(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】ラミネート電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20230621BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20230621BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20230621BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20230621BHJP
H01M 12/06 20060101ALI20230621BHJP
H01M 50/466 20210101ALI20230621BHJP
H01M 4/06 20060101ALI20230621BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230621BHJP
H01M 6/12 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/105
H01M50/463 Z
H01M12/08 K
H01M12/06 A
H01M50/466
H01M4/06 P
H01M4/62 Z
H01M6/12 Z
(21)【出願番号】P 2021554204
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036762
(87)【国際公開番号】W WO2021079695
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2019194505
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】佐多 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】水畑 宏隆
(72)【発明者】
【氏名】北川 知
(72)【発明者】
【氏名】吉田 章人
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195495(JP,A)
【文献】特開2019-145724(JP,A)
【文献】特開2013-069493(JP,A)
【文献】国際公開第2019/203130(WO,A1)
【文献】特開2000-285903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 50/105
H01M 50/463
H01M 12/08
H01M 12/06
H01M 50/466
H01M 4/06
H01M 4/62
H01M 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極およびセパレータを外装部材内で積層配置したラミネート電池であって、
前記外装部材は、第1樹脂フィルムおよび第2樹脂フィルムを貼り合わせて構成されており、
前記セパレータは、前記外装部材内で前記負極と前記正極との間に配置され、
前記セパレータの周縁部が、前記第1樹脂フィル
ムの周縁部に固定され
、
前記正極は、前記第1樹脂フィルムに対向して配置される第1正極と、前記第2樹脂フィルムに対向して配置される第2正極とを含み、
前記負極は、前記第1正極と第2正極の間に配置され、
前記セパレータは、前記負極と前記第1正極との間に配置される第1セパレータと、前記負極と前記第2正極との間に配置される第2セパレータとを含み、
前記第1セパレータの周縁部が前記第1樹脂フィルムの周縁部に固定され、前記第2セパレータの周縁部が前記第2樹脂フィルムの周縁部に固定されていることを特徴とするラミネート電池。
【請求項2】
請求項
1に記載のラミネート電池であって、
前記正極は、酸素還元能を有する触媒層を含む空気極を含むものであり、
前記外装部材は、前記正極との対向側に空気取込口を有しており、
前記正極と前記空気取込口の間に撥水膜が配置されていることを特徴とするラミネート電池。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のラミネート電池であって、
前記正極は、酸素還元能と酸素発生能の両方を有する触媒層を含む空気極を含むものであり、
前記外装部材は、前記正極との対向側に空気取込口を有しており、
前記正極と前記空気取込口の間に撥水膜が配置されていることを特徴とするラミネート電池。
【請求項4】
請求項
1に記載のラミネート電池であって、
前記第1正極は、酸素還元能を有する触媒層を含む空気極であり、
前記第2正極は、酸素発生能を有する触媒層を含む充電極であり、
前記外装部材は、前記第1正極との対向側に空気取込口を有し、前記第2正極との対向側に空気放出口を有しており、
前記第1正極と前記空気取込口との間および前記第2正極と前記空気放出口との間に撥水膜が配置されていることを特徴とするラミネート電池。
【請求項5】
請求項
1に記載のラミネート電池であって、
前記第1正極は、酸素還元能を有する触媒層を含む第1空気極であり、
前記第2正極は、酸素還元能を有する触媒層を含む第2空気極であり、
前記外装部材は、前記第1正極との対向側と前記第2正極との対向側にそれぞれ空気取込口を有しており、
前記第1正極と前記空気取込口との間および前記第2正極と前記空気取込口との間に撥水膜がそれぞれ配置されていることを特徴とするラミネート電池。
【請求項6】
請求項
3から
5の何れか1項に記載のラミネート電池であって、
前記空気取込口の開口面積を含む前記第1樹脂フィルムの面積に対する前記セパレータの面積の比率は、0.55~0.95であることを特徴とするラミネート電池。
【請求項7】
請求項1に記載のラミネート電池であって、
前記セパレータの周縁部において、対向する2端ではそれぞれ第1樹脂フィルムおよび第2樹脂フィルムの両方に固定されており、その他の部分では第2樹脂フィルムと固定されていないことを特徴とするラミネート電池。
【請求項8】
請求項
1、
4および
5の何れか1項に記載のラミネート電池であって、
前記第1セパレータの一部と前記第2セパレータの一部とが固定されていることを特徴とするラミネート電池。
【請求項9】
請求項1から
8の何れか1項に記載のラミネート電池であって、
前記負極は、電解質と前記電解質に分散された負極活物質を含むスラリーと、前記スラリーと接触している集電極とを含むことを特徴とするラミネート電池。
【請求項10】
請求項
1に記載のラミネート電池の製造方法であって、
前記第1樹脂フィルムに前記第1正極を対向させるようにして積層する第1工程と、
前記第1正極の上に前記第1セパレータを積層し、当該第1セパレータの周縁部を前記第1樹脂フィルムの周縁部に溶着する第2工程と、
前記第1セパレータの上に前記負極の集電体を積層する第3工程と、
前記第2樹脂フィルムに前記第2正極を対向させるようにして積層する第4工程と、
前記第2正極の上に前記第2セパレータを積層し、当該第2セパレータの周縁部を前記第2樹脂フィルムの周縁部に溶着する第5工程と、
前記第3工程で得られた積層体と前記第5工程で得られた積層体とを、前記第1セパレータおよび前記第2セパレータが前記負極の集電体を挟んで対向するように積層し、前記第1樹脂フィルムと前記第2樹脂フィルムとを1辺を除く3つの各辺で溶着する第6工程と、
前記第6工程で溶着されていない1辺の開口より、前記負極の負極活物質粒子と電解液とを入れた後、前記開口となっていた辺を溶着する第7工程とを含むことを特徴とするラミネート電池の製造方法。
【請求項11】
請求項
10に記載のラミネート電池の製造方法であって、
前記負極活物質粒子の重量に対して、前記電解液の重量の比が0.3~2.0であることを特徴とするラミネート電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、正極、負極およびセパレータを外装部材内で積層配置したラミネート電池およびその製造方法に関する。
本出願は、2019年10月25日に日本に出願された特願2019-194505号に優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、正極、負極およびセパレータを外装部材内で積層配置した構成(負極と正極との間にセパレータを配置した構成)のラミネート電池が実用化されている。このようなラミネート電池においては、袋状セパレータを負極活物質または正極活物質の収容部として用いるものがある。例えば、特許文献1には、側辺に集電端子接続用タブを有する正極と負極とが積層され、該正極および負極少なくとも一方の電極が袋状セパレータで包装されている角形アルカリ蓄電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
負極活物質として亜鉛などの金属を利用する場合、放電反応により金属が酸化物に酸化する過程で負極活物質の体積変化(膨張)が生じる。このとき、
図9に示すように、負極活物質を含む負極101が袋状セパレータ103に収容されていれば、放電時の負極活物質の体積膨張に追随して袋状セパレータ103が変形する。一方で、正極102は袋状セパレータ103よりも柔軟性に劣るため、袋状セパレータ103の変形に電池の外装部材104が追随できない。その結果、負極101および袋状セパレータ103が
図9の上方に移動するため、負極101と正極103との位置ずれが生じ、袋状セパレータ103と正極102との間に隙間が生じる。
【0005】
こうして生じた隙間に電解液が移動すると、電解液の水位が下がって電解液に濡れない電極(正極102/負極101)部分が生じ、電池容量が減ってしまうといった問題がある。また、当該ラミネート電池が二次電池であれば、電解液に濡れない電極部分が生じると、残りの電極部分(電解液に濡れる領域)に電流が集中する。その結果、充放電サイクル寿命が低下する虞がある。
【0006】
尚、上記問題は、袋状セパレータに負極活物質を収容した場合に顕著に発生するものであるが、必ずしも袋状セパレータの使用が前提となるものではない。例えば、
図10に示すように、外装部材114内で、負極111と正極112とが1枚のセパレータ113を挟んで配置される場合にも同様の課題は存在する。
【0007】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、放電時の負極活物質の膨張に伴う電解液の水位低下を抑制できるラミネート電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示の第1の態様は、正極、負極およびセパレータを外装部材内で積層配置したラミネート電池であって、前記外装部材は、第1樹脂フィルムおよび第2樹脂フィルムを貼り合わせて構成されており、前記セパレータは、前記外装部材内で前記負極と前記正極との間に配置され、前記セパレータの周縁部が、前記第1樹脂フィルムおよび前記第2樹脂フィルムの少なくとも一方の周縁部に固定されていることを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、放電によって負極が膨張したとしても、セパレータの周縁部が外装部材に固定されているため、セパレータの位置ずれが抑制される。そのため、負極が収容される空間の変形に追従して、正極が収容される空間の変形が起こり、正極とセパレータとの間に隙間ができることが回避できる。これにより、電解液の水位の低下が抑制され、電池容量の低下を抑制できる。また、ラミネート電池が二次電池である場合には、サイクル寿命の低下も抑制できる。
【0010】
また、上記の課題を解決するために、本開示の第2の態様は、上記記載のラミネート電池の製造方法であって、前記第1樹脂フィルムに前記正極を対向させるようにして積層する第1工程と、前記正極の上に前記セパレータを積層し、当該セパレータの周縁部を前記第1樹脂フィルムの周縁部に溶着する第2工程と、前記セパレータの上に前記負極の集電体を積層する第3工程と、前記負極の集電体と対向するように前記第2樹脂フィルムを積層し、前記第1樹脂フィルムと前記第2樹脂フィルムとを1辺を除く3つの各辺で溶着する第4工程と、前記第4工程で溶着されていない1辺の開口より、前記負極の負極活物質粒子と電解液とを入れた後、前記開口となっていた辺を溶着する第5工程とを含むことを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、外装部材を構成する第1樹脂フィルムにセパレータを溶着するため、第4工程までは部材の積層および溶着のみで電池を組み立てることができる。このため、製造工程の簡略化が可能となり、低コスト化を実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本開示のラミネート電池は、放電によって負極が膨張した場合に、負極が収容される空間の変形に追従して、正極が収容される空間の変形が起こり、正極とセパレータとの間に隙間ができることが回避できる。これにより、電解液の水位の低下が抑制され、電池容量の低下を抑制できるといった効果を奏する。また、ラミネート電池が二次電池である場合には、サイクル寿命の低下も抑制できるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1に係るラミネート電池の概略構成を示す図であり、(a)はラミネート電池の平面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(b)の一部拡大図である。
【
図2】放電による
図1のラミネート電池の形状変化を説明する断面図である。
【
図3】実施の形態2に係るラミネート電池の概略構成を示す図であり、(a)はラミネート電池の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図4】放電による
図3のラミネート電池の形状変化を説明する断面図である。
【
図5】(a)~(h)は、
図3のラミネート電池に対する好適な製造方法の一例を示す図である。
【
図6】実施の形態3に係るラミネート電池の概略構成を示す図であり、(a)はラミネート電池の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図7】放電による
図6のラミネート電池の形状変化を説明する断面図である。
【
図8】(a)~(i)は、
図6のラミネート電池に対する好適な製造方法の一例を示す図である。
【
図9】放電による従来のラミネート電池の形状変化を説明する断面図である。
【
図10】放電による従来のラミネート電池の形状変化を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
〔実施の形態1〕
図1は、本実施の形態1に係るラミネート電池10の概略構成を示す図であり、(a)はラミネート電池10の平面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(b)の一部拡大図である。
【0016】
図1に示すように、ラミネート電池10は、第1樹脂フィルム11および第2樹脂フィルム12を貼り合わせて外装部材(電池ケース)を構成しており、この外装部材の内部に第1電極13、第2電極14およびセパレータ15を備えている。また、外装部材の内部には、電解液(図示省略)も充填される。尚、説明の便宜上、
図1における図中上方を、ラミネート電池10における上方と仮定して、以下説明する。
【0017】
ラミネート電池10においては、セパレータ15の周縁部が外装部材に固定される。
図1(c)では、ラミネート電池10の端部の拡大図を示しており、この拡大図において実線丸で囲んだ部分はセパレータ15が外装部材に熱溶着や超音波溶着などで接着されている部分、破線丸で囲んだ部分は接着されていることが好ましい部分を示している。
【0018】
ここでは、セパレータ15が第1樹脂フィルム11に対向して配置され、セパレータ15の周縁部が第1樹脂フィルム11の周縁部に接着されている。第1樹脂フィルム11とセパレータ15との間は第1収容部S11となり、第1収容部S11には第1電極13が収容される。また、第1樹脂フィルム11の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.02mm~0.25mmである。第1樹脂フィルム11の厚さが0.02mm未満であれば、溶着時に第2樹脂フィルム12と十分に溶け合わず接合強度が不足する恐れがあり、一方で、第1樹脂フィルム11の厚さが0.25mmを超えると、フィルムが伸びにくくなるため、電池が膨張した際に溶着部に応力が集中し、第2樹脂フィルム12との溶着部が剥がれる恐れがある。第1樹脂フィルム11は、耐アルカリ性に優れた熱可塑性樹脂材により形成されることが好ましく、例えばポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系の樹脂フィルムを用いることができる。なお、補強のため第1樹脂フィルム11に対して、ナイロンあるいはポリエチレンテレフタレートなどの樹脂フィルム層、アルミニウム箔あるいはステンレス箔などの金属フィルム層を積層した構成であってもよい。
【0019】
第2樹脂フィルム12は、第1樹脂フィルム11と反対側においてセパレータ15と対向して配置される。第2樹脂フィルム12の周縁部もセパレータ15の周縁部に接着されている。セパレータ15の周縁部と第1樹脂フィルム11の周縁部との接着部分、セパレータ15の周縁部と第2樹脂フィルム12の周縁部との接着部分は重なっていても良いし、位置が異なっていても良い。また、第2樹脂フィルム12の周縁部は、第1樹脂フィルム11の周縁部とも接着されていることが好ましい。第2樹脂フィルム12とセパレータ15との間は第2収容部S12となり、第2収容部S12には第2電極14が収容される。第2樹脂フィルム12は、第1樹脂フィルム11で用いられる樹脂フィルムから適宜用いることができる。第2樹脂フィルム12の厚さは、第1樹脂フィルム11と同様の理由で、0.02mm~0.25mmであることが好ましい。
尚、上記例では、セパレータ15の周縁部が第1樹脂フィルム11の周縁部と第2樹脂フィルム12の周縁部の両方に固定されているが、セパレータ15の周縁部が第1樹脂フィルム11および第2樹脂フィルム12の少なくとも一方の周縁部に固定されていれば良い。
【0020】
第1電極13および第2電極14は、一方が正極、他方が負極となる。また、第1電極13および第2電極14は、集電体131および141に活物質層132および142を積層した形態とされている。集電体131および141の一部は、外装部材の外側に延伸され、ラミネート電池10のリード部133および143となっている。尚、リード部133は、必ずしも集電体131の一部でなくてもよい。集電体131は外装部材の外側に露出したリード部133と電気的に接続されていればよい。同様に、リード部143は、必ずしも141の一部でなくてもよい。集電体141は外装部材の外側に露出したリード部143と電気的に接続されていればよい。
【0021】
本実施の形態1に係るラミネート電池10は、セパレータ15の周縁部が外装部材に固定される構造に特徴を有するものであり、各部材の材料などは特に限定されるものではない。すなわち、第1樹脂フィルム11、第2樹脂フィルム12、第1電極13、第2電極14、セパレータ15および電解液の何れも、ラミネート電池の分野において従来用いられているものが使用可能である。例えば、セパレータ15には多孔質ポリオレフィンフィルムを用いることができる。また、セパレータ15は、イオン交換膜を用いることもできる。また、負極において使用される負極活物質には、亜鉛粒子などが利用可能であるが、ラミネート電池10が二次電池である場合には、負極活物質は酸化亜鉛粒子を含むものであってもよい。正極において使用される正極活物質にはオキシ水酸化ニッケルなどを用いることができる。セパレータ15の厚さは、特に限定されないが、0.05mm~0.4mmが好ましい。セパレータ15の厚さが0.05mm未満であれば、負極活物質の体積変換に伴いセパレータ15が破断する恐れがあり、一方で、セパレータ15の厚さ0.4mmを超えると、内部抵抗の増加の結果、電池出力が低下する恐れがある 。
【0022】
ラミネート電池10においても、放電時には負極において使用される負極活物質が体積変化(膨張)を生じ、これに伴ってラミネート電池10の形状も変化する。
図2は、放電によるラミネート電池10の形状変化を説明する断面図である。尚、
図2では、第2電極14が負極(第1電極13が正極)である場合を例示している。
【0023】
図2に示すように、放電によって負極(ここでは第2電極14)が膨張したとしても、ラミネート電池10では、セパレータ15の周縁部が外装部材(ここでは第1樹脂フィルム11)に固定されているため、セパレータ15の位置ずれが抑制される。そのため、第2電極14が収容される第2収容部S12の変形に追従して、第1収容部S11の変形が起こり、正極である第1電極13とセパレータ15との間に隙間ができることが回避できる。これにより、電解液の水位の低下が抑制され、電池容量の低下を抑制できる。また、ラミネート電池10が二次電池である場合には、サイクル寿命の低下も抑制できる。
【0024】
〔実施の形態2〕
上記実施の形態1では、一般的な電池に本開示を適用した場合の構成を開示したが、本実施の形態2では金属空気電池に本開示を適用した場合の好適な構成について説明する。
【0025】
図3は、本実施の形態2に係るラミネート電池20の概略構成を示す図であり、(a)はラミネート電池20の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【0026】
図3に示すように、ラミネート電池20は、第1樹脂フィルム21および第2樹脂フィルム22を貼り合わせて外装部材(電池ケース)を構成しており、この外装部材の内部に空気極23、金属負極24、セパレータ25および撥水膜26を備えている。また、外装部材の内部には、電解液(図示省略)も充填される。
【0027】
セパレータ25は第1樹脂フィルム21に対向して配置され、セパレータ25の周縁部が第1樹脂フィルム21の周縁部に接着されている。第1樹脂フィルム21とセパレータ25との間は第1収容部S21となり、第1収容部S21には空気極23および撥水膜26が収容される。より具体的には、第1樹脂フィルム21には、空気を取り込むための開口として空気取込口211が形成されており、撥水膜26は空気取込口211を内側から覆うようにして第1樹脂フィルム21に接着されている。空気極23は、撥水膜26とセパレータ25との間に配置されている。空気極23および撥水膜26の詳細は後述する。
【0028】
第2樹脂フィルム22は、第1樹脂フィルム21と反対側においてセパレータ25と対向して配置される。第2樹脂フィルム22の周縁部もセパレータ25の周縁部に接着されている。セパレータ25の周縁部と第1樹脂フィルム21の周縁部との接着部分、セパレータ25の周縁部と第2樹脂フィルム22の周縁部との接着部分は重なっていても良いし、位置が異なっていても良い。また、第2樹脂フィルム22の周縁部は、第1樹脂フィルム21の周縁部とも接着されていることが好ましい。第2樹脂フィルム22とセパレータ25との間は第2収容部S22となり、第2収容部S22には金属負極24が収容される。
尚、上記例では、セパレータ25の周縁部が第1樹脂フィルム21の周縁部と第2樹脂フィルム22の周縁部に接着されているとしているが、セパレータ25の周縁部が第1樹脂フィルム21および第2樹脂フィルム22の少なくとも一方の周縁部に固定されていれば良い。
【0029】
撥水膜26は、空気取込口211からの電解液の漏洩を防ぐために設けられており、気液分離機能を有する。撥水膜26は、空気取込口211を覆うように第1樹脂フィルムに溶着などで固定される。撥水膜26の材料は、金属空気電池の分野で一般的に用いられ、第1樹脂フィルム21に固定できる材料であれば特に限定されない。撥水膜26の厚みは、0.05mm~0.5mmであることが好ましい。
【0030】
空気極23は、集電体231および集電体231と接する触媒層232により構成されている。集電体231の一部は、外装部材の外側に延伸され、ラミネート電池20のリード部233となっている。集電体231は、金属空気電池の分野で一般的に用いられる材料であれば特に限定しない。また、集電体231の厚さは、0.05mm~0.5mmであることが好ましい。
【0031】
触媒層232は、少なくとも空気極触媒を含む。空気極触媒は、少なくとも酸化還元能を有する触媒である。空気極触媒としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の導電性カーボン、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これにより、空気極触媒上において、酸素ガスと水と電子とが共存する三相界面を形成することが可能になり、放電反応を進行させることができる。ラミネート電池20が一次電池である場合、触媒層232は、二酸化マンガンなどの触媒を含むものとすることができる。また、ラミネート電池20が二次電池である場合、触媒層232が酸素還元能を有する空気極触媒だけでなく、酸素発生能を有する触媒を含んでいてもよく、酸素発生能と酸素還元能との両方を有するBi-functional触媒を含んでいてもよい。
【0032】
触媒層232に含まれる空気極触媒の質量割合は、触媒層232の5質量%以上であることが好ましい。空気極触媒層は、空気極触媒以外に結着剤を含んでいてもよい。また、触媒層232には、ポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤を用いることができる。触媒層232の厚みは、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0033】
金属負極24は、集電体241に活物質層242を積層した形態とされている。但し、金属負極24において、集電体241と活物質層242とは、第2収容部S22への収容前に予め積層されて一体化されている必要はない。例えば、ラミネート電池20の第2収容部S22に、集電体241と粒子状の負極活物質(例えば、亜鉛または酸化亜鉛)を別途投入して積層させるものであってもよい。また、金属負極24は、ラミネート電池20の第2収容部S22に収容された、集電体241と、負極活物質の粒子と電解液が混ぜられたコロイド状のスラリーを含んでもよい。スラリーは、負極活物質の重量に対する電解液の重量の比が、0.3~2.0であることが好ましい。
【0034】
負極活物質は、金属空気電池の分野で一般的に用いられる材料から適宜採用される。例えば、負極活物質は、カドミウム種・リチウム種・ナトリウム種・マグネシウム種・鉛種・亜鉛種・錫種・アルミニウム種・鉄種などの金属種を用いることができる。負極活物質は、充電されることで還元されるため、金属酸化物の状態であってもよい。
【0035】
負極活物質は、平均粒子径が1nm~500μmであることが好ましい。より好ましくは5nm~300μmであり、さらに好ましくは100nm~250μmであり、特に好ましくは、200nm~200μmである。上記平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0036】
集電体241の一部は、外装部材の外側に延伸され、ラミネート電池20のリード部243となっている。集電体241の厚みは0.05mm~0.50mmであることが好ましい。活物質層242の厚みは、1.0mm~10.0mmであることが好ましい。
【0037】
本実施の形態2に係るラミネート電池20では、第1樹脂フィルム21、第2樹脂フィルム22、空気極23、金属負極24、セパレータ25、撥水膜26および電解液の何れも、ラミネート電池や金属空気電池の分野において従来用いられているものが使用可能である。
【0038】
尚、上記説明では、ラミネート電池20が金属空気電池である場合を例示したが、ラミネート電池20が一般的な電池である場合には、空気極23に代えて正極を用いる構成としてもよい。この場合の正極は、触媒層232に代えて正極活物質層を備えたものとなる。また、ラミネート電池20が一般的な電池である場合は、空気取込口211および撥水膜26は不要となる。
【0039】
ラミネート電池20においても、放電時には金属負極24において使用される負極活物質が体積変化(膨張)を生じ、これに伴ってラミネート電池20の形状も変化する。
図4は、放電によるラミネート電池20の形状変化を説明する断面図である。
【0040】
図4に示すように、放電によって金属負極24が膨張したとしても、ラミネート電池20では、セパレータ25の周縁部が外装部材(ここでは第1樹脂フィルム21)に固定されているため、セパレータ25の位置ずれが抑制される。そのため、金属負極24が収容される第2収容部S22の変形に追従して、第1収容部S21の変形が起こり、正極である空気極23とセパレータ25との間に隙間ができることが回避できる。これにより、電解液の水位の低下が抑制され、電池容量の低下を抑制できる。
【0041】
〔ラミネート電池20の製造方法例〕
続いて、
図5を参照して、ラミネート電池20に対する好適な製造方法の一例を説明する。
【0042】
まず、
図5(a)に示すように、第1樹脂フィルム21に空気取込口211を形成する(空気取込口211の形成された第1樹脂フィルム21を準備する)。そして、
図5(b)に示すように、空気取込口211を覆うようにして、撥水膜26を第1樹脂フィルム21に接着する。このとき、撥水膜26は空気取込口211よりも一回り大きい面積とされ、撥水膜26を空気取込口211の縁部分で積層して熱溶着で接着する。
【0043】
続いて、
図5(c)に示すように、撥水膜26上に空気極23の触媒層232を積層する。さらに、
図5(d)に示すように、触媒層232上に空気極23の集電体231を積層し、これらをプレスで圧着する。尚、集電体231におけるリード部233の両面には、タブフィルム27が貼付されていてもよい。タブフィルム27は、ラミネート電池20においてリード部233の周囲からの電解液の液漏れを防止するものである。タブフィルム27の材料は特に限定されるものではなく、ラミネート電池の分野において従来用いられているものが使用可能であるが、ブチルゴムが好適に使用できる。タブフィルム27は、第1樹脂フィルム21とも溶着されていることが好ましい。但し、ラミネート電池20において、タブフィルム27は必須の構成ではない。
【0044】
続いて、
図5(e)に示すように、集電体231上にセパレータ25を積層し、セパレータ25を第1樹脂フィルム21に熱溶着で接着する。このとき、セパレータ25は撥水膜26よりも一回り大きい面積とされ、セパレータ25が第1樹脂フィルム21に重なる部分で溶着する。尚、タブフィルム27が使用されている場合は、セパレータ25はタブフィルム27と重なる部分でも熱溶着で接着される。ここで、空気取込口211の開口面積を含む第1樹脂フィルム21の面積に対するセパレータ25の面積比率は、0.55~0.95であることが好ましい。
【0045】
続いて、
図5(f)に示すように、セパレータ25上に金属負極24の集電体241を積層する。集電体241におけるリード部243の両面にも、タブフィルム27が貼付されていてもよい。
【0046】
続いて、
図5(g)に示すように、集電体241に対向するように第2樹脂フィルム22を積層し、下辺を除く3つの各辺を接着する。このとき、2つの側辺では少なくとも樹脂フィルム同士(第1樹脂フィルム21および第2樹脂フィルム22)が重なった部分を熱溶着する。また、上辺では、少なくとも第1樹脂フィルム21、第2樹脂フィルム22、セパレータ25(およびタブフィルム27)が重なる部分を熱溶着する。
【0047】
最後に、
図5(h)に示すように、溶着されていない1辺(下辺)の開口より、亜鉛粉および電解液を入れたのち、その辺を接着する。このとき、セパレータ25は第1樹脂フィルム21と既に接着されているため、投入された亜鉛粉が第1収容部S21(第1樹脂フィルム21とセパレータ25との間の空間)に入り込むことはない。下辺では樹脂フィルム同士(第1樹脂フィルム21および第2樹脂フィルム22)が重なった部分を熱溶着する。電解液は、セパレータ25を介して、空気極23まで浸透する。
【0048】
上述の製造方法では、外装部材を構成する樹脂フィルム(ここでは第1樹脂フィルム21)にセパレータ25を接着するため、
図5(g)の工程までは部材の積層および接着のみで電池を組み立てることができる。このため、製造工程の簡略化が可能となり、低コスト化を実現できる。
【0049】
〔実施の形態3〕
上記実施の形態1および2では、一次電池(または2極式の二次電池)に本開示を適用した場合の構成を開示したが、本実施の形態3では、2つの正極(第1正極と第2正極)と、2つの正極の間に金属負極とを備えた3極式の二次電池に本開示を適用した場合の好適な構成について説明する。また、以下の説明では、金属負極と、2つの正極として空気極および充電極を備えた3極式の金属空気二次電池に本開示を適用した場合を例示するが、2つの空気極と、2つの空気極の間に金属負極を備えた金属一次空気電池、金属空気電池ではない一般的な電池にも本開示の構成は適用可能である。
【0050】
図6は、本実施の形態3に係るラミネート電池30の概略構成を示す図であり、(a)はラミネート電池30の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【0051】
図6に示すように、ラミネート電池30は、第1樹脂フィルム31および第2樹脂フィルム32を貼り合わせて外装部材(電池ケース)を構成しており、この外装部材の内部に空気極(第1正極)33、金属負極34、充電極(第2正極)35、第1セパレータ36、第2セパレータ37、第1撥水膜38および第2撥水膜39を備えている。また、外装部材の内部には、電解液(図示省略)も充填される。
【0052】
第1セパレータ36は第1樹脂フィルム31に対向して配置され、第1セパレータ36の周縁部が第1樹脂フィルム31の周縁部に接着されている。第1樹脂フィルム31と第1セパレータ36との間は第1収容部S31となり、第1収容部S31には空気極33および第1撥水膜38が収容される。より具体的には、第1樹脂フィルム31には、空気を取り込むための開口として空気取込口311が形成されており、第1撥水膜38は空気取込口311を覆うようにして第1樹脂フィルム31に接着されている。空気極33は、第1撥水膜38と第1セパレータ36との間に配置されている。第1セパレータ36の厚みは、0.05mm~0.40mmであることが好ましい。第1撥水膜38の厚みは、0.05mm~0.50mmであることが好ましい。
【0053】
第2セパレータ37は第2樹脂フィルム32に対向して配置され、第2セパレータ37の周縁部が第2樹脂フィルム32の周縁部に接着されている。第2樹脂フィルム32と第2セパレータ37との間は第3収容部S33となり、第3収容部S33には充電極35および第2撥水膜39が収容される。より具体的には、第2樹脂フィルム32には、空気を放出するための開口として空気放出口321が形成されており、第2撥水膜39は空気放出口321を覆うようにして第2樹脂フィルム32に接着されている。充電極35は、第2撥水膜39と第2セパレータ37との間に配置されている。第2セパレータ37の厚みは、0.05mm~0.40mmであることが好ましい。第2撥水膜39の厚みは、0.05mm~0.50mmであることが好ましい。
【0054】
さらに、第1セパレータ36と第2セパレータ37とが対向して配置され、第1セパレータ36および第2セパレータ37の周縁部同士が熱溶着や超音波溶着などで接着されている。すなわち、周縁部同士が接着された第1セパレータ36および第2セパレータ37が袋状セパレータを構成しており、袋状セパレータの周縁部が外装部材に固定された構成となる。また、第1樹脂フィルム31および第2樹脂フィルム32の周縁部同士も接着されていることが好ましい。第1セパレータ36と第2セパレータ37との間(袋状セパレータの内部)は第2収容部S32となり、第2収容部S32には金属負極34が収容される。
【0055】
尚、上記例では、第1セパレータ36および第2セパレータ37の周縁部同士が接着されて袋状セパレータを構成しているものとしているが、厳密には、第1セパレータ36の周縁部が第1樹脂フィルム31の周縁部に接着され、第2セパレータ37の周縁部が第2樹脂フィルム32の周縁部に接着されていればよい。すなわち、第1セパレータ36および第2セパレータ37の周縁部同士が接着されて袋状セパレータを構成することは必須ではない。
【0056】
ラミネート電池30では、第1撥水膜38および第2撥水膜39は、空気取込口311および空気放出口321からの電解液の漏洩を防ぐために設けられており、気液分離機能を有する。
【0057】
空気極33は、集電体331および触媒層332により構成されており、実施の形態2における空気極23と同様の構成とすることができる。尚、リード部333は、外装部材の外側に延伸された集電体331の一部である。
【0058】
充電極35は、集電体351および触媒層352により構成されており、触媒層352は、例えば、導電性の多孔性担体と、該多孔性担体に担持された充電極触媒を含んでいてもよい。この充電極触媒は、酸素発生能を有する触媒(ニッケルなど)であり、ラミネート電池30の充電時に充電反応を進行させるものである。触媒層352は、例えば発泡ニッケルからなる。集電体331および351の一部は、外装部材の外側に延伸され、ラミネート電池30のリード部333および353となっている。また、発泡ニッケルを集電体331としても用いることができ、この場合、一つの発泡ニッケルで集電体331および触媒層332を含む。充電極35の厚みは、0.2mm~2mmであることが好ましい。
【0059】
金属負極34は、集電体341に活物質層342を積層した形態とされており、実施の形態2における金属負極24と同様の構成とすることができる。集電体341の一部は、外装部材の外側に延伸され、ラミネート電池30のリード部343となっている。
【0060】
本実施の形態3に係るラミネート電池30では、実施の形態1および実施の形態2と同様、第1樹脂フィルム31、第2樹脂フィルム32、空気極33、金属負極34、充電極35、第1セパレータ36、第2セパレータ37、第1撥水膜38、第2撥水膜39および電解液の何れも、ラミネート電池や金属空気二次電池の分野において従来用いられているものが使用可能である。
【0061】
尚、上記説明では、ラミネート電池30が金属空気二次電池である場合を例示したが、ラミネート電池30が一般的な二次電池である場合には、空気極33に代えて放電用の第1正極を用い、充電極35に代えて充電用の第2正極を用いる構成としてもよい。この場合の第1正極および第2正極は、触媒層332および352に代えて正極活物質層を備えたものとなる。また、ラミネート電池30が一般的な二次電池である場合は、空気取込口311、空気放出口321、第1撥水膜38および第2撥水膜39は不要となる。
【0062】
さらに、上記説明では、ラミネート電池30が金属空気二次電池である場合を例示したが、ラミネート電池30が金属空気一次電池である場合には、充電極35に代えて、空気極33を用いる構成としてもよい。この場合、金属負極34の表裏に各々空気極33が配置されたものとなる。また、上記説明では、ラミネート電池30が2つの正極をそれぞれ放電用と充電用の機能を分けた金属空気二次電池である場合を例示したが、触媒層に酸素発生能を有する触媒と、酸素還元能を有する触媒を含む空気極を、空気極33と充電極35のそれぞれに代えてもよい。
【0063】
ラミネート電池30においても、放電時には金属負極34において使用される負極活物質が体積変化(膨張)を生じ、これに伴ってラミネート電池30の形状も変化する。
図7は、放電によるラミネート電池30の形状変化を説明する断面図である。
【0064】
図7に示すように、放電によって金属負極34が膨張したとしても、ラミネート電池30では、第1セパレータ36の周縁部が外装部材の第1樹脂フィルム31に固定され、第2セパレータ37の周縁部が外装部材の第2樹脂フィルム32に固定されているため、セパレータ(第1セパレータ36および第2セパレータ37)の位置ずれが抑制される。そのため、金属負極34が収容される第2収容部S32の変形に追従して、外装部材内で第1収容部S31および第3収容部S33の変形が起こり、正極(空気極33および充電極35)とセパレータとの間に隙間ができることが回避できる。これにより、電解液の水位の低下が抑制され、電池容量の低下を抑制できる。また、二次電池としてのサイクル寿命の低下も抑制できる。
【0065】
〔ラミネート電池30の製造方法例〕
続いて、
図8を参照して、ラミネート電池30に対する好適な製造方法の一例を説明する。
【0066】
まず、
図8(a)に示すように、第1樹脂フィルム31に空気取込口311を形成する(空気取込口311の形成された第1樹脂フィルム31を準備する)。そして、
図8(b)に示すように、空気取込口311を覆うようにして、第1撥水膜38を第1樹脂フィルム31に接着する。このとき、第1撥水膜38は空気取込口311よりも一回り大きい面積とされ、第1撥水膜38を空気取込口311の縁部分で積層して熱溶着する。
【0067】
続いて、
図8(c)に示すように、第1撥水膜38上に空気極33の触媒層332を積層する。さらに、
図8(d)に示すように、触媒層332上に空気極33の集電体331を積層し、これらをプレスで圧着する。尚、集電体331におけるリード部333の両面には、タブフィルム40が貼付されていてもよい。
【0068】
続いて、
図8(e)に示すように、集電体331上に第1セパレータ36を積層し、第1セパレータ36を第1樹脂フィルム31に接着する。このとき、第1セパレータ36は第1撥水膜38よりも一回り大きい面積とされ、第1セパレータ36が第1樹脂フィルム31に重なる部分で溶着する。尚、タブフィルム40が使用されている場合は、第1セパレータ36はタブフィルム40とも重なる部分で熱溶着される。
【0069】
続いて、
図8(f)に示すように、第1セパレータ36上に金属負極34の集電体341を積層する。集電体341におけるリード部343の両面にも、タブフィルム40が貼付されていてもよい。
【0070】
さらに、
図8(a)~(e)で説明したのと同じ手順で、第2樹脂フィルム32、第2撥水膜39、充電極35(触媒層352および集電体351)および第2セパレータ37を積層および接着したものを作成する(
図8(g)参照)。但し、充電極35におけるリード部353の位置は、空気極33および金属負極34におけるリード部333および343とは重なり合わないようにずらした位置とする。
【0071】
図8(f)の工程で得られた積層体と
図8(g)の工程で得られた積層体とを、第1セパレータ36および第2セパレータ37が金属負極34の集電体341を挟んで対向するように積層し、下辺を除く3つの各辺を接着する(
図8(h)参照)。このとき、2つの側辺では少なくとも樹脂フィルム同士(第1樹脂フィルム31および第2樹脂フィルム32)が重なった部分を熱溶着する。また、上辺では、少なくとも第1樹脂フィルム31、第2樹脂フィルム32、第1セパレータ36、第2セパレータ37(およびタブフィルム40)が重なる部分を熱溶着する。
【0072】
最後に、
図8(i)に示すように、溶着されていない1辺(下辺)の開口より、亜鉛粉および電解液を入れたのち、その辺を接着する。このとき、第1セパレータ36は第1樹脂フィルム31と既に接着されており、第2セパレータ37は第2樹脂フィルム32と既に接着されているため、投入された亜鉛粉が第1収容部S31および第3収容部S33に入り込むことはない。下辺では樹脂フィルム同士(第1樹脂フィルム31および第2樹脂フィルム32)が重なった部分を熱溶着する。
【0073】
上述の製造方法では、外装部材を構成する樹脂フィルム(第1樹脂フィルム31および第2樹脂フィルム32)に第2収容部となるセパレータ(第1セパレータ36および第2セパレータ37)を接着するため、
図8(h)の工程までは部材の積層および接着のみで電池を組み立てることができる。すなわち、2枚のセパレータを袋状に加工したり、袋状セパレータに負極を収納したり、外装部材に袋状セパレータを収納したりする工程が不要となる。このため、製造工程の簡略化が可能となり、低コスト化を実現できる。
【0074】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。