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特許7298027生体サンプル用の容器およびそれらの保存のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】生体サンプル用の容器およびそれらの保存のための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20230619BHJP
   B01L 3/00 20060101ALI20230619BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
G01N1/04 J
B01L3/00
A61J1/05 353
G01N1/04 H
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022532835
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 IB2020061324
(87)【国際公開番号】W WO2021111294
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】102019000022644
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521023333
【氏名又は名称】エンリコ・ビコッキ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エンリコ・ビコッキ
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/092638(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/016676(WO,A1)
【文献】特表2018-532111(JP,A)
【文献】国際公開第2016/079611(WO,A1)
【文献】特表2014-517315(JP,A)
【文献】特表2015-535607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
B01L 1/00-99/00
A01N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体サンプル用の容器(1)であって、
第1の雄ねじ(21)を設けられておりかつ第1の円形口部(22)で終端する側壁(20)を有する、下部レセプタクル(2)と、
第2の雄ねじ(31)を設けられておりかつ第2の円形口部(32)を備えた一方の端部および閉鎖ベース(33)を備えた他方の端部で終端する側壁(30)を有する、前記容器(1)を作動させる前に、有毒液体(LF)を内部に含有するように設計されている上部レセプタクル(3)と、
接続スリーブ(4)と、
を含み、
前記接続スリーブ(4)は、
- 前記下部レセプタクル(2)の前記第1の雄ねじ(21)に係合する第1の雌ねじ(44)を備えた下部側壁(43)を有する、下部(41)と、
- 自由端(46)で終端しかつ第1の内面平滑帯(47)、前記上部レセプタクル(3)の前記第2の雄ねじ(31)に係合するねじ山(70)を備えた雌ねじ区域(48)、および前記自由端(46)付近の第2の内面平滑区域(49)を含む上部側壁(45)を有する上部(42)と、
- 前記下部(41)を前記上部(42)から分離しかつ煙突要素(65)内に作成されている中心ベント開口部(55)、および前記有毒液体(LF)の移動のために、前記中心ベント開口部(55)に対して周辺領域(52)内に作成されている複数の移動開口部(51)を設けられている横方向隔壁(40)と、
を含み、
- 前記接続スリーブ(4)において、
- 前記横方向隔壁(40)の前記周辺領域(52)は、前記接続スリーブ(4)の前記上部(42)内に直角に突出している第1の環状突出部(53)により内側で範囲を定められており、前記上部レセプタクル(3)が前記接続スリーブ(4)の前記上部(42)内へ完全にねじ込まれると、前記第1の環状突出部(53)は前記第2の円形口部(32)と共に密封を生み出すようになされており、
- 少なくとも部分的に存在する環状リム(54)が、前記上部側壁(45)の前記自由端(46)付近で内向きに突出しており、前記環状リム(54)はアンダーカットを前記接続スリーブ(4)の前記上部(42)の前記第2の内面平滑区域(49)内に作り出すようになされている内径を有し、
- 前記上部レセプタクル(3)は、前記第2の円形口部(32)と同軸に、
- 前記自由端(46)付近の前記第2の内面平滑区域(49)内に、前記接続スリーブ(4)の前記環状リム(54)の前記内径よりも大きい外径を有する径方向リング(63)と、
- 前記上部レセプタクル(3)の前記閉鎖ベース(33)から前記下部レセプタクル()に向かって先細りになっている幹部(56)であり、前記上部レセプタクル(3)が完全にねじ込まれると、前記横方向隔壁(40)の前記中心ベント開口部(55)内へ緊密に嵌合することができ、かつ前記上部レセプタクル(3)が前記環状リム(54)に至るまで部分的に回し外されると、前記上部レセプタクル(3)が回し外されることによって、緊密に嵌合していた前記中心ベント開口部(55)が通気道として機能する位置まで前記上部レセプタクル(3)が上昇し、それによって通気道を作り出すことができる、幹部(56)と
を含む、
容器(1)。
【請求項2】
前記上部レセプタクル(3)は、前記第2の円形口部(32)と同軸に、横方向ベース(61)と、前記接続スリーブ(4)の前記上部側壁(45)の前記第1の内面平滑帯(47)と横方向接触して密封されることが意図されている第1の環状長手方向壁(62)とを有する中空円筒要素(60)を含む、請求項1に記載の容器(1)。
【請求項3】
第2の環状突出部(57)が、前記上部レセプタクル(3)の前記第2の円形口部(32)を封止受容するように適合されている第1の溝部(58)を作り出すために、前記接続スリーブ(4)の前記上部(42)内に直角に、前記横方向隔壁(40)から突出している、請求項1に記載の容器(1)。
【請求項4】
第3の環状突出部(59)が、前記上部レセプタクル(3)の前記中空円筒要素(60)の第1の長手方向環状壁(62)を封止受容するための第2の溝部(64)を作り出すために、前記接続スリーブ(4)の前記上部(42)内に直角に、前記横方向隔壁(40)から突出している、請求項2に記載の容器(1)。
【請求項5】
前記上部レセプタクル(3)は、前記第2の円形口部(32)と同軸に、その中空円筒要素(60)内に、前記接続スリーブ(4)の前記横方向隔壁(40)の前記周辺領域(52)と端部接触することになる第2の長手方向環状壁(72)を含む、請求項2に記載の容器(1)。
【請求項6】
前記上部レセプタクル(3)は、前記接続スリーブ(4)の前記上部(42)内での前記上部レセプタクル(3)の強制的な導入を可能にするためにどちらも可撓性を有するように作成されている前記径方向リング(63)と前記第2の雄ねじ(31)とを有する、請求項1に記載の容器(1)。
【請求項7】
前記横方向隔壁(40)は、前記煙突要素(65)の面の反対側のその面上に延在している陥凹部(66)を有し、前記陥凹部(66)内へ、前記煙突要素(65)の前記中心ベント開口部(55)が狭いポート(67)内で合流している、請求項1に記載の容器(1)。
【請求項8】
前記上部レセプタクル(3)の前記幹部(56)であって、前記接続スリーブ(4)の前記上部(42)内で前記上部レセプタクル(3)をねじ込むことおよび回し外すことにおいて、前記煙突要素(65)の前記中心ベント開口部(55)内で移動することができる、前記上部レセプタクル(3)の前記幹部(56)は、前記幹部(56)の残部の直径に対して減少した直径の末端管(68)を有し、前記末端管(68)は、
- 前記上部レセプタクル(3)が前記接続スリーブ(4)の前記上部(42)内へ完全にねじ込まれると、前記陥凹部(66)内での前記中心ベント開口部(55)の前記狭いポート(67)との緊密な封止、および
- 前記上部レセプタクル(3)が前記接続スリーブ(4)の前記上部(42)内で前記環状リム(54)に至るまで回し外されると、前記上部レセプタクル(3)が回し外されることによって、緊密に嵌合していた前記中心ベント開口部(55)が通気道として機能する位置まで前記上部レセプタクル(3)が上昇し、それによって通気道をもたらすことができる、請求項7に記載の容器(1)。
【請求項9】
前記上部レセプタクル(3)は、その回転のために前記上部レセプタクル(3)の把持を容易にする2つの反対側にある外側径方向フィン(73)を有する、請求項1に記載の容器(1)。
【請求項10】
前記接続スリーブ(4)は、その自由端(46)内で外向きに突出している膨張部(69)を有する、請求項1に記載の容器(1)。
【請求項11】
請求項1に記載の前記容器を作動させることによる、生体サンプルの保存のための方法であって、前記下部レセプタクル(2)を前記接続スリーブ(4)から完全に回し外すステップと、前記生体サンプルを前記下部レセプタクル(2)内に直接挿入するステップと、緊密な封止を得るために、前記下部レセプタクル(2)を前記接続スリーブ(4)上に再度ねじ込むステップと、を含み、
次のさらなるステップ:
- 前記有毒液体(LF)を前記横方向隔壁(40)の前記周辺領域(52)内の前記複数の移動開口部(51)を通して前記下部レセプタクル(2)内へ移動させかつ前記下部レセプタクル(2)内に含有されている空気を前記煙突要素(65)の前記中心ベント開口部(55)を通して流動させるために、前記上部レセプタクル(3)をその径方向リング(63)の前記接続スリーブ(4)の前記環状リム(54)との接触まで回し外すステップ、
- 前記上部レセプタクル(3)を、前記横方向隔壁(40)上の、前記第2の円形口部(32)の止め具に至るまで緊密に再度ねじ込むステップ
を特徴とし、
その結果、
- 前記容器(1)を作動させる前に、前記有毒液体(LF)は、前記上部レセプタクル(3)および前記横方向隔壁(40)により範囲を定められている空間内に閉じ込められ、前記上部レセプタクル(3)は前記横方向隔壁に当接して前記接続スリーブ(4)の前記上部(42)内へ完全にねじ込まれ、
- 記容器(1)を作動させている間、前記上部レセプタクル(3)を回し外す時、外部との前記容器(1)の内部の連通は存在せず、
- 前記容器(1)を作動させた後、前記容器(1)は、前記下部レセプタクル(2)と前記上部レセプタクル(3)との間にいかなる連通もなく、前記上部レセプタクル(3)を前記接続スリーブ(4)の前記横方向隔壁(40)に当接してねじ込むことにより、再度閉じられる、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体サンプル用の容器に関する。詳細には、本発明は、生検もしくは外科的に除去された組織片などの生体サンプル、または尿、腹水、胸膜液などの排泄物もしくは生体液体のサンプル、の保存、保管および輸送を可能にする、体外診断ならびに研究用の容器に関する。本発明の適用の分野は、より具体的には、生体サンプルの病理学、組織学、微生物学、および分子生物学の診断ならびに研究のためのインビトロ検査の分野である。該容器は使い捨てタイプである。また、本発明は、ヒト、動物または植物由来のサンプルの安定化および保存のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
より詳細には、生体サンプルが、多数の疾病の最適な治療を見つけ、研究し、病期分類し、判定するために、一般的に、病理学的分析、組織学的分析、微生物分析、または分子分析のために取られる。
【0003】
正確で詳細な形態学的分析または分子分析に関する必要不可欠な条件が、サンプルの環境ストレスへの暴露に因るまたはサンプル自体に固有の分解過程に起因する構造変化および分子変化を回避する、生体サンプルの質の高さである。したがって、試料採取の直後にまたは可能な限り速やかに保存し、その後そのような生体サンプルを、サンプルの構造的完全性および分子完全性を維持し安定させながら、管理条件下で保管し輸送するための容器および方法を提供する必要がある。そのような保存および保管は、一般的に、サンプルへ適切な化学試薬を添加することにより達成される。
【0004】
伝統的に、細胞および組織を保存し保管する細胞学および組織学において、サンプルは防腐剤/安定剤試薬の単一の混合物中に浸漬される。残念ながら、これに適した流体が有毒または危険であることが多い。例えば、診断組織病理学において最も一般的に使用される防腐剤/安定剤試薬である10%中性緩衝ホルマリンが、リン酸塩等張緩衝液中の4%ホルムアルデヒド溶液である。診断ルーチンにおいて、ホルムアルデヒドが経口摂取、皮膚接触、および吸入に因る高い急性毒性を有する物質に分類されているので、ホルムアルデヒドの使用における最大の問題がオペレータの健康リスクの抑制であることが明らかである。欧州委員会規則(EU)No.605/2014は、ホルムアルデヒドをCarc.1BおよびMuta.2(発癌性、変異原性、または有毒性に分類されている物質)に分類している。
【0005】
特許文献1が、緩衝液を含有するレセプタクルと、穿孔キャップと、保護膜により封止された、ホルマリンを含有しているカプセルと、穿孔キャップのベースとカプセルとの間に挿入されている安全リングナットとを含む、ヒト組織サンプルの保存および輸送のための使い捨て容器を記載している。リングナットのねじ切り上に配置されているストッパが、カプセルがリングナット上へねじ込まれると、壊される。
【0006】
特許文献2が、生検標本を含有するように適合されている本体と、該本体上にねじ込まれてそれを緊密に閉じるように適合されているキャップとを含む容器を開示している。該キャップは、引裂き可能な膜により底部において閉じられている、保存溶液を含有するためのレセプタクルと、該膜に押し付けられてそれを引き裂くように適合されている穿刺部材とを含む。キャップは有孔下壁を有し、膜の引裂きの結果として、保存溶液がレセプタクルから本体へ流動することを可能にする。
【0007】
特許文献3が、組織サンプル容器および蓋部を開示している。該蓋部は、保存薬を含有するように適合されている封止レセプタクルと、該封止を壊すように作動可能な穿刺要素とを有する。
【0008】
ホルムアルデヒドのリスクからユーザを守るために、同一出願人の特許文献4が、無毒液体を含有することが意図されている下部レセプタクルと、有毒液体を含有することが意図されている上部レセプタクルと、該下部レセプタクルおよび該上部レセプタクルにそれらの突合わせ継ぎ手としてねじ結合している接続スリーブとを有する体外診断容器を記載している。該接続スリーブは、複数の移動開口部と中心ベント開口部とを設けられている横方向隔壁を有する。下部レセプタクルと上部レセプタクルとは、容器が完全に閉じられると、横方向隔壁に当接する。上部レセプタクルが横方向隔壁から部分的に回し外された場合、有毒液体は重力により下部レセプタクル内へ入る。
【0009】
特許文献4による上述の容器において、横方向隔壁に当接した上部レセプタクルの緊密な封止は、同の簡単な突合わせ継ぎ手が原因で、保証されない。さらに、上部レセプタクルから下部レセプタクルへの有毒液体の移動は、外部からの少量の空気の進入、および結果として生じる、有毒液体からの蒸気と混合された可能性がある同体積の空気の外部への漏出につながる可能性があると考えられる。
【0010】
さらに、接続スリーブに対する上部レセプタクルの回し外しは、該接続スリーブの上部の上端部付近の、接続スリーブの上部の雌ねじに設けられている停止突起部により制限される。このようにして、有毒液体蒸気のさらなる拡散につながる可能性があると考えられる回し外しを、ユーザが強制することにより進めないことを推奨されなければならない。止め突出部により与えられる事前注意は汚染のリスクを低減するのに十分でないことは明白である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許第3328286号公報
【文献】欧州特許第3220832号公報
【文献】米国特許出願公開第2017/0231604号明細書
【文献】国際公開第2019092638号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、先行技術により提示されている欠点を克服することを目的としている。
【0013】
本発明の目的が、体外診断用の容器内での生体サンプルの移動および配設中、通常は有毒物質または有害物質を含有する防腐剤/安定剤試薬への接触と吸入の両方による暴露のリスクを無くすことである。
【0014】
本発明の主目的が、接続スリーブの横方向隔壁に当接した上部レセプタクルの緊密な封止を生み出すことにおいて使い易く、信頼性のある容器を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的が、デバイスを作動させる時の外部からの空気の進入および有毒液体またはそのように見なされるものから生じる蒸気と混合された空気の脱出を回避することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的が、接続スリーブに対する上部レセプタクルの安全で確実な回し外しのために正確な当接を実現して、有毒液体蒸気の拡散のさらなる潜在源を回避することである。
【0017】
別の重要な目的が、使い易く、かつ病理学検査、組織学的検査、微生物学的検査、および分子検査を受ける生体サンプルの保管および輸送のために働く人に対する過失の可能性を殆ど残さない、上述の目的を有する容器を使用する方法を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的が、完全で、試薬で充填済みの容器を提供することであり、該容器は保護膜を用いて有毒液体を封止する必要がなく、したがって、何枚かの膜が上部レセプタクルから下部レセプタクルへの防腐剤試薬の流動に対する障害を生むリスクを示さない。
【0019】
本発明の別の目的が、容器を閉じた後の下部レセプタクルから上部レセプタクルへの液体の、可能性のある逆流から生じるリスクを無くすことである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
したがって、その第1の実施形態では、本発明は、請求項1から10に記載の、生体サンプル用の容器を提供する。
【0021】
その第2の態様では、本発明は、請求項11および12に記載の、生体サンプルを保管する方法を提供する。
【0022】
本発明のさらなる特徴および利点が、添付図面に示されている容器の実施形態の説明から、最も明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】閉状態位置にある、本発明による容器の全体斜視図である。
図2】閉状態位置にある、本発明による容器の上面平面図である。
図3】閉状態位置にある、本発明による容器の側面図である。
図4】閉状態位置にある、本発明による容器の、側面図内の線A-Aに沿った中心長手方向横断面図である。
図5図4の中心長手方向横断面図の部分拡大図である。
図6】本発明による容器の下部レセプタクルの斜視図である。
図7】本発明による容器の下部レセプタクルの上面平面図である。
図8】本発明による容器の下部レセプタクルの側面図である。
図9】本発明による容器の下部レセプタクルの、側面図内の線B-Bに沿った中心長手方向横断面図である。
図10】本発明による容器の接続スリーブの斜視図である。
図11】本発明による容器の接続スリーブの上面平面図である。
図12】本発明による容器の接続スリーブの側面図である。
図13】本発明による容器の接続スリーブの、側面図内の線C-Cに沿った中心長手方向横断面図である。
図14】本発明による容器の上部レセプタクルの斜視図である。
図15】本発明による容器の上部レセプタクルの底面平面図である。
図16】本発明による容器の上部レセプタクルの側面図である。
図17】本発明による容器の上部レセプタクルの、側面図内の線D-Dに沿った中心長手方向横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
閉状態位置にある、本発明による体外診断用の容器1のそれぞれ全体斜視図、上面平面図、側面図、および中心長手方向横断面図である、図1から図4までを最初に参照する。図4の中心長手方向横断面図は図3の線A-Aに沿って得られる。
【0025】
容器1は、下部レセプタクル2と、上部レセプタクル3と、接続スリーブ4とで構成されており、該接続スリーブは、下部レセプタクル2を上部レセプタクル3に結合するためのねじ結合手段としての機能を果たす。「下部」および「上部」という用語は、容器が完全に閉じられている場合に該容器はいかなる分け隔てもなく任意の状態位置を取り得るため、その取扱いにおいて容器の立位を指す。
【0026】
下部レセプタクル2は、容器を作動させる前に、通常は固体サンプルの脱水を防止するかもしくは半固体サンプルを懸濁するようにまたは液体サンプルを希釈するように適合されている緩衝液などの無毒液体を含有することが意図されていることが好ましい。下部レセプタクル2は、液体が生体サンプルの特定の保管に必要とされない場合、液体を有さないことは明白であるはずである。下部レセプタクル2のそれぞれ斜視図、上面平面図、側面図、および該側面図の線B-Bに沿った中心長手方向横断面図である、図6から図9までに示されている通り、該下部レセプタクルは、雄ねじ21を備え付けられておりかつ円形口部22で終端する側壁20を有する。
【0027】
ここで、本発明による容器1の上部レセプタクル3のそれぞれ斜視図、底面平面図、側面図、および該側面図の線D-Dに沿った中心長手方向横断面図である、図14から図17までを参照する。該上部レセプタクル3は、容器の作動の前に、有毒液体またはそのように見なされるもの、通常は防腐剤/安定剤混合物、を含有することが意図されている。上部レセプタクル3は雄ねじ31を設けられておりかつ円形口部32で終端する側壁30を有する。
【0028】
ここで、本発明による容器1の接続スリーブ4のそれぞれ斜視図、上面平面図、側面図、および該側面図の線C-Cに沿った中心長手方向横断面図である、図10から図13までを参照する。該接続スリーブ4は、図4に示されている通り、下部レセプタクル2および上部レセプタクル3それぞれの雄ねじ21および31と同レセプタクルの突合わせ継ぎ手として長手方向に係合されている。接続スリーブ4は、容器1が完全に閉じられると下部レセプタクル2および上部レセプタクル3が両側でそれらのそれぞれの円形口部22、32に当接する横方向隔壁40を有する。
【0029】
したがって、本発明による下部レセプタクル2と上部レセプタクル3との間のねじ結合手段は、下部41と上部42とを含む単一の接続スリーブ4で構成されていることが分かる。
【0030】
下部41は、下部レセプタクル2の雄ねじ21と係合する雌ねじ44を備えた側壁43を有する。上部42は、上部レセプタクル3の雄ねじ31と係合する雌ねじ帯48を備えた側壁45を有する。
【0031】
横方向隔壁40は、接続スリーブ4の下部41をその上部42から分離し、横方向隔壁40の周辺領域52内に設けられている貫通孔の形の複数の移動開口部51と、煙突要素65の中心ベント開口部55とを設けられている。
【0032】
詳細には、図5を参照すると、接続スリーブ4の上部42の上部側壁45は第1の内面平滑帯47と、上部レセプタクル3の雄ねじ31と係合するねじ山70を備えた上述の雌ねじ帯48と、上部42の自由端46付近の第2の内面平滑帯49とを含む。
【0033】
本発明によれば、横方向隔壁40に当接した上部レセプタクル3の緊密な封止が、横方向隔壁40との上部レセプタクル3の継ぎ手内に作成されている特定の構造のお蔭で生み出される。
【0034】
詳細には、上部レセプタクル3に対向している、接続スリーブ4の横方向隔壁40の面内に、接続スリーブ4の上部42内に直角に突出している第1の環状突出部53が設けられており、横方向隔壁40の周辺領域52の範囲を内側で定めている。該第1の環状突出部53は、上部レセプタクルが接続スリーブ4の上部42内へ完全にねじ込まれると、上部レセプタクル3の円形口部32と共に緊密な封止を生み出すようになされている。
【0035】
第1の環状突出部53の同軸内側の第2の環状突出部57が、第1の溝部58を形成するために、横方向隔壁40から接続スリーブ4の上部42内に直角に突出していることが好ましい。第1の環状突出部53と第2の環状突出部57とが、上部レセプタクル3の円形口部32のためのガイドを作り出すために、上向きにテーパが付けられていることが好都合である。実際、第1の溝部58は、この円形口部32を受容し、1つだけの第1の環状突出部53よりも良好な封止を生み出すようになされている。このようにして、上部レセプタクル3内に含有されている有毒液体LFは、上部レセプタクルが横方向隔壁40に当接して完全にねじ込まれると、同から脱出することを防止される。
【0036】
常に、レセプタクル3に対向している横方向隔壁40の面上に、接続スリーブ4の上部42内に直角にかつ前の第1の環状突出部53および第2の環状突出部57と同軸に突出している第3の環状突出部59が存在することが有利である。該第3の環状突出部59は、接続スリーブ4の第1の内面平滑帯47と共に第2の溝部64を作り出し、円形口部32との第1の溝部58の結合を通り抜けてレセプタクル3から漏出した可能性があるいかなる有毒液体も、接続スリーブ4の上部42と上部レセプタクル3の外面との間に分散されることが防止される。これは、上部レセプタクル3の円形口部32の周囲の特定の構造で達成される。
【0037】
この特定の構造において、上部レセプタクル3は、円形口部32と同軸で、横方向ベース61と、接続スリーブ4の上部側壁45の第1の内面平滑帯47と横方向密閉接触することを意図されている第1の長手方向環状壁62とを有する中空円筒要素60を含む。
【0038】
詳細には、上部レセプタクル3の中空円筒要素60の第1の長手方向環状壁62は、接続スリーブ4の上部側壁45の第1の内面平滑帯47と共に第3の環状突出部59により作り出される第2の溝部64内に挿入される。
【0039】
上部レセプタクル3と横方向隔壁40との間にさらなるラビリンスシールを生み出すために、上部レセプタクル3の中空円筒要素60は、円形口部32と同軸で、接続スリーブ4の横方向隔壁40の周辺領域52と端部で接触することが意図されている第2の長手方向環状壁72を含む。
【0040】
第1の長手方向環状壁62と同軸の、この第2の長手方向環状壁72は、もしあれば上部レセプタクル3からの漏出の場合、有毒液体LFが接続スリーブ4の上部側壁45の第1の内面平滑帯47に到達することを防止する。
【0041】
接続スリーブ4の上部側壁45は、少なくとも部分的に内向きに突出している環状リム54を備えた自由端46を有する。完全であることが好ましい該環状リム54は、接続スリーブ4の上部42内の第2の内面平滑帯49内にアンダーカットを作り出すことができる内径を有する。環状リム54の機能は以下に明確にされる。環状リム54のところに、スリーブ4は、その自由端46内で外向きに突出している膨張部69を有する。
【0042】
上部レセプタクル3は、接続スリーブ4の上部42の直径よりもかなり小さい直径を有する、有毒液体LFを含有している円筒形本体300を有することが好ましい。この選択は、接続スリーブ4の雌ねじ帯48のねじ山70と係合するその雄ねじ31が、上部レセプタクル3の円筒形本体300の直径と比較して、かなりの直径を有することを決定する。その結果として、上部レセプタクル3の雄ねじ31は、接続スリーブ4の上部42における上部レセプタクル3の強制的な導入を可能にするのに十分に可撓性である。
【0043】
さらに、円筒形本体300上に、径方向リング63が存在し、外径がねじ山31の外径よりも僅かに大きく、かつ接続スリーブ4の環状リム54の内径よりも大きい。
【0044】
上部レセプタクル3は、幹部56がそこから内部に垂れ下がる閉鎖ベース33を有する。該幹部56は、上部レセプタクル3が完全にねじ込まれると、煙突要素65の中心ベント開口部55内へ緊密に嵌合することができ、上部レセプタクル3が前記環状リム54に至るまで部分的に回し外されると、通気道を作り出すことができる。
【0045】
煙突要素65の面の反対側の、横方向隔壁40の面に、横方向隔壁40は、煙突要素65の中心ベント開口部55が狭いポート67を介して合流する陥凹部66を有する。
【0046】
接続スリーブ4の上部42内での上部レセプタクル3のねじ込みおよび回し外しにおいて煙突要素65の中心ベント開口部55内で移動することができる、上部レセプタクル3の幹部56は、幹部56の残部の直径と比較して減少した直径の末端管68を有する。
【0047】
上部レセプタクル3が接続スリーブ4の上部42内へ完全にねじ込まれると、減少した直径の末端管68は、陥凹部66内での中心ベント開口部55の狭いポート67との緊密な封止を確実にするように設計されている。
【0048】
幹部56の末端管68は、上部レセプタクル3が環状リム54に至るまで接続スリーブ4の上部42内で回し外されると、通気道をもたらす。
【0049】
上部レセプタクル3は2つの反対側にある外側径方向フィン73を有して、上部レセプタクル3の把持および回転を容易にする。同機能は、上部レセプタクル3の本体300上に得られる、丸い角部74を有する多角面を備えた角柱構造を有する。上部レセプタクル3の開閉それぞれの方向を指示する矢印または言葉がこれに75で示されている。当然のことながら、開の方向は安全目的で最も重要である。
【0050】
突出部76が下部レセプタクル2の壁20に設けられており、その回し外しおよびねじ込みを容易にする。
【0051】
また、本発明は、今までのところ記載されている、体外診断用の容器の使用による、ヒト、動物または植物由来の生体サンプルを保管する方法を提供する。レセプタクル2および3それぞれの中に無毒液体LSおよび有毒液体LFを既に用意されている、完全に閉じられ封止された容器から始めて、本方法は、無毒液体LSを含有している下部レセプタクル2を接続スリーブ4から完全に回し外すステップと、下部レセプタクル2内にサンプルを直接導入するステップと、緊密な封止を得るように、下部レセプタクル2を接続スリーブ4上にねじ込むステップとを含む。これらのステップは、特許文献4に開示されている方法に既に与えられているものである。本発明によれば、上記に掲載されているステップに続いて、上部レセプタクルの径方向リング63が接続スリーブ4の環状リム54と接触するまで、上部レセプタクル3を回し外すステップがある。このようにして、有毒液体LFは重力3により容器から注がれ、そこで有毒液体は横方向隔壁40の周辺領域52に至るまで煙突要素65の高さよりも低い高さに配置され、周辺領域には複数の移動開口部51が存在する。したがって、有毒液体LFは、浸漬されたサンプルと共に無毒液体の上方に下部レセプタクル2内に含有されている空気が煙突要素65の換気口55を通過して上部レセプタクル3内へ入るお蔭で、移動開口部51を通過する。空気と有毒液体LFの蒸気との混合物は、中空円筒要素60に到達することができると考えられるが、接続スリーブ4の上部側壁45の第1の内面平滑帯47と密閉横方向接触している第1の長手方向環状壁62に沿って上昇することができない。空気と有毒液体LFの蒸気との混合物が、上部レセプタクル3のねじ山31と接続スリーブ4の雌ねじ帯48との間のねじ継ぎ手領域に到達した場合、上部レセプタクル3の径方向リング63が同接続スリーブ4の環状リム54の内側から当接することにより通路を閉じるため、空気と有毒液体LFの蒸気との混合物は接続スリーブ4の外側に向かって進み続けることができないと考えられる。
【0052】
有毒液体LFの下部レセプタクル2内への完全な移動が起こった後、上部レセプタクル3は円形口部32のところで横方向隔壁40に当接してねじ込み戻される。
【0053】
このようにして、容器1の作動の前に、有毒液体LFは、上部レセプタクル3と、上部レセプタクル3が当接して接続スリーブ4の上部42内へ完全にねじ込まれる横方向隔壁40とにより範囲を定められている空間内に閉じ込められる。作動中、上部レセプタクル3の回し外しにより、容器1の内部と外部との間に連通が存在せず、作動後、容器1は、上部レセプタクルを接続スリーブ4の横方向隔壁40に当接してねじ込むことにより、再度閉じられる。
【0054】
再度閉じられた状況では、容器の作動の前に存在する部品の位置は元の状態に戻される。すなわち、下部レセプタクルの円形口部32が接続スリーブ4の横方向隔壁40に当接して密閉されるため、上部レセプタクル3は下部レセプタクル2に対して再度封止され;煙突要素65の中心ベント開口部55は幹部56により閉じられ;上部レセプタクル3の中空円筒要素60は、主にその第1の環状壁62のお蔭で、移動開口部51が存在する、横方向隔壁40の周辺領域52を閉じる。このようにして、本発明による容器が傾けられた場合にも、またはひっくり返された場合にも、下部レセプタクル2の内容物は上部レセプタクル3内へ流れ戻らないと考えられる。
【0055】
本発明の主目的、すなわち有毒液体またはそのように見なされるものの緊密な封止を可能にする、生体サンプル用の容器を作り出すことは、達成されたことが理解されるべきである。該容器の個々の構成要素は、液体および気体により通過されることが不可能である任意の適切な材料、好ましくはポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはそれらの組合せなどのプラスチック材料、で作成され得る。
【符号の説明】
【0056】
1 容器
2 下部レセプタクル
3 上部レセプタクル、重力
4 接続スリーブ
20 (下部レセプタクルの)側壁
21 (下部レセプタクルの)雄ねじ、第1の雄ねじ
22 (下部レセプタクルの)円形口部、第1の円形口部
30 (上部レセプタクルの)側壁
31 (上部レセプタクルの)雄ねじ、ねじ山、第2の雄ねじ
32 (上部レセプタクルの)円形口部、第2の円形口部
33 (幹部の)閉鎖ベース
40 横方向隔壁
41 (接続スリーブの)下部
42 (接続スリーブの)上部
43 (接続スリーブの下部の)側壁
44 (接続スリーブの)雌ねじ、第1の雌ねじ
45 (接続スリーブの上部の)側壁、上部側壁
46 (接続スリーブの上部の)自由端
47 (接続スリーブの上部の側壁の)第1の内面平滑帯
48 (接続スリーブの上部の側壁の)雌ねじ帯、雌ねじ区域
49 (接続スリーブの上部の側壁の)第2の内面平滑帯、第2の内面平滑区域
51 移動開口部
52 (横方向隔壁の)周辺領域
53 (接続スリーブの上部の)第1の環状突出部
54 (接続スリーブの上部の自由端の)環状リム
55 (横方向隔壁の煙突要素の)中心ベント開口部
56 幹部
57 (接続スリーブの上部の)第2の環状突出部、第2の長手方向環状突出部
58 第1の溝部
59 (接続スリーブの上部の)第3の環状突出部
60 中空円筒要素
61 横方向ベース
62 (上部レセプタクルの)第1の長手方向環状壁、第1の環状長手方向壁
63 (円筒形本体の)径方向リング
64 第2の溝部
65 (横方向隔壁の)煙突要素
66 陥凹部
67 狭いポート
68 (幹部の)末端管
69 (接続スリーブの上部の自由端の)膨張部
70 (雌ねじ帯の)ねじ山
72 (中空円筒要素の)第2の環状壁
73 (上部レセプタクルの)外側径方向フィン
74 (上部レセプタクルの)丸い角部
75 (開閉それぞれの方向を指示する)矢印または言葉
76 (下部レセプタクルの側壁の)突出部
300 円筒形本体
A-A、B-B、C-C、D-D 線
LF 有毒液体
LS 無毒液体
図1
図2
図3
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図5
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