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特許7299981塊状マイクロドットを用いたデジタルハーフトーン化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】塊状マイクロドットを用いたデジタルハーフトーン化
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/405 20060101AFI20230621BHJP
   B41M 1/04 20060101ALI20230621BHJP
   B41M 1/06 20060101ALI20230621BHJP
   B41C 1/00 20060101ALI20230621BHJP
   B41C 1/10 20060101ALI20230621BHJP
   B41N 1/14 20060101ALI20230621BHJP
   B41N 1/00 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
H04N1/405 510Z
B41M1/04
B41M1/06
B41C1/00
B41C1/10
B41N1/14
B41N1/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021531178
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2019061087
(87)【国際公開番号】W WO2020030308
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】18188424.8
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/079011
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522266162
【氏名又は名称】アグファ・オフセット・ビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルテルス,ルドルフ
【審査官】野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06538772(US,B1)
【文献】欧州特許出願公開第01684499(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/405
B41M 1/04
B41M 1/06
B41C 1/00
B41C 1/10
B41N 1/14
B41N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続トーン画像を印刷機で再現する方法であって:
(i)連続トーン画像を、画像ピクセルおよび非画像ピクセルの格子からなる規則的に敷かれたハーフトーンセルを含んでなるハーフトーンラスター画像に変換することによりデジタルハーフトーン化し;
(ii)ハーフトーンラスター画像を印刷版原版上に露出し;
(iii)前記原版を現像し、これにより印刷版を得;
(iv)印刷版を印刷機に載せ;
(v)印刷版にインキを供給し、そしてインキを印刷版から基材に移す;
工程を含んでなり、
工程(iii)は工程(ii)の代わりに工程(iv)の後に行うことができ、
工程(i)が、連続トーン画像を、1つの閾値アレイにマップされるセルにサンプリングすることにより行われ、そしてラスター画像中のハーフトーンセルのうちの少なくとも部分が2以上の画像塊を含んでなり、画像塊は互いに離れた4より多い隣接画像ピクセ
ルの群と定義されることを特徴とし、
前記部分が、50%未満の相対画像密度を有する全てのハーフトーンセルの少なくとも 前記部分のハーフトーンセルが、少なくとも4つの画像塊を含んでなり、
前記部分のハーフトーンセル中の画像塊が、ループまたはスパイラルを表す路に沿って配列されている、
前記方法。
【請求項2】
前記部分のハーフトーンセルが、ハーフトーンセル全体として表される相対画像密度の少なくとも2倍である相対画像密度を表す1/4区分を有する請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、特にリソグラフ平版またはフレキソグラフの印刷機による画像の印刷のために用いられるデジタルハーフトーン化(digital halftoning:デジタル階調表現)法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷機およびデジタルプリンターは、ディザリングまたはスクリーニングとも呼ばれるデジタルハーフトーン化を介する以外に特定の画像領域に適用されるインキまたはトナーの量を変えることができない。二成分デジタルハーフトーン化は、ピクセル(「マイクロドット」とも呼ばれる)からなるハーフトーン(halftone)ラスター画像(「スクリーン」とも呼ばれる)により連続トーン画像(連続階調画像)の幻影を表現する(rendering)方法であり、ピクセルは「オン」(画像ピクセル)または「オフ」(非画像ピクセル)のいずれかであり、すなわちそれぞれ画像の画像領域および背景領域に対応する。
【0003】
これらのピクセルは一般に格子(grid)として所謂ハーフトーンセル(halftone cell)中に配列される。ハーフトーンセル中の画像ピクセル 対 非画像ピクセルの比が相対画像密度(relative image density)を定め、またハーフトーンセルのドット率も定める。ピクセルの半分が画像ピクセルであり、そして半分が非画像ピクセルであるハーフトーンセルは、50%の相対画像密度を有する。画像の明部(白色領域)を表すハーフトーンセルは、50%未満の画像密度を有し、そして画像の暗部(shadows:より暗い領域)を有するハーフトーンセルは、50%より高い画像密度を有する。
【0004】
デジタルハーフトーン化は周知の方法であり、それは例えば非特許文献1で説明されており、その中の「塊状ドット規則化ディザ(clustered-dot ordered dither)」についての5章は、連続トーン画像を表現するための閾値アレイ(threshold array)の使用を含む本発明のための背景技術である。デジタルハーフトーン化の別の概要は非特許文献2に開示されており、そこでも多段階(multilevel)デジタルハーフトーン化が説明されている。
【0005】
最も広く使用されているスクリーニング技術は、所謂、振幅変調(AM)スクリーンを作成する。AMスクリーンはハーフトーンセルからなり、ここで画像ピクセルが1つの塊状(cluster)に分類され、これは前記のマイクロドット(=ピクセル)と混同しないように「ハーフトーンドット(halftone dot,網点)」または「AMドット」と呼ばれることが多い。AMスクリーニングでは、ドット塊のサイズを成長させることにより、より高い相対画像密度が得られる。例えば印刷機またはデジタルインキジェットプリンターを用いてAM画像を印刷する場合、各AMドットはさらにブロブと呼ばれるある量のインキに対応し、それは印刷されるべき基材上に押されるかまたは噴射され、乾燥および/または硬化される。特に多数のインキ(色の選択)が互いの上に印刷されることになる場合、ウェットオンウェットであってもまたはウェットオン(半)ドライであっても、ブロブの厚さ、ならびに基材上の局所的(脱)濡れおよび/または基材によるインキの吸収により定まるインキの広がりが、印刷されるブロブを局所的に制御不能とする。その結果、印刷される画像はノイズを表す恐れを生じ、そしてこの問題は基材の性質に依存することが多い。
【0006】
その様な問題はFM(フリクエンシー変調)スクリーニングのような他のスクリーニング法または誤差拡散を含む方法により対処することができる。これらの方法の両方において、マイクロドットは塊に分類されるのではなく、多少なりとも画像全体に不規則に広がる。局所的画像密度はマイクロドットのフリクエンシー(frequency:頻度,周波数)により変調される。しかしながら、これらの方法もまた印刷(print)の安定性、滑らかさが劣る平坦トーン(poor smoothness of flat tones)、より高いドットゲインおよび長い印刷運転における印刷版のより高い摩耗のような他の問題を特徴とする。
【0007】
AMとFMの両方の利点を得るために両方法を組み合わせたハイブリッドスクリーニング法が利用可能である。しかしながら前記スクリーニング法は連続トーン画像を表現するための複数の閾値アレイの使用を含み、それはこれらの複数の閾値アレイ、例えば明部におけるFM法を用いる閾値アレイ、中間トーンにおけるAM法を用いる閾値アレイおよび暗部におけるFM法を用いる別の閾値アレイを保存するためのより多くのメモリスペースを必要とする。さらに、1つの閾値アレイから他への遷移は印刷画像における密度ジャンプ(density jump)を生む場合があり、それにより前記スクリーニング法のキャリブレーションもAMおよびFMより長いサービス時間(service time)を要することになる。
【0008】
特許文献1は印刷版またはデジタル印刷機上の中間画像担体のAMハーフトーン領域中のインキブロブの厚さを制御する方法を開示している。この方法は規則的に敷かれた(tiled)ハーフトーンセルのラスター画像を生み、ここで画像ピクセルが配列されて同心環を形成し、これは非画像ピクセルの領域を囲む。結果としてインキがセル内で広がり得る程度は限られた状態で保たれ、なぜなら囲まれた部分が満たされるとすぐにドット内におけるインキのさらなる広がりが不可能になるからである。
【0009】
後者の問題は2018年10月23日に出願された同時係属出願である特許文献2により解決され、そしてこの明細書は複数のスパイラルハーフトーンドットを含んでなるハーフトーンラスター画像を開示し、ここで前記スパイラルハーフトーンドットは
(i)第一の円弧としてまたは一緒になって第一のスパイラルを表す複数の円弧として配置される画像ピクセルおよび
(ii)第二の円弧としてまたは一緒になって第二のスパイラルを表す複数の円弧として配置される非画像ピクセルを含んでなる。特許文献1の同心環と比べて、スパイラルドットはより長い、好ましくは第二円弧または第二スパイラルにより規定される開放型のインキチャンネルを含み、これはインキのより良い広がりを可能にする。
【0010】
特許文献3は、従来のハーフトーンドットがドット機能により分かれた塊に分割され、そしてピクセルが塊機能により塊内でオンまたはオフに切り替わるデジタルハーフトーンスクリーニング法を開示する。この方法は複雑な数学が関与し、したがって限られたデーターメモリおよび/または処理力のプリプレスシステムの広い設置基盤に実装することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国出願公開第2007/0002384号
【文献】国際出願第PCT/EP2018/079011号
【文献】欧州特許第346116号
【非特許文献】
【0012】
【文献】“Digital Halftoning”,MI Press,1987,ISBN 0-262-21009-6
【文献】“Recent trends in digital halftoning”,Proc.SPIE 2949,Imaging Sciences and Display Technologies,(7 February 1997);doi:10.1117/12.266335
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、同時係属出願である特許文献2に開示されているスパイラルドットを含んでなるラスター画像と類似の利点を有するハーフトーンラスター画像により印刷機で連続トーン画像を再現する方法、特にリソグラフまたはフレキソグラフの印刷法でのインキの節約を可能とし、そして限られた量のメモリおよび/または処理力のプリプレスコンピューターシステムの広い設置基盤に実装することができる方法を提供することである。
【0014】
この問題は請求項1に定める方法により解決され、ここ1つの閾値アレイが連続トーン画像を表現するために使用され、すなわち連続トーン画像を、画像ピクセルおよび非画像ピクセルの格子からなる規則的に敷かれたハーフトーンセルを含んでなるハーフトーンラスター画像に変換する。ラスター画像が印刷版原版のコーティング上で露出されると、画像ピクセルは版の印刷(インキ受容)領域に対応し、一方、非画像ピクセルは版の非印刷領域に対応する。ハーフトーンセルの少なくとも一部分で、画像ピクセルは多数の画像塊(image cluster)として配列され、これは本明細書では互いに離れた4より多い隣接ピクセルの群と定義される。画像塊は、画像ピクセルが1つの塊に分類される通常のスクリーンで用いられるインキより少ないインキで同じ画像密度の印刷画が得られるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は図の上半分で6つのハーフトーンセルを示し、それぞれが16×16格子のピクセルからなる。これらのハーフトーンセルは、本発明の方法により同じ閾値アレイにより作成された。前記閾値アレイは、図面の下半分に示すマトリックスである。各ハーフトーンセルは、各ハーフトーンセルの下に示すドット率により示されるような別の相対画像密度を表す。画像ピクセルは図面では黒色領域により表され、一方、非画像ピクセルは白色領域により表される。
図2-11】図2図11は各図面で別の閾値アレイが使用されている点だけが図1とは異なる。
図12図12は6つの敷かれたハーフトーンセルを示し、それぞれ3×3画像ピクセルの4群を含んでなる。
図13-14】図13および図14は6つの敷かれたハーフトーンセルを示し、それぞれ図3および図4での70%ハーフトーンセルと同一である。
図15図15は破線A-Cにより表示される3つの画像塊を含んでなるハーフトーンセルを示し;d-hで表示される画像ピクセルは、4より多くの隣接ピクセルの群を形成せず、したがって本発明による画像塊の定義に従わない。
図16図16は図面の上半分では、それぞれ16×16格子のピクセルからなる6つのハーフトーンセルを示し、そして下半分ではこれらのセルを作成するために使用した閾値アレイを示す。アレイの閾値は1から16の範囲であり、1から256の範囲の図1-11での値とは対照的である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好適な態様の説明
【0017】
ラスター画像
本発明の方法で作成されるラスター画像は連続トーン画像(CT)を表現するのに適しており、すなわちそれは印刷コピー上に連続トーン画像(CT)の幻影を作る。この要件は、スクリーンフリクエンシーすなわち最大値を生じる方向で、長さの単位あたり互いに隣り合って配列されるハーフトーンセルの数が、インチ当たり40本の線(LPI;15.7本の線/cm)より高い、より好ましくは60LPI(23.6本の線/cm)より高い、そして最も好ましくは100LPI(39.4本の線/cm)より高いことを意味する。スクリーンフリクエンシーが40LPIより低い場合、ハーフトーンドットは約20cmである読取り距離(reading distance)とも呼ばれる視距離で見えるようになる。そのような低いスクリーン周波数は典型的に芸術的スクリーニングにおいて用いられ、それは個々のドットが裸眼で可視となることが意図されているパターンイラストレーション(patterned illustrations)のような装飾目的のために用いられる。ハーフトーンドットが視距離で明確に見えるラスター画像は、従って本発明の方法に適切ではない。
【0018】
前述のスクリーンフリクエンシーは、ラスター画像に含まれるハーフトーンセルの空間フリクエンシーを定める。前述のように、ハーフトーンセルはその回転が(on its
turn)ピクセルの格子からなり、そして解像度と呼ばれるそれらの空間フリクエンシーはインチ当たりのドット(DPI)またはインチ当たりのピクセル(PPI)として表される。ラスター画像が例えばフィルムまたは印刷版上にスキャンニングレーザーで書かれる場合では、ピクセルはレーザードットとも呼ばれ、そして解像度はインチ当たりの光線の数を指す。本発明の方法で作成されるラスター画像は、好ましくは600DPIより高い、より好ましくは1200DPIより高い解像度を有する。また最高9600DPIのより高い解像度も、例えばセキュリティ機能の印刷に使用することができる。
【0019】
印刷版は単色を転写できるだけなので、本発明の方法で使用されるハーフトーンラスター画像が単色画像であることは明らかであり、これは多色印刷法、例えばCMYK印刷での4原色の1つの色の選択を表すことができる。
【0020】
印刷画像の質は、好ましくは色濃度(colour density)測定で検査される。次いで色濃度値は、ラスター画像を作成するプリプレスコンピューターシステムの入力パラメータとして使用でき、これにより印刷される画像の質が引き続きプレス運転で改善されるように、かつ/または引き続きプレス運転でより多くのインキが節約されるように調整される。
【0021】
ハーフトーンセル
本発明の方法で作成されるラスター画像は、規則的に敷かれたハーフトーンセルを含んでなる。セルは三角、四角または六角格子に沿って敷かれ、そして好ましくは正方格子に沿って敷かれることができる。図13および図14はそれぞれ6つのハーフトーンセルが正方形格子として敷かれている好適態様の例を示す。
【0022】
またハーフトーンセルそれ自体は格子、より詳細にはピクセルの格子からなり、これは画像ピクセルまたは非画像ピクセルであることができる。これらのピクセルは好ましくは規則的な多角形または凸多角形、例えば三角形、正方形、長方形、ひし形または六角形の形を有する。図面は、好適態様の例を示し、ここでハーフトーンセルは正方形ピクセルの格子からなる。
【0023】
本発明の方法で作成されるラスター画像は、2以上の画像塊、すなわち互いに離れた4より多い隣接画像ピクセルの群を有するハーフトーンセルを含んでなる。より好適な態様では、ラスター画像は2より多い画像塊、例えば少なくとも3または4つの画像塊、さらに好ましくは少なくとも5つ、そして最も好ましくは少なくとも6つの画像塊を有するハーフトーンセルを含んでなる。
【0024】
「画像塊」の前記定義では、画像ピクセルはそれらが多角形の少なくとも1つの端を共有する場合、隣接すると考えられる。図15は3つのそのような画像塊を示す:塊Aは7つの隣接画像ピクセルからなり;塊Bは6つの隣接画像ピクセルからなり;そして塊Cは5つの隣接画像ピクセルからなる。画像ピクセルd,eおよびfは別の画像ピクセルに接触しているが、それは正方形の角だけである;これらのピクセルは端を共有していないので、前記定義のような隣接とは考えられない。群hのような4以下の画像ピクセルの群は、前記定義に従い画像塊を構成しない。
【0025】
図12は、本明細書で使用する画像塊の定義のさらなる改善(refinement)を具体的に説明する。ハーフトーンセルが敷かれた場合、1つのハーフトーンセル中の画像ピクセル群は、別のハーフトーンセル中の画像ピクセルの別の群に1もしくは複数の隣接する端で繋がることができる。図12は3aで表示される画像ピクセルの群が3bで表示される群に繋がる例を示す。本発明により、そのような群は別の塊とは見なされるのではなく、一緒に1つの塊を表す。結果として図12に表すハーフトーンセルは、それぞれたった3つの画像塊を含む。
【0026】
同じドット率を表す従来のAMドットとは対照的に、本発明で使用する画像塊は少ないインキで同じ画像密度の印刷画像を得ることができるようにする。この利点の理由は完全に理解されていないが、本発明者は本発明の方法に従い運転するプレスは、同じ原画の従来のAMスクリーンで露出した版を用いて運転するプレスに比べて、有意に少ないインキを消耗することを体系的測定した。FMスクリーンと比べた場合、塊がFMマイクロドットより大きく、したがってプレス上での摩耗の影響を受けにくいため、より長い運転時間を得ることができることが観察された。FMスクリーンは複数の単一画像ピクセルまたは4(2×2)画像ピクセルの群のいずれかからなり、これは本発明で使用する画像塊よりも容易に劣化する。
【0027】
基礎になるメカニズムにより限定されることなく、前記のような塊状化画像ピクセルを有するハーフトーンセルは、同じ相対画像密度を表す従来のAMハーフトーンドットと比べた場合、版のインキ受容領域上に吸着するインキフィルムがより薄い、および/または画像塊間の空(非画像)領域へのインキフィルムのより良い広がりを提供することのいずれかが現在想定されている。インキの節減効果は種々の画像および種々の版で考察されてきた。約10%の節減はよく得られる。インキおよび紙はプリンターの主要な経費であるので、インキの消耗が数パーセント低減しただけでも高い経費節減を表す。印刷される基材に関連してラスター画像の至適化は、例えばハーフトーンセル中の画像塊の数、サイズ、形および/または分布を調整することにより、従来のAMスクリーニングに比べて、10から20%のより一層のインキ節減を導くことができる。
【0028】
インキの消費が少ないことは、例えば迅速な乾燥および/または硬化装置およびオーブンのような乾燥装置によるエネルギー消費の低減から生じる追加の利点を提供する。迅速な乾燥は、コーティングされていないプラスチックホイルの印刷および新聞印刷に特に有利である。またインキのよりよい広がりは、インキの裏移りを減らし、すなわち例えばプレスの送達トレイ内でインキが1つの印刷されたコピーからその上にある別のコピーの裏側に移ることを減らす。プリントスルーとも呼ばれる透け(shine-through)は、これによって画像が基材、例えば新聞の印刷に使用されるような薄い、インキ吸収
基材の裏側から見えるようになるのだが、これも低下する。これら全ての理由により、本発明の方法が完全なプレス、すなわちプレスを1回通れば基材の両側を同時に印刷できるようにするプレスで行われる場合に特に有利となる。
【0029】
好適な態様では、画像塊はハーフトーンセル全体に無作為に分布するのではなく、局所的に集中するので、画像塊は一緒に従来のAMドットを真似し、そして方法はAMスクリーンの利点をできる限り維持する。画像塊は例えばハーフトーンセルの1/4(quarter)画分に集中させることができる。その結果、その1/4画分はハーフトーンセルの他の画分よりも高い相対画像密度を表す。より好ましくは、ハーフトーンセルの1つの1/4画分はハーフトーンセル全体により表される相対画像密度の少なくとも2倍の相対画像密度を有する。図5はそのような配置の一例を表す:セルの中心の周りの8×8ピクセルが濃い線で示される1/4画分を規定し、これはセル全体よりも大変高い画像密度を有する。画像ピクセルのより高い濃度は、セルの中心付近に必ずしも配置される必要はない:図3および図4は画像ピクセルの異なる局所的濃度を示し、しかしこれらはそれぞれ図13および14に示されるように、これらのセルが互いに隣に敷かれた場合、同じハーフトーン画像を表す。
【0030】
本発明で使用されるハーフトーンラスター画像は異なる型のハーフトーンセルの組み合わせ、例えば従来のハーフトーンセル、例えば全ての画像ピクセルが1つの塊に分類されるAMハーフトーンセルと組み合わせた前記のような多数の画像塊を含むハーフトーンセルを含むことができる。画像の1もしくは複数の部分は、FMスクリーンにより表されてもよい。本発明の高度に好適な態様では、画像の明部および中間色、すなわち50%未満の相対画像密度を表す画像中の全てのハーフトーンセルのサブセットは、全部が前記定義の2以上の画像塊を有するハーフトーンセルからなる。別の態様では、画像の明部および中間色を表すハーフトーンセルの一部分だけが2以上の画像塊を含む。該部分はわずか5%でよい。好ましくは該部分は少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、そしてより一層好ましくは少なくとも50%である。
【0031】
本発明の別の好適な態様では、画像塊はループまたはスパイラルを表す路に沿って配列される。ループは正方形、長方形、環または楕円でよい。図10は塊が環の路に沿って配列されたハーフトーンセルを表し、一方、図6-9は、塊がスパイラルの路に沿って配列されたハーフトーンセルを表し、これを今後、「スパイラルドット」と呼ぶ。画像ピクセルおよび塊はインキ受容領域の第1スパイラルを表し、そしてこれにより第1スパイラルの巻き(winding)間の空所により表される非画像ピクセルの第2スパイラルを規定する。理論に拘束されることを望まないが、スパイラルドットから紙シートのような基材上に移されるインキは、第2スパイラルへ流入することができ、これはインキ受容チャンネルとして作用することを想定している。スパイラルドットは、全てのその非画像ピクセルが互いに接しているので、特許文献1の同心環を用いた場合よりも高い程度のインキの広がりが得られるという独自の特徴を有する。画像の中間色および明部では、第2スパイラルは好ましくは開放型であるので、スパイラルドットから出るインキを導くインキチャンネルとして作用することができ:インキが基材上に押される時、インキの部分は第2スパイラルから追い出され、そしてチャンネルの出口で少量のインキが放出されると、印刷した画像の拡大で見えるようになる。開放チャンネルはインキの広がりをさらに可能とし、その結果、より多くのインキの節減、そしてさらに迅速な乾燥を可能にする。同様な効果を図10により表されるハーフトーンセルにより得ることができ、ここで環はインキの吸引を可能にする塊の間にギャップを有する。
【0032】
当業者には、同じ全体的なサイズの異なるスパイラルドットを用いて同じドット被覆率を与え得ることが明らかなはずである:ある厚さの第1スパイラルの巻き1つからなるドットは、より低い厚さの第1スパイラルのより多くの巻きを有するドットと同じ被覆率を
与える。第1スパイラルの厚さは同じドット内で変動してよく、例えばドットの中央が端よりも小さい。スパイラルの巻きは、時計回りまたは反時計回りでよく、そしてこれら両態様を同じラスター画像内で組み合わせることができる。第1スパイラルの出発角度は、ドットの中央で好ましくは画像内の全てのスパイラルドットについて同じか、または乱数生成機により無作為に選択できる。適切なスパイラルドットのさらなる詳細は、2018年10月23日に出願された同時係属出願である特許文献2に開示されている。
【0033】
閾値アレイ
本発明によれば、ラスター画像は単一の閾値アレイにより生成される。閾値マトリックスまたは閾値タイルとも呼ばれることがある閾値アレイによるデジタルハーフトーン化は、当該技術分野で周知である。多色印刷に使用する場合、閾値アレイの数は好ましくは元の連続トーン画像の色チャンネルの数と同じである。閾値アレイを用いたデジタルハーフトーン化は、一般に元の画像が閾値アレイ上にマップされるセルにサンプリングされることを意味する。次に元の画像の局所密度値がアレイ中の各値と比較される(必要ならば、元の画像の密度範囲がアレイの範囲と等しくなるように調整される)。出力ピクセルは、元の密度値が前記ピクセルの閾値よりも低い場合には0に設定される。そうでなければ密度値が閾値に等しいか、またはそれを越えるならば、出力ピクセルは1に設定される。これらの工程が画像の全てのセルについて繰り返される。
【0034】
アレイの寸法、すなわちハーフトーンセル当たりのピクセル数は、画像設定者の解像度および印刷画像に望む質のような様々な因子に依存する可能性がある。アレイは好ましくは正方形(n×n寸法)または長方形(m×n、m>nで)として配列される。図1-6は16×16位置(location)の寸法を有する正方形の閾値アレイの例を表し、ここで各位置は特定範囲の閾値を含む。これらの特定の例で、閾値範囲(1-256)はアレイ中の位置(16×16)の数に等しく;図16に示すような他の態様では、値の範囲は位置の数より低くなる可能性があり、次いで各個別の値がアレイの多数の位置で生じることになる。
【0035】
より高い相対画像密度を作成するために、閾値アレイは画像塊の数および/またはサイズが元の画像の対応する密度と一致して上昇するように設計される。例えば図1は7つの画像塊を用いて25%の相対画像密度を表すセルを示し、そのサイズは上昇する画像密度で成長する。図3は5つの画像塊を用いて10%のセルを示し、ここで塊のサイズおよび数はより高い画像密度で成長する。ハーフトーンセルの画像密度は画像ピクセルを加えることにより成長するが、非画像ピクセルは非画像塊と一緒に維持することが好ましく、これらは互いに離れた隣接する非画像ピクセルの群と定義される。画像の暗部で非画像塊の数をできる限り低く維持することにより、非画像ピクセルが多数の塊に隔離されているか、または分布している時にインキはより高い程度で広がることができる。このように、インキを画像の暗部領域でも節減することができる。
【0036】
スパイラルドットを使用する好適な態様では、相対画像密度は図6に示すように第1スパイラル(これは画像ピクセルを含む)の長さおよび/または厚さの成長により、あるいは第2スパイラルの内側に画像ピクセルを挿入することにより上昇させることができ;あるいはこれら方法の任意の組み合わせにより上昇させることができる。画像の暗部では、図6および9に示すように、第2スパイラル(これは非画像ピクセルを含む)により形成されるインキチャンネルが縮む、および/または薄くなるように、より多くの画像ピクセルがハーフトーンセルに加えられる。
【0037】
印刷版
本発明の方法で使用される印刷版は、ハーフトーンラスター画像を印刷版原版と呼ばれる光-または熱-感受性材料に露出することにより得られる。版の原版は、ポジティブま
たはネガティブ作業であることができる。ポジティブ印刷版原版は、露出および現像後に非露出領域にインキを受容し、そして露出領域にインキが無いコーティングを有する。ネガティブ版はインキを露出領域で受容し、そして非露出領域にはインキは無い。図面に示す画像ピクセルは版のインキ受容領域を定め、そしてこれはそれぞれネガティブまたはポジティブ原版の露出または非露出領域に対応する。
【0038】
本発明の方法で使用される版は、好ましくはリソグラフまたはフレキソグラフの印刷版である。平板印刷版は一般にハーフトーンラスター画像を、走査レーザー、好ましくは紫(violet)または近赤外レーザー、あるいはデジタルミラーデバイス、LCDまたはLEDディスプレイのような別のデジタルで変調する光源により印刷版原版の感光性もしくは感熱性コーティングに露出することにより得られる。露出した原版を適切な現像液で処理した後、本発明のラスター画像を有するリソグラフの印刷版が得られる。次いでその版はリソグラフ印刷機、好ましくはオフセットプレスに載せられることができ、ここでインキが版に供給され、これが次いで印刷されることになる基材に移される。あるいは露出された原版を直接プレスに載せることができ、すなわちいかなる先行する液体処理または他の現像も無く、そして画像の現像はインキおよび/またはプレスの開始に版に供給されるインキおよび/またはインキだめ(fountain)により生じることができる。
【0039】
一般にフレキソグラフィー版は、多くは感光性高分子コーティングと接しているグラフィックフィルムであり得るマスク、あるいは感光性高分子コーティングの上に存在するその場のマスクを介してUVランプを用いた感光性高分子コーティングのUV露出により得られる。マスクは好ましくは、フィルムまたはその場のマスク層上にハーフトーンラスター画像を、走査レーザー、好ましくは近赤外線層により露出することにより得られる。
【0040】
ラスター画像を上に印刷することができる基材は任意の種類のものであることができ、例えばプラスチックフィルムまたは箔、剥離ライナー、編織布、金属、ガラス、皮革、獣皮、綿およびもちろん多様な紙基材(軽量紙、重量紙、コーティングされた紙、コーティングされない紙、板紙、段ボールなど)であることができる。基材は硬質の工作物(rigid work piece)または柔軟性のシート、ロールもしくはスリーブ(sleeve)等でよい。好適な柔軟性材料には例えば紙、透明箔、接着性PVC,シート等を含み、それらは100マイクロメートル未満、そして好ましくは50マイクロメートル未満の厚さを有することができる。好適な硬質基材には例えばハードボード、PVC、カートン、木材またはインキレシーバー(ink-receivers)が含まれ、それらは2センチメートルまで、そしてより好ましくは5センチメートルまでの厚さを有することがある。また基材は柔軟性のウェブ材料(例えば紙、接着性ビニル、生地、PVC、編織布)の場合もある。受容層、例えばインキ受容層は、再現される画像の基材上における優れた接着のために基材上に適用されることができる。
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