(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/56 20100101AFI20230619BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20230619BHJP
C08K 5/549 20060101ALI20230619BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20230619BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20230619BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
H01L33/56
C08L83/06
C08K5/549
A61L2/10
A61L9/20
B01J19/12 C
(21)【出願番号】P 2019028542
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】千葉 博
(72)【発明者】
【氏名】北村 健
(72)【発明者】
【氏名】武田 孔明
(72)【発明者】
【氏名】岸 寛之
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183356(JP,A)
【文献】特開2011-016074(JP,A)
【文献】特開2016-059875(JP,A)
【文献】特表2014-521227(JP,A)
【文献】特表2010-530738(JP,A)
【文献】特表2012-525467(JP,A)
【文献】特表2016-538689(JP,A)
【文献】特開2016-219505(JP,A)
【文献】特開2007-311707(JP,A)
【文献】特開2005-042099(JP,A)
【文献】特開2008-214512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/12
A61L 2/10、9/20
H01L 27/00、31/00、33/00-64
C08L 83/00-16
C08K 5/549
F21K 9/60-69
H01S 5/0225-02257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外LEDを光源とする紫外線発生部と、
紫外線透過性部材を含む紫外線導入窓と、
前記紫外線導入窓を支える支持体と、
を備え、
前記紫外線発生部の光取り出し面と前記紫外線導入窓の光導入面とが、屈折率緩和層を介して接合
し、
前記屈折率緩和層が、下記式(1)で表される環状シラノール(A1)及びその脱水縮合物(A2)を含む樹脂組成物から形成されている、紫外線照射装置。
【化1】
(式(1)中、Rは、各々独立して、フッ素原子、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~4のアルキル基、又は非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~4のアルキル基であり、nは2~5の整数である。)
【請求項2】
前記紫外線導入窓を支える支持体が、第一の筐体であり、
前記紫外線発生部及び前記屈折率緩和層が前記第一の筐体の外側に突設するように、前記紫外線導入窓が前記第一の筐体に取り付けられた、
請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記第一の筐体が、紫外線被照射体を出入する開口部を備える、
請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記紫外線導入窓を支える支持体が、第二の筐体であり、
前記紫外線発生部及び前記屈折率緩和層が前記第二の筐体に内設するように、前記紫外線導入窓が前記第二の筐体に取り付けられた、
請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
第一の筐体をさらに備える、
請求項4に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記第一の筐体が、紫外線被照射体を出入する開口部を備える、
請求項5に記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
前記紫外線発生部の光学屈折率をNdとするとき、
前記屈折率緩和層の光学屈折率が、紫外線の波長域において1.29以上Nd以下である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項8】
前記式(1)で表される環状シラノール(A1)が、下記式(10)で表される環状シラノール(A10)である、
請求項
7に記載の紫外線照射装置。
【化2】
(式(10)中、Rは、前記式(1)中のRと同義である。)
【請求項9】
前記環状シラノール(A10)が、下記式(2)~(5)で表される環状シラノール(B1)~(B4)であり、前記環状シラノール(B1)~(B4)の総量に対する前記環状シラノール(B2)の割合(モル%)をbとしたとき、0<b≦20を満たす、
請求項
8に記載の紫外線照射装置。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
(式(2)~(5)中、Rは、前記式(1)中のRと同義である。)
【請求項10】
前記紫外線発生部における発光波長のピークが、210nm以上300nm以下である、
請求項1~
9のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項11】
前記紫外線導入窓の少なくとも一部が、紫外線の光路を変える形状を有する、
請求項1~
10のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項12】
前記紫外線の光路を変える形状が、半球レンズ、凸レンズ、凹レンズ、ボールレンズ、フレネルレンズ、非球面レンズ、及び可変焦点レンズからなる群より選択される少なくとも一種である、
請求項
11に記載の紫外線照射装置。
【請求項13】
前記紫外線導入窓の形成材料が、石英、サファイア又は高透過性の樹脂である、
請求項1~
12のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項14】
前記紫外線照射装置が、殺菌、滅菌、静菌、消毒、又は除菌装置である、
請求項1~
13のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外領域の光は、菌の増殖を抑止又は抑制することができる。紫外領域の光としては、通常、紫外領域の光を放出することができる発光素子が用いられる。また、紫外領域の光を放出することができる発光素子は、低消費電力であり、長寿命の紫外線源として注目されている。また、このような紫外領域の光を放出することができる発光素子を用いる殺菌装置においては、菌の増殖を抑止又は抑制する効果を高めることが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には流体殺菌装置が開示されており、当該流体殺菌装置は、処理流路を区画する直管(筐体)と、直管の内部へ紫外線を照射する光源と、を備え、直管の一方の端部には、上記光源からの紫外線を透過させるための窓部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、紫外線照射装置を用いて紫外線発生部から発生する紫外線を被照射体に照射するとき、直接紫外線を照射するのではなく、被照射体への効率的な紫外線の照射や紫外線発生部の保護等のために窓部を通じて、紫外線が照射される装置が開示されている。しかしながら、このような紫外線照射装置では、紫外線発生部と被照射体との間に空気層が介在することになるため、発光部の光取り出し面と空気層との界面で紫外線が全反射し、紫外線照射効率の低下を引き起こし、光強度が低下しやすい。そのため、紫外線照射効率を高めた紫外線照射装置が求められている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、紫外線の照射効率が高い紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記問題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、特定の構成物を有する紫外線照射装置が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
紫外LEDを光源とする紫外線発生部と、
紫外線透過性部材を含む紫外線導入窓と、
前記紫外線導入窓を支える支持体と、
を備え、
前記紫外線発生部の光取り出し面と前記紫外線導入窓の光導入面とが、屈折率緩和層を介して接合する、
紫外線照射装置。
[2]
前記紫外線導入窓を支える支持体が、第一の筐体であり、
前記紫外線発生部及び前記屈折率緩和層が前記第一の筐体の外側に突設するように、前記紫外線導入窓が前記第一の筐体に取り付けられた、
[1]に記載の紫外線照射装置。
[3]
前記第一の筐体が、紫外線被照射体を出入する開口部を備える、
[2]に記載の紫外線照射装置。
[4]
前記紫外線導入窓を支える支持体が、第二の筐体であり、
前記紫外線発生部及び前記屈折率緩和層が前記第二の筐体に内設するように、前記紫外線導入窓が前記第二の筐体に取り付けられた、
[1]に記載の紫外線照射装置。
[5]
第一の筐体をさらに備える、
[4]に記載の紫外線照射装置。
[6]
前記第一の筐体が、紫外線被照射体を出入する開口部を備える、
[5]に記載の紫外線照射装置。
[7]
前記紫外線発生部の光学屈折率をNdとするとき、
前記屈折率緩和層の光学屈折率が、紫外線の波長域において1.29以上Nd以下である、
[1]~[6]のいずれかに記載の紫外線照射装置。
[8]
前記屈折率緩和層が、下記式(1)で表される環状シラノール(A1)及びその脱水縮合物(A2)を含む樹脂組成物から形成されている、
[1]~[7]のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【化1】
(式(1)中、Rは、各々独立して、フッ素原子、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~4のアルキル基、又は非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~4のアルキル基であり、nは2~10の整数である。)
[9]
前記式(1)で表される環状シラノール(A1)が、下記式(10)で表される環状シラノール(A10)である、
[8]に記載の紫外線照射装置。
【化2】
(式(10)中、Rは、前記式(1)中のRと同義である。)
[10]
前記環状シラノール(A10)が、下記式(2)~(5)で表される環状シラノール(B1)~(B4)であり、前記環状シラノール(B1)~(B4)の総量に対する前記環状シラノール(B2)の割合(モル%)をbとしたとき、0<b≦20を満たす、
[9]に記載の紫外線照射装置。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
(式(2)~(5)中、Rは、前記式(1)中のRと同義である。)
[11]
前記紫外線発生部における発光波長のピークが、210nm以上300nm以下である、
[1]~[10]のいずれかに記載の紫外線照射装置。
[12]
前記紫外線導入窓の少なくとも一部が、紫外線の光路を変える形状を有する、
[1]~[11]のいずれかに記載の紫外線照射装置。
[13]
前記紫外線の光路を変える形状が、半球レンズ、凸レンズ、凹レンズ、ボールレンズ、フレネルレンズ、非球面レンズ、及び可変焦点レンズからなる群より選択される少なくとも一種である、
[12]に記載の紫外線照射装置。
[14]
前記紫外線導入窓の形成材料が、石英、サファイア又は高透過性の樹脂である、
[1]~[13]のいずれかに記載の紫外線照射装置。
[15]
前記紫外線照射装置が、殺菌、滅菌、静菌、消毒、又は除菌装置である、
[1]~[14]のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、紫外線の照射効率が高い紫外線照射装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の紫外線照射装置の側面図を示す図である。
【
図2】第1実施形態の紫外線照射装置を上方向から見た図である。
【
図3】第2実施形態の紫外線照射装置の側面図を示す図である。
【
図4】第2実施形態の紫外線照射装置の側面図を示す図である。
【
図5】第2実施形態の紫外線照射装置を上方向から見た図である。
【
図6】第3実施形態の紫外線照射装置の側面図を示す図である。
【
図7】第3実施形態の紫外線照射装置を上方向から見た図である。
【
図8】紫外線導入窓の少なくとも一部に半球レンズを有するときの紫外線発生部と紫外線導入窓と支持体との構成を示す図である。
【
図9】紫外線導入窓の少なくとも一部に2以上の半球レンズを有するときの紫外線発生部と紫外線導入窓と支持体との構成を示す図である。
【
図10】
図9に示す紫外線発生部と紫外線導入窓と支持体との構成の上方向から見た図である。
【
図11】製造例10にて得られたシラノール組成物の立体異性体割合を算出する際に用いた
1H-NMRスペクトルを示す図である。
【
図12】製造例16にて得られたシラノール組成物の立体異性体割合を算出する際に用いた
1H-NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
[紫外線照射装置]
本実施形態の紫外線照射装置は、紫外LEDを光源とする紫外線発生部と、紫外線透過性部材を含む紫外線導入窓と、前記紫外線導入窓を支える支持体と、を備え、前記紫外線発生部の光取り出し面と前記紫外線導入窓の光導入面とが、屈折率緩和層を介して接合する紫外線照射装置である。
【0013】
本実施形態の紫外線照射装置は、屈折率緩和層を有することにより、紫外線発生部の光取り出し面から紫外線導入窓の光導入面への光の屈折率を制御して、光取り出し効率を高めることができる。
【0014】
(支持体)
本実施形態における支持体は、紫外線導入窓に取り付けられて、当該紫外線導入窓を支える。支持体と紫外線導入窓との取り付けの形式は特に制限されず、支持する点は1点以上であってもよく、2点以上であってもよい。支持の態様は、例えば、後述の第1~3の実施形態を挙げることができる。
【0015】
本実施形態の紫外線照射装置の一態様(第1実施形態)としては、前記紫外線導入窓を支える支持体が、第一の筐体であり、前記紫外線発生部及び前記屈折率緩和層が前記第一の筐体の外側に突設するように、前記紫外線導入窓が前記第一の筐体に取り付けられた、紫外線照射装置を挙げることができる。第一の筐体は、被照射物を囲うように又は覆うように設けられる筐体である。
図1は、第1実施形態の側面図を模式的に示す図である。
図1では、紫外線導入窓が円筒形であり、第一の筐体が円筒形である場合を例に挙げて説明するが、紫外線照射装置の構成物の形状は制限されない。第1実施形態の紫外線照射装置1は、紫外LEDを光源とする紫外線発生部2と、紫外線透過性部材を含む紫外線導入窓3と、前記紫外線導入窓を支える第一の筐体4と、を備え、紫外線発生部2と紫外線導入窓3とが屈折率緩和層5を介して接合する。また、前記紫外線発生部2及び前記屈折率緩和層5が前記第一の筐体4の外側に突設するように、前記紫外線導入窓3が前記第一の筐体4に取り付けられる。また、
図2は、
図1の第1実施形態の紫外線照射装置を上方向から見た図である。なお、
図2は、筐体4が透明である場合を仮定して、内部が透けて見えるように描いた構造図である。
【0016】
本実施形態の紫外線照射装置の一態様(第2実施形態)としては、前記紫外線導入窓を支える支持体が、第二の筐体であり、前記紫外線発生部及び前記屈折率緩和層が前記第二の筐体に内設するように、前記紫外線導入窓が前記第二の筐体に取り付けられた、紫外線照射装置を挙げることができる。第二の筐体は、前記紫外線発生部及び前記屈折率緩和層を囲うように又は覆うように設けられる筐体である。
図3は、第2実施形態の側面図を模式的に示す図である。第2実施形態の紫外線照射装置1は、紫外LEDを光源とする紫外線発生部2と、紫外線透過性部材を含む紫外線導入窓3と、前記紫外線導入窓を支える第二の筐体6と、を備え、紫外線発生部2と紫外線導入窓3とが屈折率緩和層5を介して接合する。また、前記紫外線発生部2及び前記屈折率緩和層3が前記第二の筐体6に内設するように、前記紫外線導入窓2が前記第二の筐体6に取り付けられる。
【0017】
また、第2実施形態は、
図4によっても示される。
図4は、第2実施形態の側面図(後述の
図5の線Aにおける断面図)である。
図4では、紫外線導入窓が円筒形であり、第二の筐体が円筒形である場合を例に挙げて説明するが、紫外線照射装置の構成物の形状は制限されない。このとき、第二の筐体6は2以上の部材により構成されていてもよく、紫外線導入窓3は、少なくとも1つの留め具7を用いて第二の筐体6に固定されることにより嵌め込まれていてもよい。また、
図5は、
図4の第2実施形態の紫外線照射装置を上方向から見た図である。
【0018】
本実施形態の紫外線照射装置の一態様(第3実施形態)としては、第2実施形態の紫外線照射装置に、第一の筐体をさらに備える、紫外線照射装置を挙げることができる。
図6は、第3実施形態の側面図を模式的に示す図(後述の
図7の線Aにおける断面図)である。
図6では、第一の筐体が円筒形である場合を例に挙げて説明するが、紫外線照射装置の構成物の形状は制限されない。このとき、第二の筐体6は2以上の部材により構成されていてもよく、第一の筐体4と少なくとも1つの留め具7により固定される。また、
図7は、
図6の第3実施形態の紫外線照射装置を上方向から見た図である。なお、
図7は、筐体4が透明である場合を仮定して、内部が透けて見えるように描いた構造図である。
【0019】
本実施形態の紫外線照射装置が第一の筐体を備えるとき、当該第一の筐体は、紫外線被照射体を出入する開口部を備えていてもよい。開口部の形状、大きさ、数、及び位置は特に制限されず、紫外線を照射する対象物(以下、紫外線被照射体ともいう)に応じて適宜調整することができる。上記紫外線被照射体としては、特に制限されないが、水、有機溶媒、溶液、分散液、懸濁液等の液体;空気等の気体;粉体;固体;等が挙げられる。
【0020】
本実施形態における筐体の大きさは特に制限されず、紫外線を照射する対象物に応じて適宜選択することができる。また、筐体の厚みや素材についても特に制限されない。本実施形態における筐体の形状は特に制限されず、例えば、円筒形、直方体形、長方体形、球体形等が挙げられる。
【0021】
(紫外線発生部)
本実施形態における紫外線発生部は、紫外LEDを光源とし、紫外線を発生する形態であれば特に制限されない。紫外線発生部の形態としては、特に制限されないが、例えば、発光素子と基体から構成される形態、キャビティ構造及びリッド(紫外LEDを保護する蓋)を有する形態、光学レンズを有する形態等が挙げられる。
また、本実施形態における紫外線発生部の光取り出し面とは、リッドを有する形態ではリッドの上面、光学レンズを有する形態では光学レンズの上面、それらを有しない形態では発光素子の上面を指す。光取り出し面は、光取り出し効率を上昇させるための後加工による構造、微細な周期構造を有していてもよい。
【0022】
発光素子が発する紫外線の波長は、10nm以上400nm以下であれば特に限定されない。発光素子が発する紫外線の波長における波長ピークは、殺菌効率の観点から、好ましくは210nm以上300nm以下の範囲にあり、より好ましくは250nm以上290nm以下の範囲にある。
【0023】
紫外線発生部は発光素子を含む。発光素子としては、特に限定されないが、発光層に窒化物半導体層(例えば、AlN、AlGaN、AlGaInN等)を用いたもの等が挙げられる。また、紫外線発生部は発熱するため、放熱機構が設けられていることが好ましい。放熱機構としては、特に制限されないが、空冷式、水冷式等が挙げられる。
【0024】
紫外線発生部は、公知の方法により製造したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。本実施形態の紫外線照射装置における紫外線発生部は、少なくとも1つであり、2以上であってもよい。
【0025】
(紫外線導入窓)
本実施形態における紫外線導入窓は、紫外線発生部と紫外線被照射体の間に存在する。紫外線導入窓により効率的な紫外線の照射や紫外線発生部の保護等を行うことができる。紫外線導入窓の紫外線透過率は、30%以上であることが好ましく、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。紫外線透過率が30%以上であることにより、紫外線照射装置を菌の増殖を抑止又は抑制するための装置として用いる場合、菌の増殖又は抑止の効果を高めることができる。
紫外線導入窓の紫外線透過率を30%以上とする方法としては、例えば、紫外線導入窓の形成材料として、石英、サファイア又は高透過性の樹脂を用いる方法等が挙げられる。すなわち、紫外線導入窓の形成材料は、石英、サファイア又は高透過性の樹脂であることが好ましい。これらの材料を紫外線導入窓に用いることにより、紫外線導入窓の紫外線照射による劣化を防ぐことができる。また、紫外線導入窓の形成材料は、入手容易性の観点から、石英、又は高透過性の樹脂であることが好ましい。
【0026】
高透過性の樹脂とは、紫外線の透過性が高い樹脂である。高透過性の樹脂は、紫外可視分光光度計を用いて波長250~290nmの紫外線における平均光透過率を測定したとき厚さ2mmの平板材の光透過率が30%以上であることが好ましく、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
【0027】
本実施形態における紫外線導入窓の形状は特に制限されず、例えば、円筒形、直方体形、長方体等が挙げられる。また、本実施形態における紫外線導入窓の大きさは特に制限されず、紫外線を照射する対象物及び/又は紫外線発生部の種類や大きさに応じて適宜調整される。
【0028】
本実施形態における紫外線導入窓の少なくとも一部は、紫外線の光路を変える形状を有していてもよい。紫外線導入窓の少なくとも一部が紫外線の光路を変える形状を有することにより、紫外光の集光及び/又は拡散によって紫外光の制御をすることができる。紫外線の光路を変える形状を有する面は、前記紫外線導入窓の光導入面と反対の面であることが好ましい。
【0029】
紫外線の光路を変える形状は、特に制限されないが、例えば、半球レンズ、凸レンズ、凹レンズ、ボールレンズ、フレネルレンズ、非球面レンズ、及び可変焦点レンズを挙げることができる。これらの形状は1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0030】
紫外線導入窓の少なくとも一部が例えば紫外線の光路を変える形状として半球レンズを有するとき、
図8に示す紫外線発生部と紫外線導入窓と支持体との構成が挙げられる。紫外線導入窓3は半球レンズを有する。紫外線を取り出す効率性の観点から、半球レンズ部分の中心と、紫外線発生部2の中心とが、同一線上又は付近に配置していることが好ましい。また、半球レンズの幅(直径)aは、少なくとも紫外線発生部2の光取り出し面の最大長(光取り出し面が多角形の場合は対角線)よりも大きいことが好ましい。
【0031】
紫外線導入窓の少なくとも一部が例えば紫外線の光路を変える形状を有するとき、当該形状は紫外線導入窓に2以上存在していてもよい。紫外線導入窓の少なくとも一部が例えば紫外線の光路を変える形状として2以上の半球レンズを有するとき、
図9に示す紫外線発生部と紫外線導入窓と支持体との構成が挙げられる。紫外線導入窓3は半球レンズを複数有する。このとき紫外線発生部2も半球レンズの数と同様の数を有することが好ましい。紫外線を取り出す効率性の観点から、半球レンズ部分の中心と、紫外線発生部2の中心とが、同一線上又は付近に配置していることが好ましい。
図9に示す紫外線発生部と紫外線導入窓と支持体との構成の上方向から見た図を
図10に示す。
【0032】
(屈折率緩和層)
本実施形態における屈折率緩和層は、前記紫外線発生部の光取り出し面と前記紫外線導入窓の光導入面との間に存在する。屈折率緩和層は、前記紫外線発生部の光取り出し面及び前記紫外線導入窓の光導入面各々の少なくとも一部を被覆するように存在する。屈折率緩和層は、前記紫外線発生部の光取り出し面及び前記紫外線導入窓の光導入面すべてを被覆するように存在することが好ましい。屈折率緩和層が存在することにより、紫外線発生部と紫外線導入窓との間において屈折率が急激に変化することを抑制できる。これにより、紫外線発生部の光の強度が維持されて紫外線導入窓に到達する。
【0033】
本実施形態において、前記紫外線発生部の光学屈折率をNdとするとき、前記屈折率緩和層の光学屈折率が、紫外線の波長域において1.29以上Nd以下であることが好ましい。前記屈折率緩和層の光学屈折率が1.29以上Nd以下であることにより、紫外線発生部の光取り出し面から紫外線導入窓の光導入面への光の屈折率を制御して、光取り出し効率を高めことができる。
上記光学屈折率は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
前記屈折率緩和層としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が用いられる。
【0034】
本実施形態における屈折率緩和層の剪断強度は、好ましくは6N/mm2以上40N/mm2以下である。剪断強度が6N/mm2以上40N/mm2以下であることにより、光取り出し効率がより向上する傾向にある。
【0035】
本実施形態における屈折率緩和層の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1μm以上5mm以下である。屈折率緩和層の厚みが0.1μm以上5mm以下であることにより、屈折率緩和層が屈折率を制御(緩和)するように機能し、光取り出し効率を高めることができる。本実施形態における屈折率緩和層の厚みは、より好ましくは0.1μm以上1mm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以上500μm以下である。屈折率緩和層の厚みが0.1μm以上であることにより、屈折率緩和層が屈折率を制御(緩和)するように機能することに加え、紫外線発生部の光取り出し面と紫外線導入窓の光導入面との接合を十分に行うことができる。また、屈折率緩和層の厚みが1mm以下であることにより、屈折率緩和層におけるクラックの発生や、紫外線発生部の光取り出し面及び/又は紫外線導入窓の光導入面からの屈折率緩和層の剥離の発生を抑制することができる。
【0036】
本実施形態における屈折率緩和層は、下記式(1)で表される環状シラノール(A1)及びその脱水縮合物(A2)を含む樹脂組成物から形成されていることが好ましい。本明細書において、下記式(1)で表される環状シラノール(A1)及びその脱水縮合物(A2)を含む組成物を単に硬化性組成物ともいう。また、本実施形態における屈折率緩和層は、下記式(1)で表される環状シラノール(A1)及びその脱水縮合物(A2)を含む樹脂組成物の硬化物を含むともいうことができる。
【0037】
(樹脂組成物)
上記樹脂組成物は、下記式(1)で表される環状シラノール(A1)及びその脱水縮合物(A2)を含むことにより、紫外線照射装置の形成材料に用いた際に高い出力と信頼性を実現できる。このため、本実施形態の硬化性組成物は、210nm以上300nm未満の深紫外光を発光する紫外線照射装置に好適に用いられる。
【0038】
【0039】
式(1)中、Rは、各々独立して、フッ素原子、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~4のアルキル基、又は非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~4のアルキル基である。nは2~10の整数である。
【0040】
式(1)中、Rは、各々独立して、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~4のアルキル基、又は非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。これにより、硬化性組成物は、一層高い出力と一層高い信頼性とを発現できる傾向にある。
【0041】
式(1)中、nは、2~5であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。3であることが特に好ましい。これにより、主鎖骨格の柔軟性と剛直性のバランスが取れるため、紫外線照射による耐久性が発現し、樹脂組成物が屈折率緩和層に好適に用いることができる傾向にある。
【0042】
式(1)で表される環状シラノール(A1)及びその脱水縮合物(A2)は、式(10)で表される環状シラノール(A10)、及びその脱水縮合物(A20)であることが好ましい。これにより、主鎖骨格の柔軟性と剛直性のバランスが取れるため、紫外線照射による耐久性が発現し、樹脂組成物が屈折率緩和層に好適に用いることができる傾向にある。
【0043】
【0044】
式(10)中、Rは、前記式(1)中のRと同義である。
【0045】
前記樹脂組成物は、3μmの厚みにおいて、ヘイズが5%以下であることが好ましい。シラノール組成物のヘイズが5%以下であることにより、硬化物としたときの透明性が高くなり、接着力に優れる傾向にある。前記樹脂組成物におけるヘイズを5%以下とする方法としては、例えば、式(1)で表される環状シラノール(A1)における異性体の割合を調整して結晶性の高い異性体の割合を低下させる方法や、組成物に含まれる金属量を抑える方法等が挙げられる。シラノール組成物のヘイズは、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。樹脂組成物のヘイズは、具体的には、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0046】
前記樹脂組成物は、式(1)で表される環状シラノールの脱水縮合物を含む。式(1)で表される環状シラノールの脱水縮合物とは、式(1)で表される環状シラノールが有するシラノール基の少なくとも一つが、少なくとも一つの式(1)で表される別の環状シラノール分子における少なくとも一つのシラノール基と脱水縮合し、シロキサン結合を生成する反応により得られる化合物である。式(1)で表される環状シラノールの脱水縮合物は、例えば、模式的に以下の式(20)で表すことができる。
【0047】
【0048】
式(20)中、4つのRは、前記式(1)中のRと同義である。mは、2以上の整数である。環状シラノールにおける脱水縮合するシラノール基は、いずれのシラノール基であってもよい。このとき、式(20)で表される脱水縮合物においては、2分子以上の環状シラノール構造間で2以上のシロキサン結合が形成されていてもよい。
【0049】
式(10)で表される環状シラノールの脱水縮合物としては、具体的には、以下の化合物が挙げられる。ただし、式(10)で表される環状シラノールの脱水縮合物は以下の化合物に限定されるものではない。
なお、以下の化合物における、環状シラノール骨格に対するヒドロキシ基(-OH)及びR基の配向は制限されない。また、以下の化合物におけるRは、各々独立して式(10)におけるR1~R4のいずれかである。さらに、以下の化合物におけるRの好ましい基としては、R1~R4基と同様の好ましい基を挙げることができる。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
式(10)で表される環状シラノールの脱水縮合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定によって算出した分子量が、好ましくは500~1,000,000であり、より好ましくは500~100,000であり、さらに好ましくは500~10,000である。
【0056】
前記樹脂組成物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定において、前記脱水縮合物(A2)の面積が、前記環状シラノール(A1)及び前記脱水縮合物(A2)の総面積に対して、0%超過50%以下であることが好ましい。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定により求められる各化合物の面積は、シラノール組成物中の各化合物の含有量を表す。A2の面積が0%超過50%以下であることにより、シラノール組成物を製造する際に、粘度が高くなり過ぎず、有機溶媒や水を含むシラノール組成物から有機溶媒や水を除去しやすくなる傾向にある。A2の面積は、より好ましくは0%超過40%以下であり、さらに好ましくは0%超過25%以下である。A2の面積、すなわちA2の含有量は、例えば、樹脂組成物の製造において、ヒドロシラン化合物を酸化させ環状シラノールを得るとき、酸化反応後の精製により制御することができる。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるA1及びA2の面積、すなわち、A1及びA2の含有量の測定は、具体的には実施例に記載の方法によって行うことができる。
【0057】
前記樹脂組成物は、例えば、水又はアルコールの存在下で、ヒドロシラン化合物を酸化させること等によって調製することができる。ヒドロシラン化合物は、水素を含有する四置換テトラシクロシロキサンであればいずれも使用することができ、市販品を使用することができる。ヒドロシラン化合物は、好ましくは、以下の式(8)で表される四置換テトラシクロシロキサンである。
【0058】
【0059】
式(8)中、Rは、各々独立して、フッ素原子、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~4のアルキル基、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~4のアルキルである。
【0060】
環状ヒドロシラン化合物としては、具体的には、テトラメチルテトラシクロシロキサン等が挙げられる。一般的に、前記環状ヒドロシラン化合物は、ヒドロキシ又はアルコキシ官能基を有しないが、このような官能基は、酸化反応前に一定量含まれていてもよい。
【0061】
ヒドロシラン化合物を酸化する方法としては、例えば、触媒及び/又は酸化剤を使用する方法等が挙げられる。触媒としては、例えば、Pd、Pt及びRh等の金属触媒を使用することができる。これらの金属触媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの金属触媒は、炭素等の担体に担持されていてもよい。
酸化剤としては、例えば、ペルオキシド類等を使用することができる。ペルオキシド類としては、いずれも使用することができ、例えば、ジメチルジオキシランのようなオキシラン類等が挙げられる。
ヒドロシラン化合物を酸化する方法としては、反応性、及び反応後の触媒除去が容易であるとの観点から、Pd/炭素を用いることが好ましい。
【0062】
水又はアルコールの存在下で、ヒドロシラン化合物を酸化させることによって調製される環状シラノールは、環状構造であるために、原料のSiH基の水素原子のシス、トランスに由来する、種々の異性体を含む。
前記式(8)で表される環状ヒドロシラン化合物は、クロロシランの加水分解や、ポリメチルシロキサンの平衡化重合反応により得られるが、シス、トランスに由来する異性体の割合を制御することは困難であるため、環状ヒドロシラン化合物中には様々なシス、トランスに由来した異性体が混在する。本実施形態における環状ヒドロシラン化合物のシス及びトランスとは、それぞれ、隣接する2つのヒドロキシ基又は隣接する2つのR基が環状シロキサン骨格に対し同じ配向であること(シス)、隣接する2つのヒドロキシ基又は隣接する2つのR基が環状シロキサン骨格に対し異なる配向であること(トランス)を指す。
【0063】
上述の酸化反応により製造した環状シラノールに含まれる異性体としては、以下の式(2)で表されるall-cis型の環状シラノール(B1)が挙げられる。all-cis型の環状シラノール(B1)は、式(2)によって示されるように、すべてのヒドロキシ基及びR1~R4基が、それぞれ環状シロキサン骨格に対し同じ向きで配置する。
【0064】
【0065】
式(2)中、Rは、各々独立して、フッ素原子、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~4のアルキル、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~4のアルキルである。
【0066】
式(2)で表されるall-cis型の環状シラノール(B1)によって、環状ヒドロシラン化合物から酸化反応により合成した環状シラノールが白濁する傾向にある。この現象は、all-cis型の環状シラノール(B1)が結晶性を有するためであると考えられ、特に、保存中や、-30℃にて冷凍保管した場合に顕著である。結晶性が高い環状シラノールを除去することにより、シラノール組成物中で該シラノールが結晶化して析出することを防ぎ、透明性の高いシラノール組成物が得られ、透明性の高い硬化物も得ることができる。また、結晶性の高い環状シラノールを除去することにより、シラノール組成物の接着力が向上する傾向にある。
【0067】
透明性の高いシラノール組成物を得る観点から、環状シラノール(B1)の割合を少なく抑えることが好ましい。
環状シラノール(B1)の割合を抑える方法としては、例えば、再結晶操作と結晶の除去とを組み合わせる方法等が挙げられる。
より具体的には、環状シラノールの合成で得られた生成物の良溶媒溶液に、貧溶媒を添加することにより、環状シラノール(B1)が結晶として析出する。析出した環状シラノール(B1)を除去し、可溶部の溶液を濃縮することにより、シラノール組成物中の環状シラノール(B1)の割合を抑え、透明性の高いシラノール組成物を得ることができる。
【0068】
再結晶操作を行う際、透明性の高いシラノール組成物を得る観点から、冷却温度は10℃未満が好ましい。また、環状シラノールの収量向上の観点から、貧溶媒の量(体積)は、良溶媒の等量以上、20倍以下が好ましい。
【0069】
良溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセリン、エチレングリコール、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらの良溶媒は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
貧溶媒としては、例えば、トルエン、クロロホルム、ヘキサン、ジクロロメタン、キシレン等が挙げられる。これらの貧溶媒は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
環状シラノール(B1)の割合は、合成により得られた環状シラノールを1H-NMR測定することより算出することができる。具体的には、1H-NMR測定において、環状シラノール(B1)が有するR1~R4基に含まれる水素は、環状シラノールの他の異性体が有するR1~R4基中の水素に対して、最も高磁場側にて観測される。したがって、これらの水素の積分値から環状シラノール(B1)の割合を算出する。
【0071】
ヒドロシラン化合物の酸化を行う際金属触媒を用いた場合、上述した再結晶操作により、不溶物残渣中に金属触媒中に含まれる遷移金属が残るため、結晶を除去する操作によって、ろ液中の遷移金属の割合を低減することができる。したがって、式(2)で表される環状シラノールを除くための操作によって、金属触媒が残留することに由来するシラノールの着色を低減することも可能となる。シラノール組成物の光透過性を高くする観点から、遷移金属の割合は、シラノール組成物の全重量に対し、1質量ppm未満であることが好ましい。遷移金属の割合は、具体的には、実施例に記載の方法によって測定することができる。遷移金属としては、例えば、パラジウムが挙げられる。
【0072】
また、ヒドロシラン化合物として式(8)で表される四置換テトラシクロシロキサンを原料に用いて酸化させた場合、得られるテトラヒドロキシ四置換テトラシクロシロキサンは、下記式(2)~(5)で表される環状シラノール(B1)~(B4)が混在してよく、好ましくは環状シラノール(B1)~(B4)からなる。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
式(2)~(5)中、Rは、各々独立して、フッ素原子、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~4のアルキル基、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~4のアルキル基である。
【0078】
環状シラノール(A10)は、下記式(2)~(5)で表される環状シラノール(B1)~(B4)を含有し、前記環状シラノール(B1)~(B4)の総量に対する前記環状シラノール(B2)の割合(モル%)をbとしたとき、0<b≦20を満たすことが好ましい。これにより、環状シラノールの結晶化が抑制されることにより光学的な透明性が向上する傾向にある。
【0079】
割合bを0<b≦20とする方法としては、上述したように、例えば、再結晶操作と結晶の除去とを組み合わせる方法等が挙げられる。ヒドロシラン化合物としてテトラメチルテトラシクロシロキサンを原料に用いて酸化させた場合、得られるテトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサンの1H-NMRを測定した場合、4種類の異性体の6種類のピークが観測される(ここで、trans-trans-cisについては、3種類のピークが観測される。)。R1~R4基中の水素は、高磁場側から、all-cis(環状シラノール(B1))、trans-trans-cis(環状シラノール(B3))、trans-trans-cis(環状シラノール(B3))、cis-trans-cis(環状シラノール(B2))、all-trans(環状シラノール(B4))、trans-trans-cis(環状シラノール(B3))型の順に観測されるため、かかる水素の積分値から、前記環状シラノール(B1)~(B4)のそれぞれの割合を算出する。
【0080】
式(3)で表される環状シラノール(B2)もまた結晶性を有するため、反応溶液に良溶媒を用いた場合、貧溶媒を添加することにより結晶として析出する。環状シラノール(B2)により、合成した環状シラノール(A1)が白濁する傾向にある。この現象は、cis-trans-cis型の環状シラノール(B2)が結晶性を有するためであると考えられ、特に、保存中や、-30℃にて冷凍保管した場合に顕著である。
【0081】
透明性の高いシラノール組成物を得る観点から、環状シラノール(B2)の割合は、式(1)で表される環状シラノールに対して、好ましくは0%~50%であり、より好ましくは0%~40%であり、さらに好ましくは0~35%であり、よりさらに好ましくは0%以上35%未満である。
【0082】
環状シラノール(B1)~(B4)の総量に対する前記環状シラノール(B1)の割合(モル%)をaとしたとき、0<a≦60を満たすことが好ましい。これにより、環状シラノールの結晶化が抑制されることにより光学的な透明性が向上する傾向にある。
【0083】
割合bを0<a≦60とする方法としては、例えば、(B1)を公知の方法により合成し、混合する方法が挙げられる。
【0084】
前記樹脂組成物は、上述したように、水又はアルコールの存在下で、ヒドロシラン化合物を酸化させることによって環状シラノールを調製し、当該環状シラノールの合成で得られた生成物の良溶媒溶液に貧溶媒を添加することによる再結晶、ろ過を経て、ろ過により得られる可溶部の溶液を濃縮することにより、好適に製造される。前記樹脂組成物の製造において、可溶部の溶液の濃縮は任意で行えばよく、可溶部の溶液そのものをシラノール組成物として使用してもよい。また、可溶部の溶液の濃縮では当該溶液に含まれるすべての溶媒を除去する必要はないため、前記樹脂組成物は、可溶部の溶液に含まれる溶媒の一部を留去して得られる粗濃縮物であってもよい。またさらに、前記樹脂組成物は、可溶部の溶液を濃縮した後に、溶媒で再希釈したものであってもよい。
【0085】
以上のように、樹脂組成物の好ましい態様の一つは、溶媒を樹脂組成物である。溶媒を含む樹脂組成物における溶媒の量は、特に制限されないが、樹脂組成物全量に対し、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以下である。溶媒の量の下限値は特に限定されないが、通常1質量%以上である。
【0086】
溶媒を含む樹脂組成物における溶媒としては、反応に使用した水及び/又はアルコール、再結晶時に使用した良溶媒及び貧溶媒等が挙げられる。溶媒としては、以下に限定されるものではないが、具体的には、水、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセリン、エチレングリコール、メチルエチルケトン、トルエン、クロロホルム、ヘキサン、ジクロロメタン、キシレン等が挙げられる。これらの溶媒は、一種単独であってもよく、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0087】
前記樹脂組成物は、平均粒径1nm以上100nm以下のシリカ粒子をさらに含むことが好ましい。シリカ粒子の平均粒径が1nm以上であることにより、耐摩耗性に優れる傾向にある。また、シリカ粒子の粒径が100nm以下であることにより、透明分散性に優れる傾向にある。シリカ粒子の平均粒径は、好ましくは1nm以上50nm以下であり、より好ましくは2nm以上30nm以下であり、さらに好ましくは5nm以上20nm以下である。シリカ粒子の平均粒径は、動的光散乱測定により測定することができる。
【0088】
平均粒径1nm以上100nm以下のシリカ粒子としては、樹脂組成物の透明性を維持できれば、その形態は特に制限されない。シリカ粒子としては、通常の水性分散液の形態や、有機溶媒に分散させた形態で用いることができるが、樹脂組成物中に均一かつ安定に分散させる観点から、有機溶媒に分散させたコロイダルシリカを用いることが好ましい。
【0089】
シリカ粒子を分散させる有機溶媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、エチレングリコール、キシレン/ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
これらの中でも、シラノール組成物中にシリカ粒子を均一に分散させる観点から、シラノール組成物を溶解することができる有機溶媒を選択することが好ましい。
【0090】
有機溶媒に分散させた形態のコロイダルシリカとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、メタノールシリカゾルMA-ST、イソプロピルアルコールシリカゾルIPA-ST、n-ブタノールシリカゾルNBA-ST、エチレングリコールシリカゾルEG-ST、キシレン/ブタノールシリカゾルXBA-ST、エチルセロソルブシリカゾルETC-ST、ブチルセロソルブシリカゾルBTC-ST、ジメチルホルムアミドシリカゾルDBF-ST、ジメチルアセトアミドシリカゾルDMAC-ST、メチルエチルケトンシリカゾルMEK-ST、メチルイソブチルケトンシリカゾルMIBK-ST(以上、商品名、日産化学社製)等の市販品を用いることができる。
【0091】
樹脂組成物が平均粒径1nm以上100nm以下のシリカ粒子をさらに含む場合、上述したように、水又はアルコールの存在下で、ヒドロシラン化合物を酸化することによって環状シラノールを調製し、当該環状シラノールの合成で得られた生成物の良溶媒溶液に貧溶媒を添加することによる再結晶、ろ過を経て、ろ過により得られる可溶部の溶液を濃縮し、さらに、平均粒径1nm以上100nm以下のシリカ粒子又はシリカ粒子分散液を添加することにより、好適に製造される。
【0092】
樹脂組成物中の前記シリカ粒子の含有量は、樹脂組成物中の固形分の全量に対し、好ましくは10~80質量%であり、より好ましくは20~70質量%であり、さらに好ましくは30~60質量%である。
前記シリカ粒子の含有量が10質量%以上であることにより、得られる硬化物の耐摩耗性が優れる傾向にある。また、前記シリカ粒子の含有量が80質量%以下であることにより、得られる硬化物の透明性が優れる傾向にある。
ここで、樹脂組成物中の固形分の全量は、好ましくは環状シラノール(A1)と前記シリカ粒子との合計量である。
【0093】
前記樹脂組成物は、下記式(6)で表される両末端シラノール変性シロキサンをさらに含むことが好ましい。これにより、応力緩和性が発現することで耐クラック性が向上する傾向にある。
【0094】
【0095】
式(6)中、R'は、各々独立して、フッ素原子、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分枝状の炭素数1~4のアルキル基、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~4のアルキル基であり、mは0~1000の整数である。
【0096】
式(6)中、R'は、熱分解を抑制する観点から、好ましくは非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくは非置換の炭素数1~2のアルキル基であり、さらに好ましくは非置換のメチル基である。
【0097】
前記式(6)で表される両末端シラノール変性シロキサンの分子量は、環状シラノール(A1)との相溶性の観点から、好ましくは10000以下であり、より好ましくは5000以下であり、さらに好ましくは3500以下である。
また、前記式(6)で表される両末端シラノール変性シロキサンの分子量は、揮発を抑制する観点から、好ましくは200以上であり、より好ましくは300以上であり、さらに好ましくは400以上である。前記式(6)で表される両末端シラノール変性シロキサンの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0098】
両末端シラノール変性シロキサンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンジオール-1,3-ジオール、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルジシロキサン-1,5-ジオール、1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルテトラシロキサン-1,7-ジオール、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサン-1,9-ジオール、両末端ジオール変性ポリメチルジメチルジシロキサン等が挙げられる。
両末端シラノール変性シロキサンは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0099】
両末端シラノール変性シロキサンとしては、市販品を用いてもよい。市販品としては、以下に限定されるものではないが、例えば、X21-5841、KF9701(以上信越化学製)、及びDMS-S12、DMS-S14、DMS-S15、DMS-S21、DMS-S27、DMS-S31、DMS-S32、DMS-S33、DMS-S35、DMS-S42、DMS-S45、DMS-S51(以上Gelest製)等が挙げられる。
【0100】
樹脂組成物中の前記両末端シラノール変性シロキサンの含有量は、シラノール組成物量に対し、好ましくは1~80質量%であり、より好ましくは10~60質量%であり、さらに好ましくは15~50質量%である。前記両末端シラノール変性シロキサンの含有量の含有量が1質量%以上であることにより、得られる硬化物の耐クラック性が優れる傾向にある。また、前記両末端シラノール変性シロキサンの含有量の含有量が80質量%以下であることにより、得られる硬化物の透明性が優れる傾向にある。
【0101】
前記樹脂組成物は、ナトリウム(Na)及びバナジウム(V)の合計含有割合が60ppm未満であることが好ましい。Na及びVの合計の含有割合が60ppm未満であることにより、保存安定性が向上する傾向にある。シラノール組成物中のNa原子及びV原子の合計の含有割合は、好ましくは20ppm以下であり、より好ましくは12ppm以下であり、さらに好ましくは2ppm以下であり、さらにより好ましくは1ppm以下である。また、前記樹脂組成物中のNa、Vのそれぞれの含有割合は、保存安定性の観点から、30ppm未満であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、6ppm以下であることがさらに好ましく、1ppm以下であることがさらにより好ましい。
【0102】
樹脂組成物中のNa及びVの合計の含有割合を60ppm未満に制御する方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、樹脂組成物を製造する際のろ過の工程において、粉末セルロースを濾過助剤として用いること等が挙げられる。粉末セルロースの市販品としては、以下に限定されるものではないが、例えば、KCフロック W50GK(日本製紙製)、KCフロック W100-GK(日本製紙製)、セルロース粉末38μm(400mesh)通過(和光純薬製)等が挙げられる。シラノール組成物中のNa、Vの含有割合を60ppm未満にする方法としては、上述した方法の他にも、Na及びVを含有しない濾過助剤を用いる方法等が挙げられる。
【0103】
樹脂組成物中のNa、Vの含有割合は、後述する実施例に記載された方法にしたがって測定することができる。
【0104】
(硬化物)
式(1)で表される環状シラノール(A1)及びその脱水縮合物(A2)を含む樹脂組成物の硬化物は、当該樹脂組成物から形成される。上記硬化物は、硬化させること、すなわち、樹脂組成物に含まれるシラノール基(-Si-OH)の脱水縮合反応により、シロキサン結合(-Si-O-Si-)を形成させることにより得られ、テトラヒドロフラン、トルエン等の溶媒に不溶なものである。
【0105】
環状シラノールは、触媒非存在下で重合してもよく、触媒を添加して重合してもよい。環状シラノールの重合に使用される触媒は、環状シラノールの加水分解及び縮合反応を促進させる作用をする。触媒としては、酸触媒又はアルカリ触媒を使用することができる。
【0106】
酸触媒としては、特に制限はないが、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、フッ酸、ホルム酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、マレイン酸、オレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、p-アミノ安息香酸、及びp-トルエンスルホン酸等が好適に挙げられる。アルカリ触媒としては、特に制限はないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニア水及び有機アミン等が好適に挙げられる。また、無機塩基が使用される場合には、金属イオンを含まない絶縁膜を形成するための組成物が使用される。酸触媒及びアルカリ触媒は、それぞれ、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
触媒の添加量は、反応条件によって調節することができ、環状シラノールの水酸基1モルに対して、好ましくは0.000001~2モルである。添加量が環状シラノールの水酸基1モルに対して2モルを超える場合には、低濃度でも反応速度が非常に速いため分子量の調節が難しく、ゲルが発生しやすい傾向にある。
【0108】
硬化物を得る際に、樹脂組成物に対し酸触媒及びアルカリ触媒を利用することにより、段階的に加水分解及び縮合反応することができる。具体的には、樹脂組成物を酸で加水分解及び縮合反応を行った後、塩基で再び反応させたり、あるいは、塩基で先に加水分解及び縮合反応を行って、再び酸で反応させたりして、硬化物を得ることができる。また、酸触媒とアルカリ触媒とで各々反応させた後、縮合物を混合して樹脂組成物として使用することもできる。
【0109】
前記樹脂組成物を硬化させるとき、加熱してもよい。樹脂組成物を硬化させるときの温度は、特に制限はないが、好ましくは60~250℃であり、より好ましくは80~200℃である。前記樹脂組成物を硬化させる方法では、10分~48時間熱硬化させることが好ましい。
【0110】
[紫外線照射装置の製造方法]
本実施形態の紫外線照射装置は、例えば、紫外LEDを光源とする紫外線発生部を準備する工程(工程1)、前記紫外線発生部の光取り出し面上に屈折率緩和層を形成するための組成物を塗布する工程(工程2)、前記屈折率緩和層を形成するための組成物を塗布した面に紫外線透過性部材を含む紫外線導入窓を密着させる工程(工程3)、前記屈折率緩和層を形成するための組成物を加熱により硬化させて、上記紫外線発生部と上記紫外線導入窓と屈折率緩和層との構成体を得る工程(工程4)、及び前記構成体を、前記紫外線導入窓を支える支持体に取り付ける工程(工程5)を含む製造方法により製造することができる。
【0111】
工程1は、例えば、市販の紫外線発生部を入手することにより準備してもよく、紫外LEDとプリント基板(PCB基板)とから作製することにより準備してもよい。紫外LEDとプリント基板(PCB基板)とから作製する場合、メタルマスクを用いてPCB基板上にクリーム半田を付け、その上に紫外LEDを載せ、これをリフロー炉で、160~200℃で60~200秒加熱しさらに230~270℃で30~90秒の加熱を行う方法により作製することができる。
【0112】
工程2における屈折率緩和層を形成するための組成物は、硬化性組成物であることが好ましく、シリコーンを含む組成物であることがより好ましい。
【0113】
工程4における加熱は、屈折率緩和層を形成するための組成物に応じて適宜加熱方法及び温度を調整すればよい。例えば、屈折率緩和層を形成するための組成物として、下記式(1)で表される環状シラノール(A1)及びその脱水縮合物(A2)を含む樹脂組成物を用いる場合、反応温度を変化させる2段階の加熱により行ってもよい。2段階の加熱方法としては、40~80℃で加熱(1段目の加熱)し、次いで80~120℃で加熱(2段目の加熱)をする。1段目の加熱により、組成物中に含まれる溶媒等の揮発成分の揮発を穏やかに進行させ、樹脂中に空孔等が生成するのを防ぐことができる傾向にある。2段目の加熱により、溶媒等の揮発成分を完全に蒸発させるとともに、樹脂組成物を硬化して強度及び緻密性を高めることができる傾向にある。
【0114】
工程4で得られた構成体を、紫外線導入窓を支える支持体に取り付ける工程において、あらかじめ支持体の一部を上記構成体の一部、例えば紫外線発生部に取り付けておくこともできる。特に、第2実施形態及び第3実施形態の紫外線照射装置を製造する場合において、第二の筐体が2以上の部材により構成されているとき、第二の筐体の紫外線発生部と接する部材を、予め紫外線発生部に取り付けてもよい。
【実施例1】
【0115】
本発明を製造例、実施例及び比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら限定されるものではない。
本発明における樹脂組成物及び製造例により得られる樹脂組成物(以下、シラノール組成物ともいう)の、物性の測定方法、特性の評価方法は以下のとおりである。
【0116】
(塗布溶液の重量パーセント濃度の算出)
日本電子株式会社製ECZ400S、プローブはTFHプローブを用いて、以下のようにしてNMR測定を行った。
例えば、テトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサン及びその重合体のイソプロパノール溶液の場合は、テトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサン及びその重合体のイソプロパノール溶液0.1gに重アセトン1gを添加したサンプルを用いて、1H-NMRを測定した。なお、重溶媒の基準ピークを2.05ppmとし、積算回数は64回で測定を行った。
テトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサン及びその重合体の重量パーセント濃度は近似的に以下式にて算出できる。
テトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサン及びその重合体の重量パーセント濃度=(-0.1-0.3ppmの領域のSiに結合するメチル基のピーク積分比/12×304.51)/{(-0.1-0.3ppmの領域のSiに結合するメチル基のピーク積分比/12×304.51)+(3.7-4.1ppmの領域のイソプロパノールの炭素に結合する水素のピーク積分値/1×60.1)}
なお、前記式中、304.51はテトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサンの分子量、60.1はイソプロパノールの分子量を意味する。
【0117】
(ヘイズの測定)
ヘイズは濁度計NDH5000W(日本電色工業製)を用い、JISK7136に基づき測定を行った。以下に具体的操作を示す。
シラノール組成物のヘイズは素ガラス基板5cm×5cm×0.7mm厚(テクノプリント社製)にシラノール組成物42wt%イソプロパノール溶液をバーコーターNo.40(アズワン製)にて塗布後、60℃1時間にて減圧下で乾燥し、ヘイズを測定した。なお、ヘイズ測定のブランクは素ガラス基板5cm×5cm×0.7mm厚(テクノプリント社製)のみを用いた。
実施例10、16、比較例1に関しては24時間後のヘイズも測定した。
硬化物のヘイズはシラノール組成物のヘイズ測定で作製したサンプルを常圧にて100℃2時間加熱することにより得られたサンプルを用いて測定した。
【0118】
(膜厚の測定)
膜厚はヘイズの測定用に作製したサンプルを表面形状測定機計(製造所名:(株)小坂研究所型式:ET4000AK31製)にて測定し、膜厚を算出した。
【0119】
(接着力の確認)
シラノール組成物のヘイズ測定で作製したサンプルの上に、T-3000-FC3マニュアルダイボンダー(TRESKY製)を用いて直径2ミリの半球石英レンズを荷重400g3秒で乗せた。その後、常圧下、100℃2時間加熱した後に、得られた半球レンズが載ったガラスを横から押し、接着の有無を確認した。
【0120】
(環状シラノール(A1)及び脱水縮合物(A2)のGPCによる面積%の測定)
シラノール組成物0.03gに対して、1.5mLの割合でテトラヒドロフランに溶解した溶液を測定試料とした。
この測定試料を用いて、東ソー社製HLC-8220GPCで測定した。
カラムは東ソー社製のTSKガードカラムSuperH-H、TSKgel SuperHM-H、TSKgel SuperHM-H、TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH1000を直列に連結して使用し、テトラヒドロフランを移動相として0.35ml/分の速度で分析した。
検出器はRIディテクターを使用し、American Polymer Standards Corporation製ポリメタクリル酸メチル標準試料(分子量:2100000、322000、87800、20850、2000、670000、130000、46300、11800、860)、及び1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(分子量240.5、東京化成製)を標準物質として、数平均分子量及び重量平均分子量を求め、p=0及び、p≧1のピークを特定し、環状シラノール(A1)及び脱水縮合物(A2)それぞれのピークの面積比を算出した。
【0121】
(Na、Vの含有量、及び、遷移金属(Pd)の含有量)
ヒドロシロキサン酸化反応物にフッ硝酸を加えて密閉加圧酸分解後、試料をテフロン(登録商標)ビーカーに移し、加熱乾固させた。その後、試料に王水を加え、完全溶解した溶解液を20mLに定容し、ICP質量分析装置(Themo Fisher Scientifi社製 iCAP Qc)による試料中の金属割合の定量分析を行った。
【0122】
(1H-NMR測定を用いた環状シラノールの立体異性体割合の算出)
日本電子株式会社製ECZ400S、プローブはTFHプローブを用いて、以下のようにしてNMR測定を行った。
得られたシラノール組成物に生成物0.1g、及び重アセトン1gを添加し、1H-NMRを測定した。なお、重溶媒の基準ピークを2.05ppmとし、積算回数は64回で測定を行った。
ヒドロシラン化合物としてテトラメチルテトラシクロシロキサンを原料に用いて酸化させた場合、得られるテトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサンの1H-NMRでは、0.04-0.95ppmの領域に4種類の異性体に由来する6種類のSiに結合するメチル基のピークが観測された。
メチル基の水素は、高磁場側から、all-cis型(0.057ppm)、trans-trans-cis型(0.064ppm)、trans-trans-cis型(0.067ppm)、cis-trans-cis型(0.074ppm)、all-trans型(0.080ppm)、trans-trans-cis型(0.087ppm)の順に観測された。Delta5.2.1(日本電子製)を用いて前記6つのピークに関してローレンツ変換による波形分離を行い、これらの水素のピーク強度から、環状シラノールのそれぞれの立体異性体割合を算出した。
【0123】
(各立体異性体の調製)
・all-cis体(環状シラノール(B1))
Inorganic Chemistry Vol.49, No.2,2010の合成例に従って合成した。
・cis-trans-cis体(環状シラノール(B2))
実施例1にて得られた再結晶物を用いた。
・all-trans体(環状シラノール(B4))
実施例1にて作製したシラノール10wt%のテトラヒドロフラン及びジクロロメタン混合溶液をさらに濃縮し、シラノール20wt%となるまで濃縮した溶液を用いて、液体クロマトグラフィーを用いて立体異性体の分取を行った。
<液体クロマトグラフィーの条件>
装置 GLサイエンス製液体クロマトグラフィー
ポンプ :PU715
カラムオーブン :CO705
フラクションコレクラー :FC204YMC-PackSIL-06 φ30mm×250mm
溶離液 :Cyclohexane/EtoAc =60/40
流速 :40mL/min
注入量 :5mL
温度 :40℃
検出 :得られたフラクションをELSD測定にて評価し、検出した。
得られたall-trans体の溶離液を静置することでall-trans体の結晶が得られたため、濾別により回収した。
・trans-trans-cis体(環状シラノール(B3))
all-trans体と同様の方法にて得られた溶離液を濃縮後イソプロパノールに置換することで得た。
【0124】
[製造例1]
(シラノール組成物の調製)
反応容器に、蒸溜水28g、テトラヒドロフラン(THF、和光純薬製)960mL、Pd/C(10%パラジウム-炭素、エヌ・イー ケムキャット社製)3.7gを入れて混合した後、反応容器の温度を5℃に維持した。
前記反応容器に1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン81g(東京化成製、D4Hとも記載する)を徐々に加え、2時間撹拌後、1H-NMRにてSiH基が消失するまでPd/C(10%パラジウム/炭素)1.8gずつ3回に分け、計17時間反応を行った。SiH基の消失は、反応液を、日本電子製NMR(ECZ400S)を用いて反応液1wt%濃度の重アセトン溶液で1H-NMRを測定し4~5ppmのSiH基の消失を確認した。
反応液に硫酸マグネシウム75gを添加し、5℃で30分撹拌後、セライトNo.545(和光純薬製)450gを、テトラヒドロフランを用いて漏斗へ充填した。続いて、反応液を、当該セライトを通過させ、テトラヒドロフラン1.5Lによってセライトを洗浄し、1,3,5,7-テトラヒドロキシ-1,3,5,7-テトラメチルテトラシクロシロキサン(以下、D4OHとも記載する)含有THF溶液2057gを得た。この溶液をエバポレーターで水浴15℃にて残量587g(649mL)となるまで濃縮し、テトラヒドロフラン4.4Lとジクロロメタン217mLとの混合溶媒中へ投じた。混合液を5℃で4時間静置後、析出した不溶物を減圧濾過し、結晶固体を22g回収した。可溶部のろ液6169gを減圧下で濃縮し、D4OH濃縮物(すなわち、ヒドロシロキサン酸化反応物)89gを得た。
さらに、D4OH濃縮物:両末端シラノール変性シロキサン:テトラヒドロフランが、質量比で、8:2:90となるように、D4OH濃縮物に両末端シラノール変性シロキサン(信越化学製X21-5841、分子量1000)及びテトラヒドロフランを添加し、テトラヒドロフランをエバポレーターで留去後、シラノール組成物を得た。
得られたシラノール組成物を用いて、前記(ヘイズの測定)の方法にしたがってヘイズを測定した。また、all-trans型及びcis-trans-cis型の環状シラノールの割合を1H-NMRにより算出した。
さらに、上述のようにして、遷移金属Pdの含有量を算出した。
【0125】
(シラノール組成物の硬化の確認、接着力の確認、及び硬化物の光透過率の測定)
前記(シラノール組成物の作製)で得られたシラノール組成物を、石英ガラス上にバーコーターNo.2を用いて3μm厚となるように塗布し、石英ガラスを載せ、80℃6時間、180℃6時間の温度プログラムで硬化させた。
硬化後に片方のガラス板のみを持ち上げ、ガラスが接着していることを確認後、得られた硬化物のヘイズを測定した。
【0126】
(硬化後急冷時の耐クラック性確認)
前記硬化物を180℃のオーブンから25℃の室温に取出し、急冷を行い、クラックの発生をマイクロスコープにて観察した。
【0127】
[製造例2]
D4OH濃縮物:両末端シラノール変性シロキサン:テトラヒドロフランが、質量比で、6:4:90となるようにしたこと以外は、製造例1と同様にしてシラノール組成物を得て、同様に実験を行った。
【0128】
[製造例3]
両末端シラノール変性シロキサン(信越化学製X21-5841、分子量1000)を、両末端シラノール変性シロキサン(信越化学製KF-9701、分子量3000)に替えたこと以外は、製造例1と同様にしてシラノール組成物を得て、同様に実験を行った。
【0129】
[製造例4]
両末端シラノール変性シロキサン(信越化学製X21-5841、分子量1000)を、両末端シラノール変性シロキサン(信越化学製KF-9701、分子量3000)に替え、且つ、D4OH濃縮物:両末端シラノール変性シロキサン:テトラヒドロフランが、質量比で、6:4:90となるようにしたこと以外は、製造例1と同様にしてシラノール組成物を得て、同様に実験を行った。
【0130】
[製造例5]
両末端シラノール変性シロキサン(信越化学製X21-5841、分子量1000)を、両末端シラノール変性シロキサン(Gelest製DMS-S15、分子量2000~3500)に替えたこと以外は、製造例1と同様にしてシラノール組成物を得て、同様に実験を行った。
【0131】
[製造例6]
両末端シラノール変性シロキサン(信越化学製X21-5841、分子量1000)を、両末端シラノール変性シロキサン(Gelest製DMS-S15、分子量2000~3500)に替え、且つ、D4OH濃縮物:両末端シラノール変性シロキサン:テトラヒドロフランが、質量比で、6:4:90となるようにしたこと以外は、製造例1と同様にしてシラノール組成物を得て、同様に実験を行った。
【0132】
[製造例7]
(シラノール組成物の作製)
反応容器に、蒸溜水28g、テトラヒドロフラン(THF、和光純薬製)960mL、Pd/C(10%パラジウム-炭素、エヌ・イー ケムキャット社製)3.7gを入れて混合した後、反応容器の温度を5℃に維持した。
前記反応容器に、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン81g(東京化成製、D4Hとも記載する。)を徐々に加え、2時間撹拌後、1H-NMRにてSiH基が消失するまで前記Pd/C(10%パラジウム-炭素)を1.8gずつ3回に分けて加し、合計17時間反応を行った。
反応液を、日本電子製NMR(ECZ400S)を用いて反応液1質量%濃度の重アセトン溶液で1H-NMRを測定し、4~5ppmのSiH基の消失を確認した。
反応液に硫酸マグネシウム75gを添加し、5℃で30分撹拌後、セライトNo.545(和光純薬製)450gを、テトラヒドロフランを用いて漏斗へ充填した。続いて、反応液を、当該セライトを通過させ、テトラヒドロフラン1.5Lによってセライトを洗浄し、1,3,5,7-テトラヒドロキシ-1,3,5,7-テトラメチルテトラシクロシロキサン(以下、D4OHとも記載する。)含有THF溶液2057gを得た。
この溶液をエバポレーターで水浴15℃にて残量587g(649mL)となるまで濃縮し、テトラヒドロフラン4.4Lとジクロロメタン217mLとの混合溶媒中へ投じた。混合液を5℃で4時間静置後、析出した不溶物を減圧濾過し、結晶固体を22g回収した。可溶部のろ液6169gを減圧下で濃縮し、D4OH濃縮物(すなわち、ヒドロシロキサン酸化反応物)89gを得た。
さらに、D4OH濃縮物:シリカを、質量比が50:50となるように、D4OH濃縮物にシリカ粒子(MEKST-40、日産化学社製、粒径40nm)を添加し、さらに固形分濃度16質量%となるようにイソプロパノールを加えることによりシラノール組成物(イソプロパノール溶液)を得た。
得られたシラノール組成物を用いて前記(ヘイズの測定)の方法にしたがってヘイズを測定し、GPCの微分分子量分布曲線におけるピーク面積の測定を行った。また、all-cis型及びcis-trans-cis型の環状シラノールの割合を1H-NMRにより算出した。
また、上述のようにして、遷移金属Pdの含有量を算出した。
【0133】
(シラノール組成物の硬化の確認、接着力の確認、及び硬化物の光透過率の測定)
前記(シラノール組成物の作製)で得られたシラノール組成物8.3gを、石英ガラス上にバーコーターNo.2を用いて3μm厚となるように塗布し、石英ガラスを載せ80℃6時間、180℃6時間の温度プログラムで硬化させた。
硬化後に片方のガラス板のみを持ち上げ、ガラスが接着していることを確認後、得られた硬化物のヘイズを測定した。
【0134】
(硬化物の耐摩耗性評価)
10cm角、厚さ1ミリのポリカーボネート板(タキロン1600)にプライマーSHP470FT2050(モメンティブ製)をバーコーターNo.16(アズワン製)で塗布後、30℃30分、120℃30分オーブンで硬化し、2μmのプライマーを塗布したポリカーボネート板を得た。
前記ポリカーボネート板に、前記(シラノール組成物の作製)で得られたシラノール組成物を、バーコーターNo.16で前記プライマーを塗布したポリカーボネート板に塗布した後、100℃で2時間、次いで120℃で2時間、オーブンにて硬化することにより硬化板を得た。
得られた硬化板を、摩耗輪にCALIBRASE CS-10F(TABER INDUSTRIES製)を取り付けた101 TABER TYPE ABRASION TESTER(Yasuda製)を用いて、回転速度60rpmにて500回のテーバー摩耗試験を行った。
なお、すべての測定用サンプルは、テーバー摩耗試験を行う前に、摩耗輪をST-11 REFACEING STONE(TABER INDUSTRIES製)を用いて回転速度60rpmにて25回研磨を行った。
テーバー摩耗試験後の測定用サンプルを、HAZE METER NDH 5000SP(NIPPON DENSHOKU製)を用いて、Hazeの測定を行い、テーバー摩耗試験前後のHazeの増加分(ΔHaze(%))を算出した。
【0135】
[製造例8]
D4OH濃縮物:シリカの質量比が75:25となるように(シリカ添加割合が25wt%である)シリカ粒子を添加したこと以外は、製造例7と同様の実験を行った。
【0136】
[製造例9]
(シラノール組成物の作製)
反応容器に、蒸溜水28g、テトラヒドロフラン(THF、和光純薬製)960mL、Pd/C(10%パラジウム/炭素、エヌ・イー ケムキャット社製)3.7gを入れて混合した後、反応容器の温度を5℃に維持した。
前記反応容器に、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン81g(東京化成製、D4Hとも記載する。)を徐々に加え、2時間撹拌後、1H-NMRにてSiH基が消失するまで前記Pd/C(10%パラジウム/炭素)を1.8gずつ3回に分けて添加し、合計17時間反応を行った。
反応液を、日本電子製NMR(ECZ400S)を用いて反応液1質量%濃度の重アセトン溶液で1H-NMRを測定し、4~5ppmのSiH基の消失を確認した。
反応液に硫酸マグネシウム75gを添加し、5℃で30分撹拌後、濾過助剤として、粉末セルロースKCフロックW50GK(日本製紙製)450gを、テトラヒドロフランを用いて漏斗へ充填した。続いて、反応液を、当該粉末セルロースを通過させ、テトラヒドロフラン1.5Lによって粉末セルロースを洗浄し、1,3,5,7-テトラヒドロキシ-1,3,5,7-テトラメチルテトラシクロシロキサン(以下、D4OHとも記載する。)含有THF溶液2057gを得た。
この溶液をエバポレーターで水浴15℃にて残量587g(649mL)となるまで濃縮し、テトラヒドロフラン4.4Lとジクロロメタン217mLとの混合溶媒中へ投じた。混合液を5℃で4時間静置後、析出した不溶物を減圧濾過し、結晶固体を22g回収した。可溶部のろ液6169gを減圧下で濃縮し、ヒドロシロキサン酸化反応物であるシラノール組成物(89g)を得た。
得られたシラノール組成物を用いて前記(ヘイズの測定)の方法にしたがってヘイズを測定し、GPCの微分分子量分布曲線におけるピーク面積の測定を行った。
また、all-trans型及びcis-trans-cis型の環状シラノールの割合を1H-NMRにより算出した。Na、Vの含有量、及び遷移金属(Pd)の含有量の測定を上記のようにして行った。
【0137】
(シラノール組成物の硬化確認、及び接着力の確認、硬化物の光透過率の測定)
前記(シラノール組成物の調製)で得られたシラノール組成物8.3gを、石英ガラス上にバーコーターNo.2を用いて3μm厚となるように塗布し、これにさらに石英ガラスをのせ、80℃6時間、180℃6時間の温度プログラムで硬化させた。硬化後に片方のガラス板のみを持ち上げ、石英ガラスが接着していることを確認した。
その後、得られた硬化物の400~800nmにおける光透過率を測定した。
【0138】
(シラノール組成物の保存安定性試験)
得られたシラノール組成物を、25℃の室温下で1ヶ月放置した。
シラノール組成物をスパチュラで触り固まっているかを確認し、固化の有無によって保存安定性を評価した。
表中、〇は固化しなかったことを指し、×は固化したことを指す。
【0139】
[製造例10]
(シラノール組成物の調製)
反応容器に、蒸溜水28g、テトラヒドロフラン(和光純薬製)960mL、Pd/C(10%パラジウム/炭素、エヌ・イー ケムキャット社製)3.7gを入れて混合した後、反応容器の温度を5℃に維持した。
前記反応容器に1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン81g(東京化成製、D4Hとも記載する)を徐々に加え、2時間撹拌後、
1H-NMRにてSiH基が消失するまでPd/C(10%パラジウム/炭素)1.8gずつ3回に分け、計17時間反応を行った。SiH基の消失は、反応液を、日本電子製NMR(ECZ400S)を用いて反応液1wt%濃度の重アセトン溶液で
1H-NMRを測定し、4~5ppmに存在するSiH基の消失を確認した。
反応液に硫酸マグネシウム75gを添加し、5℃で30分撹拌した。セライトNo.545(和光純薬製)450gを、テトラヒドロフランを用いて漏斗へ充填した。続いて、反応液を、当該セライトを通過させ、テトラヒドロフラン1.5Lによってセライトを洗浄し、1,3,5,7-テトラヒドロキシ-1,3,5,7-テトラメチルテトラシクロシロキサン(以下、D4OHとも記載する)含有THF溶液2057gを得た。この溶液をエバポレーターで水浴15℃にて残量587g(649mL)となるまで濃縮し、テトラヒドロフラン4.4Lとジクロロメタン217mLとの混合溶媒中へ投じた。混合液を5℃で4時間静置後、析出した不溶物を減圧濾過し、結晶固体を22g回収した。可溶部のろ液6169gを減圧下で濃縮し、シラノール組成物10wt%のテトラヒドロフラン及びジクロロメタン混合溶液となるまで濃縮した。シラノール組成物10wt%のテトラヒドロフラン及びジクロロメタン混合溶液10gを1gまで減圧下で濃縮後、再度100gのイソプロパノールを添加した。さらに、再度減圧下で濃縮を行い、所定の濃度のシラノール組成物(イソプロパノール溶液)を作製した。
得られたシラノール組成物を用いてヘイズ等の物性を評価した。また、環状シラノールの立体異性体割合を
1H-NMRにより算出した。
図11に
1H-NMRスペクトルを示す。
【0140】
[製造例11]
製造例10にて作製したシラノール組成物(イソプロパノール溶液)に、前記(各立体異性体の調製)にて調製したall-trans体(環状シラノール(B4))を加え、all-trans体比率を43%としたこと以外は、製造例10と同様の実験を行った。
【0141】
[製造例12]
製造例10にて作製したシラノール組成物(イソプロパノール溶液)に、前記(各立体異性体の調製)にて調製したall-trans体(環状シラノール(B4))を加え、all-trans体比率を56%としたこと以外は、製造例10と同様の実験を行った。
【0142】
[製造例13]
製造例10にて作製したシラノール組成物(イソプロパノール溶液)に、前記(各立体異性体の調製)にて調製したall-cis体(環状シラノール(B1))を加え、all-cis体比率を31%としたこと以外は、製造例10と同様の実験を行った。
【0143】
[製造例14]
製造例10にて作製したシラノール組成物(イソプロパノール溶液)に、前記(各立体異性体の調製)にて調製したall-cis体(環状シラノール(B1))を加え、all-cis体比率を41%としたこと以外は、製造例10と同様の実験を行った。
【0144】
[製造例15]
製造例10にて作製したシラノール組成物(イソプロパノール溶液)に、前記(各立体異性体の調製)にて調製したtrans-trans-cis体(環状シラノール(B3))を加え、trans-trans-cis体比率を66%としたこと以外は、製造例10と同様の実験を行った。
【0145】
[製造例16]
製造例10の再結晶温度を-40℃としたこと以外は、製造例10と同様の実験を行った。
図12に
1H-NMRスペクトルを示す。
【0146】
以下の実施例及び比較例にしたがって、紫外線照射装置を製造した。なお、実施例により得られる紫外線照射装置の特性の評価方法は以下のとおりである。
【0147】
(紫外線照射装置としての光出力の評価方法)
得られた紫外線照射装置に、定電流電源を用いて通電した。各電流値における光出力の値を、積分球ユニットを用いて測定し、同形状で屈折率緩和層のみ有さない構造の紫外線照射装置(以下、リファレンスと呼ぶ)の光出力と比較し、その比(光出力比とする)を以下の式より算出した。
(光出力比)=(屈折率緩和層を用いた場合の光出力)/(同形状の装置構造で屈折率緩和層を用いない場合の光出力)
光出力比が1.0よりも大きいものを〇、1.0以下のものを×とした。
【0148】
(紫外照射装置の耐久性の評価方法)
発光素子寿命評価装置を用いて、環境温度25℃、電流値350mAにおいて、連続駆動させ、一定時間毎に光出力を測定した。合わせて、リファレンスにも同じ電流を注入し、同様に1000時間駆動させ測定を行った。評価用サンプルの相対光出力(各測定時点における測定値を耐久試験開始時における光出力で除した値)と、リファレンスの相対光出力の変化を比較して、駆動中の屈折率緩和層の劣化による光出力の減少を評価した。
相対光出力は以下の式より算出した。
(相対光出力)
=(1000時間駆動後の光出力)/(0時間駆動時の初期光出力)
=(LED初期出力×LED劣化分)×(屈折率緩和層効果)×(屈折率緩和層劣化)/(LED初期出力×屈折率緩和層効果)
上式におけるLED劣化分とは、
(LED劣化分)=(リファレンスの相対光出力)
=(リファレンス1000時間駆動後の光出力)/(リファレンス0時間駆動時の初期光出力)
である。
リファレンスの相対光出力を1.0としたとき、屈折率緩和層の劣化による相対光出力の変化が0.7以上のものを〇、0.7より小さいものを×とした。
【0149】
(クラック有無の評価方法)
屈折率緩和層のクラック発生をマイクロスコープにて観察した。マイクロスコープの目視でクラックの有無を判断し、クラックが見られなかったものを〇、見られたものを×とした。
【0150】
[実施例1~16]
<紫外線照射装置の製造>
図1及び
図2に示す構造を有する紫外線発光装置を作製した。
紫外線発生部2に含まれる基板はAlN基板であり、紫外線発生部2に含まれる光取り出し面は、1辺が0.9mmである正方形で、発光出力が40mW以上であった。基板の裏面である紫外線発生部2の光取り出し面に、屈折率緩和層の形成材料として、樹脂組成物を塗布することにより樹脂組成物層を形成した。その上に、直径20mmの石英から構成された紫外線導入窓3を配置し、1200gの荷重をかけた。加重を止めた後、60℃で加熱(1段目の加熱)し、次いで100℃で加熱(2段目の加熱)した。これにより、紫外線発生部2と、紫外線導入窓3との間に屈折率緩和層5が形成された。最後に、φ50mm×50mmの筐体4を取り付けて、紫外線発光装置を得た。
【0151】
なお、実施例1における屈折率緩和層5の光学屈折率は波長250nm~290nmにおいて1.35以上1.65以下であった。光学屈折率は、屈折率緩和層の樹脂組成物を1辺が2cmの正方形である石英基板上に塗布後スピンコートし、上記1段目の加熱と上記2段目の加熱をして屈折率緩和層を形成した後、J. A. Woollam社製の分光エリプソメトリを用いて測定した。
【0152】
[実施例17]
直径20mmの石英から構成された紫外線導入窓に代えて、半球状の形状を有し、直径20mmの石英から構成された紫外線導入窓(
図8参照)を用いたこと以外は、実施例16と同様にして紫外線発光装置を得た。
【0153】
[実施例18]
直径20mmの石英から構成された紫外線導入窓に代えて、紫外線の光路を変える形状として2以上の半球レンズを有する紫外線導入窓(
図9参照)を用いたこと以外は、実施例16と同様にして紫外線発光装置を得た。
【0154】
[実施例19]
紫外線発生部2における光取り出し面に周期的微細構造状の形状を有した紫外線発生部2を用いたこと以外は、実施例16と同様にして紫外線発光装置を得た。
【0155】
[実施例20]
紫外線発生部2がキャビティ構造を有し石英から構成されたリッドを有する紫外線発生部を用いたこと以外は、実施例16と同様にして紫外線発光装置を得た。
【0156】
[実施例21]
紫外線発生部2における光取り出し面が、半球形状を有し、石英から構成されたレンズである紫外線発生部2を用いたこと以外は、実施例16と同様にして紫外線発光装置を得た。
【0157】
[実施例22]
φ50mm×50mmの筺体4に代えて、紫外線発生部2及び屈折率緩和層5を囲う筺体6を用いたこと以外は、実施例16と同様にして紫外線発光装置(
図4及び
図5参照)を得た。
【0158】
[実施例23]
被照射体を囲う筺体4に加えて、紫外線発生部2及び屈折率緩和層5を囲う筺体6を用いたこと以外は、実施例16と同様にして紫外線発光装置(
図5及び
図6参照)を得た。
【0159】
[実施例24]
屈折率緩和層の形成材料として、製造例1の樹脂組成物を用いることに代えて、モノメチルシロキサンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして紫外線発光装置を得た。ここで、モノメチルシロキサンとしては、メチルトリメトキシシランの重合物を用いた。
【0160】
[実施例25]
屈折率緩和層の形成材料として、製造例1の樹脂組成物を用いることに代えて、ダウコーニング株式会社製品の「JCR6122(ジメチルシリコーン)」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして紫外線発光装置を得た。
【0161】
[実施例26]
屈折率緩和層の形成材料として、製造例1の樹脂組成物を用いることに代えて、山村硝子株式会社製品の「HE59N(ジメチルシリコーン)」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして紫外線発光装置を得た。
【0162】
[実施例27]
屈折率緩和層の形成材料として、製造例1の樹脂組成物を用いることに代えて、「サイトップCF3(フッ素材料)」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、紫外線発光装置を得た。
【0163】
[実施例28]
屈折率緩和層の形成材料として、製造例1の樹脂組成物を用いることに代えて、「サイトップCOOH(フッ素材料)」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、紫外線発光装置を得た。
【0164】
[比較例1]
屈折率緩和層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、紫外線発光装置を得た。
【0165】
実施例及び比較例で得られた紫外線照射装置の評価結果、及び実施例に用いた樹脂組成物の特性を表1及び表2に示す。
【0166】
【0167】
【0168】
実施例の紫外線照射装置はいずれも屈折率緩和層を用いることで光出力は向上したことから、屈折率緩和層は光取り出し効率の向上に有効であることが示された。また、各々の実施例における光出力比は電流値500mAまでの範囲で一定であった。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明の紫外線照射装置は、殺菌、滅菌、静菌、消毒、又は除菌装置として産業上の利用可能性を有する。