(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】仮撚複合加工糸および編地
(51)【国際特許分類】
D02G 3/32 20060101AFI20230620BHJP
D02G 1/02 20060101ALI20230620BHJP
D04B 1/18 20060101ALI20230620BHJP
D04B 21/18 20060101ALI20230620BHJP
A41B 17/00 20060101ALI20230620BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20230620BHJP
A41D 31/04 20190101ALI20230620BHJP
A41D 31/18 20190101ALI20230620BHJP
【FI】
D02G3/32
D02G1/02 A
D04B1/18
D04B21/18
A41B17/00 Z
A41D31/00 503K
A41D31/00 502D
A41D31/04 F
A41D31/18
(21)【出願番号】P 2019036121
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前田 亘洋
(72)【発明者】
【氏名】三輪 和人
【審査官】静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】特公昭50-028536(JP,B1)
【文献】特開平11-021734(JP,A)
【文献】特開平03-227421(JP,A)
【文献】特開昭62-162038(JP,A)
【文献】特公昭49-009427(JP,B1)
【文献】特開昭55-098929(JP,A)
【文献】特開昭48-044548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00-3/48
D02J 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性繊維と非弾性繊維からなる仮撚複合加工糸であり、該仮撚複合加工糸は実質的に開繊部のみで形成されており、さらに、非弾性繊維が熱可塑性合成繊維
のマルチフィラメントである仮撚複合加工糸。
【請求項2】
前記弾性繊維がポリウレタン繊維である
請求項1記載の仮撚複合加工糸。
【請求項3】
該ポリウレタン繊維が旋回性を有する請求項2記載の仮撚複合加工糸。
【請求項4】
前記弾性繊維の糸長手方向の山谷の数が50~500個/1mである請求項1~3のいずれか記載の仮撚複合加工糸。
【請求項5】
伸縮復元率が50%以上である請求項1~4のいずれかに記載の仮撚複合加工糸。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の仮撚複合加工糸を一部に用いてなる編地であり、ループ接点で弾性
繊維同士が融着している伸縮性編地。
【請求項7】
請求項6に記載の伸縮性編地であって、生地の伸長率が120%以上である伸縮性編地。
【請求項8】
請求項6または7に記載の伸縮性編地であって、伸長回復率が80%以上である伸縮性編地。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載の伸縮性編地であって、タテヨコの伸長率バランスが、0.85~1.20である伸縮性編地。
【請求項10】
請求項6~9のいずれかに記載の伸縮性編地であって、切断端部が露出している衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮撚複合加工糸、それを用いた編地およびそれを用いてなる衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、婦人用衣類の多様化、ファッション化の傾向は、益々進行し、中でも、適度の伸縮性があって身体に気持ちよくフィットする、薄地で編目の美しい、かつ下着のヘムラインが外衣を通して外観に現れない、ファッショナブルなファンデーション衣類に対する要求が大きい。加えて、編地の縁の始末をしないで切り放しのまま形成し、お洒落な着衣として楽しみたいという傾向がある。
【0003】
また、ポリウレタン弾性繊維を混用した編地を使用した製品は、伸びが大きく、伸長状態からの回復力やフィット性が良いため、広く利用されているが、ポリウレタン弾性繊維を混用した編地を繰り返し伸長すると、変形して不均一な編地になり「変形、目ずれ、わらい」、裁断部より糸が抜け出した「ほつれ」、編地の組織にはしご状の傷やずれが発生した「ラン、デンセン」、編地が湾曲した「カール」、ポリウレタン弾性繊維が抜け出す所謂「スリップイン」等の問題が起き易い。
【0004】
上記問題を解決するため、例えば、少なくとも非弾性糸が1×1トリコット組織であり、弾性糸がルーピング組織からなる、伸縮性を有する経編地を、編み方向に対し3度以上177度以下の角度で裁断し、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が衣料の縁部になるように形成された衣料が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、高融着耐アルカリ性ポリウレタン弾性繊維のベア糸が、少なくとも1種類の非弾性糸からなる1×1ゴム編組織又は中糸入りリバーシブル編組織の緯編地を構成する各ループ目の全てにプレーティングされてなり、熱セットにより高融着耐アルカリ性ポリウレタン弾性繊維相互及び/又はこれと非弾性糸の交差部が熱融着されている緯編地が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
さらに、上記を改善すべく、弾性糸と非弾性糸とからなり、エアー交絡させたエアー交絡複合糸を使用して、裁断箇所を処理せずに、切りっぱなしで使用する伸縮性編地が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3672920号公報
【文献】特開2005-350800号公報
【文献】特許第5631528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1記載の衣料は裁断方向を制限した上で縁始末不要ではあるが、編地の縁部がカーリングしてしまう。
【0009】
また、上記特許文献2記載の編地は、弾性繊維をドラフト状態で編機の給糸口に供給するための装置が必要であり、該装置のない編機では編立て出来ない問題がある。また、すべての給糸口の弾性繊維のドラフト率を一定に調整する必要があり、調整に手間がかかる問題がある。
【0010】
さらに、上記特許文献3の編地に用いる糸は、エアー交絡していることから、交絡部分は複合された糸が収束しており、該収束部により本来糸の有するストレッチ性が阻害され低下してしまい、かつ風合いも、硬くなってしまう。また、該収束部では非収束部と比較して糸同士が融着しにくく、加工性低下につながり、編地においても、糸同士の融着部が剥がれ、形態安定性が損なわれてしまう。
【0011】
そこで本発明は、上記の従来技術の課題を解決し、高いストレッチ性とソフトな風合いを合わせ持つ、後工程通過性の良好な複合加工糸および形態安定性に優れた伸縮性編地を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、下記の構成を有する。
【0013】
(1)弾性繊維と非弾性繊維からなる仮撚複合加工糸であり、該仮撚複合加工糸は実質的に開繊部のみで形成されており、さらに、非弾性繊維が熱可塑性合成繊維である仮撚複合加工糸。
【0014】
(2)弾性繊維がポリウレタン繊維である仮撚複合加工糸。
【0015】
(3)該ポリウレタン繊維が旋回性を有する前記(2)記載の仮撚複合加工糸。
【0016】
(4)弾性繊維の糸長手方向の山谷の数が50~500個/1mである前記(1)~(3)のいずれか記載の仮撚複合加工糸。
【0017】
(5)伸縮復元率が50%以上である前記(1)~(4)のいずれかに記載の仮撚複合加工糸。
【0018】
(6)前記(1)~(5)のいずれかに記載の仮撚複合加工糸を一部に用いてなる編地であり、ループ接点で弾性糸同士が融着している伸縮性編地。
【0019】
(7)前記(6)に記載の伸縮性編地であって、生地の伸長率が120%以上である伸縮性編地。
【0020】
(8)前記(6)または(7)に記載の伸縮性編地であって、伸長回復率が80%以上である伸縮性編地。
【0021】
(9)前記(6)~(8)のいずれかに記載の伸縮性編地であって、タテヨコの伸長率バランスが、0.85~1.20である伸縮性編地。
【0022】
(10)前記(6)~(9)のいずれかに記載の伸縮性編地であって、切断端部が露出している衣服。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、高いストレッチ性とソフトな風合いを合わせ持つ、後工程通過性の良好な複合加工糸および形態安定性に優れた伸縮性編地が得られるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の仮撚複合加工糸を例示する模式側面図である。
【
図2】
図2は開繊部と収束部を交互に形成されてなる仮撚複合加工糸を例示する模式側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の仮撚複合加工糸を製造する工程の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、仮撚複合加工糸中の弾性繊維の山谷の数の評価方法を説明するための概念図である。
【
図5】
図5は、仮撚複合加工糸が開繊部のみで形成されているか否かの評価方法を説明する概念図である。
【
図6】
図6は、ほつれ、形態安定性の評価方法を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明で用いる弾性繊維としては、ポリウレタン系弾性繊維、ポリエーテルエステル系弾性繊維等のポリエステル系弾性繊維、ポリエーテルアミド系弾性繊維、ポリエーテルエステルアミド系弾性繊維等のポリアミド系弾性繊維等、いわゆるゴム状弾性を示す繊維を用いることができる。また2種以上の熱可塑性樹脂材料をサイドバイサイド型、偏心型、茸型、だるま型などの断面形状に複合して製造した複合糸とすることも可能である。複合糸とする場合に用いる熱可塑性樹脂材料としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等から、所望の特性を有するよう、樹脂種が異なる組み合わせ、あるいは同じ骨格を有していても粘度が異なる組み合わせ等から適宜選択して用いることができる。
【0026】
中でも、ポリウレタン弾性繊維が好ましい。
【0027】
弾性繊維はモノフィラメント、マルチフィラメントのいずれでも良い。
【0028】
弾性繊維の繊度が高い場合は、編地にした場合、張り腰は強くなるが、風合いが粗硬になる。一方、繊度が低いと、仮撚加工や編成加工において、糸切れ等が増加し、工程通過性が低下する。良好な工程通過性を維持し、編地に適度な張り腰と柔らかさを与えるためには、繊度は10~110dtexが好ましく、特に一般衣料用としては10~78dtexの細い繊度が好ましく、更に好ましくは10~44dtexである。
【0029】
また、本発明で用いる弾性繊維は、旋回能を有することが好ましい。旋回能とは、そのままで、あるいは仮撚加工等の加撚状態での熱処理および解撚の各種処理を経て仮撚複合加工糸と為した後、仮撚複合加工糸中の弾性繊維が旋回する性質を示すことをいう。上記旋回する性質(旋回性)の有無は、後述の旋回性の有無の評価方法により判断される。弾性繊維の旋回性が発現すると、エアー交絡しなくても、弾性繊維が近接の非弾性繊維1~数本に巻き付こうとするため、互いに離れにくい構造を形成することが可能である。
【0030】
このような旋回能を有する弾性繊維としては、ポリウレタン繊維、ポリエステル弾性繊維、ポリアミド弾性繊維などが挙げられるが、なかでもポリウレタン繊維が優れたストレッチ性と回復性の点から好ましい。
【0031】
本発明で用いる非弾性繊維としては、熱可塑性合成繊維であり、いわゆるゴム状弾性は示さない繊維として一般的に分類される繊維であり、1種類の熱可塑性マルチフィラメント、あるいは少なくとも2種類の熱可塑性マルチフィラメントからなる複合加工糸を用いることが好ましい。熱可塑性マルチフィラメントとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートあるいはこれらの共重合体からなる繊維等のポリエステル繊維、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)等のポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂からなる繊維等のオレフィン系繊維等が好適である。
【0032】
また、上記非弾性繊維としては、弾性繊維よりも融点もしくは軟化点の高い素材で構成することが好ましい。
【0033】
弾性繊維と非弾性繊維が、互いに離れにくい構造にする点から、非弾性繊維の繊度は弾性繊維の繊度と同等、あるいはそれ以上の繊度であることが好ましい。
【0034】
非弾性繊維の繊度が高い場合は、編地にした場合、風合いは柔らかくなるが、ふかつく傾向にあり、張り腰は弱くなる。一方、繊度が低いと、仮撚加工や編成加工において、糸切れ等が増加し、工程通過性が低下する。良好な工程通過性を維持し、編地に適度な張り腰と柔らかさを与えるためには、非弾性繊維の繊度は好ましくは10~220dtex、より好ましくは15~110dtexである。
【0035】
非弾性繊維がマルチフィラメントである場合、その単繊維繊度は、風合いのソフト化の点から0.5dtex~2.0dtexとすることが好ましい。非弾性繊維の単繊維のフィラメント数を20本以上とすることで、単繊維同士が互いに密着し過ぎず、弾性繊維に適度に割り込み、弾性繊維と非弾性繊維が離れにくい構造を形成し易くなる。
【0036】
これらの非弾性繊維の単繊維の断面形状は、丸、三角形、扁平、六角形、八角形、多葉形などであっても構わない。また、2種以上の材料を複合して製造した複合糸とすることも可能であり、その断面形状については、同芯円型芯鞘複合構造などであってもよい。
【0037】
本発明においては、特に、上記弾性繊維と非弾性繊維とを用い、弾性繊維と非弾性繊維を引き揃え、延伸・仮撚加工後に巻き取ることにより得られる仮撚複合加工糸が好ましい。これにより、積極的に交絡処理を施さなくても延伸により発現した瞬時の弾性回復力を利用し、弾性繊維と非弾性繊維が互いにずれにくい構造を取りやすくなる。
【0038】
図1は、本発明の仮撚複合加工糸を例示する模式側面図である。
図1において、仮撚複合加工糸は、捲縮が発現した開繊部のみで形成されている。
図2は開繊部と収束部を交互に形成されてなる仮撚複合加工糸を例示する模式側面図であり、本発明の仮撚複合加工糸との比較のために示したものである。
【0039】
本発明の仮撚複合加工糸は、
図1に示すように糸条の長手方向にわたり弾性繊維102と非弾性繊維103とが仮撚複合し、実質的に開繊部101のみで形成される構造を有するものである。
図2に示すような従来の交絡処理によって得られる開繊部202と収束部201が交互に出現する構成は認められないものである。そして該開繊部では仮撚加工による捲縮が発現しており、従来の交絡処理によって得られるような、捲縮が実質的に発現していない収束部は認められない。交絡処理による収束部とは、開繊部と交互に出現する部分であって、かつ隣接するフィラメントが交差することにより、実質的に全フィラメントが密に収束し、1本1本が容易に分離出来ない状態になっている部分をいう。
【0040】
このように、本発明の仮撚複合加工糸は実質的に開繊部のみで形成されるが、仮撚加工により互いにずれにくい構造を形成するため、弾性繊維と非弾性繊維同士が編成時の解舒では分離し難いが、いずれの糸も表面に露出し得るなど、各フィラメントが拘束されずに自由に動くことができるので、仮撚加工によりそれぞれの単糸において自由な捲縮が発現し、柔らかな風合いを得ることができる。
【0041】
また、仮撚複合加工糸においては、伸縮復元率50%以上が好ましい。伸縮復元率が低いと、ストレッチ性に乏しく、編地にした際に、十分なストレッチ性を得ることができない。50%以上あれば、身体の動きに低負荷で追従する編地とすることができる。さらに好ましくは、55%以上である。上限としては、特に限定はなく、用いる弾性繊維の種類によるが、80%程度であることが好ましい。
【0042】
本発明の仮撚複合加工糸は、弾性繊維の糸長手方向において、糸長1mあたりの山谷の数が、50~500個であることが好ましく、80~450個であることがより好ましく、100~400であることが、生地でのストレッチ性の点から最も好ましい。
【0043】
上記延伸・仮撚加工においては、適切な延伸倍率で延伸し、仮撚複合することにより、弾性繊維と非弾性繊維同士が同位相となるようなクリンプが形成されるが、仮撚加工の際、デリベリローラーを出た直後に張力緩和が生じることにより、弾性繊維の捲縮の位相と非弾性繊維の捲縮の位相がずれて、隣接する弾性繊維と非弾性繊維の山と谷または谷と山が重なるようになる。このように弾性繊維と非弾性繊維の山と谷または谷と山が重なると、当該繊維はファスナー効果により、あたかも1本の糸のように振る舞うため、弾性繊維と非弾性繊維がずれにくくなる。弾性繊維の糸長1mあたりの山谷の数が100個以上であることで、優れたファスナー効果が得られ、後工程の過程で弾性繊維と非弾性繊維が分離することがないので、特に優れた後加工通過性を発揮する。
【0044】
図3の工程図に従い詳細に説明する。
図3は、本発明の仮撚複合加工糸を製造する工程の一例を示す概略図である。
図3の例においては、弾性繊維301を第1フィードローラー303と第2フィードローラー304の間で一定倍率に伸長し、一方、非弾性繊維302をパッケージより解舒して、第2フィードローラー304に供給する。前記第1フィードローラー303と第2フィードローラー304の間における弾性繊維301のドラフト率は、ともに用いる非弾性繊維302に応じ、適宜調整される。例えば非弾性繊維がポリエステル系繊維の場合3.4~1.6倍であることが好ましく、非弾性繊維がポリアミド系繊維の場合5.0~2.3倍であることが好ましい。第2フィードローラー304を出た弾性繊維301と非弾性繊維302は施撚体307とヒータ-305からなる施撚装置で撚りを加えられ、合撚状態で第2フィードローラー304とデリベリーローラー308の回転速度差と、ヒーター305により延伸、熱セットが施される。
【0045】
上記施撚体としては、仮撚ピン、フリクションディスク、ベルトニップ等が好ましく挙げられる。
【0046】
ヒーターの温度としては120~230℃であることが好ましい。ただし、伸縮復元率を50%以上に調整できれば、この範囲を外れても問題無い。
【0047】
ヒーターを出た糸はクーリングプレート306で冷却される。施撚体307が仮撚ピンの場合、クーリングプレート306はなくても問題ない。施撚体307を通過すると合撚状態が解撚され無撚り状態となり、デリベリーローラー308を通過する。弾性繊維301と非弾性繊維302は第2フィードローラー304とデリベリーローラー308間で同時延伸仮撚される。その際の延伸倍率は、非弾性繊維302に応じ適宜調整されるが、非弾性繊維がポリエステル系繊維の場合1.6~1.8倍、ポリアミド系繊維の場合1.1~1.3倍であることが好ましい。
【0048】
デリベリーローラー308を出ると、弾性繊維301は延伸前の状態に戻ろうとするので、弾性繊維301と非弾性繊維302のクリンプの位相がずれ、前述のファスナー効果により、非弾性繊維と弾性繊維がずれにくくなった状態の本発明の仮撚複合加工糸312が完成し、巻き取りローラー310で紙管311に巻き取られる。デリベリーローラー308/第2フィードローラー304の速度比は非弾性繊維の破断伸度が15%~40%になるように設定することが好ましい。第1フィードローラー303の速度はデリベリーローラー308/第1フィードローラー303の速度比が3.0~5.5になるように設定することが好ましい。デリベリーローラー308の速度に制限はない。ヒーター温度は要求の風合いになるように、かつ、伸縮伸長率が50%以上になるように設定する。
【0049】
弾性繊維の伸長回復による長さばらつき軽減のために、巻き取りローラーの前に張力緩和のための第4ローラー309を設置してもよい。これにより品質をより安定させることができる。
【0050】
かくして得られる本発明の仮撚複合加工糸は、弾性繊維と非弾性繊維が仮撚加工され、実質的に開繊部のみで形成されているので、弾性繊維の自由度が高く、また、仮撚糸の風合いが阻害されないので、これを用いて製編することで、伸縮性に富んだ柔らかく、風合いの良い、かつ、低応力でも体の動きに追従する編地を製造することができる。
【0051】
なお、上記において、「開繊部のみで形成」されるとは、隣接するフィラメントが交差することにより、全フィラメントが密に収束し、1本1本が容易に分離出来ない状態になっていない状態を意味し、隣接する弾性繊維と非弾性繊維数本が交差している状態、かつ、弾性繊維と非弾性繊維が容易に分離できる部分が存在していてもよい。また、弾性繊維と非弾性繊維の一部が交差、収束し、容易に分離できない部分があったとしてもその頻度が小さければ、全体として各繊維の自由度が高く、仮撚り糸の風合いが阻害されにくいので、後述の判断基準に合致すれば実質的に「開繊部のみで形成」されるものとする。
【0052】
本発明の仮撚複合加工糸はドラフト率が適切な状態になった弾性繊維が含まれているので、丸編に使用する場合、弾性繊維をドラフト状態で編機の給糸口に供給するための装置は不要であり、一般的な編み立て張力で編成するだけで、伸縮性編地が得られる。経編は整経時に弾性繊維をドラフト状態でビームに巻く装置は不要であり、一般的な整経張力で整経し、編成するだけで、伸縮性編地が得られる。
【0053】
本発明の編地は、仮撚複合加工糸を少なくとも一部に用いる。編組織の制限はない。丸編の場合は、天竺、スムース、フライス等が好ましく、経編の場合には、二目編組織、アトラス編組織、ダブルハーフ編等が好ましい。
【0054】
本発明において、両面編組織とすることにより、編地のカーリングの発生を抑えることができるので好ましい。
【0055】
また、編地のゲージは、28~42G(本/インチ(2.54cm))が好ましい。特に、スムース編とすると生地が薄くなり、下着等とした場合、外着に影響を与えることなく好ましい。
【0056】
本発明の編地は、上記複合糸を用い、常法により所望の編地に編み立てることにより得られる。
【0057】
また、得られた編地は、リラックス精錬、プレセット、染色、ファイナルセットを施せば良い。
【0058】
本発明の編地は、ループ接点で弾性繊維同士が融着していること、すなわち仮撚複合加工糸中の弾性繊維で形成されるループと、別の弾性繊維で形成されるループとが、両ループが接する点(ループ接点)で互いに融着していることが好ましい。編成工程以降、弾性繊維が融着し得る温度で熱セットされることで、弾性繊維同士が融着すると、編地に対する裁断方向に関係なく裁断を行っても、裁断したままで縁始末不要となるので、好ましい。特にプレセットの温度を弾性繊維が融着し得る温度に設定することが好ましい、この時点で弾性繊維が融着していると、染色工程での生地の収縮が安定する効果が顕著である。
【0059】
本発明の編地は、着用時の動きやすさとフィット性から、タテ方向、ヨコ方向のうち少なくとも1方の伸長率が100%~250%であることが特に好ましい。とりわけ120%以上が好ましい。
【0060】
本発明の編地は、生地のタテ方向、ヨコ方向のうち少なくとも1方の伸長回復率が80%以上であることが好ましい。この範囲ではフィット感、着用快適性に優れる。また、型崩れが少なく形態保持性にも優れる。80%未満では回復が劣る場合がある。また、95%を超えるものは一般的には製造が困難である。
【0061】
本発明の伸縮性編地は、生地のタテ・ヨコの伸長率バランス(タテ方向の伸長率/ヨコ方向の伸長率)が、0.8~1.2あることが好ましい。さらに好ましくは、0.9~1.1である。生地のタテ・ヨコの伸長率バランスが、0.8~1.2であれば、身体の動きに無理なく追従することができることから好ましい。
【0062】
本発明の仮撚複合加工糸は弾性繊維と非弾性繊維が互いにずれにくい構造を取りやすいことから、これを用いた伸縮性編地は、伸縮性に優れるだけでなく、編地に対する裁断方向に関係なく裁断を行っても、ほつれにくく、裁断したままで縁始末不要であることから、切断端部が露出している衣服として、とりわけ下着等として使用しても縁部が外側に影響を与えることがないが、さらに弾性繊維同士がループ接点で融着している構造とすることによりかかる効果がよりいっそう顕著になる。
【0063】
また、本発明の伸縮性編地は、その縁部が伸縮時においてもカーリングすることがなく、また、ほつれ、ランを防止することができる。
【実施例】
【0064】
次に、本発明の仮撚複合加工糸について、実施例により更に詳細に説明する。本発明の実施例中の各評価は、次の方法で評価した。
【0065】
[仮撚複合加工糸が開繊部のみで形成されているか否かの評価]
図5は、仮撚複合加工糸が開繊部のみで形成されているか否かの評価方法を説明する概念図である。
【0066】
仮撚複合加工糸をパッケージから撚りが入らないように解舒する。解舒した糸端を固定し、固定点から100cmの箇所で糸をカットし、0.08826cN/dtexの荷重501をかけて仮撚複合加工糸を吊す。該仮撚複合加工糸の固定端直下で弾性繊維と非弾性繊維を分離(分離するときは一時的に荷重を外しても良い)し、それぞれの繊維にフック502、503を引っかける。一方のフック502を左に、他方のフック503を右にゆっくり動かすと、弾性繊維と非弾性繊維が分離していく。これを3回行い、その全てで分離する長さが10cm以上であれば、実質的に開繊部のみで形成されていると判断する。分離する長さが長い方がよく、その糸全て(100cm)が分離できるものが望ましい。
【0067】
なお、表中に記載した分離できた長さは評価した3本のうち最も小さい値を示した。
【0068】
[仮撚複合加工糸中の弾性繊維の山谷]
仮撚複合加工糸をパッケージから撚りが入らないように解舒する。検撚機に0.08826cN/dtexの荷重がかかるように、400mmでセット(両端を固定)する。荷重を外し、弾性繊維と非弾性繊維を分離し、非弾性繊維の固定点付近をカットして非弾性繊維をはずし、弾性繊維のみとする。
【0069】
固定間隔を弾性繊維が弛んだ状態になり、自由に動くことが出来、山谷が発現する状態まで狭める。この状態で3分放置する。次に、弾性繊維の山谷の数を観察し易い状態になるまで固定間隔を拡げ、固定し、この間隔Dを測定する。両端固定されている弾性繊維の任意の位置を25.4mm×25.4mmの開口部を有する枠を有する縞見ルーペの枠に(枠に1インチの目盛りのついているもの:ビクセン社製、品番4164-00相当品が好ましい。本評価ではこれを用いた。)に両面テープで固定する。その後、非弾性繊維を枠の外側でカットする。枠に貼り付けた弾性繊維をマイクロスコープで20倍の倍率で拡大観察する。枠についているインチ目盛りと弾性繊維の両方がモニター画面に映っている状態で25.4mm間の山谷の数Aを数える(マイクロスコープの画像撮影機能を使用して、撮影した画像を印刷したものに印をつけて数えると数えやすい)。仮撚複合加工糸中の弾性糸の山谷の数は(A(個)×D(m))/(0.0254(m)×0.4(m))(個/m)となる。3回測定し、平均値を山谷の数とする。
【0070】
図4は、仮撚複合加工糸中の弾性繊維の山谷の数の評価方法を説明するための概念図である。
図4に示すように山谷を1セットで1個と数を数える。
図4の13個目のようにループ状になっている場合は1個と数える。
図4の右端のように山のみで終わった場合は0.5と数える。
【0071】
[仮撚複合加工糸中の弾性糸の旋回性の有無]
仮撚複合加工糸をパッケージから撚りが入らないように解舒する。検撚機に0.08826cN/dtexの荷重がかかるように、200mmでセット(両端を固定)する。荷重を外し、弾性繊維と非弾性繊維を分離し、非弾性繊維の固定点付近をカットして非弾性繊維をはずして弾性繊維のみとする。弾性繊維を固定する一方の固定端をもう一方の固定端へ移動させ、つかみ間隔を5mmにする。このときに非弾性繊維が2回転以上、回転すれば、旋回性があると判断する。
【0072】
[伸縮復元率]
JIS L 1013:2010 「化学繊維フィラメント糸試験方法」8.12により伸縮復元率を測定した。測定前の前処理として、かせ状にした測定試料をガーゼに包んだまま、ポリエステルの場合、90℃、ナイロンの場合、60℃、ポリプロピレンの場合、70℃の温度で20分間の温水処理を行い、室温20℃で自然乾燥させた。約12時間後、上記8.12により伸縮復元率を測定した。
【0073】
[伸長率]
JIS L 1096:2010 「織物及び編物の生地試験方法」8.16.1 A法(定速伸長法)により、引張速度:300mm/min、つかみ間隔:100mm、試験片幅:25mm、一定荷重:14.7Nとして、伸長率を測定した。
【0074】
[伸長回復率]
JIS L 1096:2010 「織物及び編物の生地試験方法」8.16.2 A法(繰返し定速定伸長法)により、引張速度:300mm/min、つかみ間隔:100mm、試験片幅:25mm、一定伸長:上記伸長率の80%、繰り返し回数3回として、伸長回復率を測定した。
【0075】
[伸長率50%、100%のときの荷重]
上記伸長回復率の1回目の引っ張り開始から一定伸長するまでに得られる、伸長率(%)-荷重(N)曲線における伸長率50%、100%のときの荷重を読み取る。
【0076】
[風合い]
・ソフト感の評価について、熟練者によって次の4段階判定法で評価し、◎、○、△および×で表示した。
◎:手で触った際のソフト感を特に強く感じる風合い。
○:手で触った際のソフト感を感じる風合い。
△:手で触った際のソフト感を少し感じる風合い。
×:手で触った際のソフト感を感じない風合い。
【0077】
[ほつれにくさの評価および形態安定性の評価]
編地601をウエール方向200mm×コース方向100mmの長方形にカットした。
図6(a)で示されるように生地端から50mmの位置に油性ペンで線を引いた。デマチャー式繰返し伸張・収縮試験機のつかみ部のつかみ治具(固定)602とつかみ治具(上限に可動)603に、つかみ間隔:100mm、試料片幅:100mmでセットした。(
図6(b))
【0078】
原点(伸長率0%、
図6(b))と設定位置(生地の伸長率50%、
図6(c))を50回往復/分の速度で、繰り返し回数10000回の伸長試験を実施した。試験完了後、生地をデマチャー式繰返し伸張・収縮試験機から取り外し、生地カット面の糸ほつれの有無を確認した。ほつれがない場合はフィリーカット性が良好であると判断した。また、油性ペンで引いた線の間隔の変化の有無を確認する。間隔変化が2%未満の場合を形態安定性があると判断した。
【0079】
(実施例1)
弾性繊維として、ポリウレタン繊維22dtex-2フィラメント、非弾性繊維として、40dtex-24フィラメントのポリエチレンテレフタレート高配向未延伸糸を用いて、
図3に示した装置を用いて、弾性繊維を第1フィードローラー303と第2フィードローラー304の間で2.9倍に伸長し、一方、非弾性繊維をパッケージより解舒して、第2フィードローラー304に供給した。第2フィードローラー304を出た弾性繊維と非弾性繊維とに施撚体307(フリクションディスク)で撚りを加え、合撚状態で第2フィードローラー304とデリベリーローラー308の速度差により、ヒーター(温度180℃)上で1.7倍に延伸、熱セットを施した。ヒーターを出た糸は冷却した。この冷却された糸は施撚体を通過すると解撚され無撚り状態となり、デリベリーローラー308を通過した。デリベリーローラー308を出ると、当該糸中の弾性繊維は延伸前の状態に戻ろうとするので、弾性繊維と非弾性繊維のクリンプの位相がずれ、ファスナー効果により、非弾性繊維と弾性繊維がずれにくくなった状態で、巻き取りローラーで紙管に巻き取った。得られた糸は開繊部のみで構成された仮撚複合加工糸であった。
【0080】
得られた糸を、40ゲージ33インチ(83.8cm)の丸編機でスムース組織を編成した。得られた糸をチーズから解舒するときに、弾性繊維と非弾性繊維が分離して、解舒できなくなることはなく、編立性は良好であった。
【0081】
得られた丸編地を開反し、リラックス精錬(温度95℃)、プレセット(温度185℃)、分散染料による染色(温度130℃)、ファイナルセット(温度150℃)を行なった。プレセット後の生地およびファイナルセット後の生地を、ピンセットを使用して解編を試みたが、解編出来ず、ポリウレタン繊維同士が融着していることを確認した。また、ファイナルセット後の生地をアルカリ減量して、ポリエチレンテレフタレート繊維を完全溶解した。溶解後の生地はポリウレタン繊維のみで構成され、ポリウレタン繊維同士がループの接点で強固に融着していた。
【0082】
伸長率はタテ190.1%、ヨコ198.2%、タテヨコの伸長率バランス(伸長率(タテ)/伸長率(ヨコ))は0.96と良好であった。伸長回復率はタテ90.1%、ヨコ91.9%と良好であった。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例2)
弾性繊維として、ポリウレタン繊維22dtex―2フィラメント、非弾性繊維として、41dtex-26フィラメントのナイロン6繊維とを用いて、
図3に示した装置を用いて、弾性繊維を第1フィードローラー303と第2フィードローラー304の間で3.6倍に伸長し、一方、非弾性繊維をパッケージより解舒して、第2フィードローラー304に供給する。第2フィードローラー304を出た弾性糸と非弾性糸は施撚体307(フリクションディスク)で撚りを加えられ、合撚状態で第2フィードローラー304とデリベリーローラー308の速度差により、ヒーター(温度170℃)上で1.25倍に延伸、熱セットが施される。ヒーターを出た糸は冷却される。施撚体を通過すると解撚され無撚り状態となり、デリベリーローラー308を通過した。デリベリーローラー308を出ると、弾性糸は延伸前の状態に戻ろうとするので、弾性糸と非弾性糸のクリンプの位相がずれ、ファスナー効果により、非弾性糸と弾性糸がずれにくくなった状態で、巻き取りローラーで紙管に巻き取った。得られた糸は開繊部のみで構成された糸であった。
【0084】
得られた糸を、40ゲージ33インチ(83.8cm)の丸編機でスムース組織を編成した。得られた糸をチーズから解舒するときに、弾性繊維と非弾性繊維が分離して、解舒できなくなることはなく、編立性は良好であった。
【0085】
得られた丸編地を開反し、リラックス精錬(温度95℃)、プレセット(温度190℃)、酸性染料による染色加工(温度95℃)、ファイナルセット(温度170℃)を行なった。プレセット後の生地およびファイナルセット後の生地を、ピンセットを使用して解編を試みたが、解編出来ず、ポリウレタン繊維同士が融着していることを確認した。また、ファイナルセット後の生地をギ酸に浸漬し、ナイロンを完全溶解した。溶解後の生地はポリウレタン繊維のみで構成され、ポリウレタン繊維同士がループの接点で強固に融着していた。
【0086】
伸長率はタテ172.4%、ヨコ188.3%、タテヨコの伸長率バランス(伸長率(タテ)/伸長率(ヨコ))は0.92と良好であった。伸長回復率はタテ89.0%、ヨコ88.5%と良好であった。結果を表1に示す。
【0087】
(比較例1)
実施例1のデリベリーローラー308の後に、交絡ノズルと第4ローラー309を設置し、弾性糸と非弾性糸に交絡を施した後に、巻き取りローラーで紙管に巻き取った。得られた糸は開繊部と収束部が交互に存在する糸であった。
【0088】
得られた糸を、40ゲージ33インチ(83.8cm)の丸編機でスムース組織を編成した。得られた丸編地を開反し、リラックス精錬(温度95℃)、プレセット(温度185℃)、分散染料による染色(温度130℃)、ファイナルセット(温度150℃)を行った。プレセット後の生地およびファイナルセット後の生地を、ピンセットを使用して解編を試みたが、解編出来ず、ポリウレタン繊維同士が融着していることを確認した。また、ファイナルセット後の生地をアルカリ減量し、ポリエチレンテレフタレートを完全溶解した。溶解後の生地はポリウレタン繊維のみで構成され、ポリウレタン繊維同士がループの接点で概ね強固に融着していたが、収束部はポリウレタン繊維がポリエステル繊維に囲まれて存在しているため、この部分はポリウレタン繊維同士が接しないので、一部、融着の弱い部分があった。伸長率はタテ160.4%、ヨコ185.9%、タテヨコの伸長率バランス(伸長率(タテ)/伸長率(ヨコ)は0.86と普通であった。伸長回復率はタテ83%、ヨコ%82と良好であった。結果を表1に示す。
【0089】
(比較例2)
実施例2において、弾性繊維を使用せずに、非弾性繊維として、41dtex-26フィラメントのナイロン6繊維のみ用いて、仮撚加工を実施した。得られた仮撚糸は開繊部のみで構成される糸であった。40ゲージ33インチ(83.8cm)の丸編機で弾性繊維供給装置を使用して、弾性繊維:ポリウレタン繊維22dtex-2フィラメント(ドラフト率3.5倍)と得られた仮撚糸をプレーティングして、スムース組織を編成した。(一般的にベアスムースと呼ばれる。)生機を解編して、取り出したポリウレタン繊維は山谷の発現はなく、旋回性もなかった。
【0090】
得られた丸編地を開反し、リラックス精錬(温度95℃)、プレセット(温度190℃)、酸性染料による染色加工(温度95℃)、ファイナルセット(温度170℃)を行なった。プレセット後の生地はポリウレタン同士が融着していた。ファイナルセット後の生地もポリウレタン繊維同士が融着していた。プレセット後の生地およびファイナルセット後の生地を、ピンセットを使用して解編を試みたが、解編出来ず、ポリウレタン繊維同士が融着していることを確認した。また、ファイナルセット後の生地をギ酸に浸漬し、ナイロン6を完全溶解した。溶解後の生地はポリウレタン繊維のみで構成され、ポリウレタン繊維同士がループの接点で強固に融着していた。
【0091】
伸長率はタテ132.3%、ヨコ219%、タテヨコの伸長率バランス(伸長率(タテ)/伸長率(ヨコ)は0.6と普通であった。伸長回復率はタテ92.9%、ヨコ93.2%であった。結果を表1に示す。
【0092】
【0093】
実施例1で製造した編地は、総繊度が同等である比較例1を比較すると、タテ方向に生地を引っ張った時に、伸長率50%のときにかかる荷重がやや小さいか、同等程度であるが、伸長率100%のときにはかかる荷重が小さい。
【0094】
また、実施例2と比較例2を比較すると、タテ方向に生地を引っ張った時に、伸長率50%の時は、実施例2と比較例2は荷重に大差ないが、伸長率100%の時は、比較例2は5.6Nの荷重がかかるが、実施例2は3.8Nと比較例2よりかかる荷重が低い。このことは例えば、長袖のインナーシャツに使用した場合、肘を曲げる時に、比較例2はつっぱり感がでやすいが、実施例2はつっぱり感が出にくいことを示している。これは、弾性繊維に山谷のない比較例2は伸長率が低い領域から弾性繊維自体が伸ばされるので、伸長率が高くなると、弾性繊維の伸縮性の限界に近づくため、急激に荷重が大きくなる。一方、実施例2は弾性繊維に山谷があるので、伸長率が低い領域では先ず山谷が伸ばされ、伸長率が高くなり、山谷が伸ばされた後は、弾性繊維自体が伸ばされることで、低い荷重を実現している。
【符号の説明】
【0095】
101:開繊部
102:弾性繊維
103:非弾性繊維
201:収束部
202:開繊部
301:弾性繊維
302:非弾性繊維
303:第1フィードローラー
304:第2フィードローラー
305:ヒーター
306:クーリングプレート
307:施撚体(仮撚り装置)
308:デリベリーローラー
309:第4ローラー
310:巻き取りローラー
311:紙管
312:仮撚複合加工糸
501:荷重
502:フック
503:フック
601:編地
602:つかみ治具(固定)
603:つかみ治具(上下に可動)