(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】車両用電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20230614BHJP
B60R 16/03 20060101ALI20230614BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
H02J7/34 B
B60R16/03 A
B60R16/03 S
H02J1/00 304E
(21)【出願番号】P 2019046201
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】小湊 祐樹
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-038984(JP,A)
【文献】特開2003-237501(JP,A)
【文献】特開2018-088776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
B60R 16/00-17/02
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイドリングストップ機能を有する車両において、通常電源から車両搭載負荷に供給される電力を変換する装置であり、
前記通常電源から出力される電力の電圧を変換する第1昇圧回路と、
前記通常電源および前記車両搭載負荷と接続された蓄電部と、
前記通常電源と前記蓄電部との間に介装された第2昇圧回路と、
前記蓄電部と前記車両搭載負荷との間に介装された降圧回路と、
前記第1昇圧回路
、前記第2昇圧回路および前記降圧回路を制御する制御装置と、を具備し、
前記制御装置は、
アイドリングストップ状態から前記通常電源の電圧が降下するまでの間に、
前記第2昇圧回路を経由して、前記蓄電部を充電し、
前記通常電源の電圧が降下する直前、または、前記通常電源の電圧の降下が開始された時に、前記車両搭載負荷への電圧供給源を、前記通常電源から前記蓄電部に切り替え
、
前記通常電源の電圧が、予め規定された閾値電圧まで達するように、前記降圧回路を制御して、前記車両搭載負荷に電力を供給し、
前記閾値電圧は、前記蓄電部から前記降圧回路への電力の供給が終了した後に、前記通常電源の電圧が最低電圧を下回らないように設定されることを特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記アイドリングストップ状態からエンジン運転状態に遷移する際に、
前記通常電源から前記第1昇圧回路を経由して電力を前記車両搭載負荷に供給すると共に、前記通常電源から前記第2昇圧回路を経由して電力を前記蓄電部に供給することを特徴とする請求項
1に記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記蓄電部は、前記アイドリングストップ状態が終了するまでの間は、放電状態が維持されることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記蓄電部は、キャパシタであることを特徴とする請求項1から請求項
3の何れかに記載の車両用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電源装置に関し、特に、アイドリングストップ機能を有する車両に備えられる車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンを備える車両に於いては、近年、アイドリングストップ機能を備えたものが登場してきている。従来の車両では停止時にもエンジンが運転されているアイドリングを行っていたが、アイドリングストップ機能では、燃料の節約や排出ガスの削減などのため、不必要なアイドリングを停車時に止める。
【0003】
アイドリングストップ時から車両を発進させる際には、エンジンを再起動させる。エンジンの当該再起動に際し、バッテリ等の主電源に加えて、キャパシタ等から電力を供給する発明が特許文献1ないし特許文献3に記載されている。
【0004】
更に、特許文献4には、エンジンが起動する際に、キャパシタからスタータに電圧を供給する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-57179公報
【文献】特開2015-217919公報
【文献】特開2005-112250公報
【文献】特表2013-027337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1ないし特許文献4に記載された発明では、キャパシタを充電する好適なタイミングに関する検討が必ずしも充分に成されていなかった。具体的には、例えば、特許文献4に記載された発明では、当初よりキャパシタを充電しておき、エンジンが起動する際に、キャパシタからスタータに電力を供給している。よって、キャパシタが時間の経過と共に放電してしまい、エンジンを起動する際に、キャパシタの電圧が充分に確保されていない恐れがあった。また、キャパシタの充放電を繰り返すと、キャパシタの充電性能が早期に劣化してしまう恐れがあった。更に、これらの問題を解決する方法として、大容量のキャパシタを補助電源として採用することが考えられるが、キャパシタの大容量化に伴い、装置の大型化やコスト高の課題が発生する恐れがあった。
【0007】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、車両搭載負荷に電力を供給する蓄電部が小型化された車両用電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用電源装置は、アイドリングストップ機能を有する車両において、通常電源から車両搭載負荷に供給される電力を変換する装置であり、前記通常電源から出力される電力の電圧を変換する第1昇圧回路と、前記通常電源および前記車両搭載負荷と接続された蓄電部と、前記通常電源と前記蓄電部との間に介装された第2昇圧回路と、前記蓄電部と前記車両搭載負荷との間に介装された降圧回路と、前記第1昇圧回路、前記第2昇圧回路および前記降圧回路を制御する制御装置と、を具備し、前記制御装置は、アイドリングストップ状態から前記通常電源の電圧が降下するまでの間に、前記第2昇圧回路を経由して、前記蓄電部を充電し、前記通常電源の電圧が降下する直前、または、前記通常電源の電圧の降下が開始された時に、前記車両搭載負荷への電圧供給源を、前記通常電源から前記蓄電部に切り替え、前記通常電源の電圧が、予め規定された閾値電圧まで達するように、前記降圧回路を制御して、前記車両搭載負荷に電力を供給し、前記閾値電圧は、前記蓄電部から前記降圧回路への電力の供給が終了した後に、前記通常電源の電圧が最低電圧を下回らないように設定されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の車両用電源装置では、前記制御装置は、前記アイドリングストップ状態からエンジン運転状態に遷移する際に、前記通常電源から前記第1昇圧回路を経由して電力を前記車両搭載負荷に供給すると共に、前記通常電源から前記第2昇圧回路を経由して電力を前記蓄電部に供給することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の車両用電源装置では、前記蓄電部は、前記アイドリングストップ状態が終了するまでの間は、放電状態が維持されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の車両用電源装置では、前記蓄電部は、キャパシタであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両用電源装置は、アイドリングストップ機能を有する車両において、通常電源から車両搭載負荷に供給される電力を変換する装置であり、前記通常電源から出力される電力の電圧を変換する第1昇圧回路と、前記通常電源および前記車両搭載負荷と接続された蓄電部と、前記通常電源と前記蓄電部との間に介装された第2昇圧回路と、前記蓄電部と前記車両搭載負荷との間に介装された降圧回路と、前記第1昇圧回路、前記第2昇圧回路および前記降圧回路を制御する制御装置と、を具備し、前記制御装置は、アイドリングストップ状態から前記通常電源の電圧が降下するまでの間に、前記第2昇圧回路を経由して、前記蓄電部を充電し、前記通常電源の電圧が降下する直前、または、前記通常電源の電圧の降下が開始された時に、前記車両搭載負荷への電圧供給源を、前記通常電源から前記蓄電部に切り替え、前記通常電源の電圧が、予め規定された閾値電圧まで達するように、前記降圧回路を制御して、前記車両搭載負荷に電力を供給し、前記閾値電圧は、前記蓄電部から前記降圧回路への電力の供給が終了した後に、前記通常電源の電圧が最低電圧を下回らないように設定されることを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、蓄電部から車両搭載負荷に電力を供給することで、通常電源の電圧が降下した後の第1昇圧回路の動作を安定化できる。更に、アイドリングストップ状態から通常電源の電圧が降下するまでの間に、前記蓄電部を充電するので、キャパシタの小型化および長寿命化を実現できる。更に、本発明の車両用電源装置によれば、蓄電部から車両搭載負荷に電力を供給することで、通常電源の電圧が降下した後の第1昇圧回路の動作を安定化できる。更に、アイドリングストップ状態から通常電源の電圧が降下するまでの間に、前記蓄電部を充電するので、キャパシタの小型化および長寿命化を実現できる。更に、本発明の車両用電源装置によれば、第1昇圧回路を動作するために充分な最低電圧を得ることができ、カーナビゲーション等の車両搭載負荷が不用意にリセットされてしまうこと等を抑止できる。
【0016】
また、本発明の車両用電源装置では、前記制御装置は、前記アイドリングストップ状態からエンジン運転状態に遷移する際に、前記通常電源から前記第1昇圧回路を経由して電力を前記車両搭載負荷に供給すると共に、前記通常電源から前記第2昇圧回路を経由して電力を前記蓄電部に供給することを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、車両搭載負荷に電圧が安定した電力を供給できると共に、蓄電部を充電することかできる。
【0017】
また、本発明の車両用電源装置では、前記蓄電部は、前記アイドリングストップ状態が終了するまでの間は、放電状態が維持されることを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、電圧降下の直前まで蓄電部の放電状態が維持されることで、蓄電部の寿命を延長することができる。
【0018】
また、本発明の車両用電源装置では、前記蓄電部は、キャパシタであることを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、電圧降下の直前まで蓄電部の放電状態が維持されることで、蓄電部の寿命を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態に係る車両用電源装置を示す図であり、(A)は車両用電源装置が組み込まれた車両の接続構成を示すブロック図であり、(B)は車両用電源装置を示す回路図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る車両用電源装置を示す図であり、(A)は車両用電源装置を示す回路図であり、(B)はエンジンの再起動時の期間Aに於ける電源電圧の変化を示すタイミングチャートである。
【
図3】本発明の実施の形態に係る車両用電源装置を示す図であり、(A)は車両用電源装置を示す回路図であり、(B)はエンジンの再起動時の期間Bに於ける電源電圧の変化を示すタイミングチャートである。
【
図4】本発明の実施の形態に係る車両用電源装置を示す図であり、(A)は車両用電源装置を示す回路図であり、(B)はエンジンの再起動時の期間Cに於ける電源電圧の変化を示すタイミングチャートである。
【
図5】本発明の実施の形態に係る車両用電源装置を示す図であり、(A)は車両用電源装置を示す回路図であり、(B)はエンジンの再起動時の期間Dに於ける電源電圧の変化を示すタイミングチャートである。
【
図6】本発明の実施の形態に係る車両用電源装置を示す図であり、(A)は車両用電源装置を示す回路図であり、(B)はエンジンの再起動時の期間Eに於ける電源電圧の変化を示すタイミングチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態に係る車両用電源装置の効果を示す図であり、(A)は本実施形態の車両用電源装置に於ける電源電圧の変化を示すタイミングチャートであり、(B)および(C)は比較例のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る車両用電源装置11を図面に基づき詳細に説明する。以下の説明では、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0022】
図1を参照して、車両用電源装置11の構成を説明する。
図1(A)は車両用電源装置11を含む車両10の概略構成を示すブロック図であり、
図1(B)は車両用電源装置11の構成を詳細に示す回路図である。
【0023】
図1(A)を参照して、車両10は、通常電源12と、車両用電源装置11と、車両搭載負荷13と、を備えている。車両10は、ここでは図示しないエンジンを駆動源として走行する車両であり、アイドリングストップ機能を備えている。アイドリングストップ機能とは、燃料の節約や排出ガスの削減などのため、交差点等で車両10が停車する際に、不必要なアイドリングを止める機能である。
【0024】
通常電源12は、車両搭載負荷13に電力を供給する。通常電源12の具体例としては、例えば、12Vの直流電力を発生する充電可能な鉛蓄電池やリチウムイオンバッテリである。
【0025】
車両搭載負荷13は、車両10に搭載される負荷であり、例えば、エンジンを起動させるスタータ、カーナビゲーション装置、オーディオ装置、メータ装置、ECU、ROM、RAM、電動ステアリング、シートヒータ、デフロスタ用ヒータ、ヘッドライト等の照明装置、ワイパ、空調装置、カメラ、センサ、ディスプレイ、衝突被害軽減ブレーキに代表される先進安全システム等である。
【0026】
車両用電源装置11は、車両用電源装置11から車両搭載負荷13に供給される電力を変換する。
【0027】
図1(B)を参照して、車両用電源装置11の回路構成を説明する。車両用電源装置11の内部には、通常電源12と車両搭載負荷13とを直接的に結ぶ径路として、第1径路171および第2径路172を有している。第1径路171と第2径路172とは第3接点233を介して接続している。
【0028】
また、車両用電源装置11は、電圧変換回路として、第1昇圧回路141、第2昇圧回路142および降圧回路143を有している。これらの電圧変換器としては、DC-DCコンバータが採用される。
【0029】
第1径路171は通常電源12と第1昇圧回路141とを接続している。第1径路171には、通常電源12の側から、第1接点231、第2スイッチ292および第3接点233が介装されている。本実施形態に於いて、第2スイッチ292等の各種スイッチとしては、電界効果型トランジスタまたはバイポーラ型トランジスタ等の半導体スイッチ、または、リレー等の機械式スイッチを採用することができる。
【0030】
第2径路172は、第1径路171の第3接点233と、車両搭載負荷13とを接続しており、第3接点233の側から、第1スイッチ291および第2接点232が介装されている。
【0031】
第1径路171の第1接点231からは第4径路174が分岐しており、第4径路174の他端は第2昇圧回路142に接続している。第4径路174には第3スイッチ293が介装されている。
【0032】
第2昇圧回路142からは第7径路177が伸びており、第7径路177の端部は接地されている。第7径路177には、第2昇圧回路142の側から、ダイオード18、抵抗19、第5接点235およびキャパシタ15が介装されている。
【0033】
第2径路172の第2接点232と、降圧回路143との間には第5径路175が形成されている。第5径路175に介装された第4接点234には第3径路173が接続している。第3径路173の他端は、第1昇圧回路141に接続している。
【0034】
降圧回路143と、第7径路177の第5接点235との間には第6径路176が形成されている。第6径路176には第4スイッチ294が介装されている。
【0035】
制御装置16は、CPU、RAM、ROM等からなり、ECU(Electronic Control Unit)とも称される。制御装置16は、通常電源12の電圧等に基づいて、上記した各スイッチの導通状態、第1昇圧回路141、第2昇圧回路142および降圧回路143の動作、等を制御している。
【0036】
次に
図2から
図6を参照して、上記した車両用電源装置11の動作を説明する。ここでは、車両用電源装置11は、アイドリングストップ機能を有する車両10が、アイドリングストップ状態からエンジン再起動に遷移する再起動動作に於いて、車両搭載負荷13に印加される電圧を一定以上に補償している。これにより、車両搭載負荷13は安定的に動作することができる。
【0037】
車両10のこのような動作は、期間Aないし期間Eを含んでおり、各期間を以下に説明する。
【0038】
図2を参照して、再起動動作の最初の期間である期間Aを説明する。
図2(A)は期間Aに於ける車両用電源装置11の動作を示す回路図であり、
図2(B)は期間Aに於ける通常電源12の電圧値を示すタイミングチャートである。期間Aは、例えば、乗員がブレーキペダルを踏み、車両10が交差点等で停車し、アイドリングストップ機能によりエンジンが停止している期間である。
図2(A)では、車両用電源装置11における電流の流れを一点鎖線で示しており、係る事項は後述する各図でも同様である。
【0039】
図2(A)を参照して、期間Aでは、制御装置16は、車両搭載負荷13に電力を供給する。期間Aでは、制御装置16から発せられるISS(Idling Stop System)信号はLow状態となっている。また、制御装置16は、第1スイッチ291を導通状態とし、第2スイッチ292を導通状態とし、第3スイッチ293を遮断状態とし、第4スイッチ294を遮断状態とする。
【0040】
車両用電源装置11を上記の状態とすることで、第1昇圧回路141等を経由せずに、通常電源12から車両搭載負荷13に電力が直接的に供給される。具体的には、第1径路171、第1接点231、第2スイッチ292、第3接点233、第2径路172、第1スイッチ291、第2接点232を経由して、通常電源12からの電力が車両搭載負荷13に供給される。
【0041】
尚、期間Aに於いては、キャパシタ15は充電されておらず、電荷が蓄積されていない状態を保っている。
【0042】
図2(B)を参照して、期間Aでは、通常電源12の電圧は、例えば12V程度で安定している。
【0043】
図3を参照して、期間Bを説明する。
図3(A)は期間Bに於ける車両用電源装置11の動作を示す回路図であり、
図3(B)は期間Bに於ける通常電源12の電圧値を示すタイミングチャートである。期間Bでは、アイドリングストップ状態からエンジンを再起動させる際に、車両搭載負荷13に供給される電圧が低下することを抑止するために、第1昇圧回路141で昇圧した電力を車両搭載負荷13に供給している。また、期間Bでは、制御装置16が、エンジン起動の準備を行うための電気信号を、車両用電源装置11の各構成部位に伝送する。更に、期間Bでは、後の期間で第2昇圧回路142の動作を安定化させるべく、キャパシタ15を充電している。
【0044】
図3(A)を参照して、期間Bでは、制御装置16から発せられるISS信号はHigh状態となっている。また、制御装置16は、第1スイッチ291を遮断状態とし、第2スイッチ292を導通状態とし、第3スイッチ293を導通状態とし、第4スイッチ294を遮断状態とする。
【0045】
車両用電源装置11を上記の状態とすることで、通常電源12からの電力は、車両搭載負荷13およびキャパシタ15の両方に供給される。通常電源12から車両搭載負荷13へ電力が供給される径路は、第1径路171、第1接点231、第2スイッチ292、第3接点233、第1昇圧回路141、第3径路173、第4接点234、第5径路175、第2接点232および第2径路172である。また、通常電源12からキャパシタ15に電力が供給される径路は、第1径路171、第1接点231、第4径路174、第3スイッチ293、第2昇圧回路142、第7径路177、ダイオード18、抵抗19および第5接点235である。
【0046】
キャパシタ15は、期間Bに於いて通常電源12から電力が供給されることで、所定の電圧まで充電される。
【0047】
ここでは、第2昇圧回路142が昇圧した電力をキャパシタ15に供給している。第2昇圧回路142は、通常電源12から供給される電力の電圧を、例えば、12Vから24Vに昇圧する。よって、小さな容量のキャパシタ15を採用することができ、更にキャパシタ15の充電に要する時間を短縮できる。
【0048】
図3(B)に示すように、期間Bは、例えば、アイドリングストップ機能によりエンジンが停止している期間に於いて、乗員がブレーキペダルから足を離してからエンジンが再起動するまでの期間である。期間Bでは、通常電源12の電圧降下は未だ発生していない。ここで、期間Aと期間Bとの境界は、例えば、制御装置16がアイドリングストップ機能を終了させるタイミングである。
【0049】
図4を参照して、期間Cを説明する。
図4(A)は期間Cに於ける車両用電源装置11の動作を示す回路図であり、
図4(B)は期間Cに於ける通常電源12の電圧値を示すタイミングチャートである。期間Cは、エンジンが再起動する瞬間を含み、キャパシタ15から車両搭載負荷13に電力が供給される。即ち、制御装置16は、車両搭載負荷13の電圧供給源を、通常電源12からキャパシタ15に切り替える。
【0050】
図4(A)を参照して、制御装置16は、第1スイッチ291を遮断状態とし、第2スイッチ292を遮断状態とし、第3スイッチ293を遮断状態とし、第4スイッチ294を導通状態とする。
【0051】
車両用電源装置11を上記の状態とすることで、第7径路177、第5接点235、第6径路176、第4スイッチ294、降圧回路143、第5径路175、第4接点234、第2接点232および第2径路172を経て、キャパシタ15から電力が車両搭載負荷13に供給される。また、降圧回路143は、キャパシタ15から供給される電力の電圧を、例えば24Vから12Vに変換する。
【0052】
図4(B)を参照して、期間Cは、例えば、アイドリングストップ機能によりエンジンが停止している状態から、セルモータを運転することでエンジンを再起動させる瞬間およびその直後の間の期間である。ここで、期間Bから期間Cへの変遷、即ち、電圧供給源の通常電源12からキャパシタ15への切替は、通常電源12の電圧降下が発生する直前または当該電圧降下が発生した直後である。
【0053】
期間Cにおいて発生する電圧降下を説明する。第1昇圧回路141で昇圧する場合、入力時に低い電圧で規定の電力を要するため、入力電流量が大きくなる。具体的には、第1昇圧回路141に入力する入力電力が6V×20A=120Wの場合、第1昇圧回路141から出力される出力電力は12V×10A=120Wとなる。よって、入力電流値が大きくなることで配線抵抗による電圧降下も大きくなり、入力電圧が落ち込む現象が発生する。また、エンジン再起動を行うセルモータ等のスタータにより電力が消費されることも、電圧降下の要因の一つである。
【0054】
電圧降下が発生すると、次の期間である期間Dに於いて、第1昇圧回路141の性能を発揮できない恐れがある。第1昇圧回路141が充分に性能を発揮できなければ、例えば、車両搭載負荷13の一例であるカーナビゲーションシステムに充分な電圧を印加することができず、カーナビゲーションシステムの設定が不用意にリセットされてしまう恐れがある。
【0055】
電圧降下から車両搭載負荷13を保護するために、一般的には、第1昇圧回路141で、昇圧した電力を車両搭載負荷13に供給しているが、上記した配線抵抗により、第1昇圧回路141の性能を充分に発揮することは難しい。
【0056】
そこで、本実施形態では、電圧降下が発生する期間Cに於いて、キャパシタ15から、車両搭載負荷13に電力を供給している。このようにすることで、通常電源12の電圧を、後述する閾値電圧まで回復させ、第1昇圧回路141の昇圧機能を充分に発揮することができる。また、キャパシタ15から第1昇圧回路141に電力が供給されるのは、通常電源12の電圧が急激に低下する電圧降下が発生する期間のみである。よって、サイズが小さいキャパシタ15を採用することができ、キャパシタ15を採用することに伴う高コスト化および大型化を抑制できる。係る事項は、
図7を参照して後述する。
【0057】
図5を参照して、期間Dを説明する。
図5(A)は期間Dに於ける車両用電源装置11の動作を示す回路図であり、
図5(B)は期間Dに於ける通常電源12の電圧値を示すタイミングチャートである。期間Dは、アイドリングストップ期間の後に、エンジンが運転されている期間に於いて、第1昇圧回路141により通常電源12の電圧が補償されている期間である。
【0058】
図5(A)を参照して、期間Dに於いて、制御装置16は、第1スイッチ291を遮断状態とし、第2スイッチ292を導通状態とし、第3スイッチ293を遮断状態とし、第4スイッチ294を遮断状態とする。
【0059】
車両用電源装置11を上記の状態とすることで、通常電源12から出力される電力は、第1昇圧回路141で昇圧した後に、車両搭載負荷13に供給される。具体的には、第1径路171、第1接点231、第2スイッチ292、第3接点233、第1昇圧回路141、第3径路173、第4接点234、第5径路175、第2接点232および第2径路172の径路で、通常電源12から車両搭載負荷13に電力が供給される。一方、キャパシタ15には電力は供給されない。
【0060】
図5(B)に示すように、本実施形態では、上記した期間Cでキャパシタ15から第1昇圧回路141に電力を供給することで、通常電源12の電圧を閾値電圧まで回復させている。よって、期間Dに於いて、配線抵抗等に起因して電圧ドロップが発生したとしても、通常電源12の電圧が最低電圧を下回ることを防止し、第1昇圧回路141の昇圧性能を充分に発揮することができる。
【0061】
図6を参照して、期間Eを説明する。
図6(A)は期間Eに於ける車両用電源装置11の動作を示す回路図であり、
図6(B)は期間Eに於ける通常電源12の電圧値を示すタイミングチャートである。ここで、期間Eは、例えば、アイドリングストップ機能が終了した後に、エンジンの駆動力で車両10が走行する期間である。
【0062】
図6(A)を参照して、期間Eでは、制御装置16は、第1スイッチ291を導通状態とし、第2スイッチ292を導通状態とし、第3スイッチ293を遮断状態とし、第4スイッチ294を遮断状態とする。
【0063】
車両用電源装置11を上記の状態とすることで、第1昇圧回路141等を経由せずに、通常電源12から車両搭載負荷13に電力が直接的に供給される。具体的には、第1径路171、第1接点231、第2スイッチ292、第3接点233、第2径路172、第1スイッチ291、第2接点232を経由して、通常電源12からの電力が車両搭載負荷13に供給される。尚、期間Eに於いては、キャパシタ15は充電されておらず、電荷が蓄積されていない状態を保っている。
【0064】
図6(B)を参照して、期間Eでは、通常電源12の電圧は、例えば12V程度で安定している。
【0065】
図7を参照して、上記した本実施形態により奏される効果を説明する。
図7(A)は上記した本実施形態による通常電源12の電圧値を示すタイミングチャートであり、
図7(B)は期間Cにおける昇圧を閾値よりも低くした場合の比較例を示すタイミングチャートであり、
図7(C)は期間Cにおける昇圧を閾値よりも高くした場合の比較例を示すタイミングチャートである。
【0066】
図7(A)を参照して、本実施形態では、期間Cに於いて、通常電源12の電圧が閾値電圧に達するまで、キャパシタ15から車両搭載負荷13に電力を供給している。ここで、閾値電圧とは、その電圧まで通常電源12の電圧を回復したら、その後の期間に於いて、通常電源12の電圧が最低電圧を下回ることがなく、第1昇圧回路141の性能を確保することができる電圧の下限であり、例えば、8Vないし10Vである。期間Cにて通常電源12の電圧を閾値まで上昇させることで、期間Cより後の期間に於いて、通常電源12の電圧が最低電圧を下回ることを抑止することができる。ここで、最低電圧とは、それ以下の電圧となれば、その時点に於いて第1昇圧回路141の性能を確保することができない電圧であり、例えば、6Vである。
【0067】
一方、
図7(B)を参照して、期間Cにて通常電源12の電圧が閾値電圧に達しなければ、次の期間に於いて、通常電源12の電圧が最低電圧を下回り、第1昇圧回路141が充分に昇圧することができない恐れがある。
【0068】
また、
図7(C)を参照して、期間Cにて通常電源12の電圧が閾値電圧よりも過大となれば、通常電源12の電圧を高めるために、ハッチングで示すように大きな容量のキャパシタ15が必要になり、キャパシタ15の大型化およびコスト高を招く恐れがある。
【0069】
上記のことから、本実施形態では、期間Cに於いて、通常電源12の電圧が閾値電圧に達するまで、キャパシタ15から車両搭載負荷13に電力を供給している。これにより、第1昇圧回路141により安定的に昇圧を行うことができ、キャパシタ15の小型化を達成することができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。
【0071】
例えば、
図1を参照して、キャパシタ15の小型化等を目的として、第2昇圧回路142および降圧回路143が配置されているが、第2昇圧回路142および降圧回路143を省いて車両用電源装置11を構成することもできる。
【符号の説明】
【0072】
10 車両
11 車両用電源装置
12 通常電源
13 車両搭載負荷
141 第1昇圧回路
142 第2昇圧回路
143 降圧回路
15 キャパシタ
16 制御装置
171 第1径路
172 第2径路
173 第3径路
174 第4径路
175 第5径路
176 第6径路
177 第7径路
18 ダイオード
19 抵抗
231 第1接点
232 第2接点
233 第3接点
234 第4接点
235 第5接点
291 第1スイッチ
292 第2スイッチ
293 第3スイッチ
294 第4スイッチ