(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】衝撃波または機械的衝撃を使用する、細胞の分離、解離、および/または脱凝集
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20230622BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20230622BHJP
C12M 1/33 20060101ALN20230622BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/0775
C12M1/33
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021163876
(22)【出願日】2021-10-05
(62)【分割の表示】P 2018568180の分割
【原出願日】2017-03-17
【審査請求日】2021-10-11
(32)【優先日】2016-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518329365
【氏名又は名称】シノヴァ ライフ サイエンシーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】チ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】レイブン,レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】リッチマン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】チ,ベン-チェン
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-028614(JP,A)
【文献】特開昭61-230957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0051865(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0034832(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0169642(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/071
C12N 5/0775
C12M 1/33
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪組織から間質血管細胞画分を単離する方法であって、
脂肪組織サンプルを、組織プロセッシング装置のプロセッシング容器に入れるステップ
であって、前記プロセッシング容器は、可撓性のバッグである、ステップと
前記
脂肪組織サンプルに機械的衝撃からの力を加えて、前記脂肪組織を破壊するステップと、
前記
脂肪組織から前記間質血管細胞画分を単離するステップとを含み、
前記機械的衝撃は、最大30,000rpmの速度で上下方向に関節運動することによって前記
可撓性のバッグと物理的に接触するインパクトアームによって生成され、
前記インパクトアームが前記
脂肪組織に物理的に接触しない、方法。
【請求項2】
前記プロセッシング装置が、
前記
可撓性のバッグが取り付けられているプラットフォームと、
前記インパクトアームの前記上下方向の関節運動を駆動する可変速モーターと、
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モーターが、前記インパクトアームの前記上下方向の関節運動を駆動するように調整可能な可変速モーターである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記モーターが、前記インパクトアームの前記上下方向の関節運動を3,000rpmから30,000rpmの速度で駆動する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記単離が、前記
脂肪組織を水性層から分離させることによって行われ、前記水性層は前記間質血管細胞画分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記間質血管細胞画分が、30分以内に前記
脂肪組織から分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記
可撓性のバッグが、前記
可撓性のバッグの内部と流体接続する出口部を備える、請求項
1の方法。
【請求項8】
前記
可撓性のバッグが、前記
可撓性のバッグの内部と流体接続する複数の出口部を備える、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記
可撓性のバッグが、前記
可撓性のバッグの内部と流体接続する入口部をさらに備える、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記可撓性のバッグが、前記可撓性のバッグの内部と流体接続する入口部を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記間質血管細胞画分が、幹細胞、成長因子、および前駆細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記間質血管細胞画分が脂肪幹細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
細胞バイオプロセッシングは、バイオ医薬品製造の形態であり、その目標は、治療用細
胞の単離および/または生産のための再現性のあるロバストな製造プロセスを確立するこ
とである。
【背景技術】
【0002】
現在の細胞製造プロセスは、極めてユーザー依存型であり、多数のポイントにおいて人
間の介入を必要とする。その依存性に起因して、現在のプロセスは、面倒であり、極めて
多様であり、高価であり、低い収率となる。
【0003】
例として、多くの現在の製造プロセスは、以下のように行われる。組織サンプル(脂肪
吸引物、全血、骨髄、臍帯血など)が、患者から取得される。取得された生物学的なサン
プルが、バイオプロセッシングのために研究所へ移送される。研究所において、細胞分離
技法が、所望の細胞画分を取得するために用いられる。次いで、細胞画分が単離され、患
者使用のためにポイントオブケア設備に戻されるように移送されるか、または、細胞膨張
のためにバイオリアクターの中への導入によってさらにプロセッシングされるかのいずれ
かである。細胞分離のいくつかの公知の方法は、所望の細胞画分を取得するために、サン
プルを異物(たとえば、ビーズ)と接触させることを必要とする、超音波キャビテーショ
ンを介した機械的な分離、酵素消化、または、他の機械的な手段の使用を含む。酵素の使
用は、規制順守負担(regulatory compliance burden)の増加を結果として生じさせる。
その理由は、酵素は、所望の結果を作り出すために、サンプルと直接的に接触した状態に
ならなければならないからである。また、酵素は、収穫された細胞の完全性を損なう可能
性があり、場合によっては、その特性を変化させる。高い動力を与えられるソニケーショ
ンの使用は、同様に不完全である。ソニケーターチップは、周波数が固定されており、細
胞または組織懸濁液の中へ導入されなければならず、それは、無菌状態に悪影響を与える
可能性を有している。追加的に、そのような高エネルギー音波の使用は、大量のエネルギ
ーをサンプルの中へ導入し、それは、熱として現れる。これは、細胞に損傷を与える可能
性があり、これは、使用可能な細胞の収率を低減させる。
【0004】
取得されると、膨張した細胞製品は、次いで、それが清浄されて濃縮されるバイオリア
クターから移動させられる。テストサンプルが、品質検査のために、洗浄および濃縮され
た細胞製品から除去され、テスト結果が許容可能な製品を示す場合には、最終的に人工的
に作り出された細胞製品は、長期間の保管のために準備されるか、凍結保存のために準備
されるか、サンプルが導出された患者に投与されるか、または、先述のもののいくつかの
組み合わせのいずれかである。
【0005】
認識され得るように、これらのステップのいくつかは、サンプルを1つの容器から別の
容器へ移動させることを必要とし、重度のユーザー介入を必要とし、重度のユーザー介入
は、プロセッシングの間に1つまたは複数のサンプルをラベル貼り間違えまたは取り扱い
ミスするリスクを増大させるだけでなく、場合によっては、サンプルの無菌状態、同一性
、純度、または効能に悪影響を与える。追加的に、このようにサンプルをプロセッシング
するために必要とされる時間は、所望の細胞画分が、何時間にもわたって(何日もという
ことはないとしても)患者への送達のための準備ができていないということを意味してお
り、これは、患者の健康に対して悪影響を有する可能性がある。危うくされた無菌状態に
関する可能性、および、細胞サンプルをプロセッシングするために必要とされる不合理に
長い時間の期間は、患者にとって、とりわけ、免疫力が低下した患者にとって、または、
即座の治療を要求する患者にとって、許容不可能であり、また、タイムリーで高品質の治
療を多くの患者に提供することを必要とする提供者にとって許容不可能である。
【発明の概要】
【0006】
本開示は以下の[1]から[33]を含む。
[1]細胞画分を組織サンプルから単離する方法であって、上記方法は、
対象から組織サンプルを取得するステップと、
衝撃波、機械的衝撃からの力、または、その両方に、上記組織サンプルを接触させるステップと、
上記組織サンプルから細胞画分を単離するステップと、
を含み、
上記衝撃波および/または上記機械的衝撃からの上記力の供給源は、上記組織サンプルと物理的な接触をしない、方法。
[2]上記組織は、脂肪組織、脳組織、咽頭組織、喉頭組織、心臓組織、動脈組織、筋肉組織、肝臓組織、胆嚢組織、腎臓組織、小腸組織、大腸組織、リンパ節組織、肺組織、脾臓組織、骨髄組織、胃組織、静脈組織、膵臓組織、膀胱組織、骨、歯、象牙質組織、歯肉組織、皮膚組織、松果腺組織、下垂体組織、甲状腺組織、副腎組織、膵臓組織、卵巣組織および睾丸組織から選択される、上記[1]に記載の方法。
[3]上記組織は脂肪組織である、上記[1]または上記[2]に記載の方法。
[4]上記組織サンプルは、衝撃波と接触させられ、上記衝撃波の上記供給源は、衝撃波発生器によって動力を与えられる衝撃波アプリケーターである、上記[1]から[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5]上記組織サンプルは、機械的衝撃からの力と接触させられ、上記機械的衝撃からの上記力の上記供給源は、モーターによって動力を与えられるインパクトアームである、上記[1]から[3]のいずれか一項に記載の方法。
[6]上記組織サンプルは、上記衝撃波および/または上記機械的衝撃からの上記力と接触する前に、1回または複数回洗浄される、上記[1]から[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7]上記衝撃波は、上記組織サンプルを、複数の小さい細胞群、複数の個々の細胞、または、その両方に分解する、上記[1]から[4]または[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8]上記機械的衝撃からの上記力は、上記組織サンプルを、複数の小さい細胞群、複数の個々の細胞、または、その両方に分解する、上記[1]から[3]、[5]または[6]のいずれか一項に記載の方法。
[9]上記細胞画分は、上記複数の小さい細胞群、複数の個々の細胞、または、その両方を含み、上記細胞画分の単離は、遠心分離によって行われる、上記[7]または上記[8]に記載の方法。
[10]遠心分離は、3分から30分間、500gから2,000gの速度で行われる、上記[9]に記載の方法。
[11]遠心分離は、10分間1,200gで行われる、上記[10]に記載の方法。[12]上記単離された細胞画分は、遠心分離の後に再懸濁させられる、上記[9]から[11]のいずれか一項に記載の方法。
[13]上記細胞画分は、30分以内に単離される、上記[1]から[3]、[5]、[6、]または[8]から[12]のいずれか一項に記載の方法。
[14]幹細胞を脂肪組織から単離する方法であって、上記方法は、
対象から脂肪組織サンプルを取得するステップと、
上記組織サンプルを容器またはカートリッジの中へ置くステップと、
上記組織サンプルを機械的衝撃からの力にさらし、上記幹細胞を解放するステップと、
上記脂肪組織から幹細胞画分を分離するステップと、
上記幹細胞画分を遠心分離するステップと、
を含み、
上記機械的衝撃からの上記力の供給源は、上記脂肪組織に物理的に接触しない、方法。[15]上記脂肪組織は、上記機械的衝撃からの上記力にさらされる前に、1回または複数回洗浄される、上記[14]に記載の方法。
[16]上記機械的衝撃の上記力の上記供給源は、モーターによって動力を与えられるインパクトアームであり、上記モーターは、ギヤリングを含み、上記ギヤリングは、上記モーターが全速力で動作しているときに、上記インパクトアームの上記速度を低減させることができる、上記[14]または上記[15]に記載の方法。
[17]上記機械的衝撃からの上記力は、上記容器またはカートリッジの壁部を通して上記脂肪組織へ送達される、上記[14]または上記[15]に記載の方法。
[18]上記ギヤリングは、上記インパクトアームの中での速度の1/10の減速を可能にする、上記[15]から[17]のいずれか一項に記載の方法。
[19]上記モーターは、0.75インチのギヤ直径を含み、3,000rpmのモーター速度において、上記インパクトアームは、毎秒117.8インチの速度を有している、上記[16]から[18]のいずれか一項に記載の方法。
[20]幹細胞画分を分離するステップは、上記脂肪組織が、水性層から分離することを可能にするステップを含み、上記水性層は、上記幹細胞を含む、上記[14]から[19]のいずれか一項に記載の方法。
[21]上記幹細胞は、30分以内に上記脂肪組織から単離される、上記[14]から[20]のいずれか一項に記載の方法。
[22]遠心分離は、3分から10分間、500gから1,600gで行われる、上記[14]から[21]のいずれか一項に記載の方法。
[23]幹細胞を脂肪組織から単離する方法であって、上記方法は、
対象から脂肪組織サンプルを取得するステップと、
上記組織サンプルを容器またはカートリッジの中へ置くステップと、
上記組織サンプルを衝撃波にさらし、上記幹細胞を解放するステップと、
上記脂肪組織から幹細胞画分を分離するステップと、
上記幹細胞画分を遠心分離するステップと、
を含み、
上記衝撃波の供給源は、上記脂肪組織に物理的に接触しない、方法。
[24]上記脂肪組織は、上記衝撃波にさらされる前に、1回または複数回洗浄される、上記[23]に記載の方法。
[25]上記衝撃波の上記供給源は、衝撃波発生器によって動力を与えられる衝撃波アプリケーターである、上記[23]または上記[24]に記載の方法。
[26]上記衝撃波は、上記容器またはカートリッジの壁部を通して上記脂肪組織へ送達される、上記[23]から[25]のいずれか一項に記載の方法。
[27]上記脂肪組織は、0.5barから5.0barのパワーを有する衝撃波にさらされる、上記[23]から[26]のいずれか一項に記載の方法。
[28]上記容器は、0.25mm厚の壁部を有するビニールバッグであり、上記脂肪組織は、2.0barから2.5barのパワーを有する衝撃波にさらされる、上記[23]から[27]のいずれか一項に記載の方法。
[29]任意の1つの時点において上記衝撃波にさらされる上記脂肪組織の合計面積は、1cm
2
から100cm
2
の範囲にある、上記[23]から[28]のいずれか一項に記載の方法。
[30]上記容器は、0.25mm厚の壁部を有する19オンスのビニールバッグであり、上記脂肪組織サンプルの合計量は、30ccであり、任意の1つの時点において上記衝撃波にさらされる上記脂肪組織の合計面積は、5cm
2
である、上記[23]に記載の方法。
[31]上記脂肪組織は、5,000から100,000の範囲にあるいくつかの衝撃波にさらされる、上記[23]から[30]のいずれか一項に記載の方法。
[32]幹細胞画分を分離するステップは、上記脂肪組織が、水性層から分離することを可能にするステップを含み、上記水性層は、上記幹細胞を含む、上記[23]から[31]のいずれか一項に記載の方法。
[33]遠心分離は、3分から10分間、500gから1,600gで行われる、上記[23]から[32]のいずれか一項に記載の方法。
したがって、ポイントオブケアにおいて、複数のユーザー介入に対する必要性なしに、短い時間の期間で直接的に所望の細胞画分を取得する、最適化された拡張性のある方法が必要とされている。また、その方法を実施することができるデバイスも必要とされている。そのような方法およびデバイスが、本開示によって提供される。開示されている方法およびデバイスは、プロセッシングのために細胞サンプルを研究所へ移送する必要性を排除し、また、分離の間に細胞サンプルを異物と接触させず、ユーザーの接触がほとんどない状態で、非常に短い時間の期間に所望の細胞サンプルを提供する、プロセッシングされたサンプルを結果として生じさせ、それによって、高価な技術的資源の最適化を可能にする。
【0007】
本明細書で開示されているデバイスおよび方法は、いくつかの特徴を有しており、その
うちの一つとして、単独でその望ましい属性の原因とならない。以下に続く特許請求の範
囲を限定することなく、開示されているデバイスおよび方法の特定の特徴が、簡潔に議論
されることとなる。この議論を考慮した後に、および、とりわけ、「発明を実施するため
の形態」という標題の章を読んだ後に、当業者は、どのようにデバイスおよび方法の特徴
が、従来のシステムおよび方法を上回るいくつかの利点を提供するかということを理解す
ることとなる。
【0008】
1つの態様では、本開示は、細胞サンプルのバイオプロセッシング、たとえば、自己幹
細胞療法のためにプロセッシングされる脂質組織サンプルのバイオプロセッシングに適切
な完全に閉じたシステムを提供する。システムは、大気に開放しておらず、したがって、
バイオプロセッシングの全体を通して、無菌のサンプルプロセッシングおよびサンプルの
移送を可能にする。
【0009】
第1の態様では、細胞画分を組織サンプルから単離する方法が提供され、方法は、対象
から組織サンプルを取得するステップと、衝撃波、機械的衝撃からの力、または、その両
方に、組織サンプルを接触させるステップと、組織サンプルから細胞画分を単離するステ
ップと、を含み、衝撃波および/または機械的衝撃からの力の供給源は、組織サンプルと
物理的な接触をしない。
【0010】
いくつかの実施形態では、組織は、脂肪組織、脳組織、咽頭組織、喉頭組織、心臓組織
、動脈組織、筋肉組織、肝臓組織、胆嚢組織、腎臓組織、小腸組織、大腸組織、リンパ節
組織、肺組織、脾臓組織、骨髄組織、胃組織、静脈組織、膵臓組織、膀胱組織、骨、歯、
象牙質組織、歯肉組織、皮膚組織、松果腺組織、下垂体組織、甲状腺組織、副腎組織、膵
臓組織、卵巣組織および睾丸組織から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、組織は脂肪組織である。
【0012】
いくつかの実施形態では、組織サンプルは、衝撃波と接触させられ、衝撃波の供給源は
、衝撃波発生器によって動力を与えられる衝撃波アプリケーターである。
【0013】
いくつかの実施形態では、組織サンプルは、機械的衝撃からの力と接触させられ、機械
的衝撃からの力の供給源は、モーターによって動力を与えられるインパクトアームである
。
【0014】
いくつかの実施形態では、組織サンプルは、衝撃波および/または機械的衝撃からの力
と接触する前に、1回または複数回洗浄される。
【0015】
いくつかの実施形態では、衝撃波は、組織サンプルを、複数の小さい細胞群、複数の個
々の細胞、または、その両方に分解する。
【0016】
いくつかの実施形態では、機械的衝撃からの力は、組織サンプルを、複数の小さい細胞
群、複数の個々の細胞、または、その両方に分解する。
【0017】
いくつかの実施形態では、細胞画分は、複数の小さい細胞群、複数の個々の細胞、また
は、その両方を含み、細胞画分の単離は、遠心分離によって行われる。
【0018】
いくつかの実施形態では、遠心分離は、3分から30分間、500gから2,000g
の速度で行われる。
【0019】
いくつかの実施形態では、遠心分離は、10分間1,200gで行われる。
【0020】
いくつかの実施形態では、単離された細胞画分は、遠心分離の後に再懸濁させられる。
【0021】
いくつかの実施形態では、細胞画分は、30分以内に単離される。
【0022】
第2の態様では、幹細胞を脂肪組織から単離する方法が提供され、方法は、対象から脂
肪組織サンプルを取得するステップと、組織サンプルを容器またはカートリッジの中へ置
くステップと、組織サンプルを機械的衝撃からの力にさらし、幹細胞を解放するステップ
と、脂肪組織から幹細胞画分を分離するステップと、幹細胞画分を遠心分離するステップ
と、を含み、機械的衝撃からの力の供給源は、脂肪組織に物理的に接触しない。
【0023】
いくつかの実施形態では、脂肪組織は、機械的衝撃からの力にさらされる前に、1回ま
たは複数回洗浄される。
【0024】
いくつかの実施形態では、機械的衝撃の力の供給源は、モーターによって動力を与えら
れるインパクトアームであり、モーターは、ギヤリングを含み、ギヤリングは、モーター
が全速力で動作しているときに、インパクトアームの速度を低減させることができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、機械的衝撃からの力は、容器またはカートリッジの壁部を通
して脂肪組織へ送達される。
【0026】
いくつかの実施形態では、ギヤリングは、インパクトアームの中での速度の1/10の
減速を可能にする。
【0027】
いくつかの実施形態では、モーターは、0.75インチのギヤ直径を含み、3,000
rpmのモーター速度において、インパクトアームは、毎秒117.8インチの速度を有
している。
【0028】
いくつかの実施形態では、幹細胞画分を分離することは、脂肪組織が、水性層から分離
することを可能にし、水性層は、幹細胞を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、幹細胞は、30分以内に脂肪組織から単離される。
【0030】
いくつかの実施形態では、遠心分離は、3分から10分間、500gから1,600g
で行われる。
【0031】
第3の態様では、幹細胞を脂肪組織から単離する方法が提供され、方法は、対象から脂
肪組織サンプルを取得するステップと、組織サンプルを容器またはカートリッジの中へ置
くステップと、組織サンプルを衝撃波にさらし、幹細胞を解放するステップと、脂肪組織
から幹細胞画分を分離するステップと、幹細胞画分を遠心分離するステップと、を含み、
衝撃波の供給源は、脂肪組織に物理的に接触しない。
【0032】
いくつかの実施形態では、脂肪組織は、衝撃波にさらされる前に、1回または複数回洗
浄される。
【0033】
いくつかの実施形態では、衝撃波の供給源は、衝撃波発生器によって動力を与えられる
衝撃波アプリケーターである。
【0034】
いくつかの実施形態では、衝撃波は、容器またはカートリッジの壁部を通して脂肪組織
へ送達される。
【0035】
いくつかの実施形態では、脂肪組織は、0.5barから5.0barのパワーを有す
る衝撃波にさらされる。
【0036】
いくつかの実施形態では、容器は、0.25mm厚の壁部を有するビニールバッグであ
り、脂肪組織は、2.0barから2.5barのパワーを有する衝撃波にさらされる。
【0037】
いくつかの実施形態では、任意の1つの時点において衝撃波にさらされる脂肪組織の合
計面積は、1cm2から100cm2の範囲にある。
【0038】
いくつかの実施形態では、容器は、0.25mm厚の壁部を有する19オンスのビニー
ルバッグであり、脂肪組織サンプルの合計量は、30ccであり、任意の1つの時点にお
いて衝撃波にさらされる脂肪組織の合計面積は、5cm2である。
【0039】
いくつかの実施形態では、脂肪組織は、5,000から100,000の範囲にあるい
くつかの衝撃波にさらされる。
【0040】
いくつかの実施形態では、幹細胞画分を分離することは、脂肪組織が、水性層から分離
することを可能にし、水性層は、幹細胞を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、遠心分離は、3分から10分間、500gから1,600g
で行われる。
【0042】
本開示の特徴および利点は、例示目的の実施形態を記述する以下の詳細な説明および添
付の図面を参照して、さらに説明され得る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本開示によって提供される実施形態による、細胞画分を組織サンプルから単離する方法の概観である。
【
図2】本開示によって提供されるシステムおよび方法において使用するのに適切な対外衝撃波デバイスの代表的な例を示す図である。
【
図3】本開示によって提供されるシステムおよび方法において使用するのに適切な機械的衝撃デバイスの代表的な例を示す図である。
【
図4】本開示によって提供される対外衝撃波および/または機械的衝撃デバイスとともに使用するのに適切なリジッドの自己完結型のカートリッジの第1の代表的な例を示す図である。示されている実施形態では、いくつかの内部コンポーネントは、可撓性の容器である。
【
図5】本開示によって提供される対外衝撃波および/または機械的衝撃デバイスとともに使用するのに適切なリジッドの自己完結型のカートリッジの代表的な例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示の実施形態が説明される前に、そのような実施形態が単なる例として提供される
ということ、および、本明細書で説明されている本開示の実施形態に対するさまざまな代
替例が、本開示を実施する際に用いられ得るということが理解されるべきである。ここで
、多数の変形例、変化例、および置換例が、本開示から逸脱することなく、当業者に考え
付くこととなる。
【0045】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されているすべての技術的用語および科学的用
語は、本開示が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有している。本
明細書で説明されているものと同様または同等の方法および材料が、本開示の実施または
検査において使用され得るが、適切な方法および材料が、下記に説明されている。矛盾す
る場合には、定義を含む特許明細書が、支配することとなる。それに加えて、材料、方法
、および例は、単なる例示目的のものであり、限定することを意図していない。多数の変
形例、変化例、および置換例が、本開示から逸脱することなく、当業者に考え付くことと
なる。
【0046】
明細書および特許請求の範囲に使用されているように、単数形「1つの(a)」、「1
つの(an)」、および「その(the)」は、文脈がそうでないことを明確に示してい
なければ、複数の言及を含む。たとえば、「1つの細胞」という用語は、複数の細胞(そ
の混合物を含む)を含む。
【0047】
本明細書で使用されているように、「対外衝撃波」、「複数の対外衝撃波」、および/
または「ESW」は、音波と同様に、機械的なエネルギーの急激な高い振幅パルスを意味
しており、それらは、関心のサンプルの外部で発生させられ、次いで、そのサンプルに伝
送される。その点で、ESWの発生源は、サンプルと物理的な接触をしない。衝撃波自身
は、サンプルに接触するが、発生源は、サンプルに接触しない。したがって、対外衝撃波
は、サンプルからのいくらかの距離にある供給源によって発生させられ、次いで、サンプ
ルに伝送される。伝送は、空気を通して、および/または、サンプルがその中に位置付け
されている容器の壁部を通して、行われることが可能である。ESWは、たとえば、サン
プル全体、または、サンプルの一部分だけをカバーする関心のエリアの中にESWを濃縮
させるために、焦点を合わせられたおよび/または方向付けされ得る。
【0048】
本明細書で使用されているように、「対象」または「患者」は、哺乳類、たとえば、人
間を表している。
【0049】
本開示によって提供される方法は、対外衝撃波、機械的衝撃、振動および/または、砕
石術の原理を利用し、組織サンプルを、より小さい断片、すなわち、細胞群および/また
は単一の細胞に粉砕し、その後に、所望の細胞画分が、サンプルから単離され得る。さま
ざまな態様において、この方法は、サンプルを対象から単離するステップであって、サン
プルは、関心の細胞タイプを含む、ステップと、そのサンプルを、ESWを発生させるた
めに使用されるデバイスと接触させるのではなく、対外衝撃波と接触させ、サンプルを小
さい細胞群および/または個々の細胞に分解するステップと、次いで、分解されたサンプ
ルから関心の細胞タイプを単離するステップとを含む。
【0050】
本開示によって提供されるデバイスは、焦点を合わせられたおよび/もしくは方向付け
された衝撃波、ならびに/または、焦点を合わせられたおよび方向付けされた機械的衝撃
を利用し、関心のサンプルをバラバラにする。さまざまな態様において、本開示によって
提供されるデバイスは、衝撃波または機械的衝撃への露出の間に、無菌の閉じた環境にサ
ンプルを維持する。したがって、衝撃波および/または機械的衝撃は、閉じた無菌の容器
の外側に発生させられ、容器の1つまたは複数の壁部を通してその内部へ伝送され、その
内部に、サンプルが位置付けされている。
【0051】
関心のサンプルから所定の距離にESWの供給源を維持することによって、ESWの供
給源(ESWを発生させるデバイス)は、サンプルと物理的な接触をしない。これは、サ
ンプルの無菌状態、およびサンプルから単離される任意の細胞画分の無菌状態を、大きく
改善する。医療提供者の視点から、これは、また、無菌状態の要件を大きく改善し、サン
プルから導出される関心の細胞画分が患者使用に関して無菌であることを保証するのを助
ける。追加的に、関心のサンプルからESW発生源を維持することは、発生器がエネルギ
ーまたは熱を関心のサンプルの中へ追加すること(それは、細胞に損傷を与えるかまたは
細胞を殺し、DNAに損傷を与え、収率を劇的に減少させる可能性がある)とはならない
ということを保証する。その点で、本開示によって提供されるデバイスは、超音波などの
ような他の公知のシステムに対する改善である。
【0052】
本開示によって提供される方法およびデバイスは、いくつかの実施形態では、30分以
内において、組織サンプルから所望の細胞画分を迅速に単離することができる。開示され
ている方法およびデバイスが使用され得る速度は、サンプルから単離される所望の細胞画
分が、即座の使用のために利用可能であり得るという点において、重大な利点を付与する
。
【0053】
方法
図1は、本開示によって提供される実施形態による、関心の細胞画分を組織サンプルか
ら単離する方法を提示している。
【0054】
示されている実施形態では、方法は、第1に対象から組織を抽出することによって始ま
る(100)。対外衝撃波にさらされるときに組織が破壊されることとなるという条件で
、組織は、任意のタイプのものであることが可能である。いくつかの実施形態では、組織
は、脂肪組織または脂質である。いくつかの実施形態では、組織は、内部器官、たとえば
、脳、咽頭、喉頭、心臓、動脈、筋肉、肝臓、胆嚢、腎臓、小腸、大腸、リンパ節、肺、
脾臓、骨髄、胃、静脈、膵臓、膀胱、骨、歯、象牙質、歯肉、または皮膚などからのもの
である。いくつかの実施形態では、組織は、内分泌系のコンポーネント、たとえば、松果
腺、下垂体、甲状腺、副腎、膵臓、卵巣、または睾丸からのものである。
【0055】
抽出は、任意の数の公知の方法を介して行われることが可能である。いくつかの実施形
態では、組織抽出は、シリンジを介して行われる。いくつかの実施形態では、組織抽出は
、外科的に行われ、組織サンプルが、対象から除去されると、第1の容器の中へ置かれる
ようになっている。
【0056】
次いで、組織は、プロセッシング容器またはカートリッジの中へ移送される105。本
開示によって提供されるデバイスは、高速で使いやすいESW細胞バイオプロセッシング
に必要とされるコンポーネントのすべてを提供する。開示されている方法および/または
デバイスのコンポーネントのうちのいくつかは、互いから分離可能であるにもかかわらず
、それらは、完全に無菌の様式で互いに接続するように構成されており、それによって、
プロセッシングの間の1つのコンポーネントから別のコンポーネントへのサンプルの移送
を可能にする。その点で、サンプルの全体が、単一のシステムの中でプロセッシングされ
、それによって、無菌状態を保証する。
【0057】
無菌の移送は、サンプルを外側の環境に露出させることなく実施される。その点で、移
送は、閉じた無菌の環境を維持することとなる任意の数の方式を介して行われることが可
能である。いくつかの実施形態では、移送は、対象から抽出されるサンプルを含有する第
1の容器と、プロセッシング容器またはカートリッジとの間で、オス型およびメス型のル
アーロックコネクターを互いに取り付けることによって達成される。いくつかの実施形態
では、移送は、無菌の接続デバイスを使用して、第1の容器およびプロセッシング容器ま
たはカートリッジを無菌ドッキングさせることによって達成される。サンプルは、機械的
にまたは重力流のいずれかによって、第1の容器からプロセッシング容器またはカートリ
ッジへ移送される。
【0058】
いくつかの実施形態では、第1の容器は、カートリッジの中へ挿入されており、無菌の
接続デバイスを使用して無菌ドッキングされ、カートリッジの中のプロセッシング容器に
なる。プロセッシングチャンバーとしての第1の容器は、すでにサンプルを含有している
。
【0059】
その点で、この開示において、1つの容器から別の容器へ移動させられるものとして、
組織および/または細胞サンプルが開示されるたびに、そのような移動は、閉じたシステ
ムの完全性を維持するように行われることが可能であり、それによって、サンプルを外側
の環境に露出させない。
【0060】
サンプルがプロセッシング容器またはカートリッジへ移送されると、組織サンプルは、
1回または複数回、洗浄される110。洗浄は、無菌の生理食塩水溶液の使用を介して、
本明細書で説明されているように行われることが可能である。洗浄は、サンプルがプロセ
ッシングの前に可能な限り多くの不純物を欠いていることを保証し、したがって、そこか
ら単離されることとなる細胞画分の純度レベルを向上させる。
【0061】
いくつかの実施形態では、洗浄は、プロセッシング容器またはカートリッジの機械的な
撹拌によって実施される。複数の洗浄ステップが望まれおよび/または必要である場合に
は、無菌の生理食塩水は、単一の洗浄が完了した後に、プロセッシング容器またはカート
リッジからドレン排出され、新しい無菌の生理食塩水が、それぞれの後続の洗浄のために
容器またはカートリッジの中へ導入される。その点で、無菌の生理食塩水がドレン排出さ
れ、新しい無菌の生理食塩水が容器またはカートリッジの中へ導入されるたびに、それは
、本明細書で説明されているように、閉じた無菌の環境を維持するように行われる。
【0062】
洗浄の後に、組織サンプルはプロセッシングされる115。示されているように、プロ
セッシングは、ESW、機械的衝撃、振動、および剪断、または、それらの組み合わせの
使用を介して、行われることが可能である。
【0063】
いくつかの実施形態では、プロセッシングは、ESWを介して行われ、組織サンプルが
、複数の小さい細胞群に分解される。いくつかの実施形態では、プロセッシングは、ES
Wを介して行われ、組織サンプルが、複数の小さい細胞群および複数の個々の細胞に分解
される。いくつかの実施形態では、プロセッシングは、ESWを介して行われ、組織サン
プルが、複数の個々の細胞に完全に分解される。
【0064】
いくつかの実施形態では、プロセッシングは、機械的衝撃および剪断を介して行われ、
組織サンプルが、複数の小さい細胞群に分解される。いくつかの実施形態では、プロセッ
シングは、機械的衝撃および剪断を介して行われ、組織サンプルが、複数の小さい細胞群
および複数の個々の細胞に分解される。いくつかの実施形態では、プロセッシングは、機
械的衝撃および剪断を介して行われ、組織サンプルは、複数の個々の細胞に完全に分解さ
れる。
【0065】
いくつかの実施形態では、プロセッシングは、ESWおよび機械的衝撃および剪断の組
み合わせを介して行われ、組織サンプルが、複数の小さい細胞群に分解される。いくつか
の実施形態では、プロセッシングは、ESWおよび機械的衝撃および剪断の組み合わせを
介して行われ、組織サンプルが、複数の小さい細胞群および複数の個々の細胞に分解され
る。いくつかの実施形態では、プロセッシングは、ESWおよび機械的衝撃および剪断の
組み合わせを介して行われ、組織サンプルが、複数の個々の細胞に完全に分解される。
【0066】
プロセッシングの後に、サンプルの残したものを表す細胞懸濁液(これは、複数の小さ
い細胞群、複数の個々の細胞、または、その両方である可能性がある)が、濾過および遠
心分離される120。濾過は、プロセッシング容器もしくはカートリッジとは別々のデバ
イスの中で、または、プロセッシング容器もしくはカートリッジそれ自体の中で、行われ
ることが可能である。いくつかの実施形態では、濾過は、別々のデバイスの中で行われ、
そのケースでは、細胞懸濁液は、本明細書で説明されているように、無菌の手段を介して
フィルターへ移送される。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液が容器またはカートリッ
ジから1つまたは複数の遠心チューブの中へ移動させられているときに、濾過が行われる
。
【0067】
いくつかの実施形態では、濾過デバイスへの移送は、プロセッシング容器またはカート
リッジと濾過デバイスとの間で、オス型のおよびメス型のルアーロックコネクターを互い
に取り付けることによって達成される。いくつかの実施形態では、移送は、無菌の接続デ
バイスを使用して、プロセッシング容器またはカートリッジおよび濾過デバイスを無菌ド
ッキングさせることによって達成される。サンプルは、機械的にまたは重力流のいずれか
によって、プロセッシング容器またはカートリッジから濾過デバイスへ移送される。
【0068】
いくつかの実施形態では、濾過は、本明細書で説明されているように、プロセッシング
容器またはカートリッジの中で行われる。
【0069】
さまざまな態様では、遠心分離は、プロセッシング容器またはカートリッジの外側で行
われる。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液は、プロセッシング容器またはカートリッ
ジの内側に位置付けされている1つまたは複数の遠心チューブへ移送される。充填される
ときに、遠心チューブは、本明細書で説明されているように、プロセッシング容器または
カートリッジから遠心分離機へ無菌の手段を介して移動させられる。
【0070】
いくつかの実施形態では、細胞懸濁液は、本明細書で説明されているように、プロセッ
シング容器またはカートリッジの外側に位置付けされている1つまたは複数の遠心チュー
ブへ、無菌の手段を介して移送される。充填されるときに、遠心チューブは、本明細書で
説明されているように、プロセッシング容器またはカートリッジから遠心分離機へ無菌の
手段を介して移動させられる。
【0071】
遠心分離の持続期間および速度は、プロセッシングされている組織タイプに応じて、変
化することが可能である。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液は、3~30分の期間間
、500g~2,000gの速度で遠心分離される。いくつかの実施形態では、細胞懸濁
液は、10~25分間、1,000g~1,800gの速度で遠心分離される。いくつか
の実施形態では、細胞懸濁液は、10分間1,200gで遠心分離される。いくつかの実
施形態では、細胞懸濁液は、7分間1,200gで遠心分離される。いくつかの実施形態
では、細胞懸濁液は、5分間1,200gで遠心分離される。いくつかの実施形態では、
細胞懸濁液は、3分間1,200gで遠心分離される。いくつかの実施形態では、細胞懸
濁液は、10分間900gで遠心分離される。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液は、
7分間900gで遠心分離される。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液は、5分間90
0gで遠心分離される。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液は、3分間900gで遠心
分離される。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液は、10分間600gで遠心分離され
る。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液は、7分間600gで遠心分離される。いくつ
かの実施形態では、細胞懸濁液は、5分間600gで遠心分離される。いくつかの実施形
態では、細胞懸濁液は、3分間600gで遠心分離される。
【0072】
細胞懸濁液の中に存在する複数の細胞タイプが遠心分離を介して互いから分離され得る
、多数の手段が存在している。たとえば、密度勾配が利用され得、遠心分離の間に、細胞
が、その固有の密度にしたがって、帯へと分離する。追加的に、サイズ排除プロトコルが
、サイズを介して細胞を分離するために使用され得る。追加的に、たとえば、プロセッシ
ングされる組織サンプルを静置させる(allowed to settle)ことによって、および、遠
心分離の前に、望ましくない細胞破片を所望の細胞画分から分離することによって、分離
は、遠心分離の前に始まることが可能である。使用される分離技法のタイプは、単離され
ることとなる所望の細胞画分に基づいて変化することが可能である。
【0073】
所望の細胞画分が単離されると、細胞画分は、細胞画分が導出された対象への投与のた
めに再懸濁され得る125。いくつかの実施形態では、所望の細胞画分は、遠心チューブ
から取得される流体の小さい体積の中に再懸濁される。いくつかの実施形態では、所望の
細胞画分は、無菌の生理食塩水の中に再懸濁される。
【0074】
1つの態様では、所望の細胞画分は、幹細胞であり、幹細胞が導出される組織は、脂質
である。
【0075】
脂質から幹細胞をプロセッシングする方法の第1の実施形態は、以下の通りである。
【0076】
脂質が、リポサクションを介して患者から取得される。リポサクションは、シリンジを
介して実施され得、ここで、脂質は、針を介して直接的に、または、リポサクションマシ
ンを介して、患者から除去される。リポサクションの間に除去される脂質の量は、望まれ
る幹細胞の数に応じて、変化することが可能である。いくつかの実施形態では、リポサク
ションは、ミニリポサクションであり、ミニリポサクションでは、約30ccから約50
ccの脂質が患者から除去される。いくつかの実施形態では、リポサクションは、マイク
ロリポサクションであり、マイクロリポサクションでは、約5ccから約29ccの脂質
が患者から除去される。いくつかの実施形態では、リポサクションは、典型的な臨床的リ
ポサクションであり、そのケースでは、300cc以上の脂質が患者から除去される。
【0077】
脂質が患者から除去されると、脂質は、無菌のプロセッシング容器またはカートリッジ
の中へ移送される。移送は、本明細書で説明されているように、無菌の手段を介して行わ
れる。いくつかの実施形態では、脂質は、シリンジを介して患者から除去され、シリンジ
とプロセッシング容器またはカートリッジとの間で、オス型およびメス型のルアーロック
コネクターを互いに取り付けることによって、シリンジからプロセッシング容器またはカ
ートリッジへ移送される。いくつかの実施形態では、脂質は、シリンジを介して患者から
除去され、シリンジは、シリンジと容器またはカートリッジとの間で、オス型およびメス
型のルアーロックコネクターを互いに取り付けることによって、プロセッシング容器また
はカートリッジの中で無菌ドッキングされている。いくつかの実施形態では、脂質は、シ
リンジを介して患者から除去され、シリンジとカートリッジの中のプロセッシング容器ま
たはカートリッジとの間で、オス型およびメス型のルアーロックコネクターを互いに取り
付けることによって、シリンジからプロセッシング容器またはカートリッジへ移送される
。いくつかの実施形態では、脂質は、リポサクションデバイスを介して患者から除去され
、無菌の接続デバイスを使用してリポサクションデバイスおよびプロセッシング容器また
はカートリッジを無菌ドッキングさせることによって、リポサクションデバイスからプロ
セッシング容器またはカートリッジへ移送される。
【0078】
いくつかの実施形態では、移送は、重力流を介して行われることが可能である。いくつ
かの実施形態では、移送は、機械的に行われることが可能であり、たとえば、シリンジの
プランジャーを物理的に押圧することによって、および、シリンジの内部からプロセッシ
ング容器またはカートリッジの内部へ脂質を押し込むことによって、行われることが可能
である。いくつかの実施形態では、移送は、ポンプなどのようなデバイスを介して行われ
ることが可能である。
【0079】
脂質を受け入れるために使用される容器またはカートリッジの容積は、患者から取得さ
れる脂質の量とともに変化することが可能である。いくつかの実施形態では、ミニリポサ
クションを介して除去された30ccから50ccの脂質が、9流量オンスから19流量
オンスの容積を有する容器またはカートリッジへ移送される。
【0080】
次いで、患者から除去される脂質の量に等しい無菌の生理食塩水の体積が、脂質を洗浄
するために、容器またはカートリッジへ移送される。例として、30ccの脂質が患者か
ら除去された場合には、次いで、30mLの無菌の生理食塩水が、サンプルを洗浄するた
めに使用される。いくつかの実施形態では、次いで、患者から除去される脂質の量よりも
大きい無菌の生理食塩水の体積が、脂質を洗浄するために、容器またはカートリッジへ移
送される。例として、30ccの脂質が患者から除去された場合には、次いで、35mL
の無菌の生理食塩水が、サンプルを洗浄するために使用される。いくつかの実施形態では
、次いで、患者から除去される脂質の量よりも小さい無菌の生理食塩水の体積が、脂質を
洗浄するために、容器またはカートリッジへ移送される。例として、30ccの脂質が患
者から除去された場合には、次いで、25mLの無菌の生理食塩水が、サンプルを洗浄す
るために使用される。いくつかの実施形態では、無菌の生理食塩水の体積の組み合わせが
、脂質を洗浄するために、脂質の量に追加される。容器またはカートリッジへの生理食塩
水の移送は、本明細書で説明されているように、システムの無菌状態を維持するように実
施される。いくつかの実施形態では、無菌の生理食塩水を保持する容器とプロセッシング
容器またはカートリッジとの間で、オス型およびメス型のルアーロックコネクターを互い
に取り付けることによって、無菌の生理食塩水は、容器またはカートリッジへ移送される
。いくつかの実施形態では、無菌の接続デバイスを使用して、無菌の生理食塩水容器およ
びプロセッシング容器またはカートリッジを無菌ドッキングさせることによって、無菌の
生理食塩水は、容器またはカートリッジへ移送される。
【0081】
洗浄は、脂質および無菌の生理食塩水を含有する容器またはカートリッジを穏やかに振
るかまたは旋回させることによって実施される。
【0082】
次いで、容器またはカートリッジは、(今では洗浄された)脂質が無菌の生理食塩水か
ら分離されるように置かれる。脂質は生理食塩水よりも密度が低いので、脂質は、生理食
塩水の上部に上昇して浮かぶこととなる。分離が行われるために必要とされる時間の量は
、脂質サンプルの個々の構成に応じて変化することとなる。いくつかの実施形態では、分
離は、1分から30分で生じ得る。いくつかの実施形態では、分離は、1分から15分で
生じ得る。いくつかの実施形態では、分離は、1分から10分で生じ得る。いくつかの実
施形態では、分離は、1分から5分で生じ得る。いくつかの実施形態では、分離は、10
秒から1分で生じ得る。
【0083】
次いで、生理食塩水は、可能な限り完全に容器またはカートリッジからドレン排出され
、したがって、脂質だけが残る。ドレン排出は、本方法において利用される容器またはカ
ートリッジのタイプに応じて、さまざまな手段を介して行われることが可能である。いく
つかの実施形態では、生理食塩水は、容器またはカートリッジの底部に位置付けされてい
るチューブを介して、容器またはカートリッジから外へドレン排出される。ドレン排出は
、シリンジもしくはポンプのいずれかを使用して能動的に進行するか、または、重力流を
介して受動的に進行することが可能である。いくつかの実施形態では、ドレン排出は、本
明細書で説明されているように、無菌のシステムの完全性を維持するように行われる。
【0084】
洗浄の完了後に、脂質が黄金色になり、生理食塩水がわずかにだけ濁るまで、洗浄が繰
り返される。いくつかの実施形態では、洗浄は、1~5回行われ、いくつかの実施形態で
は、1~4回行われ、いくつかの実施形態では、1~3回行われ、いくつかの実施形態で
は、1~2回行われ、いくつかの実施形態では、1回行われる。
【0085】
洗浄が完了すると、脂質は、プロセッシングのために準備される。
【0086】
随意的に、これは必要とされないが、無菌の生理食塩水が、プロセッシングのためのバ
ッグに追加される。生理食塩水の追加は、細胞および/または小さい細胞群がプロセッシ
ングの間に互いから離れるように自由に移動できる空間を提供することとなり、それによ
って、脂質を個々の細胞へと分解することを助ける。生理食塩水が追加される場合には、
本明細書で説明されているように、無菌のシステムの完全性を維持することとなる様式で
、生理食塩水が追加される。
【0087】
随意的に追加される生理食塩水の体積は、変化することが可能である。いくつかの実施
形態では、追加される生理食塩水の体積は、患者から除去される脂質の体積の0倍から2
倍の範囲にある。いくつかの実施形態では、等しい量の生理食塩水が使用される(たとえ
ば、30ccの脂質に対して30mLの生理食塩水)。
【0088】
過剰な空気が、ポンプまたはシリンジを使用して、容器またはカートリッジから除去さ
れる。いくつかの実施形態では、過剰な空気が、無菌の生理食塩水洗浄液がそこからドレ
ン排出される容器またはカートリッジの底部に位置付けされている同じチューブから除去
される。いくつかの実施形態では、空気は、本明細書で説明されているように、無菌の閉
じたシステムの完全性を維持する様式でドレン排出される。
【0089】
次いで、プロセッシング容器またはカートリッジは、プロセッシング装置へ移動させら
れる。適切なプロセッシング装置200の例が、
図2に示されている。示されている実施
形態では、プロセッシング容器またはカートリッジ205は、プロセッシングのためのリ
ジッドプラットフォーム210の上に固着されている。プラットフォーム210は、ES
Wプロセッシングの間に、容器またはカートリッジ205の移動を制御する。
【0090】
プラットフォーム210は、木材、金属、プラスチック、およびアクリルなどを含む、
任意の適切なリジッド材料から作製され得る。いくつかの実施形態では、プラットフォー
ム210は、木材から作製されている。
【0091】
プロセッシング装置200は、容器またはカートリッジ205の内部に衝撃波を送達す
ることができる衝撃波アプリケーター215を収容している。衝撃波アプリケーター21
5は、アプリケータープラットフォーム220を介してプロセッシング装置200の上に
収容されている。アプリケータープラットフォーム220および衝撃波アプリケーター2
15は、容器またはカートリッジ205の中に含有されている脂質から所定の距離だけ離
れて維持され、衝撃波アプリケーター215が、決して、脂質と直接的に接触した状態に
置かれないようになっている。これは、脂質へ送達される衝撃波が対外的であり、または
ESWであるということを保証する。いくつかの実施形態では、衝撃波アプリケーター2
15は、プロセッシング容器またはカートリッジ205と直接的に接触した状態に置かれ
ていてもよい。そのような実施形態では、容器またはカートリッジ205の壁部は、衝撃
波アプリケーター215が決して脂質と直接的に接触しないということを保証する。
【0092】
アプリケータープラットフォーム220の移動、ひいては、衝撃波アプリケーター21
5の移動は、3つの方向の平面(X、Y、およびZ)の中で行われることが可能であり、
そのそれぞれは、それ自身のモーター:X平面モーター230、Y平面モーター235、
およびZ平面モーター240によって制御される。いくつかの実施形態では、これらのモ
ーターは、NEMA 17ステッパーモーターである。モーター230、235、および
240のそれぞれは、モーターコントローラー225によって制御され、モーターコント
ローラー225は、容器またはカートリッジ205の上方および周りで、アプリケーター
プラットフォーム220および衝撃波アプリケーター215の移動を3次元で可能にする
。いくつかの実施形態では、モーターは、Marlinファームウェアによってプログラ
ムされたArduinoマイクロプロセッサーv6ボードによって制御される。いくつか
の実施形態では、モーターは、Marlinファームウェアを備えたArduino v
6ボードによって制御される。いくつかの実施形態では、X平面モーター230だけが使
用される。いくつかの実施形態では、Y平面モーター235だけが使用される。いくつか
の実施形態では、Z平面モーター240だけが使用される。いくつかの実施形態では、X
平面モーター230だけが使用される。いくつかの実施形態では、X平面モーター230
およびY平面モーター235だけが使用される。いくつかの実施形態では、X平面モータ
ー230およびZ平面モーター240だけが使用される。いくつかの実施形態では、Y平
面モーター235およびZ平面モーター240だけが使用される。いくつかの実施形態で
は、X平面モーター230、Y平面モーター235、およびZ平面モーター240が使用
される。
【0093】
アプリケータープラットフォーム220および衝撃波アプリケーター215のこの3次
元の移動は、抽出されるサンプルの中の脂質のすべてが、プロセッシングの間に対外衝撃
波に露出されることを可能にする。
【0094】
次いで、脂質をバラバラにするために、衝撃波が、衝撃波アプリケーター215から、
トランスミッションゲル、または、トランスミッションゲルを含有する膜を通して、容器
またはカートリッジ205の壁部を通して、脂質サンプルへ送達され、小さい細胞群およ
び個々の細胞を脂質から切り離す。いくつかの実施形態では、トランスミッションゲルは
、DJO,LLC,1430 Decision Street,Vista,CA 9
2081,USAによってChattanoogaのために製造されるREF 4248
Conductor Transmission Gelである。プロセッシングの前
に無菌の生理食塩水が脂質に追加されるそれらの実施形態では、脂質から切り離された小
さい細胞群および/または個々の細胞が、生理食塩水の中へ移動することとなる。
【0095】
衝撃波アプリケーター215は、衝撃波発生器245によって動力を与えられ、衝撃波
発生器245は、ESWを作り出し、ESWは、衝撃波アプリケーター215を介して脂
質へ伝送される。いくつかの実施形態では、衝撃波発生器は、Storz Medica
l AG,8274 Tagerwilen,Switzerland製のMaster
Puls MP100である。いくつかの実施形態では、衝撃波発生器は、Lumsai
l Industrial Inc.,4/F,No. 9Yi,Lane 2,Sui
de Road,Shanghai,200331,China製のBS-SWT2Xで
ある。
【0096】
脂質へ送達されるESWのパワーは、変化することが可能である。たとえば、厚い壁で
囲まれた容器またはカートリッジ205の壁部を透過するために、ESWのパワーを増加
させることが必要である可能性がある。一般的に、脂質へ送達されるESWのパワーは、
容器もしくはカートリッジ205の壁部の厚さ、および/または、容器もしくはカートリ
ッジ205が作製されている材料に応じて、変化することが可能である。いくつかの実施
形態では、脂質へ送達されるESWのパワーは、0.5barから5.0barの範囲に
ある。いくつかの実施形態では、脂質へ送達されるESWのパワーは、1.0barから
4.5barの範囲にある。いくつかの実施形態では、脂質へ送達されるESWのパワー
は、1.5barから4.0barの範囲にある。いくつかの実施形態では、脂質へ送達
されるESWのパワーは、2.0barから3.5barの範囲にある。いくつかの実施
形態では、容器205は、0.25mm厚の壁部を有するビニールバッグであり、ESW
のパワーレベルは、2.0barから2.5barの範囲にある。
【0097】
衝撃波アプリケーター215によって送達されるESWによってカバーされるエリアは
、変化することが可能である。衝撃波アプリケーター215によってカバーされるエリア
が大きくなればなるほど、ESWに露出される脂質の表面積は大きくなる。いくつかの実
施形態では、衝撃波アプリケーター215によってカバーされる合計面積は、1cm2か
ら100cm2の範囲にあり、いくつかの実施形態では、1cm2から90cm2の範囲
にあり、いくつかの実施形態では、1cm2から80cm2の範囲にあり、いくつかの実
施形態では、1cm2から70cm2の範囲にあり、いくつかの実施形態では、1cm2
から60cm2の範囲にあり、いくつかの実施形態では、1cm2から50cm2の範囲
にあり、いくつかの実施形態では、1cm2から40cm2の範囲にあり、いくつかの実
施形態では、1cm2から30cm2の範囲にあり、いくつかの実施形態では、1cm2
から20cm2の範囲にあり、いくつかの実施形態では、1cm2から10cm2の範囲
にあり、いくつかの実施形態では、1cm2から5cm2の範囲にある。いくつかの実施
形態では、衝撃波アプリケーター215によってカバーされる合計面積は、5cm2であ
る。
【0098】
1つの実施形態では、容器205は、0.25mm厚の壁部を有する19オンスのビニ
ールバッグであり、患者から取得される脂質の合計量は、30ccであり、および、随意
的な追加の30mLの生理食塩水(脂質サンプルに等しい体積)が、プロセッシングの前
にビニールバッグに追加される。この実施形態では、ESWに露出されるバッグの合計面
積、ひいては、脂質サンプルの合計量は、おおよそ5cm2である。
【0099】
脂質サンプルへ送達される衝撃波の数は、変化することが可能である。いくつかの実施
形態では、衝撃波の合計数は、5,000から100,000の範囲にあり、いくつかの
実施形態では、10,000から50,000の範囲にあり、いくつかの実施形態では、
10,000から25,000の範囲にあり、いくつかの実施形態では、10,000か
ら20,000の範囲にある。いくつかの実施形態では、衝撃波の合計数は、25,00
0である。
【0100】
この実施形態では、幹細胞は、患者から取得される脂質サンプルから分離される。衝撃
波アプリケーター215の上の5cm2のアプリケーターチップを使用して、2.0から
2.5のbar範囲における10,000から50,000の衝撃波数範囲は、幹細胞お
よび間質血管細胞画分の両方を脂質から分離するのに十分である。本明細書で使用されて
いるように、「間質血管細胞画分」は、細胞画分(これは、いくつかの実施形態では、脂
質である)を分離および解離することから取得される細胞を含む、プロセッシングされた
組織サンプルから取得される細胞画分を意味している。間質血管細胞画分は、限定するこ
となく、なかでも、幹細胞、成長因子、および前駆細胞を含む。
【0101】
ESWが脂質サンプルに印加された後に、容器またはカートリッジは、短い時間の期間
にわたって、機械的な撹拌にさらされる。いくつかの実施形態では、機械的な撹拌は振る
ことである。いくつかの実施形態では、機械的な撹拌は、1回または複数回、容器または
カートリッジ205を逆さまにすることである。いくつかの実施形態では、短い時間の期
間は、1秒から30秒の範囲にあり、いくつかの実施形態では、1秒から15秒の範囲に
あり、いくつかの実施形態では、1秒から10秒の範囲にある。いくつかの実施形態では
、短い時間の期間は、おおよそ10秒である。撹拌は、脂質から遊離された幹細胞および
間質血管細胞画分が、容器またはカートリッジ205の中に依然として存在し得る脂肪質
の細胞破片および任意のなかなか消えない脂質組織から分離することを可能にする。
【0102】
次いで、(今ではプロセッシングされた)脂質が、ESWによって脂質から分離された
幹細胞および間質血管細胞画分を今では含有する無菌の生理食塩水から分離されるように
、容器またはカートリッジ205は置かれる。脂質は、幹細胞を含有する生理食塩水より
も密度が低いので、脂質は、生理食塩水の上部に上昇して浮かぶこととなる。分離が行わ
れるために必要とされる時間の量は、脂質サンプルの個々の構成に応じて変化することと
なる。いくつかの実施形態では、分離は、1分から30分で生じ得る。いくつかの実施形
態では、分離は、1分から15分で生じ得る。いくつかの実施形態では、分離は、1分か
ら10分で生じ得る。いくつかの実施形態では、分離は、1分から5分で生じ得る。いく
つかの実施形態では、分離は、10秒から1分で生じ得る。いくつかの実施形態では、分
離は、1分未満に行われることが可能である。
【0103】
幹細胞は、ここで、脂質サンプルから分離されており、ここで、無菌の生理食塩水層の
中に懸濁している。
【0104】
次いで、幹細胞を含有する生理食塩水層は、可能な限り完全に容器またはカートリッジ
205から除去され、したがって、脂質だけが残る。除去は、本方法において利用される
容器またはカートリッジ205のタイプに応じて、さまざまな手段を介して行われること
が可能である。いくつかの実施形態では、生理食塩水は、容器またはカートリッジ205
の底部に位置付けされているチューブを介して、容器またはカートリッジ205から外へ
ドレン排出される。ドレン排出は、シリンジもしくはポンプのいずれかを使用して能動的
に進行するか、または、重力流を介して受動的に進行することが可能である。いくつかの
実施形態では、幹細胞を含有する層は、本明細書で説明されているように、閉じた無菌の
環境の完全性を維持することとなる様式で除去される。
【0105】
いくつかの実施形態では、幹細胞を含有する生理食塩水層は、容器またはカートリッジ
205からの除去の間に、フィルターを通過させられる。フィルターのサイズは変化する
ことが可能である。いくつかの実施形態では、フィルターサイズは、40μmから100
μmの範囲にある。いくつかの実施形態では、フィルターサイズは、70μmである。さ
まざまな実施形態では、フィルターは、ナイロンである。
【0106】
容器またはカートリッジ205からの除去の後または間のいずれかにおいて、幹細胞を
含有する生理食塩水は、1つまたは複数の遠心チューブの中へ移動させられる。いくつか
の実施形態では、移動は、本明細書で説明されているように、閉じた無菌の環境の完全性
を維持することとなる様式で行われる。遠心チューブの底部においてペレットの中へ幹細
胞を濃縮させるために、遠心分離が続く。
【0107】
幹細胞は、3分から10分にわたる500gから1,600gでの遠心分離によって濃
縮される。いくつかの実施形態では、幹細胞は、10分にわたる1,200gでの遠心分
離によって濃縮される。
【0108】
流体は、チューブから除去され、底部に幹細胞だけを残す。流体は、デカンティング、
吸引、または同様の手段によって除去され得る。
【0109】
少量の流体が、幹細胞を再懸濁させるために遠心チューブの中へ入れられる。いくつか
の実施形態では、遠心チューブに追加される流体の量は、1mLから5mLの範囲にある
。いくつかの実施形態では、流体は、生理食塩水、多血小板血漿、ヒアルロン酸、固定用
ゲル(fixing gel)、ヒドロゲル、スカッフォールド、フィブリン、グルー、または、先
述のもののいずれかの組み合わせである。いくつかの実施形態では、細胞が、遠心分離吸
引物の中に再懸濁される。
【0110】
幹細胞が懸濁液の中に浮かんでいる状態で、幹細胞は、使用のための準備ができている
。そのような使用は、限定することなく、幹細胞が導出された患者の中への再導入、凍結
保存、および膨張などを含むことが可能である。いくつかの実施形態では、濃縮されて再
懸濁された幹細胞は、患者使用のために、皮下注射針を介してシリンジの中へ移動させら
れる。いくつかの実施形態では、濃縮されて再懸濁された幹細胞は、心臓、筋肉、骨、軟
骨、肝臓、腎臓、または、他の組織および器官構造体へと成長するための組織スカッフォ
ールドの中へ種を撒かれる。いくつかの実施形態では、濃縮されて再懸濁された幹細胞は
、幹細胞が多能性転写因子(pluripotency transcription factors)を表現することを引
き起こすによって、人工多能性幹細胞へと変換される。
【0111】
脂質から幹細胞をプロセッシングする方法の第2の実施形態は、以下の通りである。
【0112】
脂質が、リポサクションを介して患者から取得される。リポサクションは、シリンジを
介して実施され得、ここで、脂質は、針を介して直接的に、または、リポサクションマシ
ンを介して、患者から除去される。リポサクションの間に除去される脂質の量は、望まれ
る幹細胞の数に応じて、変化することが可能である。いくつかの実施形態では、脂質は、
シリンジを介して患者から除去され、シリンジは、シリンジとカートリッジとの間で、オ
ス型およびメス型のルアーロックコネクターを互いに取り付けることによって、カートリ
ッジの中で無菌ドッキングされている。いくつかの実施形態では、脂質は、シリンジを介
して患者から除去され、シリンジとカートリッジの中のプロセッシング容器またはカート
リッジとの間で、オス型およびメス型のルアーロックコネクターを互いに取り付けること
によって、シリンジからプロセッシング容器またはカートリッジへ移送される。いくつか
の実施形態では、リポサクションは、ミニリポサクションであり、ミニリポサクションで
は、約30ccから約50ccの脂質が患者から除去される。いくつかの実施形態では、
リポサクションは、マイクロリポサクションであり、マイクロリポサクションでは、約5
ccから約29ccの脂質が患者から除去される。いくつかの実施形態では、リポサクシ
ョンは、典型的な臨床的リポサクションであり、そのケースでは、300cc以上の脂質
が患者から除去される。
【0113】
脂質が患者から除去されると、脂質は、無菌のプロセッシング容器またはカートリッジ
の中へ移送される。移送は、本明細書で説明されているように、無菌の手段を介して行わ
れる。いくつかの実施形態では、脂質は、シリンジを介して患者から除去され、シリンジ
とプロセッシング容器またはカートリッジとの間で、オス型およびメス型のルアーロック
コネクターを互いに取り付けることによって、シリンジからプロセッシング容器またはカ
ートリッジへ移送される。いくつかの実施形態では、脂質は、リポサクションデバイスを
介して患者から除去され、無菌の接続デバイスを使用してリポサクションデバイスおよび
プロセッシング容器またはカートリッジを無菌ドッキングさせることによって、リポサク
ションデバイスからプロセッシング容器またはカートリッジへ移送される。
【0114】
いくつかの実施形態では、移送は、重力流を介して行われることが可能である。いくつ
かの実施形態では、移送は、機械的に行われることが可能であり、たとえば、シリンジの
プランジャーを物理的に押圧することによって、および、シリンジの内部からプロセッシ
ング容器またはカートリッジの内部へ脂質を押し込むことによって、行われることが可能
である。いくつかの実施形態では、移送は、ポンプなどのようなデバイスを介して行われ
ることが可能である。
【0115】
脂質を受け入れるために使用される容器またはカートリッジの容積は、患者から取得さ
れる脂質の量とともに変化することが可能である。いくつかの実施形態では、ミニリポサ
クションを介して除去された30ccから50ccの脂質が、9流量オンスから19流量
オンスの容積を有する容器またはカートリッジへ移送される。
【0116】
次いで、患者から除去される脂質の量に等しい無菌の生理食塩水の体積が、脂質を洗浄
するために、容器またはカートリッジへ移送される。例として、30ccの脂質が患者か
ら除去された場合には、次いで、30mLの無菌の生理食塩水が、サンプルを洗浄するた
めに使用される。いくつかの実施形態では、脂質は、シリンジを介して患者から除去され
、シリンジは、シリンジとカートリッジとの間で、オス型およびメス型のルアーロックコ
ネクターを互いに取り付けることによって、カートリッジの中で無菌ドッキングされてい
る。いくつかの実施形態では、脂質は、シリンジを介して患者から除去され、シリンジと
カートリッジの中のプロセッシング容器またはカートリッジとの間で、オス型およびメス
型のルアーロックコネクターを互いに取り付けることによって、シリンジからプロセッシ
ング容器またはカートリッジへ移送される。容器またはカートリッジへの生理食塩水の移
送は、本明細書で説明されているように、システムの無菌状態を維持するように実施され
る。いくつかの実施形態では、無菌の生理食塩水を保持する容器とプロセッシング容器ま
たはカートリッジとの間で、オス型およびメス型のルアーロックコネクターを互いに取り
付けることによって、無菌の生理食塩水は、容器またはカートリッジへ移送される。いく
つかの実施形態では、無菌の接続デバイスを使用して、無菌の生理食塩水容器およびプロ
セッシング容器またはカートリッジを無菌ドッキングさせることによって、無菌の生理食
塩水は、容器またはカートリッジへ移送される。
【0117】
洗浄は、脂質および無菌の生理食塩水を含有する容器またはカートリッジを穏やかに振
るかまたは旋回させることによって実施される。
【0118】
次いで、容器またはカートリッジは、(今では洗浄された)脂質が無菌の生理食塩水か
ら分離されるように置かれる。脂質は生理食塩水よりも密度が低いので、脂質は、生理食
塩水の上部に上昇して浮かぶこととなる。分離が行われるために必要とされる時間の量は
、脂質サンプルの個々の構成に応じて変化することとなる。いくつかの実施形態では、分
離は、1分から30分で生じ得る。いくつかの実施形態では、分離は、1分から15分で
生じ得る。いくつかの実施形態では、分離は、1分から10分で生じ得る。いくつかの実
施形態では、分離は、1分から5分で生じ得る。
【0119】
次いで、生理食塩水は、可能な限り完全に容器またはカートリッジからドレン排出され
、したがって、脂質だけが残る。ドレン排出は、本方法において利用される容器またはカ
ートリッジのタイプに応じて、さまざまな手段を介して行われることが可能である。いく
つかの実施形態では、生理食塩水は、容器またはカートリッジの底部に位置付けされてい
るチューブを介して、容器またはカートリッジから外へドレン排出される。ドレン排出は
、シリンジもしくはポンプのいずれかを使用して能動的に進行するか、または、重力流を
介して受動的に進行することが可能である。いくつかの実施形態では、ドレン排出は、本
明細書で説明されているように、無菌のシステムの完全性を維持するように行われる。
【0120】
洗浄の完了後に、脂質が黄金色になり、生理食塩水がわずかにだけ濁るまで、洗浄が繰
り返される。いくつかの実施形態では、洗浄は、1~5回行われ、いくつかの実施形態で
は、1~4回行われ、いくつかの実施形態では、1~3回行われ、いくつかの実施形態で
は、1~2回行われ、いくつかの実施形態では、1回行われ。
【0121】
洗浄が完了すると、脂質は、プロセッシングのために準備される。
【0122】
随意的に、これは必要とされないが、無菌の生理食塩水が、プロセッシングのためのバ
ッグに追加される。生理食塩水の追加は、細胞および/または小さい細胞群がプロセッシ
ングの間に互いから離れるように自由に移動できる空間を提供することとなり、それによ
って、脂質を個々の細胞へと分解することを助ける。生理食塩水が追加される場合には、
本明細書で説明されているように、無菌のシステムの完全性を維持することとなる様式で
、生理食塩水が追加される。
【0123】
随意的に追加される生理食塩水の体積は、変化することが可能である。いくつかの実施
形態では、追加される生理食塩水の体積は、患者から除去される脂質の体積の0倍から2
倍の範囲にある。いくつかの実施形態では、等しい量の生理食塩水が使用される(たとえ
ば、30ccの脂質に対して30mLの生理食塩水)。
【0124】
過剰な空気が、ポンプまたはシリンジを使用して、容器またはカートリッジから除去さ
れる。いくつかの実施形態では、過剰な空気が、無菌の生理食塩水洗浄液がそこからドレ
ン排出される容器またはカートリッジの底部に位置付けされている同じチューブから除去
される。いくつかの実施形態では、空気は、本明細書で説明されているように、無菌の閉
じたシステムの完全性を維持する様式でドレン排出される。
【0125】
次いで、プロセッシング容器またはカートリッジは、プロセッシング装置へ移動させら
れる。適切なプロセッシング装置300の例が、
図3に示されている。示されている実施
形態では、プロセッシング容器またはカートリッジ205は、プロセッシングのためのリ
ジッドプラットフォーム315の上に固着されている。プラットフォーム315は、プロ
セッシングの間に、容器またはカートリッジ205の移動を制御する。
【0126】
プラットフォーム315は、木材およびプラスチックなどを含む、任意の適切なリジッ
ド材料から作製され得る。いくつかの実施形態では、プラットフォーム315は、木材か
ら作製されている。
【0127】
この実施形態では、機械的衝撃が使用され、脂質組織を粉砕し、幹細胞を解放する。
【0128】
機械的衝撃は、モーター305によって発生させられ、モーター305は、インパクト
アーム310を駆動し、インパクトアーム310は、プロセッシングされることとなる脂
質を含有する容器またはカートリッジ205と物理的な接触をする。この実施形態では、
モーター305は、インパクトアーム310を駆動し、インパクトアーム310が上下に
関節運動するようになっており、その運動の範囲の底部において、容器またはカートリッ
ジ205と接触する。いくつかの実施形態では、モーターは、Black and De
cker,1000 Stanley Drive,New Britain,CT 0
6053,USA製のモデルBDEJS300Cからの4.5Ampモーターである。
【0129】
いくつかの実施形態では、モーター305は、可変速モーターであり、この可変速モー
ターは、0rpmから30,000rpmの範囲にあるレートで、いくつかの実施形態で
は、0rpmから20,000rpmの範囲にあるレートで、いくつかの実施形態では、
0rpmから10,000rpmの範囲にあるレートで、いくつかの実施形態では、0r
pmから5,000rpmの範囲にあるレートで、インパクトアームを駆動するために調
節可能である。
【0130】
いくつかの実施形態では、モーター305は、ギヤリングを含み、ギヤリングは、より
多くのトルクを発生させるために、モーター305が全速力(いくつかの実施形態では、
30,000rpm)で動作しているときに、インパクトアーム310の速度を低減させ
ることができる。これが行われるときに、インパクトアーム310によって発生させられ
る運動量は、容器またはカートリッジ205の中の組織へ移送される。これは、脂質組織
が分解され、幹細胞が脂肪質の組織から遊離される、レートを大きく増加させる。
【0131】
1つの実施形態では、モーター305は、30,000rpmから3,000rpmの
速度において、1/10の減速を可能にするようにギヤを取り付けられている。この実施
形態では、モーター305は、0.75インチのギヤ直径を含み、これは、この1/10
の減速を可能にする。3,000rpm、および、0.75インチのギヤ直径において、
インパクトアーム310は、毎秒117.8インチの速度に到達し、その速度において、
インパクトアーム310は、前後に関節運動し、したがって、容器またはカートリッジ2
05と接触する。インパクトアーム310が容器またはカートリッジ205と接触するこ
とができる速度は、大きく低減されたプロセッシング時間を可能にする。これは、非常に
長いプロセッシング時間を必要とする、公知のまたは既存の組織プロセッシング技法に対
して、重大な利点を持つ。
【0132】
組織は、脂質が所望のレベルに分解されるまで、または、所望の量の幹細胞が脂質から
遊離されるまで、機械的衝撃に露出される。いくつかの実施形態では、脂質サンプルは、
30分以内にプロセッシングされる。いくつかの実施形態では、脂質サンプルは、30秒
から30分の間でプロセッシングされ、いくつかの実施形態では、30秒から20分の間
でプロセッシングされ、いくつかの実施形態では、30秒から10分の間でプロセッシン
グされ、いくつかの実施形態では、30秒から5分の間でプロセッシングされる。
【0133】
プラットフォーム315の移動は、3つの方向の平面(X、Y、およびZ)の中で行わ
れ、そのそれぞれは、それ自身のモーター:X平面モーター230、Y平面モーター23
5、およびZ平面モーター240によって制御される。いくつかの実施形態では、X平面
モーター230だけが使用される。いくつかの実施形態では、Y平面モーター235だけ
が使用される。いくつかの実施形態では、Z平面モーター240だけが使用される。いく
つかの実施形態では、X平面モーター230だけが使用される。いくつかの実施形態では
、X平面モーター230およびY平面モーター235だけが使用される。いくつかの実施
形態では、X平面モーター230およびZ平面モーター240だけが使用される。いくつ
かの実施形態では、Y平面モーター235およびZ平面モーター240だけが使用される
。いくつかの実施形態では、X平面モーター230、Y平面モーター235、およびZ平
面モーター240が使用される。モーター230、235、および240のそれぞれは、
モーターコントローラー225によって制御され、モーターコントローラー225は、3
次元でのプラットフォーム315の移動を可能にする。
【0134】
プラットフォーム315のこの最大で3次元の移動は、抽出されたサンプルの中の脂質
のすべてが、プロセッシングの間に機械的衝撃に露出されることを可能にし、サンプルお
よびプロセッシング装置の最適な位置決めを可能にする。
【0135】
長さ、インパクト表面の面積、インパクト表面の数、および、インパクトアーム310
の形状は、変化することが可能である。いくつかの実施形態では、インパクト表面の合計
面積、および/または、インパクト表面の合計数を増加させることは、脂質サンプルをプ
ロセッシングするために必要とされる時間の量を低減させる。
【0136】
次いで、(今ではプロセッシングされた)脂質が、機械的衝撃によって脂質から分離さ
れた幹細胞を今では含有する無菌の生理食塩水から分離されるように、容器またはカート
リッジ205は置かれる。脂質は、生理食塩水よりも密度が低いので、脂質は、生理食塩
水の上部に上昇して浮かぶこととなる。分離が行われるために必要とされる時間の量は、
脂質サンプルの個々の構成に応じて変化することとなる。いくつかの実施形態では、分離
は、1分から30分で生じ得る。いくつかの実施形態では、分離は、1分から15分で生
じ得る。いくつかの実施形態では、分離は、1分から10分で生じ得る。いくつかの実施
形態では、分離は、1分から5分で生じ得る。いくつかの実施形態では、分離は、1分未
満に行われることが可能である。いくつかの実施形態では、分離は、10秒から1分で生
じ得る。いくつかの実施形態では、分離は、1分未満に行われることが可能である。
【0137】
幹細胞および間質血管細胞画分は、ここで、脂質サンプルから分離されており、ここで
、生理食塩水の中に懸濁している。
【0138】
次いで、幹細胞を含有する生理食塩水層は、可能な限り完全に容器またはカートリッジ
205から除去され、したがって、脂質だけが残る。除去は、本方法において利用される
容器またはカートリッジ205のタイプに応じて、さまざまな手段を介して行われること
が可能である。いくつかの実施形態では、生理食塩水は、容器またはカートリッジ205
の底部に位置付けされているチューブを介して、容器またはカートリッジ205から外へ
ドレン排出される。ドレン排出は、シリンジもしくはポンプのいずれかを使用して能動的
に進行するか、または、重力流を介して受動的に進行することが可能である。いくつかの
実施形態では、幹細胞を含有する層は、本明細書で説明されているように、閉じた無菌の
環境の完全性を維持することとなる様式で除去される。
【0139】
いくつかの実施形態では、幹細胞を含有する生理食塩水は、容器またはカートリッジ2
05からの除去の間に、フィルターを通過させられる。フィルターのサイズは変化するこ
とが可能である。いくつかの実施形態では、フィルターサイズは、40μmから100μ
mの範囲にある。いくつかの実施形態では、フィルターサイズは、70μmである。さま
ざまな実施形態では、フィルターは、ナイロンである。
【0140】
容器またはカートリッジ205からの除去の後または間のいずれかにおいて、幹細胞を
含有する生理食塩水は、1つまたは複数の遠心チューブの中へ移動させられる。いくつか
の実施形態では、移動は、本明細書で説明されているように、閉じた無菌の環境の完全性
を維持することとなる様式で行われる。遠心チューブの底部においてペレットの中へ幹細
胞を濃縮させるために、遠心分離が続く。
【0141】
幹細胞は、3分から10分にわたる500gから1,600gでの遠心分離によって濃
縮される。いくつかの実施形態では、幹細胞は、10分にわたる1,200gでの遠心分
離によって濃縮される。
【0142】
流体は、チューブから除去され、底部に幹細胞だけを残す。流体は、デカンティング、
吸引、または同様の手段によって除去され得る。
【0143】
少量の流体が、幹細胞を再懸濁させるために遠心チューブの中へ入れられる。いくつか
の実施形態では、遠心チューブに追加される流体の量は、1mLから5mLの範囲にある
。いくつかの実施形態では、流体は、生理食塩水、多血小板血漿、ヒアルロン酸、固定用
ゲル、ヒドロゲル、スカッフォールド、フィブリングルー、グルー、または、先述のもの
のいずれかの組み合わせである。いくつかの実施形態では、細胞が、遠心分離吸引物の中
に再懸濁される。
【0144】
幹細胞が懸濁液の中にある状態で、幹細胞は、使用のための準備ができている。そのよ
うな使用は、限定することなく、幹細胞が導出された患者の中への再導入、凍結保存、お
よび膨張などを含むことが可能である。いくつかの実施形態では、濃縮されて再懸濁され
た幹細胞は、患者使用のために、皮下注射針を介してシリンジの中へ移動させられる。い
くつかの実施形態では、濃縮されて再懸濁された幹細胞は、心臓、筋肉、骨、軟骨、肝臓
、腎臓、または、他の組織および器官構造体へと成長するための組織スカッフォールドの
中へ種を撒かれる。いくつかの実施形態では、濃縮されて再懸濁された幹細胞は、幹細胞
が多能性転写因子を表現することを引き起こすによって、人工多能性幹細胞へと変換され
る。
【0145】
上記に説明されている第1および第2の方法では、容器またはカートリッジ、および、
機械的なエネルギー供給源は、移動可能である。いくつかの実施形態では、脂質は、ES
Wまたはインパクト表面の下に設置されているチャンバーを通してポンプ送りされる。こ
れらの実施形態では、バッグおよび機械的なエネルギー供給源の両方は、適切な場所に固
定されており、組織は、チャンバーを通過させられ、ESWおよび/または機械的なエネ
ルギー供給源に露出される。
【0146】
脂質から幹細胞をプロセッシングする方法の第3の実施形態は、以下の通りである。
【0147】
脂質が、リポサクションを介して患者から取得される。リポサクションは、シリンジを
介して実施され得、ここで、脂質は、針を介して直接的に、または、リポサクションマシ
ンを介して、患者から除去される。リポサクションの間に除去される脂質の量は、望まれ
る幹細胞の数に応じて、変化することが可能である。いくつかの実施形態では、リポサク
ションは、ミニリポサクションであり、ミニリポサクションでは、約30ccから約50
ccの脂質が患者から除去される。いくつかの実施形態では、リポサクションは、マイク
ロリポサクションであり、マイクロリポサクションでは、約5ccから約29ccの脂質
が患者から除去される。いくつかの実施形態では、リポサクションは、典型的な臨床的リ
ポサクションであり、そのケースでは、300cc以上の脂質が患者から除去される。
【0148】
脂質が患者から除去されると、脂質は、無菌のプロセッシングカートリッジの中へ移送
される。移送は、本明細書で説明されているように、無菌の手段を介して行われる。いく
つかの実施形態では、脂質は、シリンジを介して患者から除去され、シリンジとプロセッ
シングカートリッジとの間で、オス型およびメス型のルアーロックコネクターを互いに取
り付けることによって、シリンジからプロセッシングカートリッジへ移送される。いくつ
かの実施形態では、脂質は、シリンジを介して患者から除去され、シリンジは、シリンジ
とカートリッジとの間で、オス型およびメス型のルアーロックコネクターを互いに取り付
けることによって、カートリッジの中で無菌ドッキングされている。いくつかの実施形態
では、脂質は、シリンジを介して患者から除去され、シリンジとカートリッジの中のプロ
セッシング容器またはカートリッジとの間で、オス型およびメス型のルアーロックコネク
ターを互いに取り付けることによって、シリンジからプロセッシング容器またはカートリ
ッジへ移送される。いくつかの実施形態では、脂質は、リポサクションデバイスを介して
患者から除去され、無菌の接続デバイスを使用してリポサクションデバイスおよびプロセ
ッシングカートリッジを無菌ドッキングさせることによって、リポサクションデバイスか
らプロセッシングカートリッジへ移送される。
【0149】
いくつかの実施形態では、移送は、重力流を介して行われることが可能である。いくつ
かの実施形態では、移送は、機械的に行われることが可能であり、たとえば、シリンジの
プランジャーを物理的に押圧することによって、および、シリンジの内部からプロセッシ
ングカートリッジの内部チャンバーの中へ脂質を押し込むことによって、行われることが
可能である。いくつかの実施形態では、移送は、ポンプなどのようなデバイスを介して行
われることが可能である。
【0150】
脂質を受け入れるカートリッジ400、500の内部チャンバーの容積(たとえば、図
4および
図5に提供されているカートリッジ実施形態を参照)は、患者から取得される脂
質の量とともに変化することが可能である。いくつかの実施形態では、ミニリポサクショ
ンを介して除去される30ccから50ccの脂質が、カートリッジ400、500の脂
肪チャンバー405、505へ移送される。
【0151】
この実施形態では、脂質は、自己完結型のカートリッジ400、500の特定のコンポ
ーネント405、505の中へ注入され、カートリッジ400、500は、サンプルを外
側の環境に露出させることなく脂質サンプルのプロセッシングをカートリッジ400、5
00の中に完全に収容するように設計されている。いくつかの実施形態では、脂質を受け
入れるカートリッジ400、500の中に位置付けされている脂肪チャンバー405、5
05は、9流量オンスから19流量オンスの容積を有する可撓性のバッグである。
【0152】
さまざまな態様では、カートリッジ400、500は、ESWまたは機械的衝撃デバイ
ス、および、本明細書で開示されている方法のいずれかとともに使用するように設計され
ている。いくつかの実施形態では、プロセッシングは、下記に説明されているプロセッシ
ングステップのうちのいくつかを自動的に実行するマシンによって実施される。いくつか
の実施形態では、プロセッシングは、ユーザーによって実施され、ユーザーは、下記に説
明されているステップを手動で実施する。両方の実施形態において、プロセッシングは、
外部で制御され、カートリッジ400、500の内部プロセッシングが、サンプルが外側
の環境に露出されることもなく、無菌の様式で実施されるようになっている。
【0153】
示されている実施形態では、脂質サンプルは、第1の一方向弁410、510に脂質サ
ンプルを通すことによって、脂肪チャンバー405、505の中へ導入される。第1の一
方向フロー弁410、510の方向は、示されているように、脂肪チャンバー405、5
05の内部へ向かう方向になっている。いくつかの実施形態では、患者から取り出した後
の脂質を保持する容器と、プロセッシングカートリッジ400、500の第1の一方向弁
410、510との間で、オス型およびメス型のルアーロックコネクターを互いに取り付
けることによって、脂質は、脂肪チャンバー405、505の内部チャンバーの中へ導入
される。いくつかの実施形態では、脂質は、リポサクションデバイスを介して患者から除
去され、無菌の接続デバイスを使用して、リポサクションデバイスおよびプロセッシング
カートリッジを無菌ドッキングさせることによって、リポサクションデバイスからプロセ
ッシングカートリッジへ移送される。
【0154】
脂肪チャンバー405、505の内側に入ると、脂質は、プロセッシングの前に洗浄さ
れる。カートリッジ400、500は、流体リザーバー415、515を含有しており、
流体リザーバー415、515は、無菌の生理食塩水で充填されており、いくつかの実施
形態では、無菌の1xリン酸緩衝生理食塩水で充填されており、これは、組織を洗浄する
ために使用される。無菌の生理食塩水を脂肪チャンバー405、505の内部へ導入する
ために、生理食塩水は、第2の一方向弁420、520を通して脂肪チャンバー405、
505の内部へ入れられる。フローの方向は、示されているようになっている。生理食塩
水は、外部アクチュエーター425、525の使用を介して、脂肪チャンバー405、5
05の内部へ移動させられ、外部アクチュエーター425、525は、第1の一方向弁4
20、520を通して生理食塩水を押し込むために、第1のプランジャー430、530
を移動させる。いくつかの実施形態では、外部アクチュエーター425、525は、ユー
ザーによって手動で動作させられ、ユーザーは、所望の量の生理食塩水が第2の一方向弁
420、520を通して脂肪チャンバー405、505の内部へ入れられるまで、アクチ
ュエーター425、525を押圧する。いくつかの実施形態では、外部アクチュエーター
425、525の移動は自動化されており、外部マシンが、外部アクチュエーター425
、525が示されている方向に移動することを引き起こし、それによって、第2の一方向
弁420、520を通して脂肪チャンバー405、505の内部へ入る所望の量の生理食
塩水を計量する。
【0155】
洗浄は、脂質および無菌の生理食塩水を含有するカートリッジ400、500を穏やか
に振るかまたは旋回させることによって実施される。
【0156】
次いで、カートリッジ400、500は、(今では洗浄された)脂質が無菌の生理食塩
水から分離されるように置かれる。この実施形態では、カートリッジ400、500は、
2つの変形例を有している。いくつかの実施形態では、カートリッジ400、500は、
固定された垂直方向の配向を有しており、脂肪チャンバー405、505の中に含有され
ている脂質および生理食塩水洗浄液が、常に自然に重力を介して互いから分離することと
なり、脂質が、脂肪チャンバー405、505の上部に浮かぶ。いくつかの実施形態では
、カートリッジ400、500は、水平方向の配向を有しており、垂直方向に回転させら
れ、脂質が浮かび、生理食塩水洗浄液から分離することを可能にする。脂質は生理食塩水
よりも密度が低いので、脂質は、生理食塩水の上部に上昇して浮かぶこととなる。分離が
行われるために必要とされる時間の量は、脂質サンプルの個々の構成に応じて変化するこ
ととなる。いくつかの実施形態では、分離は、1分から30分で生じ得る。いくつかの実
施形態では、分離は、1分から15分で生じ得る。いくつかの実施形態では、分離は、1
分から10分で生じ得る。いくつかの実施形態では、分離は、1分から5分で生じ得る。
いくつかの実施形態では、分離は、10秒から1分で生じ得る。いくつかの実施形態では
、分離は、1分未満に行われることが可能である。
【0157】
次いで、生理食塩水は、可能な限り完全に脂肪チャンバー405、505からドレン排
出され、したがって、脂質だけが残る。ドレン排出は、本方法において利用されるカート
リッジ400、500のタイプに応じて、さまざまな手段を介して行われることが可能で
ある。いくつかの実施形態では、生理食塩水は、カートリッジ400、500の外側につ
ながる脂肪チャンバー405、505の底部に位置付けされているチューブを介して、脂
肪チャンバー405、505から外へカートリッジ400、500から離れるようにドレ
ン排出される。ドレン排出は、シリンジもしくはポンプのいずれかを使用して能動的に進
行するか、または、重力流を介して受動的に進行することが可能である。いくつかの実施
形態では、ドレン排出は、本明細書で説明されているように、無菌のシステムの完全性を
維持するように行われる。
【0158】
洗浄の完了後に、脂質が黄金色になり、生理食塩水がわずかにだけ濁るまで、洗浄が繰
り返される。いくつかの実施形態では、洗浄は、1~5回行われ、いくつかの実施形態で
は、1~4回行われ、いくつかの実施形態では、1~3回行われ、いくつかの実施形態で
は、1~2回行われ、いくつかの実施形態では、1回行われる。
【0159】
いくつかの実施形態では、無菌の生理食塩水が流体リザーバー415、515から使い
尽くされるまで、洗浄が繰り返される。いくつかの実施形態では、脂肪チャンバー405
、505の中の生理食塩水洗浄液が十分に透明になり、洗浄の後に、50%から100%
の光が生理食塩水を通過し、高い程度の透明度を示すまで、洗浄が繰り返される。いくつ
かの実施形態では、設定数の洗浄サイクルが完了するまで、洗浄が繰り返され、設定数は
、いくつかの実施形態では、1回から5回の洗浄であり、いくつかの実施形態では、1回
から4回の洗浄であり、いくつかの実施形態では、1回から3回の洗浄であり、いくつか
の実施形態では、1回から2回の洗浄であり、いくつかの実施形態では、1回の洗浄であ
り、いくつかの実施形態では、2回の洗浄であり、いくつかの実施形態では、3回の洗浄
である。
【0160】
洗浄が完了すると、脂質は、プロセッシングのための準備ができている。
【0161】
脂肪チャンバー405、505の中の脂質は、幹細胞を脂質から遊離させるために、脂
質をESWおよび/または機械的衝撃にさらすことによって、方法1および2において上
記に説明されている方法のうちの1つにしたがってプロセッシングされる。いくつかの実
施形態では、カートリッジ400、500は、脂肪チャンバー405、505の上方に開
口部を有しており、最適なプロセスを可能にし、ESW、および/または、機械的衝撃か
らの力が、カートリッジ400、500の外部のリジッドプラスチックを通過しないよう
になっている。そのような実施形態では、可撓性の脂肪チャンバー405、505壁部は
、プロセッシングのために露出される。
【0162】
組織プロセッシングが完了した後に、脂質は、流体から分離して上部まで上昇すること
を許容される。上記に記述されているように、この実施形態では、カートリッジ400、
500は、2つの変形例を有している。いくつかの実施形態では、カートリッジ400、
500は、固定された垂直方向の配向を有しており、脂肪チャンバー405、505の中
に含有されているプロセッシングされた脂質および生理食塩水が、常に自然に重力を介し
て互いから分離することとなり、脂質が、脂肪チャンバー405、505の上部に浮かぶ
。いくつかの実施形態では、カートリッジ400、500は、水平方向の配向を有してお
り、垂直方向に回転させられ、脂質が浮かび、生理食塩水から分離することを可能にする
。脂質は生理食塩水よりも密度が低いので、脂質は、生理食塩水の上部に上昇して浮かぶ
こととなる。ここで、脂質から遊離された幹細胞は、生理食塩水層の中に含有されている
。
【0163】
次いで、幹細胞を含有する生理食塩水は、脂肪チャンバー405、505から、カート
リッジ400、500の中に位置付けされている細胞リザーバー435、535へ、脂質
から離れるように、第3の一方向弁440、540を通して移動させられる。生理食塩水
は、第2の外部アクチュエーター445、545の使用を介して、細胞リザーバー435
、535の内部へ移動させられ、第2の外部アクチュエーター445、545は、第3の
一方向弁440、540を通して生理食塩水を押し込むために、第2のプランジャー45
0、550を移動させる。細胞リザーバー435、535の中には、第2のプランジャー
450、550が、完全に閉じた構成で配向されており、細胞リザーバー435、535
が完全に閉じられているようになっている。このように、第2のアクチュエーター445
、545を移動させることは、第3の一方向弁440、540から離れるように、第2の
プランジャー450、550を移動させ、細胞リザーバー435、535の内側に軽度の
真空を生成させ、この真空は、幹細胞を含有する生理食塩水層を、脂肪チャンバー405
、505から、第3の一方向弁440、540を通して、細胞リザーバー435、535
の内部へ引き込む。いくつかの実施形態では、第2の外部アクチュエーター445、54
5は、ユーザーによって手動で動作させられ、ユーザーは、幹細胞を含有する生理食塩水
の全体が第3の一方向弁440、540を通して細胞リザーバー435、535の内部へ
引き込まれるまで、第2のアクチュエーター445、545を引っ張る。いくつかの実施
形態では、第2の外部アクチュエーター445、545の移動は自動化されており、外部
マシンが、第2の外部アクチュエーター445、545を引っ張り、幹細胞を含有する生
理食塩水を細胞リザーバー435、535の中へ移動させる。
【0164】
いくつかの実施形態では、幹細胞を含有する生理食塩水は、残された望まれない細胞破
片をプロセッシングされた脂肪質の組織から濾過して除くために、メッシュを通して引き
込まれる。いくつかの実施形態では、メッシュは、脂肪チャンバー405、505の中に
位置付けされており、脂肪チャンバー405、505の中において、メッシュは、第3の
一方向弁440、540の開口部をカバーしている。いくつかの実施形態では、メッシュ
は、細胞リザーバー435、535の内部に位置付けされており、細胞リザーバー435
、535の内部において、メッシュは、第3の一方向弁440、540の出口をカバーし
ている。いくつかの実施形態では、メッシュは、細胞リザーバーの内部に位置付けされて
おり、細胞リザーバーの内部において、メッシュは、第4の一方向弁455、555の開
口部をカバーしている。いくつかの実施形態では、メッシュの中の細孔は、サイズが40
μmから100μmの範囲にあり、いくつかの実施形態では、細孔は、サイズが70μm
である。いくつかの実施形態では、メッシュは、ナイロンである。
【0165】
図4に示されている実施形態では、幹細胞を含有する画分は、細胞リザーバー435の
内部から、第4の一方向弁455を通して、カートリッジ400の中に含有されている遠
心チューブ460の中へ移送される。幹細胞画分は、第2の外部アクチュエーター445
の使用を介して、遠心チューブ460の中へ移動させられ、第2の外部アクチュエーター
445は、第3の一方向弁440を通して遠心チューブ460の中へ生理食塩水を押し込
むために、第2のプランジャー450を移動させる。本明細書で説明されているように、
この移動は、手動で実施され得るか、または、それは、自動化され得る。次いで、遠心チ
ューブ460は、遠心分離のために、カートリッジ400から除去される。遠心分離は、
上記に説明されている2つの実施形態のいずれかに説明されているように進行し、幹細胞
のペレットが、遠心チューブ460の底部に残る。
【0166】
図5に説明されている実施形態では、幹細胞を含有する画分は、細胞リザーバー535
の内部から、第4の一方向弁555を通して、カートリッジ500の中に含有されている
遠心分離コンポーネント560の中へ移送される。遠心分離コンポーネント560は、三
角形のチャンバーであり、三角形のチャンバーは、遠心分離機コンポーネントとして作用
する。これは、細胞を生理食塩水から外へスピンさせ、細胞がチャンバーの外側縁部にお
ける単一のポイントに濃縮するようになっている。アクセスポート565は、ユーザーが
幹細胞ペレットへのアクセスを得ることを可能にし、ペレットを再懸濁させ、および/ま
たは、遠心分離コンポーネント560からペレットを除去するようになっている。いくつ
かの実施形態では、遠心分離コンポーネント560の動作は、外部装置によって自動化お
よび制御されており、ここで、外部装置は、チャンバーの中心においてカートリッジの中
へ挿入するモーターおよびギヤを通して、スピンチャンバーと係合している。その点で、
遠心分離コンポーネント560は、ダイレクトドライブであるかまたはギヤ付きであるこ
とが可能である。幹細胞を含有する層/下澄みが、上記に説明されているように、遠心分
離コンポーネントの中へロードされ、他方の側が、遠心分離の前にバランスさせられる。
遠心分離コンポーネントの中へ導入されると、幹細胞は、3分から10分間、500gか
ら1600gで遠心分離される。いくつかの実施形態では、遠心分離は、10分間120
0gで行われる。
【0167】
細胞を再懸濁させるために、少量の流体が、チューブの中へ入れられる。これは、典型
的に、1mLから5mLである。流体は、生理食塩水、多血小板血漿、ヒアルロン酸、ま
たは、固定用ゲル、ヒドロゲル、スカッフォールド、またはフィブリンまたはグルー、ま
たは他の化合物であることが可能である。
【0168】
細胞が懸濁液の中にある状態で、細胞は、さらなる使用のために、皮下注射針を通して
シリンジの中へ吸い込まれる。これは、プロセッシングマシンによって自動的に行われる
か、または、オペレーターによって手動で行われる。
【0169】
少量の流体が、幹細胞を再懸濁させるために使用される。いくつかの実施形態では、細
胞を再懸濁させるために追加される流体の量は、1mLから5mLの範囲にある。いくつ
かの実施形態では、流体は、生理食塩水、多血小板血漿、ヒアルロン酸、固定用ゲル、ヒ
ドロゲル、スカッフォールド、フィブリン、グルー、または、先述のもののいずれかの組
み合わせである。いくつかの実施形態では、細胞が、遠心分離吸引物の中に再懸濁される
。
【0170】
幹細胞が懸濁液の中に浮かんでいる状態で、幹細胞は、使用のための準備ができている
。そのような使用は、限定することなく、幹細胞が導出された患者の中への再導入、凍結
保存、および膨張などを含むことが可能である。いくつかの実施形態では、濃縮されて再
懸濁された幹細胞は、患者使用のために、皮下注射針を介してシリンジの中へ移動させら
れる。いくつかの実施形態では、濃縮されて再懸濁された幹細胞は、心臓、筋肉、骨、軟
骨、肝臓、腎臓、または、他の組織および器官構造体へと成長するための組織スカッフォ
ールドの中へ種を撒かれる。いくつかの実施形態では、濃縮されて再懸濁された幹細胞は
、幹細胞が多能性転写因子を表現することを引き起こすによって、人工多能性幹細胞へと
変換される。
【0171】
デバイス
上述のように、本開示は、組織サンプルをバイオプロセッシングするための方法および
システムを提供する。また、さまざまな態様において、本開示は、開示されている方法と
ともに使用するのに適切な使いやすいデバイスを提供し、そのようなデバイスは、外側の
環境に対して閉じられており、単回使用のために設計されている。そのようなデバイスは
、単回使用カートリッジを含み、単回使用カートリッジは、単一のデバイスの中での完全
なプロセッシングを可能にする。
【0172】
容器
上記に説明されている実施形態は、しおれた(wither)組織サンプル、脂質サンプル、
所望の細胞画分を含有する画分、幹細胞を含有する画分、または、先述のもののいずれか
の組み合わせの受容部として、1つまたは複数の容器を利用する。そのような容器は、図
1のステップ105において利用される容器;容器205;脂肪チャンバー405、50
5;流体リザーバー415、515;および細胞リザーバー435、535を含む。これ
らの容器は、本開示によって提供されるシステムおよび方法とともに使用するのに適切で
あり、可撓性であるか、リジッドであるか、または半リジッドであることが可能である。
いくつかの実施形態では、容器は、シリンジである。
【0173】
図1のステップ105において利用される容器;容器205;脂肪チャンバー405、
505;流体リザーバー415、515;および細胞リザーバー435、535のそれぞ
れは、それ自体によって、または、密閉型のカートリッジの一部として、外側の環境に対
して閉じられており、また、使い捨てのものである。
【0174】
いくつかの実施形態では、
図1のステップ105において利用される容器;容器205
;脂肪チャンバー405、505;流体リザーバー415、515;および細胞リザーバ
ー435、535のそれぞれは、可撓性の容器であり、たとえば、可撓性のバッグである
。そのような実施形態では、それぞれの容器は、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ(
ビニル)クロライド(PVC)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ナイロン、または、他
のプラスチックから作製され得る。
【0175】
可撓性の容器のそれぞれは、ブロー成形され得る。いくつかの実施形態では、可撓性の
容器のそれぞれは、ラジオ周波溶接されるか、高周波溶接されるか、または誘導加熱溶接
され得、また、ブロー成形され得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、可撓性の容器のそれぞれは、可撓性の容器の内部チャンバー
と流体接続している少なくとも1つの出口部を有する3次元のバッグである。いくつかの
実施形態では、単一の容器は、容器の内部チャンバーと流体接続している2つ以上の出口
部を有することが可能である。そのような出口部は、たとえば、容器の内部チャンバーか
ら流体をドレン排出させるために、または、容器の内部から別の容器へ流体を移動させる
ために使用され得る。
【0177】
いくつかの実施形態では、容器は、縁部に沿って容器の外側に位置付けされている1つ
または複数の孔部を含むことが可能であり、1つまたは複数の孔部は、空間に容器を吊り
下げるために使用され得る。
【0178】
容器の合計容積は、5流量オンスから50流量オンスであることが可能であり、いくつ
かの実施形態では、9流量オンスから19流量オンスであることが可能である。
【0179】
いくつかの実施形態では、組織サンプル、無菌の生理食塩水、またはその他の形態で、
入力を受け取るために、容器は、別個のポイントにおいて入口ラインまたは接続部を受け
入れるように構成されており、入口ラインまたは接続部は、容器の内部と流体接続してい
る入口部に接続する。閉じた無菌の環境の完全性を維持するために、入口ラインまたは接
続部は、メス型のルアー接続部を含み、メス型のルアー接続部は、容器が外部デバイスに
接続されることを可能にし、容器は、組織サンプルを含有するシリンジ、物質がそこから
問題の容器の中へ移送されることとなる別の容器、またはその他である。他の実施形態で
は、入口ラインまたは接続部は、無菌の接続デバイスを使用して外部デバイスに接続する
ための無菌のドックを含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、容器は、平坦なバッグであることが可能であり、平坦なバッ
グは、上部縁部、底部縁部、および、2つの実質的に同様の側部縁部を有している。底部
縁部は、流体をバッグから外へドレン排出するために、バッグの内部と流体接続している
出口部を含む。また、平坦なバッグは、バッグの内部の中への材料の無菌での導入を可能
にする入口部を有している。
【0181】
いくつかの実施形態では、容器は、形状が長方形になっている3次元のバッグであり、
3次元のバッグは、上部縁部、底部縁部、および、2つの実質的に同様の側部縁部を有し
ている。底部縁部は、流体を容器から外へドレン排出するために、容器の内部と流体接続
している出口部を含む。上部縁部は、容器の中への材料の導入のための、容器の内部と流
体接続している入口部を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、容器は、ラインを介して1つまたは複数の他の容器に接続さ
れている。ラインは、ポリ(ビニル)クロライド(PVC)、エチレン酢酸ビニル(EV
A)、または、他の材料から作製され得るチュービングである。
【0183】
いくつかの実施形態では、容器は、半リジッドであることが可能である。そのような実
施形態では、容器は、リジッドプラスチックハウジングを含み、リジッドプラスチックハ
ウジングは、その形状を維持しており、組織プロセッシングの間にハウジングの内側に可
撓性の容器を保持することができる。ハウジングは、それがプラットフォーム210また
は315への取り付けのポイントを含有するように構成されている。
【0184】
リジッドプラスチックハウジングは、たとえば、高密度ポリエチレン(HDPE)また
はポリプロピレン(PP)を含む、任意の適切なリジッドプラスチック材料から作製され
得る。リジッドプラスチック材料は、弾性的な変形を示さず、また、リジッドプラスチッ
ク材料は、可撓性のプラスチックによって典型的に表される弾性的な挙動のいずれを表す
こともない。リジッドプラスチックハウジングは、射出成形またはダイカットされ得る。
【0185】
いくつかの実施形態では、可撓性の容器は、リジッドプラスチックハウジングの中に含
有されており、リジッドプラスチックハウジングは、可撓性の容器を完全に密閉してもよ
く、またはしなくてもよい。いくつかの実施形態では、可撓性の容器は、リジッドプラス
チックハウジングの中に完全に密閉されているわけではない。むしろ、ハウジングは、可
撓性の容器を部分的に密閉し、組織プロセッシングの間にそれを適切な場所に保持してい
る。
【0186】
カートリッジ
さまざまな態様では、本開示とともに使用するのに適切なカートリッジは、それらの内
部の中に1つまたは複数の容器を収容することができる3次元の容器である。内部容器は
、1つまたは複数のラインおよび/または弁によって接続され得る。適切なカートリッジ
の例は、
図4および
図5に示されているカートリッジ400、500である。
【0187】
いくつかの実施形態では、カートリッジは、リジッドプラスチック材料から作製されて
おり、リジッドプラスチック材料は、その形状を維持しており、組織プロセッシングの間
にカートリッジの内側に可撓性の容器のうちの少なくとも1つ、好ましくは、複数を保持
することができる。容器は、それらがプラットフォーム210または315への取り付け
の1つまたは複数のポイントを含有するように構成されている。
【0188】
リジッドプラスチックは、たとえば、高密度ポリエチレン(HDPE)またはポリプロ
ピレン(PP)を含む、任意の適切なリジッドプラスチック材料から作製され得る。リジ
ッドプラスチック材料は、弾性的な変形を示さず、また、リジッドプラスチック材料は、
可撓性のプラスチックによって典型的に表される弾性的な挙動のいずれを表すこともない
。リジッドプラスチックカートリッジは、射出成形またはダイカットされ得る。
【0189】
容器の他の態様は、上記に説明されている。
【0190】
遠心チューブ
本開示の方法およびデバイスとともに使用するのに適切な遠心チューブは、遠心ロータ
ーに正確にフィットするように設計されている、ガラスまたはプラスチックの精密に仕上
げられた高強度チューブである。遠心チューブの容量は、プロセッシングされることとな
る組織サンプルの合計体積に応じて、変化することが可能である。いくつかの実施形態で
は、遠心チューブは、1mLから50mLの範囲にある容量、いくつかの実施形態では、
0.5mLから20mLの範囲にある容量、およびいくつかの実施形態では、250μL
から2.0mLの範囲にある容量を有している。
【0191】
いくつかの実施形態では、遠心チューブは、Eppendorf(登録商標)チューブ
であり、いくつかの実施形態では、マイクロフュージチューブであり、いくつかの実施形
態では、マイクロ遠心チューブである。
【0192】
遠心チューブの材料は、変化することが可能である。いくつかの実施形態では、遠心チ
ューブは、ガラスから作製されている。いくつかの実施形態では、遠心チューブは、プラ
スチックである。それぞれの実施形態では、遠心チューブは、単回使用のために設計され
ており、使い捨てのものである。いくつかの実施形態では、遠心チューブは、ポリエチレ
ンなどのような可撓性の透明なプラスチックから作製されており、形状が半円錐形状にな
っており、一体型のヒンジ式のシーリングキャップを含む。
【0193】
一方向弁
一方向弁は、流体が単一の方向だけにそれを通って流れることを可能にする弁である。
【0194】
さまざまな態様では、本開示のデバイスおよび方法とともに使用するのに適切な一方向
弁は、2ポート弁を含み、2ポート弁は、2つの開口部を有しており、一方は、流体が進
入するためのものであり、他方は、流体が離れるためのものである。一方向弁は、流体の
一定方向のフローを自動的に提供するように機能し、任意のユーザーの介入または制御を
必要としない。いくつかの実施形態では、本開示の方法およびデバイスに有用な一方向弁
は、ポリ(プロピレン)などのようなリジッドプラスチックから作製されている。
【0195】
いくつかの実施形態では、本開示のデバイスおよび方法とともに使用するのに適切な一
方向弁は、ボール逆止弁であり、ボール逆止弁において、流体の逆流を防止するコンポー
ネントは、球形のボールである。いくつかの実施形態では、ボールは、一方向弁を閉じた
状態に維持することを助けるためにばね荷重式になっている。
【0196】
いくつかの実施形態では、本開示のデバイスおよび方法とともに使用するのに適切な一
方向弁は、ダイヤフラム逆止弁であり、ダイヤフラム逆止弁は、弁閉鎖を生成させるよう
に位置決めされているフレキシングゴムダイヤフラムを含む。そのような実施形態では、
上流側に生成される圧力は、ユーザー介入によって、または、自動化されたプロセスを介
して、ダイヤフラムが開くこと、および、流体が弁を通って流れることを引き起こす。プ
ラスの圧力が停止すると、ダイヤフラムが閉じ、流体フローを終了させる。
【0197】
いくつかの実施形態では、本開示のデバイスおよび方法とともに使用するのに適切な一
方向弁は、スウィング逆止弁、または、傾斜式ディスク逆止弁である。そのような実施形
態では、ディスクは、一方向への流体フローを可能にするために、および、反対側方向へ
の流体逆行を阻止するために使用される、弁の可動パーツである。
【0198】
例
本明細書で説明されている材料、方法、および実施形態は、以下の例においてさらに定
義されている。また、特定の実施形態は、本明細書において例の中に定義されている。こ
れらの例は、特定の実施形態を示しているが、図示目的のためだけに与えられているとい
うことが理解されるべきである。本明細書での開示およびこれらの例から、当業者は、本
開示の本質的な特徴を確認することが可能であり、また、本開示の精神および範囲から逸
脱することなく、さまざまな使用法および条件にそれを適合させるように、本発明のさま
ざまな変形および修正を行うことが可能である。
【0199】
例1
ESW組織プロセッシングのための一般的プロトコル
脂肪吸引物が、対象から取得され、脂肪吸引物は、体積がおおよそ30ccである。プ
ロセッシングの前に、脂肪吸引物は、おおよそ0.25インチ厚さの側壁部を有する、エ
チレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ(ビニル)クロライド(PVC)、エチレン酢酸ビニ
ル(EVA)またはナイロンの可撓性の無菌のバッグへ移送される。無菌のカテーテルバ
ッグが十分である。
【0200】
生理食塩水バッグからのオス型のルアーロックコネクターを、可撓性のバッグの上に位
置付けされているメス型のルアーロックコネクターに接続することによって、および、生
理食塩水を可撓性のバッグの中へ手動でディスペンスすることによって、脂肪吸引物は、
可撓性のバッグの中へ導入される無菌の生理食塩水の等しい体積を使用して洗浄される。
次いで、脂肪吸引物および生理食塩水洗浄液は、可撓性のバッグを穏やかに振ることによ
って、機械的に撹拌される。
【0201】
組織サンプル/生理食塩水洗浄液の混合物は、少なくとも10分間静置させ、脂肪吸引
物が生理食塩水の上部に浮かぶことを可能にする。
【0202】
下澄みまたは生理食塩水洗浄液は、可撓性のバッグの底部に位置付けされているドレン
ラインを介して、可撓性のバッグから除去される。シリンジをラインに接続することによ
って、および、下澄みをバッグから外へ引き出すことによって、または、重力流によって
、除去が行われることが可能である。
【0203】
洗浄は、3~4回繰り返され、最終的な洗浄でバッグの中の無菌の生理食塩水洗浄液を
残す。
【0204】
次のステップは、Masterpuls MP100対外衝撃波発生器を使用して、対
外衝撃波を脂肪吸引物に印加することである。
【0205】
発生器は、可撓性のバッグの壁部と接触してもよいが、衝撃波発生器が脂肪吸引物自体
に接触しないことを保証するように注意が払われるべきである。
【0206】
必要な場合には、脂肪吸引物への衝撃波の印加の前に、超音波ゲルが可撓性のバッグの
側部に塗布されてもよい。
【0207】
1分から30分間、ESWを脂肪吸引物に印加する。
【0208】
その後に、振るかまたは軽くボルテックスすることによって、可撓性のバッグを穏やか
に撹拌する。
【0209】
今プロセッシングされた脂肪吸引物を静置し、脂肪質の組織の残りのものが生理食塩水
の上部に浮かぶことができるようになっている。
【0210】
上記に説明されているように、無菌のシリンジをドレンチューブに取り付けることによ
って、および、可能な限り多くの下澄みを引き出すことによって、可撓性のバッグから下
澄みを除去する。残っている脂肪組織のいずれも取らない。
【0211】
除去の間に、40μm、70μm、または100μmの細孔サイズを有する3つのナイ
ロンメッシュフィルターのうちの1つに下澄みを通す。
【0212】
下澄みを1つまたは複数の無菌の遠心チューブの中へ分配する。奇数の数のチューブが
使用される場合には、無菌の生理食塩水を含有するバランスチューブがバランスのために
ローターの中に設置されることを保証する。
【0213】
10分間1,200gで遠心分離する。
【0214】
随意的に:1mL RBC溶解バッファーの中にペレットを再懸濁させ、10分間37
℃で水槽の中で培養する。RBCバッファーを中和させる。
【0215】
RBC溶解バッファーが望まれない場合には、1mLの無菌の生理食塩水の中に細胞ペ
レットを再懸濁させる。
【0216】
細胞をカウントする。
【0217】
例2
脂肪吸引物プロセッシング方法の比較
要約:この例に関して実施されるテストの目的は、コラゲナーゼ消化を使用して脂肪組
織から抽出される間葉系幹細胞からの有核細胞の収率と、対外衝撃波(ESW)破砕のも
のとを比較することであった。
【0218】
材料:
1,500mLの1xリン酸緩衝生理食塩水(PBS)
35mLの1x赤血球(RBC)溶解バッファー
200mLの0.1%コラゲナーゼタイプI
ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)の中の15mLの10%ウシ胎児血清(FB
S)
【0219】
方法:
コントロール
おおよそ250mLの脂肪吸引物が、無菌の60mLカテーテルを使用して、100m
Lビーカーの中へ移送された。過剰な流体がビーカーの中へほとんど導入されないか全く
導入されないことを保証することに注意が払われた。
【0220】
脂肪吸引物は、おおよそ等しい体積の無菌の1xPBSによって4回洗浄された。それ
ぞれの洗浄に関して、無菌の1xPBSがビーカーに追加され、2回はかき混ぜられ、混
合物は、静置させた。下澄みが、吸引することによってビーカーから除去された。脂肪吸
引物は、合計で4回洗浄された。
【0221】
第4の洗浄の後に、サンプルは、10分間静置させた。
【0222】
無菌の10mLセロロジカルピペットが使用され、45mLの下澄みを、第4の最終的
な洗浄液から、3つの無菌の50mL円錐形状のチューブの中へ、40μm、70μm、
および100μmチューブ無菌フィルターを通して移送した。合計で135mLの下澄み
が、コントロールとして使用するために移送された。
【0223】
コラゲナーゼ消化
200mLの脂肪吸引物が、無菌の500mLガラスボトルの中へ堆積させられた。2
00mLの0.1%コラゲナーゼタイプIが、ボトルに追加された。脂肪吸引物がコラゲ
ナーゼと均一に混合されることを保証するために、ボトルは、それを数回逆さまにするこ
とによって、軽く撹拌された。
【0224】
次いで、ボトルは、37℃で水槽の中へ置かれた。10分ごとに、ボトルが、水槽から
除去され、数回逆さまにされ、脂肪吸引物を再分配し、ボトルが落ち着かされた。30分
の培養の後に、ボトルは、最後にもう一回撹拌され、水槽から除去された。
【0225】
ボトルの外部は、70%ETOHによってスプレーされ、ヒュームフードの中に置かれ
た。脂肪吸引物およびコラゲナーゼ混合物は、10分間静置させた。
【0226】
無菌の10mLセロロジカルピペットが使用され、3つの無菌の50mL円錐形状のチ
ューブの中へ、40μm、70μm、および100μmチューブ無菌フィルターを通して
下澄みを移送した。合計で135mLの下澄みが移送された。バランスのために45mL
の水を含有する第4のチューブを含む、3つのチューブが、コラゲナーゼ消化された細胞
ペレットを取得するために、10分間37℃において1,200gで遠心分離された。
【0227】
コラゲナーゼ懸濁液を含有する3つのチューブの外部は、70%ETOHによってクリ
ーニングされ、ヒュームフードの中へ置かれ、バランスチューブを残した。上澄みが吸引
され、それぞれのチューブの中に細胞ペレットを残した。25mLセロロジカルピペット
を使用して、5mLの10%FBSが、それぞれのチューブの中へディスペンスされ、そ
れぞれのチューブは、ペレットを再懸濁させるために、5秒間ボルテックスされた。FB
Sは、任意の残りのコラゲナーゼ活性を中和させるために使用された。
【0228】
3つのチューブは、10分間37℃において1,200gで遠心分離された。遠心チュ
ーブの外部は、70%ETOHによってクリーニングされ、チューブは、ヒュームフード
の中に置かれた。上澄みが吸引され、細胞ペレットを残した。
【0229】
ESWプロセッシング
200mLの脂肪吸引物が、無菌の60mLカテーテルシリンジを使用して、残りの下
澄みのすべてとともに、無菌の500mLレッグカテーテルバッグの中へ移送された。無
菌の1xPBSが、200mLの合計流体体積を実現するために追加され、合計体積は、
脂肪吸引物を含む400mLであった。おおよそ2mLの超音波ゲルが、カテーテルバッ
グに塗布された。大きいチップを使用して、2barおよび21Hzにおいて、おおよそ
10,000ESWパルスが、バッグの内側のサンプルに投与された。このプロセスは、
追加的な10,000ESWパルスに関して、バッグの他方の側において繰り返された。
カテーテルバッグの外部が、70%ETOHによってクリーニングされ、それが、ヒュー
ムフードの中へ置かれた。
【0230】
バッグが撹拌され、500mLビーカーの中に注ぎ込んで空にされ、懸濁液は、10分
間静置させた。無菌の10mLセロロジカルピペットを使用して、下澄みが、3つの無菌
の50mL円錐形状のチューブの中へ、40μm、70μm、および100μmチューブ
無菌フィルターを通して移送された。合計で135mLの下澄みが移送された。
【0231】
濃縮および溶解
コントロール懸濁液を含有する3つのチューブ、および、プロセッシングされた懸濁液
を含有する3つのチューブが、10分間、1,200gおよび37℃で遠心分離された。
上澄みが、すべてのチューブから吸引され、それぞれのペレットを残し、5mLの1xR
BC溶解バッファーが、それぞれのチューブに追加された。それぞれのチューブは、ペレ
ットを再懸濁させるために、5秒間ボルテックスされ、チューブは、10分間、37℃水
槽の中へ置かれた。
【0232】
それぞれのチューブの外部は、70%ETOHによって消毒され、チューブは、ヒュー
ムフードの中に置かれた。25mLの無菌の1xPBSが、溶解バッファーを希釈および
中和させるために、それぞれのチューブに追加された。
【0233】
細胞カウンティング
無菌のマイクロピペットチップを使用して、300μLの無菌の1xPBSが、6つの
無菌の0.5mLマイクロ遠心チューブの中へ移送された。また、75μLのそれぞれの
50mLサンプルチューブが、細胞カウンティングのために、それぞれのマイクロ遠心チ
ューブの中へ移送された。
【0234】
それぞれのサンプルの中の細胞の数が、MタイプおよびSタイプの両方のカセットを備
えたMoxiZ細胞カウンターを使用してカウントされた。カウントするために、100
μLのトリパンブルーが、それぞれのマイクロ遠心チューブに追加され、10μLのそれ
ぞれのサンプルが、ヘモサイトメーターウェルの中へロードされ、細胞がカウントされた
。
【0235】
結果:
MoxiZ細胞カウンター
表1は、MoxiZ自動化細胞カウンターを使用した細胞カウントの結果を示している
。2つのタイプのカセットが、カウントするために使用された(MおよびS)。サンプル
列において、「c」は、コラゲナーゼ消化を表し、「e」は、ESWプロセッシングを表
し、「0」は、コントロールを表している。「完了」列の中の「y」を伴うカウントだけ
が有効である。
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
ヘモサイトメーター
表2は、ビジュアルヘモサイトメーターから取得されるカウントを詳述しており、それ
ぞれの象限(quadrant)からの細胞カウント、象限の総計、希釈係数、および、合計の計
算された細胞を伴っている。細胞の数は、コントロール群の中の細胞のカウントを参照し
て考慮されるべきである。プロセッシングされた細胞とコントロール細胞との比率は、収
率の重要な指標である。
【0240】
【0241】
概要
MoxiZ自動化細胞カウンターを使用した有効なカウントのうち、コントロール、コ
ラゲナーゼ、およびESWに関して、細胞カウントに関する総平均は、表3に示されてい
る通りである。
【0242】
【0243】
コラゲナーゼは、一貫して、約3.8E+05細胞数/mLを作り出した。ESWは、
1.67e+05から7.08e+05細胞数/mLの範囲にあった。
【0244】
ヘモサイトメーターカウントの中の細胞の比率を見ると、ESWプロセスは、最高の比
率を作り出し、その比率は、コントロールよりも1.78倍から9.0倍高い範囲にあっ
た。コラゲナーゼだけが、コントロールよりも1.29倍から2.84倍高い範囲にある
比率を作り出した。
【0245】
議論
これらのデータは、高い数の間葉系幹細胞を脂肪組織から作り出すために、ESWが効
果的であるということを示している。これらのデータに基づいて、間葉系幹細胞を取得す
るために、ESWが、脂肪組織の超音波プロセッシングまたはコラゲナーゼプロセッシン
グのいずれかに対する実行可能な代替例であるということが結論付けられた。ピークを比
較すると、ESWは、4.32e+05のコラゲナーゼピークと比較して7.08e+0
5の細胞収率を作り出し、それは、164%の収率の増加であった。
【0246】
上記に提示されているデータを所与として、50ccから60ccの脂肪吸引物のサン
プルが、ESWプロセッシングから約5百万個の細胞を生み出すこととなり、コラゲナー
ゼ消化から約3百万個の細胞を生み出すこととなるということを結論付けることが合理的
である。
【0247】
したがって、幹細胞を脂肪組織から遊離させるためにESWを使用するということは、
公知の技法を上回る重大な利点を持つということが明らかである。
【符号の説明】
【0248】
200 プロセッシング装置
205 プロセッシング容器またはカートリッジ
210 プラットフォーム
215 衝撃波アプリケーター
220 アプリケータープラットフォーム
225 モーターコントローラー
230 X平面モーター
235 Y平面モーター
240 Z平面モーター
245 衝撃波発生器
300 プロセッシング装置
305 モーター
310 インパクトアーム
315 プラットフォーム
400 カートリッジ
405 脂肪チャンバー
410 第1の一方向弁
415 流体リザーバー
420 第2の一方向弁
425 外部アクチュエーター
430 第1のプランジャー
435 細胞リザーバー
440 第3の一方向弁
445 第2の外部アクチュエーター
450 第2のプランジャー
455 第4の一方向弁
460 遠心チューブ
500 カートリッジ
505 脂肪チャンバー
510 第1の一方向弁
515 流体リザーバー
520 第2の一方向弁
525 外部アクチュエーター
530 第1のプランジャー
535 細胞リザーバー
540 第3の一方向弁
545 第2の外部アクチュエーター
550 第2のプランジャー
555 第4の一方向弁
560 遠心分離コンポーネント
565 アクセスポート