えば、特許文献1参照)が提案されている。近年、貨物輸送分野において、地球環境問題への取り組みとして二酸化炭素の排出量の削減や、原油価格高騰により消費エネルギーコストの削減が強く求められており、軽量化による燃費向上のため、繊維強化複合材料に対して軽量化の要求が高まっており、特許文献1に記載される繊維強化複合材料に対しても、さらなる軽量化が求められている。
【0004】
そこで、樹脂と強化繊維を含む構造体の軽量化技術として、例えば、特定量の樹脂と強化繊維と空隙からなる構造体であって、強化繊維の長さ、強化繊維の配向角度、構造体の厚みが特定の関係を満たし、50%圧縮時の面内方向の圧縮強度が3MPa以上である構造体(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-104034号公報
【文献】国際公開第2017/110532号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の技術により軽量で圧縮特性に優れる構造体が得られるものの、曲げに対する耐性が低く、比曲げ弾性率が不十分である課題があった。そこで、本発明は、軽量で比曲げ弾性率に優れる繊維強化複合材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、繊維強化複合材料の面方向の半裁断面において、湾曲した炭素繊維が複数存在し、かつ、面方向に対する垂直断面において、3本以上の炭素繊維が束状にまとまった束状部位が複数存在する繊維強化複合材料とすることにより、軽量で比曲げ弾性率に優れる繊維強化複合材料が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の繊維強化複合材料は、炭素繊維と熱可塑性樹脂を含有する繊維強化複合材料であって、炭素繊維を15~75重量%含有し、繊維強化複合材料の面方向の半裁断面において、湾曲した炭素繊維が複数存在し、かつ、面方向に対する垂直断面において3本以上の炭素繊維が束状にまとまった束状部位が複数存在する、見かけ密度が0.04~0.15g/cmである繊維強化複合材料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、軽量で比曲げ弾性率に優れる繊維強化複合材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の繊維強化複合材料の面方向の半裁断面の一例を示す光学顕微鏡写真である。
図2】本発明の繊維強化複合材料の面方向に対する垂直断面の一例を示す光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の繊維強化複合材料は、炭素繊維と熱可塑性樹脂を含有する。従来強化繊維として用いられているガラス繊維(密度:2.5g/cm)、鉄(密度:7.8g/cm)、アルミニウム(2.7g/cm)などに比べて、炭素繊維は密度が1.8g/cmと軽く、強度と弾性率に優れているため、強化繊維として炭素繊維を用いることにより、繊維強化複合材料を軽量化し、比曲げ弾性率を向上させることができる。また、熱可塑性樹脂は、低密度でマトリクス樹脂としての作用を有し、後述する本発明の繊維強化複合材料の製造方法において、スプリングバックさせることにより、繊維強化複合材料を軽量化することができる。
【0011】
炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(以下、PANと略す)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、フェノール樹脂系炭素繊維などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、強度や炭素繊維化時の残炭率に優れることからPAN系炭素繊維が好ましい。
【0012】
本発明の繊維強化複合材料中における炭素繊維の含有量は、15~75重量%である。炭素繊維の含有量が15重量%未満であると、炭素繊維による補強効果が低く、比曲げ弾性率が低下する。炭素繊維の含有量は、30重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましい。一方、炭素繊維の含有量が75重量%を超えると、相対的に熱可塑性樹脂の含有量が低くなり、炭素繊維同士の連結が弱くなることから、比曲げ弾性率が低下する。比曲げ弾性率をより向上させ、より軽量化する観点から、炭素繊維の含有量は、65重量%以下が好ましく、55重量%以下がより好ましい。
【0013】
繊維強化複合材料中における炭素繊維の含有量(Wc(%))は、繊維強化複合材料から熱可塑性樹脂などの炭素繊維以外の成分を除去することにより測定することができる。具体的には、炭素繊維の含有量Wc(重量%)は、繊維強化材料の質量Ws(g)と、熱可塑性樹脂などの炭素繊維以外の成分を除去した後に残った炭素繊維の質量Wf(g)を測定し、次式により算出することができる。
Wc[%]=(Wf[g]/Ws[g])×100
熱可塑性樹脂などの炭素繊維以外の成分を除去する手段としては特に限定されず、繊維強化複合材料を、空気中、500℃で30分間加熱して焼き飛ばす方法、熱可塑性樹脂を溶解・分解することができる溶液に溶解する方法、JIS K 7075(1991)に記載される方法等を適用することができる。
【0014】
熱可塑性樹脂としては、炭素繊維に含浸する際の消費エネルギーを抑制し、特殊な設備が不要である観点から、融点が300℃以下の樹脂が好ましい。融点が300℃以下である熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリアミド;ポリフェニレンスルフィド等のポリアリーレンスルフィドや、これらの共重合体、変性体等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、繊維強化複合材料をより軽量化する観点から、ポリオレフィンやポリアミドが好ましい。
【0015】
本発明の繊維強化複合材料は、繊維強化複合材料の面方向の半裁断面において、湾曲した炭素繊維が複数存在する。面方向の半裁断面とは、繊維強化複合材料の面方向に半裁して出した断面のことをいう。ここで、「湾曲した炭素繊維」とは、炭素繊維の単糸が多方向を向き、後述の方法により観察した繊維長1mm以上の炭素繊維において、連続した直線部分が1mm未満であることを言う。本発明においては、繊維強化複合材料を面方向に半裁して断面を出し、この半裁断面から無作為に選択した10箇所において1cm以上の試料を採取し、断面を、それぞれ光学顕微鏡を用いて倍率50倍にて拡大観察し(観察視野1.7mm×2.3mm)、炭素繊維の単糸が多方向を向き、繊維長1mm以上の炭素繊維において、連続した直線部分が1mm未満である炭素繊維の数を計数する。このような形状を有する炭素繊維の数を10箇所について計数してその平均値を算出し、小数点第1位を四捨五入した値を湾曲した炭素繊維数とし、湾曲する炭素繊維数が10以上である場合に、「湾曲した炭素繊維が複数存在している」とする。炭素繊維が湾曲することにより、応力を分散し、比曲げ弾性率を向上させることができる。また、炭素繊維が多方向を向くことにより炭素繊維同士の重なりが増えるため、繊維強化複合材料中の空隙を増やして見かけ密度を低減することができる。湾曲した炭素繊維数は15以上が好ましい。なお、繊維強化複合材料の面方向においては、炭素繊維は単繊維の状態でランダムに配向していることが好ましい。
【0016】
図1に、本発明の繊維強化複合材料の面方向の半裁断面の光学顕微鏡写真の一例を示す。繊維強化複合材料1に、湾曲した炭素繊維2が複数存在し、炭素繊維間を結合する熱可塑性樹脂3が存在する。
【0017】
湾曲した炭素繊維を複数存在させる方法としては、例えば、後述する繊維強化複合材料の製造方法において、炭素繊維の前駆体繊維に捲縮を付与することが好ましい。
【0018】
また、本発明の繊維強化複合材料は、面方向に対する垂直断面において、3本以上の炭素繊維が束状にまとまった束状部位が複数存在する。ここで、「束状部位」とは、後述の方法により観察した炭素繊維強化材料断面において、配向した炭素繊維が束状に3本以上まとまった形態が、観察視野中の繊維強化複合材料の厚さの1mm以上の長さにわたって連続していることを言う。本発明においては、繊維強化複合材料から無作為に選択した10箇所において面方向に対する垂直断面を切り出し、光学顕微鏡を用いて倍率16倍にて拡大観察し(観察視野5.5mm×7.3mm)、厚さ方向に配向した炭素繊維が束状に3本以上まとまった形態が、観察視野における繊維強化複合材料の厚さ方向に1mm以上の長さで連続している束状部位の数を計数する。このような形状を有する束状部位の数を10箇所について計数してその平均値を算出し、小数点第2位を四捨五入した値を束状部位数とし、束状部位数が2以上である場合に、「3本以上の炭素繊維が束状にまとまった束状部位が複数存在する」とする。束状部位が複数存在することにより、繊維強化複合材料の製造におけるスプリングバックを大きくすることができ、見かけ密度を低減し、比曲げ弾性率を向上させることができる。一方、束状部位が複数存在しない場合や、炭素繊維の束が2本以下の場合には、これらの効果を十分に得ることができない。束状部位数は、繊維強化複合材料の面方向の垂直断面において幅方向に5か所/cm以上が好ましく、8か所/cm以上がより好ましい。
【0019】
図2に、本発明の繊維強化複合材料の面方向に対する垂直断面の光学顕微鏡写真の一例を示す。繊維強化複合材料1は、束状部位4が複数存在する。
【0020】
束状部位を複数存在させる方法としては、例えば、後述する繊維強化複合材料の製造方法において、炭素繊維の前駆体繊維に捲縮を付与したウェブや抄紙を、後述する好ましい本数のニードルパンチにより不織布化した後、焼成して炭素繊維不織布とすることが好ましい。
【0021】
本発明の繊維強化複合材料は、見かけ密度が0.04~0.15g/cmである。見かけ密度が0.04g/cm未満であると、繊維強化複合材料中の空隙増加により炭素繊維同士の連結が弱くなり、比曲げ弾性率が低下する。一方、見かけ密度が0.15g/cmを超えると、軽量化が不十分となる。見かけ密度は0.1g/cm以下が好ましい。
【0022】
本発明の繊維強化複合材料の見かけ密度は、以下の方法により求めることができる。まず、繊維強化複合材料をタテ100mm、ヨコ100mmの寸法でカットした試験片を用意し、マイクロメーターを用いて試験片の9箇所の厚さを0.01mm単位で測定し、その平均値を厚さとする。また、試験片の質量を測定する。この厚さ(mm)と試験片の面積(100mm×100mm)、繊維強化複合材料の質量Ws(g)から、次式により見かけ密度を算出し、小数第3位を四捨五入した値を繊維強化複合材料の見かけ密度ρとする。
ρ[g/cm]=Ws[g]/(タテ寸法100[mm]×ヨコ寸法100[mm]×厚さ[mm]/1,000)。
【0023】
繊維強化複合材料の見かけ密度を上記範囲にする方法としては、例えば、後述する繊維強化複合材料の製造方法において、炭素繊維の前駆体繊維に捲縮を付与したウェブをニードルパンチにより不織布とした後、焼成して得られた見かけ密度が後述する好ましい範囲にある炭素繊維不織布を、熱可塑性樹脂とともに、熱可塑性樹脂の融点以上の温度で加圧成形して熱可塑性樹脂を炭素繊維に含浸させた後、加熱しながら圧力を解放してスプリングバックを発生させることが好ましい。
【0024】
本発明の繊維強化複合材料は、比曲げ弾性率が6~15(GPa)1/3/(g/cm)であることが好ましい。ここで、比曲げ弾性率とは、曲げ剛性に対する質量効率のことであり、この値が大きい程、同重量で曲げに対する剛性が高いことを意味する。弾性率Ec(GPa)と見かけ密度ρ(g/cm)から、Ec1/3/ρにより算出することができる。鋼材やアルミニウムの比曲げ弾性率は1~1.5(GPa)1/3/(g/cm)程度であり、従来の繊維強化複合材料は2~2.3(GPa)1/3/(g/cm)程度であり、比曲げ弾性率が6(GPa)1/3/(g/cm)以上である本発明の繊維強化複合材料は、これらの材料に比べて優れた比曲げ弾性率を有することを意味する。比曲げ弾性率は、7(GPa)1/3/(g/cm)以上が好ましく、9(GPa)1/3/(g/cm)以上がより好ましい。一方、比曲げ弾性率は15(GPa)1/3/(g/cm)以下が好ましい。
【0025】
繊維強化複合材料の比曲げ弾性率は、以下の方法により算出することができる。まず、JIS K7017(1999)クラスIに従い繊維強化複合材料から試験片を切り出し、小型卓上試験機EZ-LX((株)島津製作所製)を用いて、3点曲げにて曲げ弾性率を測定する。試験片は、任意の方向を0°方向とした場合に+45°、-45°、90°方向の4方向について切り出した試験片を作製し、それぞれの方向について測定数n=5とし、算術平均値を曲げ弾性率Ec(GPa)とする。前述の方法により測定した見かけ密度をρ(g/cm)として、次式により比曲げ弾性率を算出することができる。
比曲げ弾性率[GPa]1/3/[g/cm]=Ec[GPa]1/3/ρ[g/cm]。
【0026】
次に、本発明の繊維強化複合材料の製造方法について説明する。繊維強化複合材料の製造方法としては、例えば、炭素繊維の前駆体繊維に捲縮を付与したウェブや抄紙をニードルパンチにより不織布化した後、焼成して炭素繊維不織布とし、熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートとともに加圧加熱成形して熱可塑性樹脂を炭素繊維に含浸させた後、加熱しながら圧力を解放してスプリングバックを発生させる方法が好ましい。剛直な炭素繊維ではなく、柔軟な前駆体繊維に予め捲縮を付与し、前駆体繊維の状態でニードルパンチにより不織布化することにより、炭素繊維を湾曲させ、前述の束状部位を形成することができる。炭素繊維に捲縮加工を施しても、炭素繊維が剛直で可撓性が低いため、本発明における湾曲した炭素繊維を複数存在させることは困難である。また、炭素繊維にニードルパンチ加工を施しても、炭素繊維が剛直で可撓性が低いため、炭素繊維が破損しやすく、垂直断面に前述の束状部位を形成することは困難である。また、このようにして得られた炭素繊維不織布を用いてスプリングバックを発生させることにより、見かけ密度を前述の範囲に容易に調整することができる。
【0027】
具体的には、少なくとも、
(1)捲縮を付与した炭素繊維前駆体繊維のウェブをニードルパンチにより絡合し、炭素繊維前駆体繊維不織布を得る工程、
(2)炭素繊維前駆体繊維不織布を不活性雰囲気下で焼成し、見かけ密度が0.15g/cm未満の炭素繊維不織布を得る工程、
(3)炭素繊維不織布と熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートとを重ね、熱可塑性樹脂の融点以上の温度において加圧成形により熱可塑性樹脂を溶融含浸する工程、
(4)熱可塑性樹脂の融点以上の温度において圧力を解放してスプリングバックさせた後に冷却する工程
をこの順に有することが好ましい。以下に、材料と各工程について詳述する。
【0028】
まず、(1)捲縮を付与した炭素繊維前駆体繊維のウェブをニードルパンチにより絡合し、炭素繊維前駆体繊維不織布を得る工程について説明する。
【0029】
炭素繊維前駆体繊維としては、例えば、PAN系耐炎糸が挙げられる。を用いることができ、耐炎化は、通常、空気中で、処理時間を10~100分間、温度を150~350℃の条件で行うことが一般的である。PAN系耐炎糸の比重が1.3~1.38(g/cm)の範囲となるように設定することが好ましい。
【0030】
次いで、炭素繊維の前駆体繊維に捲縮を付与する。捲縮付与方法としては、例えば、機械捲縮による捲縮付与や、熱処理による捲縮付与などが挙げられる。本発明においては、捲縮構造を制御しやすく、捲縮状態のバラツキを抑制しやすいことから、機械捲縮により捲縮を付与することが好ましい。
【0031】
機械捲縮による捲縮付与方法としては、例えば、直線状の前駆体繊維に対して押し込み式クリンパー等の捲縮付与装置によって捲縮を付与する方法や、2枚以上のギヤの間に前駆体繊維を導入して捲縮を付与する方法などが挙げられる。これらの機械捲縮においては、ライン速度の周速差・熱・加圧などによって、捲縮数や捲縮率を調整することができる。
【0032】
次に、捲縮を付与した炭素繊維前駆体繊維を切断して短繊維化し、ウェブ化または抄紙化することが好ましい。ウェブ化する際のカーディングの通過性の観点から、短繊維化繊維の平均繊維長は、30~100mmが好ましい。短繊維をウェブ化する方法としては、例えば、短繊維をカーディングしてクロスレイやエアレイにより乾式ウェブ化する方法が挙げられる。短繊維を抄紙化する方法としては、例えば、抄造機を用いて湿式抄紙化する方法が挙げられる。本発明においては、基材1枚の高目付化が容易で、後述する加圧加熱工程にける基材の積層枚数を削減することができることから、乾式ウェブ化法が好ましい。得られたウェブを、例えばクロスラッパーを用いて重ね合わせることが好ましい。
【0033】
次に、ウェブや抄紙をニードルパンチにより絡合し、不織布化する。ニードルパンチを行う際、ニードルに形成されたバーブと呼ばれる前駆体繊維を引っかける部位の深さを、前駆体繊維の太さに対して3倍以上となるものを用いることにより、束状部位を構成する炭素繊維を3本以上とすることができる。束状部位の数を増やすことにより後述する繊維強化複合材料のスプリングバックを大きくし、繊維強化複合材料を軽量化できることから、ニードルパンチの本数は、200本/cm以上が好ましく、500本/cm以上がより好ましく、1,000本/cm以上がさらに好ましい。一方、比曲げ弾性率をより向上させる観点から、ニードルパンチの本数は、2,000本/cm以下が好ましい。
【0034】
工程(2)における炭素繊維不織布の密度を後述する好ましい範囲にするために、炭素繊維前駆体不織布の見かけ密度は0.23g/cm未満が好ましい。また、プレスなどの圧縮工程を行うことなく工程(2)に進めることが好ましい。なお、炭素繊維前駆体繊維不織布の見かけ密度は、以下の方法により求めることができる。まず、炭素繊維前駆体繊維不織布の無作為に選択した5箇所から、タテ40mm、ヨコ40mmの寸法で試験片をカットし、質量W(g)を測定する。小型卓上試験機EZ-LX((株)島津製作所製)を用いて、試験種類を圧縮試験とし、試験片を挟まない状態で上部の圧縮治具を下降させて下部の治具に接触した地点を厚さのゼロ点とする。次に、試験片を治具の中央に置いて、速度2mm/分の速度で圧縮を行い、8.8KPa荷重下での厚みとなるように1,440gの荷重がかかった際の厚さ(μm)を測定し、小数点第1位を四捨五入する。試験片5枚についてそれぞれ厚さ(μm)を測定し、数平均値を算出して小数点第1位を四捨五入した値を炭素繊維前駆体繊維不織布の厚さとする。この厚さと試験片の面積(40mm×40mm)、質量W(g)から、次式により見かけ密度を算出し、小数第3位を四捨五入した値を炭素繊維前駆体繊維不織布の見かけ密度ρ0とする。
ρ0[g/cm]=W[g]/(タテ寸法40[mm]×ヨコ寸法40[mm]×厚さ[μm]/100,000)。
【0035】
次に、(2)炭素繊維前駆体繊維不織布を不活性雰囲気下で焼成し、見かけ密度が0.15g/cm未満の炭素繊維不織布を得る工程について説明する。
【0036】
前述の工程(1)において得られた不織布を不活性雰囲気下において焼成することにより、炭素繊維不織布化することが好ましい。具体的には、ニードルパンチにより得られた前駆体繊維不織布を、窒素雰囲気中、温度600~1,000℃の条件で焼成して前炭化不織布とした後、窒素雰囲気中、温度1,200~2,000℃の条件で焼成することにより、炭素繊維不織布を得ることが好ましい。
【0037】
繊維強化複合材料をより軽量化する観点から、炭素繊維不織布の密度は0.15g/cm未満が好ましい。炭素繊維不織布の見かけ密度は、炭素繊維前駆体繊維不織布の見かけ密度と同様に測定することができる。
【0038】
得られた炭素繊維不織布に表面処理を施すことが好ましく、炭素繊維と熱可塑性樹脂との接着性を向上させることができる。表面処理方法としては、例えば、電解処理等による繊維表面酸化処理やシランカップリング剤処理などが挙げられる。これらの中でも、電解酸化処理が好ましい。
【0039】
電解酸化処理に用いる電解質としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、炭酸、硝酸アンモニウム、硝酸水素アンモニウム、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウムなどの酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウムなどの水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の無機塩;マレイン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、安息香酸ナトリウム等の有機塩;アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなどアルカリなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0040】
次に、(3)炭素繊維不織布と熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートとを重ね、熱可塑性樹脂の融点以上の温度において加圧成形により熱可塑性樹脂を溶融含浸する工程について説明する。
【0041】
得られた炭素繊維不織布と、熱可塑性樹脂のフィルムやシートとを重ね、熱可塑性樹脂の融点以上の温度において加圧成形により熱可塑性樹脂を炭素繊維に含浸することが好ましい。加熱加圧成形機としては、例えば、バッチ式の圧縮成形機やダブルベルトプレス機などが挙げられる。炭素繊維不織布の上下に熱可塑性樹脂のフィルムやシートを配置し、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱して溶融させた後、次第に圧力を増加させて炭素繊維不織布に熱可塑性樹脂を含浸させることが好ましい。
【0042】
次に、(4)熱可塑性樹脂の融点以上の温度において圧力を解放してスプリングバックさせた後に冷却する工程について説明する。
【0043】
スプリングバックさせる際の加熱温度は、スプリングバック中の熱可塑性樹脂の流動性を向上させる観点から、熱可塑性樹脂の融点+20℃以上が好ましい。一方加熱温度は、熱可塑性樹脂の熱分解温度-10℃以下が好ましい。また、冷却に際して、必要に応じて再度加圧して、繊維強化複合材料の見かけ密度を前述の範囲に調整してもよい。
【実施例
【0044】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。まず、各実施例および比較例における評価方法について説明する。
【0045】
(1)炭素繊維含有量 Wc
各実施例および比較例により得られた繊維強化複合材料の質量Ws(g)を測定した後、繊維強化複合材料を空気中500℃で30分間加熱して熱可塑性樹脂を焼き飛ばし、残った強化繊維の質量Wf(g)を測定し、次式により炭素繊維含有量Wc(重量%)を算出した。
Wc[%]=(Wf[g]/Ws「g」)×100。
【0046】
(2)湾曲した炭素繊維
各実施例および比較例により得られた繊維強化複合材料を刃物で面方向に半裁して断面を出し、この半裁断面から無作為に選択した10箇所において1cm以上の試料を採取し、断面を、それぞれ光学顕微鏡(Leica製M205C)を用いて倍率50倍にて拡大観察し(観察視野1.7mm×2.3mm)、炭素繊維の単糸が多方向を向き、繊維長1mm以上の炭素繊維において、連続した直線部分が1mm未満である炭素繊維の数を計数した。このような形状を有する炭素繊維の数を10箇所について計数してその平均値を算出し、小数点第1位を四捨五入した値を湾曲した炭素繊維数とした。湾曲する炭素繊維数が10以上である場合に、湾曲した炭素繊維が複数存在しているとした。
【0047】
(3)束状部位
各実施例および比較例により得られた繊維強化複合材料から無作為に選択した10箇所において面方向に対する垂直断面を切り出し、光学顕微鏡(Leica製M205C)を用いて倍率16倍にて拡大観察し(観察視野5.5mm×7.3mm)、厚さ方向に配向した炭素繊維が束状にまとまった形態が、観察視野における繊維強化複合材料の厚さ方向に1mm以上の長さで連続している束状部位の数を計数した。このような形状を有する束状部位の数を10箇所について計数してその平均値を算出し、小数点第2位を四捨五入した値を束状部位数とし、束状部位数が2以上である場合に炭素繊維が束状にまとまった束状部位が複数存在するとした。
【0048】
(4)繊維強化複合材料の見かけ密度 ρ
各実施例および比較例により得られた繊維強化複合材料をタテ100mm、ヨコ100mmの寸法でカットした試験片を用意し、マイクロメーターを用いて試験片の9箇所の厚さを0.01mm単位で測定し、その平均値を厚さとした。また、試験片の質量を測定した。この厚さ(mm)と試験片の面積(100mm×100mm)、繊維強化複合材料の質量Ws(g)から、次式により見かけ密度を算出し、小数第3位を四捨五入した値を繊維強化複合材料の見かけ密度ρとした。
ρ[g/cm]=Ws[g]/(タテ寸法100[mm]×ヨコ寸法100[mm]×厚さ[mm]/1,000)。
【0049】
(5)炭素繊維前駆体繊維不織布および炭素繊維不織布の見かけ密度
各実施例および比較例により得られた炭素繊維前駆体繊維不織布および炭素繊維不織布のそれぞれ無作為に選択した5箇所から、タテ40mm、ヨコ40mmの寸法で試験片をカットし、質量W(g)を測定した。小型卓上試験機EZ-LX((株)島津製作所製)を用いて、試験種類を圧縮試験とし、試験片を挟まない状態で上部の圧縮治具を下降させて下部の治具に接触した地点を厚さのゼロ点とした。次に、試験片を治具の中央に置いて、速度2mm/分の速度で圧縮を行い、8.8KPa荷重下での厚みとなるように1,440gの荷重がかかった際の厚さ(μm)を測定し、小数点第1位を四捨五入した。試験片5枚についてそれぞれ厚さ(μm)を測定し、数平均値を算出して小数点第1位を四捨五入した値を炭素繊維前駆体繊維不織布または炭素繊維不織布の厚さとした。この厚さと試験片の面積(40mm×40mm)、質量W(g)から、次式により見かけ密度を算出し、小数第3位を四捨五入した値を炭素繊維前駆体繊維不織布および炭素繊維不織布の見かけ密度ρ0とした。
ρ0[g/cm]=W[g]/(タテ寸法40[mm]×ヨコ寸法40[mm]×厚さ[μm]/100,000)。
【0050】
(6)比曲げ弾性率
各実施例および比較例により得られた繊維強化複合材料から試験片を切り出し、JIS K7017(1999)クラスIに従い、小型卓上試験機EZ-LX((株)島津製作所製)を用いて、3点曲げにて曲げ弾性率を測定した。試験片は、任意の方向を0°方向とした場合に+45°、-45°、90°方向の4方向について切り出した試験片を作製し、それぞれの方向について測定数n=5とし、算術平均値を曲げ弾性率Ec(GPa)とした。測定装置としては小型卓上試験機EZ-LX((株)島津製作所製)を使用した。前述の方法により測定した見かけ密度をρ(g/cm)として、次式により比曲げ弾性率を算出した。
比曲げ弾性率[GPa]1/3/[g/cm]=Ec[GPa]1/3/ρ[g/cm]。
【0051】
(実施例1)
単繊維デニール1dのPAN系耐炎糸を押し込み式クリンパーにより捲縮糸とした。この耐炎糸を数平均繊維長76mmに切断した後、カード、クロスラッパーを用いてウェブシートとし、ついでシングルバーブのニードルを用いて針密度200本/cmでニードルパンチを行い、PAN系耐炎糸不織布とした。この不織布の見かけ密度は0.14g/cmであった。次いで窒素雰囲気中1,500℃の温度まで昇温して焼成し、目付770g/m、密度0.05g/cmの炭素繊維不織布とした後(炭素繊維の密度:1.80g/cm)、この炭素繊維不織布を炭酸水素アンモニウム水溶液(0.1モル/リットル)中に浸漬し、76クーロン/gの電気量となるように電解酸化処理を行い、水洗および乾燥を行った
この炭素繊維不織布の上下面に未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J105G)80質量%と、酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”QB510)20質量%とからなる樹脂シートを炭素繊維の重量含有率が33.3%となるように重ね、ポリプロピレンの融点以上である230℃に予熱したプレス機に配置して平板の金型を閉じ、次いで、3分間保持した後、2MPaの圧力を付与してさらに3分間保持した。次いで、金型を全開放して炭素繊維不織布をスプリングバックさせた後、50℃まで冷却して繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料について、空気中500℃で30分間加熱して熱可塑性樹脂を焼き飛ばし、炭素繊維含有量を求めた。得られた繊維強化複合材料の特性を表1に示す。
【0052】
(実施例2)
ニードルパンチ時の針密度を500本/cmとした以外は、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の特性を表1に示す。
【0053】
(実施例3)
ニードルパンチ時の針密度を1,000本/cmとした以外は、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の特性を表1に示す。
【0054】
(実施例4)
ニードルパンチ時の針密度を1,500本/cmとした以外は、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の特性を表1に示す。
【0055】
(実施例5)
炭素繊維含有量が46.2重量%となるようにした以外は、実施例2と同様にして繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の特性を表1に示す。
【0056】
(実施例6)
炭素繊維含有量が46.2重量%となるようにした以外は、実施例3と同様にして繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の特性を表1に示す。
【0057】
(実施例7)
炭素繊維含有量が18.2重量%となるようにした以外は、実施例4と同様にして繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の特性を表1に示す。
【0058】
(実施例8)
炭素繊維含有量が46.2重量%となるようにした以外は、実施例4と同様にして繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の特性を表1に示す。
【0059】
(実施例9)
炭素繊維含有量が57.1重量%となるようにした以外は、実施例4と同様にして繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の特性を表1に示す。
【0060】
(実施例10)
炭素繊維含有量が70.0重量%となるようにした以外は、実施例4と同様にして繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の特性を表1に示す。
【0061】
(比較例1)
実施例1により得られたPAN系耐炎糸不織布を240℃に加熱したプレス機を用いて圧縮し、見かけ密度0.54g/cmとした。次いで窒素雰囲気中1,500℃の温度まで昇温して焼成し、目付770g/m、密度0.35g/cmの炭素繊維不織布とした以外は実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の特性を表2に示す。
【0062】
(比較例2)
ニードルパンチ時の針密度を20本/cmとした以外は、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の特性を表2に示す。
【0063】
(比較例3)
実施例1により得られた耐炎糸を窒素雰囲気中1,500℃の温度まで昇温して焼成して炭素繊維(炭素繊維の密度:1.80g/cm)を得た。次いで、炭酸水素アンモニウム水溶液(0.1モル/リットル)中に浸漬し、76クーロン/gの電気量となるように電解酸化処理を行い、水洗および乾燥を行ったものを長さ5mmにカットし、チョップド炭素繊維を得た。チョップド炭素繊維を開綿機に投入して綿状の炭素繊維集合体を得た。この炭素繊維集合体をカーディング装置に投入し、密度0.06g/cmのシート状の炭素繊維ウェブを作製した。この炭素繊維ウェブを目付770g/mになるように重ねて用いた以外は実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の特性を表に示す。
【0064】
(比較例4)
比較例3により得られた炭素繊維を平均繊維長51mmにカットし、炭素繊維含有量が33.3重量%となるようにカット長51mmのポリプロピレンステープルファイバー((株)トーア紡製)を混ぜて開綿機に投入して混綿し、炭素繊維とポリプロピレンからなる綿状の混合繊維集合体を得た。この混合繊維集合体をカーディング装置に投入し、シート状の混合繊維ウェブを作製した。次いで、炭素繊維分の目付が770g/mとなるように混合繊維ウェブを重ね実施例1と同様に針密度200本/cmでニードルパンチを行い、密度0.08g/cmの炭素繊維とポリプロピレンの混合繊維不織布を得た。この混合繊維不織布を230℃に予熱したプレス機に配置して平板の金型を閉じ、次いで、3分間保持した後、2MPaの圧力を付与してさらに3分間保持した。次いで、金型を全開放して炭素繊維不織布をスプリングバックさせた後、50℃まで冷却して繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の特性を表2に示す。
【0065】
(比較例5)
炭素繊維含有量が9.5重量%となるようにした以外は、実施例4と同様にして繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の特性を表2に示す。
【0066】
(比較例6)
炭素繊維含有量が80.0重量%となるようにした以外は、実施例4と同様にして繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料は炭素繊維不織布へのポリプロピレン樹脂の付着状態が不均一で未含浸部分も見られた。得られた繊維強化複合材料の特性を表2に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【符号の説明】
【0069】
1 繊維強化複合材料
2 湾曲した炭素繊維
3 熱可塑性樹脂
4 束状部位
図1
図2