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特許7301635タッチパネル制御装置、タッチパネル制御方法、及び入力表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】タッチパネル制御装置、タッチパネル制御方法、及び入力表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20230626BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
G06F3/041 522
G06F3/041 512
G06F3/044 120
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019123449
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021009585
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】松井 邦晃
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0256861(US,A1)
【文献】特開2012-203901(JP,A)
【文献】特開2014-052997(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103376961(CN,A)
【文献】特開2019-101593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/03-3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルに重なるように設けられ、ユーザによるタッチ位置に応じた位置信号を出力する受信電極と前記受信電極に対向配置される駆動電極とを備えるタッチパネルを制御するタッチパネル制御装置であって、
前記表示パネルに設けられるゲートラインの駆動タイミングを制御する第1ゲートクロック信号に対応する遅延量を設定する遅延設定部と、
前記遅延設定部により設定された前記遅延量に基づいて、前記タッチ位置を検出するための駆動パルスを前記駆動電極に出力するタッチパネル駆動部と、
前記第1ゲートクロック信号に前記遅延設定部により設定された前記遅延量を付与して第2ゲートクロック信号を生成する信号生成部と、
を備え、
前記タッチパネル駆動部は、前記信号生成部により生成された前記第2ゲートクロック信号に基づいて前記駆動パルスを前記駆動電極に出力し、
前記タッチパネル駆動部は、さらに、前記第2ゲートクロック信号の立ち上がりタイミングから前記駆動パルスの立ち上がりタイミングまでの期間、継続して所定の電圧レベルの信号を前記駆動電極及び前記受信電極に出力する、
タッチパネル制御装置。
【請求項2】
前記遅延設定部は、前記第1ゲートクロック信号の立ち上がりタイミングから前記ゲートラインが駆動することにより前記位置信号に現れるノイズが発生するタイミングの直前までの期間を前記遅延量に設定する、
請求項に記載のタッチパネル制御装置。
【請求項3】
前記タッチパネル駆動部は、前記第2ゲートクロック信号の立ち上がりタイミングから前記ノイズの発生期間が終了するタイミングまでの期間において、前記駆動パルスを前記駆動電極に出力せず、前記所定の電圧レベルの信号を前記駆動電極及び前記受信電極に出力する、
請求項に記載のタッチパネル制御装置。
【請求項4】
前記遅延設定部は、前記タッチパネルごとに個別に前記遅延量を設定する、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のタッチパネル制御装置。
【請求項5】
前記タッチパネル駆動部は、前記表示パネルの電源がONされて前記表示パネルの初期化処理が実行されている期間、継続して前記所定の電圧レベルの信号を前記駆動電極及び前記受信電極に出力する、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のタッチパネル制御装置。
【請求項6】
前記所定の電圧レベルの信号は、GNDレベルの信号である、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のタッチパネル制御装置。
【請求項7】
前記タッチパネルは、静電容量方式のタッチパネルである、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のタッチパネル制御装置。
【請求項8】
前記タッチパネルは、ダイレクトボンディングにより前記表示パネルに設けられる、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のタッチパネル制御装置。
【請求項9】
表示パネルに重なるように設けられ、ユーザによるタッチ位置に応じた位置信号を出力する受信電極と前記受信電極に対向配置される駆動電極とを備えるタッチパネルを制御するタッチパネル制御装置であって、
前記表示パネルに設けられるゲートラインの駆動タイミングを制御する第1ゲートクロック信号に対応する遅延量を設定する遅延設定部と、
前記遅延設定部により設定された前記遅延量に基づいて、前記タッチ位置を検出するための駆動パルスを前記駆動電極に出力するタッチパネル駆動部と、
を備え、
前記タッチパネル駆動部は、前記表示パネルの電源がONされて前記表示パネルの初期化処理が実行されている期間、継続して所定の電圧レベルの信号を前記駆動電極及び前記受信電極に出力する、
タッチパネル制御装置。
【請求項10】
表示パネルに重なるように設けられ、ユーザによるタッチ位置に応じた位置信号を出力する受信電極と前記受信電極に対向配置される駆動電極とを備えるタッチパネルを制御するタッチパネル制御方法であって、
前記表示パネルに設けられるゲートラインの駆動タイミングを制御する第1ゲートクロック信号に対応する遅延量を設定する遅延設定ステップと、
前記遅延設定ステップにおいて設定された前記遅延量に基づいて、前記タッチ位置を検出するための駆動パルスを前記駆動電極に出力するタッチパネル駆動ステップと、
前記第1ゲートクロック信号に前記遅延設定ステップにおいて設定された前記遅延量を付与して第2ゲートクロック信号を生成する信号生成ステップと、
を一又は複数のプロセッサにより実行し、
前記タッチパネル駆動ステップにおいて、前記信号生成ステップにおいて生成された前記第2ゲートクロック信号に基づいて前記駆動パルスを前記駆動電極に出力し、
前記タッチパネル駆動ステップにおいて、さらに、前記第2ゲートクロック信号の立ち上がりタイミングから前記駆動パルスの立ち上がりタイミングまでの期間、継続して所定の電圧レベルの信号を前記駆動電極及び前記受信電極に出力する、
タッチパネル制御方法。
【請求項11】
表示パネルに画像を表示する表示装置と、
前記表示装置に重なるように設けられてユーザによるタッチ位置に応じた位置信号を出力するタッチパネルと、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のタッチパネル制御装置と、
を備える入力表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル制御装置、タッチパネル制御方法、及び入力表示装置に関し、特に、表示装置の画面に重なるように設けられてユーザによるタッチ位置に応じた位置信号を出力するタッチパネル、を制御するタッチパネル制御装置、タッチパネル制御方法、及び当該タッチパネル制御装置を備える入力表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、表示装置と組み合わせて使用されるポインティングデバイスの1つである。このタッチパネルを備えた表示装置(入力表示装置)は、タッチパネルディスプレイと呼ばれており、モバイル機器をはじめとする各種の電子装置や家電製品などの様々な装置に用いられている。
【0003】
このタッチパネルディスプレイとして、静電容量方式のタッチパネルとアクティブマトリックス駆動方式の液晶表示装置とが組み合わされたものが知られている。この組合せにおいては、タッチパネルは、液晶表示装置の画面に重なるように設けられ、ユーザによりタッチされると、当該ユーザによるタッチ位置に応じた位置信号を出力する。ここで、液晶表示装置のゲート(各画素に配置されたスイッチング素子(アクティブ素子)としての薄膜トランジスタ(TFT)のゲート)が駆動することに起因して、タッチパネルの位置信号にノイズが現れることがある。この言わばゲート駆動ノイズは、タッチパネルのセンサ面が大きいほど、つまり液晶表示装置の画面が大きいほど、現れ易い。そして、このゲート駆動ノイズが現れると、たとえばユーザによりタッチパネルがタッチされていないときであっても、当該ユーザによりタッチパネルがタッチされたものと誤認識されることがあり、つまりタッチパネルが誤動作することがある。
【0004】
このようなゲート駆動ノイズによる影響を回避するために、従来、たとえば特許文献1に開示された技術がある。この特許文献1に開示された技術によれば、液晶表示画面を駆動する液晶ドライバからの液晶駆動信号の出力変化タイミングと、タッチパネルからの出力データを取り込むための所定のタイミングとの一致を検知するタイミング検知回路が設けられる。そして、このタイミング検知回路によって一致が検知されない場合は、所定のタイミングで、タッチパネルからの出力データの取り込みが行われる。一方、タイミング検知回路によって一致が検知された場合には、所定のタイミングとは異なるタイミングで、タッチパネルからの出力データの取り込みが行われる。これにより、液晶ドライバからの液晶駆動信号の出力変化タイミングで、つまり液晶表示装置のゲートラインが駆動するタイミングで、タッチパネルからの出力データの取り込みが行われることが防止される。この結果、ゲート駆動ノイズによる影響が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-128146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、実際には、ゲート駆動ノイズは、液晶表示装置のゲートラインが駆動するタイミングから所定時間だけ遅延したタイミングでタッチパネルの位置信号に現れる。このため、従来の技術では、ゲート駆動ノイズによる影響を確実に回避することが難しい。また、ゲートラインが駆動するタイミングからゲート駆動ノイズがタッチパネルの位置信号に現れるタイミングまでの期間、タッチパネルからの出力データの取り込みを行わない場合、タッチパネルにおけるスキャン回数が少なくなり位置検出精度が低下する。
【0007】
また、当該ゲート駆動ノイズは、タッチパネルと液晶表示装置の画面との相互間距離が小さいほど、とりわけタッチパネルが液晶表示装置の画面に公知のダイレクトボンディングにより設けられる構造の場合に顕著に現れる。ゆえに、このダイレクトボンディングが採用される構造においては、より確実に、当該ゲート駆動ノイズによる影響を回避することが求められる。
【0008】
本発明は、ゲート駆動ノイズによる影響を確実に回避するとともに位置検出精度の低下を防ぐことができるタッチパネル制御装置、タッチパネル制御方法、及び入力表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の態様に係るタッチパネル制御装置は、表示パネルに重なるように設けられ、ユーザによるタッチ位置に応じた位置信号を出力する受信電極と前記受信電極に対向配置される駆動電極とを備えるタッチパネルを制御するタッチパネル制御装置であって、前記表示パネルに設けられるゲートラインの駆動タイミングを制御する第1ゲートクロック信号に対応する遅延量を設定する遅延設定部と、前記遅延設定部により設定された前記遅延量に基づいて、前記タッチ位置を検出するための駆動パルスを前記駆動電極に出力するタッチパネル駆動部と、を備え、前記タッチパネル駆動部は、前記駆動パルスを前記駆動電極に出力する前に、所定の電圧レベルの信号を前記駆動電極及び前記受信電極に出力する。
【0010】
本発明の他の態様に係るタッチパネル制御方法は、表示パネルに重なるように設けられ、ユーザによるタッチ位置に応じた位置信号を出力する受信電極と前記受信電極に対向配置される駆動電極とを備えるタッチパネルを制御するタッチパネル制御方法であって、前記表示パネルに設けられるゲートラインの駆動タイミングを制御する第1ゲートクロック信号に対応する遅延量を設定する遅延設定ステップと、前記遅延設定ステップにおいて設定された前記遅延量に基づいて、前記タッチ位置を検出するための駆動パルスを前記駆動電極に出力するタッチパネル駆動ステップと、を一又は複数のプロセッサにより実行し、前記タッチパネル駆動ステップでは、前記駆動パルスを前記駆動電極に出力する前に、所定の電圧レベルの信号を前記駆動電極及び前記受信電極に出力する。
【0011】
本発明の他の態様に係る入力表示装置は、表示パネルに画像を表示する表示装置と、前記表示装置に重なるように設けられてユーザによるタッチ位置に応じた位置信号を出力するタッチパネルと、前記タッチパネル制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ゲート駆動ノイズによる影響を確実に回避するとともに位置検出精度の低下を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、参考形態に係るタッチパネルディスプレイの電気的な部分の概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、参考形態に係るタッチパネルディスプレイにおけるゲートクロック信号、タッチパネルの駆動信号、及びゲート駆動ノイズの一例を模式的に示す波形図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るタッチパネルディスプレイの電気的な部分の概略構成を示すブロック図である。
図4図4は、本発明の実施形態における主要な信号の一例を模式的に示す波形図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係るタッチパネルディスプレイの全体の動作の流れを示すフロー図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係るタッチパネルディスプレイの他の動作の流れを示すフロー図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係るタッチパネルディスプレイの他の動作の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格を有さない。
【0015】
本発明は、例えばタッチパネルディスプレイに適用される。尚、本発明が適用されるタッチパネルディスプレイについての説明をする前に、参考形態に係るタッチパネルディスプレイについて説明する。
【0016】
図1は、参考形態に係るタッチパネルディスプレイ10の電気的な部分の概略構成を示すブロック図である。図1に示されるように、タッチパネルディスプレイ10は、液晶モジュール30と、メインインターフェース基板50と、タッチパネルコントロール基板70と、を備えている。
【0017】
液晶モジュール30は、アクティブマトリックス駆動方式の液晶パネル32と、ゲート駆動部32a(ゲートドライバ)と、ソース駆動部32b(ソースドライバ)と、液晶タイミングコントローラ(LCD-TCON:Liquid Crystal Display-Timing Controller)34と、タッチパネル36と、を有する。
【0018】
詳しい図示は省略するが、液晶パネル32は、偏光フィルタ、ガラス基板、液晶層、バックライトなどで構成され、後述する映像などの情報を表示するための画面(画像表示部分)を形成する。この画面の水平方向×垂直方向の画素数は、例えば1920×1080又は3840×2160である。また、ガラス基板には、ゲートライン(スキャンライン)及びソースライン(データライン)を含む配線、薄膜トランジスタ(TFT)、画素電極及びコモン電極を含む電極などが形成されている。
【0019】
ゲート駆動部32aには、後述する如く液晶タイミングコントローラ34から、ゲートラインの駆動タイミングを制御するゲートクロック信号GCK、ゲートスタートパルス信号GSPなどのゲートライン制御信号が入力される。ゲート駆動部32aは、ゲートライン制御信号に従って、液晶パネル32の薄膜トランジスタがゲートライン順にONされるように、当該薄膜トランジスタを制御する。
【0020】
ソース駆動部32bには、後述する如く液晶タイミングコントローラ34からソースライン制御信号が入力されるとともに、当該液晶タイミングコントローラ34から画像データ信号DTが入力される。ソース駆動部32bは、ソースライン制御信号に従って、各ソースラインに画像データ信号DTを入力する。これにより、画像データ信号DTに応じた電圧が、ONされている薄膜トランジスタに対応する画素(液晶)に印加され、つまりデータの書込みが行われる。
【0021】
液晶タイミングコントローラ34は、映像信号D2に基づいて、当該映像信号D2に従う映像が液晶パネル32の画面に表示されるように、ゲート駆動部32a及びソース駆動部32bを制御する。具体的には、液晶タイミングコントローラ34は、ゲートクロック信号GCK及びゲートスタートパルス信号GSPなどのゲートライン制御信号をゲート駆動部32aに入力する。また、液晶タイミングコントローラ34は、ソースライン制御信号及び画像データ信号DTをソース駆動部32bに入力する。
【0022】
タッチパネル36は、投影型静電容量方式のうちの相互容量方式のものである。詳しい図示は省略するが、タッチパネル36は、静電容量センサシートを有しており、液晶パネル32の画面に重なるようにダイレクトボンディングにより設けられている。そして、タッチパネル36は、駆動電極Px(X電極)及び受信電極Py(Y電極)を有している。駆動電極Pxは、X方向(水平方向)に延伸するとともにY方向(垂直方向)に等間隔に配置され、受信電極Pyは、Y方向に延伸するとともにX方向に等間隔に配置される。駆動電極Px及び受信電極Pyは、接着層(不図示)を介して互いに交差するように配置される。駆動電極Pxには、タッチパネル36を駆動するための信号であって、ユーザによるタッチ位置を検出するための駆動パルスである駆動信号Txが入力される。駆動信号Txが入力された状態で、ユーザによりタッチパネル36がタッチされると、当該タッチパネル36は、ユーザによるタッチパネル36へのタッチ位置に応じた位置信号Rxを受信電極Pyから出力する。位置信号Rxは、電流信号である。
【0023】
メインインターフェース基板50は、スケーラ(映像信号変換装置)52と、CPLD(Complex Programmable Logic Device)54と、MCU(Micro Control Unit)56と、を有している。スケーラ52は、ディスプレイポート、HDMI(登録商標)などの様々な規格に従う映像信号D1の入力を受付可能である。そして、スケーラ52は、入力された映像信号D1を液晶モジュール30の信号入力条件に適合する映像信号D2に変換し、当該映像信号D2を液晶モジュール30の液晶タイミングコントローラ34に入力する。映像信号D2には、水平同期信号HS、垂直同期信号VS、ドットクロック信号DCK、画像データ信号DTなどが含まれている。また、スケーラ52は、例えばPWM(Pulse Width Modulation)信号を出力する機能を有している。PWM信号は、液晶パネル32の図示しないバックライトの明るさを調整するための調光信号として用いられる。尚、PWM信号として、映像信号D2に含まれる水平同期信号HSと同期する信号を出力させる。言い換えれば、スケーラ52は、水平同期信号HSと同期するPWM信号を生成する機能を有している。さらに詳しく言えば、スケーラ52は、PWM信号に限らず、水平同期信号HSと同期する他の態様のパルス信号を生成する機能を有している。このようなスケーラ52は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)によって実現される。
【0024】
CPLD54は、スケーラ52と接続されている。CPLD54は、例えばスケーラ52の入出力ポートを含むメインインターフェース基板50の入出力ポートの数を増やす機能を担う。また、CPLD54は、メインインターフェース基板50内のバスラインを複数に分割して切り替えるバスセレクタとしての機能も担う。さらに、CPLD54は、周辺の回路で基準信号として使用される様々なパルス信号を生成する機能も担う。このようにCPLD54は、汎用的な機能を担う。
【0025】
MCU56は、CPLD54を含むメインインターフェース基板50に搭載されている適宜の要素の制御を担う。すなわち、CPLD54が担う前述の各機能は、MCU56による制御によって実現される。尚、MCU56は、メモリ58を内蔵している。メモリ58には、MCU56の動作を制御するための後述する制御プログラムが記憶されている。
【0026】
タッチパネルコントロール基板70は、DBE(Digital Back End)72と、AFE(Analog Front End)74と、MCU76と、を有している。
【0027】
DBE72は、AFE74と協働して、駆動信号Tx(駆動パルス)を生成するとともに、当該駆動信号Txをタッチパネル36に入力する。また、DBE72は、AFE74と協働して、タッチパネル36から出力される位置信号Rxの入力を受け付けるとともに、当該位置信号Rx及び駆動信号Txに基づいて、ユーザによるタッチパネル36へのタッチ位置を表す位置データ信号を生成する。位置データ信号は、タッチパネルディスプレイ10の図示しないメインMCUに入力され、当該メインMCUによる適宜の処理に供される。
【0028】
タッチパネルコントロール基板70のMCU76は、DBE72を含むタッチパネルコントロール基板70に搭載されている適宜の要素の制御を担う。例えば、パルス状の駆動信号Tx(駆動パルス)の周期、当該駆動信号Txをスキャンさせる回数、当該駆動信号Tx及び位置信号Rxの入替周期(つまり駆動電極Px及び受信電極Pyの切替周期)などは、DBE72の動作によって決まるが、DBE72の動作は、MCU76によって制御される。尚、MCU76は、メモリ78を内蔵している。メモリ78には、MCU76の動作を制御するためのタッチパネル制御プログラムが記憶されている。
【0029】
タッチパネルディスプレイ10において、映像信号D1がスケーラ52に入力されると、スケーラ52は、入力された映像信号D1を映像信号D2に変換するとともに、当該映像信号D2を液晶タイミングコントローラ34に入力する。液晶タイミングコントローラ34は、映像信号D2に基づいて、液晶パネル32がアクティブマトリックス駆動方式により駆動されるように、ゲート駆動部32a及びソース駆動部32bを制御する。そのために前述の如く、ゲートクロック信号GCK、ゲートスタートパルス信号GSPなどのゲートライン制御信号が、液晶タイミングコントローラ34からゲート駆動部32aに入力される。併せて、ソースライン制御信号及び画像データ信号DTが、液晶タイミングコントローラ34からソース駆動部32bに入力される。これを受けて、ゲート駆動部32aは、液晶パネル32の薄膜トランジスタを適宜に制御し、ソース駆動部32bは、各画素へのデータの書込みを適宜に行う。これにより、液晶パネル32の画面に、映像信号D2に従う映像が表示される。
【0030】
これと並行して、タッチパネルコントロール基板70からタッチパネル36に駆動信号Txが入力される。この状態で、ユーザによりタッチパネル36がタッチされると、タッチパネル36は、当該ユーザによるタッチパネル36へのタッチ位置に応じた位置信号Rxを出力する。位置信号Rxは、タッチパネルコントロール基板70に入力され、駆動信号Txと一緒に、前述の位置データ信号の生成のための処理に供される。このように、メインインターフェース基板50及びタッチパネルコントロール基板70は、液晶パネル32に重なるように設けられ、ユーザによるタッチ位置に応じた位置信号を出力する受信電極Pyと受信電極Pyに対向配置される駆動電極Pxとを備えるタッチパネル36を制御する。
【0031】
ところで、このタッチパネルディスプレイ10においては、液晶パネル32のゲートライン(薄膜トランジスタのゲート)が駆動することに起因するゲート駆動ノイズNが、位置信号Rxの入力先であるAFE74の受信側に現れることがある。ゲート駆動ノイズNは、タッチパネル36のセンサ面が大きいほど、つまり液晶パネル32の画面が大きいほど現れ易い。また、ゲート駆動ノイズNは、タッチパネル36と液晶パネル32の画面との相互間距離が小さいほど、とりわけタッチパネル36が液晶パネル32の画面に前述のダイレクトボンディングにより設けられる構造において顕著に現れる。ゲート駆動ノイズNが現れると、例えばタッチパネル36がユーザによりタッチされていないときであっても、タッチパネル36がユーザによりタッチされたものと誤認識されることがある。すなわち、タッチパネル36(厳密にはタッチパネル36及びタッチパネルコントロール基板70を含むタッチパネルシステム)が誤動作することがある。したがって、このようなゲート駆動ノイズNによる影響を回避することが肝要である。
【0032】
ゲート駆動ノイズNは、液晶パネル32のゲートラインを駆動するためのゲートクロック信号GCKの周期と同期するタイミングで発生し、厳密にはゲートクロック信号GCKに対して一定の遅延時間ΔNが経過したタイミングで発生する。この状態を図2に示す。ここで、図2(A)は、ゲートクロック信号GCKを示し、図2(B)は、タッチパネル36の駆動信号Txを示す。そして、図2(C)は、位置信号Rxの入力先であるAFE74の受信側の波形であって、タッチパネル36がユーザによりタッチされていないときの波形を示す。図2(C)に示されるように、タッチパネル36がユーザによりタッチされていないときであっても、当該タッチパネル36の位置信号Rxの入力先であるAFE74の受信側にゲート駆動ノイズNが発生する。ゲート駆動ノイズNのゲートクロック信号GCKに対する遅延時間ΔNは、液晶パネル32の応答性やタッチパネル36の応答性などに起因し、前述の如く一定である。
【0033】
このようなゲート駆動ノイズNとゲートクロック信号GCKとの関係から、例えばゲートクロック信号GCKに基づいて、ゲート駆動ノイズNが発生するタイミングを推定して、当該ゲート駆動ノイズNによる影響を回避することができるように思われる。例えば、図1に示すように、ゲートクロック信号GCKが、液晶タイミングコントローラ34からDBE72に入力される構成では、DBE72は、AFE74と協働して、前記ゲートクロック信号GCKに基づいて、遅延時間ΔNを考慮した駆動信号Txを生成するとともに、当該駆動信号Txをタッチパネル36に入力する。これにより、ゲート駆動ノイズNによる影響を回避することができる。
【0034】
しかし、DBE72が、液晶タイミングコントローラ34から取得したゲートクロック信号GCKと遅延時間ΔNとに基づいて駆動信号Txを生成する構成の場合、ゲートクロック信号GCKの立ち上がりタイミングから、所定の待機期間Lwにわたって、駆動信号Txのタッチパネル36への入力が停止され、詳しくは当該駆動信号Txの駆動パルスの生成が停止される。前記駆動パルスは、ユーザによるタッチパネル36に対するタッチ位置を検出するための信号である。すなわち、タッチパネル36の動作が、待機期間Lwにわたって無効化される。このため、図2に示すように、1フレーム期間のうち無効期間Twではスキャン処理(位置検出処理)が行われず、1フレーム期間におけるタッチパネル36のスキャン回数が少なくなり(図2では4回)、位置検出精度が低下する問題が生じる。
【0035】
この問題を解決するために、本実施形態に係るタッチパネルディスプレイ10aは、以下の構成を備える。
【0036】
具体的には、図3に示されるように、本実施形態に係るタッチパネルディスプレイ10aでは、液晶タイミングコントローラ34で生成されたゲートクロック信号GCKが、液晶タイミングコントローラ34から、ゲート駆動部32aに入力されるとともに、メインインターフェース基板50のCPLD54に入力される。また、本実施形態に係るタッチパネルディスプレイ10aでは、CPLD54によって遅延回路60が形成される。尚、CPLD54は、前述の汎用的な機能を担う他に、この遅延回路60を形成し得る程度に、十分な論理回路数を有している。また、タッチパネルディスプレイ10aでは、AFE74が、タッチパネル36を駆動する前(位置検出処理前)に、駆動電極Px及び受信電極Pyに所定の電圧レベル(例えばGNDレベル)の信号を出力する。尚、本実施形態に係るタッチパネルディスプレイ10aのこれ以外の構成は、図1に示す参考形態に係るタッチパネルディスプレイ10と同様である。したがって、これら同様の部分には、図1におけるのと同一の符号を付して、それらの説明についても省略する。
【0037】
図3に示すように、液晶タイミングコントローラ34はゲートクロック信号GCK1を出力する。ゲートクロック信号GCK1は、CPLD54の遅延回路60に入力される。遅延回路60に入力されたゲートクロック信号GCK1は、当該遅延回路60によって所定の遅延量Ldを付与される。
【0038】
前記遅延量Ldは、予めMCU56によって設定される。具体的には、MCU56は、ゲートクロック信号GCK1の立ち上がりタイミングからゲート駆動ノイズNが発生するタイミングまでの期間(遅延時間ΔN)を予め計測する。例えば、タッチパネルディスプレイ10aの完成後の検査工程において、ゲートクロック信号GCKをゲート駆動部32aに入力してタッチパネルディスプレイ10aにゲート駆動ノイズNを発生させて前記期間を計測する。MCU56は、計測した前記期間に基づいて、遅延量Ldを設定する。例えば、MCU56は、ゲートクロック信号GCK1の立ち上がりタイミングからゲート駆動ノイズNが発生するタイミングの直前までの期間を、遅延量Ldとして設定する。このように、遅延量Ldは、タッチパネルディスプレイ10a毎に個別に設定される。
【0039】
ここで、MCU56のメモリ58は、前述の制御プログラムが記憶される。この制御プログラムは、遅延量設定プログラムを含む。前記遅延量設定プログラムは、前述の如く遅延回路60に適切な遅延量Ldを設定するためのプログラムである。
【0040】
CPLD54は、ゲートクロック信号GCK1にMCU56により設定された遅延量Ldを付与してゲートクロック信号GCK2を生成する。CPLD54により生成されたゲートクロック信号GCK2は、タッチパネルコントロール基板70のDBE72に入力される。
【0041】
DBE72は、CPLD54により生成されたゲートクロック信号GCK2に基づいてタッチパネル36を駆動する。すなわち、DBE72は、AFE74と協働して、前記遅延量Ldに基づいて、前記タッチ位置を検出するための駆動信号Tx(駆動パルス)を駆動電極Pxに出力する。ここで、DBE72は、AFE74と協働して、駆動信号Tx(駆動パルス)を生成するが、その際、ゲートクロック信号GCK2を基準とする所定の待機期間Lwにわたって、当該駆動信号Tx(駆動パルス)のタッチパネル36への入力を停止する。この結果、タッチパネル36は、待機期間Lwにわたって待機状態となる。言い換えれば、タッチパネル36における位置検出動作が、待機期間Lwにわたって無効化される。
【0042】
ここで、待機期間Lw内にゲート駆動ノイズNが発生するタイミングが収まれば、詳しくは当該ゲート駆動ノイズNが発生する期間が収まれば、当該ゲート駆動ノイズNによる影響が回避される。この状態を図示すると、例えば図4に示されるようになる。
【0043】
すなわち、図4(A)に示されるゲートクロック信号GCK1と、図4(B)に示されるゲート駆動ノイズNとの間に、前記遅延時間ΔNがあるとする。なお、図4(B)は、仮に位置信号Rxにゲート駆動ノイズNが発生したと仮定した場合の様子を示している。そして、ゲートクロック信号GCK1に遅延回路60による遅延量Ldが付与されることによって、図4(C)に示されるゲートクロック信号GCK2が生成される。さらに、ゲートクロック信号GCK2を基準として、例えばゲートクロック信号GCK2の立ち上がりタイミングを基準(基点)として、所定の待機期間Lwにわたって、図4(D)に示される駆動信号Tx(駆動パルス)のタッチパネル36への入力が停止され、詳しくは当該駆動信号Txの駆動パルスの生成が停止される。
【0044】
一方で、AFE74は、駆動信号Tx(駆動パルス)を駆動電極Pxに出力する前に、ローレベル(GNDレベル)を駆動電極Px及び受信電極Pyに出力する。具体的には、AFE74は、ゲートクロック信号GCK2の立ち上がりタイミングを基準(基点)として、所定の待機期間Lw(例えば3us)にわたって、駆動電極Px及び受信電極Pyに、ローレベル(GNDレベル)の信号を出力する。ローレベル(GNDレベル)の信号は、本発明の所定の電圧レベルの信号の一例である。すなわち、AFE74は、ゲートクロック信号GCK2の立ち上がりタイミングから駆動信号Txの駆動パルスの立ち上がりタイミングまでの期間、継続してローレベルの信号を駆動電極Px及び受信電極Pyに出力する。このように、AFE74は、待機期間Lwの間、駆動電極Px(X電極)に入力される駆動信号Txをローレベルに固定し、受信電極Py(Y電極)に入力される入力信号Ty(図3参照)をローレベルに固定する。これにより、待機期間Lwの間、位置信号Rxがローレベルに固定されるため、図4(B)に示す位置信号Rxにおけるゲート駆動ノイズNの発生を抑えることができる。すなわち、待機期間Lwにおいて、位置信号Rxの入力先であるAFE74の受信側の波形は、ローレベルに固定される。このように、待機期間Lwの間、駆動電極Px及び受信電極Pyは、タッチパネル36におけるシールド電極として機能する。
【0045】
ここで、待機期間Lwの開始タイミングは、遅延回路60による遅延量Ldによって決まる。したがって、ゲート駆動ノイズNの発生期間が待機期間Lw内に収まるように、遅延回路60による遅延量Ldが予め設定される。そして、AFE74は、ゲートクロック信号GCK2の立ち上がりタイミングからゲート駆動ノイズNの発生期間が終了するタイミングまでの期間において、駆動信号Txの駆動パルスを駆動電極Pxに出力せず、ローレベルの信号を駆動電極Px及び受信電極Pyに出力する。これにより、タッチパネルディスプレイ10aは、ゲートクロック信号GCK2の立ち上がりタイミングからゲート駆動ノイズNの発生期間が終了するタイミングまでの期間において、タッチパネル36を駆動せず、かつ駆動電極Px及び受信電極Pyをローレベル(GND)に固定することが可能となる。また、液晶パネル32の駆動時の輻射ノイズを低減することができる。また、液晶パネル32の駆動時のタッチパネル36へのゲート駆動ノイズNを低減することができる。さらに、タッチパネル36に残留する電荷を放電することができるため、タッチパネル36の駆動前に不要な電荷を放電することができる。これにより、タッチパネル36における位置検出精度を向上させることができる。
【0046】
タッチパネルディスプレイ10aは、液晶タイミングコントローラ34で生成されたゲートクロック信号GCK1をゲート駆動ノイズNの発生タイミングに応じて遅延させたゲートクロック信号GCK2に基づいて、タッチパネル36を駆動する。具体的には、CPLD54が、ゲート駆動ノイズNの発生タイミングに重なるように、ゲートクロック信号GCK2を生成し、DBE72が、当該ゲートクロック信号GCK2に基づいて駆動信号Txを生成してタッチパネル36に入力する。これにより、参考形態(図2参照)と比較して、待機期間Lwを短縮することができる(図4参照)。待機期間Lwを短縮することができるため、無効期間Twも同様に短縮することができる。よって、1フレーム期間におけるタッチパネル36のスキャン回数を増加させることができるため(図4では5回)、位置検出精度を向上させることができる。
【0047】
尚、タッチパネルディスプレイ10aは、本発明に係る入力表示装置の一例である。また、メインインターフェース基板50及びタッチパネルコントロール基板70は、本発明に係るタッチパネル制御装置の一例であり、タッチパネルコントロール基板70は、本発明に係るタッチパネル駆動部の一例である。また、液晶パネル32は、本発明に係る表示パネルの一例である。また、MCU56は、本発明に係る遅延設定部の一例であり、CPLD54は、本発明に係る信号生成部の一例である。また、ゲートクロック信号GCK1は、本発明に係る第1ゲートクロック信号の一例であり、ゲートクロック信号GCK2は、本発明に係る第2ゲートクロック信号の一例である。
【0048】
尚、前述の例では、ゲートクロック信号がハイレベルのときにアクティブ(ハイアクティブ)となる信号波形を示したが、ゲートクロック信号がローレベルのときにアクティブ(ローアクティブ)となる信号波形であってもよい。ゲートクロック信号がローアクティブの信号である場合、立ち下がりタイミングで動作する。
【0049】
本実施形態に係るタッチパネルディスプレイ10aの全体の処理(タッチパネル制御処理)の流れを図5に示す。
【0050】
なお、本発明は、前記タッチパネル制御処理に含まれる一又は複数のステップを実行するタッチパネル制御方法の発明として捉えることができる。また、ここで説明する前記タッチパネル制御処理に含まれる一又は複数のステップは適宜省略されてもよい。なお、前記タッチパネル制御処理における各ステップは同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。さらに、一又は複数のプロセッサが、前記タッチパネル制御処理における各ステップを分散して実行してもよい。また、前記タッチパネル制御方法は、一又は複数のプロセッサにより実行されてもよい。
【0051】
先ず、タッチパネルディスプレイ10aの電源がONされると、ステップS11において、AFE74が、駆動電極Px及び受信電極Pyに、ローレベル(GND)の信号を出力する。これにより、駆動電極Px及び受信電極Pyの電位がGNDレベルに固定される。よって、駆動電極Px及び受信電極Pyに帯電している電荷(初期電荷)、すなわちタッチパネル36に帯電している初期電荷を放電させることができる。
【0052】
次にステップS12において、液晶タイミングコントローラ34が、液晶パネル32の初期化処理を完了したか否かを判定する。このとき、液晶パネル32の起動時には不規則なノイズが発生する場合があるため、液晶パネル32の初期化処理が完了するまで、AFE74は、駆動電極Px及び受信電極Pyに、ローレベル(GND)の信号を出力し続ける。換言すると、AFE74は、液晶パネル32の電源がONされて液晶パネル32の初期化処理が実行されている間、継続してローレベルの信号を駆動電極Px及び受信電極Pyに出力する。すなわち、AFE74は、液晶パネル32及び液晶タイミングコントローラ34の動作が安定するまで、駆動電極Px及び受信電極Pyをローレベルに固定する。液晶パネル32の初期化処理を完了した場合(S12:YES)、処理はステップS13に移行する。液晶パネル32の初期化処理を完了しない場合(S12:NO)、処理はステップS11に戻り、上述の処理を繰り返す。
【0053】
ステップS13において、タッチパネルコントロール基板70が、タッチパネル36の初期化処理を実行する。例えば、タッチパネルコントロール基板70は、タッチパネル36のキャリブレーション(タッチ位置の補正など)を実行する。タッチパネル36の初期化処理が完了すると、通常動作状態に移行する。通常動作状態に移行すると、スケーラ52に映像信号D1が入力される。
【0054】
スケーラ52に映像信号D1が入力されると、ステップS14において、CPLD54が、液晶タイミングコントローラ34から出力されるゲートクロック信号GCK1を取得する。
【0055】
ゲートクロック信号GCKが液晶タイミングコントローラ34からCPLD54に入力されると(S14)、続いてステップS15において、CPLD54(遅延回路60)が、ゲートクロック信号GCK1に対して、MCU56によって予め設定された遅延量Ldを付与して、ゲートクロック信号GCK2を生成する。尚、MCU56は、前述の遅延量設定プログラムに従って、遅延回路60に適切な遅延量Ldを設定する処理を実行する。
【0056】
次にステップS16において、タッチパネルコントロール基板70のDBE72が、CPLD54から出力されるゲートクロック信号GCK2を取得する。
【0057】
次にステップS17において、AFE74が、ゲートクロック信号GCK2の立ち上がりタイミングを基準(基点)として、所定の待機期間Lwにわたって、駆動電極Px及び受信電極Pyに、ローレベル(GND)の信号を出力する。すなわち、AFE74は、待機期間Lwの間、駆動電極Pxにローレベルの駆動信号Txを出力し、受信電極Pyにローレベルの入力信号Ty(図3参照)を出力する。これにより、待機期間Lwの間、位置信号Rxがローレベルに固定される。
【0058】
待機期間Lwが経過すると、ステップS18において、タッチパネルコントロール基板70が、タッチパネル36の駆動を開始し、すなわち当該タッチパネル36への駆動信号Tx(駆動パルス)の入力を開始するとともに、当該タッチパネル36からの位置信号Rxの入力の受付を開始する。これにより、タッチパネル36を含むタッチパネルディスプレイ10a全体が起動する。尚、前述したように、タッチパネル36は、ゲートクロック信号GCK2を基準とする待機期間Lwの間、タッチ位置検出動作が無効化されるとともに、駆動電極Px及び受信電極Pyがローレベルに固定される。これにより、ゲート駆動ノイズNに起因する誤動作が回避される。
【0059】
その後、処理はステップS14に戻り、前述の処理を繰り返す。尚、この一連の処理は、タッチパネルディスプレイ10aの電源がOFFされることによって終了する。
【0060】
このように本実施形態によれば、ゲートクロック信号GCK1の周期とゲート駆動ノイズNの発生タイミングとに基づいて適切な遅延量Ldが遅延回路60に設定され、当該ゲートクロック信号GCK1を遅延量Ldだけ遅延させたゲートクロック信号GCK2に基づいて、駆動信号Tx(駆動パルス)がタッチパネル36入力される。また、ゲート駆動ノイズNが発生する、ゲートクロック信号GCK2がアクティブの期間、さらにはゲートクロック信号GCK2の立ち上がりタイミングから駆動信号Txの駆動パルスの立ち上がりタイミングまでの待機期間Lwの間、駆動電極Px及び受信電極Pyがローレベルに固定される。これにより、タッチパネル36におけるゲート駆動ノイズNの影響が回避される。なお、他の実施形態として、待機期間Lwを含む無効期間Tw(図4参照)の間、駆動電極Px及び受信電極Pyがローレベルに固定されてもよい。
【0061】
また、本実施形態によれば、待機期間Lw及び無効期間Tw(図4参照)を短縮することができるため、1フレーム期間におけるタッチパネル36のスキャン回数を増加させることができる。よって、タッチパネル36の位置検出精度を向上させることができる。
【0062】
本発明のタッチパネルディスプレイは、上述の構成に限定されない。図5のステップS15の前記遅延処理の他の実施形態について以下に説明する。図5のステップS15を、例えば図6に示す処理に置き換えることができる。
【0063】
図5のステップS14において、CPLD54が、液晶タイミングコントローラ34から出力されるゲートクロック信号GCK1を取得すると、図6のステップS151において、スケーラ52が、PWM信号によりバックライトをOFF(黒表示)させる。
【0064】
次にステップS152において、スケーラ52が、ノイズパターン(例えば2ドット千鳥配置のパターン)の映像信号D2を液晶タイミングコントローラ34に入力する。これにより、液晶パネル32の画面にノイズパターン(パターン画像)が表示される。
【0065】
次にステップS153において、MCU56が、電圧を監視してゲート駆動ノイズNが発生する時間(ノイズ発生時間T11)をN回測定する。具体的には、MCU56は、ゲートクロック信号GCK1の出力タイミングからゲート駆動ノイズNの発生タイミングまでの時間(ノイズ発生時間T11)をN回測定する。測定回数Nは、20回以下に設定される。MCU56は、1回の測定を7.5usで行う。MCU56は、測定回数を増やして、測定値の確度を向上させる。
【0066】
次にステップS154において、MCU56が、N回の測定により取得されたノイズ発生時間T11の平均時間T12を算出する。
【0067】
次にステップS155において、CPLD54が、前記平均時間T12に基づいて、ゲートクロック信号GCK2を生成する。例えば、CPLD54は、ゲート駆動ノイズNが発生する時間(平均時間T12)の1us前にパルスが立ち上がるように遅延時間(遅延量Ld)を設定してゲートクロック信号GCK2を生成する。その後、処理は図5のステップS16に戻る。
【0068】
前述の処理は、タッチパネルディスプレイ10aの電源がONされる度に実行される。これにより、前記遅延量Ldを動的に設定することが可能となる。
【0069】
またタッチパネルディスプレイ10aは、以下の構成により、前記遅延量Ldを動的に設定してもよい。ここでも、図5のステップS15を、例えば図7に示す処理に置き換えることができる。
【0070】
図5のステップS14において、CPLD54が、液晶タイミングコントローラ34から出力されるゲートクロック信号GCK1を取得すると、図7のステップS161において、スケーラ52が、PWM信号によりバックライトをOFF(黒表示)させる。
【0071】
次にステップS162において、スケーラ52が、ノイズパターン(例えば2ドット千鳥配置のパターン)の映像信号D2を液晶タイミングコントローラ34に入力する。これにより、液晶パネル32の画面にノイズパターンが表示される。
【0072】
次にステップS163において、MCU56が、遅延時間を最小値に設定する。
【0073】
次にステップS164において、MCU56が、ノイズフロアNを算出する。例えば、検出値をd(x,y)とすると、ノイズフロアNは以下の式により算出される。尚、以下の式において、Σは、X軸(0~X)、Y軸(0~Y)の総和を表す。
N(i)=(ΣΣ|d(x,y)|)/(X×Y)
【0074】
次にステップS165において、MCU56が、遅延時間を次の値に変更する。遅延時間が最大値になるまで、ステップS164~S166を繰り返す。MCU56は、遅延時間を最大値まで変更して算出されたそれぞれのノイズフロアNを取得し、N(i)配列にそれぞれのノイズフロアNを格納する。
【0075】
遅延時間が最大値になると(S166:YES)、ステップS167において、MCU56が、ノイズフロアNが最小値となる遅延時間T21を取得する。
【0076】
次にステップS168において、CPLD54が、前記遅延時間T21に基づいて、ゲートクロック信号GCK2を生成する。例えば、CPLD54が、ゲートクロック信号GCK1に対して、遅延時間T21(遅延量Ld)を付与して、ゲートクロック信号GCK2を生成する。
【0077】
前述の処理は、タッチパネルディスプレイ10aの電源がONされる度に実行される。これにより、前記遅延量Ldを動的に設定することが可能となる。
【0078】
本発明のタッチパネルディスプレイの他の実施形態として、例えば、図2に示す波形図において、AFE74は、ゲートクロック信号GCKの立ち上がりタイミングから、所定の待機期間Lwにわたって、駆動電極Px及び受信電極Pyに、ローレベル(GND)の信号を出力してもよい。すなわち、AFE74は、待機期間Lwの間、駆動電極Px(X電極)に入力される駆動信号Txをローレベルに固定し、受信電極Py(Y電極)に入力される入力信号Ty(図3参照)をローレベルに固定する。この構成によれば、1フレーム期間におけるタッチパネル36のスキャン回数は従来の構成と同一であるが、長期間の間(待機期間Lw)、駆動電極Px及び受信電極Pyをローレベルに固定することができるため、タッチパネル36に対するノイズの影響を確実に低減することができる。
【0079】
なお、上述の各実施形態において、AFE74は、1ラインごと(1ゲートラインを駆動するごと)又は複数ラインごとに駆動電極Px及び受信電極Pyにローレベルの信号を出力してもよいし、1フレームごと又は複数フレームごとに駆動電極Px及び受信電極Pyにローレベルの信号を出力してもよい。
【0080】
本発明は、前述の電子黒板に好適である。すなわち、電子黒板においては、ユーザによるタッチパネル36へのタッチ位置の軌跡が液晶パネル32の画面に表示される。このような電子黒板において、たとえばゲート駆動ノイズNによる影響が回避されないとすると、当該ゲート駆動ノイズNによる影響によって、ユーザによるタッチ操作とは全く無関係な点や線などの不本意な模様が液晶パネル32の画面に表示される。このような不都合を回避するのに、本発明は極めて好適である。
【0081】
また、本発明は、液晶モジュール30ではなく、たとえばアクティブマトリックス駆動方式の有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイが採用される構成にも、適用することができる。すなわち、本発明は、アクティブマトリックス駆動方式の表示装置が採用される構成に、適用することができる。そして、本発明は、アクティブマトリックス駆動方式以外の表示装置、たとえば単純マトリックス駆動方式の表示装置や、極端にはCRT(Cathode Ray Tube)方式の表示装置にも、適用することができる。
【0082】
本発明の範囲は、ここで説明した範囲に制限されず、特許請求の範囲によって示される。この場合、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲の全てが含まれる。
【符号の説明】
【0083】
10a :タッチパネルディスプレイ
30 :液晶モジュール
32 :液晶パネル
32a :ゲート駆動部
32b :ソース駆動部
34 :液晶タイミングコントローラ
36 :タッチパネル
50 :メインインターフェース基板
52 :スケーラ
54 :CPLD
56 :MCU
58 :メモリ
60 :遅延回路
61 :切替回路
70 :タッチパネルコントロール基板
72 :DBE
74 :AFE
76 :MCU
78 :メモリ
Px :駆動電極
Py :受信電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7