(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】自動車の車室前部構造
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
B60H1/00 102R
B60H1/00 102L
(21)【出願番号】P 2020019585
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽子
(72)【発明者】
【氏名】河本 昌志
(72)【発明者】
【氏名】澤田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】横井 健志
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-334415(JP,A)
【文献】特開2005-028983(JP,A)
【文献】特開2006-327344(JP,A)
【文献】特開2011-042254(JP,A)
【文献】米国特許第09120454(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
助手席側の端に空気吹き出し口を備えているインストルメントパネルと、
前記インストルメントパネルの内側で車幅方向の中央に配置されている空調機本体と、
前記インストルメントパネルの内側で車体の右側と左側に連結されている横梁と、
前記インストルメントパネルの内側に配置されており、前記空調機本体と前記空気吹き出し口をつないでいる空気ダクトと、
前記横梁に支持されており、前記横梁の後方で前記横梁の高さ以下の位置に配置されている助手席用のエアバッグと、
を備えており、
前記空気ダクトが、助手席の前方において前記横梁よりも低い位置
であって前記エアバッグの真下を通過している、自動車の車室前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、自動車の車室前部構造に関する。特に、インストルメントパネルの内側で車幅方向の中央に配置されている空調機本体と、インストルメントパネルの助手席側の空気吹き出し口をつなぐ空気ダクトの配置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は車室の温度を調整する空調機本体をインストルメントパネルの内側で車幅方向の中央に配置する場合が多い。そして、インストルメントパネルの端(フロントピラーに近い部位)には空気吹き出し口が設けられている。インストルメントパネルの端の空気吹き出し口はサイドレジスタと呼ばれる場合がある。インストルメントパネルの内側には、空調機本体と空気吹き出し口をつなぐ空気ダクトが配置されている。
【0003】
特許文献1、2に開示された自動車では、インストルメントパネルの内側で車体の右側と左側に連結されている中空の横梁を空気ダクトとして用いている。なお、インストルメントパネルの内側で車体の右側と左側に連結されている横梁は、インパネメンバあるいは、インパネリインフォースメントと呼ばれることがある。
【0004】
特許文献3、4に開示された自動車では、インストルメントパネルの直下に空気ダクトが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019―127247号公報
【文献】特開2018-122678号公報
【文献】特開平08-118942号公報
【文献】特開2001-113935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インストルメントパネルの上方にはフロントガラスが位置しており、インストルメントパネルの上面には直射日光が当たる。インストルメントパネルの直下に空気ダクトを配置すると、夏において、インストルメントパネルの上面の熱により空気ダクトを通る冷えた空気が温められてしまう。横梁もインストルメントパネルの近くに位置するため、横梁の中を通る空気も、インストルメントパネルの上面に当たる太陽光により温められてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本明細書が開示する車室前部構造では、空調機本体とインストルメントパネルの端の空気吹き出し口をつなぐ空気ダクトを、助手席の前方において横梁よりも低い位置に通す。助手席の前方にて空気ダクトを横梁よりも低い位置に通すことで、インストルメントパネルの上面の熱が空気ダクトを通る空気に与える影響を抑えることができる。
【0008】
空気ダクトは助手席用のエアバッグの下を通過していてもよい。さらには、空気ダクトは、上記の横梁に固定されておりエアバッグを支持しているエアバッグブラケットの下を通過していてもよい。いずれの場合も、太陽光が空気ダクトを通る空気に与える影響をより良く抑えることができる。
【0009】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1のII-II線でカットした断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して実施例の車室前部構造2を説明する。
図1に、インストルメントパネルの正面図を示し、
図2に
図1のII-II線に沿った断面図を示す。
図2は、助手席31の前方でインストルメントパネル3を車幅方向に直交する平面でカットした断面に相当する。
【0012】
狭義のインストルメントパネルは、運転席32の側の計器9を意味するが、本明細書におけるインストルメントパネル3は、車体1の車幅方向の一方の端から他方の端まで、運転席32および助手席31の前に配置されている部品を意味する。インストルメントパネルは、ダッシュボードと呼ばれることもある。インストルメントパネル3は、樹脂で作られている。インストルメントパネル3の上方にはフロントガラス33が位置する(
図2参照)。
【0013】
インストルメントパネル3の内側で車体1の車幅方向のほぼ中央に空調機本体10が配置されている。空調機本体10から供給される空気は、インストルメントパネル3に設けられた空気吹き出し口4、14、19から吹き出される。インストルメントパネル3の車幅方向の中央に設けられている空気吹き出し口19は、センターレジスタと呼ばれることがあり、インストルメントパネル3の車幅方向の端に設けられた空気吹き出し口4、14はサイドレジスタと呼ばれることがある。空調機本体10には空気吐出口11、12が設けられており、空気吐出口11と助手席31の側の空気吹き出し口4は、空気ダクト7で連結されており、空気吐出口12と運転席32の側の空気吹き出し口14は、空気ダクト17で連結されている。運転席32の側のダクト17については詳しい説明は割愛する。
【0014】
図1では、インストルメントパネル3の内側に配置された空調機本体10、空気ダクト7、17、横梁6(後述)、エアバッグ20(後述)は、破線で描いてある。
【0015】
車幅方向の中央に位置する空気吹き出し口19と空調機本体10も別の空気ダクトで連結されているが、その空気ダクトの図示は省略した。
【0016】
インストルメントパネル3の内側に横梁6が配置されている。横梁6は、車体1の右側と左側に連結されている。より具体的には、横梁6は、左側のフロントピラー5と右側のフロントピラー15に連結されている。フロントピラー5、15は、車体1の強度を確保するフレームに属し、横梁6も、車体1の強度を確保するためのフレームに属する。インストルメントパネル3の内側に配置された横梁6は、インパネリインフォースメントとも呼ばれる。
【0017】
インストルメントパネル3の内側で助手席31の前方には、助手席用のエアバッグ20が配置されている。助手席用のエアバッグ20は、金属製のブラケット(エアバッグブラケット21)によって横梁6に支持されている(
図2参照)。運転席32の前方のエアバッグは図示を省略してある。
【0018】
助手席31の側の空気吹き出し口4と空調機本体10をつないでいる空気ダクト7は、先に述べたように、インストルメントパネル3の内側に配置されている。空気ダクト7は、助手席31の前方にて、横梁6よりも低い位置を通過している。さらに、空気ダクト7は、エアバッグ20とエアバッグブラケット21よりも低い位置を通過している。
【0019】
助手席31の前方にて、空気ダクト7を低い位置に通すことの利点について説明する。インストルメントパネル3の上面3aは、フロントガラス33を通過する太陽光により温められる。空気ダクト7がインストルメントパネル3の直下を通っていると、夏に空調機本体10から供給される冷たい空気が温められてしまう。空気ダクト7を横梁6の下を通すことで、空気ダクト7とインストルメントパネル3の上面3aとの距離が大きくなる。この構造により、インストルメントパネル3の上面3aの温度が空気ダクト7内の空気に及ぼす影響を抑えることができる。
【0020】
特に、空気ダクト7をエアバッグ20とエアバッグブラケット21よりも低い位置を通すことで、インストルメントパネル3の上面の温度が空気ダクト7内の空気に及ぼす影響を効果的に抑えることができる。
【0021】
また、空気ダクト7を横梁6の上でなく下を通すことで、インストルメントパネル3の上面3aの高さH1を低くすることができる。インストルメントパネル3の上面3aの高さH1を低くすることができれば、運転者の前方視認性が向上する。
【0022】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。インストルメントパネル3の内側には、横梁6、空調機本体10、空気ダクト7、17、エアバッグ20の他にも様々なデバイスが配置されているが、
図1と
図2ではそれらのデバイスの図示は省略した。
【0023】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0024】
1:車体 2:車室前部構造 3:インストルメントパネル 4、14、19:空気吹き出し口 5、15:フロントピラー 6:横梁 7、17:空気ダクト 9:計器 10:空調機本体 11、12:空気吐出口 20:エアバッグ 21:エアバッグブラケット 31:助手席 32:運転席 33:フロントガラス