(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】リソグラフィー用組成物、パターン形成方法、及び化合物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20230619BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230619BHJP
C07C 49/203 20060101ALI20230619BHJP
C07C 57/04 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
G03F7/004
G03F7/004 503
G03F7/20 521
G03F7/20 501
C07C49/203 Z
C07C57/04
(21)【出願番号】P 2019545152
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2018036344
(87)【国際公開番号】W WO2019066000
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2017189340
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】工藤 宏人
(72)【発明者】
【氏名】越後 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0242337(US,A1)
【文献】国際公開第2017/033943(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0242336(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
G03F 7/20
C07C 49/203
C07C 57/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表わされる化合物を含有するリソグラフィー用組成物。
[L
xTe(OR
1)
y] (1)
(上記式(1)中、Lは、OR
1以外の
二座以上の多座配位子
(ただし、有機酸を除く。)であり、R
1は、水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状又は炭素数3~20の分岐状若しくは環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、及び置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基のいずれかであり、xは、0~6の整数であり、yは、0~6の整数であり、xとyの合計は、1~6であり、xが2以上である場合、複数のLは同一でも異なっていてもよく、yが2以上である場合、複数のR
1は同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
上記式(1)で表わされる化合物において、xが1~6の整数である、請求項1に記載のリソグラフィー用組成物。
【請求項3】
上記式(1)で表わされる化合物において、yが1~6の整数である、請求項1又は2に記載のリソグラフィー用組成物。
【請求項4】
上記式(1)で表わされる化合物において、R
1が、置換又は無置換の炭素数1~6の直鎖状又は炭素数3~6の分岐状若しくは環状のアルキル基である、請求項1~3のいずれか1項に記載のリソグラフィー用組成物。
【請求項5】
上記式(1)で表わされる化合物において、Lがアセチルアセトナート、2,2-ジメチル-3,5-ヘキサンジオン、エチレンジアミン、及びジエチレントリアミンのいずれかである、請求項1~
4のいずれか1項に記載のリソグラフィー用組成物。
【請求項6】
レジスト用である、請求項1~
5のいずれか1項に記載のリソグラフィー用組成物。
【請求項7】
溶媒をさらに含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載のリソグラフィー用組成物。
【請求項8】
酸発生剤をさらに含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載のリソグラフィー用組成物。
【請求項9】
酸拡散制御剤をさらに含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載のリソグラフィー用組成物。
【請求項10】
重合開始剤をさらに含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載のリソグラフィー用組成物。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載のリソグラフィー用組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
前記露光したレジスト膜を現像してパターンを形成する工程と、
を含むパターン形成方法。
【請求項12】
下記式(1)で表わされる化合物。
[L
xTe(OR
1)
y] (1)
(上記式(1)中、Lは、OR
1以外の
二座以上の多座配位子
(ただし、有機酸を除く。)であり、R
1は、水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状又は炭素数3~20の分岐状若しくは環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、及び置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基のいずれかであり、xは、0~6の整数であり、yは、0~6の整数であり、xとyの合計は、1~6であり、xが2以上である場合、複数のLは同一でも異なっていてもよく、yが2以上である場合、複数のR
1は同一でも異なっていてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィー用組成物、パターン形成方法、及び化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造において、フォトレジスト材料を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われているが、近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化と高速度化に伴い、パターンルールによる更なる微細化が求められている。また、レジストパターンを形成する際に使用するリソグラフィー用の光源は、KrFエキシマレーザー(発振波長:248nm)からArFエキシマレーザー(発振波長:193nm)へと短波長化されており、さらには電子線又は極端紫外線(以下、「EUV」と称する。)(発振波長:13.5nm)の導入も見込まれている。
【0003】
しかしながら、従来の高分子系レジスト材料を用いるリソグラフィーでは、その分子量が1万~10万程度と大きく、分子量分布も広いため、パターン表面にラフネスが生じ、パターン寸法の制御が困難となり、微細化に限界がある。
【0004】
そこで、より解像性の高いレジストパターンを与えるために、種々の低分子量成分を含有するレジスト材料を用いることがこれまでに提案されている。低分子量レジスト材料は、分子サイズが小さいことから、解像性が高く、ラフネスが小さいレジストパターンを与えることが期待される。
【0005】
低分子量レジスト材料を用いた例としては、例えば、低分子量の多核ポリフェノール化合物を主成分として用いるアルカリ現像型のネガ型感放射線性組成物(例えば、特許文献1及び特許文献2)が提案されている。また、高い感度と高い耐熱性とを有する低分子量レジスト材料を用いた例としては、低分子量の環状ポリフェノール化合物を主成分として用いるアルカリ現像型のネガ型感放射線性組成物(例えば、特許文献3)も提案されている。
【0006】
更に、電子線又はEUVを用いたリソグラフィーは、その反応メカニズムが、通常の光リソグラフィーと異なる。電子線又はEUVによるリソグラフィーにおいては、数十nmの微細なパターン形成を目標としている。このように、レジストパターンの寸法が小さくなるほど、露光光源に対して高感度であるレジスト材料が求められる。特に、EUVによるリソグラフィーでは、スループットの点で、レジスト組成物の高感度化を図る必要がある。
【0007】
これらの問題を改善するレジスト材料として、チタン、ハフニウム、及びジルコニウムのいずれかを含有する無機レジスト材料が提案されている(例えば、特許文献4及び特許文献5)。
【0008】
【文献】特開2005-326838号公報
【文献】特開2008-145539号公報
【文献】特開2009-173623号公報
【文献】特開2015-75500号公報
【文献】特開2015-108781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1~3では、感放射線性組成物の保存安定性について検討されていない。特許文献4では、レジスト材料の保存安定性について検討されておらず、この文献のレジスト材料についても、保存安定性をより一層良好にさせ、例えば、レジストパターンをより一層安定に得ることが求められている。また、この文献のレジスト材料についてさらなる感度の向上が求められている。特許文献5については、レジスト材料の保存安定性の評価がされているものの、特定の金属(ハフニウム、ジルコニウム)を含む錯体を含有するレジスト材料しか評価されておらず、しかもこのような金属を含む錯体を含有するレジスト材料については、感度が十分であるといえない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記事情に鑑み、優れた溶解性を有し、リソグラフィー用材料として用いると、優れた成膜性、パターン形成性、及び保存安定性をバランスよく満たすことができる化合物、リソグラフィー用組成物及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、テルルを含有する特定構造を有する化合物が溶解性に優れ、リソグラフィー用材料に用いると、優れた成膜性、パターン形成性、及び保存安定性をバランスよく満たすことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
〔1〕
下記式(1)で表わされる化合物を含有するリソグラフィー用組成物。
[LxTe(OR1)y] (1)
(上記式(1)中、Lは、OR1以外の配位子であり、R1は、水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状又は炭素数3~20の分岐状若しくは環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、及び置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基のいずれかであり、xは、0~6の整数であり、yは、0~6の整数であり、xとyの合計は、1~6であり、xが2以上である場合、複数のLは同一でも異なっていてもよく、yが2以上である場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよい。)
〔2〕
上記式(1)で表わされる化合物において、xが1~6の整数である、〔1〕のリソグラフィー用組成物。
〔3〕
上記式(1)で表わされる化合物において、yが1~6の整数である、〔1〕又は〔2〕のリソグラフィー用組成物。
〔4〕
上記式(1)で表わされる化合物において、R1が、置換又は無置換の炭素数1~6の直鎖状又は炭素数3~6の分岐状若しくは環状のアルキル基である、〔1〕~〔3〕のいずれかのリソグラフィー用組成物。
〔5〕
上記式(1)で表わされる化合物において、Lが、二座以上の配位子である、〔1〕~〔4〕のいずれかのリソグラフィー用組成物。
〔6〕
上記式(1)で表わされる化合物において、Lがアセチルアセトナート、2,2-ジメチル-3,5-ヘキサンジオン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、及びメタクリル酸のいずれかである、〔1〕~〔5〕のいずれかのリソグラフィー用組成物。
〔7〕
レジスト用である、〔1〕~〔6〕のいずれかのリソグラフィー用組成物。
〔8〕
溶媒をさらに含む、〔1〕~〔7〕のいずれかのリソグラフィー用組成物。
〔9〕
酸発生剤をさらに含む、〔1〕~〔8〕のいずれかのリソグラフィー用組成物。
〔10〕
酸拡散制御剤をさらに含む、〔1〕~〔9〕のいずれかのリソグラフィー用組成物。
〔11〕
重合開始剤をさらに含む、〔1〕~〔10〕のいずれかのリソグラフィー用組成物。
〔12〕
〔1〕~〔11〕のいずれかのリソグラフィー用組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
前記露光したレジスト膜を現像してパターンを形成する工程と、
を含むパターン形成方法。
〔13〕
下記式(1)で表わされる化合物。
[LxTe(OR1)y] (1)
(上記式(1)中、Lは、OR1以外の配位子であり、R1は、水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状又は炭素数3~20の分岐状若しくは環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、及び置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基のいずれかであり、xは、0~6の整数であり、yは、0~6の整数であり、xとyの合計は、1~6であり、xが2以上である場合、複数のLは同一でも異なっていてもよく、yが2以上である場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた溶解性を有し、リソグラフィー用材料として用いると、優れた成膜性、パターン形成性、及び保存安定性をバランスよく満たすことができる化合物、リソグラフィー用組成物及びパターン形成方法を提供可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する。)について説明する。なお、本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は、本実施形態に限定されない。
【0015】
本明細書にいう「溶解性」とは、安全溶媒に対して溶解しやすい性質をいう。「成膜性」とは、薄膜を形成する際、形成された膜に欠陥が生じにくい性質をいう。「高感度性」とは、パターンを得るために最小限必要なエネルギー照射量が小さい性質をいう。「パターン形成性」とは、レジストパターンを形成する際、パターン形状が良好である性質をいう。「保存安定性」とは、長期間保存しても析出物が生じにくい性質をいう。
【0016】
[化合物]
本実施形態の化合物は、下記式(1)で表わされる化合物(「テルル含有化合物」ともいう。)である。
[LxTe(OR1)y] (1)
【0017】
式(1)中、Lは、OR1以外の配位子であり、R1は、水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状又は炭素数3~20の分岐状若しくは環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、及び置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基のいずれかであり、xは、0~6の整数であり、yは、0~6の整数であり、xとyの合計は、1~6であり、xが2以上である場合、複数のLは同一でも異なっていてもよく、yが2以上である場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよい。
【0018】
本実施形態のテルル含有化合物は、優れた溶解性を有し、リソグラフィー用材料として用いると、優れた成膜性、高感度性、パターン形成性、及び保存安定性をバランスよく満たすことができる。本実施形態のテルル含有化合物は、元素の中でも、キセノンに続いて高い増感効果を有するテルル原子を含有し、これに主に起因して、リソグラフィー(特にEUVを用いたリソグラフィー)において高い増感効果を得ることができ、その結果、高感度性及びパターン形成性に優れる。
【0019】
R1としては、水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状又は炭素数3~20の分岐状若しくは環状アルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、及び置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基のいずれかが挙げられる。R1が複数ある場合、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0020】
R1の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イコシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロイコシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基、ピレニル基、ビフェニル基、ヘプタセン基、ビニル基、アリル基、イコシニル基が挙げられる。これらの基は、異性体を包含する概念であり、例えば、ブチル基は、n-ブチル基に限らず、イソブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であってもよい。また、これらの基は、炭素数20を超えない範囲で置換基を有していてもよく、置換基としては、カルボキシル基、アクリル基、及びメタクリル基、並びにこれらの基を含有する基からなる群より選ばれる1種の官能基が挙げられる。但し、xが0であり、yが4である場合、全てのR1がメチル基でなくてもよい。
【0021】
これらの中でも、R1は、高感度性、及び原料入手性の観点から、炭素数1~6の直鎖状又は炭素数3~6の分岐状若しくは環状アルキル基であることが好ましく、炭素数1~4の直鎖状又は炭素数3~4の分岐状若しくは環状アルキル基であることがより好ましい。置換基を有する場合、置換基としては、カルボキシル基、カルボキシル基を含有する基、アクリレート基及びメタクリレート基からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、アクリレート基及びメタクリレート基からなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。
【0022】
Lは、OR1以外の配位子であり、単座配位子であってもよく、二座以上の多座配位子であってもよい。Lが複数ある場合、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0023】
単座配位子の具体例としては、アクリレート、メタクリレート、アミン、クロロ、シアノ、チオシアノ、イソチオシアナノ、ニトロ、ニトリト、トリフェニルホスフィン、ピリジン等が挙げられる。多座配位子の具体例としては、例えば、エチレンジアミン、セチルアセトナート、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン四酢酸、シクロペンテン等が挙げられる。
【0024】
Lは、保存安定性の観点から、二座以上の多座配位子であることが好ましく、アセチルアセトナート、2,2-ジメチル-3,5-ヘキサンジオン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、及びメタクリル酸のいずれかであることがより好ましい。
【0025】
xは、0~6の整数であり、yは、0~6の整数であり、x+yは、1~6である。xは、安全溶媒に対する溶解性の観点から、1~6の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましく、1又は2であることがさらに好ましい。yは、高感度性の観点から、1~6の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましく、2~4の整数であることがさらに好ましい。
【0026】
本実施形態において、式(1)で表される化合物は、例えば、以下の方法により得られる。すなわち、金属テルル、又は二酸化テルルを塩素ガス流通下で500℃程度に加熱させることにより、四塩化テルルを得る。次に、得られた四塩化テルルと、ナトリウムアルコキシドとを無触媒で、氷冷下で反応させることにより、式(1)において、xが0であり、yが1以上であるアルコキシテルル化合物を得ることができる。例えば、下記式(TOX-1)で表されるテトラエトキシテルル(IV)は、四塩化テルルと、エタノールとを反応させることにより得られる。また、金属テルルを陽極に用いた電気分解によってもテルル含有化合物を得ることができる。
Te(OEt)4 (TOX-1)
【0027】
本実施形態において、OR1以外の配位子であるLは、各種の方法で得ることができる。例えば、テトラヒドロフラン等の有機溶媒に溶解させたアルコキシテルル化合物又は金属テルルと、テトラヒドロフラン等の有機溶媒に溶解させた配位子であるLとを混合撹拌し、有機溶媒を除去することにより、Lが配位したテルル含有化合物を得ることができる。具体例を以下に示す。すなわち、アルコキシテルル化合物として、式(TOX-1)で表されるテトラエトキシテルル(IV)を用いる場合、攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mLの容器に、20mLのテトラヒドロフランに溶解させた式(TOX-1)で表されるテトラエトキシテルル(IV)1.0gを入れ、5mLのテトラヒドロフランに溶解させたアセチルアセトン0.6gをさらに加え、1時間還流し、溶剤を減圧下で除去することにより、下記式(TOX-2)で表される化合物を得ることができる。
【0028】
【0029】
また、特に限定されるものではないが、本実施形態における化合物の例としては、以下の化合物を挙げることができる。
【化2】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
[リソグラフィー用組成物]
本実施形態のリソグラフィー用組成物は、前記式(1)で表わされる化合物を含有する。本実施形態において、リソグラフィー用組成物中の成分の含有量、組成などを調整することにより、後述のレジスト用などの多層プロセスに利用できる。本実施形態のリソグラフィー用組成物は、本実施形態のテルル含有化合物を含むため、優れた成膜性、高感度性、パターン形成性、及び保存安定性をバランスよく満たすことができる。
【0036】
本実施形態のリソグラフィー用組成物は、レジスト用(レジスト膜形成用)以外においても適用できるが、レジスト用に好適に用いることができる。
【0037】
本実施形態のリソグラフィー用組成物において、前記式(1)で表される化合物以外に、リソグラフィー用材料(特にレジスト材料)として用いられる樹脂を含有してもよい。本明細書にいう「樹脂」は、前記式(1)で表されるテルル含有化合物、後述する溶媒、酸発生剤、酸架橋剤、酸拡散制御剤、重合開始剤、及びその他の成分を除く膜形成成分をいい、低分子量の化合物も包含する概念をいう。
【0038】
樹脂としては、特に限定されず、例えば、ナフトール樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂がフェノール類(例えば、フェノール、ナフトールなど)により変性した変性樹脂、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂がフェノール類(例えば、フェノール、ナフトールなど)により変性した変性樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール類、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、スチレン-無水マレイン酸樹脂、及びアクリル酸、ビニルアルコール、又はビニルフェノールを単量体単位として含む重合体又はこれらの誘導体などが挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、樹脂は、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、ナフトール樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂のナフトール変性樹脂、及びナフタレンホルムアルデヒド樹脂のフェノール変性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂のフェノール変性樹脂であることがより好ましい。
【0039】
樹脂の含有量は、特に限定されず、本実施形態のテルル含有化合物及び樹脂の総量100質量部に対して、1000質量部以下が好ましく、より好ましくは500質量部以下、さらに好ましくは200質量部以下、特に好ましくは100質量部以下である。
【0040】
(溶媒)
本実施形態のリソグラフィー用組成物(例えば、レジスト用組成物)は、溶媒を含有することが好ましい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-プロピル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル等の乳酸エステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸n-ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチルプロピオン酸ブチル、3-メトキシ-3-メチル酪酸ブチル、アセト酢酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、シクロペンタノン(CPN)、シクロヘキサノン(CHN)等のケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;γ-ラクトン等のラクトン類等を挙げることができるが、特に限定はされない。これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
本実施形態で使用される溶媒は、安全溶媒であることが好ましく、より好ましくは、PGMEA、PGME、CHN、CPN、2-ヘプタノン、アニソール、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル及び乳酸エチルから選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましくはPGMEA、PGME及びCHNから選ばれる少なくとも一種である。
【0042】
本実施形態において、リソグラフィー用組成物(例えば、レジスト用組成物)中の溶媒の含有量は、特に限定されないが、リソグラフィー用組成物(例えば、レジスト用組成物)100質量%に対して、固形成分の含有量が1~80質量%であり、溶媒の含有量が20~99質量%であることが好ましく、固形成分の含有量が1~50質量%であり、溶媒の含有量が50~99質量%であることがより好ましく、固形成分の含有量が2~40質量%であり、溶媒の含有量が60~98質量%であることがさらに好ましく、固形成分の含有量が2~10質量%であり、溶媒の含有量が90~98質量%であることが特に好ましい。
【0043】
本実施形態のリソグラフィー用組成物(例えば、レジスト用組成物)は、他の固形成分として、酸発生剤(P)、酸架橋剤(C)、酸拡散制御剤(Q)及びその他の成分(E)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。なお、本明細書にいう「固形成分」とは、本実施形態のリソグラフィー用組成物中、溶媒以外の成分をいう。
【0044】
(酸発生剤)
本実施形態のリソグラフィー用組成物(例えば、レジスト用組成物)は、放射線(例えば、EUV)の照射により、直接的又は間接的に酸を発生可能な酸発生剤を含有することが好ましい。酸発生剤を含有することにより、より一層優れた高感度性及び低エッジラフネスのパターンンプロファイルが得られる傾向にある。
【0045】
酸発生剤は、公知のものが使用でき、特に限定されないが、例えば、国際公開第2013/024778号の段落0077~0093に記載されている化合物を含む。酸発生剤は、これらの中でも、芳香環を有する化合物を含むことが好ましく、下記式(2-1)又は(2-2)で表される化合物(酸発生剤)であることがより好ましい。
【0046】
【0047】
式(2-1)中、R13は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状アルコキシ基、ヒドロキシル基又はハロゲン原子であり、X-は、アルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基若しくはハロゲン置換アリール基を有するスルホン酸イオン又はハロゲン化物イオンである。
【0048】
【0049】
式(2-2)中、R14は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状アルコキシ基、ヒドロキシル基又はハロゲン原子を表す。X-は、前記と同様である。
【0050】
式(2-1)で表される化合物は、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、ジフェニルトリルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、ジフェニル-4-メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジ-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル4ブトキシフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル-4-t-ブトキシフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、ジフェニル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-フェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリ(4-メトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリ(4-フルオロフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムベンゼンスルホネート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニル-p-トルエンスルホネート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウム-2-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウム-4-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウム-2,4-ジフルオロベンゼンスルホネート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウムヘキサフルオロベンゼンスルホネート、ジフェニルナフチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10-カンファースルホネート、ジフェニル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウム10-カンファースルホネート及びシクロ(1,3-パーフルオロプロパンジスルホン)イミデートからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0051】
式(2-2)で表される化合物は、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムp-トルエンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムベンゼンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム-2-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム-4-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム-2,4-ジフルオロベンゼンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロベンゼンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム10-カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10-カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウム-2-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム-4-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム-2,4-ジフルオロベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムへキサフルオロベンゼンスルホネート、ジ(4-トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジ(4-トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、ジ(4-トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、ジ(4-トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムp-トルエンスルホネート、ジ(4-トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムベンゼンスルホネート及びジ(4-トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウム10-カンファースルホネートからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0052】
式(2-1)又は(2-2)のX-が、アリール基若しくはハロゲン置換アリール基を有するスルホン酸イオンを有する酸発生剤がさらに好ましく、アリール基を有するスルホン酸イオンを有する酸発生剤が特に好ましく、ジフェニルトリメチルフェニルスルホニウム p-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウム p-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホナート、及びトリフェニルスルホニウム ノナフルオロメタンスルホナートからなる群より選ばれる1種であることが特に好ましい。
【0053】
本実施形態のリソグラフィー用組成物中の酸発生剤の含有量は、固形成分の全質量の0.001~49質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることがさらに好ましく、10~25質量%であることが特に好ましい。含有量が上記範囲内であることにより、より一層高感度性及び低エッジラフネスのパターンプロファイルが得られる傾向にある。
【0054】
(酸架橋剤)
本実施形態のリソグラフィー用組成物は、酸発生剤から発生した酸の存在したで、後述する化合物及び/又は樹脂を分子内又は分子間架橋するために酸架橋剤を含有することが好ましい。酸架橋剤としては、例えば、樹脂を架橋し得る1種以上の架橋性基を含有する化合物(架橋性基含有化合物)を含有する。
【0055】
架橋性基含有化合物としては、公知のものが使用でき、特に限定されないが、例えば、国際公開第2013/024778号の段落0096~0123に記載されている化合物が挙げられる。これらの架橋性基含有化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
本実施形態のリソグラフィー用組成物中の酸架橋剤の含有量は、固形成分の全質量の0.5~49質量%であることが好ましく、0.5~40質量%であることがより好ましく、1~30質量%であることがさらに好ましく、2~20質量%であることが特に好ましい。含有量が0.5質量%以上であることにより、レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解性の抑制効果を向上させ、残膜率がより一層低下したり、パターンの膨潤や蛇行が生じたりするのをより一層抑制できる傾向にある。一方、含有量が50質量%以下であることにより、レジストとしての耐熱性の低下をより一層抑制できる傾向にある。
【0057】
(酸拡散制御剤)
本実施形態のリソグラフィー用組成物は、放射線照射により酸発生剤から生じた酸のレジスト膜中における拡散を制御して、未露光領域での好ましくない化学反応を阻止する観点から、酸拡散制御剤を含有することが好ましい。本実施形態のリソグラフィー用組成物が酸拡散制御剤を含有することにより、リソグラフィー用組成物(特にレジスト組成物)の貯蔵安定性がより一層向上する傾向にある。また、解像度がより一層向上するとともに、放射線照射前の引き置き時間、放射線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化をより一層抑えることができ、プロセス安定性により一層優れたものとなる傾向にある。
【0058】
酸拡散制御剤は、例えば、窒素原子を含有する塩基性化合物、塩基性スルホニウム化合物、塩基性ヨードニウム化合物などの放射線分解性塩基性化合物を含有する。より詳細には、放射線分解性塩基性化合物としては、国際公開2013/024778号の段落0128~0141に記載されている化合物が挙げられる。これらの放射線分解性塩基性化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
本実施形態のリソグラフィー用組成物中の酸拡散制御剤の含有量は、固形成分の全質量の0.001~49質量%であることが好ましく、0.01~10質量%がより好ましく、0.01~5質量%であることがさらに好ましく、0.01~3質量%であることが特に好ましい。含有量が上記範囲内であることにより、解像度の低下、パターン形状、寸法忠実度等の劣化をより一層抑制できる傾向にある。また、電子戦傷者から放射線照射後加熱までの引き置き時間が長くなっても、パターン上層部の形状が劣化することがない。また、含有量が10質量%以下であることにより、感度、未露光部の現像性等の低下をより一層防ぐことができる傾向にある。また、このような酸拡散制御剤を使用することにより、リソグラフィー用組成物(特にレジスト組成物)の貯蔵安定性がより一層向上し、また解像度がより一層向上するとともに、放射線照射前の引き置き時間、放射線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化をより一層抑えることができ、プロセス安定性により一層優れたものとなる。
【0060】
(その他の成分)
本実施形態のリソグラフィー用組成物は、本発明の作用効果を阻害しない範囲で、その他の成分(以下、「任意成分」ともいう)を含有してもよい。その他の成分としては、溶解促進剤、溶解制御剤、重合開始剤、増感剤、界面活性剤、及び有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体などが挙げられ、より詳細には、国際公開2013/024778号の段落0144~0150に記載されているものが挙げられる。本明細書にいう「その他の成分」は、リソグラフィー用材料として用いる上述の化合物及び樹脂、酸発生剤、酸架橋剤、及び酸拡散制御剤を除く成分をいう。
【0061】
本実施形態のリソグラフィー用組成物に含有できる重合開始剤は露光により前記式(1)で表されるテルル含有化合物、樹脂から選ばれる1つ以上の成分の重合反応を開始させるものであれば限定されず、公知の重合開始剤を含有することができる。開始剤の例としては、限定されるものではないが、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤を挙げることができ、反応性の観点から、光ラジカル重合開始剤が好ましい。また、前記重合開始剤を含有する組成物は、ネガ型レジストパターンが得られる組成物であることが好ましい。
【0062】
光ラジカル重合開始剤の例としては、限定されるものではないが、アルキルフェノン系、アシルフォスシンオキサイド系、オキシフェニル酢酸エステル系を挙げることができ、反応性の観点から、アルキルフェノン系が好ましく、容易入手性の観点から、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン(BASF社製品名イルガキュア184)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(BASF社製品名:イルガキュア651)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン(BASF社製品名:イルガキュア1173)が好ましい。
【0063】
[各成分の配合割合]
本実施形態のリソグラフィー用組成物(例えば、レジスト用組成物)において、リソグラフィー用基材(例えば、レジスト基材)として用いる化合物及び/又は樹脂の含有量は、特に限定されないが、固形成分の全質量(レジスト基材、酸発生剤(P)、酸架橋剤(C)、酸拡散制御剤(Q)、及びその他の成分(E)などの任意に使用される成分を含む固形成分の総質量の1~99質量%であることが好ましく、より好ましくは2~90質量%、さらに好ましくは5~80質量%、特に好ましくは10~70質量%である。含有量が上記範囲内であることにより、解像度がより一層向上し、ラインエッジラフネス(LER)がより一層小さくなる傾向にある。
【0064】
本実施形態のリソグラフィー用組成物(例えば、レジスト用組成物)において、リソグラフィー用材料(すなわち、上述したテルル含有化合物及び樹脂、以下、成分(M)ともいう。)、酸発生剤(P)、酸架橋剤(C)、酸拡散制御剤(Q)、及びその他の成分(任意成分)(E)の含有量(成分(M)/酸発生剤(P)/酸架橋剤(C)/酸拡散制御剤(Q)/任意成分(E))は、固形物基準の質量%で、好ましくは1~99/0.001~49/0~49/0.001~49/0~99、より好ましくは2~90/1~40/0~10/0.01~10/0~90、さらに好ましくは5~80/3~30/0~5/0.01~5/0~80、特に好ましくは10~70/10~25/0~3/0.01~3/0~80、である。各成分の配合割合は、その総量が100質量%になるように各範囲から選ばれる。前記配合にすると、感度、解像度、現像性等の性能に優れる傾向にある。
【0065】
本実施形態のレジスト組成物は、通常は、使用時に各成分を溶媒に溶解して均一溶液とし、その後、必要に応じて、例えば、孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することにより調製される。
【0066】
[リソグラフィー用組成物(例えば、レジスト組成物)の物性等]
本実施形態のレジスト組成物は、スピンコートによりアモルファス膜を形成することができる。また、一般的な半導体製造プロセスに適用することができる。
【0067】
本実施形態のリソグラフィー用組成物(例えば、レジスト組成物)をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上であることが好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると現像液に易溶で、リソグラフィー(例えば、レジスト)に一層向いている。また、10Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、前記式(1)で表される化合物及び/又は樹脂のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するからと推測されるがこの推測により本発明は何ら限定されない。また、ディフェクトの低減効果がある。前記溶解速度は、23℃にて、アモルファス膜を所定時間現像液に浸漬させ、その浸漬前後の膜厚を、目視、エリプソメーター又はQCM法等の公知の方法によって測定し決定できる。
【0068】
本実施形態のリソグラフィー用組成物(例えば、レジスト組成物)をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により露光した部分の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05~5Å/secがより好ましく、0.0005~5Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が5Å/sec以下であると現像液に不溶で、リソグラフィー用組成物(例えば、レジスト)とすることができる。また、0.0005Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、前記式(1)で表される化合物及び/又は樹脂の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する未露光部と、現像液に溶解しない露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測されるがこの推測により本発明は何ら限定されない。また、LERの低減、ディフェクトの低減効果がある。
【0069】
[パターン形成方法]
本実施形態のパターン形成方法(レジストパターンの形成方法)は、本実施形態のリソグラフィー用組成物(レジスト組成物)を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、形成されたレジスト膜を露光する工程と、露光したレジスト膜を現像してパターン(レジストパターン)を形成する工程とを備える。本実施形態のレジストパターンは、多層プロセスにおける上層レジストとして形成することもできる。
【0070】
レジストパターンの形成方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、従来公知の基板上に前記本実施形態のレジスト組成物を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって塗布することによりレジスト膜を形成する(形成工程)。従来公知の基板とは、特に限定されず、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。より具体的には、シリコンウェハー、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が挙げられる。また、必要に応じて、前述基板上に無機系及び/又は有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。ヘキサメチレンジシラザン等による表面処理を行ってもよい。
【0071】
次に、必要に応じて、塗布した基板を加熱する。加熱条件は、レジスト組成物の配合組成等により変わるが、20~250℃が好ましく、より好ましくは20~150℃である。加熱することによって、レジストの基板に対する密着性が向上する場合があり、好ましい。次いで、可視光線、紫外線、エキシマレーザー、電子線、極端紫外線(EUV)、X線、及びイオンビームからなる群から選ばれるいずれかの放射線により、レジスト膜を所望のパターンに露光する(露光工程)。露光条件等は、リソグラフィー用組成物(レジスト用組成物)の配合組成等に応じて適宜選定される。本実施形態においては、露光における高精度の微細パターンを安定して形成するために、放射線照射後に加熱するのが好ましい。加熱条件は、リソグラフィー用組成物(レジスト用組成物)の配合組成等により変わるが、20~250℃が好ましく、より好ましくは20~150℃である。
【0072】
次いで、露光されたレジスト膜を現像液で現像することにより、所定のレジストパターンを形成する(現像工程)。前記現像液としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤又はアルカリ水溶液を用いることができる。
【0073】
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。
【0074】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等を挙げることができる。
【0075】
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(2-プロパノール)、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。
【0076】
エーテル系溶剤としては、例えば、前記グリコールエーテル系溶剤の他、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0077】
アミド系溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が使用できる。
【0078】
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0079】
前記溶剤は、複数混合してもよいし、性能を有する範囲内で、前記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果をより一層十分に奏するためには、現像液全体としての含水率が70質量%未満であり、50質量%未満であることが好ましく、30質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることがさらに好ましく、実質的に水分を含有しないことが特に好ましい。すなわち、現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、例えば、30質量%以上100質量%以下であり、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。
【0080】
アルカリ水溶液としては、例えば、モノ-、ジ-あるいはトリアルキルアミン類、モノ-、ジ-あるいはトリアルカノールアミン類、複素環式アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等のアルカリ性化合物が挙げられる。
【0081】
特に、現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を含有する現像液が、レジストパターンの解像性やラフネス等のレジスト性能を改善するため好ましい。
【0082】
現像液の蒸気圧は、20℃において、5kPa以下が好ましく、3kPa以下がさらに好ましく、2kPa以下が特に好ましい。現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0083】
5kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0084】
特に好ましい範囲である2kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0085】
現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば、特開昭62-36663号公報、特開昭61-226746号公報、特開昭61-226745号公報、特開昭62-170950号公報、特開昭63-34540号公報、特開平7-230165号公報、特開平8-62834号公報、特開平9-54432号公報、特開平9-5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることがさらに好ましい。
【0086】
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、例えば、0.001~5質量%、好ましくは0.005~2質量%、さらに好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0087】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。パターンの現像を行なう時間には特に制限はないが、好ましくは10秒~90秒である。
【0088】
また、現像を行う工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0089】
現像の後には、有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
【0090】
現像後のリンス工程に用いるリンス液としては、架橋により硬化したレジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液又は水を使用することができる。前記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。より好ましくは、現像の後に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、及びアミド系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。さらにより好ましくは、現像の後に、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。さらにより好ましくは、現像の後に、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。特に好ましくは、現像の後に、炭素数5以上の1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。パターンのリンスを行なう時間には特に制限はないが、好ましくは10秒~90秒である。
【0091】
ここで、現像後のリンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1-ブタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-ヘキサノール、シクロペンタノール、2-ヘプタノール、2-オクタノール、3-ヘキサノール、3-ヘプタノール、3-オクタノール、4-オクタノールなどを用いることができ、特に好ましい炭素数5以上の1価アルコールとしては、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノールなどを用いることができる。
【0092】
前記各成分は、複数混合してもよいし、前記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
【0093】
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、より良好な現像特性を得ることができる。
【0094】
現像後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃において0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下がさらに好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が最も好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性がより向上し、さらにはリンス液の浸透に起因した膨潤がより抑制され、ウェハ面内の寸法均一性がより良化する。
【0095】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0096】
リンス工程においては、現像を行ったウェハを前記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm~4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。
【0097】
レジストパターンを形成した後、エッチングすることによりパターン配線基板が得られる。エッチングの方法はプラズマガスを使用するドライエッチング及びアルカリ溶液、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液等によるウェットエッチングなど公知の方法で行うことができる。
【0098】
レジストパターンを形成した後、めっきを行うこともできる。前記めっき法としては、例えば、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき、金めっきなどがある。
【0099】
エッチング後の残存レジストパターンは有機溶剤で剥離することが出来る。前記有機溶剤として、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート),PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル),EL(乳酸エチル)等が挙げられる。前記剥離方法としては、例えば、浸漬方法、スプレイ方式等が挙げられる。また、レジストパターンが形成された配線基板は、多層配線基板でもよく、小径スルーホールを有していてもよい。
【0100】
本実施形態において得られる配線基板は、レジストパターン形成後、金属を真空中で蒸着し、その後レジストパターンを溶液で溶かす方法、すなわちリフトオフ法により形成することもできる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定はされるものではない。以下に、実施例における化合物の測定方法及びレジスト性能等の評価方法を示す。
【0102】
[測定方法]
(1)化合物の構造
化合物の構造は、Bruker社製品「Advance600II spectrometer」を用いて、以下の条件で、1H-NMR測定を行い、確認した。
周波数:400MHz
溶媒:CDCl3
内部標準:TMS
測定温度:23℃
【0103】
[評価方法]
(1)溶解性評価(化合物の安全溶媒溶解度試験評価)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)への室温(23℃)における溶解性を以下の評価基準により評価した。化合物を、試験管に精秤し、PGMEAを所定の濃度となるよう加え、超音波洗浄機にて30分間超音波をかけ、その後の液の状態を目視にて観察した。表中、実施例1~4の溶解性評価は、化合物A単独の溶解性評価に相当し、比較例1の溶解性評価は、CR-1単独の溶解性評価に相当する。
A:溶解量が5.0質量%以上であった
B:溶解量が3.0質量%以上5.0質量%未満であった
C:溶解量が3.0質量%未満であった
【0104】
(2)レジスト組成物の保存安定性及び成膜性評価
23℃、50%RHにてレジスト組成物を3日間静置し、析出の有無を目視にて観察することにより保存安定性を以下の評価基準により評価した。
A:均一溶液であり、析出がなかった
C:析出がみられた
調製直後の均一状態のレジスト組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布し、さらに110℃のオーブン中で露光前ベーク(PB)して、厚さ40nmのレジスト膜を作成した。作成したレジスト膜の外観を以下の評価基準により評価した。評価がAである場合には、成膜性が優れていることを示す。
A:形成された膜に大きな欠陥が見られなかった
C:形成された膜に大きな欠陥が見られた
【0105】
(3)レジスト組成物の反応性及びパターン形成性評価(方法A)
調製直後の均一状態のレジスト組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布し、さらに110℃のオーブン中で露光前ベーク(PB)して、厚さ60nmのレジスト膜を作成した。作成したレジスト膜に対して、電子線描画装置((株)エリオニクス社製品「ELS-7500」)を用いて、50nm、40nm及び30nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射した。照射後のレジスト膜を、それぞれ所定の温度で、90秒間加熱し、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を2.38質量%含有するアルカリ現像液に60秒間浸漬して現像した。その後、レジスト膜を、超純水で30秒間洗浄、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを作成した。作成したレジストパターンのラインアンドスペースを走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジー(株)製品「S-4800」)により観察し、レジスト組成物の電子線照射による反応性及びパターン形成性を評価した。
パターンを得るために必要な単位面積当たりの最小のエネルギー量、すなわち感度に基づき、以下の評価基準にて反応性を評価した。
A:50μC/cm2未満でパターンが得られた
C:50μC/cm2以上でパターンが得られた
作成したパターンの形状をSEMにて観察し、以下の評価基準にてパターン形成性を評価した。
A:矩形なパターンが得られた
B:ほぼ矩形なパターンが得られた
C:矩形でないパターンが得られた
【0106】
(4)レジスト組成物の反応性及びパターン形成性評価(方法B)
前述の、レジスト組成物の反応性及びパターン形成性評価(方法A)の、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を2.38質量%含有するアルカリ現像液に代えて、酢酸n-ブチルを用いる他は同様の方法でパターン形成性を評価した。
【0107】
(合成例1-1)CR-1の合成
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備え、底抜き可能な内容積10Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、1,5-ジメチルナフタレン1.09kg(7mol、三菱ガス化学(株)製)、40質量%ホルマリン水溶液2.1kg(ホルムアルデヒドとして28mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(関東化学(株)製)0.97mLを仕込み、常圧下、100℃で還流させながら7時間反応させた。その後、希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製試薬特級)1.8kgを反応液に加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及び未反応の1,5-ジメチルナフタレンを減圧下で留去することにより、淡褐色固体のジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂1.25kgを得た。
【0108】
続いて、ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、上記のようにして得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂100g(0.51mol)とパラトルエンスルホン酸0.05gとを仕込み、190℃まで昇温させて2時間加熱した後、攪拌した。その後さらに、1-ナフトール52.0g(0.36mol)を加え、さらに220℃まで昇温させて2時間反応させた。溶剤希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下で除去することにより、黒褐色固体の変性樹脂(CR-1)126.1gを得た。なお、変性樹脂が得られたことは、1H-NMRの測定結果により確認した。変性樹脂の分子量は、Mn:885、Mw:2220、Mw/Mn:4.17であった。
【0109】
(合成例1-2)CR-1-BOCの合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器において、前記得られた化合物(CR-1)10gとジ-t-ブチルジカーボネート(アルドリッチ社製)5.5g(25mmol)とをアセトン100mLに仕込み、炭酸カリウム(アルドリッチ社製)3.45g(25mmol)を加えて、内容物を20℃で6時間撹拌して反応を行って反応液を得た。次に反応液を濃縮し、濃縮液に純水100gを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って固形物を分離した。
得られた固形物を水洗し、減圧乾燥させ、黒色固体の変性樹脂(CR-1-BOC)を4g得た。
【0110】
(合成例2)TOX-2の合成
攪拌機、冷却管、及びビュレットを備えた内容積100mLの容器に、20mLのテトラヒドロフランに溶解させたテトラエトキシテルル(IV)(アルファエイサー(株)製品、純度85%)1.0g(2.8mmol)を入れ、5mLのテトラヒドロフランに溶解させたアセチルアセトン0.6g(6.0mmol)をさらに加えた。1時間還流させた後、溶媒を減圧留去することにより、以下の式(TOX-2)で表される化合物0.6gを得た。
【0111】
反応前後のNMRのケミカルシフトから、式(TOX-2)で表される化合物が得られていることを確認した。
【0112】
【0113】
【0114】
(合成例3)TOX-3の合成
攪拌機、冷却管、及びビュレットを備えた内容積100mLの容器に、20mLのテトラヒドロフランに溶解させたテトラエトキシテルル(IV)(アルファエイサー(株)製品、純度85%)1.0g(2.8mmol)を入れ、5mLのテトラヒドロフランに溶解させた2,2-ジメチル-3,5-ヘキサンジオン0.8g(5.6mmol)をさらに加えた。1時間還流させた後、溶媒を減圧留去することにより、以下の式(TOX-3)で表される化合物0.7gを得た。
【0115】
反応前後のNMRのケミカルシフトから、式(TOX-3)で表される化合物が得られていることを確認した。
【0116】
【0117】
【0118】
(合成例4)TOX-4の合成
攪拌機、冷却管、及びビュレットを備えた内容積100mLの容器に、20mLのテトラヒドロフランに溶解させたテトラエトキシテルル(IV)(アルファエイサー(株)製品、純度85%)1.0g(2.8mmol)を入れ、さらにメタクリル酸0.5g(5.8mmol)をさらに加えた。1時間還流させた後、溶媒を減圧留去することにより、以下の式(TOX-4)で表される化合物0.5gを得た。
【0119】
反応前後のNMRのケミカルシフトから、式(TOX-4)で表される化合物が得られていることを確認した。
【0120】
【0121】
【0122】
[実施例1~6]
テトラエトキシテルル(IV)(アルファエイサー(株)製品、純度85%)、及び合成例2~4で合成した化合物と、合成例1-1で合成したナフトール変性樹脂(CR-1)、酸発生剤(みどり化学(株)製品、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート)、酸架橋剤(三和(株)ケミカル製品「ニカラックMX270」)、酸拡散制御剤(東京化成工業(株)製品、トリオクチルアミン)、及び溶媒(東京化成工業(株)製品、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を下記表1(表中、数値は質量部を示す)に示す配合量にて、実施例1~6及び比較例1のレジスト組成物を調製した。調製した各レジスト組成物について上記(1)~(3)の評価を行った。但し、上記(1)の評価については、実施例1~6の組成物を構成する化合物A及びCR-1の溶解性、比較例1の組成物を構成するCR-1の溶解性の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0123】
【0124】
表1から明らかなように、実施例1~6で用いた化合物は、CR-1と同等に優れた安全溶媒への溶解性を有することを確認した。
【0125】
成膜性については、実施例1~6のレジスト組成物は、比較例1のレジスト組成物と同等に優れた薄膜を形成できることを確認した。
【0126】
50nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射により、実施例1~6では良好なネガ型レジストパターンが得られた。比較例1との比較からも明らかなように、実施例1で得られたレジスト組成物は、反応性及びパターン形成性がともに優れていた。
【0127】
[実施例7~12]
テトラエトキシテルル(IV)(アルファエイサー(株)製品、純度85%)、及び合成例2~4で合成した化合物と、合成例1-2で合成したナフトール変性樹脂(CR-1-BOC)、酸発生剤(みどり化学(株)製品、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート)、酸拡散制御剤(東京化成工業(株)製品、トリオクチルアミン)、及び溶媒(東京化成工業(株)製品、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を下記表2(表中、数値は質量部を示す)に示す配合量にて、実施例7~12及び比較例2のレジスト組成物を調製した。調製した各レジスト組成物について上記(1)~(4)の評価を行った。但し、上記(1)の評価については、実施例7~12の組成物を構成する化合物A及びCR-1-BOCの溶解性、比較例2の組成物を構成するCR-1-BOCの溶解性の評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0128】
【0129】
表5から明らかなように、実施例7~12で用いた化合物は、CR-1-BOCと同等に優れた安全溶媒への溶解性を有することを確認した。
【0130】
成膜性については、実施例5~8のレジスト組成物は、比較例2のレジスト組成物と同等に優れた薄膜を形成できることを確認した。
【0131】
50nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射することにより、実施例7~10では良好なポジ型レジストパターン(方法A)、実施例7~12では良好なネガ型レジストパターン(方法B)が得られた。比較例2との比較からも明らかなように、実施例7~12で得られたレジスト組成物は、反応性及びパターン形成性がともに優れていた。
【0132】
以上の結果から、本実施形態の化合物は、安全溶媒に対する溶解性が高く、この化合物を含むレジスト組成物は、保存安定性、成膜性、高感度性、及びパターン形成性に優れており、特に高感度性及びパターン形成性については、比較例1、及び2の組成物よりも優れていることが確認できた。
【0133】
なお、本発明の要件を満たす限り、実施例に記載した化合物以外の化合物も同様の効果を示す。
【0134】
本出願は、2017年9月29日出願の日本特許出願(特願2017-189340号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。