(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】液晶表示素子の製造方法、感放射線性組成物、層間絶縁膜及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1333 20060101AFI20230620BHJP
G03F 7/023 20060101ALI20230620BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230620BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
G02F1/1333 505
G03F7/023
G03F7/004 501
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2021016470
(22)【出願日】2021-02-04
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2020017857
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】角田 裕志
(72)【発明者】
【氏名】徳本 愛香
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2009-0062900(KR,A)
【文献】特開平10-153854(JP,A)
【文献】国際公開第2015/016087(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0062899(KR,A)
【文献】特開2003-149647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1333
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に層間絶縁膜を形成する形成工程と、
前記層間絶縁膜の形成後に、前記層間絶縁膜を備える対象物に光を照射する照射工程と、
を含み、
前記層間絶縁膜を、下記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する感放射線性組成物を用いて形成する、液晶表示素子の製造方法。
(A)環員数5以上の複素環構造を有するアクリレート化合物及び炭素数3以下のアルキル基を有するアクリレート化合物よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する第1構造単位と、酸基を有する第2構造単位と、環員数3又は4の環状エーテル基を有する第3構造単位と
、N-置換マレイミド化合物に由来する第5構造単位とを含む重合体成分。
(B)キノンジアジド化合物。
(C)溶媒。
【請求項2】
前記複素環構造は、環状エーテル構造、環状エステル構造、環状カーボネート構造、環状アミド構造及び環状イミド構造よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項3】
前記複素環構造は、下記式(a-1)で表される構造、下記式(a-2)で表される構造、下記式(a-3)で表される構造、下記式(a-4)で表される構造、下記式(a-5)で表される構造及び下記式(a-6)で表される構造よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の液晶表示素子の製造方法。
【化1】
(式(a-1)~式(a-6)中、R
10は、炭素数1~5のアルキル基であるか、又は同一の炭素上にある2個のR
10が互いに合わせられて当該2個のR
10が結合する炭素原子と共に構成される環構造を表す。R
11は炭素数1~5のアルキル基である。R
12は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。mは0~2の整数であり、nは1~3の整数である。rは1~3の整数である。「*」は結合手であることを表す。)
【請求項4】
前記複素環構造はジオキソラン構造である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項5】
前記(A)成分は、芳香族ビニル化合
物に由来する構造単位をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項6】
前記第2構造単位は、カルボキシ基を有する構造単位、スルホン酸基を有する構造単位、フェノール性水酸基を有する構造単位、及びマレイミド単位よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項7】
前記第3構造単位は、オキセタン構造及びオキシラン構造よりなる群から選択される少なくとも1種を有する構造単位である、請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項8】
前記(A)成分は、前記重合体成分を構成する全構造単位に対し、
前記第1構造単位を8質量%以上60質量%以下、
前記第2構造単位(ただし、フェノール性水酸基を有する構造単位を除く。)を0.5質量%以上20質量%未満、
前記第3構造単位を10質量%以上60質量%以下、
前記第5構造単位を1質量%以上40質量%以下含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項9】
前記層間絶縁膜を有する基板を含む一対の基板を、重合性液晶組成物を含む層を介して対向配置して液晶セルを構築する工程をさらに含み、
前記照射工程は、前記重合性液晶組成物を含む層に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光を照射する工程である、請求項1~8のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項10】
前記(B)成分は、フェノール性化合物又はアルコール性化合物と、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合物である、請求項1~9のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項11】
前記(C)成分は、エーテル類及びエステル類よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項12】
(A)重合体成分と、
(B)キノンジアジド化合物と、
(C)溶媒と、を含有し、
前記(A)成分は、環員数5以上の複素環構造を有するアクリレート化合物に由来する第1構造単位と、酸基を有する第2構造単位と、環員数3又は4の環状エーテル基を有する第3構造単位と、
N-置換マレイミド化合物に由来する第5構造単位とを含み、
前記複素環構造は、環状エーテル構造(ただし、テトラヒドロフルフリル構造を除く。)、環状エステル構造、環状カーボネート構造、環状アミド構造及び環状イミド構造よりなる群から選択される少なくとも1種である、感放射線性組成物。
【請求項13】
前記複素環構造はジオキソラン構造である、請求項12に記載の感放射線性組成物。
【請求項14】
(A)重合体成分と、
(B)キノンジアジド化合物と、
(C)溶媒と、を含有し、
前記(A)成分は、前記重合体成分を構成する全構造単位に対し、環員数5以上の複素環構造を有するアクリレート化合物及び炭素数3以下のアルキル基を有するアクリレート化合物よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する第1構造単位を8質量%以上60質量%以下、酸基を有する第2構造単位(ただし、フェノール性水酸基を有する構造単位を除く。)を0.5質量%以上20質量%未満
、環員数3又は4の環状エーテル基を有する第3構造単位を10質量%以上60質量%以下
、及び、N-置換マレイミド化合物に由来する第5構造単位を1質量%以上40質量%以下含む、感放射線性組成物。
【請求項15】
層間絶縁膜の形成用である、請求項12~14のいずれか一項に記載の感放射線性組成物。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか一項に記載の感放射線性組成物を用いて塗膜を形成する工程と、
前記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程と、
放射線が照射された前記塗膜を現像する工程と、
現像された前記塗膜を加熱する工程と、
を含む、層間絶縁膜の製造方法。
【請求項17】
請求項12~15のいずれか一項に記載の感放射線性組成物を用いて形成された層間絶縁膜。
【請求項18】
請求項17に記載の層間絶縁膜を有する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子の製造方法、感放射線性組成物、層間絶縁膜及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子には、配線と基板との間や配線間を絶縁する層間絶縁膜が設けられている。液晶表示素子の製造工程では、基板上に層間絶縁膜が形成され、さらに層間絶縁膜の上に、電極となる透明導電膜や液晶配向膜が形成される。透明導電膜や液晶配向膜を形成する際には、層間絶縁膜が高温条件に晒されたり、紫外線等の放射線が照射されたりするため、層間絶縁膜には熱や光に対する耐性が求められる。
【0003】
液晶表示素子の製造方法の一つとして、PSA(Polymer Sustained Alignment)技術がある。PSA技術は、光重合性モノマーを液晶材料中に混入しておき、液晶セルを組み立てた後、液晶層を挟む一対の電極間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射することにより、光重合性モノマーを重合して液晶分子の分子配向を制御する技術である。この技術によれば、視野角の拡大や高速応答化を図ることができる等の利点がある。
【0004】
PSA技術を用いて液晶表示素子を製造する場合、液晶セルに照射する光によって層間絶縁膜中の未反応成分が反応したり、層間絶縁膜を構成する有機材料の光分解反応が生じたりすることにより、低分子量成分が生成することがある。このようにして生成した低分子量成分は、通常は層間絶縁膜の成分に吸着される等して、層間絶縁膜の内部や膜表面に留まっていると考えられる。しかしながら、液晶表示素子が外力を受けること等により、上記の低分子量成分に起因する気泡が生じ、液晶表示素子の使用時等に画素領域に現れることがある。
【0005】
そこで従来、液晶表示素子において、製造工程での光照射に起因する層間絶縁膜による発泡を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、膜厚2μmにおける波長310nmの光の透過率が70%以上となるように層間絶縁膜を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
層間絶縁膜中の低分子量成分に起因する発泡は、液晶表示素子の信頼性に影響を及ぼすおそれがある。特に近年では、液晶表示素子の用途拡大に伴い、より高精細な液晶表示素子が求められており、気泡の発生をできるだけ低減することが望まれる。なお、こうした発泡は、PSA技術による光照射だけでなく、シール材を硬化するための光照射や、光配向法により液晶配向膜を形成するための光照射等のように、層間絶縁膜の形成後に行われる光照射処理によっても生じることが考えられる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、気泡の発生が十分に抑制された液晶表示素子を得ることができる液晶表示素子の製造方法及び感放射線性組成物を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、液晶表示素子において生じる発泡の原因の一つは、層間絶縁膜の形成に用いた材料であって、メタクリレート由来の構造単位を有する重合体において、その主鎖が分解したことによるものと考えた。そして、この仮説に基づき、層間絶縁膜の形成に用いる感放射線性組成物を特定の組成とすることにより、上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下の液晶表示素子の製造方法、感放射線性組成物、層間絶縁膜及び液晶表示素子が提供される。
【0010】
[1]基板上に層間絶縁膜を形成する形成工程と、前記層間絶縁膜の形成後に、前記層間絶縁膜を有する対象物に光を照射する照射工程と、を含み、前記層間絶縁膜を、下記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する感放射線性組成物を用いて形成する、液晶表示素子の製造方法。
(A)環員数5以上の複素環構造を有するアクリレート化合物及び炭素数3以下のアルキル基を有するアクリレート化合物よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する第1構造単位と、酸基を有する第2構造単位と、環員数3又は4の環状エーテル基を有する第3構造単位とを含む重合体成分。
(B)キノンジアジド化合物。
(C)溶媒。
【0011】
[2](A)重合体成分と、(B)キノンジアジド化合物と、(C)溶媒と、を含有し、前記(A)成分は、環員数5以上の複素環構造として環状エーテル構造(ただし、テトラヒドロフルフリル構造を除く。)、環状エステル構造、環状カーボネート構造、環状アミド構造及び環状イミド構造よりなる群から選択される少なくとも1種を有するアクリレート化合物に由来する第1構造単位と、酸基を有する第2構造単位と、環員数3又は4の環状エーテル基を有する第3構造単位とを含む、感放射線性組成物。
【0012】
[3](A)重合体成分と、(B)キノンジアジド化合物と、(C)溶媒と、を含有し、前記(A)成分は、前記重合体成分を構成する全構造単位に対し、環員数5以上の複素環構造を有するアクリレート化合物及び炭素数3以下のアルキル基を有するアクリレート化合物よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する第1構造単位を8質量%以上50質量%以下、酸基を有する第2構造単位(ただし、フェノール性水酸基を有する構造単位を除く。)を0.5質量%以上20質量%未満、及び、環員数3又は4の環状エーテル基を有する第3構造単位を10質量%以上60質量%以下含む、感放射線性組成物。
【0013】
[4]上記[2]又は[3]の感放射線性組成物を用いて塗膜を形成する工程と、前記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程と、放射線が照射された前記塗膜を現像する工程と、現像された前記塗膜を加熱する工程と、を含む、層間絶縁膜の製造方法。
[5]上記[2]又は[3]の感放射線性組成物を用いて形成された層間絶縁膜。
[6]上記[5]の層間絶縁膜を有する液晶表示素子。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法及び感放射線性組成物によれば、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する感放射線性組成物を用いて層間絶縁膜を形成することにより、層間絶縁膜に対して光が照射されることに起因して発生する気泡が十分に抑制された液晶表示素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施態様に関連する事項について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」を用いて記載された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。「構造単位」とは、主鎖構造を主として構成する単位であって、少なくとも主鎖構造中に2個以上含まれる単位をいう。
【0017】
[感放射線性組成物]
本開示の感放射線性組成物は、液晶表示素子の層間絶縁膜を形成するために用いられる。当該感放射線性組成物は、下記の(A)成分と(B)成分と(C)成分とを含有する。
(A)環員数5以上の複素環構造を有するアクリレート化合物及び炭素数3以下のアルキル基を有するアクリレート化合物よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する第1構造単位と、酸基を有する第2構造単位と、環員数3又は4の環状エーテル基を有する第3構造単位とを含む重合体成分。
(B)キノンジアジド化合物。
(C)溶媒。
以下、本開示の感放射線性組成物に含まれる各成分、及び必要に応じて配合されるその他の成分について説明する。なお、各成分については、特に言及しない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
ここで、本明細書において「炭化水素基」は、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。なお、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が有する環構造は、炭化水素構造からなる置換基を有していてもよい。「環状炭化水素基」は、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。
【0019】
<(A)成分>
・第1構造単位
第1構造単位は、環員数5以上の複素環構造を有するアクリレート化合物及び炭素数3以下のアルキル基を有するアクリレート化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体(以下「第1単量体」ともいう)に由来する構造単位である。なお、「アクリレート化合物」は、重合に関与する基としてアクリロイルオキシ基を有する化合物をいい、具体的には、式「CH2=CH-CO-O-R20」(ただし、R20は炭素数1以上の1価の有機基)で表される。
【0020】
第1単量体が有する、環員数5以上の複素環構造としては、例えば、単環、縮合環、橋かけ環又はスピロ環からなる脂肪族環における環骨格中の炭素-炭素結合間に、-O-、-CO-、-CO-O-、-CO-S-、-O-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NR1-、-CO-NR1-CO-(ただし、R1は水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基)を有する環員数5以上の複素環から任意の水素原子を取り除いた基が挙げられる。
【0021】
上記複素環構造が有する環は、単環、縮合環、橋かけ環及びスピロ環のいずれであってもよいが、単環、縮合環又はスピロ環であることが好ましく、単環又は縮合環であることがより好ましい。上記複素環構造の環員数は、好ましくは15以下であり、より好ましくは12以下であり、さらに好ましくは10以下である。なお、上記複素環構造が多環構造である場合、「環員数」とは、多環構造が有する2個以上の環を構成する合計の原子数を示す。上記複素環構造は、環部分に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば炭素数1~10の1価の炭化水素基、炭素数1~10のアルコキシ基等が挙げられる。
【0022】
第1構造単位が有する複素環構造は、上記のうち、環状エーテル構造、環状エステル構造、環状カーボネート構造、環状アミド構造、及び環状イミド構造よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。より具体的には、上記複素環構造は、下記式(a-1)で表される構造、下記式(a-2)で表される構造、下記式(a-3)で表される構造、下記式(a-4)で表される構造、下記式(a-5)で表される構造及び下記式(a-6)で表される構造よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【化1】
(式(a-1)~式(a-6)中、R
10は、炭素数1~5のアルキル基であるか、又は同一の炭素上にある2個のR
10が互いに合わせられて当該2個のR
10が結合する炭素原子と共に構成される環構造を表す。R
11は炭素数1~5のアルキル基である。R
12は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。mは0~2の整数であり、nは1~3の整数である。rは1~3の整数である。「*」は結合手であることを表す。)
【0023】
上記式(a-1)~(a-6)において、R10及びR11の炭素数1~5のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよいが、好ましくは直鎖状である。R10及びR11の炭素数1~5のアルキル基は、これらのうち、炭素数1~3が好ましく、メチル基又エチル基がより好ましい。
同一の炭素上にある2個のR10が結合して当該2個のR10が結合する炭素原子とともに形成される環構造としては、1,4,6-トリオキサスピロ[4.6]ウンデカン、1,4,6-トリオキサスピロ[4.4]ノナン、1,4,6-トリオキサスピロ[4.5]デカン等のスピロオルトエステル構造が挙げられる。
mは、0又は1が好ましい。nは、1又は2が好ましく、1がより好ましい。rは1又は2が好ましく、1がより好ましい。
式(a-5)及び式(a-6)において、結合手は、R12が有する水素原子が取り除かれることにより形成されていてもよい。
【0024】
上記複素環構造の具体例としては、環状エーテル構造として、例えば、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、エチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、メチルテトラヒドロピラン、エチルテトラヒドロピラン、ジオキソラン、メチルジオキソラン、エチルジオキソラン、ジオキサン、メチルジオキサン、エチルジオキサン、1,4,6-トリオキサスピロ[4.6]ウンデカン、1,4,6-トリオキサスピロ[4.4]ノナン、1,4,6-トリオキサスピロ[4.5]デカン等の環状エーテルから任意の水素原子を取り除いた基を;環状エステル構造として、例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等のラクトンから任意の水素原子を取り除いた基を;環状カーボネート構造として、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状炭酸エステルから任意の水素原子を取り除いた基を;環状アミド構造として、例えば、γ-ラクタム、δ-ラクタム、ε-カプロラクタム、ラウロラクタム等のラクタムから任意の水素原子を取り除いた基を;環状イミド構造として、フタルイミド、ヘキサヒドロフタルイミド等のイミド環から任意の水素原子を取り除いた基を、それぞれ挙げることができる。
【0025】
第1構造単位は、具体的には下記式(1)で表される構造単位であることが好ましい。
【化2】
(式(1)中、R
2は、環員数5以上の複素環構造を有する1価の基又は炭素数1~3のアルキル基である。)
【0026】
上記式(1)において、R2が環員数5以上の複素環構造を有する1価の基である場合、当該複素環構造の環部分は、上記式(1)中の酸素原子に直接結合していてもよく、2価の連結基(例えば、炭素数1~5のアルカンジイル基)を介して結合していてもよい。放射線感度が高い感放射線性組成物を得ることができ、かつ液晶表示素子の発泡をより低減できる点で、R2は、中でも、環員数5以上の複素環構造を有する1価の基であることが好ましい。これらの中でも特に、R2は、環状エーテル構造、環状エステル構造、環状カーボネート構造、環状アミド構造、又は環状イミド構造を有する1価の基であることがより好ましく、環状エーテル構造がさらに好ましい。
【0027】
第1構造単位及び上記式(1)中のR2が有する複素環構造が環状エーテル構造である場合、当該環状エーテル構造は、感放射線性組成物の感度をより高くできる点で、環骨格中に含まれる酸素原子(-O-)が2個以上であることが好ましい。当該環状エーテル構造は、感放射線性組成物の感度をより高くできる点で、ジオキソラン構造、ジオキサン構造又はスピロオルトエステル構造であることがより好ましく、ジオキソラン構造又はジオキサン構造であることがさらに好ましく、ジオキソラン構造であることが特に好ましい。
【0028】
第1単量体の具体例としては、環員数5以上の環状エーテル構造を有するアクリレート化合物として、例えばアクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸テトラヒドロピラニル、アクリル酸5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イルメチル、アクリル酸-1,3-ジオキサン-5-イルメチル、アクリル酸5-メチル-1,3-ジオキサン-5-イルメチル、アクリル酸(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル、アクリル酸(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル、アクリル酸(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)エチル、2-アクリロイルオキシメチル-1,4,6-トリオキサスピロ[4.6]ウンデカン、2-アクリロイルオキシメチル-1,4,6-トリオキサスピロ[4.4]ノナン、2-アクリロイルオキシメチル-1,4,6-トリオキサスピロ[4.5]デカン等を;
環員数5以上の環状エステル構造を有するアクリレート化合物として、例えばアクリル酸(γ-ブチロラクトン-2-イル)、アクリル酸(γ-ブチロラクトン-2-イル)メチル、アクリル酸(δ-バレロラクトン-2-イル)エチル等を;
環員数5以上の環状カーボネート構造を有するアクリレート化合物として、例えばグリセリンカーボネートアクリレート等を;
環員数5以上の環状アミド構造を有するアクリレート化合物として、例えばアクリル酸(γ-ラクタム-2-イル)、アクリル酸(γ-ラクタム-2-イル)メチル等を;
環員数5以上の環状イミド構造を有するアクリレート化合物として、例えばN-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等を;
炭素数3以下のアルキル基を有するアクリレート化合物として、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル等を、それぞれ挙げることができる。第1単量体は、これらのうち、感放射線性組成物の放射線感度をより高くできる点で、環員数5以上の複素環構造を有するアクリレート化合物が好ましい。
【0029】
(A)成分において、第1構造単位の含有割合は、(A)成分を構成する全構造単位に対して、5質量%以上であることが好ましい。第1構造単位の含有割合を5質量%以上とすることにより、感放射線性組成物を高感度化しつつ、硬化膜からのアウトガスを抑制できるとともに、液晶表示素子の発泡を抑制できる点で好適である。こうした観点から、第1構造単位の含有割合は、(A)成分を構成する全構造単位に対して、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、15質量%以上がよりさらに好ましく、20質量%以上が一層好ましく、25質量%以上がより一層好ましい。また、現像後における層間絶縁膜のパターン形状を良好にする観点から、第1構造単位の含有割合は、(A)成分を構成する全構造単位に対して、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、45質量%以下がよりさらに好ましい。
【0030】
・第2構造単位
第2構造単位は、酸基を有する構造単位である。(A)成分に第2構造単位が含まれることにより、重合体成分に良好なアルカリ可溶性を付与することができる。
【0031】
第2構造単位は、酸基を有する限り特に限定されないが、カルボキシ基を有する構造単位、スルホン酸基を有する構造単位、フェノール性水酸基を有する構造単位、及びマレイミド単位よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、本明細書において「フェノール性水酸基」とは、芳香環(例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等)に直接結合するヒドロキシ基を意味する。
【0032】
第2構造単位は、酸基を有する不飽和単量体(以下「第2単量体」ともいう)に由来する構造単位であることが好ましい。第2単量体の具体例としては、カルボキシ基を有する構造単位を構成する単量体として、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、4-ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸を;スルホン酸基を有する構造単位を構成する単量体として、例えばビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸等を;フェノール性水酸基を有する構造単位を構成する単量体として、例えば4-ヒドロキシスチレン、o-イソプロペニルフェノール、m-イソプロペニルフェノール、p-イソプロペニルフェノール等を、それぞれ挙げることができる。また、第2単量体としてマレイミドを用いることもできる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」を包含することを意味する。
【0033】
(A)成分において、第2構造単位の含有割合は、感放射線性組成物からなる塗膜の露光部分がアルカリ現像液に対し良好な現像性を示すようにする観点から、(A)成分を構成する全構造単位に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましく、3質量%以上であることがよりさらに好ましい。一方、第2構造単位の含有割合が多すぎると、露光部分と未露光部分とにおいて、アルカリ現像液に対する溶解性の違いが小さくなることが考えられる。こうした観点から、第2構造単位の含有割合は、(A)成分を構成する全構造単位に対して、40質量%未満であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0034】
(A)成分は、第2構造単位として、フェノール性水酸基を有する構造単位以外の構造単位を少なくとも含むことが好ましく、カルボキシ基を有する構造単位、スルホン酸基を有する構造単位、及びマレイミド単位よりなる群から選択される少なくとも1種を少なくとも含むことがより好ましい。(A)成分が第2構造単位としてこれらの基(カルボキシ基、スルホン酸基、マレイミド基)を有する構造単位を含むことにより、感放射線性組成物からなる塗膜の露光部分が、アルカリ現像液に対し良好な現像性を示すようにできる点で好適である。
【0035】
(A)成分において、第2構造単位のうち、フェノール性水酸基を有する構造単位以外の含有割合は、感放射線性組成物からなる塗膜の露光部分がアルカリ現像液に対し良好な現像性を示すようにする観点から、(A)成分を構成する全構造単位に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましく、3質量%以上であることがよりさらに好ましい。また、露光部分と未露光部分とにおいて、アルカリ現像液に対する溶解性の違いを十分に発現させる観点から、第2構造単位のうち、フェノール性水酸基を有する構造単位以外の含有割合は、(A)成分を構成する全構造単位に対して、20質量%未満であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、16質量%以下であることがさらに好ましく、15質量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0036】
また、第2構造単位としてフェノール水酸基を有する構造単位を(A)成分に導入する場合、フェノール性水酸基を有する構造単位の含有割合は、放射線感度をより良好にする観点から、(A)成分を構成する全構造単位に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、熱架橋性基を有する構造単位による硬化膜物性を確保する観点から、フェノール性水酸基を有する構造単位の含有割合は、(A)成分を構成する全構造単位に対して、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
・第3構造単位
第3構造単位は、環員数3又は4の環状エーテル基を有する構造単位である。(A)成分が第3構造単位を含むことにより、感放射線性組成物を用いて得られる膜の解像性及び硬化膜の耐溶剤性を高めることができる。また、第3構造単位が有する環状エーテル基が架橋性基として作用することにより、長期間に亘って劣化が抑制された硬化膜を形成することができる。第3構造単位は、オキセタン構造及びオキシラン構造よりなる群から選択される少なくとも1種を有する構造単位であることが好ましい。
【0038】
第3構造単位は、環員数3又は4の環状エーテル基を有する不飽和単量体(以下「第3単量体」ともいう)に由来する構造単位であることが好ましく、具体的には下記式(3)で表される構造単位であることが好ましい。
【化3】
(式(3)中、R
3はオキセタン構造又はオキシラン構造を有する1価の基であり、R
4は水素原子又メチル基であり、X
1は単結合又は2価の連結基である。)
【0039】
上記式(3)において、R3としては、オキシラニル基、オキセタニル基、3,4-エポキシシクロヘキシル基、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、3-エチルオキセタニル基等が挙げられる。これらのうち、反応性が高い点で、R3はオキシラン構造を有する1価の基が好ましい。
X1の2価の連結基としては、例えばメチレン基、エチレン基、1,3-プロパンジイル基等のアルカンジイル基が挙げられる。
【0040】
第3単量体の具体例としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デシル(メタ)アクリレート、(3-メチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)(メタ)アクリレート、(オキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
(A)成分において、第3構造単位の含有割合は、(A)成分を構成する全構造単位に対して、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。また、第3構造単位の含有割合は、(A)成分を構成する全構造単位に対して、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。第3構造単位の含有割合を上記範囲とすることで、塗膜がより良好な解像性を示すとともに、得られる硬化膜の耐熱性及び耐溶剤性を十分に高くすることができる点で好ましい。
【0042】
(A)成分において、第1構造単位、第2構造単位及び第3構造単位の各含有割合は、上述した各構造単位の好ましい含有割合の数値範囲を適宜組み合わせることにより設定することができる。これらのうち、感放射線性組成物が良好な放射線感度を示し、かつ得られる硬化膜のパターン形状、アウトガス特性及び発泡耐性を優れたものとする観点から、(A)成分は、重合体成分を構成する全構造単位に対し、第1構造単位を5質量%以上60質量%以下、第2構造単位を0.5質量%以上40質量%未満、第3構造単位を10質量%以上60質量%以下含むことが好ましい。より好ましくは、第1構造単位を8質量%以上60質量%以下、第2構造単位を0.5質量%以上35質量%未満、第3構造単位を10質量%以上60質量%以下含み、さらに好ましくは、第1構造単位を10質量%以上50質量%以下、第2構造単位を0.5質量%以上30質量%以下、第3構造単位を10質量%以上60質量%以下含むとよい。
【0043】
また、(A)成分において、第1構造単位、第2構造単位(ただし、フェノール性水酸基を有する構造単位を除く。)、及び第3構造単位の各含有割合は、感放射線性組成物が良好な放射線感度を示し、かつ得られる硬化膜のパターン形状、アウトガス特性及び発泡耐性を優れたものとする観点から、重合体成分を構成する全構造単位に対し、第1構造単位が5質量%以上60質量%以下、第2構造単位が0.5質量%以上20質量%未満、第3構造単位が10質量%以上60質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、(A)成分は、重合体成分を構成する全構造単位に対し、第1構造単位を8質量%以上60質量%以下、第2構造単位(ただし、フェノール性水酸基を有する構造単位を除く。)を0.5質量%以上20質量%未満、第3構造単位を10質量%以上60質量%以下含み、さらに好ましくは、第1構造単位を10質量%以上50質量%以下、第2構造単位(ただし、フェノール性水酸基を有する構造単位を除く。)を0.5質量%以上18質量%以下、第3構造単位を10質量%以上60質量%以下含むとよい。
【0044】
(A)成分は、第1構造単位、第2構造単位及び第3構造単位とともに、これら第1~第3構造単位とは異なる構造単位(以下「その他の構造単位」ともいう)をさらに含んでいてもよい。その他の構造単位としては、例えば、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(以下「第4構造単位」ともいう)、N-置換マレイミド化合物に由来する構造単位(以下「第5構造単位」ともいう)、水酸基(フェノール性水酸基を除く。)を有する構造単位(以下「第6構造単位」ともいう)、炭素数3以下のアルキル基を有するメタクリレート化合物に由来する構造単位(以下「第7構造単位」ともいう)が挙げられる。(A)成分が第4構造単位及び第5構造単位のうち少なくとも一方を含むことにより、重合体成分のガラス転移温度Tgを適度に高くでき、良好なパターン形状を有する硬化膜を得ることができる点で好適である。
【0045】
・第4構造単位
第4構造単位を構成する芳香族ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、t-ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、N,N-ジメチルアミノメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-t-ブチルスチレン、3-t-ブチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、ジフェニルエチレン等のスチレン系化合物;ビニルナフタレン、ジビニルナフタレン等のビニルナフタレン系化合物;ビニルピリジン等の複素環ビニル化合物等が挙げられる。これらのうち、上記芳香族ビニル化合物は、スチレン系化合物が好ましい。なお、本明細書において、フェノール性水酸基を有する芳香族ビニル化合物に由来する構造単位は「第2構造単位」に含まれる。
【0046】
(A)成分において、第4構造単位の含有割合は、(A)成分を構成する全構造単位に対して、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。また、第4構造単位の含有割合は、(A)成分を構成する全構造単位に対して、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。第4構造単位の含有割合を1質量%以上とすることにより、パターン形状がより良好な硬化膜を得ることができる。また、第4構造単位の含有割合を30質量%以下とすることにより、重合体成分のガラス転移温度が高くなりすぎず、現像性の低下を抑制することができる。
【0047】
・第5構造単位
第5構造単位を構成するN-置換マレイミド化合物としては、マレイミドが有する窒素原子に結合する水素原子が1価の炭化水素基で置換された化合物が挙げられる。当該1価の炭化水素基としては、1価の鎖状炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、及び1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。これらのうち、耐熱性の改善効果をより高くできる点で、
第5構造単位を構成するN-置換マレイミド化合物は、1価の環状炭化水素基を有することが好ましく、単環、橋かけ環又はスピロ環を有する1価の脂環式炭化水素基を有することがより好ましい。
【0048】
第5構造単位は、具体的には下記式(5)で表される構造単位であることが好ましい。
【化4】
(式(5)中、R
5は、1価の環状炭化水素基である。R
6及びR
7は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。)
【0049】
上記式(5)において、R5は、環状炭化水素基が有する環構造が窒素原子に直接結合していてもよく、環構造が2価の連結基を介して結合していてもよい。2価の連結基としては、例えばメチレン基、エチレン基、1,3-プロパンジイル基等のアルカンジイル基が挙げられる。これらのうち、R5は、環状炭化水素基が有する環構造が窒素原子に直接結合していることが好ましく、脂環式炭化水素の構造が窒素原子に直接結合した脂環式炭化水素基がより好ましい。R6及びR7は、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0050】
N-置換マレイミド化合物の具体例としては、脂環式炭化水素基を有する化合物として、例えばN-シクロヘキシルマレイミド、N-シクロペンチルマレイミド、N-(2-メチルシクロヘキシル)マレイミド、N-(4-メチルシクロヘキシル)マレイミド、N-(4-エチルシクロヘキシル)マレイミド、N-(2,6-ジメチルシクロヘキシル)マレイミド、N-ノルボルニルマレイミド、N-トリシクロデシルマレイミド、N-アダマンチルマレイミド等を;芳香族炭化水素基を有する化合物として、例えばN-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-エチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジメチルフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ナフチルマレイミド等を、それぞれ挙げることができる。N-置換マレイミド化合物は、これらのうち、N-シクロへキシルマレイミド、N-(4-メチルシクロへキシル)マレイミド、N-フェニルマレイミド及びN-(4-メチルフェニル)マレイミドよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、N-シクロへキシルマレイミド及びN-フェニルマレイミドのうち少なくともいずれかであることがより好ましい。
【0051】
(A)成分において、第5構造単位の含有割合は、パターン形状を良好にする観点から、(A)成分を構成する全構造単位に対して、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。また、第5構造単位の含有割合は、現像性の低下を抑制する観点から、(A)成分を構成する全構造単位に対して、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0052】
・第6構造単位
第6構造単位は、水酸基(フェノール性水酸基を除く。)を有する不飽和単量体(以下「第6単量体」ともいう)に由来する構造単位であることが好ましく、具体的には、飽和鎖状炭化水素基に結合した水酸基を1個以上有する単量体に由来する構造単位が挙げられる。第6単量体としては、特に限定されないが、例えば(メタ)アクリル化合物、マレイミド化合物等が挙げられる。
【0053】
第6単量体の具体例としては、(メタ)アクリル化合物として、例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸5-ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等を;
マレイミド化合物として、例えばN-(ヒドロキシメチル)マレイミド、N-(2-ヒドロキシエチル)マレイミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)マレイミド等を、それぞれ挙げることができる。
【0054】
(A)成分が第6構造単位を含む場合、膜形成時においてプレベーク温度のばらつきに起因するパターン形成能の低下を抑制でき、良好なパターンを形成できる点、及び放射線感度の点で好適である。(A)成分において、第6構造単位の含有割合は、プレベーク温度のばらつきに起因するパターン形成能の低下を抑制する観点から、(A)成分を構成する全構造単位に対して、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。また、第6構造単位の含有割合は、現像性の低下を抑制する観点から、(A)成分を構成する全構造単位に対して、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。
【0055】
・第7構造単位
第7構造単位を構成する単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレートが挙げられる。(A)成分において、第7構造単位の含有割合は、(A)成分を構成する全構造単位に対して、55質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下がよりさらに好ましい。
【0056】
その他の構造単位としては、上記の他、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物;イタコン酸ジエチル等の不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物;1,3-ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン化合物;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル等の単量体に由来する構造単位が挙げられる。(A)成分において、第4構造単位~第6構造単位を除くその他の構造単位の含有割合は、(A)成分を構成する全構造単位に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0057】
(A)成分は、第1構造単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。第2構造単位、第3構造単位及びその他の構造単位についても同様である。なお、各構造単位の含有割合は、通常、重合体成分の製造に使用される単量体の割合と等価である。(A)成分は、第1構造単位、第2構造単位及び第3構造単位を含む限り、1種の重合体からなるものであってもよく、2種以上の重合体からなるものであってもよい。すなわち、(A)成分は、同一の重合体又は異なる重合体中に、第1構造単位、第2構造単位及び第3構造単位を含む。なお、(A)成分は、第1構造単位、第2構造単位及び第3構造単位のいずれの構造単位も有しない重合体をさらに含有していてもよい。
【0058】
感放射線性組成物における(A)成分の含有形態としては、例えば、〔1〕第1構造単位と第2構造単位と第3構造単位とを有する重合体(以下「重合体P」ともいう。)を含有する態様、〔2〕第1構造単位を有する重合体と、第2構造単位を有する重合体と、第3構造単位を有する重合体とを含有する態様、〔3〕第1構造単位及び第3構造単位を有する重合体と、第2構造単位及び第3構造単位を有する重合体とを含有する態様、〔4〕第1構造単位及び第2構造単位を有する重合体と、第2構造単位及び第3構造単位を有する重合体とを含有する態様等が挙げられる。これらのうち、感放射線性組成物を構成する成分の数を少なくしつつ、発泡の抑制効果が得られる点で、上記〔1〕が好ましい。(A)成分を構成する重合体は、好ましくはアルカリ可溶性樹脂である。なお、本明細書において「アルカリ可溶性」とは、2.38質量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液等のアルカリ水溶液に溶解又は膨潤可能であることを意味する。
【0059】
(A)成分において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、2000以上であることが好ましい。Mwが2000以上であると、耐熱性や耐溶剤性が十分に高く、かつ良好な現像性を示す硬化膜を得ることができる点で好ましい。Mwは、より好ましくは5000以上であり、さらに好ましくは6000以上であり、特に好ましくは8000以上である。また、Mwは、成膜性を良好にする観点から、好ましくは50000以下であり、より好ましくは30000以下であり、さらに好ましくは20000以下であり、よりさらに好ましくは18000以下であり、特に好ましくは15000以下である。
【0060】
(A)成分において、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、4.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.7以下がさらに好ましい。なお、(A)成分が2種以上の重合体からなる場合、各重合体のMw、Mw/Mnが、それぞれ上記範囲を満たすことが好ましい。
【0061】
(A)成分の含有割合は、感放射線性組成物に含まれる固形分の全量に対して、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。また、(A)成分の含有割合は、感放射線性組成物に含まれる固形分の全量に対して、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。(A)成分の含有割合を上記範囲とすることにより、耐熱性及び耐溶剤性が十分に高く、かつ良好な現像性及び透明性を示す硬化膜を得ることができる。
【0062】
なお、(A)成分は、例えば、上述した各構造単位を導入可能な不飽和単量体を用い、適当な溶媒中、重合開始剤等の存在下で、ラジカル重合等の公知の方法に従って製造することができる。具体的には、使用する重合開始剤としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ化合物が挙げられる。重合開始剤の使用割合は、反応に使用する単量体の全量100質量部に対して、0.01~30質量部であることが好ましい。重合溶媒としては、例えばアルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、炭化水素類等が挙げられる。
【0063】
上記重合反応において、反応温度は、通常、30℃~180℃である。反応時間は、開始剤及び単量体の種類や反応温度に応じて異なるが、通常、0.5~10時間である。有機溶媒の使用量は、反応に使用するモノマーの合計量が、反応溶液の全体量に対して、0.1~60質量%になるような量にすることが好ましい。重合反応により得られた重合体は、例えば、反応溶液を大量の貧溶媒中に注ぎ、これにより得られる析出物を減圧下乾燥する方法、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法等の公知の単離方法を用いて単離することができる。
【0064】
<(B)成分>
(B)成分であるキノンジアジド化合物は、放射線の照射によりカルボン酸を発生する感放射線性酸発生体である。キノンジアジド化合物としては、フェノール性化合物又はアルコール性化合物(以下「母核」ともいう)と、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合物を用いることが好ましい。
【0065】
上記母核としては、例えば、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ペンタヒドロキシベンゾフェノン、ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、(ポリヒドロキシフェニル)アルカン、その他の母核を挙げることができる。これらの具体例としては、トリヒドロキシベンゾフェノンとして、例えば2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン等を;テトラヒドロキシベンゾフェノンとして、例えば2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’-テトラヒドロキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシ-3’-メトキシベンゾフェノン等を;ペンタヒドロキシベンゾフェノンとして、例えば2,3,4,2’,6’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン等を;ヘキサヒドロキシベンゾフェノンとして、例えば2,4,6,3’,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、3,4,5,3’,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等を;(ポリヒドロキシフェニル)アルカンとして、例えばビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(p-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリ(p-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3-トリス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルプロパン、4,4’-〔1-〔4-〔1-〔4-ヒドロキシフェニル〕-1-メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノール、ビス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’- テトラメチル-1,1’-スピロビインデン-5,6,7,5’,6’,7’-ヘキサノール、2,2,4-トリメチル-7,2’,4’-トリヒドロキシフラバン等を;その他の母核として、例えば2-メチル-2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4-(4-ヒドロキシフェニル)-7-ヒドロキシクロマン、2-[ビス{(5-イソプロピル-4-ヒドロキシ-2-メチル)フェニル}メチル]等を、それぞれ挙げることができる。
【0066】
母核としては、これらのうち、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、1,1,1-トリ(p-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリ(p-ヒドロキシフェニル)エタン、及び4,4’-〔1-〔4-〔1-〔4-ヒドロキシフェニル〕-1-メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノールが好ましい。
【0067】
1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとしては、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドが好ましい。具体的には、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸クロリド、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリド等が挙げられる。これらのうち、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとしては、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリドを好ましく使用できる。
【0068】
上記縮合物を得るための縮合反応において、母核と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの割合は、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドの使用量を、母核中のOH基の数に対して、好ましくは30~85モル%、より好ましくは50~70モル%に相当する量とする。なお、上記縮合反応は、公知の方法に従って行うことができる。母核と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドの縮合反応により1,2-キノンジアジド化合物が得られる。
【0069】
感放射線性組成物における(B)成分の含有割合は、(A)成分100質量部に対して、2質量部以上とすることが好ましく、5質量部以上とすることがより好ましく、10質量部以上とすることがさらに好ましい。また、(B)成分の含有割合は、(A)成分100質量部に対して、100質量部以下とすることが好ましく、60質量部以下とすることがより好ましく、40質量部以下とすることがさらに好ましい。(B)成分の含有割合を2質量部以上とすると、放射線の照射によって酸が十分に生成し、アルカリ溶液に対する、放射線の照射部分と未照射部分との溶解度の差を十分に大きくできる。これにより、良好なパターニングを行うことができる。また、(A)成分との反応に関与する酸の量を多くでき、耐熱性及び耐溶剤性を十分に確保できる。一方、(B)成分の含有割合を100質量部以下とすると、未反応の(B)成分を十分に少なくでき、(B)成分の残存による現像性の低下を抑制できる点で好適である。
【0070】
<(C)成分>
本開示の感放射線性組成物は、(A)成分、(B)成分、及び必要に応じて配合されるその他の成分が、好ましくは(C)成分である溶媒に溶解又は分散された液状の組成物である。使用する溶媒としては、感放射線性組成物に配合される各成分を溶解し、かつ各成分と反応しない有機溶媒が好ましい。
【0071】
溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレンジグリコールモノメチルエーテル、エチレンジグリコールエチルメチルエーテル、ジメチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素が挙げられる。これらのうち、本開示の感放射線性組成物の調製に用いられる溶媒は、エーテル類及びエステル類よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコール類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、及びプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートよりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0072】
<その他の成分>
本開示の感放射線性組成物は、上述した(A)成分、(B)成分及び(C)成分に加え、これら以外の成分(以下「その他の成分」ともいう)をさらに含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、反応開始剤(光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤等)、多官能重合性化合物(多官能(メタ)アクリレート等)、密着助剤(官能性シランカップリング剤等)、界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等)、重合禁止剤、酸化防止剤、連鎖移動剤等が挙げられる。これらの成分の配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲で各成分に応じて適宜選択される。
【0073】
本開示の感放射線性組成物は、その固形分濃度(感放射線性組成物中の(C)成分以外の成分の合計質量が、感放射線性組成物の全質量に対して占める割合)は、粘性や揮発性等を考慮して適宜に選択されるが、好ましくは5~60質量%の範囲である。固形分濃度が5質量%以上であると、感放射線性組成物を基板上に塗布した際に塗膜の膜厚を十分に確保できる点で好ましい。また、固形分濃度が60質量%以下であると、塗膜の膜厚が過大となりすぎず、さらに感放射線性組成物の粘性を適度に高くでき、良好な塗布性を確保できる点で好ましい。感放射線性組成物における固形分濃度は、より好ましくは10~55質量%であり、さらに好ましくは15~50質量%である。
【0074】
<層間絶縁膜及びその製造方法>
本開示の層間絶縁膜は、上記のように調製された感放射線性組成物により形成される。上記感放射線性組成物によれば、加熱に伴うアウトガスの発生が少ない膜を形成することができることから、液晶表示素子を構成する有機膜の形成用組成物として用いた場合に液晶表示素子において発泡を抑制することができる。また、上記感放射線性組成物は放射線感度が高く、放射線照射によるパターニングも良好である。したがって、上記感放射線性組成物は、液晶表示素子の層間絶縁膜形成用の重合体組成物として有用である。
【0075】
層間絶縁膜の製造に際し、上記の感放射線性組成物を用いることにより、放射線(紫外線、遠紫外線、可視光線等)の照射によってポジ型硬化膜を形成することができる。本開示の層間絶縁膜は、例えば以下の工程1~工程4を含む方法により製造することができる。
(工程1)上記感放射線性組成物を用いて塗膜を形成する工程。
(工程2)上記塗膜の少なくとも一部を露光する工程。
(工程3)塗膜を現像する工程。
(工程4)現像された塗膜を加熱する工程。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0076】
[工程1:膜形成工程]
本工程では、膜を形成する面(以下「被成膜面」ともいう)に上記感放射線性組成物を塗布し、好ましくは加熱処理(プレベーク)を行うことにより溶媒を除去して被成膜面上に塗膜を形成する。被成膜面の材質は特に限定されない。例えば、感放射線性組成物を用いて平坦化膜を形成する場合、TFT等のスイッチング素子が設けられた基板上に上記感放射線性組成物を塗布し、塗膜を形成する。基板としては、例えばガラス基板や樹脂基板が用いられる。
【0077】
感放射線性組成物の塗布方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法が挙げられる。これらの中でも、スピンコート法、スリットダイ塗布法又はバー塗布法により行うことが好ましい。プレベーク条件としては、感放射線性組成物における各成分の種類及び含有割合等によっても異なるが、例えば60~130℃で0.5~10分である。形成される塗膜の膜厚(すなわち、プレベーク後の膜厚)は、1~12μmが好ましい。
【0078】
[工程2:露光工程]
本工程では、上記工程1で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する。このとき、塗膜に対し、所定のパターンを有するマスクを介して放射線を照射することにより、パターンを有する層間絶縁膜を形成することができる。放射線としては、例えば、紫外線、遠紫外線、可視光線、X線、電子線等の荷電粒子線が挙げられる。これらの中でも紫外線が好ましく、例えばg線(波長436nm)、i線(波長365nm)が挙げられる。放射線の露光量としては、0.1~20,000J/m2が好ましい。
【0079】
[工程3:現像工程]
本工程では、上記工程2で放射線を照射した塗膜を現像する。具体的には、工程2で放射線が照射された塗膜に対し、現像液により現像を行って放射線の照射部分を除去するポジ型現像を行う。現像液としては、例えば、アルカリ(塩基性化合物)の水溶液が挙げられる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、特開2016-145913号公報の段落[0127]に例示されたアルカリが挙げられる。アルカリ水溶液におけるアルカリ濃度としては、適度な現像性を得る観点から、0.1~5.0質量%が好ましい。現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法等の適宜の方法が挙げられる。現像時間は、組成物の組成によっても異なるが、例えば30~120秒である。なお、現像工程の後、パターニングされた塗膜に対して流水洗浄によるリンス処理を行うことが好ましい。
【0080】
[工程4:加熱工程]
本工程では、上記工程3で現像された塗膜を加熱する処理(ポストベーク)を行う。ポストベークは、例えばオーブンやホットプレート等の加熱装置を用いて行うことができる。ポストベーク条件について、加熱温度は、例えば120~250℃である。また、加熱時間は、例えばホットプレート上で加熱処理を行う場合には5~40分、オーブン中で加熱処理を行う場合には10~80分である。以上のようにして、目的とするパターンを有する硬化膜を基板上に形成することができる。
【0081】
<液晶表示素子>
本開示の液晶表示素子は、上記感放射線性組成物を用いて形成された層間絶縁膜を有する。以下、本開示の液晶表示素子の一実施態様について、
図1を用いて説明する。
【0082】
図1において、液晶表示素子10は、マトリクス状に形成された複数の画素を有するアクティブマトリクス型である。本実施形態では、液晶表示素子10はPSA技術を用いて製造されている。液晶表示素子10は、アレイ基板11と、アレイ基板11に対向配置された対向基板13とを備える。アレイ基板11及び対向基板13により構成される一対の基板間には、液晶が封止されることにより液晶層12が形成されている。
【0083】
アレイ基板11は、
図1に示すように、ガラス基板や樹脂基板等の絶縁性の基板14、ベースコート膜15、TFT16、無機絶縁膜25、層間絶縁膜17及び画素電極18を有している。TFT16は、ポリシリコン(p-Si)で構成される半導体層19、ゲート絶縁膜21、ゲート電極22、ソース電極23及びドレイン電極24を含んで構成されており、画素ごとに設けられている。TFT16は、公知の材料を用いてフォトリソグラフィ等の公知の方法により形成されている。
【0084】
層間絶縁膜17は、基板14上において、上記感放射線性組成物を用いてフォトリソグラフィ法により形成されている。層間絶縁膜17は、TFT16を被覆するように基板14の面全体に形成されている。TFT16を有する基板14上に層間絶縁膜17が形成されることにより、TFT16による表面凹凸が平坦化される。また、層間絶縁膜17を設けることにより、画素電極18と信号線との間の容量カップリングの増大が抑制される。層間絶縁膜17の膜厚は、絶縁機能と平坦化機能とを十分に有するようにする観点から、好ましくは1~5μm、より好ましくは2~4μmである。
【0085】
画素電極18は、層間絶縁膜17上に導電性材料(例えばITO等)により形成されている。画素電極18は、層間絶縁膜17に形成されたコンタクトホール26a、無機絶縁膜25に形成されたコンタクトホール26bを介してTFT16に電気的に接続されている。アレイ基板11において、画素電極18上には液晶配向膜27が形成されている。
【0086】
対向基板13は、透明かつ絶縁性の基板28、ブラックマトリクス29、カラーフィルタ31、オーバーコート層(図示略)、及び共通電極32を備えている。カラーフィルタ31は、赤(R)、緑(G)及び青(B)で着色されたサブ画素により構成されており、フォトリソグラフィ等の公知の方法により形成されている。共通電極32は、ITO(酸化インジウム錫)等の透明導電膜により形成された平面状の電極であり、複数の画素に亘って設けられている。対向基板13の電極形成面には液晶配向膜33が形成されている。
【0087】
アレイ基板11及び対向基板13は、アレイ基板11の配向膜形成面と、対向基板13の配向膜形成面とが対向するように所定の間隙(セルギャップ)をあけて配置されている。対向配置された一対の基板の周縁部は、シール材(図示略)によって貼り合わされている。シール材の材料としては、液晶装置用のシール剤として公知の材料(例えば、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂)が用いられている。アレイ基板11、対向基板13及びシール材によって囲まれた空間には液晶組成物が充填されている。これにより、液晶配向膜27、33に接して液晶層12が配置されている。
【0088】
液晶層12は、負の誘電率異方性を有している。液晶層12は、光重合性モノマーを含む液晶組成物(「重合性液晶組成物」ともいう)を用いて形成されている。これにより、液晶層12において、アレイ基板11側及び対向基板13側には、ポリマー層であるPSA層(図示略)が形成されている。PSA層は、重合性液晶組成物に予め混入させた光重合性モノマーを、液晶セルの構築後に液晶分子をプレチルト配向させた状態で光重合することにより形成される。液晶表示素子10では、PSA層により液晶層12中の液晶分子の初期配向が制御される。
【0089】
液晶表示素子10において、アレイ基板11及び対向基板13のそれぞれの外側には偏光板(図示略)が配置されている。アレイ基板11の外縁部には端子領域が設けられている。この端子領域に液晶を駆動するためのドライバIC等が接続されることにより液晶表示素子10が駆動される。
【0090】
<液晶表示素子の製造方法>
上記感放射線性組成物を用いて形成される硬化膜は、光照射に伴う発泡の抑制効果が高い。したがって、硬化膜を形成した後に、液晶表示素子を製造するための各種光照射工程が行われ、硬化膜に光が照射された場合にも、その光照射に伴う発泡を抑制できる点で好適である。硬化膜の形成後に行われる光照射処理としては、例えば、シール材を硬化するための光照射処理、光配向法により液晶配向膜を形成するための光照射処理、キノンジアジド化合物のフォトブリーチング性能を利用して、形成された硬化膜の可視光域の光の透過性を調整するための光照射処理等が挙げられる。
【0091】
上記感放射線性組成物は、これらの中でも特に、PSA技術により製造される表示素子の層間絶縁膜の形成用として好適である。PSA技術では、液晶組成物中の光重合性モノマーを重合するための光の照射量が比較的多く、この光によって層間絶縁膜中の未反応成分の反応が起きたり、層間絶縁膜中の重合体成分が分解したりすることが生じやすいといえる。この点、上記感放射線性組成物により層間絶縁膜を形成することで、光照射に起因する気泡の発生を十分に抑制できる点で好適である。
【0092】
本開示の液晶表示素子は、例えば以下の工程A及び工程Bを含む方法により製造することができる。
工程A:基板上に、上記感放射線性組成物を用いて層間絶縁膜を形成する工程。
工程B:層間絶縁膜の形成後に、層間絶縁膜を有する対象物に光を照射する工程。
【0093】
PSA技術により液晶表示素子を製造する場合、具体的には、以下の工程Xをさらに含み、かつ工程Bとして下記の工程B1を実施する方法により液晶表示素子を製造することが好ましい。
工程X:層間絶縁膜を有する基板を含む一対の基板を、重合性液晶組成物を含む層を介して対向配置して液晶セルを構築する工程。
工程B1:重合性液晶組成物を含む層に電圧を印加した状態で液晶セルに対し光を照射する工程。
以下、PSA技術により液晶表示素子を製造する場合を一例に挙げ、本開示の液晶表示素子の製造方法について説明する。
【0094】
液晶表示素子を製造するには、まずアレイ基板及び対向基板を準備する。具体的には、まず、ガラス基板等の透明基板上に、フォトリソグラフィ法等の公知の方法によりTFT及び配線等を形成する。続いて、透明基板のうちTFT形成面上に上記感放射線性組成物を塗布し、層間絶縁膜を形成する(工程A)。層間絶縁膜は、例えば上記工程1~工程4を含む方法により形成する。その後、層間絶縁膜上に画素電極を形成する。画素電極は、スパッタリング法等の公知の方法を用いて、ITO等からなる導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ法によりパターニングすることにより形成する。また、アレイ基板とは別に、ガラス基板等の透明基板上に、フォトリソグラフィ法等の公知の方法を用いて、カラーフィルタ及び共通電極等を形成し、対向基板を作製する。
【0095】
続いて、電極が形成された基板上に液晶配向剤を塗布し、好ましくは塗布面を加熱(プレベーク及びポストベーク)することにより基板上に塗膜を形成する。その後、塗膜に対し、必要に応じて配向処理を行う。配向処理としては、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで塗膜を一定方向に擦るラビング処理、液晶配向剤を用いて基板上に形成した塗膜に光照射を行って塗膜に液晶配向能を付与する光配向処理等が挙げられる。
【0096】
続いて、層間絶縁膜、画素電極及び液晶配向膜がこの順に形成されたアレイ基板と、カラーフィルタ、共通電極及び液晶配向膜がこの順に形成された対向基板とを、互いの配向膜形成面が対向するように配置する。アレイ基板と対向基板との間には、光重合性モノマーが混入された液晶層が配置されるようにし、これにより液晶セルを構築する(工程X)。
【0097】
液晶層は、例えば、〔1〕シール材を塗布した一方の基板上に重合性液晶組成物を滴下又は塗布し、その後、他方の基板を貼り合わせる方法(ODF方式)、〔2〕セルギャップを介して対向配置された一対の基板の周縁部をシール材により貼り合わせ、基板表面及びシール材によって囲まれたセルギャップ内に重合性液晶組成物を注入充填した後、注入孔を封止する方法等により形成する。光重合性モノマーとしては、光による重合性が高い点で、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物を好ましく用いることができ、例えばメソゲン骨格を有する多官能(メタ)アクリル化合物等が使用される。
【0098】
続く工程では、上記で得られた液晶セルに光照射する(工程B)。液晶セルに対する光照射は、液晶分子が駆動される所定電圧を電極間に印加した状態で行われる(工程B1)。印加する電圧は、例えば5~50Vの直流又は交流とすることができる。照射する光としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。これらのうち、300~400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。光の照射方向は、用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合、照射方向は斜め方向とする。光の照射量としては、好ましくは1,000~200,000J/m2であり、より好ましくは1,000~100,000J/m2である。なお、PSA方式により液晶表示素子を製造する場合、液晶セルは「層間絶縁膜を有する対象物」に相当する。
【0099】
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより液晶表示素子が得られる。偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、又はH膜そのものからなる偏光板等が挙げられる。
【0100】
以上詳述した本開示の液晶表示素子は、種々の用途に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム機、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話機、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイ等の各種表示装置として用いることができる。
【実施例】
【0101】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。本実施例において、重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は以下の方法により測定した。
【0102】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
重合体のMw及びMnは、下記方法により測定した。
・測定方法:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法
・装置:昭和電工社のGPC-101
・GPCカラム:島津ジーエルシー社のGPC-KF-801、GPC-KF-802、GPC-KF-803及びGPC-KF-804を結合
・移動相:テトラヒドロフラン
・カラム温度:40℃
・流速:1.0mL/分
・試料濃度:1.0質量%
・試料注入量:100μL
・検出器:示差屈折計
・標準物質:単分散ポリスチレン
【0103】
[単量体]
重合体の合成で用いた単量体は以下のとおりである。
《第1単量体》
M-1:アクリル酸テトラヒドロフルフリル
M-2:アクリル酸5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イルメチル
M-3:アクリル酸(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル
M-4:アクリル酸メチル
M-5:アクリル酸エチル
M-6:アクリル酸(γ-ブチロラクトン-2-イル)
M-7:アクリル酸(γ-ブチロラクタム-2-イル)
M-8:N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド
M-9:グリセリンカーボネートアクリレート
《第2単量体》
M-10:メタクリル酸
M-11:マレイミド
M-12:p-イソプロペニルフェノール
《第3単量体》
M-13:メタクリル酸グリシジル
M-14:3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート
M-15:3-メタクリロイルオキシメチル-3-エチルオキセタン
《その他の単量体》
M-16:アクリル酸(2-メトキシエチル)
M-17:メタクリル酸テトラヒドロフルフリル
M-18:メタクリル酸n-ブチル
M-19:N-シクロヘキシルマレイミド
M-20:メタクリル酸メチル
M-21:スチレン
M-22:N-(2-ヒドロキシエチル)マレイミド
M-23:グリセロールモノメタクリレート
M-24:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
M-25:メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル
【0104】
<重合体の合成(1)>
[合成例1]重合体(A-1)の合成
冷却管及び撹拌機を備えたフラスコに、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル13部及びジエチレングリコールエチルメチルエーテル200部を仕込んだ。引き続き、アクリル酸テトラヒドロフルフリル10部、メタクリル酸8部、メタクリル酸グリシジル30部、及びメタクリル酸メチル52部を仕込み、窒素置換した。フラスコ内の溶液を緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇させ、この温度を5時間保持することにより、重合体(A-1)を含有する重合体溶液を得た。この重合体溶液の固形分濃度は34.5質量%であり、重合体(A-1)のMwは11,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。
【0105】
[合成例2~31、比較合成例1~4]重合体(A-2)~(A-31)、(CA-1)~(CA-4)の合成
表1に示す種類及び配合量(質量部)の各成分を用いたこと以外は合成例1と同様の手法にて、重合体(A-1)と同等の固形分濃度、分子量及び分子量分布を有する重合体(A-2)~(A-31)、(CA-1)~(CA-4)を含む重合体溶液を得た。
【0106】
【0107】
<感放射線性樹脂組成物の調製(1)>
上記で合成した重合体を用いて感放射線性樹脂組成物を調製した。感放射線性樹脂組成物の調製に用いた重合体及び酸発生体を以下に示す。
《重合体》
A-1~A-31:合成例1~31で合成した重合体(A-1)~(A-31)
CA-1~CA-4:比較合成例1~4で合成した重合体(CA-1)~(CA-4)
《酸発生体》
B-1:4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリド(2.0モル)との縮合物
【0108】
[実施例1]
重合体(A-1)を含有する重合体溶液に、重合体(A-1)100部(固形分)に相当する量に対して、酸発生体(B-1)20部を混合し、最終的な固形分濃度が30質量%になるようにジエチレングリコールエチルメチルエーテルを添加した。次いで、孔径0.2μmのメンブランフィルタで濾過して、組成物(S-1)を調製した。
【0109】
[実施例2~31、比較例1~4]
表2に示す種類及び配合量(質量部)の各成分を用いたこと以外は実施例1と同様の手法にて、実施例2~31、比較例1~4の感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0110】
【0111】
<評価(1)>
実施例1~31及び比較例1~4の感放射線性樹脂組成物(組成物(S-1)~(S-31)、(CS-1)~(CS-4))を用いて硬化膜を形成し、以下に説明する手法により下記項目を評価した。評価結果を表3に示す。
【0112】
[放射線感度]
ガラス基板上に、スピンナーを用いてヘキサメチルジシラザン(HMDS)を塗布し、60℃にて1分間加熱した(HMDS処理)。このHMDS処理後のクロム成膜ガラス基板上に、上記のように調製した各感放射線性樹脂組成物を、スピンナーを用いて塗布し、90℃において2分間プレベークすることによって、膜厚3.0μmの塗膜を形成した。続いて、露光機(キヤノン社の「PLA-501F」:超高圧水銀ランプを使用)を用い、露光量を変化させて60μmのライン・アンド・スペース(10対1)のパターンを有するマスクを介して、塗膜の露光を行った。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて25℃において液盛り法で現像した。現像時間は80秒間とした。次いで、超純水で1分間流水洗浄を行い、その後乾燥することにより、HMDS処理後のクロム成膜ガラス基板上にパターンを形成した。塗膜全面に300J/m2の露光を行い、このクロム成膜ガラス基板をクリーンオーブン内にて230℃で30分加熱して層間絶縁膜を得た。現像時に6μmのスペース・パターンが完全に溶解するために必要な露光量を調べた。露光量が小さいほど放射線感度は良好であると評価できる。
(評価基準)
AA:200J/m2未満
A:300J/m2未満
A-:300J/m2以上400J/m2未満
B:200J/m2以上400J/m2未満
C:400J/m2以上800J/m2未満
D:800J/m2以上
【0113】
[パターン形状]
上記最適露光量において解像される層間絶縁膜パターンの断面形状を走査型電子顕微鏡で観察した。層間絶縁膜パターンが基板へ接する端点において層間絶縁膜パターンへ接線を引き、接線と基板面がなす角度を算出した。角度が高いほど、230℃での加熱後も良好なパターン形状を保持していると評価できる。
(評価基準)
AA:60°以上
A:50°以上60°未満
B:40°以上50°未満
C:30°以上40°未満
D:30°未満
【0114】
[アウトガス特性]
スピンナーを用い、シリコン基板上に感放射線性樹脂組成物を塗布した後、90℃にて2分間ホットプレート上でプレベークして平均膜厚3.0μmの塗膜を形成した。さらに、230℃に加温したオーブンを用いて30分間焼成し、硬化膜を形成した。続いて、シリコン基板を1cm×5cmの大きさにカットした後、日本分析工業(株)製JTD-505と(株)島津製作所製GC-QP-2010とからなるP&T-GCMS装置を用いて、230℃で15分間ベークを行い、クロマトグラムを得た。硬化膜を用いて測定したクロマトグラムのC18のピーク面積と、別途同装置を用いて測定した標準試料C18のクロマトグラムのピーク面積を用いて、下記数式(1)よりアウトガス量を算出した。なお、下記数式(1)中、標準試料の導入量とは、標準試料C18のクロマトグラムを得る際に上記装置に導入した標準試料の導入量のことである。
アウトガス量(μg)=(硬化膜のクロマトグラムのピーク面積/標準試料のピーク面積)×標準試料の導入量(μg) …(1)
評価基準は、アウトガス量が5μg未満である場合を「A」、5μg以上10μg未満である場合を「B」、10μg以上50μg未満である場合を「C」、50μg以上である場合を「D」とした。
【0115】
[発泡耐性]
以下の手順で液晶表示素子を製造し、製造した液晶表示素子を用い、高温(80℃)の状態で衝撃を与えて、画素中の発泡の有無を確認した。液晶表示素子への衝撃は、パチンコ玉を液晶表示素子の上方30cmから落下させることにより付与した。使用したパチンコ玉は、重さ5.5g、直径11mm、鋼製の球状体である。衝撃の付与によって、液晶表示素子の画素中に気泡が全く発生しないものを「A」、気泡が僅かに生じたものを「B」、気泡が生じたものの気泡の密度が少ないものを「C」、気泡が生じかつ気泡の密度が大きいものを「D」として評価した。
【0116】
(液晶表示素子の製造)
図1の液晶表示素子10と同様の構造を有するアクティブマトリクス型のVAモードのカラー液晶表示素子を製造した。
まず、公知の方法にしたがい、無アルカリガラスからなる絶縁性のガラス基板上に、p-Siからなる半導体層及び電極層を有するTFT、配線、並びにSiNからなる無機絶縁膜を配置して、TFTを有するアレイ基板を準備した。なお、TFTは、通常の半導体層形成及び公知の絶縁層形成と、フォトリソグラフィ法によるエッチングを繰り返す等して、公知の方法に従って形成した。
【0117】
次いで、上記で調製した感放射線性樹脂組成物を、アレイ基板上にスリットダイコーターで塗布した。次いで、ホットプレート上で、90℃にて2分間プレベークし、有機溶媒を蒸発させて塗膜を形成した。次いで、UV(紫外)露光機(キヤノン社の「PLA-501F」:超高圧水銀ランプを使用)を用い、パターンマスクを介してUV光を照射した。照射は、放射線感度の評価で決定した露光量で行った。その後、2.38質量%の濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(現像液)を用い、液盛り法によって、25℃で80秒間の現像処理を行った。現像処理後、超純水で1分間、塗膜の流水洗浄を行い、乾燥させた。次いで、塗膜全面に300J/m2の露光を行い、この基板をクリーンオーブン内にて230℃で30分加熱して層間絶縁膜を得た。基板上の層間絶縁膜には、パターニングによりコンタクトホールが形成された。次いで、層間絶縁膜上に、ITOからなる膜をスパッタリング法により形成し、フォトリソグラフィ法を利用したパターニングによって画素電極を形成した。形成された画素電極は、コンタクトホールを介してTFTに接続させた。
【0118】
次に、カラーフィルタ基板を準備し、アレイ基板及びカラーフィルタ基板の電極配置面に、それぞれ液晶配向剤(商品名JALS2095-S2、JSR(株)製)を、スピンナーを用いて塗布し、80℃で1分間加熱した後、180℃で1時間加熱することにより、膜厚60nmの配向膜を形成した。カラーフィルタ基板としては、透明なガラス基板上に3色(赤・緑・青)のカラーフィルタとブラックマトリクスとが格子状に配置され、カラーフィルタ上に平坦化膜及び共通電極が形成されたものを用いた。共通電極としては、ITOからなる透明電極を用いた。
【0119】
次に、アレイ基板及びカラーフィルタ基板のうち一方の外周縁部に、紫外線硬化型のシール材を塗布した後、ディスペンサを用いてシール材の内側に重合性液晶組成物を滴下した。重合性液晶組成物としては、負の誘電率異方性を有するネマチック液晶に、光重合性を示す重合性成分を添加することにより調製したものを用いた。その後、アレイ基板とカラーフィルタ基板とを真空中で貼り合わせ、シール材の塗布領域に沿って光源を移動させながらUV光をシール材に照射し、シール材を硬化させた。これにより、アレイ基板とカラーフィルタ基板との間に重合性液晶組成物の層を形成した。
次に、アレイ基板のTFTがオンとなる電圧をTFTのゲート電極に印加した状態でTFTのソース電極とカラーフィルタ基板上の共通電極との間に交流電圧を印加し、重合性液晶組成物の層の液晶を傾斜配向させた。次いで、液晶が傾斜配向した状態を維持したまま、超高圧水銀ランプを用い、重合性液晶組成物の層にアレイ基板の側から紫外光を照射し、液晶が所定の方向にプレチルト角を形成してほぼ垂直に配向してなる液晶層を形成した。以上のようにして、VAモードのカラー液晶表示素子を製造した。
【0120】
【0121】
表3に示されるように、実施例1~31の感放射線性樹脂組成物は、良好な放射線感度を示し、かつ得られた硬化膜のパターン形状、アウトガス特性、及び発泡耐性に優れていた。一方、比較例1~4の感放射線性樹脂組成物は、放射線感度、パターン形状、アウトガス特性、及び発泡耐性のいずれも実施例より劣っていた。
【0122】
<重合体の合成(2)>
【0123】
[合成例32~42]重合体(A-32)~(A-42)の合成
表4に示す種類及び配合量(質量部)の各成分を用いたこと以外は合成例1と同様の手法にて、重合体(A-1)と同等の固形分濃度、分子量及び分子量分布を有する重合体(A-32)~(A-42)を含む重合体溶液を得た。なお、表4には、合成例1、6、11、14及び20、並びに比較合成例1における単量体組成を併せて示した。
【0124】
【0125】
<感放射線性樹脂組成物の調製(2)>
上記で合成した重合体を用いて、表5に示す組成の感放射線性樹脂組成物を調製した。感放射線性樹脂組成物の調製に用いた重合体及び酸発生体を以下に示す。
《重合体》
A-1、A-6、A-11、A-14、A-20、A-32~A-42:合成例1、6、11、14、20、32~42で合成した重合体(A-1)、(A-6)、(A-11)、(A-14)、(A-20)、(A-32)~(A-42)
CA-1:比較合成例1で合成した重合体(CA-1)
《酸発生体》
B-1:4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリド(2.0モル)との縮合物
【0126】
【0127】
<評価(2)>
実施例1、6、11、14、20、32~42及び比較例1の感放射線性樹脂組成物(組成物(S-1)、(S-6)、(S-11)、(S-14)、(S-20)、(S-32)~(S-42)、(CS-1))を用いて硬化膜を形成し、上述の評価(1)と同様にして放射線感度、パターン形状、アウトガス特性及び発泡耐性を評価した。また更に、以下に説明する手法によりプレベーク温度依存性を評価した。評価結果を表6に示す。
【0128】
<プレベーク温度依存性>
上述した放射線感度の評価において、プレベーク温度を90℃から100℃に変更した以外は同様の条件でガラス基板上にパターンを形成し、現像時に6μmのスペース・パターンが完全に溶解するために必要な露光量を調べた。その露光量に固定し、プレベーク温度を90℃として同様の条件でパターンを形成し、プレベーク温度を100℃とした場合と、プレベーク温度を90℃とした場合の線幅の差を求めた。線幅の差が小さいほど、プレベーク温度依存性が小さく良好であるといえる。
(評価基準)
A:0.5μm未満
B:0.5μm以上1.0μm未満
C:1.0μm以上2.0μm未満
D:2.0μm以上
【0129】
【0130】
表6に示されるように、実施例1、6、11、14、20、32~42の感放射線性樹脂組成物は、良好な放射線感度を示し、かつ得られた硬化膜のパターン形状、アウトガス特性、及び発泡耐性に優れていた。また、実施例1、6、11、14、20、32~42の感放射線性樹脂組成物は、比較例1に比べて、プレベーク温度の違いによるパターン形成能のばらつきが小さく、良好であった。特に、重合体成分中に水酸基を有する構造単位(第6構造単位)を含む実施例32~42の感放射線性樹脂組成物は、プレベーク温度依存性がA又はBの評価であり、特に優れていた。
【符号の説明】
【0131】
10…液晶表示素子、11…アレイ基板、12…液晶層、13…対向基板、14,28…基板、15…ベースコート膜、16…TFT、17…層間絶縁膜、18…画素電極、19…半導体層、21…ゲート絶縁膜、22…ゲート電極、23…ソース電極、24…ドレイン電極、25…無機絶縁膜、26a,26b…コンタクトホール、27,33…液晶配向膜、29…ブラックマトリクス、31…カラーフィルタ、32…共通電極。