(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08F 36/20 20060101AFI20230620BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20230620BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20230620BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20230620BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230620BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230620BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20230620BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20230620BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20230620BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C08F36/20
C08F2/44 A
C08J5/24 CER
C09J4/00
C09J11/04
C09J11/06
C09J7/35
H05K3/46 T
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2019228187
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀篭 洋希
(72)【発明者】
【氏名】長田 将一
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/111337(WO,A1)
【文献】特開2013-062446(JP,A)
【文献】特開2016-084389(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190210(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08L 1/00-101/14
C09J 1/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)
【化1】
(式(1)中、Rは炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、及び炭素数6~10のアリール基から選ばれる基を示し、nは1~4の整数であり、x1及びx2は独立して0、1又は2であり、ただし、Rがアルキル基又はアリール基を示す場合は、x1は1又は2であり、かつ、1≦x1+x2≦4である)
で示されるシクロペンタジエン化合物及び/又はそのオリゴマー
(B)硬化促進剤 及び
(C)
アミノ基、メタクリル基、ビニル基又はスチリル基を有するシランカップリング剤で表面処理された無機充填材
を含む熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分の式(1)で示される化合物のオリゴマーが、式(1)で示される化合物の二量体及び/又は三量体を含むものである請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分の式(1)で示される化合物のオリゴマーがジシクロペンタジエン環を有するものである請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(A)成分中の式(1)で示される化合物のオリゴマーの割合が、10~90質量%である請求項1から3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)~(C)成分に加え、
(D)1分子中に1個以上のエポキシ基を有する接着助剤を含む請求項1から4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物からなる電子部品の封止材。
【請求項7】
電子部品が半導体装置である請求項
6に記載の封止材。
【請求項8】
請求項1から
5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物からなる熱硬化性接着剤。
【請求項9】
請求項1から
5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物が支持フィルム上に層形成されている接着フィルム。
【請求項10】
請求項1から
5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物がシート状繊維基材に含浸されているプリプレグ。
【請求項11】
請求項1から
5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を有する多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロペンタジエン化合物を含む熱硬化性樹脂組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高性能化が進み、多層プリント配線板においては、配線の微細化及び高密度化が求められている。さらに次世代では高周波帯向けの材料が必要であり、ノイズ対策として伝送損失低減が必須となるために、多層プリント配線板の絶縁層には誘電特性の優れた絶縁材料が求められている。
【0003】
多層プリント配線板用の絶縁材料としては、特許文献1~3に開示された、エポキシ樹脂組成物が知られている。
この特許文献1には、エポキシ樹脂、活性エステル化合物及びトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物が低誘電正接化に有効であることが開示されている。また、特許文献2及び3には、エポキシ樹脂及び活性エステル化合物を必須成分とする樹脂組成物が、誘電正接が低い硬化物であり、絶縁材料として有用であることが開示されている。しかしながら、これらのエポキシ樹脂組成物は高周波帯用途として満足できないものであることがわかってきた。
【0004】
一方、特許文献4では、非エポキシ系の材料として長鎖アルキル基を有するビスマレイミド樹脂及び硬化剤を含有する樹脂組成物からなる樹脂フィルムが誘電特性に優れる(低比誘電率かつ低誘電正接である)ことが報告されている。しかし、ビスマレイミド樹脂が有する長鎖アルキル基は耐熱性が低いため、樹脂フィルム自体も耐熱性が低いことが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-132507号公報
【文献】特開2015-101626号公報
【文献】特開2017-210527号公報
【文献】国際公開WO2016/114287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高いガラス転移温度を有し、誘電特性、耐熱性及び低吸水性に優れ、高周波用途に有用な硬化物を与える、熱硬化性樹脂組成物並びに該熱硬化性樹脂組成物を用いて製造された電子部品、熱硬化性接着剤、接着フィルム、プリプレグ及び多層プリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、下記熱硬化性樹脂組成物が、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、下記の熱硬化性樹脂組成物並びに該組成物を用いて製造された電子部品の封止材、熱硬化性接着剤、接着フィルム、プリプレグ及び多層プリント配線板を提供するものである。
【0008】
<1>
(A)下記式(1)
【化1】
(式(1)中、Rは炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、及び炭素数6~10のアリール基から選ばれる基を示し、nは1~4の整数であり、x1及びx2は独立して0、1又は2であり、ただし、Rがアルキル基又はアリール基を示す場合は、x1は1又は2であり、かつ、1≦x1+x2≦4である)
で示されるシクロペンタジエン化合物及び/又はそのオリゴマー
(B)硬化促進剤 及び
(C)無機充填材
を含む熱硬化性樹脂組成物。
【0009】
<2>
(A)成分の式(1)で示される化合物のオリゴマーが、式(1)で示される化合物の二量体及び/又は三量体を含むものである、<1>に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0010】
<3>
(A)成分の式(1)で示される化合物のオリゴマーがジシクロペンタジエン環を有するものである、<1>又は<2>に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0011】
<4>
(A)成分中の式(1)で示される化合物のオリゴマーの割合が、10~90質量%である<1>から<3>のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0012】
<5>
前記(A)~(C)成分に加え、
(D)1分子中に1個以上のエポキシ基を有する接着助剤を含む<1>から<4>のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0013】
<6>
前記(C)成分がアミノ基、メタクリル基、ビニル基又はスチリル基を有するシランカップリング剤で表面処理されたものである<1>から<5>のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0014】
<7>
<1>から<6>のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなる電子部品の封止材。
【0015】
<8>
前記電子部品が半導体装置である<7>に記載の封止材。
【0016】
<9>
<1>から<6>のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなる熱硬化性接着剤。
【0017】
<10>
<1>から<6>のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物が支持フィルム上に層形成されている接着フィルム。
【0018】
<11>
<1>から<6>のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物がシート状繊維基材に含浸されているプリプレグ。
【0019】
<12>
<1>から<6>のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を有する多層プリント配線板。
【発明の効果】
【0020】
本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物は高いガラス転移温度を有し、誘電特性、耐熱性及び低吸水性に優れるため、高周波向け用途として有用である。特に該熱硬化性樹脂組成物を用いて製造された封止材、熱硬化性接着剤、接着フィルム、プリプレグ及び多層プリント配線板は高周波向け用途として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
【0022】
[(A)シクロペンタジエン化合物及び/又はそのオリゴマー]
本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれる(A)成分は、下記式(1)で示されるシクロペンタジエン化合物及び/又は下記式(1)で示されるシクロペンタジエン化合物をモノマーとするオリゴマーである。
【0023】
【化2】
式(1)中、Rは炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、及び炭素数6~10のアリール基から選ばれる基を示し、nは1~4の整数であり、x1及びx2は独立して0、1又は2であり、ただし、Rがアルキル基又はアリール基を示す場合は、x1は1又は2であり、かつ、1≦x1+x2≦4である。
【0024】
前記式(1)において、nは1~4の整数であり、好ましくは1~2であり、特に好ましくは1である。x1は0、1又は2であり、好ましくは0又は1である。x2は0、1又は2であり、好ましくは1又は2である。
【0025】
また、Rは炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、及び炭素数6~10のアリール基から選ばれる基を示す。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0026】
また、アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
【0027】
さらに、アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ベンジル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0028】
中でも、Rはアルケニル基であることが好ましく、ビニル基、アリル基が特に好ましい。
【0029】
なお、Rがアルキル基又はアリール基を示す場合は、x1は1又は2であり、好ましくは1であり、かつ、1≦x1+x2≦4であり、好ましくは1≦x1+x2≦2である。
【0030】
前記式(1)で示される化合物のシクロペンタジエン環は反応性に富むため、前記式(1)で示される化合物は、Diels-Alder反応により、容易に二量化及び/又は三量化し、二量体及び/又は三量体を生成する。なお、前記二量化や三量化の反応は、同じ構造のシクロペンタジエン化合物の反応であっても、互いに異なった構造のシクロペンタジエン化合物の反応であってもよい。
(A)成分は、式(1)で示される化合物のオリゴマーを、10~90質量%含むものであることが好ましく、15~85質量%含むものであることがより好ましい。
さらに、(A)成分は、式(1)で示される化合物の二量体を、3~80質量%含むものであることが好ましく、5~70質量%含むものであることがより好ましい。
なお、式(1)で示される化合物の二量体割合及びオリゴマー割合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によるピークの面積比から算出したものである。
【0031】
また、式(1)で示される化合物のオリゴマーは、ジシクロペンタジエン環構造を有するものが好ましい。
前記式(1)の化合物のシクロペンタジエン環が反応してジシクロペンタジエン環を形成する反応、すなわち、2分子の式(1)の化合物中のシクロペンタジエン環同士のDiels-Alder反応は、シクロペンタジエン環と他のDiels-Alder反応可能な炭素-炭素二重結合との反応よりも起こりやすいため、前記ジシクロペンタジエン環を有する化合物は、(A)成分中に多く含まれていると考えられる。
【0032】
また、前記式(1)で示される化合物はシクロペンタジエン環以外の反応性二重結合を有しているため、該反応性二重結合同士及び/又は該反応性二重結合とシクロペンタジエン環が反応することでもオリゴマーを生成する。
【0033】
前記オリゴマーの構造としては、下記式のようなものが例示できる。
【化3】
(式中、R、n、x1、及びx2はそれぞれ前記と同じである。)
【化4】
(式中、R、n、x1、及びx2はそれぞれ前記と同じである。)
【化5】
(式中、R、n、x1、及びx2はそれぞれ前記と同じである。)
【0034】
前記オリゴマーは、式(1)で示される化合物を、50~200℃、好ましくは60~180℃、より好ましくは70~160℃で、20分~180分間、好ましくは40分~150分間、より好ましくは60分~120分間加熱することにより得られる。この反応は、真空下で行なうことが好ましい。
また、式(1)で示される化合物の加熱は、無溶媒でよく、必要であればトルエン、キシレン、アニソールなどの高沸点溶媒中で行うことができる。
(A)成分中、式(1)で示されるシクロペンタジエン化合物の二量体を3質量%以上とするためには、式(1)で示される化合物を、70~160℃で、1時間~2時間、真空下で加熱することが好ましい。
【0035】
(A)成分のシクロペンタジエン化合物の重量平均分子量(Mw)は、室温(25℃)での性状を含めて特に制限はないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によるポリスチレン標準で換算した重量平均分子量が10,000以下であることがより好ましく、特に好ましくは100以上5,000以下である。該分子量が10,000以下であれば、得られる組成物は粘度が高くなりすぎて流動性が低下するおそれがなく、ラミネート成形などの成形性が良好となる。
なお、本明細書中で言及する重量平均分子量(Mw)とは、下記条件で測定したGPCによるポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量を指すこととする。
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流量:0.35mL/min
検出器:RI
カラム:TSK-GEL SuperHZタイプ(東ソー株式会社製)
SuperHZ4000(4.6mmI.D.×15cm×1)
SuperHZ3000(4.6mmI.D.×15cm×1)
SuperHZ2000(4.6mmI.D.×15cm×1)
カラム温度:40℃
試料注入量:5μL(濃度0.1重量%のTHF溶液)
【0036】
(A)成分のシクロペンタジエン化合物及び/又はそのオリゴマーは1種単独で使用しても2種類以上を併用しても構わない。
【0037】
[(B)硬化促進剤]
本発明に用いられる硬化促進剤は、(A)成分同士又は(A)成分と他の成分との反応を促進するためのものである。一般的に、シクロペンタジエニル基の反応を促進させるためにはラジカル反応開始剤がよく用いられる。ラジカル反応開始剤としては、光ラジカル開始剤、熱ラジカル開始剤等のラジカル開始剤が挙げられる。ラジカル反応開始剤は好ましくは熱ラジカル開始剤である。より好ましい熱ラジカル開始剤は、有機過酸化物である。有機過酸化物の中でも、さらに好ましくは10時間半減期温度が100~170℃の有機過酸化物である。具体的にはジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等である。
【0038】
これらの硬化促進剤は、種類に関わらず1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。前記硬化促進剤の使用量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、より好ましくは0.3~4質量部であり、さらに好ましくは0.5~3質量部である。硬化促進剤の使用量が0.1質量部以上であれば十分に硬化反応が進行し、5質量部以下であれば熱硬化性樹脂組成物の保存安定性が良好である。
【0039】
[(C)無機充填材]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は(C)無機充填材を配合することを特徴とする。(C)成分の無機充填材は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の熱膨張率低下や機械特性向上のために配合される。特に、本発明記載の樹脂組成物において、(A)及び(B)成分の樹脂成分のみで用いようとしても、硬化した樹脂は非常に脆いものとなるため、基板用としてシート状に成形したり、封止材として用いたりすることが非常に困難である。無機充填材としては、例えば、球状シリカ、溶融シリカ、結晶性シリカ、クリストバライト等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化チタン、ガラス繊維、酸化マグネシウム等が挙げられる。さらに誘電特性向上のためにフッ素樹脂含有フィラー又はフッ素樹脂コーティングフィラーも挙げられる。これらの無機充填材の平均粒径や形状は、用途に応じて選択することができる。
【0040】
無機充填材の配合量は、(A)成分100質量部に対して、10~2,000質量部が好ましく、より好ましくは20~1,200質量部であり、さらに好ましくは40~1,000質量部である。また、組成物中の無機充填材の配合量は、組成物全体を100質量%として、30~95質量%が好ましく、より好ましくは40~90質量%であり、さらに好ましくは50~85%である。
【0041】
無機充填材は、樹脂成分と無機充填材との結合強度を強くするために、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等のカップリング剤で予め表面処理されたものを用いてもよい。このようなカップリング剤としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン;N-2(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールと3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの反応物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;3-メルカプトシラン、3-エピスルフィドキシプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリルシラン;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリルシラン等の、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、スチリル基又はメタクリル基含有シランカップリング剤が挙げられる。強度向上の観点から特にアミノ基、メタクリル基、ビニル基又はスチリル基を有するシランカップリング剤が好ましい。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
【0042】
[(D)1分子中に1個以上のエポキシ基を有する接着助剤]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて(D)1分子中に1個以上のエポキシ基を有する接着助剤を配合することができる。(D)成分のエポキシ基を有する接着助剤は、本発明の熱硬化性樹脂組成物のSi、Cu、Ni等との接着強度を向上するのに用いられる。(D)成分は1分子中に1個以上のエポキシ基を有していれば特に制限はされないが、具体的にはトリグリシジルイソシアヌレート等のイソシアヌル酸型エポキシ樹脂、トリグリシジルp-アミノフェノール等の芳香族アミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン・フェノール付加型グリシジルエーテル等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤が挙げられる。これらの1分子中に1個以上のエポキシ基を有する接着助剤は種類に関わらず1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
1分子中に1個以上のエポキシ基を有する接着助剤の使用量は、(A)成分100質量部に対して0.1~20質量部であり、好ましくは0.3~15質量部であり、より好ましくは0.5~10質量部である。
【0044】
前記(D)成分を添加する場合は、前記(B)硬化促進剤とは別に(B’)成分として、エポキシ基の反応を促進する硬化促進剤を添加してもよい。前記(B’)硬化促進剤としては、一般的なエポキシ樹脂組成物の硬化反応を促進させるものであれば特に限定されない。例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等のアミン系化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラボレート塩等の有機リン系化合物、2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0045】
これらの(B’)硬化促進剤は、種類に関わらず1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。(D)成分を配合する場合の(B’)硬化促進剤の使用量は、(A)成分及び(D)成分の総和100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、より好ましくは0.3~4質量部であり、さらに好ましくは0.5~3質量部である。(B’)硬化促進剤の使用量が0.1質量部以上であれば十分に硬化反応が進行し、5質量部以下であれば熱硬化性樹脂組成物の保存安定性が良好である。
【0046】
<その他の添加剤>
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。該添加剤として本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂特性を改善するためにオルガノポリシロキサン、シリコーンオイル、(D)成分以外のエポキシ樹脂、シアネート樹脂などその他の熱硬化性樹脂;熱可塑性樹脂;熱可塑性エラストマー;有機合成ゴム;光安定剤;重合禁止剤;顔料;染料等を配合してもよいし、フィラーとの濡れ性向上や基材との密着性向上のためにカップリング剤、電気特性を改善するためにイオントラップ剤、難燃性を付与させるためのリン化合物や金属水和物を代表とする非ハロゲン系の難燃剤を配合してもよい。さらには誘電特性を改善するためにPTFEパウダー等の含フッ素材料を配合してもよい。
【0047】
熱硬化性樹脂組成物の製造方法
本発明の熱硬化性樹脂組成物の製造方法は特に制限されるものではない。例えば、(A)成分、(B)成分及び(C)成分並びに必要に応じて(D)成分を含むその他の成分を、所定の組成比で配合し、ミキサー等によって十分均一に混合、撹拌、溶解、分散及び/又は溶融混練させる方法が挙げられる。各成分は、同時に又は別々に配合してもよく、必要に応じて加熱しながら混合等を行なってもよい。
【0048】
混合等を行なう装置は、特に限定されないが、具体的には、撹拌及び加熱装置を備えたライカイ機、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー及びマスコロイダー等が挙げられ、これらの装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0049】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、温度:120~250℃、時間:1~24時間の条件で硬化することで、高耐熱性、低比誘電率、低誘電正接の硬化物となる。また、組成物の硬化は、以下に詳述する組成物の用途又は形態に応じて、適宜後述する方法で硬化してもよい。
【0050】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、電子部品装置の封止材、熱硬化性接着剤、接着フィルム、プリプレグ及び多層プリント配線板等の回路基板、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング剤等の広範囲の用途に使用でき、特に、電子部品装置の封止材に好適に用いることができる。
【0051】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、各種用途に応じて、上述した方法により製造した樹脂組成物をそのまま用いてもよく、ワニスとして用いてもよく、フィルム状に成形して(すなわち、フィルム状積層材料として)から用いてもよい。フィルム状積層材料とする場合、ラミネート成形の観点から、熱硬化性樹脂組成物の軟化点は40~140℃であることが好ましい。
【0052】
[ワニス]
ワニスは、本発明の熱硬化性樹脂組成物及び有機溶剤を含むものであり、上述した(A)成分、有機溶剤及び必要に応じてその他の成分を、例えば、所定の組成比で配合し、必要に応じて3本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミルなどで混練を行ったり、必要に応じてプラネタリーミキサーなどで撹拌を行ったりすることにより製造することができる。
【0053】
本発明の熱硬化性樹脂組成物をワニスとする場合に用いる有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が挙げられる。なお、有機溶剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
また、ワニスにおける本発明の熱硬化性樹脂組成物の固形成分濃度(不揮発成分濃度)は目的の用途又は形態に応じて適宜調整すればよく、例えば固形成分濃度が30~90質量%となるよう有機溶剤を配合することが好ましく、40~80質量%となるよう配合することがより好ましい。
【0055】
[電子部品]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、トランジスタ型、モジュール型、DIP型、SO型、フラットパック型、ボールグリッドアレイ型等の半導体装置の封止樹脂材料として特に有用である。本発明の熱硬化性樹脂組成物による電子部品の封止方法は特に制限されるものでなく、従来の成形法、例えばトランスファー成形、インジェクション成形、注型法等を利用すればよい。
【0056】
[熱硬化性接着剤]
本発明の熱硬化性樹脂は熱硬化性接着剤としても用いることができる。例えばフレキシブルプリント基板の接着剤、半導体素子の接着剤、筐体の接着剤として用いられる。
【0057】
[フィルム状積層材料]
フィルム状積層材料は、支持体上に、本発明の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層を有するものである。フィルム状積層材料の製造方法としては、熱硬化性樹脂組成物を、そのまま支持体上に塗工してもよく、ワニスとしてからダイコーターなどにより塗工してもよい。ワニスを塗工した場合は、加熱又は熱風吹付け等により有機溶剤を乾燥させて、支持体上に樹脂組成物層を形成することができる。
【0058】
支持体(支持フィルム)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルムなどの各種プラスチックフィルム;離型紙;銅箔、アルミニウム箔等の金属箔等が挙げられる。中でも、汎用性の観点から、プラスチックフィルムが好ましく、PETフィルムがより好ましい。支持体及び後述する保護フィルムには、マッド処理、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよい。また、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤で離型処理が施してあってもよい。
【0059】
[接着フィルム]
フィルム状積層材料の具体的態様として、接着フィルムが挙げられる。
接着フィルムの製造方法としては、上述の方法でワニスを調製し、このワニスを、ダイコーターなどを用いて、支持体上に塗布し、更に加熱又は熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させる方法が挙げられる。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層における有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させることが好ましい。ワニス中の有機溶剤量及び有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30~60質量%の有機溶剤を含むワニスの場合、50~150℃で3~10分間程度乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。なお、より高温で長時間乾燥させると、組成物の硬化反応が進行して組成物が硬化するおそれがある。
【0060】
また、接着フィルムの別の製造方法として、Tダイを設置した押し出し機を用いて製造する方法も挙げられる。この製造方法では、ワニスではなく、各成分を溶融混合して調製した熱硬化性樹脂組成物を用いる。
【0061】
接着フィルムの樹脂組成物層の厚さは、10~120μmの範囲であることが好ましい。特に、接着フィルムを後述する回路基板に用いる場合は、接着フィルムの樹脂組成物層の厚さは、回路基板の導体層の厚さ以上とすることが好ましい。回路基板の導体層の厚さは、通常、5~70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10~100μmの範囲であることが好ましく、層の薄型化の観点からは15~80μmの範囲であることがより好ましい。
【0062】
また、樹脂組成物層の支持体と接触していない面には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層してもよい。この場合、接着フィルムは、支持体と、該支持体上に形成された樹脂組成物層と、該樹脂組成物層上に形成された保護フィルムとを含む。保護フィルムの厚さは、特に限定されないが、例えば、1~40μmとし得る。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。接着フィルムは、ロール状に巻きとって保管することができる。
【0063】
[プリプレグ]
プリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を含むものであり、補強基材に本発明の熱硬化性樹脂組成物を含浸又は塗工し、加熱して該熱硬化性樹脂組成物を半硬化させることにより製造することができる。
【0064】
補強基材としては、例えば、ガラスクロス、石英ガラス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。
【0065】
含浸又は塗工する方法としては、ホットメルト法又はソルベント法が挙げられる。
ホットメルト法は、溶融状態にある本発明の熱硬化性樹脂組成物をダイコーターにより補強基材に直接塗工する方法又は上述した方法により作製したフィルム状積層材料を該補強基材にラミネートする方法である。
ソルベント法は、補強基材を上述した方法により作製したワニスに浸漬し、その後乾燥する方法である。
さらに、上述した方法により作製した接着フィルムを補強基材の両面から加熱、加圧条件下、連続的に熱ラミネートすることでプリプレグを調製してもよい。支持体や保護フィルムは、接着フィルムについて上述したものと同じものを使用してよい。
【0066】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が含浸又は塗工された補強基材を、例えば、60~150℃で、5~60分の条件で加熱することにより、該熱硬化性樹脂組成物が半硬化状態となる。本発明のプリプレグにおいて、補強基材に対して、本発明の熱硬化性樹脂組成物を25~75質量%含有することが好ましい。
【0067】
[回路基板(多層プリント配線板)]
本発明の回路基板は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物である絶縁層を有する。なお、回路基板とは、前記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいい、導体層と絶縁層とが交互に積層され、最外層の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された多層プリント配線板も含まれる。なお、導体層の表面は、黒化処理、銅エッチング等の粗化処理が予め施されていてもよい。
【0068】
回路基板に絶縁層を形成する方法としては、上述した方法で調製したワニスを回路基板に塗布し、乾燥し、加熱硬化する方法が挙げられる。具体的には、ディスペンサーを用いて塗布し、乾燥は60~150℃で0.5~2時間行い、加熱硬化は120~250℃で1~12時間行なう方法が挙げられる。また、必要に応じて真空乾燥させてもよい。
【0069】
また、回路基板に絶縁層を形成する別の方法としては、上述した方法で作製したフィルム状積層材料を、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネートする方法も挙げられる。フィルム状積層材料が保護フィルムを有している場合には、該保護フィルムを除去した後、必要に応じてフィルム状積層材料及び回路基板をプレヒートし、フィルム状積層材料を加圧及び加熱しながら回路基板にラミネートする。真空ラミネートにおいて、加熱圧着温度は好ましくは60~160℃であり、加熱圧着圧力は好ましくは0.1~1.8MPaであり、加熱圧着時間は好ましくは20~400秒である。ラミネートの後に、常圧下、例えば、フィルム状積層材料を熱プレスすることにより、ラミネートされたフィルム状積層材料の平滑化処理を行うことが好ましい。平滑化処理の条件は、前記ラミネートの加熱圧着条件と同様な条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、ラミネート処理と平滑化処理は、前記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0070】
フィルム状積層材料を回路基板にラミネートした後、室温付近に冷却してから、支持体を剥離する場合は剥離し、樹脂組成物を加熱硬化して絶縁層を形成することができるが、支持体を剥離する順番などは適宜入れ替えたりすることができる。これにより、回路基板上に絶縁層を形成することができる。加熱硬化の条件は、樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃~220℃で20~180分間、より好ましくは160℃~210℃で30~120分間の範囲で選択される。
【0071】
また、回路基板に絶縁層を形成するさらに別の方法としては、上述した方法で作製したフィルム状積層材料を、真空プレス機を用いて回路基板の片面又は両面に積層する方法も挙げられる。この方法では、一般の真空ホットプレス機を用いて、減圧下、加熱及び加圧を行うことで、回路基板上で樹脂組成物が加熱硬化して絶縁層となる。
【0072】
また、上述した方法により製造したプリプレグを用いて回路基板(多層プリント配線板)を製造する方法も挙げられる。内装回路基板に本発明のプリプレグを1枚又は複数枚重ね、離型フィルムを介して金属プレートをはさみ加圧、加熱条件下でプレス積層することで製造可能である。
【0073】
回路基板を作製した後、回路基板上に形成された絶縁層に穴あけ加工を行ってビアホール、スルーホールを形成したり、絶縁層の表面の粗化処理を行ったり、メッキを絶縁層上に形成し、導体層を作製することができる。これらの工程は一般的な回路基板又は多層プリント配線板を製造する方法に従って行うことができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0075】
実施例及び比較例で使用した各成分を以下に示す。なお、以下の記述において配合量の部は質量部を示す。
また、(A)成分のモノマー及びオリゴマーの組成割合は、GPC測定によるピークの面積比から算出した値である。
【0076】
(A)シクロペンタジエン化合物
(A-1)一置換シクロペンタジエン化合物
[合成例1]
攪拌機、冷却コンデンサー及び温度計を備えた500mLのガラス製4つ口フラスコに、水素化ナトリウム17.6g(1.1当量、60%、流動パラフィンに分散)を加えた後、ヘキサンで洗浄することで水素化ナトリウムが分散している流動パラフィンを系中から取り除いた。その後、該4つ口フラスコにテトラヒドロフラン250mLを加えた後、系中を窒素雰囲気にした。0℃でシクロペンタジエン26.4g(1.0当量)を滴下しながら激しく撹拌し、発生した水素ガスは系外に放出した。全てのシクロペンタジエンを滴下後、系内を60℃に昇温して4-(クロロメチル)スチレン54.9g(0.9当量)を滴下し、60℃で30分間攪拌した。その後、水50gを加えて反応を停止し、テトラヒドロフランを減圧留去した。キシレンとヘキサンの混合溶媒(50体積%)を加えて有機層を希釈し、塩酸(10質量%)と水で数回洗浄した。水層を分離した後、有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、溶媒を減圧留去することで、生成物(A’-1)を得た。生成物(A’-1)の組成を表1に示す。生成物(A’-1)に含まれるモノマー(4-(シクロペンタジエニルメチル)スチレン)は室温で容易にオリゴマー化し、生成物(A’-1)には前記モノマーを単量体とするオリゴマー(4-(シクロペンタジエニルメチル)スチレンのオリゴマー)が含まれていた。
続いて、攪拌機、冷却コンデンサー及び温度計を備えた500mLのガラス製4つ口フラスコに、得られた生成物(A’-1)を加え、真空下、80℃で1時間攪拌することで一部のシクロペンタジエニル基の二量化を伴うオリゴマー化を行い、生成物(A-1)を得た。生成物(A-1)の組成を表1に、生成物(A-1)に含まれる前記モノマーの二量体の構造を下記式にそれぞれ示す。また、生成物(A-1)の重量平均分子量(Mw)は2,400であった。
【化6】
【0077】
(A-2)二置換シクロペンタジエン化合物
[合成例2]
攪拌機、冷却コンデンサー及び温度計を備えた500mLのガラス製4つ口フラスコに、水素化ナトリウム33.6g(2.1当量、60%、流動パラフィンに分散)を加えた後、ヘキサンで洗浄することで水素化ナトリウムが分散している流動パラフィンを系中から取り除いた。その後、該4つ口フラスコにテトラヒドロフラン250mLを加えた後、系中を窒素雰囲気にした。0℃でシクロペンタジエン26.4g(1.0当量)を滴下しながら激しく撹拌し、発生した水素ガスは系外に放出した。全てのシクロペンタジエンを滴下後、系内を60℃に昇温して4-(クロロメチル)スチレン45.8g(0.75当量)とベンジルクロライド12.7g(0.25当量)の混合物を滴下し、60℃で30分間攪拌した。その後、アリルクロライド30.6g(1.0当量)を滴下し、60℃で30分間攪拌した。水50gを加えて反応を停止し、テトラヒドロフランを減圧留去した。キシレンとヘキサンの混合溶媒(50体積%)を加えて有機層を希釈し、塩酸(10質量%)と水で数回洗浄した。水層を分離した後、有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、溶媒を減圧留去することで、生成物(A’-2)を得た。生成物(A’-2)の組成を表1に示す。生成物(A’-2)に含まれるモノマー(4-(アリルシクロペンタジエニルメチル)スチレン及び4-(アリルシクロペンタジエニルメチル)ベンゼン)は室温で容易にオリゴマー化し、生成物(A’-2)には前記モノマーを単量体とするオリゴマー(4-(アリルシクロペンタジエニルメチル)スチレンのオリゴマー、4-(アリルシクロペンタジエニルメチル)ベンゼンのオリゴマー及び4-(アリルシクロペンタジエニルメチル)スチレンと4-(アリルシクロペンタジエニルメチル)ベンゼンとのオリゴマー)が含まれていた。
続いて、攪拌機、冷却コンデンサー及び温度計を備えた500mLのガラス製4つ口フラスコに、得られた生成物(A’-2)を加え、真空下、80℃で1時間攪拌することで一部のシクロペンタジエニル基の二量化を伴うオリゴマー化を行い、生成物(A-2)を得た。生成物(A-2)の組成を表1に、生成物(A-2)に含まれる前記モノマーの二量体の構造を下記式にそれぞれ示す。生成物(A-2)の重量平均分子量(Mw)は3,000であった。
【化7】
【0078】
【表1】
表1の生成物(A-1)及び生成物(A-2)のオリゴマー割合のうち、かっこ書で表記した値は、生成物中の二量体の割合を示す。
【0079】
(B)硬化促進剤
(B-1)ジクミルパーオキシド(パークミルD:日油(株)製)
【0080】
(C)無機充填材
(C-1)溶融球状シリカ(RS-8225/53C:(株)龍森製)
(C-2)(C-1)100部に対して0.3部の3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-903:信越化学工業(株)製)で乾式表面処理されたシリカ
(C-3)(C-1)100部に対して0.3部のN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-573:信越化学工業(株)製)で乾式表面処理されたシリカ
(C-4)(C-1)100部に対して0.3部の3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503:信越化学工業(株)製)で乾式表面処理されたシリカ
(C-5)(C-1)100部に対して0.3部のビニルトリメトキシシラン(KBM-1003:信越化学工業(株)製)で乾式表面処理されたシリカ
(C-6)(C-1)100部に対して0.3部のp-スチリルトリメトキシシラン(KBM-1403:信越化学工業(株)製)で乾式表面処理されたシリカ
【0081】
(D)1分子中に1個以上のエポキシ基を有する接着助剤
(D-1)イソシアヌル酸型エポキシ樹脂(TEPIC-S:日産化学工業(株)製)
(D-2)3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403:信越化学工業(株)製)
【0082】
[実施例1~10、比較例1~2]
表2に示す配合(質量部)で各成分をミキサーで混合後、3本ロールミルでさらに混合することで樹脂組成物を得た。
【0083】
<ガラス転移温度>
樹脂組成物を金型に注型し、150℃で1時間、さらに180℃で2時間のステップキュアを行うことで硬化させ、5mm×5mm×15mmの硬化物を得た。それらの硬化物を熱膨張計(TMA8140C、株式会社リガク社製)にセットした。昇温プログラムを昇温速度5℃/分に設定し、49mNの一定荷重が、硬化物の試験片に加わるように設定した後、-60℃から300℃までの間で試験片の寸法変化を測定した。この寸法変化と温度との関係をグラフにプロットした。このようにして得られた寸法変化と温度とのグラフから、ガラス転移温度を求めた。
【0084】
<比誘電率、誘電正接>
樹脂組成物を厚さ38μmのPETフィルム上に、乾燥後の厚みが50μmになるようにローラーコーターにて塗布した後、150℃で1時間、さらに180℃で2時間のステップキュアを行うことで硬化させた。その後、ネットワークアナライザ(キーサイト社製 E5063-2D5)とストリップライン(キーコム株式会社製)を接続し、前記フィルムの周波数10GHzにおける比誘電率と誘電正接を測定した。
【0085】
<長期耐熱性>
樹脂組成物を金型に注型し、150℃で1時間、さらに180℃で2時間のステップキュアを行うことで硬化させ、50mmφ×3mmtの硬化物を得た。前記硬化物を250℃恒温器に1,000時間保管し、保管後の質量を測定した。[保管後の硬化物の質量/保管前の硬化物の質量]×100(%)を質量保持率として評価した。
【0086】
<吸水率>
樹脂組成物を金型に注型し、150℃で1時間、さらに180℃で2時間のステップキュアを行うことで硬化させ、50mmφ×3mmtの硬化物を得た。その硬化物を121℃、2.1気圧の飽和水蒸気下で24時間処理した前後の重量を測定し、重量増加率から吸水率を算出した。
【0087】
<シリコンとの接着試験>
10mm×10mmの大きさのシリコンチップ上に、被着面積4mm2となるように樹脂組成物を塗布し、その上にシリコンチップを載置後、150℃で1時間、さらに180℃で2時間のステップキュアを行うことで硬化させ、試験片を作製した。この試験片を用いて、ボンドテスターDAGE-SERIES-4000PXY(DAGE社製)で、接着力の評価として、室温(25℃)での剪断接着力を測定した。
【0088】
<銅との接着試験>
10mm×10mmの大きさの銅フレーム上に、被着面積4mm2となるように樹脂組成物を塗布し、その上にシリコンチップを載置後、150℃で1時間、さらに180℃で2時間のステップキュアを行うことで硬化させ、試験片を作製した。この試験片を用いて、ボンドテスターDAGE-SERIES-4000PXY(DAGE社製)で、接着力の評価として、室温(25℃)での剪断接着力を測定した。
【0089】
<曲げ強さ、曲げ弾性率>
JIS K 6911:2006規格に準じた金型に樹脂組成物を注型し、150℃で1時間、さらに180℃で2時間のステップキュアを行うことで試験片を作製した。得られた試験片について、JIS K 6911:2006規格に準じて室温(25℃)にて、曲げ強さ、曲げ弾性率を測定した。
【0090】
【0091】
表2に示すように、本発明の樹脂組成物の硬化物は、高ガラス転移温度(Tg)を有し、比誘電率及び誘電正接の値が小さく、長期耐熱性に優れる。さらには吸水率が低い。したがって、本発明の樹脂組成物は高周波機器用材料として好適である。