(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 29/02 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
F02D29/02 321A
(21)【出願番号】P 2022121539
(22)【出願日】2022-07-29
(62)【分割の表示】P 2018113240の分割
【原出願日】2018-06-14
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松崎 哲
(72)【発明者】
【氏名】小室 正樹
(72)【発明者】
【氏名】岸川 昌寿
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-197638(JP,A)
【文献】特開2016-194270(JP,A)
【文献】特開2012-067716(JP,A)
【文献】特開2012-052471(JP,A)
【文献】特開2004-257272(JP,A)
【文献】特開2011-196339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の自動停止条件が成立した場合にエンジンを自動停止し、前記エンジンの自動停止中に所定の再始動条件が成立した場合に前記エンジンを再始動するアイドルストップ制御を実行可能な車両の制御装置において、
ドライバによる前記エンジンの始動要求を示すドライバ操作を検出する始動要求検出部と、
シフト切換装置のシフト位置を検出するシフト位置検出部と、
前記ドライバ操作の有無及び前記シフト位置に基づいて、前記エンジンの再始動後、前記エンジンの自動停止を許可するまでの遅れ時間を設定する遅れ時間設定部と、を備え、
前記遅れ時間設定部は、前記エンジンの再始動が前記ドライバ操作によらない場合に、前記遅れ時間をゼロを超える所定の時間に設定し、前記エンジンの再始動が前記ドライバ操作による場合に、前記遅れ時間をゼロに設定する、車両の制御装置。
【請求項2】
前記遅れ時間設定部は、前記エンジンの再始動が車載のエアコンディショナーの作動条件によるものである場合に、前記シフト位置に応じて前記遅れ時間の長さを異ならせる、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記遅れ時間設定部は、前記エンジンの再始動が車載のエアコンディショナーの作動条件によるものである場合、前記シフト位置が走行レンジにある場合の前記遅れ時間を、前記シフト位置が非走行レンジにある場合の前記遅れ時間よりも短くする、請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記ドライバ操作が、アクセルペダルの踏み込み又はブレーキペダルの踏み込みの解除うちの少なくとも一つの操作を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両において、燃料消費量の削減あるいは排気エミッションの低減を目的としてアイドルストップ制御が実用化されている。アイドルストップ制御では、あらかじめ設定された所定の自動停止条件が成立したときにエンジンが自動停止し、エンジンの自動停止中に、あらかじめ設定された所定の再始動条件が成立したときにエンジンが再始動する。
【0003】
自動停止条件としては、例えばエンジンの運転中に車両が停止状態となった場合等、エンジンの動力が不要な状態になったことを示す条件が用いられる。再始動条件としては、例えば、エンジンの自動停止中にドライバがブレーキペダルの踏み込みを解放したり又はドライバがアクセルペダルを踏み込んだりした場合等、ドライバに走行意志があると見なせる条件が用いられる。
【0004】
また、再始動条件としては、ドライバの走行意志によらない条件も用いられる。例えば、エンジンが停止すると、エンジンの動力を利用して動作する空調装置も停止し、車室内の温度調節機能が低下する。このため、ドライバの走行意志が見られない場合であっても、例えば空調装置の設定温度と車室内の温度との差が開いた場合にエンジンが再始動して、空調装置の動作を可能にする。
【0005】
ここで、エンジンの再始動及び自動停止が短時間の間に繰り返されると、ドライバは煩雑さを感じやすい。特に、エンジンの再始動が、ドライバの意志によるものでない場合には、ドライバはより煩雑さを感じやすいと考えられる。このような煩雑感を軽減するために、エンジンの再始動後の所定期間(遅れ時間)、自動停止条件が成立した場合であってもエンジンを運転状態で保持する技術がある。
【0006】
例えば、特許文献1には、エンジンの冷却水が車室内を暖房するのには不十分な水温以下の場合にエンジンECUに対してエンジン再始動要求信号やアイドルストップ禁止要求信号を出力する車両用空調制御装置が開示されている。特許文献1に開示された車両用空調制御装置は、エンジンの自動停止と再始動とが繰り返されることを抑制するために、自動停止条件が成立してエンジンが自動停止した後に再始動条件が成立してエンジンが再始動したときから所定の禁止時間(遅れ時間)の間、自動停止条件が成立してもエンジンを自動停止させることを禁止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、エンジンが再始動したときから再びエンジンの自動停止を許可するまでの遅れ時間を長く設定すると、ドライバの煩雑感は減るものの、エンジンの停止時間が短くなるために燃料消費量としては不利になる。一方で、遅れ時間を短く設定すると、エンジンの停止時間が長くなるものの、エンジンの再始動と自動停止とが短時間で繰り返されやすくなり、ドライバの煩雑感が増大するおそれがある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、エンジンの停止時間を長く確保し燃料消費量を削減可能な、新規かつ改良された車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、所定の自動停止条件が成立した場合にエンジンを自動停止し、エンジンの自動停止中に所定の再始動条件が成立した場合にエンジンを再始動するアイドルストップ制御を実行可能な車両の制御装置において、ドライバによるエンジンの始動要求を示すドライバ操作を検出する始動要求検出部と、シフト切換装置のシフト位置を検出するシフト位置検出部と、ドライバ操作の有無及びシフト位置に基づいて、エンジンの再始動後、エンジンの自動停止を許可するまでの遅れ時間を設定する遅れ時間設定部と、を備え、遅れ時間設定部は、エンジンの再始動がドライバ操作によらない場合に、遅れ時間をゼロを超える所定の時間に設定し、エンジンの再始動がドライバ操作による場合に、遅れ時間をゼロに設定する、車両の制御装置が提供される。
【0011】
遅れ時間設定部は、エンジンの再始動が車載のエアコンディショナーの作動条件によるものである場合に、シフト位置に応じて遅れ時間の長さを異ならせてもよい。
【0012】
遅れ時間設定部は、エンジンの再始動が車載のエアコンディショナーの作動条件によるものである場合、シフト位置が走行レンジにある場合の遅れ時間を、シフト位置が非走行レンジにある場合の遅れ時間よりも短くしてもよい。
【0013】
ドライバ操作が、アクセルペダルの踏み込み又はブレーキペダルの踏み込みの解除うちの少なくとも一つの操作を含んでもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、エンジンの再始動後にエンジンの自動停止を許可するまでの遅れ時間が、推定されるドライバの意志に応じて設定され、エンジンの停止時間を長く確保し燃料消費量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る車両の制御装置を適用可能な車両の基本構成を示す模式図である。
【
図2】同実施形態に係る車両の制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】同実施形態に係る車両の制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】同実施形態に係る車両の制御装置による遅れ時間設定処理を示すフローチャートである。
【
図6】同実施形態に係る車両の制御装置の作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
<1.車両の基本構成>
本発明の実施の形態に係る車両の制御装置を適用可能な車両の基本構成の一例を説明する。
図1は、車両の基本構成を示す模式図である。
【0018】
まず、車両の駆動系を説明する。車両は、アイドルストップシステムを備えた車両である。車両は、エンジン10、自動変速機20、スタータ11、スタータジェネレータ(発電機)13及びエアコンディショナー用のコンプレッサ15を備えている。自動変速機20、スタータ11、スタータジェネレータ13及びコンプレッサ15は、エンジン10に接続されている。
【0019】
アイドルストップシステムにおいて、エンジン10は、あらかじめ設定された所定の自動停止条件の成立時に自動的に停止され、その後、あらかじめ設定された所定の再始動条件の成立時に自動的に再始動される。スタータ11は、エンジン10の始動に用いられる。スタータ11は、第1のバッテリ27に接続され、アイドルストップ制御によらないエンジン10の初始動時に第1のバッテリ27から供給される電力でエンジン10をクランキングする。
【0020】
スタータジェネレータ13は、第2のバッテリ25に接続され、アイドルストップ制御によるエンジン10の再始動時に第2のバッテリ25から供給される電力でエンジン10をクランキングする。スタータジェネレータ13は、その回転軸に固定されたプーリ13aを備える。プーリ13aは、エンジン10のクランク軸に固定されるクランクプーリ10aにベルト19を介して連結されている。スタータジェネレータ13は、整流回路や電圧レギュレータを一体的に備え、エンジン10の動力を利用して発電を行う発電機としての機能を有している。スタータジェネレータ13は、エンジン10からベルト19を介して回転駆動されて発電し、電圧レギュレータで調整した電圧を各種電気負荷に供給するとともに第2のバッテリ25を充電する。
【0021】
第1のバッテリ27と第2のバッテリ25とはリレー17を介して接続されている。リレー17は常時切り離されている一方、いずれかのバッテリが故障あるいは機能低下したときに接続され、他方のバッテリからの電力供給を可能にする。
【0022】
コンプレッサ15は、電磁クラッチ21を備える。電磁クラッチ21のプーリは、ベルト19を介してクランクプーリ10aに連結されている。ベルトは、スタータジェネレータ13とエンジン10とを連結するベルト8とは別のベルトであってもよい。コンプレッサ15は、電磁クラッチ21が締結されたときにエンジン10によって回転駆動される。
【0023】
次に、車両の駆動系を制御する電子制御系を説明する。車両の電子制御系は、CAN(Controller Area Network)等の通信バス50に接続される複数の電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成されている。各ECUは、例えばマイクロコンピュータ又はマイクロプロセッサユニット等を備えて構成されている。なお、各ECUの一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されていてもよく、CPU(Central Processing Unit)等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0024】
また、各ECUは、マイクロコンピュータ等により実行されるプログラムや種々の演算に用いるパラメータ、検出データ、演算結果の情報等を記憶する図示しない記憶装置を備える。記憶装置は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子であってもよく、HDD(Hard Disk Drive)やCD-ROM、ストレージ装置等の記憶装置であってもよい。
【0025】
ECUは、エンジンECU51、トランスミッションECU53及びエアコンECU55を含む。エンジンECU51は、エンジン10を制御する。トランスミッションECU53は、自動変速機20を制御する。エアコンECU55は、コンプレッサ15やブロワー等を介して車室内の空調制御を行う。各ECUには、各種センサ類からの信号や通信バス50を介して送信される各種制御情報が入力される。各ECUは、これらの入力に基づいて駆動系の各種アクチュエータ類を駆動する。
【0026】
エンジンECU51には、クランク角センサ31及び水温センサ33が接続されている。クランク角センサ31は、エンジン10のクランク軸の回転角度を検出する。水温センサ33は、エンジン10の冷却水の温度を検出する。エンジンECU51は、これらの信号に基づいて、燃料噴射タイミング及び燃料噴射時間を制御するとともに、図示しない電子制御スロットル装置を制御してエンジン10の吸気量を制御し、エンジン10の出力を制御する。
【0027】
トランスミッションECU53には、シフトポジションセンサ61、アクセルセンサ63、ブレーキスイッチ65及び車速センサ67が接続されている。シフトポジションセンサ61は、シフト切換装置60のシフト位置を検出する。アクセルセンサ63は、アクセルペダルの踏み込み量を検出する。ブレーキスイッチ65は、ブレーキペダルの踏み込み時にオンの信号を出力する。車速センサ67は、車速を検出する。トランスミッションECU53は、これらの信号や他のECUからの制御情報に基づいて、自動変速機20に供給する油圧を制御し、あらかじめ設定された変速特性にしたがって自動変速機20を制御する。
【0028】
エアコンECU55には、エアコンスイッチ71、冷媒圧力スイッチ73及び温度センサ75が接続されている。エアコンスイッチ71は、乗員により操作されてコンプレッサ15を作動させる。冷媒圧力スイッチ73は、コンプレッサ15により圧縮される冷媒の圧力が所定値以上のときにオンの信号を出力する。温度センサ75は、車室内あるいは車室外の温度を計測する1つ又は複数の温度センサを含む。エアコンECU55は、これらの信号や他のECUからの制御情報に基づいて、電磁クラッチ21を介してコンプレッサ15を作動させ、車室内の空調制御を行う。
【0029】
<2.車両の制御装置>
次に、本実施形態に係る車両の制御装置を具体的に説明する。
図2は、車両の電子制御系のうち、アイドルストップ制御に関連する部分の機能構成を示すブロック図である。
【0030】
車両の制御装置100は、アイドルストップ制御部(IS制御部)111、始動要求検出部115、シフト位置検出部113及び遅れ時間設定部119を備える。これらの各部は、車両の電子制御系に備えられたECUのうちの1つ又は複数のECUがコンピュータプログラムを実行することにより実現される機能である。
【0031】
(アイドルストップ制御部)
アイドルストップ制御部111は、あらかじめ設定された所定の自動停止条件の成立時にエンジン10を自動停止させる。また、アイドルストップ制御部111は、エンジン10の自動停止中に、あらかじめ設定された所定の再始動条件の成立時にエンジン10を再始動させる。例えばエンジンECU51が、アイドルストップ制御部111としての機能を有する。
【0032】
自動停止条件は、少なくともエンジン10が運転状態にあること、車速がゼロに近い閾値以下であること、及び直前のエンジン10の再始動から所定の遅れ時間が経過していることを含む。エンジン10が運転状態にあるか否かは、例えばクランク角センサ31の信号に基づいて判定することができる。車速が閾値以下であるか否かは、車速センサ67の信号に基づき判定することができる。直前のエンジン10の再始動から所定の遅れ時間が経過したか否かは、エンジン10の再始動時からのタイマ値を遅れ時間と比較することにより判定することができる。遅れ時間は、遅れ時間設定部119により設定される。
【0033】
この他、自動停止条件は、エンジン10の運転状態においてドライバに走行意志がないと見なせることを示す条件として、ブレーキペダルが踏み込まれていること、又は、シフト切換装置60のシフト位置が非走行レンジ(Pレンジ又はNレンジ)であり且つアクセルペダルが踏み込まれていないことのいずれかが成立していることを含む。シフト位置は、シフトポジションセンサ61の信号に基づき判定することができる。ブレーキペダルの踏み込みは、ブレーキスイッチ65の信号に基づき判定することができる。アクセルペダルの踏み込みは、アクセルセンサ63の信号に基づき判定することができる。
【0034】
さらに、自動停止条件は、後述のエアコン要件でエンジン10が再始動した場合において、エアコンディショナーの作動が不要になったことを示す条件を含む。例えば、車室内の温度がエアコンディショナーの設定温度になったことを自動停止条件とすることができる。本実施形態において、エアコン要件による自動停止条件の成立は、エアコン要件判定部117により検出される。
【0035】
アイドルストップ制御部111は、自動停止条件が成立した場合に、図示しない燃料噴射弁の駆動を停止させ、エンジン10への燃料噴射を中断する。燃料噴射の中断は、再始動条件が成立するまでの期間継続され、エンジン10は停止状態で保持される。
【0036】
再始動条件は、少なくともエンジン10が自動停止状態にあることと併せて、以下のドライバ要件又はエアコン要件が成立したことを含む。ドライバ要件は、ドライバにエンジン10の始動要求があると見なせることを示す条件である。例えば、ドライバ要件は、シフト切換装置60のシフト位置が走行レンジ(Dレンジ又はRレンジ)にあり且つブレーキペダルの踏み込みが解除されたこと、又は、シフト位置が非走行レンジ(Pレンジ又はNレンジ)にあり且つアクセルペダルが踏み込まれたことのいずれかが成立したことであってよい。本実施形態において、ドライバ要件の成立は、始動要求検出部115により検出される。
【0037】
エアコン要件は、エアコンディショナーの作動が必要であることを示す条件である。例えば、エアコン要件は、車室内の温度がエアコンディショナーの設定温度よりも所定の閾値以上上昇したことであってよい。この閾値は、固定値であってもよく、エアコンディショナーの設定温度あるいは外気温に応じた可変値であってもよい。本実施形態において、エアコン要件の成立は、エアコン要件判定部117により検出される。
【0038】
アイドルストップ制御部111は、再始動条件が成立した場合に、図示しない燃料噴射弁の駆動を再開させ、エンジン10への燃料噴射を行う。
【0039】
(シフト位置検出部)
シフト位置検出部113は、シフトポジションセンサ61の入力信号に基づいて、シフト切換装置60のシフト位置を検出する。例えば、トランスミッションECU53が、シフト位置検出部113としての機能を有する。
【0040】
(始動要求検出部)
始動要求検出部115は、ドライバによるエンジン10の始動要求を示すドライバ操作を検出する。例えば、エンジンECU51が、始動要求検出部115としての機能を有する。エンジン10の始動要求を示すドライバ操作は、例えば、シフト切換装置60のシフト位置が走行レンジ(Dレンジ又はRレンジ)にある状態でのブレーキペダルの解放(ブレーキスイッチ65のオンからオフへの切り換え)、又は、シフト位置が非走行レンジ(Rレンジ又はNレンジ)にある状態でのアクセルペダルの踏み込み(アクセルペダルの踏み込み量のゼロからの増加)であってよい。
【0041】
(エアコン要件判定部)
エアコン要件判定部117は、例えば各種温度センサ75の信号に基づいて、上述のエアコン要件の成立を検出する。例えば、エアコンECU55が、エアコン要件判定部117としての機能を有する。
【0042】
(遅れ時間設定部)
遅れ時間設定部119は、始動要求検出部115により検出されたドライバ操作及びシフト位置検出部113により検出されたシフト位置に基づいて、エンジン10の再始動後、エンジン10の自動停止を許可するまでの遅れ時間を設定する。例えば、エンジンECU51が、遅れ時間設定部119としての機能を有する。
【0043】
本実施形態において、遅れ時間設定部119は、直前のエンジン10の再始動がドライバの意志によるものである場合には遅れ時間をゼロに設定する。具体的に、遅れ時間設定部119は、エンジン10の再始動が、ドライバ要件よる場合には遅れ時間をゼロに設定する。つまり、ドライバが自らの意志でエンジン10を再始動させた場合、ドライバに走行意志がないと見なせる状態に戻ったときに速やかにエンジン10が自動停止されるようにする。例えば、車両の走行中にドライバがアクセルペダルの踏み込みと解放とを繰り返すような場合に、速やかなエンジン10の再始動が行われ、ドライバに違和感を与えることがない。
【0044】
一方、遅れ時間設定部119は、直前のエンジン10の再始動がドライバの意志によらない場合、つまり、エアコン要件による場合には、遅れ時間を所定の長さに設定する。その際、遅れ時間設定部119は、シフト位置がDレンジにあるか非走行レンジ(Pレンジ又はNレンジ)にあるかにより遅れ時間を異ならせる。遅れ時間設定部119は、シフト位置が非走行レンジにある場合の遅れ時間を、シフト位置がDレンジにある場合の遅れ時間よりも長く設定する。
【0045】
シフト位置がDレンジにある場合、ドライバは、ブレーキペダルの解放動作又はアクセルペダルの踏込操作を行っていないものの、車両の走行開始に備えていると見なすことができる。例えば、渋滞時や信号待ちの状態でエアコン要件によりエンジン10が再始動したような場合である。この場合、遅れ時間設定部119は、ドライバに煩雑感を与えない程度に短時間の第1の遅れ時間を設定する。第1の遅れ時間は、例えば30秒に設定される。
【0046】
また、シフト位置が非走行レンジにある場合、ドライバは、ブレーキペダルの解放動作又はアクセルペダルの踏み込み操作を行っておらず、さらに車両の走行意志もないと見なすことができる。例えば、駐車場等に停車した状態でエアコン要件によりエンジン10が再始動したような場合である。この場合、車両の走行意志がない状態でエンジン10の自動停止及び再始動が繰り返されるとドライバはより煩雑さを感じやすいことから、遅れ時間設定部119は、ドライバに煩雑感を与えないように長時間の第2の遅れ時間を設定する。第2の遅れ時間は、例えば90秒に設定される。
【0047】
図3は、遅れ時間設定部119により設定される遅れ時間の例を示す。直前のエンジン10の再始動以降のシフト位置がDレンジから変更されておらず、エンジン10の再始動理由がドライバ操作によるものである場合、遅れ時間設定部119は、遅れ時間をゼロに設定しつつ、エンジン10の自動停止を許可する。この場合、ドライバはブレーキペダルの解放動作又はアクセルペダルの踏込動作を行った自覚があるため、短時間でエンジン10が自動停止したとしても煩雑さを感じにくい。
【0048】
直前のエンジン10の再始動以降のシフト位置がDレンジから変更されておらず、エンジン10の再始動理由がドライバ操作によらないものである場合、遅れ時間設定部119は、遅れ時間を第2の遅れ時間より短い第1の遅れ時間に設定しつつ、エンジン10の自動停止を許可する。この場合、ドライバはブレーキペダルの解放動作又はアクセルペダルの踏込動作を行っていないが車両の走行に備えているため、ドライバに煩雑さを感じさせないように自動停止条件の成立後においてもエンジン10の運転が所定時間継続するように設定される。
【0049】
直前のエンジン10の再始動以降のシフト位置がRレンジから変更されていない場合、遅れ時間設定部119は、エンジン10の自動停止を許可しない。この場合、エンジン10の自動停止後の再始動時における後退走行への飛び出し感を抑制するために、アイドルストップ制御によるエンジン10の自動停止が行われないように設定される。
【0050】
直前のエンジン10の再始動以降のシフト位置が非走行レンジ(Pレンジ又はNレンジ)から変更されておらず、エンジン10の再始動理由がドライバ操作によるものである場合、遅れ時間設定部119は、遅れ時間をゼロに設定しつつ、エンジン10の自動停止を許可する。この場合、ドライバはブレーキペダルの解放動作又はアクセルペダルの踏込動作を行った自覚があるため、短時間でエンジン10が自動停止したとしても煩雑さを感じにくい。
【0051】
直前のエンジン10の再始動以降のシフト位置が非走行レンジから変更されておらず、エンジン10の再始動理由がドライバ操作によらないものである場合、遅れ時間設定部119は、遅れ時間を長い第2の遅れ時間に設定しつつ、エンジン10の自動停止を許可する。この場合、ドライバはブレーキペダルの解放動作又はアクセルペダルの踏込動作を行っておらず車両の走行意志もないため、ドライバに煩雑さを感じさせないように自動停止条件の成立後においてもエンジン10の運転がより長い時間継続するように設定される。
【0052】
シフト位置が走行レンジ(Dレンジ又はRレンジ)で直前のエンジン10の再始動が行われた後に非走行レンジに切り換えられ、エンジン10の再始動理由がドライバ操作によるものである場合、遅れ時間設定部119は、遅れ時間をゼロに設定しつつ、エンジン10の自動停止を許可する。この場合、ドライバはブレーキペダルの解放動作又はアクセルペダルの踏込動作を行った自覚があるため、短時間でエンジン10が自動停止したとしても煩雑さを感じにくい。
【0053】
シフト位置が走行レンジで直前のエンジン10の再始動が行われた後に非走行レンジに切り換えられ、エンジン10の再始動理由がドライバ操作によらないものである場合、遅れ時間設定部119は、遅れ時間を長い第2の遅れ時間に設定しつつ、エンジン10の自動停止を許可する。この場合、ドライバはブレーキペダルの解放動作又はアクセルペダルの踏込動作を行っておらず車両の走行意志もないため、ドライバに煩雑さを感じさせないように自動停止条件の成立後においてもエンジン10の運転がより長い時間継続するように設定される。
【0054】
シフト位置が非走行レンジで直前のエンジン10の再始動が行われた後にDレンジに切り換えられ、エンジン10の再始動理由がドライバ操作によるものである場合、遅れ時間設定部119は、遅れ時間をゼロに設定しつつ、エンジン10の自動停止を許可する。この場合、ドライバはブレーキペダルの解放動作又はアクセルペダルの踏込動作を行った自覚があるため、短時間でエンジン10が自動停止したとしても煩雑さを感じにくい。
【0055】
シフト位置が非走行レンジで直前のエンジン10の再始動が行われた後にDレンジに切り換えられ、エンジン10の再始動理由がドライバ操作によらないものである場合、遅れ時間設定部119は、遅れ時間を第2の遅れ時間より短い第1の遅れ時間に設定しつつ、エンジン10の自動停止を許可する。この場合、ドライバはブレーキペダルの解放動作又はアクセルペダルの踏込動作を行っていないが車両の走行に備えているため、ドライバに煩雑さを感じさせないように自動停止条件の成立後においてもエンジン10の運転が所定時間継続するように設定される。
【0056】
シフト位置が非走行レンジで直前のエンジン10の再始動が行われた後にRレンジに切り換えられた場合、遅れ時間設定部119は、エンジン10の自動停止を許可しない。この場合、エンジン10の自動停止後の再始動時における後退走行への飛び出し感を抑制するために、アイドルストップ制御によるエンジン10の自動停止が行われないように設定される。
【0057】
図3に例示したように遅れ時間を設定することにより、ドライバの煩雑感の軽減と、アイドルストップ制御によるエンジン10の停止時間の確保との両立が図られる。なお、第1の遅れ時間及び第2の遅れ時間は、ドライバに与える煩雑感の影響と、アイドルストップ制御による燃料消費量削減効果とを考慮して、任意の適切な値に設定することができる。
【0058】
<3.車両の制御装置の動作>
以下、
図4~
図5に示すフローチャートを参照して、本実施形態に係る車両の制御装置100の動作を説明する。なお、以下の説明においては、エンジン10が自動停止している状態から説明を始める。
【0059】
図4は、車両の制御装置100の動作のメインルーチンを示すフローチャートである。まず、アイドルストップ制御部111は、各種センサの信号に基づいてエンジン10の再始動条件が成立したか否かを判別する(ステップS11)。再始動条件が成立していない場合(S11/No)、アイドルストップ制御部111はステップS11の判別を繰り返す。
【0060】
再始動条件が成立した場合(S11/Yes)、アイドルストップ制御部111は、エンジン10を再始動させる(ステップS13)。この場合、エンジンECU51は、スタータジェネレータ13を制御してエンジン10をクランキングさせるとともにエンジン10への燃料噴射を開始して、エンジン10を始動させる。次いで、遅れ時間設定部119は、エンジン10の自動停止条件が成立した場合の遅れ時間を設定する(ステップS15)。
【0061】
図5は、遅れ時間を設定するサブルーチンを示すフローチャートである。まず、遅れ時間設定部119は、シフトポジションセンサ61の信号に基づいて現在のシフト位置がDレンジであるか否かを判別する(ステップS31)。シフト位置がDレンジである場合(S31/Yes)、遅れ時間設定部119は、直前のエンジン10の再始動理由がドライバ操作(ドライバ要件)以外であるか否かを判別する(ステップS33)。
【0062】
直前のエンジン10の再始動理由がドライバ操作による場合(S33/No)、遅れ時間設定部119は、遅れ時間をゼロに設定し(ステップS39)、アイドルストップ制御によるエンジン10の自動停止を許可して(ステップS45)、このルーチンを終了させる。また、直前のエンジン10の再始動理由がドライバ操作以外である場合、つまり、エアコン要件による場合(S33/Yes)、遅れ時間設定部119は、遅れ時間を第2の遅れ時間より短い第1の遅れ時間に設定し(ステップS41)、アイドルストップ制御によるエンジン10の自動停止を許可して(ステップS45)、このルーチンを終了させる。
【0063】
一方、上述のステップS31において、シフト位置がDレンジでない場合(S31/No)、遅れ時間設定部119は、シフト位置が非走行レンジ(Pレンジ又はNレンジ)であるか否かを判別する(ステップS35)。シフト位置が非走行レンジである場合(S35/Yes)、遅れ時間設定部119は、直前のエンジン10の始動理由がドライバ操作(ドライバ要件)以外であるか否かを判別する(ステップS37)。
【0064】
直前のエンジン10の再始動理由がドライバ操作による場合(S37/No)、遅れ時間設定部119は、遅れ時間をゼロに設定し(ステップS39)、アイドルストップ制御によるエンジン10の自動停止を許可して(ステップS45)、このルーチンを終了させる。また、直前のエンジン10の再始動理由がドライバ操作以外である場合、つまり、エアコン要件による場合(S37/Yes)、遅れ時間設定部119は、遅れ時間を長い第2の遅れ時間に設定し(ステップS43)、アイドルストップ制御によるエンジン10の自動停止を許可して(ステップS45)、このルーチンを終了させる。
【0065】
一方、上述のステップS35において、シフト位置が非走行レンジでない場合、つまり、シフト位置がRレンジである場合(S35/No)、遅れ時間設定部119は、アイドルストップ制御によるエンジン10の自動停止を禁止して(ステップS47)、このルーチンを終了させる。
【0066】
図4に戻り、ステップS15において遅れ時間が設定された後、アイドルストップ制御部111は、各種センサの信号に基づいてエンジン10の自動停止条件が成立したか否かを判別する(ステップS17)。この自動停止条件には、直前のエンジン10の再始動時からステップS15で設定された遅れ時間が成立していることの条件も含まれている。自動停止条件が成立していない場合(S17/No)、アイドルストップ制御部111は、ステップS17の判別を繰り返す。
【0067】
一方、自動停止条件が成立した場合(S17/Yes)、アイドルストップ制御部111は、アイドルストップ制御によるエンジン10の自動停止が許可されているか否かを判別する(ステップS19)。エンジン10の自動停止が許可されていない場合(S19/No)、アイドルストップ制御部111は、そのまま本ルーチンを終了させる。一方、エンジン10の自動停止が許可されている場合(S19/Yes)、アイドルストップ制御部111は、エンジン10を自動停止させ(ステップS21)、本ルーチンを終了させる。
【0068】
本実施形態に係る車両の制御装置100は、アイドルストップ制御によりエンジン10が自動停止するごとに上述した
図4~
図5に示す処理を実行する。これにより、ドライバの煩雑感の軽減と、アイドルストップ制御によるエンジン10の停止時間の確保との両立が図られる。
【0069】
<4.車両の制御装置による作用>
以下、
図6のタイムチャートを参照して、本実施形態に係る車両の制御装置100の作用を説明する。
図6は、シフト切換装置60のシフト位置がDレンジの場合及び非走行レンジ(Pレンジ又はNレンジ)の場合それぞれにおいて、ドライバ操作(ドライバ要件)によりエンジン10が再始動したとき及びエアコン要件によりエンジン10が再始動したときのエンジン10の自動停止時期を示している。
【0070】
なお、
図6に示した参考例では、ドライバ要件又はエアコン要件にかかわらず、エンジン10が再始動してから自動停止を許可するまでの遅れ時間は一定の時間d0に設定されている。
【0071】
本実施形態に係る車両の制御装置100では、シフト位置がDレンジ及び非走行レンジいずれの状態であっても、ドライバ操作によりエンジン10が再始動した場合には、遅れ時間はゼロに設定される。つまり、エンジン10が再始動した時刻t0以降、所定の自動停止条件が成立した時刻t1で速やかにエンジン10が自動停止する。これに対して、参考例では、時刻t1で自動停止条件が成立した場合であっても、遅れ時間d0が経過する時刻t2まではエンジン10の運転状態が継続する。
【0072】
したがって、本実施形態に係る車両の制御装置100の例では、ドライバ操作によりエンジン10が再始動した場合、エンジン10は速やかに自動停止されてエンジン10の停止時間が参考例よりも長くなる。この場合、ドライバは、自らの操作でエンジン10を再始動しているために、速やかにエンジン10が自動停止しても煩雑さを感じにくい。
【0073】
また、本実施形態に係る車両の制御装置100では、シフト位置がDレンジにある状態でエアコン要件によりエンジン10が再始動した場合には、遅れ時間は第2の遅れ時間より短い第1の遅れ時間d1に設定される。第1の遅れ時間d1は、参考例の遅れ時間d0よりは長い時間となっている。このため、本実施形態に係る車両の制御装置100の例では、シフト位置がDレンジの状態でエアコン要件によりエンジン10が再始動した時刻t10の後、時刻t11でエンジン10の自動停止条件が成立した場合であっても、第1の遅れ時間d1が経過する時刻t13まではエンジン10の運転状態が継続する。本実施形態の例による遅れ時間d1は、参考例による遅れ時間d0よりも長いことから、ドライバの煩雑感は軽減される。
【0074】
また、本実施形態に係る車両の制御装置100では、シフト位置が非走行レンジにある状態でエアコン要件によりエンジン10が再始動した場合には、遅れ時間は第1の遅れ時間d1よりも長い第2の遅れ時間d2に設定される。このため、本実施形態に係る車両の制御装置100の例では、シフト位置が非走行レンジの状態でエアコン要件によりエンジン10が再始動した時刻t10の後、より長い第2の遅れ時間d2が経過する時刻t14まではエンジン10の運転状態が継続する。したがって、非走行レンジで車両が停車している場合において、エンジン10の再始動及び自動停止の頻度が少なくなって、ドライバの煩雑感は軽減される。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係る車両の制御装置100によれば、エンジンの再始動後にエンジンの自動停止を許可するまでの遅れ時間が、推定されるドライバの意志に応じて設定され、エンジンの停止時間を長く確保し燃料消費量を削減することができる。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0077】
例えば、上記実施形態においては、空調装置が冷房装置である例を説明したが、空調装置が暖房装置であってもよい。暖房装置が、エンジンの動力を利用する冷却水ポンプによりエンジンの冷却水を循環させてヒータコアで熱交換して温風を車室内に供給する装置である場合、エンジンが自動停止すると冷却水ポンプも停止する。この場合、ドライバ操作によらずにエンジンを再始動させて暖房装置を作動させることがあり得る。このような暖房装置を備えた車両に本発明を適用した場合であっても、ドライバの煩雑感の軽減と、アイドルストップ制御によるエンジンの自動停止時間の確保との両立を図ることができる。
【0078】
また、上記実施形態においては、ドライバ操作によらないエンジン10の自動停止及び再始動がエアコン要件によるものであったが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、車載の発電機等、エンジンの自動停止中に他の補機を作動させるように設定された車両にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
10 エンジン
15 コンプレッサ
60 シフト切換装置
61 シフトポジションセンサ
63 アクセルセンサ
65 ブレーキスイッチ
100 車両の制御装置
111 アイドルストップ制御部
113 シフト位置検出部
115 始動要求検出部
117 エアコン要求判定部
119 遅れ時間設定部