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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/06 20060101AFI20230615BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20230615BHJP
   F25D 19/00 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
F25D23/06 W
F25D23/00 306A
F25D19/00 532A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019172102
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021050829
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】藤原 啓司
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-120138(JP,A)
【文献】特開2012-021665(JP,A)
【文献】特開昭62-059377(JP,A)
【文献】特開2012-255571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/06
F25D 23/00
F25D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱箱体と、
前記断熱箱体の背面部に配置されている真空断熱材と
を備え、
前記背面部における前記真空断熱材と対向する側の面には、前記真空断熱材の左右両側の辺に沿って上下方向に延びる凸部が設けられており、
前記真空断熱材は、前記凸部に乗り上げるように配置され、
前記凸部及び前記凸部と隣接する前記背面部と、前記真空断熱材との間には、前記凸部の延伸方向に沿って上下方向に連通する連通路が設けられており、
前記背面部における前記真空断熱材と対向する側の面には、前記真空断熱材の左右端部と部分的に重なって上下方向に延びる離型処理部が設けられており、
前記離型処理部は、前記背面部の上下方向の端部まで延びて前記連通路の一部を構成しており、
前記連通路は前記背面部の上下方向の端部で外気と連通する、冷蔵庫。
【請求項2】
前記凸部の少なくとも何れかは、その全体が前記真空断熱材で覆われている、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記離型処理部は、粘着テープである、請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
放熱パイプをさらに備え、
前記放熱パイプは、前記粘着テープによって前記背面部に固定されている、
請求項3に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱箱体内に真空断熱材を備えている冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷蔵庫には、周囲との断熱を行うために、貯蔵空間の外周を覆うように断熱箱体が設けられている。断熱箱体は、外箱と、内箱と、これらの間に充填された断熱材とで構成されている。断熱材としては、例えば、硬質発泡ウレタン断熱材などの発泡性の断熱材が用いられる。
【0003】
近年、冷蔵庫の断熱性能を強化するために発泡断熱材に加えて熱伝導性の低い真空断熱材が用いられる傾向にある。例えば、特許文献1には、断熱箱体の外箱の内面に真空断熱材が接着された冷蔵庫が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5250080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷蔵庫の断熱性能をより高めるためには、真空断熱材の大きさ(面積)をより大きくすることが望ましい。真空断熱材が大型化すると、外箱へ均一に貼り付けることが容易ではなくなる。そのため、例えば、外箱の背面部などに真空断熱材を貼り付けたときに、背面部と真空断熱材との間に隙間が形成されることがある。
【0006】
背面部と真空断熱材との間にこのような隙間が形成されていると、発泡断熱材の形成時に発生したガスなどの気体が、背面部と真空断熱材との間に入り込み、断熱箱体の完成時にもガスだまりとなって残る傾向にある。外箱と真空断熱材との間にこのようなガスだまりが形成されていると、外箱の表面の凹凸がより目立ちやすくなり、冷蔵庫の外観不良の原因となる。
【0007】
そこで、本発明では、発泡断熱材の形成時および形成後に断熱箱体中で発生するガスの抜けを促進し、断熱箱体の外観不良の発生を抑えることのできる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面にかかる冷蔵庫は、断熱箱体と、前記断熱箱体の背面部に配置されている真空断熱材とを備えている。前記背面部における前記真空断熱材と対向する側の面には、前記真空断熱材の左右両側の辺に沿って延びる凸部が設けられている。前記真空断熱材は、前記凸部に乗り上げるように配置されており、前記凸部の近傍の前記背面部と前記真空断熱材との間には、上下方向に連通する連通路が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一局面にかかる冷蔵庫によれば、発泡断熱材の形成時および形成後に断熱箱体中で発生するガスの抜けを促進し、断熱箱体の外観不良の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態にかかる冷蔵庫の背面側の構成を示す斜視図である。
図2図1に示す冷蔵庫の断熱箱体の背面の構成を示す斜視図である。
図3】第1の実施形態にかかる冷蔵庫の断熱箱体のバックプレートの構成を示す平面図である。
図4図3に示すバックプレートの内面側の下方部分の構成を示す斜視図である。
図5図4に示すバックプレートの内面側の各構成部材を分解して示す斜視図である。
図6図3に示すバックプレートのA-A線部分の構成を示す断面模式図である。
図7】断熱箱体の背面部に発泡断熱材料が流入する様子を示す模式図である。
図8図7に示す断熱箱体の内部で発泡断熱材が形成される途中の段階を模式的に示す断面図である。
図9図7に示す断熱箱体の背面部に断熱層が形成された状態を模式的に示す断面図である。
図10】第1の実施形態にかかる冷蔵庫の断熱箱体の背面部の下端部の構成を示す模式図である。
図11】従来の断熱箱体の背面部に断熱層が形成された状態を模式的に示す断面図である。
図12】第2の実施形態にかかる冷蔵庫の断熱箱体のバックプレートの構成を示す平面図である。
図13図12に示すバックプレートのC-C線部分の構成を示す断面模式図である。
図14】第2の実施形態にかかる冷蔵庫の断熱箱体の内部で発泡断熱材が形成される途中の段階を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0012】
<第1の実施形態>
(冷蔵庫の全体構成)
まず、本実施の形態にかかる冷蔵庫1の全体構成について説明する。図1には、本実施の形態にかかる冷蔵庫1の外観を示す。図1では、主に冷蔵庫1の背面側を示す。図2には、冷蔵庫1を構成している断熱箱体50の背面の構成を示す。図2では、断熱箱体50の外箱51の背面部51cを構成しているバックプレート58を取り外した状態で示す。
【0013】
冷蔵庫1の一側面には、扉(図示せず)が設けられている。本実施形態では、扉が設けられている面を冷蔵庫の前面(正面)とする。そして、前面を基準にして、冷蔵庫1を通常の状態で設置した場合に存在する位置に基づいて、冷蔵庫1の各面を、上面、側面、背面、及び底面とする。
【0014】
冷蔵庫1には、各貯蔵空間を周囲から断熱するための断熱構造として、断熱箱体50が設けられている。断熱箱体50は、冷蔵庫1の外周を覆うように設けられている。断熱箱体50は、主として、外箱51、内箱52、断熱層(発泡断熱材)53(図9参照)、および真空断熱材(VIP)54(図3参照)などを備えている。
【0015】
本明細書では、冷蔵庫1の各面の呼び方と合わせて、断熱箱体50の外面をそれぞれ、上面部51a、底面部51b、背面部51c、側面部51dと呼ぶ。
【0016】
冷蔵庫1の内部には、冷凍サイクル(図示せず)が設けられている。冷凍サイクルは、冷媒が流通する冷媒管(冷媒流路)を介して、圧縮機、凝縮器、膨張器、及び、冷却器などが接続されて構成されている。圧縮機は、冷蔵庫1の底部の背面側に設けられた機械室30内に配置されている。
【0017】
(断熱箱体の説明)
続いて、断熱箱体50のより具体的な構成について、図1から図6などを参照しながら説明する。
【0018】
図3は、断熱箱体50の背面部51cを構成しているバックプレート58の構成を示す平面図である。図3は、バックプレート58の内面側(断熱層53が形成される側)を示す。図3では、説明の便宜上、真空断熱材54の背面側に設けられている凸部59および粘着テープ61なども図示している。図4は、図3に示すバックプレート58の下方側の端部を拡大して示す図である。図5は、バックプレート58の内面側に配置されている各構成部材を分解した状態で示す図である。図6は、図3に示すバックプレート58のA-A線部分の断面構成を示す図である。
【0019】
断熱箱体50は、主として、外箱51と、内箱52と、断熱層53と、真空断熱材(VIP)54とを備えている。
【0020】
外箱51は、断熱箱体50の外周面を形成する。外箱51は、冷蔵庫1の外形も部分的に形成している。すなわち、外箱51は、断熱箱体50の上面部51a、背面部51c、および側面部51dを形成している。外箱51の背面部51cは、板状のバックプレート58で形成されている。
【0021】
内箱52は、断熱箱体50の内周面を形成する。また、内箱52は、冷蔵室などの各貯蔵空間を区画している。
【0022】
断熱箱体50の底面部の背面側には、機械室30を配置するための空間が形成されている。機械室30には、圧縮機などの機器が配置される。機械室30と断熱層53とを仕切る機械室30の天面部の後端には、シール部材75が設けられている(図2参照)。シール部材75はスポンジなどの多孔質構造を有する弾性素材で形成されており、外箱51の背面部51cの下端部が当接する。これにより、断熱箱体50内部に充填される発泡断熱材料が、機械室30へと漏れ出すことを抑えることができる。
【0023】
断熱層53は、主として、発泡断熱材で構成される。具体的には、断熱層53は、硬質発泡ウレタン(硬質ポリウレタンフォームともいう)などで形成することができる。硬質発泡ウレタンは、2種類の主原料に触媒、発泡剤、製泡剤などを混合し、泡化反応と樹脂化反応を同時に起こして得られる均一な樹脂発泡体である。
【0024】
また、断熱箱体50の内部には、発泡断熱材で構成された断熱層53の他に真空断熱材54が含まれている。真空断熱材54は、グラスウールやシリカ粉末等の微細空隙を有する芯材を、ガスバリア性を有する外包材(袋状体、例えばラミネートフィルム)で覆い、外包材の内部を減圧密封して形成される。真空断熱材は、その内部空間を高真空に保ち、気相を伝わる熱量をできる限り小さくすることにより、高い断熱効果を実現することができる。真空断熱材54は、例えば、長方形の平面を有する平板状の部材である。
【0025】
図3に示すように、真空断熱材54は、断熱箱体50の背面側に配置されている。すなわち、真空断熱材54は、外箱51の背面部51cを構成しているバックプレート58の内面に貼付されている。バックプレート58の内面は、真空断熱材54と対向する側の面となる。
【0026】
図3に示すように、バックプレート58は、上端部58aと下端部58bとを有している。そして、バックプレート58の左右両側の端部には、上下方向に延びる側端部58cが設けられている。左右両側の側端部58cおよび58cは、平坦な背面部51cに対してやや傾斜している(図6参照)。側端部58cと背面部51cとの間は、稜部58dとなっている。粘着テープ61は、稜部58dを跨るようにバックプレート58の内側の面上に配置されている(図6参照)。
【0027】
バックプレート58の内面(すなわち、真空断熱材54と対向する側の面)には、稜部58dの近傍に、上下方向に延びる2つの凸部59・59が形成されている。凸部59は、バックプレート58の内面側に盛り上がる凸形状となっている(図6など参照)。具体的には、各凸部59・59は、真空断熱材54の左右両側の辺(すなわち、真空断熱材54の上下方向に延びる各端部54aおよび54b)に沿って延びている。
【0028】
真空断熱材54は、バックプレート58の左右両側の稜部58dの間に配置されている。図6に示すように、真空断熱材54の少なくとも一端部(本実施形態では、端部54aおよび54b)は、凸部59に乗り上げるようにして配置されている。本実施形態では、真空断熱材54は、左右両側の凸部59および59の全体を覆うように、各凸部59および59に乗り上げている。すなわち、真空断熱材54の左右両側の端部54aおよび54bは、バックプレート58の各凸部59・59よりも外側に位置している。
【0029】
バックプレート58の左右両側の側端部58cには、発泡断熱材の注入口55が形成されている。この注入口55から、液体状の発泡断熱材の材料が注入される。注入口55は、複数個(本実施形態では、4個)設けられている。
【0030】
バックプレート58の下方(下端部58bのやや上方)には、放熱パイプ71が配置されている(図5参照)。放熱パイプ71には、冷凍サイクルにおいて温められた冷媒が流れており、外箱51の内面に放熱パイプ71が設けられていることで、外箱51の表面の結露の発生を抑えることができる。
【0031】
本実施形態では、放熱パイプ71は、左右何れか一方の側端部58c近傍の下端部58bからバックプレート58へと延伸し、バックプレート58上を真空断熱材54の下端部に沿って左右方向に延伸し、他方の側端部58c近傍の下端部58bから機械室30側へと延びている。
【0032】
このように、本実施形態では、放熱パイプ71は、バックプレート58の下端部58b付近にのみ配置されている。これにより、外箱51の背面部51cに、より大きな真空断熱材54の配置領域を確保することができる。すなわち、外箱51の背面部51cにより大面積の真空断熱材54を配置することができ、断熱箱体50の断熱性能を高めることができる。なお、放熱パイプ71は、外箱51の左右両側の側面部51dの内面に配置されており、バックプレート58の下端部58b付近に配置された放熱パイプ71によって、左右の側面部51dに配置された放熱パイプ71を連結している。
【0033】
放熱パイプ71は、シート状の粘着テープ61によって、背面部51cに固定されている。粘着テープ61は、一方の面が粘着面となっており、他方の面が離型面(離型部)となっている。離型面には、離型処理が施されている。離型処理は、例えば、アルミニウムなどの金属材料で形成された粘着テープの表面にシリコーン塗布面を形成することによって行われる。離型面は、断熱層53を形成している硬質発泡ウレタン、および真空断熱材54との間の接着力が弱くなっている。そのため、断熱層53が形成されるときに、硬質発泡ウレタンと離型面との間にわずかな隙間を形成することができる。
【0034】
図3に示すように、粘着テープ61は、バックプレート58の下端部58bから、左右両側の稜部58d上に上方へ延びている。具体的には、粘着テープ61の上端部61aは、バックプレート58の側端部58cに形成された複数個の注入口55のうちの上方側の注入口55のやや上方に位置している。また、粘着テープ61の下端部61bは、バックプレート58の下端部58bに延びている。粘着テープ61の下端部61bおよび稜部58dに重なるように、シール部材76が配置される。シール部材76は、機械室30との境界部分に設けたシール部材75に重なるように配置される。
【0035】
また、粘着テープ61の幅方向(左右方向)の各端部は、一方の側が真空断熱材54の端部(左右何れかの端部54aまたは54b)に重なる位置にまで延びており、他方の側が側端部58cの注入口55と部分的にわずかに重なる位置にまで延びている。
【0036】
図4には、図3におけるバックプレート58の右下の角部分の構成を示す。放熱パイプ71は、バックプレート58の下方の角部分で略垂直に屈曲している。放熱パイプ71の屈曲部は、バックプレート58の稜部58dと概ね対応するように位置している(図4など参照)。そして、放熱パイプ71の屈曲部と、バックプレート58との間には、粘性弾性部材65が設けられている。粘性弾性部材65は、例えば、ブチルゴムなどのゴム材料で形成することができる。
【0037】
放熱パイプ71を間に挟んで粘性弾性部材65に対応する位置には、粘着テープ61の下端部61bが配置されている。図4では、粘着テープ61の下端部61bの近傍部分を破線で示している。粘性弾性部材65は、粘性を有しているため、放熱パイプ71を固定させることができる。また、粘着テープ61における粘性弾性部材65との対向面は、粘着面となっている。そのため、粘性弾性部材65に粘着テープ61を配置すると、放熱パイプ71を間に挟んだ状態で、粘性弾性部材65と粘着テープ61とは互いに密着された状態となる。
【0038】
これにより、バックプレート58の下端部58b近傍に位置する放熱パイプ71は、その周囲が、粘性弾性部材65と粘着テープ61で覆われて密閉された状態となる。このように、粘性弾性部材65は、バックプレート58と、粘着テープ61および放熱パイプ71との間に形成され得る隙間を塞ぐことができる。これにより、断熱箱体50の内部から放熱パイプ71の周囲を伝って発泡ウレタン材料が外部に漏れることを抑えることができる。また、シール部材76によって、バックプレート58の稜部58dからのウレタン漏れを抑えることができる。
【0039】
また、各注入口55に対応する位置には、注入口55を覆う蓋部材69が設けられている(図5参照)。蓋部材69は、シート状に形成されており、図5に示すように、内側に開くように片端のみ貼られた状態となっている。これにより、断熱箱体50の外側からは、発泡ウレタン材料を注入するためのノズルを挿入することができる一方、断熱箱体50の内側からは押されても弁になって開かないような構造となっている。したがって、ウレタン発泡時に、断熱箱体50内で形成される硬質発泡ウレタンの流出を抑制するための蓋として機能する。
【0040】
(断熱箱体の製造方法)
続いて、断熱箱体50の製造方法について説明する。図7には、断熱箱体50の背面部に発泡断熱材料が流入する様子を模式的に示す。図8には、断熱箱体50の内部で断熱層53が形成される途中の段階を模式的に示す。図9は、断熱箱体50の内部構成を示す断面図である。図9は、図7に示す断熱箱体50のB-B線部分に相当する位置の断面図である。図10は、バックプレート58の下端部(機械室30との境界部分)の構成を示す模式図である。
【0041】
先ず、バックプレート58の内側面の所定の位置に粘性弾性部材65を貼り付ける。次に、バックプレート58の所定の位置に放熱パイプ71を載置する。その後、粘着テープ61をバックプレート58の所定の位置に貼り付ける。これにより、放熱パイプ71は、バックプレート58の所定の位置に固定される。このとき、粘着テープ61によって蓋部材69の片端をバックプレート58の内側面の所定の位置に貼り付ける。
【0042】
続いて、バックプレート58の内側面に真空断熱材54を貼り付ける。このとき、真空断熱材54は、バックプレート58の各凸部59および59の全体を覆い、かつ、粘着テープ61と部分的に重なるように配置される。真空断熱材54は、ホットメルトなどの接着剤を貼付け面に塗布し、貼付け面をバックプレート58の内側面に貼り合わせた後に、真空断熱材54の面全体をバックプレート58側に加圧することによってバックプレート58に対して貼り付けられる。
【0043】
一方、内箱52の内部には、庫内電装ユニット、各種配線などが取り付けられる。また、バックプレート58の下端部58bには、機械室30との境界部分にシール部材75が取り付けられる(図2参照)。
【0044】
そして、内箱52の外周を覆うように外箱51の各面部を取り付ける(図2参照)。
【0045】
その後、断熱箱体50の背面部51cを上にした状態で、背面部51cに形成された注入口55より液体状の発泡断熱材の材料(発泡ウレタン材料)を注入する。発泡断熱材の材料は、外箱51と内箱52との間の空間内で前面側から背面側へと順に発泡して体積を増加しながら充填されていく。発泡した断熱材はその後、硬化する。
【0046】
具体的には、発泡ウレタン材料は発泡反応しながら体積を増し、外箱51と内箱52との間の空間に充填される。このとき、空間内の空気(および発泡反応時に発生するガス)を空間外へ排出しないと発泡ウレタンは均一に充填されない。そのため、断熱箱体50には、ガス抜き穴が設けられている。断熱箱体50において、ガス抜き穴は、例えば、目立たない底部周辺に設けられる。図7に示す例では、機械室30付近の破線の円で囲んだ領域に、ガス抜き穴81が設けられている。
【0047】
一方、断熱箱体50を構成する外箱51の背面部51cは、その大部分が真空断熱材54で覆われており、ガス抜き穴が存在しない。そのため、上方側に位置する注入口55からの発泡ウレタン材料の注入量を、下方側に位置する注入口55からの注入量よりも多めに設定し、断熱箱体50の背面部の空間には、上方側に位置する注入口55から発泡ウレタン材料が下方に流れ込むようにして、断熱箱体50の底部に設けられたガス抜き穴が、発泡ウレタンの充填時に塞がれにくいようにしている(図7参照)。
【0048】
しかしながら、上記のガス抜き穴が発泡ウレタンによって塞がれてしまうと、抜け道がなくなった発泡ガスにより外箱51と内箱52との間の空間の気圧が高くなる。このとき、発泡ウレタンが充填されていない空間は背面部51cの近傍となっているため、背面部51cに貼り付けられた真空断熱材54の周囲の気圧が高くなる。
【0049】
真空断熱材54は上記のようにバックプレート58の内側面に接着剤によって貼り付けられているが、接着剤を貼付け面に空隙なく均一に塗布することは難しい。また、真空断熱材54の周囲の発泡ガスの気圧も均一ではなく、位置によって異なることがある。例えば、発泡断熱材の注入口55の近くは、注入された発泡ウレタン材料が最も激しく反応する箇所であり、発泡ガスの気圧が高くなる。また、外箱51と内箱52との間の距離が狭い箇所は発泡ガスの気圧が高くなる。このように、発泡ガスの気圧が高い箇所に配置された真空断熱材54の端部54aおよび54bには、バックプレート58の内側面から真空断熱材54を剥離する応力がより強く働く。そして、1箇所で真空断熱材54の端部がバックプレート58の内側面から剥離すると、その剥離箇所に発生ガスが集中して貯まることでさらに剥離応力が集中し、連鎖的に剥離領域が拡大する。
【0050】
そのため、図11に示す従来の断熱箱体950の構成では、真空断熱材54の周囲の発泡ガスの気圧が高くなると、真空断熱材54の貼付け面に発生している空隙と連通しようとして、接着力の低い箇所や発泡ガスの気圧が高い箇所などを起点として、真空断熱材54をバックプレート58の内側面から剥離してしまう。さらに、従来の断熱箱体950の構成では、下方に流れる発泡ウレタン材料がバックプレート58と真空断熱材54との接着面を剥がすことがある。このようにして真空断熱材54がバックプレート58から剥離されることで、図11に示すように、バックプレート58と真空断熱材54との間に隙間900が発生し、この隙間900に発泡ガスが入り込む。
【0051】
バックプレート58には、隙間900に圧入された、大気圧より気圧が高いガスにより図11中の実線矢印に示す応力がかかっているため、ウレタン発泡工程後に断熱箱体950が発泡治具から外されると、バックプレート58は図11中の実線矢印に示す方向に変形する。その後、ウレタンの反応が収束してくると、発泡ガスの発生が減少し、真空断熱材54をバックプレート58の内側面から剥離する応力が低下する。そのため、真空断熱材54に塗布された接着剤によって、真空断熱材54は再びバックプレート58の内側面に貼り付けられるが、バックプレート58は図11中の実線矢印方向に変形しているため、隙間900の発生箇所は真空断熱材54がバックプレート58の内側面に接着できず、隙間900にガスが閉じ込められる。また、ウレタンの反応低下に伴ってウレタン発泡時の発熱が収まってくると、断熱箱体の内部では発泡ウレタンの温度が低下し、発泡ウレタンが収縮する。このとき、従来の断熱箱体950では、庫内側(図11中の破線矢印で示す方向)に発泡ウレタンは収縮する。これにより、隙間900が拡大する傾向となる。
【0052】
その後、冷蔵庫が完成すると、隙間900内に閉じ込められたガスは徐々に外部に抜けるが、その時すでにバックプレート58は、隙間900内のガスによって図11中の実線矢印に示す応力を長時間与えられ続けており、元の形には戻らない。その一方で、冷蔵庫は内箱が冷却運転されることで発泡ウレタンはさらに庫内側に収縮するため、隙間900が拡大する傾向になる。このような隙間900は、外箱51の背面部51cの表面の凹凸やゆがみの原因となり、冷蔵庫の外観を損なう。また、外箱51の背面部51cの内側が隙間900によって中空状態となっているので、背面部51cがいわゆる浮いた状態となってしまい、冷蔵庫の品質感を損なう。
【0053】
これに対して、本実施形態にかかる断熱箱体50では、バックプレート58の内面に凸部59が形成されている。そして、真空断熱材54は、各凸部59に乗り上げるように配置されている。そのため、凸部59の近傍では、バックプレート58の内面と真空断熱材54との間にわずかな隙間Gが形成される(図8参照)。後述するように、この隙間Gは、真空断熱材54の上下方向ほぼ全域に亘って空気を連通する連通路P1となる(図6参照)。
【0054】
また、本実施形態にかかる断熱箱体50では、粘着テープ61がバックプレート58の稜部58dに沿って上下方向に延びており、かつ、粘着テープ61の下端部61bはバックプレート58の下端部58bにまで到達している。そして、粘着テープ61と真空断熱材54の端部とが部分的に重なっている。上述したように、粘着テープ61の表面は離型処理が施されているため、粘着テープ61と、発泡ウレタン(断熱層53)および真空断熱材54との間は離間した状態になっている。この離間した部分が、空気を流通する連通路P2となる(図6参照)。この連通路P2は外部の空間(外気)と連通する。
【0055】
発泡ウレタンの充填によって、バックプレート58と真空断熱材54との間には、ある程度の発泡ウレタン材料が潜り込む(図8の破線の枠部分参照)。しかし、バックプレート58に凸部59が形成されていることで、発泡ウレタン材料が潜り込んできても、凸部59の近傍には、凸部59の延伸方向(すなわち、断熱箱体50の上下方向)に沿って、バックプレート58の内面と真空断熱材54との間に隙間Gが形成される(図8参照)。
【0056】
凸部59を形成する傾斜部の角度、特に真空断熱材54の端部54aおよび54bに近い側の傾斜部(図8では凸部59を形成する右側の傾斜面)の角度は、バックプレート58に対して直角に近いほうが好ましい。これにより、バックプレート58の内面と真空断熱材54との間に隙間Gが形成されやすくなる。また、この角度は90度未満、より好ましくは80度未満とすることが好ましい。これにより、真空断熱材54をバックプレート58側に加圧して接着する際に、真空断熱材54の外包材が損傷することを防止できる。
【0057】
また、バックプレート58の稜部58dに沿って上下方向に延びる粘着テープ61は、バックプレート58の下端部58bにまで到達している。粘着テープ61の表面が離型面となっていることで、バックプレート58と真空断熱材54との間に潜り込んだ発泡ウレタンが粘着テープ61に固着しにくくなる。そのため、発泡ウレタンが入り込んできても、固着せずに流れやすくなるため、真空断熱材54を内側(図8では下方)に押し広げる力が低下する。したがって、バックプレート58の内面と真空断熱材54との間に隙間Gが形成されやすくなる。
【0058】
図8に示すように、バックプレート58の内面と真空断熱材54との間に形成された隙間Gは、凸部59の形成領域、すなわち、真空断熱材54の上下方向のほぼ全域に亘って形成されている。これにより、真空断熱材54の端部54aまたは54bの上下方向の特定の箇所において発泡ガスの気圧が高くなるなどにより、バックプレート58の内面から真空断熱材54を剥離する応力がかかった場合であっても、真空断熱材54の上下方向のほぼ全域に亘って形成された隙間Gによって発泡ガスを上下方向に速やかに分散させることができる。
【0059】
したがって、真空断熱材54の端部の1箇所の剥離を起点とした連鎖的な剥離を防止できる。なお、分散した発生ガスは発泡ウレタンの未充填部分(本実施形態では真空断熱材54の下方が最後まで発泡ウレタンの未充填箇所となりやすい)から徐々に排気される。
【0060】
また、図8に示すように、粘着テープ61の表面に発泡ウレタンが固着しにくいため、断熱層53と粘着テープ61の配置位置との間にはわずかな隙間G(図8参照)が形成されやすくなる。
【0061】
図8に示すように、凸部59の近傍に形成された隙間Gと、断熱層53と粘着テープ61との間に形成された隙間Gとは連通している。そして、この隙間Gは、バックプレート58の下端部58bのシール部材75において外部と連通する。したがって、バックプレート58の下端部58bの粘着テープ61とシール部材76との合わせ位置は、ガス抜き穴82(図7参照)としての機能を有する。
【0062】
シール部材76は、上記の通りバックプレート58の稜部58dからのウレタン漏れを抑えるために配置している。そのため、シール部材76は、発泡ガスが通気できるがウレタン材は通過できない程度の材質(例えば、多孔質材料)で形成すればよい。また、上記のように、発泡ウレタン材料の注入量を注入口55ごとに制御するなどすることで、発泡ウレタンの充填が上方から下方に進むようにした場合には、バックプレート58の下端部58bと機械室30との境界部分には最後まで発泡ウレタンが充填されない。このような場合には、シール部材75によるガス抜きが可能となるため、シール部材76の通気性は低くてもよい。
【0063】
そのため、バックプレート58と真空断熱材54との間に潜り込んだ発泡ガスは、バックプレート58と真空断熱材54との接着面を剥離させるほど気圧が高くなる前に、上記の隙間から外部に排出されるため、接着面の剥離が抑制される。さらに、バックプレート58と真空断熱材54との間に流入した発泡ウレタン材料は、粘着テープ61の表面の離型処理によってバックプレート58に接着して留まることができないため、バックプレート58と真空断熱材54との接着面の間に潜り込むよりも、粘着テープ61の配置位置に沿って断熱箱体50の上下方向により優先的に拡散する。
【0064】
そのため、バックプレート58と真空断熱材54との間に発泡ウレタン材料が潜り込む量は、結果的に抑えられる。すなわち、バックプレート58と真空断熱材54との間の発泡ガスを隙間Gによって速やかに分散し、また、外部に排出できるため、従来の断熱箱体950において形成されたような隙間900の形成が抑制される。断熱箱体50内に発泡ウレタンが概ね形成された段階で、バックプレート58と真空断熱材54との間に大きな隙間が形成されていなければ、内箱52と真空断熱材54との間に形成された発泡ウレタン(断熱層53)の内圧(発泡圧)で真空断熱材が外箱51側に押される(図9の矢印参照)。そのため、バックプレート58と真空断熱材54との接着面へのガスの侵入(すなわち、接着面の剥離)は抑制される。
【0065】
また、バックプレート58に凸部59が形成されているため、真空断熱材54をバックプレート58の内側面に接着する工程において、真空断熱材54の面全体をバックプレート58側に加圧する際に、凸部59には他の箇所よりも大きな圧力がかかる。したがって、バックプレート58の凸部59の部分と真空断熱材54との接着力が高まっているため、バックプレート58から真空断熱材54を剥離する応力が真空断熱材54の端部54aや54bにかかっても、凸部59が強力に接着されているために凸部59より内側の領域では真空断熱材54とバックプレート58との剥離が起こりにくくなる。すなわち、凸部59より内側の領域における真空断熱材54とバックプレート58との接着面へのガスの侵入はさらに抑制される。
【0066】
なお、図10に示すように、断熱箱体50の下方部分における機械室30との境界部分には、スポンジなどの多孔質構造を有する弾性部材で形成されたシール部材75が設けられており、発泡ウレタンの漏れを抑制している。バックプレート58に貼り付けられた粘着テープ61の離型面は、シール部材76を介してシール部材75に対向している。これにより、断熱箱体50内の粘着テープ61の離型面は、シール部材75およびシール部材76を介して外側と連通している。
【0067】
以上より、断熱箱体50内のバックプレート58には、粘着テープ61の離型面に沿って、断熱層53を形成する発泡ウレタンとの接着がない領域が形成されていることになる。この領域は、連通路P2となる。連通路P2は、粘着テープ61と真空断熱材54と重なり部分から、下端部58bのシール部材76の配置位置まで延びている。
【0068】
また、真空断熱材54の左右両側の端部54aおよび54bの近傍では、バックプレート58に形成された凸部59の形状に起因して形成された隙間Gによって連通路P1が形成される。粘着テープ61の一部と凸部59とが、ともに真空断熱材54で覆われていることで、連通路P1と連通路P2とは連通した状態となる(図9参照)。
【0069】
これにより、発泡ウレタンの形成途中の段階から、発泡ウレタンが概ね形成された段階までの間において、真空断熱材54とバックプレート58との間に潜り込んだ発泡ガスを外部に脱気させることができる。したがって、真空断熱材54とバックプレート58との間にガス貯まりが形成されにくくなり、バックプレート58と真空断熱材54と接着面の剥離を抑えることができる。
【0070】
なお、本実施形態では、矩形状の平板構造を有する粘性弾性部材65を用いて、粘着テープ61で固定された放熱パイプ71とバックプレート58との間の隙間を塞いでいる。この粘性弾性部材65として、ブチルゴムなどのゴム材料を用いることが好ましい。ゴム材料は、発泡ウレタン形成時の発熱反応によって温められることで軟化する。これにより、粘性弾性部材65は、粘着テープ61を間に挟んだ状態でシール部材75と適度に接触しながら隙間に入り込み、断熱箱体50内の空間を占有する。
【0071】
(第1の実施形態のまとめ)
以上のように、本実施形態にかかる冷蔵庫1は、断熱箱体50を備えている。断熱箱体50の外箱51を構成しているバックプレート58(すなわち、背面部51c)には、真空断熱材54が配置されている。また、背面部51cにおける真空断熱材54と対向する側の面には、真空断熱材の左右両側の辺(すなわち、上下方向に延びる各端部54aおよび54b)に沿って延びる凸部59・59が設けられている。真空断熱材54は、各凸部59・59に乗り上げるように配置されており、凸部59の近傍の背面部51cと真空断熱材54との間には、上下方向に連通する連通路P1が設けられている。
【0072】
この構成によれば、真空断熱材54とバックプレート58との間に流入したガスが連通路P1を通って上下方向に分散し、真空断熱材54の特定箇所において、バックプレート58からの剥離が始まることを防止できる。
【0073】
この連通路P1は、粘着テープ61と真空断熱材54との間に形成された連通路P2と連通する。粘着テープ61は、注入口55の配置位置のやや上方から、バックプレート58の下端部58bにまで延びている。また、粘着テープ61の幅方向(左右方向)の各端部は、一方の側が真空断熱材54の端部(左右何れかの端部)に重なる位置にまで延びている。
【0074】
この構成によれば、真空断熱材54とバックプレート58との間に形成された隙間内で発生または流通するガスが、連通路P1およびP2を通って下方に分散し、バックプレート58の下方の機械室30側へ抜けやすくすることができる。
【0075】
これにより、断熱箱体50の内部における発泡ウレタン形成の途中段階では、バックプレート58と真空断熱材54との間に入り込むガスの圧力を低減させることができる。そして、発泡ウレタンが概ね形成された段階では、真空断熱材54の断熱層53と対面する側が、断熱層53の発泡圧で押されることによって、バックプレート58と真空断熱材54との間に入り込んだガスを上記の連通経路を介して排出させることができる。したがって、バックプレート58がガスの圧力によって塑性変形する前に、ガスを排出することができる。
【0076】
このように、本実施形態にかかる構成によれば、発泡断熱材の形成時および形成後に断熱箱体50中で発生するガスの抜けを促進することができる。また、断熱箱体50の製造工程などにおいて、発泡ウレタンの収縮などが発生した場合に起こり得るバックプレート58の変形が起こりにくくなる。これにより、断熱箱体50の外観不良の発生を抑えることができる。
【0077】
なお、本実施形態では、バックプレート58に放熱パイプ71が取り付けられている冷蔵庫を例に挙げて説明した。しかし、バックプレート58に放熱パイプが設けられていない構成の場合にも、本実施形態と同様の位置に粘着テープ61を配置することが好ましい。
【0078】
また、本実施形態では、粘着テープ61が離型部の役割を果たしているが、別の態様では、粘着テープ以外の形態で離型部を実現することもできる。例えば、フッ素系離型剤をバックプレート58の表面に塗布することによって離型部を形成することもできる。
【0079】
<第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、バックプレートにおける真空断熱材の配置位置が第1の実施形態とは異なっている。それ以外の構成については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0080】
図12は、第2の実施形態にかかる断熱箱体50の外箱51を構成しているバックプレート58の内面側を示す。図12では、説明の便宜上、真空断熱材154の背面側に設けられている凸部59および粘着テープ61なども図示している。バックプレート58の構成は、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。
【0081】
図12に示すように、バックプレート58の内面側には、真空断熱材(VIP)154が貼り付けられている。図13は、図12に示すバックプレート58のC-C線部分(すなわち、真空断熱材154の左側の端部154a周辺)の断面構成を示す図である。
【0082】
バックプレート58の左右両側の端部には、上下方向に延びる側端部58cが設けられている。左右両側の側端部58cおよび58cは、平坦な背面部51cに対してやや傾斜している。側端部58cと背面部51cとの間は、稜部58dとなっている。粘着テープ61は、稜部58dを跨るようにバックプレート58の内側の面上に配置されている。バックプレート58の内面(すなわち、真空断熱材154と対向する側の面)には、稜部58dの近傍に、上下方向に延びる2つの凸部59(具体的には、左側の凸部59aおよび右側の凸部59b)が形成されている。凸部59は、バックプレート58の内面側に盛り上がる凸形状となっている(図13など参照)。このようなバックプレート58の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0083】
真空断熱材154は、バックプレート58の左右両側の稜部58dの間に配置されている。図12に示すように、真空断熱材154の少なくとも一端部(本実施形態では、端部154aおよび154b)は、凸部59に乗り上げるようにして配置されている。
【0084】
より具体的には、真空断熱材154の左側は、凸部59aに部分的に(例えば、約2mm以下の段差で)乗り上げており、その端部154aは、凸部59a上に位置している。また、真空断熱材154の右側は、凸部59bに完全に乗り上げており、その端部154bは、凸部59bの外側に位置している。真空断熱材154の右側の端部154bの位置は、第1の実施形態で説明した真空断熱材54の端部54bの位置と同じである。
【0085】
放熱パイプ71および粘着テープ61の配置位置については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。
【0086】
本実施形態において、断熱箱体50を製造する際には、第1の実施形態と同様に、バックプレート58の内側面に真空断熱材154を貼り付ける。真空断熱材154は、ホットメルトなどの接着剤によってバックプレート58に対して貼り付けられる。このとき、真空断熱材154の左側は、バックプレート58の凸部59aに部分的に乗り上げ、かつ、粘着テープ61とは離れた位置に配置される。また、真空断熱材154の右側は、バックプレート58の凸部59bの全体を覆い、かつ、粘着テープ61と部分的に重なるように配置される。
【0087】
なお、バックプレート58の凸部59が形成されている箇所は、加圧されやすいため、平坦な部分と比較して真空断熱材154との接着を強固にすることができる。さらに、本実施形態では、真空断熱材154の左側の端部154aが凸部59aに乗り上がっていることで、真空断熱材154の端部154aを凸部59aに強固に接着させることができる。
【0088】
そして、凸部59aの近傍では、バックプレート58の内面と真空断熱材154との間にわずかな隙間Gが形成される(図14参照)。この隙間Gは、外気と連通する連通路P11となる(図13参照)。
【0089】
上記のように、真空断熱材154の左側では、その端部154aが上下方向に延びる凸部59a上でバックプレート58と強固に接着されている(図14の一点鎖線の枠部分参照)。そのため、発泡ウレタン材料を注入したときに、生成された発泡ウレタンによってバックプレート58と真空断熱材154との接着面が剥がされにくくなり、バックプレート58と真空断熱材154との間の隙間に発泡ウレタンが潜り込みにくくなる。すなわち、凸部59aが発泡ウレタンの潜り込みを防ぐ堤防の役割を果たす。
【0090】
また、発泡ウレタンの生成時に発生する発泡ガスが、真空断熱材154の接着面の一部を破って凸部59aよりも内側に浸入した場合にも、凸部59aの形成位置に沿って、連通路P11が断熱箱体の上下方向に延びているため、発泡ガスは分散されるとともに外気に連通する。したがって、凸部59aよりも内側に浸入した発泡ガスが局所的に留まって、真空断熱材154の接着面を連鎖的に剥離し拡大することを防止できる。
【0091】
さらに、凸部59aの下端部59cが、バックプレート58の下端部58bの近く(例えば、下端部58bまで5cm以内の位置)にまで延びていることで、上下方向に延びる連通路P11は、バックプレート58の下端部58bのシール部材75と76の合わせ面において外部と連通する。
【0092】
そのため、バックプレート58と真空断熱材154との間に潜り込んだ発泡ウレタンから発生したガスは、バックプレート58と真空断熱材154との接着面を剥離させる前に、連通路P11から外部に排出されるため、接着面の剥離が抑制される。
【0093】
これにより、バックプレート58と真空断熱材154との間に発泡ウレタン材料およびガスが潜り込む量は、結果的に抑えられる。すなわち、従来の断熱箱体950において形成されたような隙間900の形成が抑制される。断熱箱体50内に発泡ウレタンが概ね形成された段階で、バックプレート58と真空断熱材154との間に大きな隙間が形成されていなければ、内箱52と真空断熱材54との間に形成された発泡ウレタン(断熱層53)の内圧(発泡圧)で真空断熱材が外箱51側に押される(図9の矢印参照)。そのため、バックプレート58と真空断熱材154との接着面へのガスの侵入(すなわち、接着面の剥離)は抑制される。
【0094】
なお、真空断熱材154の右側の端部154bの近傍では、第1の実施形態と同様に、バックプレート58に形成された凸部59bの形状に起因して形成された隙間Gによって連通路P1が形成される。そして、この連通路P1は、粘着テープ61と真空断熱材154との間に形成された連通路P2と連通する。これにより、真空断熱材154の右側の端部154bにおいても、バックプレート58と真空断熱材154との接着面へのガスの侵入(すなわち、接着面の剥離)は抑制される。
【0095】
このように、本実施形態にかかる構成によれば、発泡断熱材の形成時および形成後に断熱箱体50中で発生するガスの抜けを促進することができる。また、断熱箱体50の製造工程などにおいて、発泡ウレタンの収縮などが発生した場合に起こり得るバックプレート58の変形が起こりにくくなる。これにより、断熱箱体50の外観不良の発生を抑えることができる。
【0096】
<第3の実施形態>
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、バックプレートにおける真空断熱材の配置位置が第1および第2の実施形態とは異なっている。
【0097】
上述した第2の実施形態では、真空断熱材154の左側は、凸部59aに部分的に乗り上げており、その端部154aが凸部59a上に位置し、真空断熱材154の右側は、凸部59bに完全に乗り上げている。これに対して、第3の実施形態では、真空断熱材154の左右両側において、各端部154aおよび154bが凸部59(すなわち、凸部59aまたは59b)上に位置している。
【0098】
それ以外の構成については、第2の実施形態と同様の構成が適用できる。したがって、本実施形態にかかる断熱箱体では、バックプレート58上の左右両側の凸部59aおよび59bの近傍に、図13に示すような連通路P11が形成される。
【0099】
この構成によれば、発泡断熱材の形成時および形成後に断熱箱体50中で発生するガスの抜けを促進することができる。また、断熱箱体50の製造工程などにおいて、発泡ウレタンの収縮などが発生した場合に起こり得るバックプレート58の変形が起こりにくくなる。これにより、断熱箱体50の外観不良の発生を抑えることができる。
【0100】
(まとめ)
本発明の一局面にかかる冷蔵庫(例えば、冷蔵庫1)は、断熱箱体(例えば、断熱箱体50)と、前記断熱箱体の背面部(例えば、背面部51c)に配置されている真空断熱材(例えば、真空断熱材54,154)とを備えている。前記背面部における前記真空断熱材と対向する側の面には、前記真空断熱材の左右両側の辺(例えば、真空断熱材54の端部54aおよび54b、または、真空断熱材の端部154aおよび154b)に沿って延びる凸部(例えば、凸部59,59a,59b)が設けられており、前記真空断熱材は、前記凸部に乗り上げるように配置され、前記凸部の近傍の前記背面部と前記真空断熱材との間には、上下方向に連通する連通路(例えば、連通路P1、P11)が設けられている。
【0101】
上記の本発明の一局面にかかる冷蔵庫(例えば、冷蔵庫1)において、前記連通路(例えば、連通路P1、P11)は外気と連通してもよい。
【0102】
上記の本発明の一局面にかかる冷蔵庫(例えば、冷蔵庫1)において、前記凸部の少なくとも何れか(例えば、凸部59,59b)は、その全体が前記真空断熱材で覆われていてもよい。
【0103】
上記の本発明の一局面にかかる冷蔵庫(例えば、冷蔵庫1)において、前記背面部における前記真空断熱材と対向する側の面には、離型処理が施されている離型部(例えば、粘着テープ61)が設けられており、前記離型部は、前記連通路の一部(例えば、連通路P2)を構成していてもよい。
【0104】
上記の本発明の一局面にかかる冷蔵庫(例えば、冷蔵庫1)において、前記離型部は、粘着テープ(例えば、粘着テープ61)であってもよい。
【0105】
上記の本発明の一局面にかかる冷蔵庫(例えば、冷蔵庫1)、放熱パイプ(例えば、放熱パイプ71)をさらに備ており、前記放熱パイプは、前記粘着テープによって前記背面部に固定されていてもよい。
【0106】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0107】
1 :冷蔵庫
30 :機械室
50 :断熱箱体
51 :外箱
51c :(外箱の)背面部
52 :内箱
53 :断熱層
54 :真空断熱材
55 :注入口
58 :バックプレート(背面部)
59 :凸部
61 :粘着テープ(離型部)
65 :粘性弾性部材
71 :放熱パイプ
75 :シール部材
154 :真空断熱材
P1 :連通路
P2 :連通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14