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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】印刷ロール
(51)【国際特許分類】
   B41F 31/26 20060101AFI20230616BHJP
   B41F 17/26 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
B41F31/26 Z
B41F17/26
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019135277
(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公開番号】P2021017026
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 敏治
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 宏幸
【審査官】井出 元晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-257491(JP,A)
【文献】特表2006-504550(JP,A)
【文献】実開平04-009741(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0236543(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008034758(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102009028202(DE,A1)
【文献】特表2003-511278(JP,A)
【文献】特開平09-267467(JP,A)
【文献】実開昭62-102636(JP,U)
【文献】特開2010-173230(JP,A)
【文献】特開2010-143212(JP,A)
【文献】特開2012-240331(JP,A)
【文献】特開2009-061706(JP,A)
【文献】特開平07-241982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 31/26
B41F 17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を有し、外周面にインキが付着する外筒と、
前記外筒内に嵌合する内筒と、
前記内筒の外周面および前記外筒の内周面の少なくともいずれかに設けられ、内部に温度調節媒体が流通する第1熱交換流路と、
前記内筒の軸方向外側に配置される蓋部材と、
前記内筒の軸方向外側を向く外側面および前記蓋部材の軸方向内側を向く内側面の少なくともいずれかに設けられ、内部に温度調節媒体が流通する第2熱交換流路と、
前記内筒内に嵌合し軸方向に延びる軸部材と、
前記内筒の内周面および前記軸部材の外周面の少なくともいずれかに設けられ、内部に温度調節媒体が流通する環状流路と、を備え、
前記第1熱交換流路は、前記中心軸回りの周方向に向かうに従い前記中心軸の軸方向に向けて螺旋状に延び、
前記第2熱交換流路は、軸方向から見て、前記中心軸を中心とした放射状に形成され、
前記環状流路は、前記中心軸回りの周方向に延び、前記第2熱交換流路の径方向の内端部と接続され、
前記第2熱交換流路と前記第1熱交換流路とが、互いに連通し、
温度調節媒体は、前記環状流路から前記第2熱交換流路を通って、前記第1熱交換流路へ流入する、
印刷ロール。
【請求項2】
前記第2熱交換流路の径方向の外端部と、前記第1熱交換流路の軸方向の端部とが、接続される、
請求項1に記載の印刷ロール。
【請求項3】
当該印刷ロールが前記中心軸回りの周方向のうちロール回転方向に回転させられることで、前記第1熱交換流路の温度調節媒体が、軸方向のうち所定方向に案内される、
請求項1または2に記載の印刷ロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、缶の胴部に印刷を施すオフセット印刷装置では、稼働中の摩擦熱などにより、例えばファンテンローラー、ディストリビューターローラー、オッシレーティングロール等の各種印刷ロールの温度が次第に上昇し、印刷ロールの外周面に付着するインキの粘度が変化して、印刷品質に影響を及ぼす場合があった。また、稼働開始からしばらくは、印刷ロールの温度が低く、やはり印刷品質に影響する場合がある。このため、印刷ロールを所定の温度範囲に維持する提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の印刷機の温度調節方法および装置では、温度調節媒体として温調水を用い、ローラの軸心部に温調水を通水することによりローラの温度調節を行っている。
また特許文献2に記載のインキ装置の冷却構造では、冷却ローラが導入管および中空部を備えており、冷却水が、供給配管から導入管を通して中空部に供給される。この冷却水は、中空部から戻り配管に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-347214号公報
【文献】特開平6-344538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の印刷ロールでは、例えば水(冷水)や湯(温水)等の温度調節媒体と印刷ロールとの間で、効率よく熱交換を行い、印刷ロールを所定の温度範囲に早期に到達させ、かつ所定の温度範囲に安定して維持する点において、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、温度調節媒体との間で効率よく熱交換が行える印刷ロールを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の印刷ロールの一つの態様は、中心軸を有し、外周面にインキが付着する外筒と、前記外筒内に嵌合する内筒と、前記内筒の外周面および前記外筒の内周面の少なくともいずれかに設けられ、内部に温度調節媒体が流通する第1熱交換流路と、前記内筒の軸方向外側に配置される蓋部材と、前記内筒の軸方向外側を向く外側面および前記蓋部材の軸方向内側を向く内側面の少なくともいずれかに設けられ、内部に温度調節媒体が流通する第2熱交換流路と、前記内筒内に嵌合し軸方向に延びる軸部材と、前記内筒の内周面および前記軸部材の外周面の少なくともいずれかに設けられ、内部に温度調節媒体が流通する環状流路と、を備え、前記第1熱交換流路は、前記中心軸回りの周方向に向かうに従い前記中心軸の軸方向に向けて螺旋状に延び、前記第2熱交換流路は、軸方向から見て、前記中心軸を中心とした放射状に形成され、前記環状流路は、前記中心軸回りの周方向に延び、前記第2熱交換流路の径方向の内端部と接続され、前記第2熱交換流路と前記第1熱交換流路とが、互いに連通し、温度調節媒体は、前記環状流路から前記第2熱交換流路を通って、前記第1熱交換流路へ流入する
【0008】
この印刷ロールでは、外筒と内筒との間に螺旋状の第1熱交換流路が設けられており、第1熱交換流路には、例えば水(冷水)や湯(温水)等の温度調節媒体が流通する。これにより、第1熱交換流路を流れる温度調節媒体と、外筒との間で熱交換が行われる。
【0009】
本発明によれば、螺旋状の第1熱交換流路を流れる温度調節媒体が、第1熱交換流路を画成する各壁面に接触しやすく、例えば温度調節媒体の流速を速める等により、温度調節媒体と外筒との間で効率よく熱交換を行うことができる。したがって、インキが付着する外筒の外周面の温度を、早期に所定の温度範囲に到達させることができ、かつ、所定の温度範囲に安定して維持することができる。また外筒の外周面の温度を、該外周面の各位置において均等に維持しやすい。このため、外筒の外周面に付着するインキの粘度が安定し、印刷品質が良好に維持される。
【0010】
上記印刷ロールは、前記内筒の軸方向外側に配置される蓋部材と、前記内筒の軸方向外側を向く外側面および前記蓋部材の軸方向内側を向く内側面の少なくともいずれかに設けられ、内部に温度調節媒体が流通する第2熱交換流路と、を備え、前記第2熱交換流路は、軸方向から見て、前記中心軸を中心とした放射状に形成される。
【0011】
この場合、内筒と蓋部材との間に放射状の第2熱交換流路が設けられており、第2熱交換流路には、温度調節媒体が流通する。これにより、第2熱交換流路を流れる温度調節媒体と、蓋部材との間で熱交換が行われる。
【0012】
放射状の第2熱交換流路を流れる温度調節媒体は、第2熱交換流路を画成する各壁面に接触しやすく、例えば温度調節媒体の流速を速める等により、温度調節媒体と蓋部材との間で効率よく熱交換を行うことができる。したがって、蓋部材の温度が、早期に所定の温度範囲に到達し、かつ、所定の温度範囲に安定して維持される。また蓋部材の温度が、蓋部材の各位置において均等に維持される。
【0013】
上記構成によれば、印刷ロールの外周面のみならず、印刷ロールの軸方向の端部についても均等に温度調節できる。このため、例えば、印刷ロールの軸方向の端部の温度が低いことでインキが固着しやすくなったり、該端部の温度が高いことでインキが垂れやすくなったりするなどの不具合を抑制できる。
【0014】
上記印刷ロールにおいて、前記第2熱交換流路と前記第1熱交換流路とが、互いに連通する。
【0015】
この場合、温度調節媒体が、第2熱交換流路と第1熱交換流路とにわたって流通するので、温度調節媒体の流通系統を複雑にすることなく、簡素な構造により、温度調節媒体と、蓋部材および外筒と、の間で効率よく熱交換を行うことができる。
上記印刷ロールは、前記内筒内に嵌合し軸方向に延びる軸部材と、前記内筒の内周面および前記軸部材の外周面の少なくともいずれかに設けられ、内部に温度調節媒体が流通する環状流路と、を備え、前記環状流路は、前記中心軸回りの周方向に延び、前記第2熱交換流路の径方向の内端部と接続される。
この場合、環状流路から放射状の第2熱交換流路へと、温度調節媒体を均等に流入させることができる。このため、蓋部材の温度が、蓋部材の周方向各位置において均等に維持される。
【0016】
上記印刷ロールにおいて、前記第2熱交換流路の径方向の外端部と、前記第1熱交換流路の軸方向の端部とが、接続されることが好ましい。
【0017】
この場合、第2熱交換流路の径方向の外端部から第1熱交換流路の軸方向の端部へと、温度調節媒体がスムーズに流れる。すなわち、第2熱交換流路および第1熱交換流路を流れる温度調節媒体に、圧力損失や乱流等を生じにくくして、流速を速めるなどにより、効率よく熱交換を行うことができる。
【0022】
上記印刷ロールにおいて、当該印刷ロールが前記中心軸回りの周方向のうちロール回転方向に回転させられることで、前記第1熱交換流路の温度調節媒体が、軸方向のうち所定方向に案内されることが好ましい。
【0023】
この場合、印刷ロールがロール回転方向に回転駆動させられることで、第1熱交換流路の温度調節媒体が軸方向の所定方向に案内されるので、第1熱交換流路内を流れる温度調節媒体の流速を、印刷ロールの回転速度に応じてより速めることができる。このため、より効率的に熱交換を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一つの態様の印刷ロールによれば、温度調節媒体との間で効率よく熱交換が行える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態の印刷装置の概略構成を説明する図である。
図2】印刷ロールの要部を示す縦断面図である。
図3】(a)印刷ロールの内筒を示す側面図(縦断面図)、(b)内筒を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態の印刷ロール3について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の印刷ロール3は、印刷装置Aに用いられる。印刷装置Aは、例えば製缶工場に設置され、有底筒状の缶20の胴部の外周面に、例えば6~8色の複数色でデザインされる印刷を施す。具体的に本実施形態の印刷装置Aは、オフセット印刷装置である。印刷装置Aは、インキ付着機構Bと、缶移動機構Cと、を備える。
【0027】
インキ付着機構Bは、インキを供給する複数のインカーユニット1と、各インカーユニット1に接触してインキを写し取った後、缶20の外周面に接触して該インキを印刷する(転写する)ブランケット9を外周に備えたブランケットホイール8と、を有する。
【0028】
インカーユニット1は、インキ源2と、インキ源2に接続する中間ロール群と、中間ロール群に接続する一対のフォームロール5と、一対のフォームロール5に接続するシリンダ6と、を備える。
【0029】
中間ロール群は、複数の印刷ロール3を有する。複数の印刷ロール3は、インキ源2に設けられるファンテンローラー3aと、ファンテンローラー3aに接触するダクティングロール3bと、ダクティングロール3bに接触するディストリビューターローラー3cと、複数のラバーロール3dと、複数のオッシレーティングロール3eと、を含む。
複数のラバーロール3dおよび複数のオッシレーティングロール3eは、ディストリビューターローラー3cとフォームロール5との間に、交互に配列する。
【0030】
複数の印刷ロール3には、いわゆるスチールロール等と呼ばれる金属製の印刷ロール3が含まれる。本実施形態では複数の印刷ロール3のうち、ファンテンローラー3a、ディストリビューターローラー3cおよびオッシレーティングロール3eは、少なくともインキが付着するロール外周面が金属製である。
印刷ロール3の具体的な構成については、後述する。
【0031】
シリンダ6は、印刷装置Aの図示しないシャフト部に片持ち状態で回転自在に支持される。シリンダ6は、円筒状または円柱状であり、該シリンダ6の外周面には、例えば、円筒状のスリーブ印刷版(図示省略)が着脱可能に嵌合する。スリーブ印刷版の外周面には、缶20に転写する画像パターンと同形状にレーザー彫刻された画像部分を有する缶の印刷用凸版(以下、単に凸版と呼ぶ)が設けられる。
【0032】
ブランケットホイール8は、外周面にブランケット9を複数有する。複数のブランケット9は、ブランケットホイール8の外周面に、ホイール周方向に互いに間隔をあけて配置される。ブランケット9は、シリンダ6の外周面に装着されたスリーブ印刷版の凸版に接触し、かつ缶20の胴部にも接触する。
【0033】
缶移動機構Cは、缶20を印刷装置Aに取り入れる缶シュータ10と、缶シュータ10から供給された缶20を回転自在に保持するマンドレル11と、マンドレル11に装着された缶20を回転移動させつつ順次ブランケットホイール8へ接触させるマンドレルターレット12と、を有する。
【0034】
この印刷装置Aにおいては、複数のインカーユニット1の各インキ源2からそれぞれ異なる色のインキが、複数の印刷ロール3およびフォームロール5を介して、各シリンダ6の外周面のスリーブ印刷版の凸版に付着させられる。各シリンダ6の凸版に付着した各色のインキは、回転するブランケットホイール8上のブランケット9に画像パターンとして乗せられ、この画像パターンが、マンドレル11に保持された缶20の胴部に接触することで、缶20に所定デザインの印刷が施される。
【0035】
図2に示すように、印刷ロール3は、中心軸Oを有し、外周面にインキが付着する外筒23と、外筒23内に嵌合する内筒24と、第1熱交換流路21と、蓋部材25と、回り止めピン31と、第2熱交換流路22と、環状流路27と、軸部材26と、固定リング28と、第1シール部29と、第2シール部30と、を備える。
【0036】
本実施形態において、外筒23、内筒24、軸部材26および固定リング28は、それぞれの中心軸が共通軸上に配置される。本実施形態では、この共通軸を中心軸Oと呼ぶ。
中心軸Oが延びる方向を、軸方向と呼ぶ。内筒24が配置される軸方向位置と、蓋部材25が配置される軸方向位置とは、互いに異なる。軸方向のうち、内筒24から蓋部材25へ向かう方向を軸方向外側と呼び、蓋部材25から内筒24へ向かう方向を軸方向内側(軸方向の中央側)と呼ぶ。
中心軸Oに直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Oに接近する方向を径方向内側と呼び、中心軸Oから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
中心軸O回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。周方向のうち、印刷装置Aの稼働時に印刷ロール3が回転駆動させられる方向を、ロール回転方向Tと呼び、これとは反対の方向を、反ロール回転方向と呼ぶ。
【0037】
外筒23は、軸方向に延びる円筒状である。本実施形態では外筒23が、金属製である。
【0038】
図2図3(a)および図3(b)に示すように、内筒24は、軸方向に延びる円筒状である。
内筒24は、外周螺旋溝24aと、側部放射溝24bと、第1内周環状溝24cと、第2内周環状溝24dと、を有する。
【0039】
外周螺旋溝24aは、内筒24の外周面に形成される。外周螺旋溝24aは、内筒24の外周面から径方向内側に窪み、周方向に向かうに従い軸方向に向けて螺旋状に延びる。外周螺旋溝24aは、内筒24の軸方向の両端部間にわたって延びる1つの螺旋状の溝部を有する。
【0040】
側部放射溝24bは、内筒24の軸方向外側を向く外側面に形成される。側部放射溝24bは、内筒24の軸方向外側を向く外側面から軸方向内側に窪む。側部放射溝24bは、内筒24の一対の外側面にそれぞれ設けられる。つまり側部放射溝24bは、内筒24の軸方向の両端部に、一対設けられる。
【0041】
図3(b)に示すように、側部放射溝24bは、軸方向から見て、中心軸Oを中心とした放射状に形成される。側部放射溝24bは、複数の溝部24eを有する。複数の溝部24eは、内筒24の軸方向外側を向く外側面に、周方向に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では複数の溝部24eが、内筒24の外側面に、中心軸O回りに等ピッチで8つ配列する。各溝部24eは、径方向に沿って直線状に延びる。各溝部24eの径方向外端部は、外周螺旋溝24aに繋がる。各溝部24eの径方向内端部は、第1内周環状溝24cに繋がる。
【0042】
第1内周環状溝24cは、内筒24の内周面に形成される。第1内周環状溝24cは、内筒24の内周面から径方向外側に窪む。第1内周環状溝24cは、中心軸Oを中心とする円形環状の溝である。第1内周環状溝24cは、内筒24の軸方向の両端部に、一対設けられる。
【0043】
第2内周環状溝24dは、内筒24の内周面に形成される。第2内周環状溝24dは、内筒24の内周面から径方向外側に窪む。第2内周環状溝24dは、中心軸Oを中心とする円形環状の溝である。第2内周環状溝24dは、第1内周環状溝24cの軸方向内側に間隔をあけて配置される。第2内周環状溝24dは、一対の第1内周環状溝24cの軸方向内側に、それぞれ設けられる。つまり第2内周環状溝24dは、一対設けられる。
【0044】
図2図3(a)および図3(b)に示すように、第1熱交換流路21は、内筒24の外周面および外筒23の内周面の少なくともいずれかに設けられる。第1熱交換流路21は、内部に温度調節媒体が流通する。温度調節媒体は、例えば、水(冷水)や湯(温水)等である。
【0045】
第1熱交換流路21は、周方向に向かうに従い軸方向に向けて螺旋状に延びる。本実施形態では第1熱交換流路21が、外筒23の内周面と、内筒24の外周螺旋溝24aと、により画成される。第1熱交換流路21は、内筒24の軸方向の両端部間にわたって、螺旋状に延びる。
本実施形態では、印刷ロール3が中心軸O回りの周方向のうちロール回転方向Tに回転させられることで、第1熱交換流路21の温度調節媒体が、軸方向のうち所定方向(図2および図3(a)における左側)に案内される。
【0046】
蓋部材25は、内筒24の軸方向外側に配置される。蓋部材25は、内筒24の軸方向の両外側に、一対設けられる。蓋部材25は、中心軸Oを中心とする多段円筒状である。本実施形態では蓋部材25が、金属製である。
蓋部材25は、大径部25aと、小径部25bと、第3内周環状溝25cと、を有する。
【0047】
大径部25aは、中心軸Oを中心とする円筒状である。大径部25aの軸方向内側を向く内側面は、内筒24の径方向外側を向く外側面と接触する。つまり蓋部材25の軸方向内側を向く内側面と、内筒24の軸方向外側を向く外側面とは、互いに接触する。
大径部25aの外周面と、外筒23の内周面とは、互いに接触する。大径部25aは、外筒23内に嵌合する。具体的に大径部25aは、外筒23の軸方向の端部内に嵌合する。
大径部25aの軸方向外側を向く外側面の軸方向位置と、外筒23の軸方向外側を向く外端面の軸方向位置とは、互いに同じである。つまり大径部25aの外側面と、外筒23の外端面とは、互いに面一に配置される。
【0048】
小径部25bは、中心軸Oを中心とする円筒状である。小径部25bの外径は、大径部25aの外径よりも小さい。小径部25bは、大径部25aの軸方向外側に配置される。小径部25bは、大径部25aの軸方向外側を向く外側面から軸方向外側に突出する。小径部25bと大径部25aとは、単一の部材により一体に形成される。
【0049】
第3内周環状溝25cは、蓋部材25の内周面に形成される。第3内周環状溝25cは、蓋部材25の内周面から径方向外側に窪む。本実施形態では第3内周環状溝25cが、大径部25aの内周面に配置される。第3内周環状溝25cは、中心軸Oを中心とする円形環状の溝である。第3内周環状溝25cは、軸方向に互いに間隔をあけて複数(一対)設けられる。
【0050】
図3(b)に示すように、回り止めピン31は、内筒24の軸方向外側を向く外側面から、軸方向外側に突出する。回り止めピン31は、蓋部材25の軸方向内側を向く内側面に形成された孔部(図示省略)内に挿入される。本実施形態では回り止めピン31が、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。回り止めピン31は、内筒24と蓋部材25との、周方向の相対回転を規制する。
【0051】
図2図3(a)および図3(b)に示すように、第2熱交換流路22は、内筒24の軸方向外側を向く外側面および蓋部材25の軸方向内側を向く内側面の少なくともいずれかに設けられる。第2熱交換流路22は、内部に温度調節媒体が流通する。
【0052】
本実施形態では第2熱交換流路22が、内筒24の側部放射溝24bと、蓋部材25の軸方向内側を向く内側面と、により画成される。第2熱交換流路22は、軸方向に互いに間隔をあけて一対設けられる。一対の第2熱交換流路22は、内筒24の軸方向の両端部に配置される。
【0053】
第2熱交換流路22は、図3(b)に示すように軸方向から見て、中心軸Oを中心とした放射状に形成される。第2熱交換流路22は、複数の流路部22aを有する。複数の流路部22aは、周方向に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では複数の流路部22aが、中心軸O回りに等ピッチで8つ配列する。各流路部22aは、径方向に沿って直線状に延びる。
【0054】
各流路部22aの径方向外端部は、第1熱交換流路21に繋がる。つまり第2熱交換流路22と第1熱交換流路21とは、互いに連通する。具体的には図2に示すように、第2熱交換流路22の径方向の外端部と、第1熱交換流路21の軸方向の端部(軸方向外側の端部)とが、接続される。一対の第2熱交換流路22は、第1熱交換流路21の軸方向の両端部に接続される。
各流路部22aの径方向内端部は、環状流路27に繋がる。つまり第2熱交換流路22と環状流路27とは、互いに連通する。具体的には、第2熱交換流路22の径方向の内端部と、環状流路27の軸方向の端部(軸方向外側の端部)とが、接続される。
【0055】
環状流路27は、内筒24の内周面および軸部材26の外周面の少なくともいずれかに設けられる。環状流路27は、内部に温度調節媒体が流通する。環状流路27は、中心軸O回りの周方向に延び、第2熱交換流路22の径方向の内端部と接続される。環状流路27は、中心軸Oを中心とする円形環状である。
【0056】
本実施形態では環状流路27が、内筒24の第1内周環状溝24cと、軸部材26の外周面と、により画成される。環状流路27は、軸方向に互いに間隔をあけて一対設けられる。一対の環状流路27は、内筒24の軸方向の両端部に配置される。
本実施形態では、軸方向において、一対の環状流路27のうち一方(第1)の環状流路27Aから他方(第2)の環状流路27Bへ向かう方向が、「軸方向のうち所定方向」に相当する。
【0057】
軸部材26は、内筒24内および一対の蓋部材25内に嵌合し、軸方向に延びる。軸部材26は、内筒24および一対の蓋部材25から軸方向の両外側に突出する。
軸部材26は、導入口26aと、導入路26bと、第1連通路26cと、排出口26fと、排出路26eと、第2連通路26dと、を有する。
【0058】
導入口26aは、配管やチューブ等を介して温度調節媒体の供給源に接続される。導入口26aを通して、温度調節媒体が軸部材26の内部に導入される。
導入路26bは、軸部材26の内部に配置される。本実施形態では導入路26bが、中心軸O上に位置して軸方向に延びる流路部分を有する。
【0059】
第1連通路26cは、導入路26bと連通する。第1連通路26cは、径方向に延び、軸部材26の外周面に開口する。第1連通路26cは、一対の環状流路27のうち、一方(第1)の環状流路27Aに接続する。第1連通路26cは、一方の環状流路27Aの周方向の一部に、径方向内側から対向する。この第1連通路26cを通して、導入路26bと、一方の環状流路27Aとが連通する。
【0060】
排出口26fは、軸部材26の内部から温度調節媒体を排出する。
排出路26eは、軸部材26の内部に配置される。本実施形態では排出路26eが、導入路26bを径方向外側から囲い軸方向に延びる筒状の流路部分を有する。
【0061】
第2連通路26dは、排出路26eと連通する。第2連通路26dは、径方向に延び、軸部材26の外周面に開口する。第2連通路26dは、一対の環状流路27のうち、他方(第2)の環状流路27Bに接続する。第2連通路26dは、他方の環状流路27Bの周方向の一部に、径方向内側から対向する。この第2連通路26dを通して、排出路26eと、他方の環状流路27Bとが連通する。
【0062】
固定リング28は、蓋部材25と軸部材26とを固定する。固定リング28は、蓋部材25と軸部材26との相対移動を規制する。固定リング28は、中心軸Oを中心とする略C字状であり、図示しないボルト部材等を締め込むことにより、その内径が変化する。固定リング28は、一対の蓋部材25にそれぞれ設けられる。つまり固定リング28は、一対設けられる。固定リング28の内周面は、小径部25bの外周面と接触する。固定リング28は、小径部25bの外側に嵌合する。
【0063】
第1シール部29は、中心軸Oを中心とする円形環状である。第1シール部29は、弾性変形可能な部材からなり、例えばOリング等である。第1シール部29は、一対の第2内周環状溝24dにそれぞれ設けられる。つまり第1シール部29は、一対設けられる。第1シール部29の内周部は、軸部材26の外周面と接触する。第1シール部29の外周部は、第2内周環状溝24dの溝底と接触する。
【0064】
第2シール部30は、中心軸Oを中心とする円形環状である。第2シール部30は、弾性変形可能な部材からなり、例えばOリング等である。第2シール部30は、複数の第3内周環状溝25cにそれぞれ設けられる。つまり第2シール部30は、複数設けられる。第2シール部30の内周部は、軸部材26の外周面と接触する。第2シール部30の外周部は、第3内周環状溝25cの溝底と接触する。
【0065】
印刷ロール3に設けられる温度調節媒体の流通系統について説明する。
印刷ロール3に供給される温度調節媒体の温度は、図示しない温度調節媒体の供給源において、例えば35~40度の所定温度に調整されている。この所定温度は、インキの種類や粘度、印刷装置Aが設置される室の気温等に応じて、適宜設定される。
【0066】
温度調節媒体は、導入口26aから軸部材26の内部に導入され、導入路26bおよび第1連通路26cを通って、一方の環状流路27Aに流入する。温度調節媒体は、一方の環状流路27Aから第2熱交換流路22(一対の第2熱交換流路22のうち、一方(第1)の第2熱交換流路22。図2の右側に位置する第2熱交換流路22)を通って、第1熱交換流路21へ流入する。
【0067】
温度調節媒体は、第1熱交換流路21を流通し、第2熱交換流路22(一対の第2熱交換流路22のうち、他方(第2)の第2熱交換流路22。図2の左側に位置する第2熱交換流路22)を通って、他方の環状流路27Bへ流入する。温度調節媒体は、他方の環状流路27Bから第2連通路26dおよび排出路26eを通って、排出口26fから軸部材26の外部に排出される。
【0068】
以上説明した本実施形態の印刷ロール3では、外筒23と内筒24との間に螺旋状の第1熱交換流路21が設けられており、第1熱交換流路21には、例えば水(冷水)や湯(温水)等の温度調節媒体が流通する。これにより、第1熱交換流路21を流れる温度調節媒体と、外筒23との間で熱交換が行われる。
【0069】
本実施形態によれば、螺旋状の第1熱交換流路21を流れる温度調節媒体が、第1熱交換流路21を画成する各壁面に接触しやすく、例えば温度調節媒体の流速を速める等により、温度調節媒体と外筒23との間で効率よく熱交換を行うことができる。したがって、インキが付着する外筒23の外周面の温度を、早期に所定の温度範囲に到達させることができ、かつ、所定の温度範囲に安定して維持することができる。また外筒23の外周面の温度を、該外周面の各位置において均等に維持しやすい。このため、外筒23の外周面に付着するインキの粘度が安定し、印刷品質が良好に維持される。
【0070】
また本実施形態では、内筒24と蓋部材25との間に放射状の第2熱交換流路22が設けられており、第2熱交換流路22には、温度調節媒体が流通する。これにより、第2熱交換流路22を流れる温度調節媒体と、蓋部材25との間で熱交換が行われる。
【0071】
放射状の第2熱交換流路22を流れる温度調節媒体は、第2熱交換流路22を画成する各壁面に接触しやすく、例えば温度調節媒体の流速を速める等により、温度調節媒体と蓋部材25との間で効率よく熱交換を行うことができる。したがって、蓋部材25の温度が、早期に所定の温度範囲に到達し、かつ、所定の温度範囲に安定して維持される。また蓋部材25の温度が、蓋部材25の各位置において均等に維持される。
【0072】
上記構成によれば、印刷ロール3の外周面のみならず、印刷ロール3の軸方向の端部についても均等に温度調節できる。このため、例えば、印刷ロール3の軸方向の端部の温度が低いことでインキが固着しやすくなったり、該端部の温度が高いことでインキが垂れやすくなったりするなどの不具合を抑制できる。
【0073】
また本実施形態では、第2熱交換流路22と第1熱交換流路21とが、互いに連通する。
この場合、温度調節媒体が、第2熱交換流路22と第1熱交換流路21とにわたって流通するので、温度調節媒体の流通系統を複雑にすることなく、簡素な構造により、温度調節媒体と、蓋部材25および外筒23と、の間で効率よく熱交換を行うことができる。
【0074】
また本実施形態では、第2熱交換流路22の径方向の外端部と、第1熱交換流路21の軸方向の端部とが、接続される。
この場合、第2熱交換流路22の径方向の外端部から第1熱交換流路21の軸方向の端部へと、温度調節媒体がスムーズに流れる。すなわち、第2熱交換流路22および第1熱交換流路21を流れる温度調節媒体に、圧力損失や乱流等を生じにくくして、流速を速めるなどにより、効率よく熱交換を行うことができる。
【0075】
また本実施形態では、一対の第2熱交換流路22が、第1熱交換流路21の軸方向の両端部に接続される。
この場合、一対の第2熱交換流路22のうち、一方の第2熱交換流路22を、第1熱交換流路21へ温度調節媒体を流入させる流入路とし、他方の第2熱交換流路22を、第1熱交換流路21から温度調節媒体を流出させる流出路とすることができる。このため、温度調節媒体の流通系統を複雑にすることなく、簡素な構造によって効率よく熱交換を行うことができる。
【0076】
また本実施形態では、環状流路27が、中心軸O回りの周方向に延び、第2熱交換流路22の径方向の内端部と接続される。
この場合、環状流路27から放射状の第2熱交換流路22へと、温度調節媒体を均等に流入させることができる。このため、蓋部材25の温度が、蓋部材25の周方向各位置において均等に維持される。
【0077】
また本実施形態では、印刷ロール3がロール回転方向Tに回転駆動させられることで、第1熱交換流路21の温度調節媒体が軸方向の所定方向に案内されるので、第1熱交換流路21内を流れる温度調節媒体の流速を、印刷ロール3の回転速度に応じてより速めることができる。このため、より効率的に熱交換を行うことが可能となる。
【0078】
また本実施形態では、第1シール部29が設けられるので、環状流路27から軸部材26と内筒24との間を通して、軸方向内側に温度調節媒体が漏れ出ることが抑制される。
また本実施形態では、第2シール部30が設けられるので、環状流路27から軸部材26と蓋部材25との間を通して、軸方向外側に温度調節媒体が漏れ出ることが抑制される。
【0079】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0080】
前述の実施形態では、温度調節媒体が、水(冷水)や湯(温水)等である一例を挙げたが、これに限らない。温度調節媒体は、水および湯以外の液体や気体等でもよい。
【0081】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の印刷ロールによれば、温度調節媒体との間で効率よく熱交換が行える。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0083】
3…印刷ロール、21…第1熱交換流路、22…第2熱交換流路、23…外筒、24…内筒、25…蓋部材、26…軸部材、27…環状流路、O…中心軸、T…ロール回転方向
図1
図2
図3