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  • 特許-二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20230613BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20230613BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230613BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20230613BHJP
   H01M 4/80 20060101ALI20230613BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230613BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20230613BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/04 Z
H01M4/13
H01M4/02 Z
H01M4/80 C
H01M4/62 Z
H01M10/0566
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018096886
(22)【出願日】2018-05-21
(65)【公開番号】P2019204584
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 邦光
(72)【発明者】
【氏名】中野 広幸
(72)【発明者】
【氏名】奥田 匠昭
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勇一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 厳
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-041433(JP,A)
【文献】特表2011-524074(JP,A)
【文献】特表2018-507520(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143634(WO,A1)
【文献】特開2016-122597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 10/04
H01M 4/13
H01M 4/02
H01M 4/80
H01M 4/62
H01M 10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極およびセパレータを少なくとも含み、
前記正極および前記負極の各々は集電体および活物質スラリーを少なくとも含み、
前記集電体は多孔質であり、
前記集電体は三次元網目構造を有し、
前記活物質スラリーは前記三次元網目構造内の開気孔に充填されており、
前記活物質スラリーは活物質粒子および電解液を少なくとも含み、
前記活物質粒子は前記電解液中に分散しており、
前記活物質スラリーは1s-1のせん断速度に対して100mPa・s以上の粘度を示し、
前記セパレータは前記正極と前記負極との間に配置されており
前記活物質スラリーを循環させる循環機構を含まない、
二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009-224141号公報(特許文献1)はスラリー利用型二次電池を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-224141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のスラリー利用型二次電池では、活物質スラリーが利用されている。活物質スラリーは電解液中に活物質粒子を分散させることにより調製されている。スラリー利用型二次電池は反応室を備えている。反応室では正極活物質スラリーと負極活物質スラリーとの間でリチウム(Li)イオンがやりとりされる。反応室において正極活物質スラリーと負極活物質スラリーとはセパレータにより隔てられている。
【0005】
特許文献1の構成では、活物質スラリーがタンク、循環配管および反応室の間を循環している。活物質スラリーを循環経路内に流通させるために、活物質スラリーは低い粘度を有する必要があると考えられる。
【0006】
粘度を低くするためには、活物質スラリーにおける活物質粒子の比率を低く抑える必要があると考えられる。すなわち活物質スラリーは活物質粒子密度が低いスラリーであり得る。したがって高い体積エネルギー密度は望めないと考えられる。
【0007】
さらに活物質粒子密度が低いことにより、活物質粒子同士の間の距離が長くなり、電子伝導抵抗が増加する可能性がある。電子伝導抵抗の増加はレート特性の低下につながると考えられる。
【0008】
本開示の目的は体積エネルギー密度およびレート特性の向上にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし本開示の作用メカニズムは推定を含んでいる。作用メカニズムの正否により特許請求の範囲が限定されるべきではない。
【0010】
本開示の二次電池は正極、負極およびセパレータを少なくとも含む。正極および負極の各々は集電体および活物質スラリーを少なくとも含む。集電体は多孔質である。活物質スラリーは集電体の開気孔に充填されている。活物質スラリーは活物質粒子および電解液を少なくとも含む。活物質粒子は電解液中に分散している。活物質スラリーは1s-1のせん断速度に対して100mPa・s以上の粘度を示す。セパレータは正極と負極との間に配置されている。
【0011】
本開示の二次電池では活物質スラリーが比較的高い粘度を有する。そのため活物質粒子密度が高い活物質スラリーが許容される。これにより体積エネルギー密度の向上が期待される。
【0012】
活物質スラリーの粘度が1s-1のせん断速度に対して100mPa・s以上であることにより、活物質粒子の沈降が抑制されると考えられる。活物質粒子の沈降が抑制されることにより、活物質スラリー全体で均一に充放電反応が起こり、活物質の利用率が向上すると考えられる。活物質の利用率が向上することにより、体積エネルギー密度の向上が期待される。
【0013】
活物質粒子密度が高くなることにより、活物質粒子同士の距離が短くなると考えられる。これにより活物質の利用率の向上および電子伝導抵抗の低減が期待される。
【0014】
さらに本開示の二次電池は集電体を含む。集電体は多孔質である。集電体の開気孔に活物質スラリーが充填されている。そのため活物質スラリーと集電体との接触面積が大きくなることが期待される。これにより活物質の利用率の向上および電子伝導抵抗の低減が期待される。
【0015】
以上の作用の相乗により、本開示の二次電池では体積エネルギー密度およびレート特性の向上が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本実施形態の二次電池の構成の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本開示の実施形態(本明細書では「本実施形態」と記される)が説明される。ただし以下の説明は特許請求の範囲を限定するものではない。例えば以下では電荷担体がリチウムイオンである二次電池(リチウムイオン二次電池)が説明される。ただしリチウムイオン二次電池は本実施形態の一例に過ぎない。本実施形態の二次電池は、充放電が可能である限り、リチウムイオン二次電池に限定されるべきではない。以下二次電池が「電池」と略記され得る。
【0018】
<二次電池>
図1は本実施形態の二次電池の構成の一例を示す概念図である。
電池1000は外装材900を含む。外装材900は密閉されている。外装材900は任意の外形を有し得る。外装材900は例えば金属材料製、樹脂材料製等であってもよい。外装材900は例えばアルミラミネートフィルム製の袋等であってもよい。
【0019】
外装材900は正極100、負極200およびセパレータ300を収納している。すなわち電池1000は正極100、負極200およびセパレータ300を少なくとも含む。正極100および負極200の各々は集電体10および活物質スラリー20を少なくとも含む。正極100および負極200の各々は例えばセパレータ300に包まれていてもよい。
【0020】
《集電体》
集電体10は活物質スラリー20との間で電子の授受を行うための部材である。集電体10はリードタブ11と電気的に接続されている。集電体10の外形は特に限定されるべきではない。集電体10の外形は例えばシート状、棒状等であってもよい。
【0021】
(材料)
集電体10は多孔質である。すなわち集電体10は複数の開気孔を含む。開気孔に活物質スラリー20が充填される。集電体10は例えばスポンジ状、不織布状等であってもよい。集電体10は例えば三次元網目構造を有してもよい。集電体10は導電性材料からなる。集電体10は例えば多孔質金属材料等であってもよい。例えば住友電工社製の「セルメット(登録商標)」等が集電体10として使用されてもよい。
【0022】
正極100において、集電体10は例えば多孔質ニッケル(Ni)材料、多孔質アルミニウム(Al)材料等であってもよい。負極200において、集電体10は例えば多孔質Ni材料、多孔質銅(Cu)材料等であってもよい。
【0023】
(気孔率)
集電体10は例えば50%以上99%以下の気孔率を有してもよい。集電体10は例えば90%以上99%以下の気孔率を有してもよい。集電体10は例えば95%以上99%以下の気孔率を有してもよい。
【0024】
集電体10の「気孔率」は下記式:
気孔率={1-(集電体の見かけ密度)/(集電体の真密度)}×100
により算出される。見かけ密度は集電体10の質量と外形寸法とから算出される密度を示す。
【0025】
(孔径)
集電体10が三次元網目構造を有する場合、集電体10は例えば0.45mm以上1.9mm以下の孔径を有してもよい。集電体10は例えば0.45mm以上0.55mm以下の孔径を有してもよい。孔径が小さい程、活物質スラリー20と集電体10との接触面積が大きくなることが期待される。「孔径」は、三次元網目構造内の開気孔が正十二面体とみなされた場合において、該正十二面体の外接球の直径を示す。
【0026】
集電体10は例えば0.23mm以上0.95mm以下の窓径を有してもよい。集電体10は例えば0.23mm以上0.28mm以下の窓径を有してもよい。「窓径」は、三次元網目構造内の開気孔が正十二面体とみなされた場合において、該正十二面体を構成する正五角形の内接円の直径を示す。
【0027】
《活物質スラリー》
活物質スラリー20は集電体10の開気孔に充填されている。活物質スラリー20は活物質粒子21および電解液22を少なくとも含む。活物質スラリー20は例えば導電材23をさらに含んでもよい。
【0028】
(粘度)
本実施形態の活物質スラリー20は特定の粘性を示す。すなわち活物質スラリー20は1s-1のせん断速度に対して100mPa・s以上の粘度を示す。以下「1s-1のせん断速度に対する粘度」が単に「粘度」とも記される。
【0029】
「粘度」はコーンプレート型粘度計により測定される。例えばAnton Paar社製のMCRレオメータシリーズ等が使用されてもよい。粘度は室温環境(例えば20℃±5℃)で測定される。1s-1のせん断速度に対する粘度が測定される。粘度は少なくとも3回測定される。少なくとも3回の算術平均が採用される。
【0030】
活物質スラリー20が100mPa・s以上の粘度を有することにより、活物質粒子21の沈降が抑制され、活物質の利用率が向上すると考えられる。
【0031】
本実施形態では活物質粒子21の沈降が抑制されるため、電池1000が循環機構および攪拌機構等を実質的に含まない構成であり得る。例えば電池1000が循環機構等を含まないことにより、タンク、配管、ポンプ等の体積が削減され得る。これにより体積エネルギー密度の向上が期待される。例えば電池1000が循環機構等を含まないことにより、構成部材の摩耗等が抑制され得る。これにより例えば電池寿命の向上が期待される。なお本実施形態は循環機構および攪拌機構等の使用を妨げるものではない。
【0032】
本実施形態では粘度が高くなる程、体積エネルギー密度およびレート特性の向上が期待される。正極100において活物質スラリー20は、例えば1050mPa・s以上の粘度を有してもよい。活物質スラリー20は、例えば40100mPa・s以上の粘度を有してもよい。活物質スラリー20は、例えば1621000mPa・s以下の粘度を有してもよい。
【0033】
負極200において活物質スラリー20は、例えば1100mPa・s以上の粘度を有してもよい。活物質スラリー20は、例えば31500mPa・s以上の粘度を有してもよい。活物質スラリー20は、例えば3550000mPa・s以下の粘度を有してもよい。
【0034】
(固形分比率)
活物質スラリー20の粘度は、例えば活物質スラリー20の固形分比率により調整され得る。「固形分比率」は固体成分および液体成分の合計に対する固体成分の比率を示す。固体成分は活物質粒子21、導電材23等である。液体成分は電解液22である。固形分比率は例えば35質量%以上60質量%以下であってもよい。固形分比率は例えば40質量%以上60質量%以下であってもよい。固形分比率は例えば50質量%以上60質量%以下であってもよい。
【0035】
(活物質粒子)
活物質粒子21は電解液22中に分散している。活物質粒子21は例えば1μm以上30μm以下のD50を有してもよい。「D50」は体積基準の粒度分布において微粒側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%になる粒径を示す。D50は例えばレーザ回折式粒度分布測定装置等により測定され得る。
【0036】
正極100においては、活物質粒子21に正極活物質が含まれる。正極活物質は特に限定されるべきではない。正極活物質は例えばコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/32等)、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム(例えばLiNi0.82Co0.15Al0.032等)、リン酸鉄リチウム等であってもよい。活物質粒子21に1種の正極活物質が単独で含まれていてもよい。活物質粒子21に2種以上の正極活物質が含まれていてもよい。
【0037】
負極200においては、活物質粒子21に負極活物質が含まれる。負極活物質は特に限定されるべきではない。負極活物質は例えば黒鉛、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、珪素、酸化珪素、珪素基合金、錫、酸化錫、錫基合金、チタン酸リチウム、Li(純金属)、Li基合金(例えばLi-Al合金等)等であってもよい。活物質粒子21に1種の負極活物質が単独で含まれていてもよい。活物質粒子21に2種以上の負極活物質が含まれていてもよい。
【0038】
(電解液)
電解液22は溶媒およびLi塩を少なくとも含む。電解液22は溶媒およびLi塩を含む限り、各種の添加剤等をさらに含んでもよい。
【0039】
溶媒は非プロトン性である。溶媒は特に限定されるべきではない。溶媒は、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、γ-ブチロラクトン(GBL)、δ-バレロラクトン、テトラヒドロフラン(THF)、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン(DME)、メチルホルメート(MF)、メチルアセテート(MA)、メチルプロピオネート(MP)、イオン液体等であってもよい。電解液22に1種の溶媒が単独で含まれていてもよい。電解液22に2種以上の溶媒が含まれていてもよい。
【0040】
Li塩は支持電解質である。Li塩は溶媒に溶解している。Li塩の濃度は例えば0.5mоl/L以上5mоl/L以下であってもよい。Li塩の濃度は例えば1mоl/L以上2mоl/L以下であってもよい。Li塩は特に限定されるべきではない。Li塩は、例えばLiPF6、LiBF4、Li[N(FSO22]、Li[N(CF3SO22]等であってもよい。電解液22に1種のLi塩が単独で含まれていてもよい。電解液22に2種以上のLi塩が含まれていてもよい。
【0041】
なお正極100に含まれる電解液22と、負極200に含まれる電解液22とは実質的に同一組成を有してもよい。正極100に含まれる電解液22と、負極200に含まれる電解液22とは互いに異なる組成を有してもよい。
【0042】
(導電材)
活物質スラリー20は導電材23をさらに含んでもよい。導電材23も電解液22に分散し得る。導電材23は活物質粒子21同士の間に電子伝導パスを形成し得る。導電材23は特に限定されるべきではない。導電材23は例えばカーボンブラック(例えばアセチレンブラック等)、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェンフレーク等であってもよい。活物質スラリー20に1種の導電材23が単独で含まれていてもよい。活物質スラリー20に2種以上の導電材23が含まれていてもよい。
【0043】
導電材の含量は100質量部の活物質粒子21に対して例えば0質量部以上20質量部以下であってもよい。導電材の含量は100質量部の活物質粒子21に対して例えば1質量部以上15質量部以下であってもよい。活物質粒子21が電子伝導性を有する場合(例えば負極活物質が黒鉛である場合等)、導電材23が不要な場合もあり得る。
【0044】
《セパレータ》
セパレータ300は正極100と負極200との間に配置されている。セパレータ300は例えば5μm以上100μm以下の厚さを有してもよい。セパレータ300は例えば電気絶縁性の多孔質フィルム等であってもよい。多孔質フィルムは電解液22の透過を許し、固体成分(活物質粒子21、導電材23)の透過を許さない程度の孔径を有し得る。多孔質フィルムは例えばポリエチレン(PE)製、ポリプロピレン(PP)製、ポリエチレンテレフタラート(PET)製等であってもよい。
【0045】
セパレータ300は例えばLiイオン伝導体のフィルム等であってもよい。該フィルムは電解液22を透過させなくてもよい。Liイオン伝導体は例えば酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質等であってもよい。
【実施例
【0046】
以下本開示の実施例が説明される。ただし以下の説明は特許請求の範囲を限定するものではない。
【0047】
<二次電池の製造>
《実施例1》
1.正極の準備
以下の材料が準備された。
活物質粒子:LiNi1/3Co1/3Mn1/32
導電材:アセチレンブラック
電解液:
溶媒:EC/DMC/EMC=1/1/1(体積比)
Li塩:LiPF6(濃度 1mol/L)
【0048】
活物質粒子21、導電材23および電解液22が混合されることにより、活物質スラリー20が調製された。混合比は「活物質粒子/導電材/電解液=45/5/50(質量比)」である。
【0049】
集電体10として市販の多孔質Ni材料(気孔率 97%、孔径 0.55mm、窓径 0.28mm)が準備された。集電体10にリードタブ11が溶接された。
【0050】
活物質スラリー20に集電体10が浸漬された。活物質スラリー20に集電体10が浸漬された状態で加圧および減圧が繰り返された。これにより集電体10の開気孔に活物質スラリー20が充填された。
【0051】
セパレータ300として多孔質PETフィルム(厚さ 20μm)が準備された。セパレータ300により袋が形成された。該袋に活物質スラリー20および集電体10が収納された。該袋が封止された。以上より正極100が準備された。
【0052】
2.負極の準備
活物質粒子21として黒鉛が準備された。活物質粒子21および電解液22が混合されることにより、活物質スラリー20が調製された。混合比は「活物質粒子/導電材/電解液=65/0/35(質量比)」である。これらを除いては正極100と同様に負極200が準備された。
【0053】
3.組み立て
外装材900としてアルミラミネートフィルム製の袋が準備された。外装材900に正極100および負極200が収納された。外装材900の内部において、正極100および負極200は互いに対向するように配置されている。セパレータ300は正極100と負極200との間に配置されている。正極100および負極200に均一に圧力が加わるように、外装材900の外側から正極100および負極200が2枚の板の間に挟み込まれた。さらに2枚の板により、集電体10が変形しない程度に正極100および負極200が加圧された。外装材900が封止され、リードタブ11に外部端子が接続された。
【0054】
以上より電池1000が製造された。電池1000は3~4.1Vの電圧範囲で動作するように設計されている。
【0055】
《実施例2~4》
下記表1に示されるように活物質スラリー20の混合比が変更されることを除いては、実施例1と同様に電池1000がそれぞれ製造された。
【0056】
《実施例5および6》
下記表1に示される集電体10が使用されることを除いては、実施例1と同様に電池1000がそれぞれ製造された。
【0057】
《比較例1》
集電体10としてAl箔(正極100用)およびCu箔(負極200用)が使用されることを除いては、実施例1と同様に電池1000が製造された。Al箔およびCu箔は多孔質材料ではない集電体である。
【0058】
《比較例2および3》
下記表1に示される集電体10が使用され、下記表1に示される混合比で活物質スラリー20が調製されることを除いては、実施例1と同様に電池1000が製造された。
【0059】
《比較例4》
比較例3と同じ構成の電池1000が製造された。電池1000に循環機構が付加された。循環機構はポンプおよび配管により活物質スラリー20を循環させる。
【0060】
<評価>
1.粘度
各電池1000に使用された活物質スラリー20の粘度がそれぞれ測定された。結果は下記表1に示される。
【0061】
2.容量
外部端子が充放電試験装置に接続された。3~4.1Vの電圧範囲において0.8mA/cm2の電流密度により、充放電が3回繰り返された。本開示の実施例では、3回目の放電容量が電池1000の容量とみなされる。結果は下記表1に示される。容量が大きい程、体積エネルギー密度が高いと考えられる。なお本開示の実施例において「電流密度」は、正極100および負極200が互いに対向(接触)している面積を基準としている。
【0062】
さらに容量が電池1000に含まれる正極活物質の質量で除されることにより、「正極活物質の質量あたりの容量」が算出された。結果は下記表1に示される。正極活物質の質量あたりの容量が大きい程、活物質の利用率が高いと考えられる。
【0063】
3.レート特性
CC-CV方式充電により電池1000のSOCが100%に調整された。2.0mA/cm2の電流密度により電池1000が3Vまで放電された。これにより放電容量が測定された。該放電容量が電池1000の容量で除されることにより、放電容量比が算出された。結果は下記表1に示される。放電容量比が大きい程、レート特性が向上していると考えられる。
【0064】
【表1】
【0065】
<結果>
1.実施例1~6
実施例1~6は容量が大きい。すなわち体積エネルギー密度が高い。活物質スラリー20の活物質粒子密度が高いことにより、体積エネルギー密度が向上していると考えられる。さらに活物質スラリー20の活物質粒子密度が高いことにより、活物質粒子21、導電材23および集電体10の接触効率が向上し、活物質の利用率が向上していると考えられる。また粘度が100mPa・s以上であることにより、活物質粒子の沈降が抑制され、活物質の利用率が向上しているとも考えられる。
【0066】
実施例1、5および6において、集電体10の孔径が小さい程、体積エネルギー密度が高くなる傾向が認められる。孔径が小さい程、活物質スラリー20と集電体10との接触面積が大きくなるためと考えられる。
【0067】
実施例1~4において、粘度が高くなる程、レート特性が向上する傾向が認められる。活物質粒子密度が高くなることにより、活物質粒子21、導電材23および集電体10の接触効率が向上するためと考えられる。
【0068】
実施例1、5および6において、集電体10の孔径が小さい程、レート特性が向上する傾向が認められる。孔径が小さい程、活物質スラリー20と集電体10との接触面積が大きくなるためと考えられる。
【0069】
2.比較例1
比較例1は体積エネルギー密度およびレート特性が低い。比較例1では、集電体10が金属箔であり、多孔質材料ではない。そのため活物質スラリー20と集電体10との接触面積が小さいと考えられる。これにより活物質の利用率が低下し、電子伝導抵抗が大きくなっていると考えられる。
【0070】
3.比較例2
比較例2は比較例1に比して体積エネルギー密度およびレート特性が低い。活物質スラリー20の活物質粒子密度が低いため、体積エネルギー密度が低いと考えられる。また活物質粒子密度が低いため、活物質粒子21、導電材23および集電体10の接触効率が低下し、活物質の利用率が低下しているとも考えられる。さらに活物質スラリー20の粘度が100mPa・s未満であるため、活物質粒子21が沈降し、活物質の利用率が低下しているとも考えられる。
【0071】
4.比較例3
比較例3は比較例2に比して体積エネルギー密度およびレート特性が低い。正極100において集電体10の孔径が大きいため、活物質スラリー20と集電体10との接触面積が小さくなり、活物質の利用率が低下していると考えられる。
【0072】
5.比較例4
比較例4は実施例と同等のレート特性を示している。循環機構により活物質の利用率が向上したためと考えられる。
【0073】
しかし比較例4は体積エネルギー密度が低い。活物質スラリー20の活物質粒子密度が低いためと考えられる。循環機構の体積も考慮した場合、比較例4の体積エネルギー密度はさらに低下すると考えられる。
【0074】
比較例4では、活物質スラリー20が循環しているため、長期的には構成部材の摩耗等が起こり得る。そのため電池寿命が短い可能性もあると考えられる。
【0075】
本開示の実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。特許請求の範囲の記載によって確定される技術的範囲は特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0076】
10 集電体、11 リードタブ、20 活物質スラリー、21 活物質粒子、22 電解液、23 導電材、100 正極、200 負極、300 セパレータ、900 外装材、1000 電池(二次電池)。
図1