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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】車両用窓ガラス
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20230616BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
H01Q1/22 C
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019238104
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021106366
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】尾郷 優
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016867(JP,A)
【文献】特開2018-113587(JP,A)
【文献】特開2006-033050(JP,A)
【文献】特開2018-113591(JP,A)
【文献】特開2019-043453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部の窓枠に取り付けられる車両用窓ガラスであって、
ガラス板と、
前記ガラス板に設けられる第1アンテナと、
前記ガラス板に設けられる通電加熱式のデフォッガと、
前記ガラス板に設けられ、前記第1アンテナから離れて配置される補助エレメントと、を備え、
前記車両用窓ガラスを前記窓枠に取り付けた状態で平面視したとき、水平面に平行な方向を水平方向とし、前記水平方向に直角な方向を垂直方向と定義すると、
前記第1アンテナは、
給電用の給電電極と、
前記給電電極に電気的に接続され、前記水平方向に延在する第1水平エレメントとを有し、
前記デフォッガは、
前記水平方向に延在し、前記垂直方向に並んで配置される複数のヒータ線と、
前記ガラス板の前記水平方向での両端側において前記垂直方向に延在し、前記複数のヒータ線に給電する第1バスバー及び第2バスバーとを有し、
前記複数のヒータ線は、
前記補助エレメントから離れて配置される第1ヒータ線と、前記垂直方向に前記第1ヒータ線と隣り合う第2ヒータ線と、前記垂直方向に前記第2ヒータ線と隣り合う第3ヒータ線とを含み、
前記第1アンテナは、前記第1ヒータ線と前記第2ヒータ線との間にある第1領域に配置され、
前記補助エレメントは、前記第1ヒータ線を除く前記複数のヒータ線のうち、前記第2ヒータ線及び前記第3ヒータ線を含む少なくとも2本のヒータ線を短絡する第1短絡線を有し、
前記第1水平エレメントと前記補助エレメントとの間の最短距離は、前記第1短絡線のうち前記第2ヒータ線と前記第3ヒータ線との間を結ぶ短絡部分の長さよりも短い、車両用窓ガラス。
【請求項2】
前記第1短絡線から延びる仮想的な延長線は、前記第1水平エレメントと交差する、請求項1に記載の車両用窓ガラス。
【請求項3】
前記補助エレメントは、前記第1領域に配置されるL字状エレメントを有し、
前記L字状エレメントは、前記垂直方向に延在する垂直部と、前記水平方向に延在する水平部とを有し、
前記第1水平エレメントは、前記水平部に近接する、請求項1又は2に記載の車両用窓ガラス。
【請求項4】
前記第1アンテナが受信する所定周波数帯の電波の波長をλ、前記ガラス板の波長短縮率をk、とするとき、
前記L字状エレメントのエレメント長は、(1/8)×λ×k以上(1/4)×λ×k以下である、請求項3に記載の車両用窓ガラス。
【請求項5】
前記第1短絡線の端部は、前記第2ヒータ線に位置し、
前記端部は、前記第1水平エレメントに近接する、請求項1又は2に記載の車両用窓ガラス。
【請求項6】
前記第1水平エレメントは、前記給電電極を始点に延伸する、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項7】
前記第1水平エレメントは、前記給電電極を始点に前記第2ヒータ線の側に延伸する接続エレメントを介して、前記給電電極に電気的に接続される、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項8】
前記第1アンテナが受信する所定周波数帯の電波の波長をλ、前記ガラス板の波長短縮率をk、とするとき、
前記給電電極から前記第1水平エレメントの先端部までの導体長は、(1/8)×λ×k以上(1/4)×λ×k以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項9】
前記第1アンテナは、アース用のアース電極を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項10】
前記第1アンテナは、DABのバンドIIIの電波を受信する、請求項1から9のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項11】
前記第1ヒータ線は、前記第2ヒータ線に接続線を介して接続される第1ヒータ端と、前記第1バスバーに導通可能に接続される第2ヒータ端とを有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項12】
前記ガラス板に設けられる第2アンテナを備え、
前記第2アンテナは、前記接続線に対して前記第1領域とは反対側にある第2領域に配置される、請求項11に記載の車両用窓ガラス。
【請求項13】
前記第2アンテナは、DABのバンドIIIの電波を受信する、請求項12に記載の車両用窓ガラス。
【請求項14】
前記補助エレメントは、前記複数のヒータ線のうち少なくとも2本のヒータ線をそれぞれ短絡する第2短絡線及び第3短絡線を有し、
前記第2短絡線は、前記第1短絡線と前記第3短絡線との間に位置し、前記第1短絡線及び前記第3短絡線から前記水平方向に離れて配置されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項15】
前記第2短絡線から前記第1短絡線までの前記水平方向での距離は、前記第2短絡線から前記第3短絡線までの前記水平方向での距離と等しい、請求項14に記載の車両用窓ガラス。
【請求項16】
前記第1アンテナが受信する所定周波数帯の電波の最短波長をλmin、前記所定周波数帯の電波の最長波長をλmax、前記ガラス板の波長短縮率をk、とするとき、
前記第2短絡線から前記第1短絡線までの前記水平方向での距離、及び、前記第2短絡線から前記第3短絡線までの前記水平方向での距離は、(1/4)×λmin×k以上(1/4)×λmax×k以下である、請求項14又は15に記載の車両用窓ガラス。
【請求項17】
前記第1短絡線と前記第3短絡線の少なくとも一方は、間隙部を有する、請求項14から16のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項18】
前記複数のヒータ線は、前記垂直方向に前記第1ヒータ線から最も遠い第4ヒータ線を含み、
前記補助エレメントは、前記第4ヒータ線に対して前記第1ヒータ線とは反対側にある第3領域に配置される第1調整線を有し、
前記第1調整線は、前記第4ヒータ線に接続される、請求項14から17のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項19】
前記補助エレメントは、前記第2バスバー、又は、前記第1調整線と前記第4ヒータ線との接続点よりも前記第2バスバーの側の前記第4ヒータ線に接続される第2調整線を有し、
前記第2調整線は、前記第1調整線に近接する、請求項18に記載の車両用窓ガラス。
【請求項20】
前記第1ヒータ線は、前記複数のヒータ線のうちで最も下方に位置する、請求項1から19のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項21】
前記第1アンテナは、垂直偏波を受信する、請求項1から20のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の後部の開口部に取り付けられるリアガラスであって、ガラス板と、ガラス板の視野領域を加熱するデフォッガと、デフォッガの下方に配置されるアンテナと、を備えるリアガラスが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-043453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、アンテナがデフォッガの下方に配置されているので、デフォッガを配置する領域を拡げると、所定周波数帯の電波を好適に受信するアンテナを配置する領域が狭くなる。したがって、デフォッガの配置領域とアンテナの受信性能の両方を確保することが難しい。
【0005】
本開示は、デフォッガの配置領域とアンテナの受信性能の両方を確保可能な車両用窓ガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
車体後部の窓枠に取り付けられる車両用窓ガラスであって、
ガラス板と、
前記ガラス板に設けられる第1アンテナと、
前記ガラス板に設けられる通電加熱式のデフォッガと、
前記ガラス板に設けられ、前記第1アンテナから離れて配置される補助エレメントと、を備え、
前記車両用窓ガラスを前記窓枠に取り付けた状態で平面視したとき、水平面に平行な方向を水平方向とし、前記水平方向に直角な方向を垂直方向と定義すると、
前記第1アンテナは、
給電用の給電電極と、
前記給電電極に電気的に接続され、前記水平方向に延在する第1水平エレメントとを有し、
前記デフォッガは、
前記水平方向に延在し、前記垂直方向に並んで配置される複数のヒータ線と、
前記ガラス板の前記水平方向での両端側において前記垂直方向に延在し、前記複数のヒータ線に給電する第1バスバー及び第2バスバーとを有し、
前記複数のヒータ線は、
前記補助エレメントから離れて配置される第1ヒータ線と、前記垂直方向に前記第1ヒータ線と隣り合う第2ヒータ線と、前記垂直方向に前記第2ヒータ線と隣り合う第3ヒータ線とを含み、
前記第1アンテナは、前記第1ヒータ線と前記第2ヒータ線との間にある第1領域に配置され、
前記補助エレメントは、前記第1ヒータ線を除く前記複数のヒータ線のうち、前記第2ヒータ線及び前記第3ヒータ線を含む少なくとも2本のヒータ線を短絡する第1短絡線を有し、
前記第1水平エレメントと前記補助エレメントとの間の最短距離は、前記第1短絡線のうち前記第2ヒータ線と前記第3ヒータ線との間を結ぶ短絡部分の長さよりも短い、車両用窓ガラスを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、デフォッガの配置領域とアンテナの受信性能の両方を確保可能な車両用窓ガラスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態における車両用窓ガラスの一構成例を平面視で示す図である。
図2】第1実施形態における車両用窓ガラスの一構成例を平面視で示す部分拡大図である。
図3】第1実施形態における車両用窓ガラスの第1変形例を平面視で示す部分拡大図である。
図4】第1実施形態における車両用窓ガラスの第2変形例を平面視で示す部分拡大図である。
図5】第1実施形態における車両用窓ガラスの第3変形例を平面視で示す部分拡大図である。
図6】第1実施形態における車両用窓ガラスの第4変形例を平面視で示す部分拡大図である。
図7】第1実施形態における車両用窓ガラスの第5変形例を平面視で示す部分拡大図である。
図8】第2実施形態における車両用窓ガラスの一構成例を平面視で示す図である。
図9】第1比較形態における車両用窓ガラスを平面視で示す部分拡大図である。
図10】第2比較形態における車両用窓ガラスを平面視で示す部分拡大図である。
図11】第3比較形態における車両用窓ガラスを平面視で示す部分拡大図である。
図12】DAB規格のバンドIIIのアンテナ利得の測定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示に係る実施形態について説明する。なお、理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。X軸に平行な方向(X軸方向)、Y軸に平行な方向(Y軸方向)、Z軸に平行な方向(Z軸方向)は、それぞれ、ガラス板の左右方向(横方向)、ガラス板の上下方向(縦方向)、ガラス板の表面に直角な方向(法線方向とも称する)を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。
【0010】
本実施形態における車両用窓ガラスとして、車両の後部に取り付けられるリアガラスが好適である。
【0011】
図1は、第1実施形態における車両用窓ガラスの一構成例を平面視で示す図である。図1に示す窓ガラス101は、車体後部の窓枠に取り付けられる車両用窓ガラスの一例である。図1は、窓ガラス101のガラス面を対向して見たときの図であり、車体後部の窓枠71に取り付けられた窓ガラス101を車内側からの視点(車内視)で示す。
【0012】
窓ガラス101を窓枠71に取り付けた状態で平面視したとき、水平面に平行な方向を"水平方向Hd"とし、水平方向Hdに直交する方向を"垂直方向Vd"と定義する。図1に示す例では、水平方向Hdは、X軸方向(より具体的には、車両の車幅方向)に対応し、垂直方向Vdは、Y軸方向(より具体的には、車両の上下方向)に対応する。
【0013】
窓枠71は、車体後部に設けられる開口部を形成する金属のフランジである。窓枠71は、垂直方向Vdで対向する上枠71a及び下枠71dと、水平方向Hdで対向する右枠71c及び左枠71bとを有する。なお、窓枠71は、樹脂製のフランジでもよい。
【0014】
窓ガラス101は、主な構成として、ガラス板60と、デフォッガ30と、右リアアンテナ10と、補助エレメント80とを備える。
【0015】
ガラス板60は、車両の窓用のガラス板の一例であり、窓枠71に固定される。ガラス板60は、略四角形の外形形状を有する。ガラス板60の外縁は、垂直方向Vdで対向する上縁61a及び下縁61dと、水平方向Hdで対向する右縁61c及び左縁61bとを含む。窓ガラス101を窓枠71に取り付けた状態で平面視すると、上枠71a,下枠71d,右枠71c及び左枠71bは、それぞれ、上縁61a,下縁61d,右縁61c及び左縁61bの内側に位置する。
【0016】
デフォッガ30は、ガラス板60に設けられる通電加熱式のデフォッガの一例であり、ガラス板60の曇りを除去する導体パターンである。デフォッガ30は、水平方向Hdに延在する複数のヒータ線と、当該複数のヒータ線に給電する複数のバスバーとを有する。本実施形態では、互いに並走するように水平方向Hdに延在する11本のヒータ線33a~33kと、11本のヒータ線33a~33kに接続された一対のバスバー(右バスバー31及び左バスバー32)とが、ガラス板60に設けられている。右バスバー31は、第1バスバーの一例であり、左バスバー32は、第2バスバーの一例である。右バスバー31と左バスバー32との間に電圧が印加されることによって、11本のヒータ線33a~33kが通電して発熱するので、ガラス板60の曇りが除去される。
【0017】
11本のヒータ線33a~33kは、右バスバー31と左バスバー32との間に接続された導体パターンであり、垂直方向Vdに並んで配置されている。ヒータ線33aは、第1ヒータ線の一例であり、補助エレメント80から離れて配置される線条導体である。この例では、ヒータ線33aは、複数のヒータ線33a~33kのうちで最も下方に位置する。ヒータ線33bは、第2ヒータ線の一例であり、垂直方向Vdにヒータ線33aと隣り合うヒータ線条導体である。ヒータ線33cは、第3ヒータ線の一例であり、垂直方向Vdにヒータ線33bと隣り合うヒータ線条導体である。ヒータ線33bは、垂直方向Vdにおいて、ヒータ線33aとヒータ線33cとの間に位置する。
【0018】
右バスバー31及び左バスバー32は、ガラス板60の水平方向Hdでの両端側において垂直方向Vdに延在する帯状電極であり、ヒータ線33a~33kに給電する。右バスバー31は、右縁61cに沿ってガラス板60の上下方向に延在する導体パターンである。左バスバー32は、左縁61bに沿ってガラス板60の上下方向に延在する導体パターンである。
【0019】
右リアアンテナ10は、第1アンテナの一例であり、ガラス板60に設けられるガラスアンテナである。右リアアンテナ10は、ヒータ線33aとヒータ線33bとの間にある第1領域91に、他の導体線(ヒータ線など)と物理的に接しないように配置されている。この例では、右リアアンテナ10は、デフォッガ30内の右下領域である第1領域91に設けられる導体パターンであり、他の導体線(補助エレメント80、右バスバー31、接続線50、ヒータ線33a及びヒータ線33b)との間に間隔を空けて配置されている。
【0020】
右リアアンテナ10は、所定周波数帯の電波を受信可能に形成されており、その所定周波数帯における周波数で共振する。例えば、右リアアンテナ10は、垂直偏波を受信し、周波数が30MHz~300MHzのVHF(Very High Frequency)帯の電波の送受に適している。VHF帯の電波には、DAB(Digital Audio Broadcast)規格のバンドIII(174MHz~240MHz)の電波、FM放送波などが含まれる。
【0021】
右リアアンテナ10は、周波数が300MHz~3GHzのUHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信可能に形成されてもよい。UHF帯の電波には、470MHz~720MHzの地上デジタルテレビ放送波、DAB規格のLバンド(1452MHz~1492MHz)の電波などが含まれる。
【0022】
右リアアンテナ10は、主な構成として、給電用の給電電極41と、水平方向Hdに延在する第1水平エレメント11とを有する。
【0023】
給電電極41は、不図示の給電ラインの一端に電気的に接続される給電部であり、第1領域91に配置されている。給電ラインの他端は、受信機等の車体側機器に電気的に接続される。この例では、給電電極41は、矩形状に形成された導体パターンである。給電電極41の形状は、円形や他の多角形などの他の形状でもよい。
【0024】
例えば、給電電極41は、導電性金属を含有するペースト(例えば、銀ペースト等)を、ガラス板60の表面にプリントして焼き付けることによって形成されてもよく、金属板(金属箔)で形成されてもよい。他の給電電極及びアンテナエレメントについても同様である。
【0025】
第1水平エレメント11は、給電電極41に電気的に接続されるアンテナエレメントであり、第1領域91に配置されている。この例では、第1水平エレメント11は、給電電極41を始点に正のX軸方向に先端部10aまで直線的に延伸する線条パターンである。
【0026】
補助エレメント80は、ガラス板60に設けられ、右リアアンテナ10から離れて配置されている導体パターンである。補助エレメント80は、第1短絡線34を有する。第1短絡線34は、ヒータ線33aを除く複数のヒータ線33b~33kのうち、ヒータ線33b及びヒータ線33cを含む少なくとも2本のヒータ線を短絡する。この例では、第1短絡線34は、ヒータ線33bからヒータ線33kまでを短絡する線条エレメントであり、一方の端部34bがヒータ線33bに位置し、他方の端部34cがヒータ線33kに位置する。第1短絡線34は、垂直方向Vdに延在する導体パターンであり、ヒータ線33aを除く複数のヒータ線33b~33kのうち、ヒータ線33b及びヒータ線33cを含む少なくとも2本のヒータ線と交差する。
【0027】
図1に示す形態では、補助エレメント80は、第1領域91に配置されるL字状エレメント81を有する。L字状エレメント81は、垂直方向Vdに延在する垂直部82と、水平方向Hdに延在する水平部83とを有する。この例では、垂直部82は、ヒータ線33bから負のY軸方向の終端部まで直線的に延伸する線条エレメントであり、水平部83は、垂直部82の終端部から正のX軸方向の先端部81aまで直線的に延伸する線条エレメントである。
【0028】
第1水平エレメント11と補助エレメント80との間の最短距離Gは、第1短絡線34のうちヒータ線33bとヒータ線33cとの間を結ぶ短絡部分34aの長さJよりも短い。図1に示す形態では、最短距離Gは、第1水平エレメント11と水平部83との間の最短距離を表し、長さJは、ヒータ線33bとヒータ線33cとの間隔(縦幅)に等しい。最短距離Gは、1mm以上25mm以下であればよく、1mm以上20mm以下が好ましく、3mm以上15mm以下がより好ましく、3mm以上10mm以下がさらに好ましい。
【0029】
最短距離Gを、比較的短い長さJよりも更に短くすることで、第1水平エレメント11を、補助エレメント80(この場合、水平部83)に十分に近接させることができる。第1水平エレメント11は補助エレメント80に近接するので、第1水平エレメント11の少なくとも一部は、補助エレメント80の少なくとも一部(この場合、水平部83の少なくとも一部)と水平方向Hdに並走して容量結合する。この並走する距離(区間)は、例えば、5mm以上であり、10mm以上が好ましい。この容量結合により、右リアアンテナ10は、補助エレメント80を介してデフォッガ30の少なくとも一部を電波受信用のエレメントとして利用できるので、右リアアンテナ10のアンテナ利得が向上する。また、この容量結合により、右リアアンテナ10は、垂直方向Vdに延在する第1短絡線34を電波受信用のエレメントとして利用できるので、垂直偏波(例えば、DAB規格のバンドIIIの電波)を受信する際の右リアアンテナ10のアンテナ利得が向上する。
【0030】
また、右リアアンテナ10は、デフォッガ30内の第1領域91に配置されているので、アンテナがデフォッガの外側の領域に配置されている形態に比べて、デフォッガ30による防曇領域を容易に拡大できる。図1に示す形態では、右リアアンテナ10が配置される第1領域91は、最も外側のヒータ線33aと、ヒータ線33aよりも内側のヒータ線33bとの間にあるので、ヒータ線33aを下縁61dに近づけて、デフォッガ30による防曇領域を容易に拡大できる。また、窓ガラス101が窓枠71に取り付けられた状態では、ヒータ線33aは、右リアアンテナ10と下枠71dとの間に位置するので、右リアアンテナ10と金属の窓枠71との近接による、右リアアンテナ10のアンテナ利得の低下を抑制できる。
【0031】
このように、図1に示す形態によれば、デフォッガ30の配置領域と右リアアンテナ10の受信性能の両方を確保できる。
【0032】
右リアアンテナ10が受信する所定周波数帯Wの電波の波長をλ、ガラス板60の波長短縮率をkとする。このとき、L字状エレメント81のエレメント長L(=F+B)は、(1/8)×λ×k以上(1/4)×λ×k以下であると、所定周波数帯W(例えば、DAB規格のバンドIII)のアンテナ利得が向上する。所定周波数帯Wのアンテナ利得を向上させる点で、L字状エレメント81のエレメント長Lは、(6/40)×λ×k以上(9/40)×λ×k以下が好ましく、(7/40)×λ×k以上(8/40)×λ×k以下がより好ましい。エレメント長Lが(1/8)×λ×k未満であると、(1/8)×λ×k以上の場合に比べて、所定周波数帯Wのアンテナ利得が低下しやすい。エレメント長Lが(1/4)×λ×kを超えると、(1/4)×λ×k以下の場合に比べて、右リアアンテナ10が大きくなり、第1領域91への配置が難しくなる。
【0033】
また、右リアアンテナ10が受信する所定周波数帯Wの電波の中心波長をλとする。このとき、L字状エレメント81のエレメント長L(=F+B)は、(6/40)×λ×k以上(9/40)×λ×k以下がさらに好ましく、(7/40)×λ×k以上(8/40)×λ×k以下が最も好ましい。
【0034】
例えば、DAB規格のバンドIII(170MHz~240MHz)のアンテナ利得を向上させる場合、中心波長λは1.46mであるので、k=0.64とすると、エレメント長Lを117mm以上234mm以下に調整すればよい。
【0035】
給電電極41から第1水平エレメント11の先端部10aまでの導体長Aは、(1/8)×λ×k以上(1/4)×λ×k以下であると、所定周波数帯W(例えば、DAB規格のバンドIII)のアンテナ利得が向上する。所定周波数帯Wのアンテナ利得を向上させる点で、第1水平エレメント11の導体長Aは、(6/40)×λ×k以上(9/40)×λ×k以下が好ましく、(7/40)×λ×k以上(8/40)×λ×k以下がより好ましい。導体長Aが(1/8)×λ×k未満であると、(1/8)×λ×k以上の場合に比べて、所定周波数帯Wのアンテナ利得が低下しやすい。導体長Aが(1/4)×λ×kを超えると、(1/4)×λ×k以下の場合に比べて、右リアアンテナ10が大きくなり、第1領域91への配置が難しくなる。
【0036】
また、導体長Aは、(6/40)×λ×k以上(9/40)×λ×k以下がさらに好ましく、(7/40)×λ×k以上(8/40)×λ×k以下が最も好ましい。
【0037】
右リアアンテナ10は、第1領域91に配置される、アース用のアース電極42を有してもよい。アース電極42は、例えば、給電電極41に実装されるアンプのグランド電極が電気的に接続される。アース電極42に接続される線条アースエレメントがガラス板60に設けられてもよい。図1に示す形態では、アース電極42は、第1領域91に配置されているが、無くてもよい。この例では、アース電極42は、給電電極41に対して第1水平エレメント11の配置位置とは反対側に配置されている。
【0038】
ヒータ線33aは、ヒータ線33bに接続線50を介して接続される第1ヒータ端33aaと、右バスバー31に導通可能に接続される第2ヒータ端33abとを有する。これにより、右リアアンテナ10は、ヒータ線33aと、ヒータ線33bと、接続線50と、右バスバー31とによって囲まれるので、金属の窓枠71(特に、下枠71d)との電気的な干渉を低減でき、アンテナ利得の低下を抑制できる。
【0039】
ヒータ線33aは、窓ガラス101の車外側の表面を、回転軸201を中心に移動する不図示のワイパーが待機するエリアに設けられることで、当該エリアに待機するワイパーに付着した氷雪を溶融できる。また、この例では、給電電極41及びアース電極42は、第1水平エレメント11と回転軸201との間に位置しており、回転軸201と近接している。これにより、ワイパーを覆うカバーと給電電極41に実装されるアンプを覆うカバーとを一体化できるため、カバー部品の削減が可能となる。
【0040】
デフォッガ30は、接続線50を介してヒータ線33aとヒータ線33bとが接続されているので、全体として非対称となっている。そのため、第1短絡線34がヒータ線33aに接続されていると、ヒータ線33aに流れる電流が増大し、デフォッガ30全体の熱分布のばらつきが大きくなる場合がある。しかしながら、補助エレメント80は、ヒータ線33aから離れているので、デフォッガ30を通る加熱用の電流が第1短絡線34を介してヒータ線33aに流れ込みにくくなる。これにより、デフォッガ30全体の熱分布のばらつきがヒータ線33aに流れる電流により生じることを抑制できる。
【0041】
窓ガラス101は、ガラス板60に設けられる左リアアンテナ20を更に備えてもよい。左リアアンテナ20は、接続線50を介して第1領域91とは反対側にある第2領域92に配置される。右リアアンテナ10と左リアアンテナ20をガラス板60に設けることで、例えば、左リアアンテナ20が、右リアアンテナ10と同じ周波数帯Wを受信可能であると、2チャンネル化が可能となる。すなわち、右リアアンテナ10と左リアアンテナ20をダイバーシティアンテナとして利用してもよい。
【0042】
左リアアンテナ20は、第2アンテナの一例であり、ガラス板60に設けられるガラスアンテナである。左リアアンテナ20は、下縁61dとヒータ線33bとの間にある第2領域92に配置されている。この例では、左リアアンテナ20は、デフォッガ30のヒータ線33bの左下領域である第2領域92に設けられる導体パターンである。
【0043】
図1に示す形態では、第2領域92は、デフォッガ30内の領域ではないが、第1領域91と同様に、デフォッガ30内の領域でもよい。例えば、ヒータ線33aの第1ヒータ端33aaが、左バスバー32に導通可能に接続されてもよい。これにより、左リアアンテナ20も、ヒータ線33aと、ヒータ線33bと、接続線50と、左バスバー32とによって囲まれるので、金属の窓枠71(特に、下枠71d)との電気的な干渉を低減でき、アンテナ利得の低下を抑制できる。
【0044】
左リアアンテナ20は、所定周波数帯の電波を受信可能に形成されており、その所定周波数帯における周波数で共振する。例えば、左リアアンテナ20は、垂直偏波を受信し、周波数が30MHz~300MHzのVHF帯の電波の送受(例えば、DAB規格のバンドIIIの電波の受信)に適している。左リアアンテナ20は、周波数が300MHz~3GHzのUHF帯の電波を受信可能に形成されてもよい。
【0045】
左リアアンテナ20は、右リアアンテナ10と同一又は類似の構成を有する。左リアアンテナ20は、主な構成として、給電用の給電電極43と、水平方向Hdに延在する第2水平エレメント21とを有する。
【0046】
給電電極43は、不図示の給電ラインの一端に電気的に接続される給電部であり、第2領域92に配置されている。給電ラインの他端は、受信機等の車体側機器に電気的に接続される。この例では、給電電極43は、矩形状に形成された導体パターンである。給電電極43の形状は、円形や他の多角形などの他の形状でもよい。
【0047】
第2水平エレメント21は、給電電極43に電気的に接続されるアンテナエレメントであり、第2領域92に配置されている。この例では、第2水平エレメント21は、給電電極43を始点に負のX軸方向に先端部20aまで直線的に延伸する線条パターンである。
【0048】
補助エレメント80は、右リアアンテナ10から離れているだけでなく、左リアアンテナ20からも離れて配置されている。補助エレメント80は、複数のヒータ線のうち少なくとも2本のヒータ線をそれぞれ短絡する第2短絡線35及び第3短絡線36を更に有する。第2短絡線35及び第3短絡線36は、図1に示す形態では、第1短絡線34と同じ構成を有するが、第1短絡線34と異なる構成を有してもよい。
【0049】
第1短絡線34、第2短絡線35及び第3短絡線36は、水平方向Hdに互いに離れて配置されていることで、右リアアンテナ10及び左リアアンテナ20の垂直偏波のアンテナ利得が向上する。また、第2短絡線35は、デフォッガ30の水平方向Hdにおける中心を通り、垂直方向Vdに延伸する。すなわち、第2短絡線35は、右バスバー31から左バスバー32までの水平方向Hdの距離を略二等分するように配置される。
【0050】
第2短絡線35は、第1短絡線34と第3短絡線36との間に位置する。第2短絡線35から第1短絡線34までの水平方向Hdでの距離H1は、第2短絡線35から第3短絡線36までの水平方向Hdでの距離H2と異なってもよいが、距離H2と等しいことがより好ましい。距離H1と距離H2とが等しいことで、右リアアンテナ10及び左リアアンテナ20の垂直偏波のアンテナ利得が向上する。
【0051】
右リアアンテナ10が受信する所定周波数帯Wの電波の最短波長をλmin、所定周波数帯Wの電波の最長波長をλmax、ガラス板60の波長短縮率をk、とする。λminは、所定周波数帯Wの上限周波数の波長を表し、λmaxは、所定周波数帯Wの下限周波数の波長を表す。このとき、距離H1及び距離H2は、(1/4)×λmin×k以上(1/4)×λmax×k以下であると、所定周波数帯W(例えば、DAB規格のバンドIII)のアンテナ利得が向上する。所定周波数帯Wのアンテナ利得を向上させる点で、距離H1及び距離H2は、(9/40)×λmin×k以上(9/40)×λmax×k以下が好ましく、(8/40)×λmin×k以上(8/40)×λmax×k以下がより好ましい。距離H1及び距離H2が(1/4)×λmin×k未満であると、(1/4)×λmin×k以上の場合に比べて、所定周波数帯Wのアンテナ利得が低下しやすい。距離H1及び距離H2が(1/4)×λmax×kを超えると、(1/4)×λmax×k以下の場合に比べて、所定周波数帯Wのアンテナ利得が低下しやすい。
【0052】
図1に示す形態では、補助エレメント80は、第2領域92に配置されるL字状エレメント84を有する。L字状エレメント84は、垂直方向Vdに延在する垂直部85と、水平方向Hdに延在する水平部86とを有する。この例では、垂直部85は、ヒータ線33bから負のY軸方向の終端部まで直線的に延伸する線条エレメントであり、水平部86は、垂直部82の終端部から負のX軸方向の先端部まで直線的に延伸する線条エレメントである。
【0053】
第2水平エレメント21と補助エレメント80(具体的には、第3短絡線36又はL字状エレメント84)との位置関係は、第1水平エレメント11と補助エレメント80(具体的には、第1短絡線34又はL字状エレメント81)との位置関係と同様である。
【0054】
図2は、第1実施形態における車両用窓ガラスの一構成例を平面視で示す部分拡大図である。第1短絡線34の端部34bは、ヒータ線33bに位置し、第1水平エレメント11に近接する。図2では、第1短絡線34の端部34bから第1領域91に向けて延びる仮想的な延長線37は、第1水平エレメント11と交差する。図2では、延長線37は、垂直部82と重複する。延長線37が第1水平エレメント11と交差する形態であれば、第1水平エレメント11は、垂直方向Vdに延在する第1短絡線34に比較的近い位置に配置されるので、垂直偏波を受信する際の右リアアンテナ10のアンテナ利得が向上する。
【0055】
なお、L字状エレメント81は、水平部83と水平部87との少なくとも一方を有してもよい。水平部87は、垂直部82から負のX軸方向に延伸するエレメントであり、第1水平エレメント11と容量結合可能な距離で第1水平エレメント11に近接する。水平部83と水平部87は、第1領域91のうち、第1水平エレメント11とヒータ線33bとに挟まれた領域に位置する。
【0056】
図3は、第1実施形態における車両用窓ガラスの第1変形例を平面視で示す部分拡大図である。第1短絡線34の端部34bから第1領域91に向けて延びる仮想的な延長線37は、第1水平エレメント11と交差しなくてもよい。最短距離G(この場合、第1水平エレメント11の先端部10aからL字状エレメント81までの最短距離)が長さJよりも短ければ、第1水平エレメント11は補助エレメント80に近接する。このように近接すると、第1水平エレメント11の少なくとも一部は、補助エレメント80の少なくとも一部(この場合、L字状エレメント81の少なくとも一部)と容量結合する。この容量結合により、上述の通り、右リアアンテナ10のアンテナ利得(特に、垂直偏波の受信時のアンテナ利得)が向上する。
【0057】
図4は、第1実施形態における車両用窓ガラスの第2変形例を平面視で示す部分拡大図である。水平部83は、第1領域91のうち、第1水平エレメント11とヒータ線33aとに挟まれた領域に位置してもよい。最短距離Gが長さJよりも短ければ、第1水平エレメント11は補助エレメント80に近接するので、第1水平エレメント11の少なくとも一部は、補助エレメント80の少なくとも一部(この場合、L字状エレメント81の少なくとも一部)と容量結合する。この容量結合により、上述の通り、右リアアンテナ10のアンテナ利得(特に、垂直偏波の受信時のアンテナ利得)が向上する。
【0058】
図5は、第1実施形態における車両用窓ガラスの第3変形例を平面視で示す部分拡大図である。L字状エレメント81の垂直部82は、第1短絡線34の端部34bに直接接続されるのではなく、ヒータ線33bの一部を介して間接的に接続されてもよい。図5では、垂直部82は、第1短絡線34の端部34bを始点に負のY軸方向に延びているのではなく、第1短絡線34の延長線37からずれて位置している。
【0059】
図6は、第1実施形態における車両用窓ガラスの第4変形例を平面視で示す部分拡大図である。第1短絡線34の端部34bは、ヒータ線33bに位置してもよく、この場合、端部34bは、第1水平エレメント11に近接する。図6は、L字状エレメント81が無い形態を示す。端部34bが第1水平エレメント11に近接するので、第1水平エレメント11の少なくとも一部は、補助エレメント80の少なくとも一部(この場合、ヒータ線33bと第1短絡線34との少なくとも一部)と容量結合する。この容量結合により、上述の通り、右リアアンテナ10のアンテナ利得(特に、垂直偏波の受信時のアンテナ利得)が向上する。
【0060】
図7は、第1実施形態における車両用窓ガラスの第5変形例を平面視で示す部分拡大図である。第1水平エレメント11は、給電電極41を始点にヒータ線33bの側に延伸する接続エレメント12を介して、給電電極41に電気的に接続されてもよい。垂直方向Vdに延在する接続エレメント12の存在によって、右リアアンテナ10のアンテナ利得(特に、垂直偏波の受信時のアンテナ利得)が向上する。
【0061】
図8は、第2実施形態における車両用窓ガラスの一構成例を平面視で示す図である。図8に示す窓ガラス102は、車体後部の窓枠に取り付けられる車両用窓ガラスの一例である。上述の実施形態と同様の点についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。
【0062】
第1短絡線34は、少なくとも一つの間隙部38を有してもよいし、第3短絡線36は、少なくとも一つの間隙部39を有してもよい。間隙部38が設けられていることにより、右リアアンテナ10のアンテナ利得が向上する。間隙部39が設けられていることにより、左リアアンテナ20のアンテナ利得が向上する。例えば、第1短絡線34のうち間隙部38から負のY軸方向に端部34bまで延伸する線分34dと、第3短絡線36のうち間隙部39から負のY軸方向に端部36bまで延伸する線分36dとにより、所定周波数帯Wの電波により生ずる定在波をキャンセルできる。線分34dは、端部34eから端部34bまでの部位であり、線分36dは、端部36eから端部36bまでの部位である。さらに、端部34b(又は、垂直部82)と第1水平エレメント11とを容量結合させ、端部34eから当該容量結合を経由して給電電極41までのL字状の経路長を約(1/4)×λ×kに調整することで、右リアアンテナ10のアンテナ利得が向上する。同様に、端部36b(又は、垂直部85)と第2水平エレメント21とを容量結合させ、端部36eから当該容量結合を経由して給電電極43までのL字状の経路長を約(1/4)×λ×kに調整することで、左リアアンテナ20のアンテナ利得が向上する。
【0063】
デフォッガ30は、垂直方向Vdにヒータ線33aから最も遠いヒータ線33kを含む。ヒータ線33kは、第4ヒータ線の一例である。補助エレメント80は、ヒータ線33kに対してヒータ線33aとは反対側にある第3領域93に配置される第1調整線110を有してもよい。第1調整線110は、ヒータ線33kに接続される導体エレメントであればよい。また、第1調整線110は、ヒータ線33kと第3短絡線36との接続点に接続される導体エレメントでもよい。第1調整線110の存在により、右リアアンテナ10及び左リアアンテナ20の少なくとも一方のアンテナ利得が向上する。
【0064】
図8に示す例では、第1調整線110は、垂直方向Vdに延在する垂直部111と水平方向Hdに延在する水平部112とを有するL字状エレメントである。このL字状エレメントの長さを調整することで、所定周波数帯Wのうち特定の周波数帯の利得を高められる。
【0065】
補助エレメント80は、第2調整線120を有してもよい。第2調整線120は、左バスバー32に接続されてもよいし、第1調整線110とヒータ線33kとの接続点よりも左バスバー32側のヒータ線33kに接続されてもよい。第2調整線120は、第3領域93に配置されている。第2調整線120は、第1調整線110に近接していることで、第1調整線110と容量結合する。この容量結合により、右リアアンテナ10及び左リアアンテナ20の少なくとも一方のアンテナ利得が更に向上する。この容量結合により、所定周波数帯Wのうち特定の周波数帯の利得をさらに高められる。
【0066】
図8に示す例では、第2調整線120は、垂直方向Vdに延在する垂直部121と水平方向Hdに延在する水平部122とを有するL字状エレメントである。水平部122は、水平部112と近接し、水平方向Hdに互いに逆向きに延伸している。
【0067】
次に、図9,10,11に示す比較形態と図1に示す第1実施形態とについて、アンテナ利得の測定結果の一例について説明する。
【0068】
図9,10,11に示す比較形態は、図示していない箇所については、図1に示す第1実施形態と同じである。図9は、第1比較形態における車両用窓ガラスを平面視で示す部分拡大図である。図9に示す窓ガラス100Bは、図1の第1実施形態から、ヒータ線33a及び接続線50を削除した形態を示す。図10に示す窓ガラス100Cは、第2比較形態における車両用窓ガラスを平面視で示す部分拡大図である。図10は、図9の第1比較形態に、ヒータ線33bbを追加した形態を示す。図11は、第3比較形態における車両用窓ガラスを平面視で示す部分拡大図である。図11に示す窓ガラス100Dは、図10の第2比較形態から、垂直部82の一部を削除した形態を示す。
【0069】
図12は、DAB規格のバンドIIIのアンテナ利得の測定結果の一例を示す図である。ケースC1~C5は、それぞれ、窓ガラス101の左リアアンテナ20、窓ガラス101の右リアアンテナ10、窓ガラス100Bの右リアアンテナ10、窓ガラス100Cの右リアアンテナ10、窓ガラス100Dの右リアアンテナ10を表す。図12の縦軸の数値は、水平面内の車両後方側半周範囲を所定の角度毎に測定されたアンテナ利得の平均値を表す。表1は、図12の横軸の各周波数で測定された平均値を更に平均した値(平均利得)を表す。
【0070】
【表1】
【0071】
ヒータ線33a及び接続線50がないケースC3は、ヒータ線33a及び接続線50があるケースC1,C2に比べて、アンテナ利得が低くなる結果が得られた。つまり、アンテナがデフォッガ内にある方が、アンテナ利得が高くなる結果が得られた。また、ヒータ線33bbがあるケースC4は、ヒータ線33bbがないケースC3に比べて、アンテナ利得が低くなる結果が得られた。つまり、デフォッガ線とL字エレメントの水平線とが近接しすぎると、アンテナ利得が低くなる結果が得られた。また、第1水平エレメント11に近接する2本のヒータ線の短絡部分がないケースC5は、当該短絡部分があるケースC4に比べてアンテナ利得が低くなる結果が得られた。つまり、第1水平エレメント11に近接する2本のヒータ線の短絡部分がないと、アンテナ利得が低くなる結果が得られた。
【0072】
なお、図12の測定時において、第1実施形態(図1)及び各比較形態(図9,10,11)の各部の寸法は、単位をmmとすると、
A:130
B:140
C:5
D:20
E:40
F:15
G:5
H1:220
H2:220
I:260
隣り合うヒータ線の間隔(J):10
ヒータ線33bとヒータ線33bbとの間隔(図10):10
ヒータ線33bとヒータ線33bbとの間の削除部分の長さ(図11):10
である。
【0073】
以上、実施形態を説明したが、本開示の技術は上記の実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【0074】
例えば、第1アンテナが配置される第1領域は、複数のヒータ線のうちで最も上方に位置するヒータ線30kと2番目に上方に位置するヒータ線30jとの間にある領域でもよい。あるいは、第1アンテナが配置される第1領域は、最も上方に位置するヒータ線と最も下方に位置するヒータ線とを除く複数のヒータ線のうちで、隣り合う中間のヒータ線の間にある領域(例えば、ヒータ線33bとヒータ線33cとの間の領域)でもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 右リアアンテナ
10a 先端部
11 第1水平エレメント
12 接続エレメント
20 左リアアンテナ
21 第2水平エレメント
30 デフォッガ
31 右バスバー
32 左バスバー
33a~33k ヒータ線
33aa 第1ヒータ端
33ab 第2ヒータ端
34 第1短絡線
34a 短絡部分
34b 端部
35 第2短絡線
36 第3短絡線
37 延長線
38,39 間隙部
41 給電電極
42 アース電極
43 給電電極
44 アース電極
50 接続線
60 ガラス板
71 窓枠
80 補助エレメント
81,84 L字状エレメント
82,85 垂直部
83,86,87 水平部
91 第1領域
92 第2領域
93 第3領域
101,102 窓ガラス
110 第1調整線
120 第2調整線
201 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12