(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】改質燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
F02M 27/02 20060101AFI20230621BHJP
F02M 26/36 20160101ALI20230621BHJP
F02D 19/08 20060101ALI20230621BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20230621BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20230621BHJP
F02B 51/02 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
F02M27/02 J
F02M26/36
F02D19/08 B
B60W40/04
B60W40/06
F02B51/02
(21)【出願番号】P 2019154747
(22)【出願日】2019-08-27
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福富 駿祐
(72)【発明者】
【氏名】犬童 翔太
(72)【発明者】
【氏名】村上 祐貴彦
(72)【発明者】
【氏名】伏見 萌
(72)【発明者】
【氏名】中山 欣也
(72)【発明者】
【氏名】神部 芳幸
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0043404(US,A1)
【文献】特開2014-125980(JP,A)
【文献】特開2016-023546(JP,A)
【文献】特開2007-177672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 27/02
F02M 26/36
F02D 19/08
B60W 40/04
B60W 40/06
F02B 51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気管と排気管とを接続するEGR管に設けられる改質触媒と、
前記改質触媒の前記排気管側、または、前記改質触媒よりも前記排気管側に設けられ、前記改質触媒を加熱する加熱部と、
前記EGR管における前記改質触媒よりも前記排気管側に設けられる燃料供給部と、
車両が通行予定の道路状況および周辺情報のうちのいずれか一方または両方を含む将来情報を取得する情報取得部と、
前記将来情報に基づいて、前記加熱部の出力を制御する加熱制御部と、
を備える改質燃料供給装置。
【請求項2】
前記情報取得部は、前記車両の目的地までの経路を示す経路情報を取得し、取得した前記経路情報に基づいて前記将来情報を取得する請求項
1に記載の改質燃料供給装置。
【請求項3】
前記道路状況には、高速道路を示す情報、道路の傾斜を示す情報、および、渋滞を示す情報のうちいずれか1または複数が含まれ、
前記周辺情報には、外気温を示す情報が含まれる請求項1
または2に記載の改質燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
EGR(Exhaust Gas Recirculation)は、排気ガスの一部を吸気管に還流させるため、エンジンの燃焼室において燃焼温度を低下させることができる。このため、EGRは、窒素酸化物(NOx)の低減やノックの抑制を図ることが可能となる。しかし、EGR率(還流させる排気ガス(EGRガス)の量/吸入空気量)が高いと燃焼が緩慢になり、エンジンの出力(トルク)が抑制されてしまう。
【0003】
そこで、改質触媒で燃料を水素に改質し、改質した水素をEGRガスとともに燃焼室に供給する技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記改質触媒は、活性温度(500℃以上1100℃以下)未満であると燃料を改質できない。したがって、改質触媒を効率よく昇温する技術の開発が希求されている。
【0006】
本発明は、改質触媒を効率よく昇温することが可能な改質燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の改質燃料供給装置は、吸気管と排気管とを接続するEGR管に設けられる改質触媒と、改質触媒の排気管側、または、改質触媒よりも排気管側に設けられ、改質触媒を加熱する加熱部と、EGR管における改質触媒よりも排気管側に設けられる燃料供給部と、車両が通行予定の道路状況および周辺情報のうちのいずれか一方または両方を含む将来情報を取得する情報取得部と、将来情報に基づいて、加熱部の出力を制御する加熱制御部と、を備える。
【0009】
また、情報取得部は、車両の目的地までの経路を示す経路情報を取得し、取得した経路情報に基づいて将来情報を取得してもよい。
【0010】
また、道路状況には、高速道路を示す情報、道路の傾斜を示す情報、および、渋滞を示す情報のうちいずれか1または複数が含まれ、周辺情報には、外気温を示す情報が含まれてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、改質触媒を効率よく昇温することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態にかかるエンジンシステムを説明する図である。
【
図2】実施形態にかかる加熱部の出力制御処理の流れを示す第1のフローチャートである。
【
図3】実施形態にかかる加熱部の出力制御処理の流れを示す第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
[エンジンシステム100]
図1は、本実施形態にかかるエンジンシステム100を説明する図である。なお、
図1中、信号の流れを破線の矢印で示す。
【0015】
図1に示すように、車両に搭載されるエンジンシステム100には、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含むマイクロコンピュータでなるECU(Engine Control Unit)10が設けられる。ECU10によりエンジンE全体が統括制御される。ただし、以下では、本実施形態に関係する構成や処理について詳細に説明し、本実施形態と無関係の構成や処理については説明を省略する。
【0016】
エンジンシステム100を構成するエンジンEは、シリンダブロック102と、クランクケース104と、シリンダヘッド106と、オイルパン110とを含む。クランクケース104は、シリンダブロック102と一体形成されている。シリンダヘッド106は、シリンダブロック102におけるクランクケース104とは反対側に接合される。オイルパン110は、クランクケース104におけるシリンダブロック102とは反対側に接合される。
【0017】
シリンダブロック102には、複数のシリンダボア112が形成されている。複数のシリンダボア112において、それぞれピストン114が摺動可能にコネクティングロッド116に支持されている。そして、エンジンEでは、シリンダボア112と、シリンダヘッド106と、ピストン114の冠面とによって囲まれた空間が燃焼室118として形成される。
【0018】
また、エンジンEでは、クランクケース104およびオイルパン110に囲まれた空間がクランク室120として形成される。クランク室120内には、クランクシャフト122が回転可能に支持されており、ピストン114がコネクティングロッド116を介してクランクシャフト122に連結される。
【0019】
シリンダヘッド106には、吸気ポート124および排気ポート126が燃焼室118に連通するように設けられる。吸気ポート124と燃焼室118との間には、吸気弁128の先端(傘部)が位置し、排気ポート126と燃焼室118との間には、排気弁130の先端(傘部)が位置している。
【0020】
また、シリンダヘッド106および不図示のヘッドカバーに囲まれた空間には、吸気用カム134a、ロッカーアーム134b、排気用カム136a、および、ロッカーアーム136bが設けられる。吸気弁128は、ロッカーアーム134bを介して、吸気用カムシャフトに固定された吸気用カム134aが当接されている。吸気弁128は、吸気用カムシャフトの回転に伴って、軸方向に移動し、吸気ポート124と燃焼室118との間を開閉する。排気弁130は、ロッカーアーム136bを介して、排気用カムシャフトに固定された排気用カム136aが当接されている。排気弁130は、排気用カムシャフトの回転に伴って、軸方向に移動し、排気ポート126と燃焼室118との間を開閉する。
なお、吸気用カムシャフトおよび排気用カムシャフトは、不図示のベルトを介してクランクシャフト122に接続されており、クランクシャフト122の回転に伴って回転する。
【0021】
吸気ポート124の上流側には、吸気マニホールドを含む吸気管140が連通される。吸気管140内には、スロットルバルブ142、および、スロットルバルブ142より上流側にエアクリーナ144が設けられる。スロットルバルブ142は、アクセル(図示せず)の開度に応じてアクチュエータにより開閉駆動される。エアクリーナ144にて浄化された空気は、吸気管140、吸気ポート124を通じて燃焼室118に吸入される。
【0022】
シリンダヘッド106には、燃料噴射口が燃焼室118に開口するようにインジェクタ150が設けられるとともに、先端が燃焼室118内に位置するように点火プラグ152が設けられる。インジェクタ150から燃焼室118に噴射された燃料は、吸気ポート124から燃焼室118に供給された空気と混ざり混合気となる。そして、所定のタイミングで点火プラグ152が点火され、燃焼室118内で生成された混合気が燃焼される。かかる燃焼により、ピストン114が往復運動を行い、その往復運動が、コネクティングロッド116を通じてクランクシャフト122の回転運動に変換される。
【0023】
排気ポート126の下流側には、排気マニホールドを含む排気管160が連通される。排気管160内には、浄化触媒162が設けられる。浄化触媒162は、例えば、三元触媒(TWC:Three-Way Catalyst)、および、NOx吸蔵還元触媒(LNT:Lean NOx Trap)を含む。
【0024】
三元触媒は、例えば、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の触媒成分を含む。三元触媒は、排気ポート126から排出された排気ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を浄化(除去)する。NOx吸蔵還元触媒は、三元触媒で除去しきれなかったNOxを一旦吸蔵し、吸蔵したNOxを所定のタイミングで還元(浄化)する。浄化触媒162によって浄化された排気ガスは、マフラ164を通じて外部に排気される。
【0025】
EGR管170は、排気管160における、浄化触媒162の上流側と、吸気管140におけるスロットルバルブ142の下流側とに接続される。EGR管170は、排気管160を流通する排気ガスの一部を吸気管140に還流させる(以下、還流させた排気ガスを「EGRガス」と称する)。
【0026】
EGR管170には、EGRクーラ172が設けられており、EGRクーラ172で冷却されたEGRガスは、吸気管140、吸気ポート124を通じて燃焼室118に還流する。EGRバルブ174は、EGR管170におけるEGRクーラ172の下流側に設けられる。EGRバルブ174は、EGR管170を開閉して流路幅を調整することで、EGR管170を流れるEGRガスの流量を制御する。EGR管170を介して吸気管140に流入したEGRガスは、スロットルバルブ142を通過した新気とともに燃焼室118に供給される。
【0027】
また、エンジンシステム100には、吸入空気量センサ180、スロットル開度センサ182、クランク角センサ184、アクセル開度センサ186が設けられる。
【0028】
吸入空気量センサ180は、吸気管140におけるエアクリーナ144とスロットルバルブ142との間に設けられており、エンジンEに流入する吸入空気量を検出する。スロットル開度センサ182は、スロットルバルブ142の開度を検出する。クランク角センサ184は、クランクシャフト122のクランク角を検出する。アクセル開度センサ186は、アクセル(図示せず)の開度を検出する。
【0029】
吸入空気量センサ180、スロットル開度センサ182、クランク角センサ184、および、アクセル開度センサ186は、ECU10に接続されており、検出値を示す信号をECU10に出力する。
【0030】
ECU10は、吸入空気量センサ180、スロットル開度センサ182、クランク角センサ184、および、アクセル開度センサ186から出力された信号を取得してエンジンEを制御する。ECU10は、エンジンEを制御する際、信号取得部12、目標値導出部14、空気量決定部16、スロットル開度決定部18、噴射量導出部20、点火時期決定部22、駆動制御部24、バルブ制御部26として機能する。
【0031】
信号取得部12は、吸入空気量センサ180、スロットル開度センサ182、クランク角センサ184、および、アクセル開度センサ186が検出した値を示す信号を取得する。目標値導出部14は、クランク角センサ184から取得したクランク角を示す信号に基づいてエンジンEの回転数(クランクシャフト122の回転数)を導出する。また、目標値導出部14は、導出したエンジンEの回転数、および、アクセル開度センサ186から取得したアクセル開度を示す信号に基づき、目標エンジン回転数および目標トルクを導出する。
【0032】
空気量決定部16は、目標値導出部14により導出された目標エンジン回転数および目標トルクに基づいて、各燃焼室118に供給する目標空気量を決定する。スロットル開度決定部18は、空気量決定部16により決定された各燃焼室118の目標空気量の合計量を導出し、合計量の空気を外部から吸気するための目標スロットル開度を決定する。
【0033】
噴射量導出部20は、空気量決定部16により決定された燃焼室118の目標空気量(エンジン負荷)に基づいて、各燃焼室118に供給する燃料の目標噴射量を決定する。また、噴射量導出部20は、決定した目標噴射量の燃料をインジェクタ150から噴射させるために、クランク角センサ184により検出されるクランク角を示す信号に基づいて、インジェクタ150の目標噴射時期および目標噴射期間を決定する。
【0034】
点火時期決定部22は、目標値導出部14により導出された目標エンジン回転数、および、クランク角センサ184により検出されるクランク角を示す信号に基づいて、各燃焼室118での点火プラグ152の目標点火時期を決定する。
【0035】
駆動制御部24は、スロットル開度決定部18により決定された目標スロットル開度でスロットルバルブ142が開口するように不図示のアクチュエータを駆動させる。また、駆動制御部24は、噴射量導出部20により決定された目標噴射時期および目標噴射期間でインジェクタ150を駆動することで、インジェクタ150から目標噴射量の燃料を噴射させる。また、駆動制御部24は、点火時期決定部22により決定された目標点火時期で点火プラグ152を点火させる。
【0036】
バルブ制御部26は、エンジンEの回転数およびエンジン負荷に応じて、不図示のアクチュエータを駆動させ、EGRバルブ174を開閉制御する。具体的に説明すると、不図示のメモリは、エンジンEの回転数およびエンジン負荷と、EGRバルブ174の開度とが関連付けられたEGRマップを保持しており、バルブ制御部26は、EGRマップを参照して、EGRバルブ174の開度を決定する。そして、バルブ制御部26は、決定した開度となるように、EGRバルブ174を開閉制御する。
【0037】
このように、EGRガスを燃焼室118に還流させることにより、燃焼室118内の酸素濃度を低下させることができ、燃焼温度を低減することが可能となる。これにより、燃焼室118内における窒素酸化物の生成およびノックを抑制することができ、また、燃費を向上させることが可能となる。
【0038】
しかし、EGR率が高いと、燃焼室118において燃焼が緩慢になり、エンジンEの出力(トルク)が抑制されてしまう。そこで、本実施形態のエンジンシステム100は、改質燃料供給装置200を備える。以下、改質燃料供給装置200の具体的な構成について説明する。
【0039】
[改質燃料供給装置200]
改質燃料供給装置200は、改質触媒210と、加熱部220と、燃料供給部230と、改質制御部240とを含む。
【0040】
改質触媒210は、EGR管170におけるEGRクーラ172の上流側に設けられる。換言すれば、改質触媒210は、EGR管170における排気管160との接続箇所と、EGRクーラ172との間に設けられる。改質触媒210は、下記式(1)に示す燃料(炭化水素)の水蒸気改質反応を促進する。
CnHm + nH2O → nCO + (m/2+n)H2 …式(1)
改質触媒210は、例えば、ニッケル(Ni)系の触媒(例えば、ニッケル、酸化ニッケル)である。
【0041】
加熱部220は、EGR管170における改質触媒210よりも排気管160側に設けられる。加熱部220は、EGR管170における改質触媒210よりも上流側を通過する排気ガスを加熱する。したがって、加熱部220によって加熱された排気ガスによって改質触媒210が加熱される。加熱部220は、例えば、電気ヒータである。
【0042】
燃料供給部230は、EGR管における改質触媒210よりも排気管160側に設けられ、改質触媒210よりも上流側に燃料を供給する。本実施形態において、燃料供給部230は、EGR管170における排気管160との接続箇所と、加熱部220との間に燃料を供給する。
【0043】
改質制御部240は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。改質制御部240は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。改質制御部240は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して改質燃料供給装置200全体を管理および制御する。
【0044】
本実施形態において、改質制御部240は、情報取得部242、加熱制御部244、燃料制御部246として機能する。
【0045】
情報取得部242は、経路情報および将来情報を取得する。経路情報は、車両の目的地までの経路を示す情報である。将来情報は、車両が通行予定の道路状況および周辺情報のうちのいずれか一方または両方を含む。道路状況には、高速情報、傾斜情報、および、渋滞情報が含まれる。高速情報は、高速道路を示す情報である。傾斜情報は、道路の傾斜を示す情報である。渋滞情報は、渋滞を示す情報である。また、周辺情報には、外気温を示す情報(以下、「外気温情報」と称する)が含まれる。
【0046】
本実施形態において、情報取得部242は、車両に搭載されたカーナビゲーションシステムと通信を確立し、経路情報、および、渋滞情報を取得する。なお、情報取得部242は、車車間通信によって渋滞情報を取得してもよい。そして、情報取得部242は、経路情報に基づき、高速情報および傾斜情報を取得する。
【0047】
また、情報取得部242は、気象予報情報を保持する外部の気象情報サーバと通信を確立し、気象予報情報を取得する。気象予報情報は、車両の目的地までの経路の気温(外気温)、天気、気圧、風向、風速、湿度等の大気の状態の予測値を示す情報である。そして、情報取得部242は、経路情報および気象予報情報に基づき、外気温情報を取得する。
【0048】
加熱制御部244は、情報取得部242が取得した将来情報に基づいて、加熱部220の出力を制御する。加熱制御部244による加熱部220の出力制御処理については、後に詳述する。
【0049】
燃料制御部246は、改質触媒210の温度および所定の改質条件に基づいて、燃料供給部230を制御する。本実施形態において、燃料制御部246は、改質触媒210の温度が活性温度(例えば、500℃以上1100℃以下の所定の温度範囲)以上であり、かつ、改質条件が成立した場合に、燃料供給部230を制御して、EGR管170に燃料を供給する。改質条件は、エンジンEの要求トルクが所定値以上であることであり、例えば、車両が所定速度(例えば、80km/h)以上で走行(例えば高速道路を走行)する場合、および、車両が所定の傾斜(角度)以上の上り坂を走行する場合のいずれか一方または両方において成立する。
【0050】
続いて、加熱制御部244による加熱部220の出力制御処理について説明する。
図2、
図3は、本実施形態にかかる加熱部220の出力制御処理の流れを示すフローチャートである。また、本実施形態において、所定の時間間隔毎に生じる割込によって出力制御処理が繰り返し遂行される。
【0051】
図2、
図3に示すように、出力制御処理は、情報取得処理S110、上り坂判定処理S120、渋滞判定処理S130、第1制御処理S140、第2制御処理S150、高速判定処理S160、渋滞判定処理S170、第3制御処理S180、第2制御処理S190、停止処理S200を含む。以下、各処理について詳述する。
【0052】
[情報取得処理S110]
情報取得部242は、経路情報を取得する。そして、情報取得部242は、所定時間経過後に車両が位置する箇所の高速情報(将来情報)、傾斜情報(将来情報)、渋滞情報(将来情報)、および、外気温情報(将来情報)を取得する。所定時間は、加熱部220によって改質触媒210を活性温度範囲(500℃以上1100℃以下の所定の温度範囲)まで昇温可能な時間に基づいて予め設定されており、例えば、10分以上20分以下である。
【0053】
また、情報取得部242は、現在の高速情報、傾斜情報、および、渋滞情報を取得する。
【0054】
[上り坂判定処理S120]
加熱制御部244は、情報取得処理S110で取得した傾斜情報に基づき、所定時間経過後に車両が所定の傾斜以上の上り坂(以下、単に「上り坂」と称する)の走行を開始するか、または、現在上り坂を走行中であるかを判定する。その結果、所定時間経過後に上り坂の走行を開始する、または、現在上り坂を走行中であると判定した場合(S120におけるYES)、加熱制御部244は、渋滞判定処理S130に処理を移す。一方、所定時間経過後に上り坂の走行を開始しない、かつ、現在上り坂を走行中ではないと判定した場合(S120におけるNO)、加熱制御部244は、
図3に示す高速判定処理S160に処理を移す。
【0055】
[渋滞判定処理S130]
加熱制御部244は、情報取得処理S110で取得した渋滞情報に基づき、所定時間経過後に車両が渋滞に巻き込まれるか、または、現在渋滞中であるかを判定する。その結果、所定時間経過後に車両が渋滞に巻き込まれる、または、現在渋滞中であると判定した場合(S130におけるYES)、加熱制御部244は、第2制御処理S150に処理を移す。一方、所定時間経過後に車両は渋滞に巻き込まれない、かつ、現在渋滞中ではないと判定した場合(S130におけるNO)、加熱制御部244は、第1制御処理S140に処理を移す。
【0056】
[第1制御処理S140]
加熱制御部244は、情報取得処理S110で取得した、所定時間経過後に通過する道路の外気温情報に基づき、加熱部220の温度(改質触媒210の温度)が第1目標温度となるように加熱部220の出力を制御して、当該出力制御処理を終了する。第1目標温度は、改質触媒210の活性温度範囲内の所定の温度である。第1目標温度は、上り坂を走行するために必要なトルク(要求トルク)と、所定時間経過後に通過する道路の外気温の予測値(吸気温度の予測値)に基づいて決定される。例えば、外気温の予測値が相対的に高い場合、第1目標温度は相対的に低くなり、外気温の予測値が相対的に低い場合、第1目標温度は相対的に高くなる。
【0057】
[第2制御処理S150]
加熱制御部244は、加熱部220の温度が第2目標温度となるように加熱部220の出力を制御して、当該出力制御処理を終了する。第2目標温度は、第1目標温度および後述する第3目標温度よりも低い温度である。第2目標温度は、改質触媒210の活性温度範囲の下限値よりも低い温度である。
【0058】
[高速判定処理S160]
図3に示すように、加熱制御部244は、情報取得処理S110で取得した高速情報に基づき、所定時間経過後に車両が高速道路の走行(所定速度以上での走行)を開始するか、または、現在高速道路を走行中であるかを判定する。その結果、所定時間経過後に高速道路の走行を開始する、または、現在高速道路を走行中であると判定した場合(S160におけるYES)、加熱制御部244は、渋滞判定処理S170に処理を移す。一方、所定時間経過後に高速道路の走行を開始しない、かつ、現在高速道路を走行中ではないと判定した場合(S160におけるNO)、加熱制御部244は、停止処理S200に処理を移す。
【0059】
[渋滞判定処理S170]
加熱制御部244は、情報取得処理S110で取得した渋滞情報に基づき、所定時間経過後に車両が渋滞に巻き込まれるか、または、現在渋滞中であるかを判定する。その結果、所定時間経過後に車両が渋滞に巻き込まれる、または、現在渋滞中であると判定した場合(S170におけるYES)、加熱制御部244は、第2制御処理S190に処理を移す。一方、所定時間経過後に車両は渋滞に巻き込まれない、かつ、現在渋滞中ではないと判定した場合(S170におけるNO)、加熱制御部244は、第3制御処理S180に処理を移す。
【0060】
[第3制御処理S180]
加熱制御部244は、情報取得処理S110で取得した、所定時間経過後に通過する道路の外気温情報に基づき、加熱部220の温度(改質触媒210の温度)が第3目標温度となるように加熱部220の出力を制御する。第3目標温度は、改質触媒210の活性温度範囲内の所定の温度である。第3目標温度は、高速道路を走行するために必要なトルク(要求トルク)と、所定時間経過後に通過する道路の外気温の予測値(吸気温度の予測値)に基づいて決定される。第1目標温度と同様に、外気温の予測値が相対的に高い場合、第3目標温度は相対的に低くなり、外気温の予測値が相対的に低い場合、第3目標温度は相対的に高くなる。なお、本実施形態において、第3目標温度は、第1目標温度未満である。
【0061】
[第2制御処理S190]
加熱制御部244は、加熱部220の温度が第2目標温度となるように加熱部220の出力を制御する。
【0062】
[停止処理S200]
加熱制御部244は、加熱部220が駆動していれば停止する。また、加熱制御部244は、加熱部220が停止していれば、停止状態を維持する。
【0063】
以上説明したように、改質燃料供給装置200は、加熱部220を備える。したがって、改質燃料供給装置200は、改質触媒210を効率よく昇温することができる。また、改質燃料供給装置200は、改質触媒210、加熱部220、および、燃料供給部230を備える。これにより、改質燃料供給装置200は、EGRガスに含まれる水蒸気で燃料を改質し水素を生成して、燃焼室118に供給することができる。これにより、改質燃料供給装置200は、EGR率が高くても、燃焼速度の速い水素を燃焼室118に供給することで、燃焼を改善し、エンジンEの出力を向上させることが可能となる。
【0064】
また、改質燃料供給装置200の加熱部220は、改質触媒210よりも排気管160側を加熱する。このため、改質燃料供給装置200は、加熱部220を小型化することができ、加熱部220の消費電力を低減することができる。
【0065】
ただし、改質触媒210よりも排気管160側(改質触媒210の上流側)のみを加熱する加熱部220は、改質触媒210全体(改質触媒210の上流側から下流側まで)を活性温度範囲内まで昇温するためには、ある程度の時間を要する。そこで、改質燃料供給装置200は、情報取得部242、および、加熱制御部244を備える。これにより、改質燃料供給装置200は、車両が通行予定の道路状況(高速道路を走行するか、上り坂を走行するか、渋滞に巻き込まれるか)および車両が通行予定の道路の外気温を予測し、これに基づいて、改質触媒210を事前に暖機することができる。したがって、改質燃料供給装置200は、エンジンEへの水素の供給が必要となった場合に、改質触媒210全体を活性温度範囲内に到達させておくことができ、直ちに燃料を水素に改質することが可能となる。
【0066】
また、改質燃料供給装置200は、外気温の予測値に基づいて、加熱部220による改質触媒210の目標温度を調整する(第1制御処理S140、第3制御処理S180)。外気温が低い場合、つまり、吸気温度が低い場合、空気(酸素)の密度(単位体積当たりの空気の割合)が大きくなる。したがって、同一の空燃比で燃焼させる場合、吸気温度が低いと、吸気温度が高い場合と比較して、燃焼室118に導かれる吸気量が少なくなる。そうすると、燃焼室118において、燃料が燃焼しづらくなる。このため、吸気温度が低い場合、燃焼室118において燃焼を安定させるためには、相対的に多くの水素を燃焼室118に供給する必要がある。
【0067】
そこで、上記したように、改質燃料供給装置200は、外気温の予測値が相対的に高い場合、加熱部220の目標温度を相対的に低くし、外気温の予測値が相対的に低い場合、加熱部220の目標温度を相対的に高くする(第1制御処理S140、第3制御処理S180)。改質触媒210は、温度が高いほど、燃料から水素への改質率が高くなる。このため、改質燃料供給装置200は、外気温の予測値が相対的に低い場合、加熱部220の目標温度を相対的に高くすることにより、相対的に多くの水素を燃焼室118に供給することができる。また、改質燃料供給装置200は、外気温の予測値が相対的に高い場合、加熱部220の目標温度を相対的に低くすることにより、加熱部220の消費電力を低減しつつ、改質触媒210の劣化を抑制することが可能となる。
【0068】
また、改質燃料供給装置200は、所定時間経過後に車両が高速道路または上り坂を走行する場合であっても、渋滞を予測した場合(渋滞判定処理S130、S170における渋滞ありでのYES)、加熱部220を第2目標温度に低下させる(第2制御処理S150、S190)。これにより、改質燃料供給装置200は、加熱部220の消費電力を低減することが可能となる。
【0069】
また、改質燃料供給装置200は、所定時間経過後に車両が高速道路または上り坂を走行する場合であっても、現在渋滞中である場合には、加熱部220の出力を第2目標温度に維持し(第2制御処理S150、S190)、渋滞が終了したら(渋滞判定処理S130、S170におけるNO)、加熱部220の出力を増加させる(第1制御処理S140、第3制御処理S180)。これにより、改質燃料供給装置200は、渋滞中において加熱部220の出力を不要に増加させることなく、所定時間経過後のために改質触媒210を暖機することが可能となる。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0071】
なお、上記実施形態において、加熱部220が、改質触媒210よりも排気管160側に設けられる場合を例に挙げた。しかし、加熱部220の設置位置(改質触媒210の加熱位置)に限定はない。加熱部220は、改質触媒210自体の排気管160側に設けられてもよい。また、加熱部220は、改質触媒210自体の中央に設けられてもよいし、改質触媒210全体に亘って設けられてもよい。
【0072】
また、上記実施形態において、道路状況が、高速情報、傾斜情報、および、渋滞情報を含む場合を例に挙げた。しかし、道路状況は、高速情報、傾斜情報、および、渋滞情報のうち、いずれか1を少なくとも含んでいればよい。また、道路状況は、路面の状態を示す情報(例えば、雪道であるか否かを示す情報)を含んでもよい。同様に、上記実施形態において、周辺情報が、外気温情報を含む場合を例に挙げた。しかし、周辺情報は、湿度を示す情報を含んでもよい。
【0073】
また、上記実施形態において、情報取得部242が経路情報を取得する場合を例に挙げた。しかし、情報取得部242は、少なくとも将来情報を取得すればよく、経路情報を取得せずともよい。例えば、情報取得部242は、現在地を示す情報に基づいて、将来情報を取得してもよい。
【0074】
また、上記実施形態において、渋滞判定処理S130、S170におけるNOである場合に、第2制御処理S150、S190を遂行する場合を例に挙げた。しかし、加熱制御部244は、渋滞判定処理S130、S170におけるNOである場合に、加熱部220を停止してもよい。
【0075】
また、上記実施形態において、第1目標温度が、第3目標温度よりも高い場合を例に挙げた。しかし、第1目標温度は、第3目標温度よりも低くてもよいし、第3目標温度と等しくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、改質燃料供給装置に利用できる。
【符号の説明】
【0077】
200 改質燃料供給装置
210 改質触媒
220 加熱部
230 燃料供給部
242 情報取得部
244 加熱制御部