(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】電子機器用接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20230620BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20230620BHJP
C09J 133/08 20060101ALI20230620BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J133/04
C09J133/08
C09J133/14
(21)【出願番号】P 2019122694
(22)【出願日】2019-07-01
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮田 文子
(72)【発明者】
【氏名】土谷 浩史
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-116957(JP,A)
【文献】特開2014-208782(JP,A)
【文献】特開2015-052114(JP,A)
【文献】特開2011-100927(JP,A)
【文献】特開2000-248026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱可塑性樹脂、(b)エポキシ樹脂および(c)硬化剤を含有する電子機器用接着剤組成物であって、
前記(a)熱可塑性樹脂が、エポキシ基を側鎖として有するメタクリル酸エステルおよび炭素数5~8の飽和炭化水素基を側鎖として有するアクリル酸エステルの共重合体であり、且つ、前記(a)熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)が-60℃以下であって、前記(a)熱可塑性樹脂の含有量が、(b)エポキシ樹脂および(c)硬化剤の合計100重量部に対し400~500重量部であり、該電子機器用接着剤組成物を170℃、2時間熱硬化後において、25℃での剪断破断強度が0.5MPa以上、25℃での剪断破断伸度が1100%以上であり、かつ、-50℃での剪断破断強度が5MPa以上、-50℃での剪断破断伸度が600%以上であることを特徴とする電子機器用接着剤組成物。
【請求項2】
前記(a)熱可塑性樹脂が、炭素数5~
8の飽和炭化水素基を側鎖として有するアクリル酸エステルを90重量%以上共重合成分として含むことを特徴とする請求項
1に記載の電子機器用接着剤組成物。
【請求項3】
170℃、2時間熱硬化後において、-50℃での貯蔵弾性率が100~1,000MPaであることを特徴とする請求項1
または2に記載の電子機器用接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器用接着剤組成物、電子機器用接着剤シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高密度化に伴い電子機器用接着剤組成物の需要が高まっており、種々の使用条件下で接着性・応力緩和性を維持する電子機器用接着剤組成物の改良開発が課題となっている。
【0003】
例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含有する接着シートを用いて異なる材質の貼り合わせを行う際、貼り合わせ材料間に線膨張差があるために、熱硬化させると反りやクラッキングが発生することがある。これを防止するためには、線膨張差によって発生する応力を緩和する機能を接着剤層に持たせる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
これまでに、大型の異種材料を貼り付けた製品において、-20℃から150℃における高い温度サイクル性を有する電子機器用接着剤組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【文献】特開2014-208782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1において提案された接着剤組成物は、-50℃では十分な伸度が得られず、応力緩和性が低いという課題があった。
【0006】
さらに最近では、接着剤硬化物がより低温である-50℃から-30℃付近の環境下でも高伸度を有し、上記のような応力緩和性を維持できることが要求されている。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決し、硬化物が-50℃付近でも伸度が大きく、応力緩和性の高い電子機器用接着剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の電子機器用接着剤組成物は次の構成を有する。すなわち、
(a)熱可塑性樹脂、(b)エポキシ樹脂および(c)硬化剤を含有する電子機器用接着剤組成物であって、前記(a)熱可塑性樹脂が、エポキシ基を側鎖として有するメタクリル酸エステルおよび炭素数5~8の飽和炭化水素基を側鎖として有するアクリル酸エステルの共重合体であり、且つ、前記(a)熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)が-60℃以下であって、前記(a)熱可塑性樹脂の含有量が、(b)エポキシ樹脂および(c)硬化剤の合計100重量部に対し400~500重量部であり、170℃、2時間熱硬化後において、25℃での剪断破断強度が0.5MPa以上、25℃での剪断破断伸度が1100%以上であり、かつ、-50℃での剪断破断強度が5MPa以上、50℃での剪断破断伸度が600%以上であることを特徴とする電子機器用接着剤組成物、である。ここで剪断破断強度とは、接着剤組成物に剪断応力が作用した際に接着剤組成物が破断するときの強度であり、剪断破断伸度とは、接着剤組成物が破断するまでの変位量を接着剤組成物厚みで規格化したものである。
【0009】
本発明の電子機器用接着剤組成物は、前記(a)熱可塑性樹脂が、エポキシ基を側鎖として有するメタクリル酸エステルおよび炭素数5~8の飽和炭化水素基を側鎖として有するアクリル酸エステルの共重合体である。
【0010】
本発明の電子機器用接着剤組成物は、前記(a)熱可塑性樹脂が、炭素数5~8の飽和炭化水素基を側鎖として有するアクリル酸エステルを90重量%以上共重合成分として含むことが好ましい。
【0011】
本発明の電子機器用接着剤組成物は、170℃、2時間熱硬化後において、-50℃での貯蔵弾性率が100~1,000MPaであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、硬化物が-50℃の環境下でも高伸度および応力緩和性を有する電子機器用接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の電子機器用接着剤組成物は、(a)熱可塑性樹脂、(b)エポキシ樹脂および(c)硬化剤を含有する電子機器用接着剤組成物であって、前記(a)熱可塑性樹脂が、エポキシ基を側鎖として有するメタクリル酸エステルおよび炭素数5~8の飽和炭化水素基を側鎖として有するアクリル酸エステルの共重合体であり、且つ、前記(a)熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)が-60℃以下であって、前記(a)熱可塑性樹脂の含有量が、(b)エポキシ樹脂および(c)硬化剤の合計100重量部に対し400~500重量部であり、170℃、2時間熱硬化後において、25℃での剪断破断強度が0.5MPa以上、25℃での剪断破断伸度が1100%以上であり、かつ、-50℃での剪断破断強度が5MPa以上、25℃での剪断破断伸度が600%以上であることを特徴とする電子機器用接着剤組成物である。
【0014】
本発明の電子機器用接着剤組成物は、170℃、2時間熱硬化後において、25℃での剪断破断強度が0.5MPa以上である必要がある。熱硬化後において、25℃での剪断破断強度が0.5MPaに満たない場合には、接着剤シートとしての形状維持が困難であり、25℃条件下での取り扱いが困難となる問題がある。
【0015】
本発明の電子機器用接着剤組成物は、170℃、2時間熱硬化後において、25℃での剪断破断伸度が1100%以上である必要がある。熱硬化後において、25℃での剪断破断伸度が1100%に満たない場合には、異種材料を貼り合わせて熱硬化させる際に、十分な応力緩和効果が得られず反りやクラッキングが発生する問題がある。
【0016】
本発明の電子機器用接着剤組成物は、170℃、2時間熱硬化後において、-50℃での剪断破断強度が5MPa以上である必要がある。熱硬化後において、-50℃での剪断破断強度が5MPaに満たない場合には、-50℃条件下において貼り合わせた材料が剥離しやすくなる問題がある。
【0017】
本発明の電子機器用接着剤組成物は、170℃、2時間熱硬化後において、-50℃での剪断破断伸度が600%以上である必要がある。熱硬化後において、-50℃での剪断破断伸度が600%に満たない場合には、異種材料を貼り合わせて熱硬化させる際に反りやクラッキングが発生するだけでなく、-50℃条件下では、貼り合わせた材料の割れも発生する問題がある。
【0018】
なお、本発明において(a)熱可塑性樹脂とは、一般的な定義のとおり、ガラス転移温度または融点まで加熱することによって軟らかくなる樹脂であり、エポキシ基、エチレン性二重結合等の反応性官能基や、イソシアネート基と水酸基、イソシアネート基とアミノ基といったような反応性のある官能基の組み合わせを有さないか、前述の官能基を有している場合であっても官能基含有量が2.0当量/kg以下のものを指す。
【0019】
本発明では、(a)熱可塑性樹脂として、示差走査熱量分析法にて測定したTgが-60℃ 以下の熱可塑性樹脂を用いる。Tg-70℃ 以下の熱可塑性樹脂を用いることがより好ましい。Tgが-60℃以下の熱可塑性樹脂を用いることによって、-50℃ の低温使用環境下においてでさえ、応力緩和性の高い状態を保つことができる。
【0020】
また、本発明では、(a)熱可塑性樹脂として、重量平均分子量が100万~200万の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。加熱硬化後の膜強度や低温領域での伸度の維持の観点から、熱可塑性樹脂の重量平均分子量がより好ましくは120万以上、さらに好ましくは150万以上である。重量平均分子量については、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により測定し、ポリスチレン換算で算出する。
【0021】
(a)に適する熱可塑性樹脂は、次の化学式(1)に示すエポキシ基を側鎖として有するメタクリル酸エステルおよび、次の化学式(2)に示す炭素数5~8の飽和炭化水素基を側鎖として有するアクリル酸エステルを共重合モノマーとして含む共重合体であることが好ましい。炭素数5~8の飽和炭化水素基を側鎖として有するアクリル酸エステルは後述の(b)エポキシ樹脂および(c)硬化剤との反応が可能側鎖であるため、(a)熱硬化性樹脂との結合が強固になるので好ましい。エポキシ基を側鎖として有するメタクリル酸エステルはエポキシ樹脂との相溶性の観点から好ましい。
【0022】
【0023】
【0024】
化学式(2)において、n=5~8である。
【0025】
炭素数5~8の飽和炭化水素基を側鎖として有するアクリル酸エステルの例としては、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチルのようなアクリル酸アルキルエステル、また、アクリル酸シクロヘキシルのようなアクリル酸の脂環属アルコールとのエステル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、メチルスチレン、クロルスチレン、ビニリデンクロライド、エチルα-アセトキシアクリレート等が挙げられる。また、このようなアクリル酸エステルは、単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0026】
(a)熱可塑性樹脂は、炭素数5~8の飽和炭化水素基を側鎖として有するアクリル酸エステルを90重量%以上、換言すれば、メタクリル酸グリシジルを10重量%以下で共重合させて得られる共重合体であることが好ましい。より好ましい共重合比率は、上記アクリル酸エステルが95重量%以上、メタクリル酸グリシジルが5重量%以下である。炭素数5~8の飽和炭化水素基を側鎖として有するアクリル酸エステルを共重合成分として90重量%以上含むことで、本発明の接着剤組成物が-50℃の低温でも高伸度を容易に維持することが可能となる。
【0027】
本発明の接着剤組成物において、(a)熱可塑性樹脂の含有量は、(b)エポキシ樹脂と(c)硬化剤の合計100重量部に対し、400重量部~500重量部とする。この含有量とする場合、-50℃ から-30℃付近において高伸度を示し、温度サイクル試験において、(b)エポキシ樹脂と(c)硬化剤の添加によって接着剤自体の膜強度を確保しつつ、(a)熱可塑性樹脂によって、十分な応力緩和性が得られるため、被着体の線膨張差によって生ずる剪断応力による剥がれの発生を有効に防ぐことができる。
【0028】
本発明の接着剤組成物は、(b)エポキシ樹脂を含有する。エポキシ樹脂を含むことにより、耐熱性、耐薬品性、接着剤層にしたときの強度等の物性バランスを実現することができる。エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限されず、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型骨格を含有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、およびハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0029】
本発明の接着剤組成物は、エポキシ基と架橋反応する(c)硬化剤を含有する。エポキシ基と架橋反応する硬化剤を含有することで硬化後の接着力が向上する。
【0030】
硬化剤の例としては、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,3,3’-テトラクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4,4’-トリアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯体等の三フッ化ホウ素のアミン錯体、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのノボラックフェノール樹脂、ビスフェノールAなどのビスフェノール化合物、1,2,3-ベンゾトリアゾール、4-メチル-ベンゾトリアゾール、5-メチル-ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、ニトロ-1H-ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール誘導体、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の有機酸、ジシアンジアミド等公知のものが挙げられる。これらは単独または2種以上用いてもよい。
【0031】
また、トリフェニルホスフィン(TPP)、2-アルキル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-アルキルイミダゾール等のイミダゾール誘導体等公知の硬化促進剤(硬化触媒)も、本発明において(c)硬化剤に含まれるものとする。これらの中でも耐熱性に優れることから、ノボラックフェノール樹脂やビスフェノール化合物などのフェノール系硬化剤が好ましい。
【0032】
本発明の電子機器用接着剤組成物は、170℃、2時間熱硬化後において、-50℃での貯蔵弾性率が100~1,000MPaであることが好ましい。170℃、2時間熱硬化後における-50℃での貯蔵弾性率が上記好ましい範囲であると、-50℃での応力緩和性が大きくなる効果がある。
【0033】
本発明の接着剤組成物は、上記記載の原料を混合して得られる。混合の手法としては、各原料を溶剤に溶解し、それらを撹拌混合し、溶剤を乾燥し除去する手法、樹脂を加熱し溶融した状態で混合する手法などが挙げられる。
【0034】
本発明の接着剤組成物は、フィルム上に塗布し、電子機器用接着剤シート(以下、接着剤シートという)として使用可能である。接着剤シートとは、本発明の接着剤組成物からなる接着剤層と、1層以上の剥離可能な保護フィルム層とを有する構成のものをいう。たとえば、保護フィルム層/接着剤層の2層構成、あるいは、保護フィルム層/接着剤層/保護フィルム層の3層構成がこれに該当する。また、他の特性を有する接着剤シートと積層することで、多機能接着剤シートの作製が可能である。
【0035】
接着剤層の厚みは、弾性率および線膨張係数との関係で適宜選択できるが、50~400μmが好ましく、より好ましくは100~200μmである。
【0036】
保護フィルムの例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート等のプラスチックフィルム、これらにシリコーンあるいはフッ素化合物等の離型剤のコーティング処理を施したフィルムおよびこれらのフィルムをラミネートした紙、離型性のある樹脂を含浸あるいはコーティングした紙等が挙げられる。保護フィルム層は、加工時に視認性が良いように顔料による着色が施されていても良い。これにより、先に剥離する側の保護フィルムが簡便に認識できるため、誤使用を避けることができる。
【0037】
次に本発明の接着剤組成物を用いた接着剤シートの製造方法の例について説明する。
【0038】
(A)本発明の接着剤組成物を溶剤に溶解した塗料を、離型性を有するポリエステルフィルム上に塗布、乾燥する。接着剤層の乾燥後の膜厚が10~100μmとなるように塗布することが好ましい。乾燥条件は、100~200℃、1~5分が好ましい。溶剤は特に限定されないが、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、Nメチルピロリドン等の非プロトン系極性溶剤あるいはこれらの混合物が好適である。
【0039】
(B)(A)のフィルムに上記よりさらに剥離強度の弱い離型性を有するポリエステルあるいはポリオレフィン系の保護フィルム層をラミネートして本発明の接着剤シートを得る。さらに接着剤厚みを増す場合は、該接着剤層を複数回積層すればよい。ラミネート後に、たとえば40~70℃で20~200時間程度熱処理して硬化度を調節してもよい。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。まず、各実施例で行った評価方法について述べる。
【0041】
(1)25℃剪断破断強度及び25℃剪断破断伸度:接着剤層厚み200μmの接着剤シート10mm角の一方の保護フィルム層を剥がし、0.4mm厚さの銅板(50mm×15mm)上に接着剤層を常温下でラミネートした。次いで、接着剤シートの反対面の保護フィルムを剥がし、同厚さの銅板(50mm×15mm)を常温下でラミネートし、銅板/接着剤層/銅板の積層体を作製した。次いで170℃で2時間加熱硬化し、テクノグラフ(ミネベア(株)製)により25℃、5mm/分で引張り剪断破断強度及び剪断破断伸度を測定した。
【0042】
(2)-50℃剪断破断強度及び-50℃剪断破断伸度:(1)と同じ条件にて、同形状のサンプルを作製した。-50℃環境下で、テクノグラフにより5mm/分の速度で引張り剪断破断強度及び剪断破断伸度を測定した。
【0043】
(3)-50℃貯蔵弾性率:170℃で2時間加熱硬化させた厚み200μmの接着剤組成物について、動的粘弾性装置により周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件下で-50℃における貯蔵弾性率を求めた。
【0044】
(4)温度サイクル試験:厚み200μmの接着剤層の一方の保護フィルムを剥がし、300mm×300mm×厚さ8mmのアルミ板上に、接着剤層を60℃、1MPaの条件でラミネートした。次いで、接着剤シートの反対面の保護フィルムを剥がし、300mm×300mm×厚さ2mmのガラス板を25℃、1MPaの条件でラミネートし、アルミ板/接着剤層/ガラス板の積層体を作製した。次いで170℃、2時間加熱し積層体硬化物を作製した。積層体硬化物を各水準5個用意し、温度サイクル試験器(タバイエスペック(株)製、PL-3型)中で、0℃~150℃、-20℃~150℃、-50℃~150℃で、最低および最高温度で各2時間保持の条件で処理し、剥がれの発生有無、ガラス板割れを評価した。100サイクル周期でサンプルを取り出し、ガラス板側から剥がれの発生有無を評価した。各水準5個中、1つでも剥がれまたはガラス板割れを確認したらNGとした。最長1,500サイクルまで評価を行った。結果は次のとおり、5~1点の5段階で評価した。
【0045】
5点:1,500サイクル合格
4点:1,000サイクル合格、1,500サイクル剥離NG
3点:500サイクル合格、1,000サイクル剥離またはガラス割れNG
2点:300サイクル合格、500サイクル剥離NG
1点:500サイクル以下剥離またはガラス割れNG
(実施例1~3、参考例1~3、比較例1~3)
実施例および比較例に使用した各原材料は次の通りである。
【0046】
<(a)熱可塑性樹脂>
ポリマー1~7:混合機及び冷却器を備えた反応器に窒素雰囲気下(又は、窒素気流下)で水、分散剤、連鎖移動剤と重合開始剤を溶解させたモノマーなどを添加し、90℃まで昇温して重合を行った。得られたポリマーの重量平均分子量を、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法(GPC装置:東ソー社製 GELPERMEATION CHROMATOGRAPH、カラム:東ソー社製 TSK-GEL GMHXL 7.8*300mm)により測定し、ポリスチレン換算で算出した。また得られたポリマーのTgを、動的粘弾性測定により決定した。SII社製EXTER DSC6100を用いて、温度-70℃~250℃、昇温速度5℃/分、試料断面積2~4mm2にて測定した。
【0047】
上記で得られたポリマー1~7のTg、共重合モノマー成分、共重合比および官能基(エポキシ基)含有量は次のとおりである。
【0048】
ポリマー1:エポキシ基含有アクリルゴム、Tg-60℃、アクリル酸(2-エチルヘキシル):メタクリル酸グリシジル=90:10、官能基(エポキシ基)含有量0.71当量/kg
ポリマー2:エポキシ基含有アクリルゴム、Tg-64℃、アクリル酸(2-エチルヘキシル):メタクリル酸グリシジル=95:5、官能基(エポキシ基)含有量0.36当量/kg
ポリマー3:エポキシ基含有アクリルゴム、Tg-49℃、アクリル酸イソノニル:メタクリル酸グリシジル=90:10、官能基(エポキシ基)含有量0.71当量/kg
ポリマー4:エポキシ基含有アクリルゴム、Tg-53℃、アクリル酸ブチル:メタクリル酸グリシジル=98:2、官能基(エポキシ基)含有量0.14当量/kg
ポリマー5:エポキシ基含有アクリルゴム、Tg-50℃、アクリル酸(2-エチルヘキシル):メタクリル酸グリシジル=80:20、官能基(エポキシ基)含有量1.42当量/kg
ポリマー6:エポキシ基含有アクリルゴム、Tg-39℃、アクリル酸イソノニル:メタクリル酸グリシジル=80:20、官能基(エポキシ基)含有量1.42当量/kg
ポリマー7:エポキシ基含有アクリルゴム、Tg-40℃、アクリル酸エチル:メタクリル酸グリシジル=90:10、官能基(エポキシ基)含有量0.71当量/kg
これらポリマー1~7の共重合モノマー成分、共重合比およびTgを表1に示す。
【0049】
【0050】
<(b)エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート(登録商標)1001、ジャパンエポキシレジン(株)製、常温で固体)
<(c)硬化剤>
硬化剤1:ノボラックフェノール樹脂(HF-4、明和化成(株)製)
硬化触媒1:トリフェニルホスフィン(TPP、東京化成工業製)
上記熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、硬化剤をそれぞれ表2に示した組成比で配合し、硬化触媒を添加して、固形分濃度15重量%となるようにメチルエチルケトン/メチルイソブチルケトン混合溶媒に常温で攪拌、溶解して接着剤溶液すなわち電子部品用組成物を作製した。この接着剤溶液をバーコーターで、シリコーン離型剤付きの厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(藤森工業(株)製“フィルムバイナ”GT)に50μmの乾燥厚さとなるように塗布し、120℃で5分間乾燥し、保護フィルムを貼り合わせて、本発明の電子部品用接着剤シートを作製した。また、厚み50μmの電子部品用接着剤シートをラミネートして4枚積層物(厚み約200μm)を作製し、各評価測定を行った。電子部品用接着剤シートの評価結果を表2に併せて示す。
【0051】
【0052】
表2に示すとおり、実施例1~3、参考例1~3と比較例1~3を比較すると、300mm×300mmの構成体で、実施例1~3では0℃~150℃の温度サイクル試験をしても、1500サイクルで剥がれもガラス板割れも発生しなかったのに対し、比較例1では1500サイクルで剥がれが発生し、比較例2および3では1000サイクルで剥がれが発生した。また、-20℃~150℃の温度サイクル試験においても、実施例1~3、参考例1では1500サイクルで剥がれもガラス板割れも発生しなかったのに対し、参考例2では1000サイクル、参考例3では1500サイクル、比較例1では1000サイクル、比較例2では500サイクルで剥がれが発生し、比較例3では1000サイクルでガラス板割れが発生した。さらに、-50℃~150℃の温度サイクル試験においても、実施例1~3では1500サイクルで剥がれもガラス板割れも発生しなかったのに対し、参考例2では500サイクル、参考例3では1000サイクル、比較例1では300サイクル、比較例2では100サイクルで剥がれが発生し、比較例3では500サイクルでガラス板割れが発生した。