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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】柱梁接合部構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20230619BHJP
   E04B 1/21 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
E04B1/58 505A
E04B1/21 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019213525
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021085189
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-06-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼発行日:令和1年7月20日 刊行物:2019年度大会(北陸)学術講演梗概集 建築デザイン発表梗概集、第115~116頁、一般財団法人日本建築学会 ▲2▼発行日:令和1年7月20日 刊行物:2019年度大会(北陸)学術講演梗概集 建築デザイン発表梗概集、第117~118頁、一般財団法人日本建築学会 ▲3▼発行日:令和1年9月1日 刊行物:奥村組技術年報No.45、第77~84頁、株式会社奥村組技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山際 創
(72)【発明者】
【氏名】岸本 剛
(72)【発明者】
【氏名】浜口 慶生
(72)【発明者】
【氏名】服部 晃三
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-105493(JP,A)
【文献】特開2008-240329(JP,A)
【文献】戸田建設ニュースリリース,日本,戸田建設,2019年09月10日
【文献】萩尾浩也、渋市克彦、米澤健次,直交架構の損傷が扁平梁の構造性能に及ぼす影響に関する実験的研究 その1 実験概要,日本建築学会大会学術講演梗概集(北陸),111,112,日本建築学会,2019年09月
【文献】足立将人、平田延明、中岡章郎、室重行、入江貴弘,幅広扁平梁架構の構造性能に関する実験的研究,日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿),399,400,日本建築学会,2014年07月20日
【文献】平田延明、太田雄介、中岡章郎,幅広扁平梁柱接合部の張出部補強筋による構造性能への影響に関する実験的研究,日本建築学会大会学術講演梗概集(九州),405,406,日本建築学会,2016年07月20日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00-1/36
E04B 1/38-1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と前記柱の柱幅より広い梁幅を有する扁平梁と前記柱及び前記扁平梁と直交する直交梁とが、前記柱、前記扁平梁及び前記直交梁のそれぞれの一の外側面が面一となるように接続されている接合部構造であって、
前記柱と前記扁平梁との接合部を含む前記柱の柱せいの内側であって且つ前記直交梁の梁幅の外側において、前記扁平梁内に、前記扁平梁内に配置されている複数の梁主筋を取り囲むように、2個に分割されてそれぞれコの字状からなる複数の第1の補強筋が、前記柱の柱幅の内側において、前記コの字の両端部が前記柱幅の方向に重複して前記梁主筋に固定されており、
前記柱の外側であって前記扁平梁と前記直交梁との梁の接合部内において、前記梁の接合部内の複数の前記梁主筋を前記直交梁の延びる方向に囲むように、前記柱の延びる方向の面側から前記接合部内方に向ってコの字状の第2の補強筋が配置されていることを特徴とする柱梁接合部構造。
【請求項2】
前記第2の補強筋は、前記柱の延びる方向の面に最も近く前記直交梁内に配置されている梁主筋に基部が固定されていることを特徴とする請求項1に記載の柱梁接合部構造。
【請求項3】
前記柱せいより外側において、前記扁平梁内に複数の第3の補強筋が配置されており、
前記第3の補強筋は、前記扁平梁内に配置されている複数の梁主筋の外周を囲繞する囲繞筋と、前記囲繞筋の途中において前記柱の延在する方向に連結する複数の連結筋とから構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の柱梁接合部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱と扁平梁との接合部における構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造ラーメン架構の建物において、柱幅より広い幅を有する扁平梁を用いる扁平梁工法が提案されている。この扁平梁工法は、梁せいを小さく抑えて、梁下に開放的な空間を構築することができるので、建物の全体高さを低くしつつ十分な室内高さを確保することが可能となる。しかし、扁平梁工法においては、梁せいが小さいため、柱と扁平梁との接合部において支持可能な曲げモーメントが小さくなる。また、扁平梁の柱幅の外側に配置される範囲(跳ね出し部)は柱に固定されないので、剛性が低く、変形が生じやすい。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、柱と扁平梁との接合部において梁軸方向及び梁軸と直交する方向に突出する、柱と一体の跳ね出し部を設け、柱から跳ね出し部にかけての耐力を梁端部の耐力と比べて十分に大きくする技術が開示されている。具体的には、跳ね出し部のあばら筋のピッチを梁部分のあばら筋のピッチの半分程度とし、さらに柱断面を貫通する形で上下の主筋に加え、主筋と平行する跳ね出し部補強筋を加えている。また、必要に応じて、柱の主筋に補強用添え筋を添えてもよいとされている。このように跳ね出し部に密に配筋することによって、跳ね出し部の剛性と耐力を高め、跳ね出し部に接合することが柱に接合することと同様の構造性能が得られるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許4105191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術のように接合部及び跳ね出し部の配筋を大幅に増加させると、配筋の施工が困難となる。また、梁幅が柱幅よりも広いため、扁平梁の柱幅の外側の部分にかかる曲げによって接合部にねじり変形が発生するが、これを完全に抑制することは、上記特許文献1に開示された技術においては十分に図ることができないので、梁の構造性能を過大に評価するおそれがある。
【0006】
また、柱と扁平梁とこれらと直交する直交梁とを接合部構造においては、跳ね出し部と直交梁との接合部におけるせん断力やねじれによってひび割れが発生するおそれがある。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、配筋施工の簡易化、ねじり変形の抑制及び跳ね出し部と直交梁の接合部におけるひび割れの発生の抑制を図ることが可能な柱と扁平梁との接合部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、柱と前記柱の柱幅より広い梁幅を有する扁平梁と前記柱及び前記扁平梁と直交する直交梁とが、前記柱、前記扁平梁及び前記直交梁のそれぞれの一の外側面が面一となるように接続されている接合部構造であって、前記柱と前記扁平梁との接合部を含む前記柱の柱せいの内側であって且つ前記直交梁の梁幅の外側において、前記扁平梁内に、前記扁平梁内に配置されている複数の梁主筋を取り囲むように、2個に分割されてそれぞれコの字状からなる複数の第1の補強筋が、前記柱の柱幅の内側において、前記コの字の両端部が前記柱幅の方向に重複して前記梁主筋に固定されており、前記柱の外側であって前記扁平梁と前記直交梁との梁の接合部内において、前記梁の接合部内の複数の前記梁主筋を前記直交梁の延びる方向に囲むように、前記柱の延びる方向の面側から前記接合部内方に向ってコの字状の第2の補強筋が配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、第1の補強筋によって柱と扁平梁との接合部及び扁平梁の柱の柱せいの内側部分であって且つ前記直交梁の梁幅の外側における部分である跳ね出し部内において梁主筋が拘束されているので、これらの部分におけるせん断力とねじれによる変形を抑制することが可能となる。これにより、上記特許文献1に開示されたように補強する場合と比較して、特にねじれによる変形を抑制することが可能となる。また、上記特許文献1に開示された技術における配筋構成と比較して、同程度の配筋量で、より効果的にせん断力による変形を抑制することが可能となる。
【0010】
さらに、第2の補強筋の存在によって、柱の外側であって扁平梁と直交梁との梁の接合部の表面に、せん断力によるねじれによって発生するひび割れを抑制することが可能となる。
【0011】
本発明において、前記第2の補強筋は、前記柱の延びる方向の面に最も近く前記直交梁内に配置されている梁主筋に基部が固定されていることが好ましい。
【0012】
この場合、上述したひび割れの発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0013】
また、本発明において、前記柱せいより外側において、前記扁平梁内に複数の第3の補強筋が配置されており、前記第3の補強筋は、前記扁平梁内に配置されている複数の梁主筋の外周を囲繞する囲繞筋と、前記囲繞筋の途中において前記柱の延在する方向に連結する複数の連結筋とから構成されていることが好ましい。
【0014】
この場合、第3の補強筋は中子筋によって途中が連結されているので、扁平梁の第2の補強筋を内設した部分におけるせん断力による変形を効果的に抑制することが可能となる。これにより、上記特許文献1に開示されたように中子筋を有さない場合と比較して、せん断力による変形をより効果的に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る柱梁接合部構造のXY平面における模式断面図。
図2図1のIIーII線における模式断面図。
図3図1のIIIーIII線における模式断面図。
図4図1のIVーIV線における模式断面図。
図5図1のVーV線における模式断面図。
図6図1のVIーVI線における模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る柱梁接合部構造100について図1から図6を参照して説明する。
【0017】
柱梁接合部構造100は、一体構築された鉄筋コンクリート造(RC)の柱10と扁平梁20とが接合され、さらに柱10及び扁平梁20と直交する直交梁30が接合されてなる接合部40を含む構造である。例えば、柱10は建物の側周部に位置する側柱である。柱10、扁平梁20及び直交梁30のそれぞれの一の外側面が面一となるように接続されている。柱梁接続部構造100又は柱梁接続部構造100を含む構造体は、現場打ちコンクリートからなるものであっても、ハーフプレキャストコンクリートからなるものであってもよい。
【0018】
扁平梁20は、梁せいDg(不図示)に対して梁幅Bgが幅広な扁平梁であり、梁幅Bgは柱幅Bcより幅広となっている。柱幅Bcに対する梁幅Bgの比率(柱・梁幅比)は、3以下であることが好ましい。接合部40から扁平梁20の梁幅方向に柱10の側面から外側に張り出した扁平梁20の部分が跳ね出し部41となっている。跳ね出し部41の前記外側面側の部分は、扁平梁20と直交梁30との梁の接合部42となっている。跳ね出し部41の柱10の側面から張り出した部分の寸法は、柱幅Bc及び柱せいDc以下、かつ扁平梁20の梁せいDgの2倍以下であることが好ましい。
【0019】
ここでは、柱10の軸心Ocと扁平梁20の軸心Ogが交差する場合、すなわち扁平梁20に対して柱10が偏心しないで接合されている場合について説明するが、偏心があっても、すなわち扁平梁20に対して柱10が片寄せされて接合されていてもよい。この場合、上記比率(柱・梁幅比)を計算する際の梁幅Bgは、跳ね出し部31の幅のうち大きい方の幅の2倍と柱10の幅の和として算定することが好ましい。
【0020】
以下、扁平梁20の軸心Ogが延在する方向をX軸方向とし、柱10の軸心Ocが延在する方向をZ軸方向とし、X軸及びZ軸と直交し、直交梁30の軸心Orが延在する方向をY軸方向として説明する。
【0021】
柱10には、Z軸方向に延在する複数の柱主筋11、及びこれら柱主筋11の外周を囲繞し、Z軸方向に間隔を隔てて配置された複数のフープ筋12が内設されている。
【0022】
扁平梁20には、X軸方向に延在する複数の梁主筋21が配筋されている。梁主筋21は、Y軸方向に等間隔に配置されていてもよいが、柱せい外と比較して柱せい内において間隔が狭く配置されていることが好ましい。梁主筋21は、扁平梁20の柱10の外側面と面一となる外側面側の端部、すなわち扁平梁20の背面の端部に定着部21aを備えている。梁の接合部42の外側面側の端部、すなわち梁の接合部42の背面側の端部に定着部21aが位置している。
【0023】
さらに、扁平梁20のうち柱せい内の直交梁30の梁幅の外側の部分、すなわち、接合部40が梁の接合部42と接続する背面側とは反対側及び跳ね出し部41からなる部分内において、複数の梁主筋21を取り囲むように、複数のねじり補強筋22がX軸方向に間隔を隔てて配置されている。ねじり補強筋22は、本発明の第1の補強筋に相当する。
【0024】
各ねじり補強筋22は、2個に分割されてそれぞれコの字状からなり、具体的には、基部22aと基部22aの両端からそれぞれ延びる2本の足部22bとから構成されている。そして、基部22aが跳ね出し部41の端部内に配置されている梁主筋21の端面側の外側に接触して位置し、各足部22bがY軸方向に間隔を隔てて配置されている梁主筋21の上端筋の上側と下端筋の下側に接触して位置している。そして、各足部22bの基部22aと接続されていない側の端部が、柱幅内にて重複した部分を有するように梁主筋21に直接的又は間接的に固定されている。
【0025】
このように構成された各ねじり補強筋22によって、接合部40の直交梁30の梁幅の外側及び跳ね出し部41内における梁主筋21が拘束されており、接合部40の直交梁30の梁幅の外側及び跳ね出し部41におけるせん断力とねじれによる変形を抑制することが可能となる。
【0026】
これにより、上記特許文献1に開示されたように補強する場合と比較して、特にねじれによる変形を抑制することが可能となる。また、上記特許文献1に開示された技術における配筋構成と比較して、同程度の配筋量で、より効果的にせん断力による変形を抑制することが可能となる。さらに、跳ね出し部41に生じる曲げモーメントは、ねじり補強筋22によってねじり抵抗力として柱10に伝達される。
【0027】
また、各ねじり補強筋22は、コの字状であるので、跳ね出し部41の端面側から接合部40側に挿入するようにして配筋することが可能であるので、配筋の施工が簡易である。
【0028】
なお、ねじり補強筋22は、柱10と扁平梁20との接合部40におけるせん断力とねじれによる変形を所望量以下に抑制することが可能となる量を配筋すればよい。また、図示しないが、ねじり補強筋22を途中においてZ軸方向に連結する中子筋を配筋してもよい。ただし、この場合、配筋の施工性が悪化するので、好ましくない。
【0029】
さらに、扁平梁20のうち柱せいの外側である範囲、すなわち柱10の内側面よりX軸方向外側の部分には、X軸方向に間隔を隔てて複数のせん断補強筋23が配筋されている。せん断補強筋23は、本発明の第3の補強筋に相当する。
【0030】
なお、せん断補強筋23は、扁平梁20の柱せいの外側全体に亘って配置されていることが好ましいが、扁平梁20の柱せいの外側のうちの断面計算上必要となる範囲内にだけ配置されていてもよい。
【0031】
せん断補強筋23は、複数の梁主筋21の外周を囲繞するあばら筋24と、1本のあばら筋24の途中において柱10の延在する方向、すなわちZ軸方向に連結する複数の中子筋25とから構成されている。あばら筋24は本発明の囲繞筋に相当し、中子筋25は本発明の連結筋に相当する。
【0032】
中子筋25は、1本のあばら筋24に対して少なくも1本であるが、Y方向に間隔を開けて複数本配置されていてもよい。この場合、Y方向に等間隔に配置されていてもよいが、柱幅外と比較して柱幅内において間隔が狭くなるように配置されていることが好ましい。さらに、中子筋25は柱幅内においてのみ配置されていてもよい。
【0033】
このように構成されたせん断補強筋23は、複数の梁主筋21の柱幅外における部分を拘束している。
【0034】
このようにせん断補強筋23は中子筋25によって途中が連結されているので、扁平梁20のせん断補強筋23を内設した部分におけるせん断力による変形を効果的に抑制することが可能となる。これにより、上記特許文献1に開示されたように中子筋を有さない場合と比較して、せん断力による変形をより効果的に抑制することが可能となる。
【0035】
なお、扁平梁20におけるせん断補強筋23の配筋量は、通常の梁のせん断補強筋と同程度であってよく、扁平梁20の断面積に対する最低配筋量以上、かつ、所望の許容せん断応力から求めた最小補強筋量以上とすればよい。
【0036】
さらに、直交梁30には、接合部40及び梁の接合部42を貫通してY軸方向に延在する複数の梁主筋31、及び接合部40内以外においてこれら梁主筋31の外周を囲繞し、Y軸方向に間隔を隔てて配置された複数のフープ筋32が内設されている。
【0037】
例えば扁平梁20と直交梁30の上端面が一致する場合、接合部40及び梁の接合部42において、扁平梁20の上端の梁主筋21か直交梁30の上端の梁主筋31の何れかが上方に配置されることになる。扁平梁20は梁せいDgが低いため、上下の梁主筋21の距離である有効梁せいを大きく確保するために上端の梁主筋21を直交梁30の上端の梁主筋31よりも上方に配置することが好ましい。
【0038】
この場合、扁平梁20の上端の梁主筋21が鉄筋によって拘束されないと、梁の接合部42におけるせん断力やねじれに対する耐力が低下する。そこで、梁の接合部42内には、コの字状のかんざし筋33が直交梁30の梁幅方向(X軸方向)に間隔を開けて、梁主筋31の間に配置されている。かんざし筋33は本発明の第2の補強筋に相当する。かんざし筋33は、梁の接続部42の上面側から梁主筋21と直交する方向(Z軸方向)に下方に向って延びるように配置されている。
【0039】
かんざし筋33は、梁の接合部42内の扁平梁20の梁主筋21の定着部21aの直前まで配置されている。例えば、定着部21aが機械式の場合、かんざし筋33は定着板のスリーブ部の直前まで延びている。また、定着部21aが定着板を鉄筋の先端に直接接合する構成の場合、かんざし筋33は定着板の直前まで延びている。そして、かんざし筋33は、梁の接合部42内の複数の梁主筋21を直交梁30の延びる方向(Y軸方向)に囲むように配置されている。
【0040】
かんざし筋33は、コの字状であり、具体的には、基部33aと基部33aの両端からそれぞれ延びる2本の足部33bとから構成されている。そして、基部33aが梁の接合部42内における上端の梁主筋21の上面に接触して位置し、各足部33bが上下方向(Z軸方向)に間隔を隔てて配置されている梁主筋21の外側面に接触して位置している。これにより、かんざし筋33は、梁の接合部42内における複数の梁主筋21をコの字状に取り囲んでいる。なお、各足部33bの基部33aと接続されていない側の端部は、特に他の鉄筋と固定されていないともよい。
【0041】
かんざし筋33は、梁の接合部42の上面側から内部に向って挿入されて配筋され、直交梁30の内部に定着される。かんざし筋33は、せん断力とねじりに抵抗するために必要な鉄筋量を配置することが好ましいが、扁平梁20の耐力算定には考慮しないことが好ましい。
【0042】
このように構成されたかんざし筋33によって、梁の接合部42内における扁平梁20の梁主筋21を拘束することが可能となるので、この部分におけるせん断力によるねじれや梁の接合部42の上面にひび割れが発生することを抑制することができる。
【0043】
なお、梁の接合部42内の背面側の端部には直交梁30内のフープ筋32が存在しているので、これにより、梁の接合部42の背面にひび割れが生じることが抑制される。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態に具体的に記載した柱梁接合部構造100に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内であれば適宜変更することができる。
【0045】
例えば、扁平梁20と直交梁30の上面が一致する構造について説明したが、本発明は、扁平梁20と直交梁30の下面が一致する構造に適用してもよい。この場合は、扁平梁20の梁主筋21の下端筋が直交梁30の梁主筋21の下端筋よりも下側に位置するので、かんざし筋33は扁平梁20の下面側から挿入して、扁平梁20の梁主筋21の下端筋を拘束すればよい。
【符号の説明】
【0046】
10…柱、 11…柱主筋、 12…フープ筋、 20…扁平梁、 21…梁主筋、 22…ねじり補強筋(第1の補強筋)、 23…せん断補強筋(第3の補強筋)、 24…あばら筋(囲繞筋)、 25…中子筋(連結筋)、 30…直交梁、 31…梁主筋、 32…フープ筋、 33…かんざし筋(第2の補強筋)、 40…接合部、 41…跳ね出し部、 42…梁の接合部、 100…柱梁接合部構造。
図1
図2
図3
図4
図5
図6