(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20230620BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230620BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230620BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230620BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230620BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20230620BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20230620BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20230620BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20230620BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20230620BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20230620BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/0566
H01M50/417
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/451
H01M50/489
(21)【出願番号】P 2019143025
(22)【出願日】2019-08-02
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2018180805
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】生駒 啓
(72)【発明者】
【氏名】西村 大
(72)【発明者】
【氏名】佃 明光
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/155288(WO,A1)
【文献】特開2010-262939(JP,A)
【文献】特開2015-018678(JP,A)
【文献】特開2017-014493(JP,A)
【文献】特開2014-141638(JP,A)
【文献】特開2004-039492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 10/0566
H01M 50/417
H01M 50/434
H01M 50/443
H01M 50/451
H01M 50/489
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、非水電解質およびセパレータを含む非水電解質二次電池であって、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の上に形成された正極合剤層とを含み、前記正極合剤層は、正極活物質と、バインダとを含み、前記正極活物質は一般式Li
aNi
xM
1-xO
2(0.9≦a≦1.2、0.8≦x≦1、MはCo、Mn、Al、Mg、Moからなる群より選択される少なくとも1種の元素)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物であり、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の上に形成された負極合剤層とを含み、前記負極合剤層は、負極活物質と、バインダとを含み、前記負極活物質は、Si系化合物、Sn系化合物、金属リチウムからなる群より選択される一つ以上の成分を含むものであり、前記セパレータはシャットダウン性を有し、多孔質基材の少なくとも片面に、樹脂および/または無機粒子とを含む多孔質層が積層されたものであって、
前記多孔質基材の厚みが3μm以上50μm以下であり、ナノインデンテーション法により評価用電解液中で多孔質層側から前記セパレータに
下記の条件で負荷をかけ、その後負荷を除く動作を50回行った際、50回目の最小荷重をかけた際の前記セパレータの変位と、1回目の最小荷重をかけた際の前記セパレータの変位との差が0.4μm以下であ
り、前記評価用電解液は、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:1(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF
6
を1モル/Lとなるように溶解させた溶液であり、前記セパレータのシャットダウン温度が130℃以上180℃以下であり、前記セパレータのメルトダウン温度が250℃以上である、非水電解質二次電池。
<条件>
使用圧子:ダイヤモンド製 正三角錐圧子
温度:23℃
最小荷重:0.03mN
最大荷重:0.5mN
負荷速度:1mN/分
最大荷重での保持時間:1秒
【請求項2】
前記Si系化合物は、Si、SiO
x、Si-炭素複合体、Si-Q合金、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、ここで、0<x<2であり、Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族乃至16族から選択される元素、但しSiを除く、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記セパレータは、ナノインデンテーション法により評価用電解液中で多孔質層側から負荷をかけた際の厚み方向圧縮変形弾性率が、50MPa以上150MPa以下である、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記セパレータは、ナノインデンテーション法により大気中での多孔質層側から負荷をかけた際の厚み方向圧縮変形弾性率が、300MPa以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記多孔質層100質量%における樹脂の含有量が1質量%以上50質量%未満である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池のような非水電解質二次電池は、スマートフォン、タブレット、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯ゲーム機などのポータブルデジタル機器、電動工具、電動バイク、電動アシスト補助自転車などのポータブル機器、および電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車などの自動車用途など、幅広く使用されている。
非水電解質二次電池は、一般的に、正極活物質を集電体に積層した正極と、負極活物質を集電体に積層した負極との間に、セパレータと電解質とが介在した構成を有している。
セパレータとしては、ポリオレフィン系多孔質基材が用いられている。セパレータに求められる特性としては、多孔構造中に電解液を含み、イオン移動を可能にする特性と、非水電解質二次電池が異常発熱した場合に、熱で溶融することで多孔構造が閉鎖され、イオン移動を停止させることで、発電を停止させるシャットダウン特性が挙げられる。
しかしながら、近年の非水電解質二次電池には、さらなる高エネルギー密度化が求められており、特に正極活物質・負極活物質について、これまでと異なるものが検討されはじめている。
【0003】
正極活物質としては、層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物であるLiaNixM1-xO2について、単位質量当たりの容量を高めるべく、Niの比率を高める(xの値を大きくする)試みがなされている。しかし、非特許文献1に記載があるように、Niの比率を高めると活物質自体の熱安定性が低下し、電池全体としては熱暴走開始温度が低くなる場合がある。そのため、非特許文献2にあるように、ドープする金属種を増やす等して熱安定性を高める検討があるが、単位質量あたりの容量が低下する場合がある。
負極活物質としては、現在主流である黒鉛系材料に代えて、単位質量当たりの容量を高めるべくSi系化合物やSn系化合物といった、所謂合金系化合物を単独で、または既存の黒鉛系材料と混合して使用する試みがなされている。しかし、これらの合金系負極は、リチウム吸蔵量が多くなると著しい体積膨張を示す。そのため、負極に大きな応力を発生させ、破損、粉状化が進み、電極内での電気的接続および機械的接続が失われたり、集電体を破壊するなどして、電池全体としてはサイクル特性が低下する場合がある。そのため、特許文献1にあるように負極内での活物質形状を独特なものにすることで、負極全体での見かけの体積変化を小さくする検討があるが、特殊な製造方法を採用する必要があり、高コストとなる場合があった。また、特許文献2にあるように、従来から用いられているバインダ対比結着力の大きなバインダを用い、負極の破損、粉状化を抑える検討がなされているが、充電時に負極中の空隙が小さくなり、イオン伝導性が低下する場合があった。
【0004】
そこで、上記正負極活物質の抱える課題を、セパレータが有する特性をもって解決することが重要となる。
セパレータの耐熱性を向上させる取り組みとして、特許文献3では、ポリオレフィンを主体とする多孔質膜に無機粒子を含む多孔質層を積層することで、熱収縮率を低減することができるセパレータが提案されている。また、特許文献4では、耐熱性含窒素芳香族重合体とセラミック粉末を多孔質基材上に積層することで、高耐熱性でショート温度が高いセパレータが提案されている。また特許文献5では、厚み方向に潰れにくいポリオレフィン系セパレータを用いることで、サイクル特性を向上させる取り組みが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-164885号公報
【文献】特開2015-185279号公報
【文献】特許第5183435号公報
【文献】特許第3175730号公報
【文献】特開2004-39492号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Hyung-Joo Noh et al.,Jounal of Power Sources,233,121(2013)
【文献】S.-W.Woo et al.,Electrochimica Acta,54,3851(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3は無機粒子により熱収縮率を低減しているが、シャットダウン後の高温領域に到達した際、無機粒子を含む多孔質層が多孔質基材の溶融収縮を抑制できず熱破膜が発生し、十分な安全性を確保することができない。また、特許文献4では、耐熱性含窒素芳香族重合体を積層しているため、耐熱破膜性は良好であるが、耐熱性含窒素芳香族重合体の割合が大きく、無機粒子の粒径が小さいため、電池特性の劣化が大きい。また、どちらの場合においても、負極活物質の体積変化に対し柔軟に形状変化せず、上述の合金系負極における課題解決には寄与しないと考えられる。
特許文献5においては、厚み方向に潰れにくいことで微孔膜の目詰まりを防ぎ、サイクル特性が向上するとあるが、合金系負極に用いた場合は、むしろセパレータが潰れにくいことで、負極で発生する応力を吸収できずに、負極の破損、粉状化を引き起こしてしまい、サイクル特性や安全性を低下させると考えられる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、上記問題に鑑み、シャットダウン性を有し、耐熱破膜性が高く、電池内(すなわち電解液中)で優れた圧縮-回復特性を有するセパレータを用い、安全性が高く、サイクル特性の優れた非水電解質二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明の非水電解質二次電池は次の構成を有する。
(1)正極、負極、非水電解質およびセパレータを含む非水電解質二次電池であって、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の上に形成された正極合剤層とを含み、前記正極合剤層は、正極活物質と、バインダとを含み、前記正極活物質は一般式LiaNixM1-xO2(0.9≦a≦1.2、0.8≦x≦1、MはCo、Mn、Al、Mg、Moからなる群より選択される少なくとも1種の元素)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物であり、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の上に形成された負極合剤層とを含み、前記負極合剤層は、負極活物質と、バインダとを含み、前記負極活物質は、Si系化合物、Sn系化合物、金属リチウムからなる群より選択される一つ以上の成分を含むものであり、前記セパレータはシャットダウン性を有し、多孔質基材の少なくとも片面に、樹脂および/または無機粒子とを含む多孔質層が積層されたものであって、ナノインデンテーション法により評価用電解液中で多孔質層側から前記セパレータに負荷をかけ、その後負荷を除く動作を50回行った際、50回目の最小荷重をかけた際の前記セパレータの変位と、1回目の最小荷重をかけた際の前記セパレータの変位との差が0.4μm以下である非水電解質二次電池。
(2)前記Si系化合物は、Si、SiOx、Si-炭素複合体、Si-Q合金、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、ここで、0<x<2であり、Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族乃至16族から選択される元素、但しSiを除く、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、(1)に記載の非水電解質二次電池。
(3)前記セパレータは、ナノインデンテーション法により評価用電解液中で多孔質層側から負荷をかけた際の厚み方向圧縮変形弾性率が、50MPa以上150MPa以下である、(1)または(2)に記載の非水電解質二次電池。
(4)前記セパレータは、ナノインデンテーション法により大気中での多孔質層側から負荷をかけた際の厚み方向圧縮変形弾性率が、300MPa以上である、(1)~(3)のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
(5)前記セパレータのシャットダウン温度が130℃以上180℃以下であることを特徴とする、(1)~(4)のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
(6)前記セパレータのメルトダウン温度が250℃以上である、(1)~(5)のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
(7)前記多孔質層100質量%における樹脂の含有量が1質量%以上50質量%未満である、(1)~(6)のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安全性が高くサイクル特性の優れた非水電解質二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態にかかる非水電解質二次電池について、以下詳細に説明する。
本発明の実施形態にかかる非水電解質二次電池は、正極、負極、非水電解質およびセパレータを含む非水電解質二次電池であって、
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の上に形成された正極合剤層とを含み、
前記正極合剤層は、正極活物質と、バインダとを含み、
前記正極活物質は一般式LiaNixM1-xO2(0.9≦a≦1.2、0.8≦x≦1、MはCo、Mn、Al、Mg、Moからなる群より選択される少なくとも1種の元素)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物であり、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の上に形成された負極合剤層とを含み、
前記負極合剤層は、負極活物質と、バインダとを含み、
前記負極活物質は、Si系化合物、Sn系化合物、からなる群より選択される一つ以上の成分を含むものであり、
前記セパレータはシャットダウン性を有し、多孔質基材の少なくとも片面に、樹脂および/または無機粒子とを含む多孔質層が積層されたものであって、ナノインデンテーション法により評価用電解液中で多孔質層側から前記セパレータに負荷をかけ、その後負荷を除くという動作を50回行った際、50回目の最小荷重をかけた際の前記セパレータの変位と、1回目の最小荷重をかけた際の前記セパレータの変位との差が0.4μm以下である。
【0012】
[正極]
本発明の実施形態において、正極活物質は、一般式LiaNixM1-xO2(0.9≦a≦1.2、0.8≦x≦1、MはCo、Mn、Al、Mg、Moからなる群より選択される少なくとも1種の元素)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物であり、例えばLi(Ni0.8Co0.1Mn0.1)O2、Li(Ni0.9Co0.1)O2、LiNiO2、Li(Ni0.9Co0.05Mn0.025Mg0.025)O2、Li(Ni0.9Co0.05Al0.05)O2、Li(Ni0.8Co0.1Mn0.08Al0.01Mg0.01)O2、Li(Ni0.8Co0.1Mn0.08Mo0.02)O2等が挙げられる。
正極は、例えばアルミニウム、又はステンレス製の正極集電体と、正極集電体の上に形成された正極合剤層とを含み、正極合剤層は、正極活物質と、バインダとを含む構造となっている。
正極は、例えば、以下のようにして製造される。正極活物質をグラファイトやカーボンブラック等の導電剤とポリフッ化ビニリデン等の結着剤と共に混合して、正極合剤とする。そして、この正極合剤をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の溶媒に分散させてスラリーとする。これを正極集電体の両面に塗布、乾燥後、ロールプレス等により圧縮平滑化して正極が製造される。
【0013】
[負極]
本発明の実施形態において、負極は、負極集電体と、負極集電体の上に形成された負極合剤層とを含み、負極合剤層は、負極活物質と、バインダとを含み、負極活物質は、Si系化合物、Sn系化合物からなる群より選択される一つ以上の成分を含むものである。
本実施形態において負極活物質は、Si系化合物、Sn系化合物、金属リチウムからなる群より選択される一つ以上の成分(合金系化合物と称する場合がある)を含んでいる。
【0014】
Sn系化合物としては、例えば、Sn、SnO2、Sn-R(前記Rは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族乃至16族元素、遷移金属、希土類元素またはこれらの組み合わせであり、Snではない)などが挙げられる。
Si系化合物としては、例えば、Si、SiOx(0<x<2)、Si-C複合体、Si-Q合金(Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族乃至16族から選択される元素(周期表第13族~第16族に属する元素から選択される元素)、ただしSiを除く、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される)などが挙げられる。ここで、前記QおよびRの具体的な元素としては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Poおよびこれらの組み合わせから選択される一つであってもよい。この中で好ましいのはSi系化合物であり、さらに好ましいのは、SiOx(0<x<2)である。
なお、負極活物質としては、さらに既存の炭素系材料(人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンなど)を、合金系化合物と混合して用いることができる。
【0015】
負極は、負極集電体と、負極集電体の上に形成された負極合剤層とを含む。例えば、銅、ニッケル、又はステンレス製の負極集電体に、負極活物質とバインダとを含む負極合剤層を設けた構造となっている。
負極は、例えば、以下のようにして製造される。負極活物質をスチレン-ブタジエン共重合体、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフッ化ビニリデン等のバインダ(結着剤)と共に混合して、負極合剤とする。そして、この負極合剤をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)または水等の溶媒に分散させてスラリーとする。これを負極集電体の両面に塗布、乾燥後、ロールプレス等により圧縮平滑化して負極を製造することができる。また、必要に応じて負極導電助剤を用いてもよい。負極導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、炭素繊維などが挙げられる。
【0016】
[電解液]
本発明の実施形態において用いる電解液は、特に限定されることなく従来のリチウムイオン電池に用いられている有機溶媒を使用することができる。上記有機溶媒には、環状エステル類、鎖状エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類等が用いられ、具体的には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ-ブチロラクトン(γBL)、2メチル-γ-ブチロラクトン、アセチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-エトキシエタン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルプロピルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル、テトラヒドロフラン(THF)、アルキルテトラヒドロフラン、ジアルキルアルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、アルキル-1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル、N-メチル-2-ピロリドンなどの有機溶媒およびこれらの誘導体や混合物などが好ましく用いられる。
【0017】
電解液に含まれる電解質としては、アルカリ金属、特にリチウムのハロゲン化物、過塩素酸塩、チオシアン塩、ホウフッ化塩、リンフッ化塩、砒素フッ化塩、アルミニウムフッ化塩、トリフルオロメチル硫酸塩などが好ましく用いられる。例えば、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、4フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3SO2)2]などのリチウム塩(電解質)などの1種以上の塩を用いることができるが、六フッ化リン酸リチウムが好ましい。
電解質の非水溶媒に対する溶解量は、0.5~3.0モル/Lとすることが好ましく、特に0.8~1.5モル/Lが好ましい。
また電解液には必要に応じて添加剤を用いてもよい。添加剤としては、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、エチレンサルファイト、1,4-ブタンスルトン、プロパンサルトン、2,4-ジフルオロアニソール、ビフェニル、シクロヘキシルベンゼン等が挙げられ、これらのうちの1種類以上を用いてもよい。
【0018】
[セパレータ]
本発明の実施形態にかかるセパレータは、シャットダウン性を有し、多孔質基材の少なくとも片面に、樹脂および/または無機粒子とを含む多孔質層が積層されたものであって、ナノインデンテーション法により評価用電解液中で多孔質層側から前記セパレータに負荷をかけ、その後負荷を除く動作を50回行った際、50回目の最小荷重をかけた際の前記セパレータの変位と、1回目の最小荷重をかけた際の前記セパレータの変位との差が0.4μm以下である。これについて以下に説明する。
【0019】
(多孔質基材)
多孔質基材としては、内部に空孔を有する多孔膜、不織布、または繊維状物からなる多孔膜シートなどが挙げられる。多孔質基材を構成する材料としては、電気絶縁性であり、電気的に安定で、電解液にも安定である樹脂から構成されていることが好ましい。また、シャットダウン機能を付与する観点から、用いる樹脂は融点が200℃以下の熱可塑性樹脂が好ましい。ここでのシャットダウン機能とは、リチウムイオン電池が異常発熱した場合に、熱で溶融することで多孔構造を閉鎖し、イオン移動を停止させて、発電を停止させる機能のことである。
熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂が挙げられ、前記多孔質基材はポリオレフィン系多孔質基材であることが好ましい。また、前記ポリオレフィン系多孔質基材は、融点が200℃以下であるポリオレフィン系多孔質基材であることがより好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、その共重合体、およびこれらを組み合わせた混合物などが挙げられ、例えばポリエチレンを90質量%以上含有する単層の多孔質基材、ポリエチレンとポリプロピレンからなる多層の多孔質基材などが挙げられる。
【0020】
多孔質基材の製造方法としては、ポリオレフィン系樹脂をシートにした後に延伸することで多孔質化する方法や、ポリオレフィン系樹脂を流動パラフィンなどの溶剤に溶解させてシートにした後に溶剤を抽出することで多孔質化する方法が挙げられる。
多孔質基材の厚みは、3μm以上50μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上、また30μm以下である。多孔質基材の厚みが50μm以下であれば、多孔質基材の内部抵抗が高くなりすぎず好ましい。また、多孔質基材の厚みが3μm以上であれば製造がしやすく、また十分な力学特性が得られる。
多孔質基材の透気度は、50秒/100cc以上1,000秒/100cc以下であることが好ましい。より好ましくは50秒/100cc以上、また500秒/100cc以下である。透気度が1,000秒/100cc以下であれば、十分なイオン移動性が得られ、電池特性に優れる。50秒/100cc以上であれば、十分な力学特性が得られる。
【0021】
(多孔質層)
多孔質層は、上記した多孔質基材の片面または両面に設けられた層のことを指す。樹脂(後述)および/または無機粒子(後述)とが構成成分として含まれており、本実施形態のセパレータの物性を発現するための重要な要素である。
【0022】
(無機粒子)
多孔質層には無機粒子を含んでいることが好ましい。具体的に無機粒子としては、酸化アルミニウム、ベーマイト、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウムなどの無機酸化物粒子、窒化アルミニウム、窒化硅素などの無機窒化物粒子、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶粒子などが挙げられる。これらの無機粒子を1種類で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
用いる無機粒子の平均粒径は、0.10μm以上5.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.20μm以上3.0μm以下、さらに好ましくは0.30μm以上1.0μm以下である。0.10μm以上であれば、多孔質層が緻密になりすぎず十分な透気度が得られる。また、空孔径が小さくなりすぎず電解液の含浸性が確保でき、生産性に優れる。5.0μm以下であれば、十分な寸法安定性が得られ、また多孔質層の膜厚の増大を抑え、電池特性に優れる。
用いる無機粒子の形状としては、球状、板状、針状、棒状、楕円状などが挙げられ、いずれの形状であってもよい。その中でも、表面修飾性、分散性、塗工性の観点から球状であることが好ましい。
【0023】
(樹脂)
本実施形態において用いることができる樹脂としては、耐熱性、強度、柔軟性を両立するものであれば特に限定されず、芳香族ポリアミド(アラミド)、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリエーテルケトン、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアリレート、芳香族ポリサルフォン、芳香族ポリエーテルサルフォン、芳香族ポリエーテルイミド、芳香族ポリカーボネート、ゴム、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、超分子化合物、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂等が挙げられる。また、複数の樹脂のブレンドとしてもよい。特に、主鎖上に芳香族環を有する樹脂が好適である。このような樹脂として、例えば、中でも耐熱性に優れ、高強度であることから、芳香族ポリアミド(芳香族ポリイミド前駆体である芳香族ポリアミド酸を含む)または芳香族ポリイミドもしくは芳香族ポリアミドイミドを樹脂全体の30~100質量%含むことが好ましい。より好ましくは50~100質量%である。
本実施形態において、樹脂中に、フッ素基、ハロゲン化アルキル基、ニトロ基、シアノ基、シアネート基およびフルオレン基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミドまたは芳香族ポリアミドイミドを含むことが好ましい。フッ素基、ハロゲン化アルキル基、ニトロ基、シアノ基、シアネート基などの電子吸引性の強い置換基を有することで、後述のとおり、クーロン反発力によりポリマー鎖間に、より大きな自由体積が形成されやすい。また、フルオレン基などの嵩高い基を有することで、後述のとおり、ポリマー鎖間の距離を離すことも効果的である。
本実施形態において、樹脂中に、下記化学式(I)~(III)のいずれかの構造を有するポリマーを含むことが好ましい。なお、芳香族ポリアミドとしては次の化学式(I)、芳香族ポリイミドとしては次の化学式(II)、芳香族ポリアミドイミドとしては次の化学式(III)で表される繰り返し単位を有するものである。
化学式(I):
【0024】
【0025】
化学式(II):
【0026】
【0027】
化学式(III):
【0028】
【0029】
ここで、化学式(I)~(III)中のAr1およびAr2は芳香族基であり、それぞれ単一の基であってもよいし、複数の基で、多成分の共重合体であってもよい。また、芳香環上で主鎖を構成する結合手はメタ配向、パラ配向のいずれであってもよい。さらに、芳香環上の水素原子の一部が任意の基で置換されていてもよい。
【0030】
本実施形態において用いる芳香族ポリアミドや芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミドとしては、化学式(I)~(III)中のAr1およびAr2のすべての基の合計の25~100モル%が、フッ素基、ハロゲン化アルキル基、ニトロ基、シアノ基、シアネート基およびフルオレン基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基(置換基)を有する芳香族基であることが好ましい。フッ素基、ハロゲン化アルキル基、ニトロ基、シアノ基、シアネート基などの電子求引性の強い置換基を有することで、クーロン反発力によりポリマー鎖間に、より大きな自由体積が形成されやすい。また、フルオレン基などの嵩高い基を有することで、ポリマー鎖間の距離を離すことも効果的である。上記置換基のいずれかを有する芳香族基がAr1およびAr2のすべての基の合計の25モル%以上である場合、平均自由体積半径が0.32nm以上となる傾向があり、十分なイオン透過性が得やすくなる。上記置換基の割合は、Ar1およびAr2のすべての基の合計の50~100モル%であることがより好ましい。
【0031】
さらに好ましくは、化学式(I)~(III)中のAr1およびAr2のすべての基の合計の25~100モル%が、次の化学式(IV)~(VIII)で表される基から選ばれた少なくとも1つの基であることであり、その割合は50~100モル%であることがより好ましい。
化学式(IV)~(VIII):
【0032】
【0033】
(化学式(IV)~(VIII)中の二重破線は、1または2本の結合手を表す)
【0034】
ここで、化学式(IV)~(VIII)の芳香環上の水素原子の一部が、さらにフッ素、臭素、塩素などのハロゲン基;ニトロ基;シアノ基;メチル、エチル、プロピルなどのアルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシなどのアルコキシ基、カルボン酸基等の任意の基で置換されていてもよい。
【0035】
本発明の実施形態に用いる樹脂を得る方法を、芳香族ポリアミドおよび芳香族ポリイミドを例に説明する。もちろん、本発明の実施形態に用いることができる樹脂およびその重合方法はこれに限定されるものではない。
芳香族ポリアミドを得る方法は種々の方法が利用可能であるが、例えば、酸ジクロライドとジアミンを原料として低温溶液重合法を用いる場合には、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性有機極性溶媒中で合成される。酸ジクロライドとジアミンを原料とする場合、重合反応に伴って塩化水素が副生するが、これを中和する場合には炭酸リチウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムなどの無機の中和剤、あるいは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の有機の中和剤を使用するとよい。
【0036】
一方、本発明の実施形態に用いることができる芳香族ポリイミドあるいはその前駆体であるポリアミド酸を、例えば、テトラカルボン酸無水物と芳香族ジアミンを原料として重合する場合には、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性有機極性溶媒中で溶液重合により合成する方法などをとることができる。このようにして合成した芳香族ポリアミド酸をイミド化して芳香族ポリイミドを得る方法としては、熱処理や化学処理、およびその併用などが用いられる。熱処理法は、一般的にポリアミド酸を100~500℃程度で加熱処理することでイミド化する方法である。一方、化学処理は、トリエチルアミンなどの第三級アミンを触媒として、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物などの脱水剤を用いる方法や、ピリジンなどのイミド化剤を用いる方法がある。
後述する塗工液には重合後の樹脂溶液をそのまま使用してもよく、あるいはポリマーを一度単離してから上述の非プロトン性有機極性溶媒に再溶解して使用してもよい。樹脂を単離する方法としては、特に限定しないが、重合後の樹脂溶液を多量の水中に投入することで溶媒および中和塩を水中に抽出し、析出した樹脂のみを分離した後、乾燥させる方法などが挙げられる。また、再溶解時に溶解助剤として金属塩を添加しても良い。この金属塩としては、非プロトン性有機極性溶媒に溶解するアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物が好ましく、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウムなどが挙げられる。
【0037】
(多孔質層の形成)
多孔質層は、多孔質基材の少なくとも片面に塗工液を塗布し、溶媒を除去することで形成することが好ましい。塗工液には、上記樹脂重合後の樹脂溶液および単離した樹脂を再溶解した溶液を用いてもよいし、ここにさらに無機粒子を分散したものを用いてもよい。ここで、分散させる溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性有機極性溶媒を用いることができる。この中でも、後工程での多孔質構造の形成の観点から、N-メチル-2-ピロリドンが特に好ましい。
また、多孔質化を促進するために、樹脂の貧溶媒を添加してもよい。中でも水の添加が好ましく、添加する水の量は、芳香族ポリアミド樹脂100質量部に対して、500質量部以下が好ましい。添加する水の量が500質量部以下であれば、芳香族ポリアミド樹脂が塗工液中で凝固することを防ぎ、塗剤の安定性が十分に得られる。
塗工液の分散方法としては、公知の手法を用いればよい。ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置、ペイントシェーカーなどが挙げられる。これら複数の混合分散機を組み合わせて段階的に分散を行ってもよい。
【0038】
塗工液を調製する順序としては特に限定はされない。分散工程の効率化の観点から、芳香族ポリアミド樹脂と非プロトン性有機極性溶媒を混合し、溶解させ、その溶解液にアルミナ、その他の有機樹脂、添加剤等を添加し、塗工液を調製することが好ましい。
次に、得られた塗工液を多孔質基材上に塗工し、水槽中に浸漬させ、乾燥を行い、多孔質層を積層する。塗工方法としては、公知の方法で塗工すればよい。例えば、ディップコーティング、グラビアコーティング、スリットダイコーティング、ナイフコーティング、コンマコーティング、キスコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷などが利用できる。これらに限定されることはなく、用いる樹脂、無機粒子、分散剤、レベリング剤、使用する溶媒、多孔質基材などの好ましい条件に合わせて塗工方法を選択すればよい。また、塗工性を向上させるために、例えば、多孔質基材にコロナ処理、プラズマ処理などの塗工面の表面処理を行ってもよい。
【0039】
多孔質層における樹脂の含有量は、多孔質層全体100質量%に対して、1質量%以上50質量%未満であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、また30質量%未満である。さらに好ましくは、5質量%以上であり、また15質量%未満である。
多孔質層における樹脂の含有量が、1質量%以上であれば、十分な耐熱性が得られ、圧縮-回復特性に優れる。また、多孔質層における樹脂の含有量が50質量%未満であれば、樹脂の含有量が大きくなりすぎず、十分な多孔質構造が得られ、電池特性の低下を抑制できる。また、コスト面でも有利となる。全ての多孔質層が、樹脂の含有量が、1質量%以上50質量%未満であることが好ましい。
【0040】
多孔質層の膜厚の合計は、1μm以上6μm以下であることが好ましい。より好ましくは、1.5μm以上であり、また5μm以下である。さらに好ましくは2μm以上であり、また4μm以下である。多孔質層の膜厚の合計が1μm以上であれば、十分な耐熱破膜性が得られる。また、6μm以下であれば、十分な多孔質構造が得られ、電池特性が向上する。また、コスト面でも有利となる。
多孔質層の空隙率は、50%以上90%以下であることが好ましい。より好ましくは、60%以上であり、また70%以下である。多孔質層の空隙率が50%以上であれば、十分な電池特性が得られる。また、多孔質層の空隙率が90%以下であれば、多孔質膜の強度が向上し、また、十分な耐熱破膜性が得られる。ここで言う空隙率とは、樹脂の真比重(a1(g/cm3)、質量部(b1(部))、無機粒子の真比重(a2(g/cm3)、質量部(b2(部))、多孔質層の塗工量の合計(c(μm))、多孔質層の膜厚の合計(d(μm))を用いて、下記式(1)から算出される。
空隙率(%)=(d-(c×b1/a1+c×b2/a2)/d)×100 (1)
【0041】
[セパレータの物性]
以下に、本実施形態の非水電解質二次電池に用いられるセパレータの物性について説明する。なお物性測定は、製造後のセパレータをそのまま測定に供することもできるし、電池から取り出したものを、電解質を含まない鎖状エステル類や鎖状エーテル類といった沸点の低い有機溶媒で洗浄し、乾燥したものを測定に供することもできる。
【0042】
(シャットダウン温度)
本実施形態の非水電解質二次電池に用いられるセパレータは、電池が異常発熱した場合に、熱で溶融することで多孔構造が閉鎖され、イオン移動を停止させることで、発電を停止させるシャットダウン特性を有する。このシャットダウン特性を発現する温度をシャットダウン温度といい、シャットダウン温度は、130℃以上180℃以下であることが好ましく、より好ましくは130℃以上160℃以下である。また、シャットダウン温度は、後述するメルトダウン温度より100℃以上低い温度であることが好ましい。シャットダウン温度は、より好ましくは150℃以上であり、シャットダウン温度が130℃以上であれば、通常使用時に多孔構造が閉鎖されることを防ぎ、電池特性に優れる。一方、シャットダウン温度が180℃以下であれば電池が異常発熱した場合にイオン移動が停止し、電池の温度が上昇し続けるのを防ぐことができる。
【0043】
(メルトダウン温度)
電池が異常発熱した場合、上記のシャットダウン特性が作動した後、さらに電池が加熱されることで、セパレータの破膜が発生する場合がある。また、電池に衝撃が加わることで、局所的に圧力がかかった状態で発熱し、セパレータの破膜が発生する場合がある。したがって、本実施形態の非水電解質二次電池に用いられるセパレータは、シャットダウン特性に加え、高温での耐熱破膜性を有することが好ましい。具体的には、メルトダウン温度が250℃以上であることが好ましい。より好ましくは300℃以上、さらに好ましくは350℃以上である。メルトダウン温度が250℃以上であると、電池が異常発熱したときに電池内部での短絡の発生を抑制できる。
【0044】
(厚み方向の圧縮変形弾性率および圧縮-開放繰り返し時の特性)
本実施形態にかかる非水電解質二次電池に用いられるセパレータは、ナノインデンテーション法により評価用電解液中で多孔質層側から前記セパレータに負荷をかけ、その後負荷を除く動作を50回行った際、50回目の最小荷重をかけた際の前記セパレータの変位と、1回目の最小荷重をかけた際の前記セパレータの変位との差(以下、圧縮-開放繰り返し特性と称する場合がある。)が0.4μm以下であることが必要である。上記差は、好ましくは0.3μm以下である。ここで評価用電解液とは、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:1(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を1モル/Lとなるように溶解させた溶液のことを指す。
【0045】
50回目の最小荷重をかけた際の前記セパレータの変位と、1回目の最小荷重をかけた際の前記セパレータの変位との差は、繰り返しの圧縮-開放に対するセパレータの追従し易さの指標とすることができる。
セパレータの圧縮-開放繰り返し特性を0.4μm以下とすることにより、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池とすることができる。
本実施形態にかかる非水電解質二次電池は、Si系化合物やSn系化合物を含む負極活物質が、リチウム吸蔵量が多くなると体積膨張をし、放電に伴い体積がもとに戻る特性を示す場合があるが、負極に大きな体積変化を発生させた場合であっても、セパレータの圧縮-開放繰り返し特性が0.4μm以下であれば、充放電に伴う体積変化にセパレータが追従することができる。それにより、負極―セパレータ間の密着、すなわち電極間のイオン抵抗の均一性が維持され、電池全体としてはサイクル特性が向上するためである。
50回目の最小荷重をかけた際の前記セパレータの変位と、1回目の最小荷重をかけた際の前記セパレータの変位との差が0.4μmを超えると、繰り返しの圧縮-開放に対しセパレータが追従しにくくなる。繰り返しの圧縮-開放に対しセパレータが追従しにくい場合、本実施形態の非水電解質二次電池に用いられる合金系負極の充放電に伴う体積変化に追従できなくなることを意味する。そうすると、負極―セパレータ間の密着が悪くなり、電流が不均一になり、サイクル特性が悪化する可能性がある。
【0046】
また、本実施形態の非水電解質二次電池に用いられるセパレータは、ナノインデンテーション法により評価用電解液中で負荷をかけた際の厚み方向圧縮変形弾性率が、50MPa以上150MPa以下であることが好ましい。厚み方向圧縮変形弾性率が50MPa以上であれば、電池組立時にセパレータが過度につぶれることを防ぎ、十分な電池特性が発現できる。一方、厚み方向圧縮変形弾性率が150MPa以下であれば、電池内でセパレータが圧縮されやすい。つまり、非水電解質二次電池に用いられる合金系負極の充放電に伴う体積変化により発生する負極内の大きな応力を、セパレータが吸収しやすくなる。そうすると、発生した応力により負極合剤または負極集電体に過剰な負荷がかかるのを防ぎ、負極合剤の破損や粉状化を防止しやすくなる。それにより電極内での電気的接続および機械的接続が安定し、負極集電体の破壊を防止するなどして、電池全体としてはサイクル特性がより優れる。
圧縮-開放繰り返し特性および厚み方向の圧縮変形弾性率は、多孔質基材及び多孔質層を構成する材料、及び配合割合、並びに多孔質基材及び多孔質層の形状、及び厚み等を調整することにより上記の範囲とすることができる。
【0047】
一方で、本発明の非水電解質二次電池に用いられるセパレータは、多孔質層側から大気中でナノインデンテーション法により負荷をかけたときの厚み方向圧縮変形弾性率が、300N以上であることが好ましく、330N以上であることがより好ましい。これは、大気中では厚み方向に高強度であることを意味する。300N以上であれば、大気中における厚み方向の強度が十分に得られ、電池組立時のプレス工程や異物混入時に、セパレータが破膜し正負極が短絡してしまうのを防ぐことができる。なお、本発明の非水電解質二次電池に用いられるセパレータの多孔質層に含まれる樹脂としては、大気中と評価用電解液中で、ナノインデンテーション法により測定した厚み方向の弾性率が異なるような種類のものを用いることが、本発明において好ましい。
【0048】
[非水電解質二次電池]
本実施形態の非水電解質二次電池の形態としては、例えば、コイン電池、ラミネート電池、円筒型電池、角型電池等の形態が挙げられる。電池の大容量化や複数の電池をつないだモジュール化するためにはラミネート電池、円筒型電池、角型電池が特に好ましい。非水電解質二次電池の製造方法としては、例えば、ラミネート電池、円筒型電池、角型電池の場合、正極シート、セパレータ、負極シート、セパレータの順に重ね合わせ、渦巻状に捲回して捲回体を作製し、コイン電池、ラミネート電池、角型電池の場合、所定のサイズの正極シート、セパレータ、負極シート、セパレータの順に重ね合わせて積層して積層体を作製し、作製した捲回体もしくは積層体を、それぞれの電池ケースに充填し、正極及び負極のリード体の溶接を行った後、電解液を電池ケース内に注入し、電池ケースの開口部を封口して完成する。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。本実施例で用いた測定法を以下に示す。
【0050】
[測定方法]
(1)セパレータのメルトダウン温度
50mm×50mmサイズのセパレータを切り出し、中央に12mmの貫通孔のある2枚のステンレス板で試料を挟み、さらにその両側から中央に12mmの貫通孔のある加熱ブロック板で挟んだ。貫通孔にタングステン・カーバイド製で直径9.5mmの球を乗せ、加熱ブロックを5℃/分で昇温していき、球が落下した際の温度を計測した。試験は5回実施し、平均値をメルトダウン温度(℃)とした。
【0051】
(2)セパレータのシャットダウン温度
φ45mmのセパレータをヒーターブロックにセットし、5℃/分で昇温しながら王研式透気抵抗度計EGO-1T(旭精工社製)により透気度を測定し、透気度が10万秒/100mlに到達する温度を計測した。試験は5回実施し、平均値をシャットダウン温度(℃)とした。
【0052】
(3)セパレータの厚み方向の圧縮変形弾性率および圧縮-開放繰り返し時の特性
セパレータをナノインデンテーション法を用いて評価を行った。
エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:1(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を1モル/Lとなるように溶解させた溶液を作製し、これを後述する評価用電解液とした。
測定にはアントンパール社製のウルトラナノインデンテーションテスタ(UNHT3)を用いた。1cm角に切り出したセパレータを、多孔質層が測定子側となるように測定台に置き、評価用電解液を0.1mL滴下または、滴下しない状態で、30秒後に以下の条件で負荷-開放試験による押込み試験を行った。なお、大気中での測定は、評価用電解液を滴下しない状態とした。
【0053】
使用圧子:ダイヤモンド製 正三角錐圧子
温度:23℃
最小荷重:0.03mN
最大荷重:0.5mN
負荷速度:1mN/分
最大荷重での保持時間:1秒
繰り返し回数:50回
このときの、50回目の最小荷重をかけた際の変位と、1回目の最小荷重をかけた際の変位との差(Δ変位)が、0.3μm以下の場合を○、0.3μmを超えて0.4μm以下の場合を△、0.4μmを超える場合を×とした。また、1回目の押し込みの際の弾性率を、厚み方向圧縮変形弾性率(MPa)とした。
【0054】
(4)充放電サイクル特性
(a)負極に金属リチウムを含まない場合
各実施例及び比較例にて作製した非水電解質二次電池について、充放電サイクル特性を下記手順にて試験を行い、放電容量維持率を算出した。
〈1~300サイクル目〉
充電、放電を1サイクルとし、充電条件を0.5C、4.2Vの定電流充電、放電条件を0.5C、2.85Vの定電流放電とし、25℃下で充放電を300回繰り返し行った。
〈放電容量維持率の算出〉
(300サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)×100で放電容量維持率を算出した。各実施例及び比較例にて作製した非水電解質二次電池について5個試験を実施し、放電容量維持率が最大、最小となる結果を除去した3個の測定結果の平均を放電容量維持率とした。放電容量維持率が60%未満を×、60%以上70%未満を△、70%以上の場合を○とした。
(b)負極に金属リチウムを含む場合
各実施例及び比較例にて作製した非水電解質二次電池について、充放電サイクル特性を下記手順にて試験を行い、放電容量維持率を算出した。
〈1~50サイクル目〉
充電、放電を1サイクルとし、充電条件を0.5C、4.0Vの定電流充電、放電条件を0.5C、3.0Vの定電流放電とし、25℃下で充放電を300回繰り返し行った。
〈放電容量維持率の算出〉
(50サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)×100で放電容量維持率を算出した。各実施例及び比較例にて作製した非水電解質二次電池について5個試験を実施し、放電容量維持率が最大、最小となる結果を除去した3個の測定結果の平均を放電容量維持率とした。放電容量維持率が60%未満を×、60%以上70%未満を△、70%以上の場合を○とした。
【0055】
(5)圧壊試験
小型釘刺し試験機(東洋システム製)を使用し、φ10mmのSUS球、速度1mm/秒で試験を実施した。各実施例及び比較例にて作製した非水電解質二次電池を1/3Cで6時間、4.2Vの定電流定電圧充電を行い、上記条件にてSUS球を押し付け、電圧と温度の変化を計測した。試験は5回実施し、5回とも10秒後に電池表面温度が300℃以上なった場合を×、1~4回、10秒後に電池表面温度が300℃以上になった場合を△、5回とも10秒後に電池表面温度が300℃未満の場合を○とした。なお、試験時の雰囲気環境については、金属リチウムを含まない場合は、大気中で実施し、金属リチウムを含む場合は、アルゴンガス中で実施した。
【0056】
(6)加熱試験
各実施例にて作製した非水電解質二次電池を1/3Cで6時間、4.2Vの定電流定電圧充電を行い、オーブンに入れ、5℃/分で150℃まで加熱した後、150℃で30分間保持した。電圧と温度の変化を計測した。試験は5回実施し、5回とも10秒後に電池表面温度が300℃以上になった場合を×、1~4回、10秒後に電池表面温度が300℃以上になった場合を△、5回とも10秒後に電池表面温度が300℃未満の場合を○とした。なお、試験時の雰囲気環境については、金属リチウムを含まない場合は、大気中で実施し、金属リチウムを含む場合は、アルゴンガス中で実施した。
【0057】
(実施例1)
下記のとおりセパレータ及び非水電解質二次電池を作製した。表1にセパレータ物性と非水電解質二次電池の特性を示した。
【0058】
〔正極の作製〕
先ず、ドライ雰囲気中で正極活物質であるLi(Ni0.8Co0.1Mn0.1)O2100質量部と、導電助剤であるアセチレンブラック2質量部と、導電助剤である黒鉛2質量部と、バインダであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)4質量部〔N-メチルピロリドン(NMP)溶液として固形分量を供給〕と、添加剤である無水マレイン酸とを、溶媒であるNMPに均一になるように混合して正極合剤含有ペーストを調製した。次に、得られた正極合剤含有ペーストを、厚みが20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に間欠塗布して乾燥させた後、カレンダー処理を行って、全厚が169μmになるように正極合剤層の厚みを調整し、長さ504mm、幅56mmになるように切断して正極を作製した。更に、この正極のアルミニウム箔の露出部にタブを溶接してリード部を形成した。
【0059】
〔負極の作製〕
負極活物質である一酸化珪素(SiO)と黒鉛を質量比1:1で混合したもの100質量部と、バインダであるカルボキシメチルセルロース(CMC)1質量部(1質量%の水溶液として固形分量を供給)とスチレン・ブタジエンゴム(SBR)(3質量%の水溶液として固形分量を供給)3質量部と、導電助剤である炭素繊維5質量部とを、溶媒である比伝導度が2.0×105Ω/cm以上のイオン交換水に混合して負極合剤含有ペーストを調製した。次に、得られた負極合剤含有ペーストを、厚みが16.5μmの銅箔からなる負極集電体の両面に間欠塗布して乾燥させた後、カレンダー処理を行って、全厚が148μmになるように負極合剤層の厚みを調整し、長さ460mm、幅58mmになるように切断して負極を作製した。更に、この負極の銅箔の露出部にタブを溶接してリード部を形成した。
【0060】
〔セパレータの作製〕
脱水したN-メチル-2-ピロリドンに、ジアミンとして2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニルを窒素気流下で溶解させ、30℃以下に冷却した。そこへ、系内を窒素気流下、30℃以下に保った状態で、ジアミン全量に対して99モル%に相当する2-クロロテレフタロイルクロライド(酸ジクロライド)を30分かけて添加し、全量添加後、約2時間の撹拌を行うことで、芳香族ポリアミドを重合した。得られた重合溶液を、酸ジクロライド全量に対して97モル%の炭酸リチウムおよび6モル%のジエタノールアミンにより中和することで芳香族ポリアミド樹脂溶液を得た。
得られた芳香族ポリアミド樹脂溶液にN-メチル-2-ピロリドンを加え、芳香族ポリアミド樹脂とアルミナ粒子の合計100質量部に対して、芳香族ポリアミド樹脂が10質量部となるようにアルミナ粒子(平均粒径0.4μm)を添加した。その混合溶液を攪拌機で予備分散した後に、ビーズミルを用いて分散を行い、固形分濃度が24質量%の塗工液を得た。
得られた塗工液をディップコートにて、ポリエチレン製多孔質基材(厚み12μm、透気度160秒/100cc)の両面に塗工し、その後、水槽に浸漬し、含有される溶媒が揮発するまで乾燥することで多孔質層を形成した。
これを長さ675mm、幅60.5mmに切断し、セパレータとした。
【0061】
〔非水電解液の調製〕
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との体積比1:1の混合溶媒1Lに、1.0molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解して混合液を作製し、その混合液100質量部に、更にビニレンカーボネート(VC)を2質量部加えて、非水電解液を調製した。
【0062】
〔電池の組み立て〕
ドライ雰囲気中で、上記正極と上記負極とを、上記セパレータを介在させつつ重ね、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。得られた巻回電極体を更に押しつぶして扁平状に成型し、扁平型巻回電極体を得た。この扁平型巻回電極体をアルミニウムラミネートフィルムからなる外装体内に収納し、上記非水電解液を注入した後に封止を行い、電池容量1.2Ahの扁平型非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。
【0063】
(実施例2)
セパレータの作製において、ジアミンを1,3-フェニレンジアミン、酸ジクロライドを2―フルオロテレフタロイルクロライドに変更した以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
(実施例3)
負極の作製において、負極合材層をリチウム金属箔(片面あたりの厚さ30μm)に変更した以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0064】
(比較例1)
セパレータの作製において、ジアミン全量に対して99モル%に相当する酸ジクロライドを20モル%に相当する2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンと80モル%に相当する4,4’-ジアミノジフェニルエーテルに変更した以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0065】
(比較例2)
セパレータをセルロース製不織布(厚さ40μm、密度0.40g/cm3)とした以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。上記不織布は、再生セルロース繊維であるリヨセル繊維を100質量%用い、長網抄紙機で作製した。
【0066】
(比較例3)
セパレータの作製において、ジアミン全量に対して99モル%に相当する酸ジクロライドを20モル%に相当する2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンと80モル%に相当する4,4’-ジアミノジフェニルエーテルに変更した以外は、実施例3と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0067】
(参考例1)
セパレータをポリエチレン製多孔質基材(厚み12μm、透気度160秒/100cc)とした以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。セパレータの物性におけるΔ変位が0.4μmを超え、本願発明範囲から外れており、充放電サイクル特性を調べたところ、×であった。
【0068】
(参考例2)
セパレータをポリエチレン製多孔質基材(厚み12μm、透気度160秒/100cc)とした以外は、実施例3と同様にして非水電解質二次電池を作製した。セパレータの物性におけるΔ変位が0.4μmを超え、本願発明範囲から外れており、充放電サイクル特性を調べたところ、×であった。
【0069】
【0070】
表1から、実施例1、2、3は、セパレータの物性におけるΔ変位が0.4μm以下であり、本願発明範囲を満たしており、非水電解質二次電池は良好なサイクル特性を示し、圧壊試験及び加熱試験において優れた結果が得られ、高い安全性を発現している。
一方、比較例1、2、3は、セパレータの物性におけるΔ変位が0.4μmを超え、本願発明範囲から外れており、非水電解質二次電池のサイクル特性および安全性が十分ではない。