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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/15 20210101AFI20230623BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20230623BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20230623BHJP
   H01M 50/169 20210101ALI20230623BHJP
   H01M 50/176 20210101ALI20230623BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20230623BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20230623BHJP
   H01M 50/55 20210101ALI20230623BHJP
   H01M 50/593 20210101ALI20230623BHJP
   H01M 50/645 20210101ALI20230623BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
H01M50/15
H01M50/103
H01M50/133
H01M50/169
H01M50/176
H01M50/184 A
H01M50/342 101
H01M50/55 101
H01M50/593
H01M50/645
H01M10/04 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021060900
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156951
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】脇元 亮一
(72)【発明者】
【氏名】丸林 啓則
(72)【発明者】
【氏名】米山 顕啓
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-168262(JP,A)
【文献】特開2017-162570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/00-50/198
H01M 50/30-50/392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極を含む電極体と、前記電極体を収容する電池ケースとを備えた二次電池であって、
前記電池ケースは、
一つの面が開口部となった扁平な角型の容器である外装体と、
前記外装体の前記開口部を塞ぐ平面矩形の封口板と、
前記封口板に設けられたガス排出弁と、
を備え、
前記封口板の厚みT1と、前記封口板の短辺の長さL1と、前記封口板の長辺の長さL2と、前記封口板の短辺方向における前記ガス排出弁の長さL3とが下記の式(1)~(3)を満たし、
前記外装体の前記開口部に前記封口板が嵌め込まれ、前記開口部の外縁をなす前記外装体の上面と前記封口板の外面とを跨ぐように溶接部が形成されており、
前記封口板の長辺と前記ガス排出弁との間に、前記封口板の長辺方向に沿って延びる断熱溝が形成されている、二次電池。
T1/L1≦0.1 (1)
L2/L1≧6 (2)
L3/L1≧0.4 (3)
【請求項2】
正極及び負極を含む電極体と、前記電極体を収容する電池ケースとを備えた二次電池であって、
前記電池ケースは、
一つの面が開口部となった扁平な角型の容器である外装体と、
前記外装体の前記開口部を塞ぐ平面矩形の封口板と、
前記封口板に設けられたガス排出弁と、
を備え、
前記封口板の厚みT1と、前記封口板の短辺の長さL1と、前記封口板の長辺の長さL2と、前記封口板の短辺方向における前記ガス排出弁の長さL3とが下記の式(1)~(3)を満たし、
前記外装体は、
前記封口板の短辺の各々と接合される一対の第1側壁と、
前記封口板の長辺の各々と接合される一対の第2側壁と、
を備え、
前記第1側壁の厚みが前記第2側壁の厚みよりも大きく、
前記外装体の前記開口部に前記封口板が嵌め込まれ、前記開口部の外縁をなす前記外装体の上面と前記封口板の外面とを跨ぐように溶接部が形成されており、
前記封口板の短辺と前記第1側壁とを跨ぐ溶接部の深さよりも、前記封口板の長辺と前記第2側壁とを跨ぐ溶接部の深さが大きい、二次電池。
T1/L1≦0.1 (1)
L2/L1≧6 (2)
L3/L1≧0.4 (3)
【請求項3】
正極及び負極を含む電極体と、前記電極体を収容する電池ケースとを備えた二次電池であって、
前記電池ケースは、
一つの面が開口部となった扁平な角型の容器である外装体と、
前記外装体の前記開口部を塞ぐ平面矩形の封口板と、
前記封口板に設けられたガス排出弁と、
を備え、
前記封口板の厚みT1と、前記封口板の短辺の長さL1と、前記封口板の長辺の長さL2と、前記封口板の短辺方向における前記ガス排出弁の長さL3とが下記の式(1)~(3)を満たし、
前記ガス排出弁の底面は、前記封口板の内側面から前記電極体に向かって突出しており、
前記封口板と前記電極体との間に内部絶縁部材が配置されており、
前記封口板に対して垂直な方向における前記ガス排出弁の底面から前記電極体までの距離は、前記内部絶縁部材の厚みよりも大きい、二次電池。
T1/L1≦0.1 (1)
L2/L1≧6 (2)
L3/L1≧0.4 (3)
【請求項4】
正極及び負極を含む電極体と、前記電極体を収容する電池ケースとを備えた二次電池であって、
前記電池ケースは、
一つの面が開口部となった扁平な角型の容器である外装体と、
前記外装体の前記開口部を塞ぐ平面矩形の封口板と、
前記封口板に設けられたガス排出弁と、
を備え、
前記封口板の厚みT1と、前記封口板の短辺の長さL1と、前記封口板の長辺の長さL2と、前記封口板の短辺方向における前記ガス排出弁の長さL3とが下記の式(1)~(3)を満たし、
前記ガス排出弁の底面は、前記封口板の内側面から前記電極体に向かって突出しており、
前記封口板に前記外装体の内部空間と連通する注液孔が形成され、当該注液孔を封止する封止部材が前記封口板の内側面から前記電極体に向かって突出しており、
前記封口板に対して垂直な方向において、前記ガス排出弁の底面から前記電極体までの距離は、前記封止部材から前記電極体までの距離よりも大きい、二次電池。
T1/L1≦0.1 (1)
L2/L1≧6 (2)
L3/L1≧0.4 (3)
【請求項5】
前記電池ケースの内部に前記電極体が複数個収容されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記封口板を貫通する一対の電極端子を備え、
前記封口板に、前記一対の電極端子の各々が挿入される2つの端子挿入穴が形成されており、
前記封口板の短辺の長さL1と、前記封口板の長辺方向における前記ガス排出弁から前記端子挿入穴までの最短距離L4とが下記の式(4)を満たす、請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池。
L4/L1≧3 (4)
【請求項7】
前記封口板に前記外装体の内部空間と連通する注液孔が形成され、当該注液孔が封止部材によって封止されており、
前記封口板の短辺の長さL1と、前記封口板の長辺方向における前記ガス排出弁から前記注液孔までの距離L5とが下記の式(5)を満たす、請求項1~6のいずれか一項に記載の二次電池。
L5/L1≧1 (5)
【請求項8】
前記封口板を貫通する一対の電極端子と、
前記封口板の外部において前記電極端子と接続される外部導電部材と、
前記封口板の外面と前記外部導電部材との間に介在する外部絶縁部材と、
を備え、
前記封口板の短辺の長さL1と、前記封口板の長辺方向における前記ガス排出弁から前記外部絶縁部材までの最短距離L6とが下記の式(6)を満たす、請求項1~7のいずれかに記載の二次電池。
L6/L1≧2 (6)
【請求項9】
前記封口板の短辺方向における前記ガス排出弁の長さL3と、前記封口板の長辺方向における前記ガス排出弁の長さL7とが下記の式(7)を満たす、請求項1~8のいずれか一項に記載の二次電池。
0.8≦L3/L7≦2 (7)
【請求項10】
前記封口板の短辺の長さL1が30mm以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項11】
正極及び負極を含む電極体と、前記電極体を収容する電池ケースとを備えた二次電池であって、
前記電池ケースは、
一つの面が開口部となった扁平な角型の容器である外装体と、
前記外装体の前記開口部を塞ぐ平面矩形の封口板と、
前記封口板に設けられたガス排出弁と、
を備え、
前記封口板の厚みT1と、前記封口板の短辺の長さL1と、前記封口板の長辺の長さL2と、前記封口板の短辺方向における前記ガス排出弁の長さL3とが下記の式(1)~(3)を満たし、
前記ガス排出弁は、中心部と、前記中心部の周囲に形成された周縁部と、前記周縁部において前記中心部を囲むように形成された環状の破断溝と、を備え、
前記中心部の断面二次モーメントが前記周縁部の断面二次モーメントよりも大きく、
前記環状の破断溝は、前記封口板の外面に形成されている、二次電池。
T1/L1≦0.1 (1)
L2/L1≧6 (2)
L3/L1≧0.4 (3)
【請求項12】
正極及び負極を含む電極体と、前記電極体を収容する電池ケースとを備えた二次電池であって、
前記電池ケースは、
一つの面が開口部となった扁平な角型の容器である外装体と、
前記外装体の前記開口部を塞ぐ平面矩形の封口板と、
前記封口板に設けられたガス排出弁と、
を備え、
前記封口板の厚みT1と、前記封口板の短辺の長さL1と、前記封口板の長辺の長さL2と、前記封口板の短辺方向における前記ガス排出弁の長さL3とが下記の式(1)~(3)を満たし、
前記ガス排出弁の底面は、前記封口板の内側面から前記電極体に向かって突出しており、
前記封口板と前記電極体との間に内部絶縁部材が配置されており、
前記正極又は前記負極に電気的に接続された集電部を少なくとも1つ備え、
前記内部絶縁部材は、前記集電部と前記封口板との間に介在するベース部と、前記ベース部から前記電極体側に突出する突出部を含み、
前記封口板に対して垂直な方向において、前記ガス排出弁の底面から前記電極体までの距離は、前記突出部から前記電極体までの距離よりも大きい、二次電池。
T1/L1≦0.1 (1)
L2/L1≧6 (2)
L3/L1≧0.4 (3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、例えば、電極体と、当該電極体を収容する電池ケースとを備えている。電池ケースは、一つの面が開口部となった扁平な角型の容器である外装体と、当該外装体の開口部を塞ぐ平面矩形の封口板とを備えている。この種の二次電池の電池ケースには、安全性の向上のためにガス排出弁が設けられることがある。ガス排出弁とは、電池ケース内で大量のガスが発生した際に、予め設定した所望の圧力で開口し、電池ケース内のガスを排出するように設計された二次電池部品である。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の封口板には、ケース内の圧力が基準圧力に達したときにケース内のガスを外部に放出するガス抜き弁(ガス排出弁)が設けられている。このガス抜き弁は、円形の易破断溝を有しており、当該易破断溝が、直線状の第1溝部、第2溝部および第3溝部を有しており、それぞれの溝部の一方の端部が、易破断溝の中心で交わっている。これによって、ガス抜き弁の作動圧のバラツキを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/156276号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、二次電池の安全性への要求が益々高まっているため、所望の圧力に達した際のガス排出弁の作動安定性を向上させることが求められている。ここに開示される技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ガス排出弁の作動安定性に優れた二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するべく、ここに開示される技術によって以下の構成の二次電池が提供される。
【0007】
ここに開示される二次電池は、正極及び負極を含む電極体と、電極体を収容する電池ケースとを備えている。かかる二次電池の電池ケースは、一つの面が開口部となった扁平な角型の容器である外装体と、外装体の開口部を塞ぐ平面矩形の封口板と、封口板に設けられたガス排出弁と、を備えている。そして、ここに開示される二次電池では、封口板の厚みT1と、封口板の短辺の長さL1と、封口板の長辺の長さL2と、封口板の短辺方向におけるガス排出弁の長さL3とが下記の式(1)~(3)を満たす。
T1/L1≦0.1 (1)
L2/L1≧6 (2)
L3/L1≧0.4 (3)
【0008】
矩形状の封口板を備えた電池ケースの内圧が大きく上昇すると、当該矩形状の封口板が電池ケース外側に向かって凸状に湾曲変形する。上記構成の二次電池は、かかる封口板の湾曲変形による応力をガス排出弁の作動に利用するという思想に基づいてなされたものである。具体的には、上記式(1)に示すように、封口板の短辺の長さL1に対する封口板の厚みT1の割合(T1/L1)を一定以下とし、封口板の強度を低下させることによって、封口板の湾曲変形が生じやすくなる。また、式(2)に示すように、封口板の短辺の長さL1に対する封口板の長辺の長さL2の割合(L2/L1)を一定以上とし、封口板の長辺方向の中央部付近における曲げモーメントを大きくすることによって、封口板の湾曲変形がさらに生じやすくなる。そして、式(3)に示すように、封口板の短辺の長さL1に対するガス排出弁の短辺方向の長さL3の割合(L3/L1)を一定以上とすることによって、封口板の湾曲変形で生じた応力によってガス排出弁が作動(開口)しやすくなる。このため、ここに開示される二次電池によると、ケース内圧が所望の圧力に達した際にガス排出弁を安定的に作動させることができる。
【0009】
また、ここに開示される二次電池の好適な一態様では、外装体の開口部に封口板が嵌め込まれ、開口部の外縁をなす外装体の上面と封口板の外面とを跨ぐように溶接部が形成されている。これによって、外装体と封口板とを充分な強度で接合できる。
【0010】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、封口板の長辺とガス排出弁との間に、封口板の長辺方向に沿って延びる断熱溝が形成されている。これによって、封口板の長辺と外装体とを溶接する際の熱がガス排出弁に伝達されることを抑制できる。これによって、ガス排出弁の熱疲労による誤作動を好適に防止できる。また、上記断熱溝が形成された封口板は、ケース内圧が大きく上昇した際に湾曲変形しやすいため、ガス排出弁の作動安定性の向上にも貢献できる。
【0011】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、電池ケースの内部に電極体が複数個収容されている。これによって、ガス発生のタイミングを電極体毎に分散し、電池ケースの内圧を徐々に上昇させることができる。この結果、電池ケースの内圧が非常に高い領域まで上昇する前に、ガス排出弁を作動させてガスを排出することができる。
【0012】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、封口板を貫通する一対の電極端子を備え、封口板に、一対の電極端子の各々が挿入される2つの端子挿入穴が形成されており、封口板の短辺の長さL1と、封口板の長辺方向におけるガス排出弁から端子挿入穴までの最短距離L4とが下記の式(4)を満たす。かかる構成によると、端子挿入穴に挿入された集電端子によって、ガス排出弁の近傍における封口板の湾曲変形が阻害されることを防止できる。
L4/L1≧3 (4)
【0013】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、封口板に外装体の内部空間と連通する注液孔が形成され、当該注液孔が封止部材によって封止されており、封口板の短辺の長さL1と、封口板の長辺方向におけるガス排出弁から注液孔までの距離L5とが下記の式(5)を満たす。かかる構成によると、注液孔の封止部材によって、ガス排出弁の近傍における封口板の湾曲変形が阻害されることを防止できる。
L5/L1≧1 (5)
【0014】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、封口板を貫通する一対の電極端子と、封口板の外部において電極端子と接続される外部導電部材と、封口板の外面と外部導電部材との間に介在する外部絶縁部材と、を備え、封口板の短辺の長さL1と、封口板の長辺方向におけるガス排出弁から外部絶縁部材までの最短距離L6とが下記の式(6)を満たす。かかる構成によると、外部絶縁部材によって、ガス排出弁の近傍における封口板の湾曲変形が阻害されることを防止できる。
L6/L1≧2 (6)
【0015】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、外装体は、封口板の短辺の各々と接合される一対の第1側壁と、封口板の長辺の各々と接合される一対の第2側壁とを備え、第1側壁の厚みが第2側壁の厚みよりも大きい。これによって、ケース内圧が大きく上昇した際に、封口板よりも先に外装体の第1側壁が変形することを防止し、より適切に封口板の湾曲変形を生じさせることを防止できる。
【0016】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、外装体の開口部に封口板が嵌め込まれ、開口部の外縁をなす外装体の上面と封口板の外面とを跨ぐように溶接部が形成されており、封口板の短辺と第1側壁とを跨ぐ溶接部の深さよりも、封口板の長辺と第2側壁とを跨ぐ溶接部の深さが大きい。これによって、封口板の長辺における溶接部が剥離し、封口板の湾曲変形が阻害されることを防止できる。
【0017】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、封口板の短辺方向におけるガス排出弁の長さL3と、封口板の長辺方向におけるガス排出弁の長さL7とが下記の式(7)を満たす。これによって、封口板が湾曲変形した際に、ガス排出弁を安定的に作動させることができる。
0.8≦L3/L7≦2 (7)
【0018】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、ガス排出弁は、中心部と、中心部の周囲に形成された周縁部と、周縁部において中心部を囲むように形成された環状の破断溝と、を備え、中心部の断面二次モーメントが周縁部の断面二次モーメントよりも大きい。これによって、相対的に断面二次モーメントが低い周縁部を起点としてガス排出弁が開口するため、当該ガス排出弁の作動安定性をさらに向上できる。
【0019】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、ガス排出弁の底面は、封口板の内側面から電極体に向かって突出しており、封口板と電極体との間に内部絶縁部材が配置されており、封口板に対して垂直な方向におけるガス排出弁の底面から電極体までの距離は、内部絶縁部材の厚みよりも大きい。これによって、ガス排出弁と電極体との接触を防止し、ガス排出弁の破損や電池ケースと電極体との導通などを抑制できる。
【0020】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、ガス排出弁の底面は、封口板の内側面から電極体に向かって突出しており、封口板に外装体の内部空間と連通する注液孔が形成され、当該注液孔を封止する封止部材が封口板の内側面から電極体に向かって突出しており、封口板に対して垂直な方向において、ガス排出弁の底面から電極体までの距離は、封止部材から電極体までの距離よりも大きい。これによって、ガス排出弁と電極体との接触を防止し、ガス排出弁の破損を抑制できる。
【0021】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、封口板の短辺の長さL1が30mm以上である。この種の大型二次電池は、ガス排出弁を安定的に作動させることが比較的に難しい。しかし、ここに開示される技術によると、このような大型二次電池においても、動作安定性に優れたガス排出弁を容易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態に係る二次電池を模式的に示す斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3図1のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
図4図1のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。
図5】封口板に取り付けられた電極体群を模式的に示す斜視図である。
図6】正極第2集電部および負極第2集電部が取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
図7】電極体の構成を示す模式図である。
図8】一実施形態に係る二次電池の封口板を模式的に示す平面図である。
図9】他の実施形態に係る二次電池の封口板を模式的に示す平面図である。
図10】他の実施形態に係る二次電池の封口板を模式的に示す平面図である。
図11】他の実施形態に係る二次電池の封口板を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない二次電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0024】
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0025】
<二次電池の構成の概要>
図1は、二次電池100の斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。図3は、図1のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。図4は、図1のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、二次電池100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、二次電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0026】
図2に示すように、二次電池100は、電池ケース10と、電極体20と、を備えている。また、本実施形態に係る二次電池100は、電池ケース10と電極体20の他に、正極端子30と、正極外部導電部材32と、負極端子40と、負極外部導電部材42と、外部絶縁部材92と、正極集電部50と、負極集電部60と、正極内部絶縁部材70と、負極内部絶縁部材80と、を備えている。また、図示は省略するが、本実施形態に係る二次電池100は、さらに電解液を備えている。二次電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。二次電池100の内部抵抗は、例えば0.2~2.0mΩ程度であり得る。
【0027】
電池ケース10は、電極体20を収容する筐体である。電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、所定の強度を有する金属製であることが好ましい。具体的には、電池ケース10に使用される金属の引張強度は、50N/mm~200N/mm程度が適切である。また、電池ケース10に使用される金属の物性値(剛性率)は、20GPa~100GPa程度が好適である。この種の金属材料の一例として、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。
【0028】
そして、電池ケース10は、外装体12と、封口板14と、ガス排出弁17を備えている。外装体12は、一つの面が開口部12hとなった扁平な角型の容器である。具体的には、外装体12は、図1に示すように、略矩形状の底壁12aと、底壁12aの短辺から上方Uに延びて相互に対向する一対の第1側壁12cと、底壁12aの長辺から上方Uに延びて相互に対向する一対の第2側壁12bと、を備えている。第1側壁12cの面積は、第2側壁12bの面積よりも小さい。そして、開口部12hは、上記一対の第1側壁12cと一対の第2側壁12bに囲まれた外装体12の上面に形成されている。封口板14は、外装体12の開口部12hを塞ぐように外装体12に取り付けられている。封口板14は、平面視において略矩形状の板材である。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。電池ケース10は、外装体12の開口部12hの周縁に封口板14が接合(例えば溶接接合)されることによって形成される。封口板14の接合は、例えばレーザ溶接等の溶接によって行うことができる。具体的には、一対の第1側壁12cの各々は、封口板14の短辺14a(図8参照)と接合され、一対の第2側壁12bの各々は、封口板14の長辺14b(図8参照)と接合される。このとき、図3に示すように、開口部12hの外縁をなす外装体12の上面12dと封口板14の外面14dとを跨ぐ溶接部Mが形成されるように、外装体12と封口板14とが溶接されることが好ましい。これによって、外装体12と封口板14とを充分な強度で接合することができる。
【0029】
図1および図2に示すように、ガス排出弁17は、封口板14に形成されている。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になった際に開口して、電池ケース10内のガスを排出するように構成される。本実施形態におけるガス排出弁17は、封口板14の外面14dから電極体20側に向って窪んだ平面略円形の凹部である。かかるガス排出弁17の底面には、封口板14の厚みT1(図3参照)よりも薄い薄肉部17aが形成される。このガス排出弁17は、ケース内圧が所定値以上になった際に薄肉部17aが破断する。これによって、電池ケース10内のガスを外部に排出し、上昇したケース内圧を低減できる。なお、特に限定されないが、薄肉部17aの厚みは、0.1mm~0.5mmが好ましく、0.2mm~0.4mmがより好ましく、例えば0.3mm程度とすることができる。薄肉部17aが薄くなるにつれて、ケース内圧の上昇に対するガス排出弁17の反応性(薄肉部17aの破断し易さ)が向上する。一方、薄肉部17aが厚くなるにつれて薄肉部17aの強度が向上し、ガス排出弁17の誤作動を抑制できる。
【0030】
図8に示すように、本実施形態におけるガス排出弁17の底面(図2中の薄肉部17a)には、平面略円形の中心部17bと、当該中心部17bの周囲に形成された周縁部17cと、中心部17bを囲むように周縁部17cに形成された環状の破断溝17dとを備えている。これによって、中心部17bの断面二次モーメントが周縁部17cの断面二次モーメントよりも大きくなるため、周縁部17cを起点として薄肉部17aを破断させることができる。換言すると、ガス排出弁17の薄肉部17aに環状の破断溝17dを形成することによって、ガス排出弁17が作動する際の破断開始位置を制御し、ガス排出弁17の作動安定性を向上することができる。例えば、破断溝17dが形成された薄肉部17a(残肉部)の厚みは、0.05mm~0.3mmが好ましく、0.05mm~0.2mmがより好ましく、例えば0.1mm程度とすることができる。残肉部が薄くなる(破断溝17dが深くなる)につれて破断溝17dを起点とした破断が生じやすくなり、ガス排出弁17の反応性が向上する傾向がある。一方、残肉部が厚くなる(破断溝17dが浅くなる)につれて、ガス排出弁17の誤作動を抑制できる。
【0031】
また、ガス排出弁17は、長辺方向Yにおける封口板14の中央領域に形成されていることが好ましい。これによって、封口板14の湾曲変形による応力がガス排出弁17に効率よく加わるため、ガス排出弁17の作動安定性を適切に向上させることができる。なお、本明細書において「封口板の中央領域」とは、長辺方向における封口板の中心点を含む領域を指す。すなわち、平面視におけるガス排出弁の形成領域が上記封口板の中心点を含んでいる場合に、「ガス排出弁は、封口板の中央領域に形成されている」ということができる。また、ここに開示される二次電池において、ガス排出弁は、必ずしも封口板の中央領域に形成されていなくてもよい。詳しくは後述するが、封口板に取り付けられる種々の部品(電極端子、封止部材、外部絶縁部材など)の取付位置によっては、封口板の湾曲変形の発生位置が封口板の中央領域からずれることもある。このため、ここに開示される技術では、予備試験等を実施して封口板の湾曲変形の発生位置を特定した上で、ガス排出弁の形成領域に、封口板の湾曲変形の発生位置を含ませることが好ましい。これによって、封口板の湾曲変形による応力がガス排出弁に効率よく加わるため、ガス排出弁の作動安定性を適切に向上できる。
【0032】
また、封口板14には、上記ガス排出弁17の他に、注液孔15と、2つの端子挿入穴18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12の内部空間と連通しており、二次電池100の製造工程において電解液を注液するために設けられた開口である。注液孔15は、封止部材15aにより封止されている。かかる封止部材15aとしては、例えば、ブラインドリベットが好適である。これによって、電池ケース10の内部で封止部材15aを強固に固定できる。なお、注液孔15の直径は、2mm~5mmが好ましく、3mm~4mmがより好ましく、例えば3.2mm程度とすることができる。また、端子挿入穴18、19は、封口板14の長辺方向Yの両端部にそれぞれ形成されている。端子挿入穴18、19は、封口板14を上下方向Zに貫通している。図2に示すように、長辺方向Yの一方(左側)の端子挿入穴18には正極端子30が挿入される。また、長辺方向Yの他方(右側)の端子挿入穴19には負極端子40が挿入される。なお、端子挿入穴18、19の直径は、10mm~20mmが好ましく、13mm~18mmがより好ましく、例えば16mm程度とすることができる。
【0033】
図5は、封口板14に取り付けられた電極体20を模式的に示す斜視図である。本実施形態では、複数個(ここでは3個)の電極体20a、20b、20cが電池ケース10の内部に収容される。なお、1つの電池ケース10の内部に収容される電極体20の数は特に限定されず、1つであってもよいし、2つ以上(複数)であってもよい。但し、複数の電極体20を備えた二次電池100では、ガス発生のタイミングが電極体20a、20b、20c毎に分散されるため、内部短絡等が生じた際のケース内圧を徐々に上昇させることができる。これによって、ケース内圧が非常に高い領域まで上昇する前に、ガス排出弁17を作動させてガスを排出することができる。なお、図2に示すように、各々の電極体20の長辺方向Yの一方側(図2の左側)には正極集電部50が配置され、長辺方向Yの他方(図2の右側)には負極集電部60が配置される。そして、電極体20a、20b、20cの各々は、並列に接続されている。ただし、電極体20a、20b、20cは、直列に接続されていてもよい。電極体20は、ここでは樹脂製シートからなる電極体ホルダ29(図3参照)に覆われた状態で電池ケース10の外装体12の内部に収容される。
【0034】
図6は、電極体20aを模式的に示す斜視図である。図7は、電極体20aの構成を示す模式図である。なお、以下では電極体20aを例として詳しく説明するが、電極体20b、20cについても同様の構成とすることができる。
【0035】
図7に示すように、電極体20aは、正極22と負極24とセパレータ26とを有する。電極体20aは、ここでは、帯状の正極22と帯状の負極24とが2枚の帯状のセパレータ26を介して積層され、捲回軸WLを中心として捲回された捲回電極体である。ただし、電極体の構造は、ここに開示される技術を限定するものではない。例えば、電極体は、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の正極と、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の負極とが、絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。
【0036】
電極体20aは、扁平形状を有している。電極体20aは、捲回軸WLが長辺方向Yと略平行になる向きで、外装体12の内部に配置されている。具体的には、図3に示すように、電極体20aは、外装体12の底壁12aおよび封口板14と対向する一対の湾曲部(R部)20rと、一対の湾曲部20rを連結し、外装体12の第2側壁12bに対向する平坦部20fとを有している。平坦部20fは、第2側壁12bに沿って延びている。
【0037】
正極22は、図7に示すように、正極集電体22cと、当該正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を有する。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。正極集電体22cは、帯状である。正極集電体22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極集電体22cは、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。
【0038】
正極集電体22cの長辺方向Yの一方の端部(図7の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、帯状の正極22の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の正極タブ22tは、捲回軸WLの軸方向の一方側(図7の左側)に向かって、セパレータ26よりも外側に突出している。なお、正極タブ22tは、捲回軸WLの軸方向の他方(図7で示すと右側)に設けられていてもよいし、捲回軸WLの軸方向の両側の各々に設けられていてもよい。正極タブ22tは、正極集電体22cの一部であり、金属箔(アルミニウム箔)からなっている。ただし、正極タブ22tは、正極集電体22cとは別の部材であってもよい。正極タブ22tの少なくとも一部には、正極活物質層22aおよび正極保護層22pが形成されずに、正極集電体22cが露出した領域が形成される。
【0039】
図4に示すように、複数の正極タブ22tは、捲回軸WLの軸方向の一方の端部(図4の左端部)で積層され、正極タブ群23を構成する。そして、複数の正極タブ22tの各々は、外方側の端が揃うように折り曲げられている。これにより、電池ケース10への収容性を向上して二次電池100を小型化することができる。図2に示すように、正極タブ群23は、正極集電部50を介して正極端子30と電気的に接続される。具体的には、正極タブ群23と正極第2集電部52とは接続部Jにおいて接続される(図4参照)。そして、正極第2集電部52は、正極第1集電部51を介して正極端子30と電気的に接続される。なお、複数の正極タブ22tのサイズ(長辺方向Yに沿った長さおよび長辺方向Yに直交する幅、図7参照)は、正極集電部50に接続される状態を考慮し、例えばその形成位置等によって、適宜調整することができる。ここでは、湾曲させたときに外方側の端が揃うように、複数の正極タブ22tの各々のサイズが相互に異なっている。
【0040】
図7に示すように、正極活物質層22aは、帯状の正極集電体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。正極活物質層22aの固形分全体を100質量%としたときに、正極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等の炭素材料を使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0041】
正極保護層22pは、図7に示すように、長辺方向Yにおいて正極集電体22cと正極活物質層22aとの境界部分に設けられている。正極保護層22pは、ここでは正極集電体22cの捲回軸WLの軸方向の一方の端部(図7の左端部)に設けられている。ただし、正極保護層22pは、軸方向の両端部に設けられていてもよい。正極保護層22pは、正極活物質層22aに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、無機フィラー(例えば、アルミナ)を含んでいる。正極保護層22pの固形分全体を100質量%としたときに、無機フィラーは、概ね50質量%以上、典型的には70質量%以上、例えば80質量%以上を占めていてもよい。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材およびバインダは、正極活物質層22aに含み得るとして例示したものと同じであってもよい。
【0042】
負極24は、図7に示すように、負極集電体24cと、負極集電体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。負極集電体24cは、帯状である。負極集電体24cは、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極集電体24cは、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。
【0043】
負極集電体24cの捲回軸WLの軸方向の一方の端部(図7の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、帯状の負極24の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の負極タブ24tの各々は、軸方向の一方側(図7の右側)に向かって、セパレータ26よりも外側に突出している。ただし、負極タブ24tは、軸方向の他方の端部(図7の左端部)に設けられていてもよいし、軸方向の両端部の各々に設けられていてもよい。負極タブ24tは、負極集電体24cの一部であり、金属箔(銅箔)からなっている。ただし、負極タブ24tは、負極集電体24cとは別の部材であってもよい。負極タブ24tの少なくとも一部には、負極活物質層24aが形成されずに、負極集電体24cが露出した領域が設けられている。
【0044】
図4に示すように、複数の負極タブ24tは、軸方向の一方の端部(図4の右端部)で積層されて負極タブ群25を構成する。負極タブ群25は、軸方向において、正極タブ群23と対称的な位置に設けられていることが好ましい。そして、複数の負極タブ24tの各々は、外方側の端が揃うように折り曲げられている。これにより、電池ケース10への収容性を向上して、二次電池100を小型化することができる。図2に示すように、負極タブ群25は、負極集電部60を介して負極端子40と電気的に接続されている。具体的には、負極タブ群25と負極第2集電部62とは接続部Jにおいて接続される(図4参照)。そして、負極第2集電部62は、負極第1集電部61を介して負極端子40と電気的に接続される。複数の正極タブ22tと同様に、ここでは、湾曲させたときの外方側の端が揃うように、複数の負極タブ24tの各々サイズが相互に異なっている。
【0045】
図7に示すように、負極活物質層24aは、帯状の負極集電体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。負極活物質層24aの固形分全体を100質量%としたときに、負極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、分散剤、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類を使用し得る。分散剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロール類を使用し得る。
【0046】
セパレータ26は、図7に示すように、正極22の正極活物質層22aと、負極24の負極活物質層24aと、を絶縁する部材である。セパレータ26としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる樹脂製の多孔性シートが好適である。セパレータ26は、樹脂製の多孔性シートからなる基材部と、基材部の少なくとも一方の表面上に設けられ、無機フィラーを含む耐熱層(Heat Resistance Layer:HRL)と、を有していてもよい。無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、チタニア等を使用し得る。
【0047】
電解液は従来と同様でよく、特に制限はない。電解液は、例えば、非水系溶媒と支持塩とを含有する非水電解液である。非水系溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類を含んでいる。支持塩は、例えば、LiPF等のフッ素含有リチウム塩である。ただし、電解液は固体状(固体電解質)で、電極体20と一体化されていてもよい。
【0048】
正極端子30は、図2に示すように、封口板14の長辺方向Yの一方の端部(図2の左端部)に形成された端子挿入穴18に挿入されている。正極端子30は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。一方、負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方の端部(図2の右端部)に形成された端子挿入穴19に挿入されている。なお、負極端子40は、金属製であることが好ましく、例えば銅または銅合金からなることがより好ましい。これらの電極端子(正極端子30、負極端子40)は、ここでは、電池ケース10の同じ面(具体的には封口板14)からそれぞれ突出している。ただし、正極端子30および負極端子40は、電池ケース10の異なる面からそれぞれ突出していてもよい。また、端子挿入穴18、19に挿入された電極端子(正極端子30、負極端子40)は、カシメ加工などによって封口板14に固定されていることが好ましい。
【0049】
上述した通り、正極端子30は、図2に示すように、外装体12の内部で正極集電部50(正極第1集電部51、正極第2集電部52)を介して、各々の電極体20の正極22(図7参照)と電気的に接続される。正極端子30は、正極内部絶縁部材70およびガスケット90によって、封口板14と絶縁される。なお、正極内部絶縁部材70は、正極第1集電部51と封口板14との間に介在するベース部70aと、当該ベース部70aから電極体20側に突出する突出部70bとを備えている。そして、端子挿入穴18を通じて電池ケース10の外部に露出した正極端子30は、封口板14の外部において正極外部導電部材32と接続される。一方、負極端子40は、図2に示すように、外装体12の内部で負極集電部60(負極第1集電部61、負極第2集電部62)を介して、各々の電極体20の負極24(図7参照)と電気的に接続される。負極端子40は、負極内部絶縁部材80およびガスケット90によって、封口板14と絶縁される。なお、正極内部絶縁部材70と同様に、負極内部絶縁部材80も、負極第1集電部61と封口板14との間に介在するベース部80aと、当該ベース部80aから電極体20側に突出する突出部80bとを備えている。そして、端子挿入穴19を通じて電池ケース10の外部に露出した負極端子40は、封口板14の外部において負極外部導電部材42と接続される。そして、上述した外部導電部材(正極外部導電部材32、負極外部導電部材42)と封口板14の外面14dとの間には、外部絶縁部材92が介在している。かかる外部絶縁部材92によって外部導電部材32、42と封口板14とを絶縁できる。
【0050】
また、上述した内部絶縁部材(正極内部絶縁部材70、負極内部絶縁部材80)の突出部70b、80bは、封口板14と電極体20との間に配置される。かかる内部絶縁部材の突出部70b、80bによって、上方への電極体20の移動が規制され、封口板14と電極体20との接触を防止できる。なお、本実施形態では、ガス排出弁17の底面が封口板14の内側面14cから電極体20側に突出している。このため、封口板14に対して垂直な方向(上下方向Z)において、ガス排出弁17の底面から電極体20までの距離が内部絶縁部材(ここでは、突出部70b、80b)の厚みよりも大きくなるように各々の寸法を規定することが好ましい。これによって、ガス排出弁17と電極体20とが接触することを防止し、ガス排出弁17の破損や、ガス排出弁17を介した電極体20と封口板14との導通を防止できる。また、本実施形態では、注液孔15を塞ぐ封止部材15aが、封口板14の内側面14cから電極体20に向かって突出している。このとき、上下方向Zにおけるガス排出弁17の底面から電極体20までの距離は、封止部材15aから電極体20までの距離よりも大きいことが好ましい。これによって、ガス排出弁17と電極体20との接触によるガス排出弁17の破損をより好適に防止できる。さらに、封止部材15aを介した電極体20と封口板14との導通を防止するという観点から、上下方向Zにおける封止部材15aから電極体20までの距離は、内部絶縁部材(突出部70b、80b)の厚みよりも大きいことが好ましい。
【0051】
<封口板の設計>
本実施形態に係る二次電池100は、ガス排出弁17が安定的に作動するように封口板14が設計されている。以下、かかる封口板14の設計について説明する。図8は、封口板14を拡大した平面図である。なお、説明の便宜上、図8では、正極側の端子挿入穴18に正極端子30が挿入され、かつ、負極側の端子挿入穴19から負極端子40(図2参照)が取り外された状態を図示している。
【0052】
まず、平面矩形の封口板14を備えた二次電池100のケース内圧が大きく上昇すると、当該封口板14が電池ケース10外側に向かって凸状に湾曲変形することがある。そして、この封口板14の湾曲変形によって生じた応力がガス排出弁17に加わると、ガス排出弁17が作動(薄肉部17aが破断)しやすくなる。本実施形態に係る二次電池100では、上記封口板14の湾曲変形によってガス排出弁17の作動安定性が向上するように、下記の式(1)~(3)を満たす封止板14が用いられる。なお、下記の式中のT1は「封口板14の厚み」である(図3参照)。そして、L1は「封口板14の短辺14aの長さ」であり、L2は「封口板14の長辺14bの長さ」であり、L3は「封口板14の短辺方向Xにおけるガス排出弁17の長さ」である(図8参照)。以下、式(1)~(3)の各々について説明する。
T1/L1≦0.1 (1)
L2/L1≧6 (2)
L3/L1≧0.4 (3)
【0053】
(式(1)について)
まず、上記式(1)に示すように、本実施形態における封口板14は、封口板14の短辺14aの長さL1に対する封口板14の厚みT1の割合(T1/L1)が0.1以下となるように設計される。これによって、封口板14の強度が低下するため、電池ケース10の内圧が上昇した際の封口板14の湾曲変形が生じやすくなる。なお、封口板14の湾曲変形をさらに生じさせやすくするという観点から、上記T1/L1は、0.09以下が好ましく、0.08以下がより好ましい。一方、封口板14の強度を一定以上確保し、ガス排出弁17の誤作動を防止するという観点から、上記T1/L1の下限値は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.07以上がさらに好ましい。なお、封口板14の厚みT1の具体的な数値は、上記T1/L1が式(1)に規定される範囲を満たしていれば特に限定されない。例えば、封口板14の厚みT1は、1mm~5mm(好適には2mm~4mm、より好適には2.5mm~3mm、例えば2.8mm)とすることができる。なお、本明細書における「封口板14の厚みT1」とは、封口板14のうち、意図的な凹凸や穴が形成されていない領域(ベース部)における厚みのことを指す。
【0054】
また、封口板14の短辺14aの長さL1の具体的な数値についても、上記式(1)~(3)を満たしている限りにおいて特に限定されない。例えば、封口板14の短辺14aの長さL1は、20mm~60mm程度にすることができる。なお、本明細書では、説明の便宜上、上記寸法の二次電池100の中でも、封口板14の短辺14aの長さL1が30mm以上となる二次電池100のことを「大型二次電池」という。かかる大型二次電池は、電池ケース10の容量が大きいためケース内圧が上昇しにくい一方で、電極体10の体積が大きいため多量のガスが急激に発生する可能性もあり得る。かかる大型二次電池の特性を考慮して、ケース内圧が非常に高い領域まで上昇する前にガス排出弁17が作動するように、薄肉部17aの厚さや破断溝17dの深さを設計することは困難である。しかし、本実施形態によると、封口板14の湾曲変形のしやすさという観点で封口板14を設計すればよいため、大型二次電池におけるガス排出弁17の動作安定性を比較的に容易に確保できる。このため、ここに開示される技術は、封口板の短辺の長さが30mm~50mm(より好適には35mm~45mm、例えば40mm)の大型二次電池への適用が好適である。
【0055】
(式(2)について)
次に、上記式(2)に示すように、本実施形態における封口板14は、封口板14の短辺14aの長さL1に対する封口板14の長辺14bの長さL2の割合(L2/L1)が6以上となるように設計される。このようにアスペクト比(L2/L1)が大きな封口板14を用いることによって、ケース内圧上昇時の封口板14の中央部付近における曲げモーメントが大きくなるため、封口板14の湾曲変形がさらに生じやすくなる。なお、封口板14の湾曲変形をさらに容易にするという観点から、上記L2/L1は、6.5以上が好ましく、7以上がより好ましく、7.5以上が特に好ましい。一方、ケース内圧が比較的に低圧な際に封口板14が湾曲変形することを防止するという観点から、上記L2/L1は、12以下が好ましく、11以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、9以下が特に好ましい。なお、封口板14の長辺14bの長さL2の具体的な数値は、上記L2/L1が式(2)を満たしている限りにおいて特に限定されない。例えば、封口板14の長辺14bの長さL2は、120mm~600mm(好適には250mm~500mm、より好適には250mm~400mm、例えば300mm程度)とすることができる。
【0056】
(式(3)について)
そして、本実施形態に係る二次電池100では、上記式(3)に示すように、封口板14の短辺14aの長さL1に対する封口板14の短辺方向Xにおけるガス排出弁17の長さL3の割合(L3/L1)が0.4以上となるように、封口板14とガス排出弁17が設計される。このように、封口板14の短辺14aに対して一定以上の大きさのガス排出弁17を形成することによって、封口板14が湾曲変形した際にガス排出弁17が作動(薄肉部17aが破断)しやすくなる。なお、封口板14の湾曲変形時にガス排出弁17をさらに作動しやすくするという観点から、上記L3/L1は、0.45以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。一方、ガス排出弁17の誤作動を防止するという観点から、上記L3/L1の上限値は、0.8以下が好ましく、0.7以下がより好ましく、0.6以下が特に好ましい。なお、上記式(3)を満たしていれば、短辺方向Xにおけるガス排出弁17の長さL3の具体的な数値は特に限定されない。例えば、短辺方向Xにおけるガス排出弁17の長さL3は、10mm~35mm(好適には15mm~30mm、より好適には15mm~25mm)とすることができる。
【0057】
なお、本明細書における「ガス排出弁の長さ」とは、電池ケース10の内圧が大きく上昇した際に開口しうる領域(開口予定領域)の長さを指すものとする。具体的には、本実施形態のように、環状の破断溝17dが形成されている場合には、短辺方向Xにおける破断溝17dの径を「短辺方向におけるガス排出弁の長さL3」とみなし、長辺方向Yにおける破断溝17dの径を「長辺方向におけるガス排出弁の長さL7」とみなす。一方、後述する他の実施形態(図9参照)のように、破断溝が形成されておらず、底面全体に平坦な薄肉部17aが形成されている場合には、短辺方向Xにおける薄肉部17aの径を「短辺方向におけるガス排出弁の長さL3」とみなし、長辺方向Yにおける薄肉部17aの径を「長辺方向におけるガス排出弁の長さL7」とみなす。また、図10に示すように、2本の線状の破断溝17eが交差するように形成されている場合には、短辺方向Xにおける破断溝17eの始点から終点までの距離を「短辺方向におけるガス排出弁の長さL3」とみなし、長辺方向Yにおける破断溝17eの始点から終点までの距離を「長辺方向におけるガス排出弁の長さL7」とみなす。さらに、図11に示すように、短辺方向Xに沿って延びた1本の線状の破断溝17eが形成されている場合には、当該線状の破断溝17eの長さを「短辺方向におけるガス排出弁の長さL3」とみなし、長辺方向Yにおける薄肉部17aの径を「長辺方向におけるガス排出弁の長さL7」とみなす。
【0058】
以上の通り、本実施形態に係る二次電池100では、ケース内圧が所望の圧力に達した際に封口板14を容易に湾曲変形させるという観点で、上記式(1)~(2)を満たすように封口板14が設計されている。加えて、封口板14が湾曲変形した際の応力で薄肉部17aを破断させるという観点で、上記式(3)を満たすように封口板14とガス排出弁17の寸法が設計されている。したがって、本実施形態に係る二次電池100では、ケース内圧が所望の圧力まで上昇した際に、封口板14の湾曲変形が容易に生じ、当該湾曲変形によってガス排出弁17を安定的に作動(開口)させることができる。すなわち、本実施形態によると、ガス排出弁17が安定的に作動する安全性に優れた二次電池100を構築できる。
【0059】
<他の構成について>
また、本実施形態に係る二次電池100は、ガス排出弁17の作動安定性を向上し得る種々の構成を備えている。以下、かかる構成について説明する。なお、以下で説明する構成は、ここに開示される二次電池の必須の構成ではなく、必要に応じて適宜変更できる。換言すると、ここに開示される二次電池は、上記式(1)~(3)を満たすように封口板とガス排出弁が設計されていればよく、以下で説明する構成を備えていなくてもよい。
【0060】
(断熱溝の形成)
一般に、ガス排出弁の開口予定領域(破断溝の残肉部や薄肉部など)は、厚みが非常に薄いため、熱疲労による強度低下の影響を受けやすい。このため、外装体12と封口板14との溶接時の熱がガス排出弁17に伝わると、開口予定領域の熱劣化によるガス排出弁17の誤作動が生じやすくなる。これに対して、本実施形態では、封口板14の長辺14bとガス排出弁17との間に、封口板14の長辺方向Yに沿って延びる断熱溝16が形成されている(図8参照)。これによって、開口予定領域の熱劣化によるガス排出弁17の誤作動を好適に防止できる。また、断熱溝16が形成された封口板14は、ケース内圧上昇に対する強度が低下する傾向がある。すなわち、断熱溝16は、封口板14の湾曲変形を生じやすくするという観点からも好適である。
【0061】
なお、封口板14の必要以上の強度低下を防止した上で、ガス排出弁17の熱劣化を適切に防止するという観点から、断熱溝16の幅(短辺方向Xにおける長さ)は、0.2mm~1.0mmが好ましく、0.3mm~0.6mmがより好ましい。また、断熱溝16の深さも、封口板14の強度と断熱性を考慮して適宜設定することが好ましい。例えば、断熱溝16の深さは、0.2mm~1.0mmが好ましく、0.4mm~0.6mmがより好ましい。
【0062】
(端子挿入穴の位置)
上述した通り、本実施形態では、長辺方向Yにおける封口板14の両端部に端子挿入穴18、19が形成されている。このとき、封口板14の短辺14aの長さL1に対する長辺方向Yにおけるガス排出弁17から端子挿入穴18、19までの最短距離L4の割合(L4/L1)が下記の式(4)を満たしていることが好ましい。この端子挿入穴18、19には電極端子(正極端子30、負極端子40)などが取り付けられるため、その周辺の領域において湾曲変形が生じにくくなる傾向がある。これに対し、下記式(4)に示すようにL4/L1を一定以上にすることによって、ガス排出弁17の近傍における封口板14の湾曲変形が電極端子等で阻害されることを防止できる。
L4/L1≧3 (4)
【0063】
なお、ガス排出弁17の近傍における変形阻害をより好適に防止するという観点から、上記L4/L1は、3.3以上が好ましく、3.5以上がより好ましい。一方、L4/L1の上限は、特に限定されず、10以下でもよく、7以下でもよく、5以下でもよい。なお、上記「ガス排出弁から端子挿入穴までの最短距離L4」とは、封口板に形成された2つの端子挿入穴のうち、ガス排出弁の近くに形成された方の端子挿入穴からガス排出弁までの距離を示す。また、下記式(4)を満たしていれば、ガス排出弁17から端子挿入穴18、19までの最短距離L4の具体的な数値は特に限定されない。例えば、上記L4は、100mm~150mm(好適には110mm~130mm)とすることができる。
【0064】
(注液孔の位置)
上述した通り、本実施形態における封口板14には、製造工程において電池ケース10内に電解液を注液するための注液孔15が形成されている。この注液孔15には封止部材15aが取り付けられるため、その周辺の領域において湾曲変形が生じにくくなる傾向がある。このため、封口板14の短辺14aの長さL1に対する長辺方向Yにおけるガス排出弁17から注液孔15までの距離L5の割合(L5/L1)が下記の式(5)を満たすように注液孔15の位置が制御されていることが好ましい。これによって、ガス排出弁17の近傍の封口板14の湾曲変形が封止部材15aで阻害されることを防止できる。
L5/L1≧1 (5)
【0065】
なお、ガス排出弁17の近傍における変形阻害をより好適に防止するという観点から、上記L5/L1は、1.5以上が好ましい。一方、L5/L1の上限は、特に限定されず、2.5以下でもよく、2以下でもよい。なお、式(5)を満たしていれば、ガス排出弁17から注液孔15までの距離L5の具体的な数値は特に限定されない。例えば、上記L5は、40mm~80mm(好適には50mm~70mm)とすることができる。
【0066】
(外部絶縁部材の位置)
図2に示すように、本実施形態では、封口板14の外面14dと外部導電部材(正極外部導電部材32、負極外部導電部材42)との間に外部絶縁部材92が介在している。かかる外部絶縁部材92の周辺の領域においても、封口板14の湾曲変形が阻害されるおそれがある。このため、封口板14の短辺14aの長さL1に対する長辺方向Yにおけるガス排出弁17から外部絶縁部材92までの最短距離L6の割合(L6/L1)が下記の式(6)を満たすように外部絶縁部材92の位置が制御されていることが好ましい。これによって、ガス排出弁17の周囲の領域における封口板14の湾曲変形が外部絶縁部材92で阻害されることを防止できる。
L6/L1≧2 (6)
【0067】
なお、ガス排出弁17の近傍における変形阻害をより好適に防止するという観点から、上記L6/L1は、2.5以上が好ましい。一方、L6/L1の上限は、特に限定されず、4以下でもよく、3.5以下でもよい。なお、本明細書において、「ガス排出弁から外部絶縁部材までの最短距離L6」とは、長辺方向の両端部に取り付けられた一対の外部絶縁部材のうち、ガス排出弁の近くに形成された方の外部絶縁部材からガス排出弁までの距離を示す。また、上記式(6)を満たしていれば、ガス排出弁17から外部絶縁部材92までの最短距離L6の具体的な数値は特に限定されない。例えば、上記L6は、80mm~120mm(好適には90mm~110mm)とすることができる。
【0068】
(外装体の厚み)
扁平な角型の電池ケース10の内圧が大きく上昇した場合、上述した封口板14の他に、外装体12の扁平面(第1側壁12c)が変形する可能性もある。この外装体12の第2側壁12bの変形が生じると、電池ケース10の内容量が増加して封口板14の湾曲変形が遅れるため、ガス排出弁17の作動安定性が低下するおそれがある。これに対して、本実施形態では、第1側壁12cの厚みが第2側壁12bの厚みよりも大きくなるように外装体12が構成されている。これによって、第1側壁12cの変形によるケース容量の増加が抑制されるため、封口板14の湾曲変形を安定して生じさせることができる。
【0069】
なお、ケース内圧が大きくなった際に封口板14を確実に湾曲変形させるという観点から、第2側壁12bの厚みに対する第1側壁12cの厚みの割合は、1.3以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。なお、第1側壁12cの具体的な厚みは、0.8mm~1.5mmが好ましく、1mm~1.2mmがより好ましい。一方、第2側壁12bの具体的な厚みは、0.6mm~1.0mmが好ましい。
【0070】
(溶接部の深さ)
また、上述した通り、本実施形態では、外装体12の上面12dと封口板14の外面14dとを跨ぐ溶接部Mを形成することによって電池ケース10が構築される(図3参照)。ここで、封口板14の短辺14aと第1側壁12cとを跨ぐ溶接部M1の深さよりも、封口板14の長辺14bと第2側壁12bとを跨ぐ溶接部M2の深さが深い方が好ましい。これによって、封口板14の長辺14bにおける溶接部M2が剥離し、短辺方向Xにおける封口板14の中央部付近に適切な曲げモーメントが生じなくなることを防止できる。
【0071】
<他の実施形態>
以上、ここに開示される二次電池の一実施形態について説明した。なお、ここに開示される二次電池は、上述の実施形態に限定されず、種々の実施形態を包含する。以下、ここに開示される二次電池の他の実施形態について説明する。
【0072】
(破断溝の形状)
例えば、ガス排出弁は、上述した構造に限定されず、種々の構造を特に制限なく採用することができる。ガス排出弁17は、例えば、図9に示すように、破断溝17d(図8参照)が形成されておらず、凹部の底面全体に亘って平坦な薄肉部17aが形成されていてもよい。ここに開示される二次電池では、封口板の湾曲変形による応力がガス排出弁に加わるため、上述のような破断溝を有さないガス排出弁17であっても安定して作動させることができる。また、ガス排出弁に破断溝を形成する場合、当該破断溝の平面形状は特に限定されない。例えば、図10および図11に示すように、破断溝17eの平面形状は、線状であってもよい。このような線状の破断溝17eを形成した場合であっても、上記式(1)~(3)を満たすように封口板14を形成すれば、封口板14の湾曲変形によってガス排出弁17を安定的に作動させることができる。
【0073】
(ガス排出弁の形状)
また、上述した各実施形態では、平面略円形のガス排出弁17が形成されている。しかし、ガス排出弁の平面形状は、特に限定されず、種々の形状を採用することができる。例えば、ガス排出弁の平面形状は、楕円形、角形(例えば四角形、五角形など)であってもよい。但し、楕円形や矩形などの長辺と短辺が相違するガス排出弁17を形成した場合には、長辺方向Yにおけるガス排出弁17の長さL7に対する短辺方向Xにおけるガス排出弁17の長さL3の割合(L3/L7)が下記の式(7)を満たしているとことが好ましい。これによって、封口板14が湾曲変形した際にガス排出弁17を安定的に作動させることができる。なお、ガス排出弁17の作動安定性をさらに向上させるという観点から、上記L3/L7の上限値は、1.5以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。
0.8≦L3/L7≦2 (7)
【0074】
(封口板の構成)
さらに、上述の実施形態における封口板14は、ガス排出弁17の他に、端子挿入穴18、19と注液孔15が設けられている。しかし、端子挿入穴18、19と注液孔15は、封口板14に形成されていなくてもよい。例えば、電池ケースを構成する壁面のうち、封口板以外の壁面(底壁、第1側壁、第2側壁)の一つに端子挿入穴や注液孔が設けられていてもよい。
【0075】
以上、ここに開示される技術の実施形態について説明した。しかし、上述の説明は例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、上述の説明にて例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0076】
10 電池ケース
12 外装体
14 封口板
15 注液孔
15a 封止部材
16 断熱溝
17 ガス排出弁
17a 薄肉部
17b 中心部
17c 周縁部
17d、17e 破断溝
18、19 端子挿入穴
20、20a~20c 電極体
22 正極
24 負極
26 セパレータ
30 正極端子
32 正極外部導電部材
40 負極端子
42 負極外部導電部材
50 正極集電部
60 負極集電部
70 正極内部絶縁部材
80 負極内部絶縁部材
90 ガスケット
92 外部絶縁部材
100 二次電池
M 溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11