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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
G01N35/04 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021548975
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2020035981
(87)【国際公開番号】W WO2021060359
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2019175733
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 研吾
(72)【発明者】
【氏名】奥田 洋平
【審査官】奥野 尭也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-085185(JP,A)
【文献】特開2014-123659(JP,A)
【文献】特開2000-294323(JP,A)
【文献】特開2001-194275(JP,A)
【文献】特開2017-106734(JP,A)
【文献】特開昭62-215383(JP,A)
【文献】国際公開第2015/016338(WO,A1)
【文献】特表2019-512429(JP,A)
【文献】特開2004-217427(JP,A)
【文献】特開2005-292725(JP,A)
【文献】特開2016-212190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/10
G01N 1/00- 1/44
G01N 21/00-21/958
G02B 21/00-21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を入れる検体容器を載置するための台座と、
前記台座に載置された前記検体容器を囲む保持部と、
前記保持部を前記台座上で移動させるための駆動部と、
前記台座に載置された前記検体容器を撮像する撮像装置と、
前記保持部に前記検体容器を載置する検体供給部とを備え、
前記保持部は、
前記検体容器の挿入を受ける開口部を有し、前記台座上の前記検体容器の側面を覆う外壁と、
前記保持部内に載置された前記検体容器が前記開口部から外に出ないようにする脱落防止部品とを含み、
前記検体容器が前記外壁内に挿入された状態で、前記駆動部により前記台座上を移動
前記脱落防止部品は、
前記開口部の一部を塞ぐ位置に配置され、
前記検体供給部が前記検体容器を前記開口部に挿入するときに、前記検体容器により押圧されることで、前記検体容器の前記開口部内への移動を妨げない位置に移動する、分析装置。
【請求項2】
前記台座の領域外に使用済みの前記検体容器を収容するための廃棄容器をさらに備え、
前記保持部は、
前記撮像装置の撮像方向に対して垂直方向に移動し、
前記撮像装置の撮像完了後に、前記検体容器を前記廃棄容器の上に移動させる、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記外壁は、前記台座に載置された前記検体容器の側面を覆う3つの壁面を有する、請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記脱落防止部品は、前記検体容器が前記保持部の内部に挿入された後、元の位置に戻る、請求項1~3のいずれかに記載の分析装置。
【請求項5】
前記脱落防止部品の位置を調節する弾性体をさらに備え、
前記脱落防止部品は、前記検体容器が前記保持部の内部に挿入された後、前記弾性体の反発力によって、元の位置に戻る、請求項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記脱落防止部品は、
前記開口部に挿入されるときの前記検体容器に相対する面に傾斜を有し、
前記傾斜が前記検体容器から押圧されることにより、前記検体容器の前記開口部内への移動を妨げない位置に移動する、請求項1~のいずれかに記載の分析装置。
【請求項7】
前記検体容器は、前記脱落防止部品の傾斜のある面と接する傾斜面を備える、請求項に記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分析装置に関し、より特定的には、分析装置の検体容器の撮像位置を調整する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
尿検査において、検体の成分を分析する検体分析装置が提案されている。検体分析装置には、検体容器内で検体および薬剤を混合し、撮像装置により検体を撮像するものがある。このような検体分析装置では、撮像装置の検体を撮像する際の精度が重要となる。
【0003】
分析装置に関し、たとえば、特開2017-161400号公報(特許文献1)は、「検体の種類が特定し、当該特定された種類に対応した撮像タイミングを特定する。そして、当該検体から試料を調製し、特定された撮像タイミングで、当該試料の画像を撮像する。その後、撮像された画像を用いて検体を分析し、その結果を出力する」分析装置を開示している([要約]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-161400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の分析装置では、検体容器の部位毎の撮像装置のフォーカスのズレが生じる場合があった。したがって、検体容器の部位毎の撮像装置のフォーカスのズレをより高精度に解消する技術が必要とされている。
【0006】
本開示は、上記のような背景に鑑みてなされたものであって、ある局面における目的は、検体容器の部位毎の撮像装置のフォーカスのズレを解消する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある実施の形態に従う分析装置は、検体を入れる検体容器を載置するための台座と、台座に載置された検体容器を囲む保持部と、保持部を台座上で移動させるための駆動部と、台座に載置された検体容器を撮像する撮像装置と、を備える。保持部は、検体容器の挿入を受ける開口部を有し、台座上の検体容器の側面を覆う外壁と、保持部内に載置された検体容器が開口部から外に出ないようにする脱落防止部品とを含み、検体容器が外壁内に挿入された状態で、駆動部により台座上を移動する。
【0008】
ある局面において、保持部は、撮像装置の撮像方向に対して垂直方向に移動する。
ある局面において、外壁は、台座に載置された検体容器の側面を覆う3つの壁面を有する。
【0009】
ある局面において、脱落防止部品は、開口部の一部を塞ぐ位置に配置される。
ある局面において、分析装置は、保持部に検体容器を載置する検体供給部をさらに備える。脱落防止部品は、検体供給部が検体容器を開口部に挿入するときに、検体容器により押圧されることで、検体容器の開口部内への移動を妨げない位置に移動する。
【0010】
ある局面において、脱落防止部品は、検体容器が保持部の内部に挿入された後、元の位置に戻る。
【0011】
ある局面において、分析装置は、脱落防止部品の位置を調節する弾性体をさらに備える。脱落防止部品は、検体容器が保持部の内部に挿入された後、弾性体の反発力によって、元の位置に戻る。
【0012】
ある局面において、脱落防止部品は、開口部に挿入されるときの検体容器に相対する面に傾斜を有し、傾斜が検体容器から押圧されることにより、検体容器の開口部内への移動を妨げない位置に移動する。
【0013】
ある局面において、保持部は、撮像装置の撮像完了後に、検体容器を台座の領域外に移動させる。
【0014】
ある局面において、分析装置は、使用済みの検体容器を収容するための廃棄容器をさらに備える。廃棄容器は、撮像装置の撮像完了後に、保持部が移動する位置の下側に設けられている。
【0015】
ある局面において、検体容器は、脱落防止部品の傾斜のある面と接する傾斜面を備える。
【発明の効果】
【0016】
ある実施の形態に従うと、検体容器の部位毎の撮像装置のフォーカスのズレを解消することが可能である。
【0017】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ある実施の形態に従う分析装置の外観の一例を示す図である。
図2】ある実施の形態に従う分析装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】分析装置20における検体の分析の工程の一例を示す図である。
図4】分析装置20を上面から見た内部機構の一例を示す図である。
図5】分析装置20の内部機構の動作手順(1)の一例を示す図である。
図6】分析装置20の内部機構の動作手順(2)の一例を示す図である。
図7】分析装置20の内部機構の動作手順(3)の一例を示す図である。
図8】分析装置20の内部機構の動作手順(4)の一例を示す図である。
図9】分析装置20の内部機構の動作手順(5)の一例を示す図である。
図10】分析装置20の内部機構の動作手順(6)の一例を示す図である。
図11】分析装置20の内部機構の動作手順(7)の一例を示す図である。
図12】分析装置20の内部機構の動作手順(8)の一例を示す図である。
図13】分析装置20の内部機構の動作手順(9)の一例を示す図である。
図14】分析装置20の内部機構の動作手順(10)の一例を示す図である。
図15】分析装置20の内部機構の動作手順(11)の一例を示す図である。
図16】撮像台406を上面から見た、撮像台406自体を移動させる方法の一例を示す図である。
図17】撮像台406を側面から見た、撮像台406自体を移動させる方法の一例を示す図である。
図18】撮像台406を上面から見た、撮像台406上のプレパラート70を移動させる方法の一例を示す図である。
図19】撮像台406を上面から見た、プレパラート70を外壁407A内に挿入する方法の一例を示す第1の図である。
図20】撮像台406を上面から見た、プレパラート70を外壁407A内に挿入する方法の一例を示す第2の図である。
図21】撮像台406を上面から見た、外壁407A内のプレパラート70を廃棄する方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る技術思想の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0020】
図1は、本実施の形態に従う分析装置の外観の一例を示す図である。分析装置20は、内部に情報処理装置と、外部機器と接続可能な入力インターフェイスおよび出力インターフェイスとを備える。ある局面において、マウスおよびキーボード等の入力装置が、入力インターフェイスに接続され得る。その場合、分析装置20は、入力装置からの指示に従い動作する。他の局面において、液晶ディスプレイ等の出力装置が、出力インターフェイスに接続され得る。その場合、分析装置20は、検体の分析結果を出力装置に出力する。
【0021】
分析装置20は、種々の検体の分析に利用され得る。分析される検体は、一例として尿を含み、他の例として髄液(たとえば、腰椎髄液)を含み、さらに他の例として後頭下液を含み、さらに他の例として脳室液を含む。分析装置20は、本体20Aと、搬送部20Bとを含む。本体20Aは、後述する制御部210、試料調製部222、および撮像装置223等を収容する。
【0022】
搬送部20Bは、検体を収容する容器(スピッツ)を搬送する。より具体的には、分析装置20において、各検体は、容器4に収容される。ラック7は、1本以上の容器4を収容する。搬送部20Bは、溝250を含む。搬送部20Bでは、1本以上の容器4が、ラック7に収容された状態で搬送される。図1を参照して説明された容器4の搬送態様は、単なる一例である。分析装置20において、容器4は、ラック7に収容されることなく単独で搬送されてもよい。
【0023】
容器4の素材は、荷電イオンが生じにくいという観点から、プラスチック素材(ポリスチレン、ポリカーボン、ポリプロピレンなど)であることが好ましい。一般的に容器4の素材として利用されるガラスは、通常マイナスに帯電する。一方、PLL(ポリ-L-リジン)等でコートされた容器は、プラスに帯電する。このため、検体が白血球などのマイナスに帯電している細胞を含む場合、容器4の素材が検体(試料)内の要素(細胞等)の沈降速度に影響を及ぼし得る。ただし、容器4の素材が検体(試料)内の要素の沈降速度に影響を及ぼす場合であっても、キャリブレーションにより、当該影響を考慮した分析が実現され得る。
【0024】
本体20Aには、バーコードリーダー224が設けられている。各容器4には、各検体を識別するためのバーコードが付されている。分析装置20は、容器4のそれぞれのバーコードをバーコードリーダー224で読み取ることにより、検査対象の検体のそれぞれを識別する。
【0025】
図2は、本実施の形態に従う分析装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。分析装置20は、制御部210と、通信部221と、試料調製部222と、撮像装置223と、バーコードリーダー224と、搬送用駆動部225と、操作部226と、入力インターフェイス227と、出力インターフェイス228とを含む。制御部210は、CPU(Central Processing Unit)211と記憶装置212とを有する。
【0026】
CPU211は、記憶装置212に読み込まれた各種プログラムおよびデータを実行または参照する。ある局面において、CPU211は、組み込みCPUであってもよいし、FPGA(Field-Programmable Gate Array)であってもよいし、またはこれらの組み合わせ等によって構成される。CPU211は、分析装置20の各種機能を実現するためのプログラムを実行し得る。
【0027】
ある局面において、CPU211は、撮像された画像を解析することによって、検体の分析結果を特定する。画像の解析の一例は、有形成分分析である。有形成分分析では、CPU211は、検体の画像において予め記憶された有形成分の画像パターンが含まれるか否かを判断する。その後、CPU211は、検体の画像が有形成分の画像パターンを含むと判断すると、画像における当該有形成分の個数を計数し、当該個数を出力する。
【0028】
記憶装置212は、CPU211が実行または参照する任意のプログラムおよびデータを保存し得る。以下の説明において、記憶装置212は、情報の記憶場所の一例として説明される。つまり、「記憶装置212に記憶される」情報は、CPU211等の、本明細書において処理を実行するプロセッサがアクセス可能な記憶装置に格納されていれば、必ずしも記憶装置212に記憶されている必要はない。
【0029】
記憶装置212は、RAM(Random Access Memory)および不揮発性記憶装置を含む。ある局面において、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)が、RAMとして使用されてもよい。他の局面において、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリー、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)またはこれらの組み合わせが、不揮発性記憶装置として使用されてもよい。
【0030】
通信部221は、制御部210からのデータを他の機器に送信し、他の機器からの情報を制御部210に入力する。ある局面において、有線LAN(Local Area Network)ポートおよびWi-Fi(登録商標)モジュール等が通信部221として使用されてもよい。他の局面において、通信部221は、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)、UDP(User Datagram Protocol)等の通信プロトコルを用いてデータを送受信してもよい。
【0031】
試料調製部222は、分析に必要な試料を調製する。試料は、たとえば、容器4内の検体と測定に必要な試薬とが混合攪拌されることによって、調製される。
【0032】
撮像装置223は、試料調製部222によって調製された試料の画像を撮像する。撮像装置223は、自動ピント合わせの機構を有する。これにより、試料調製部222で調製された試料は、撮像装置223によって自動的に撮像される。撮像装置223は、撮像された画像を、制御部210へ出力する。
【0033】
バーコードリーダー224は、容器4に付されたバーコードを読み、読み出した情報を制御部210へ出力する。ある局面において、バーコードは、1次元バーコードであってもよいし、2次元バーコードであってもよい。他の局面において、非接触ICリーダーが、バーコードリーダー224の代わりに使用されてもよい。その場合、容器4には、非接触ICが設けられる。
【0034】
撮像装置223は、1つの検体に対して、複数枚の画像を撮像し、制御部210へ出力してもよい。CPU211は、1つの検体に対する複数の画像のうち、予め定められた記憶装置212に格納された画像パターン(たとえば、尿に関する特定の有形成分の画像パターン)を含む画像を、検体ごとに、当該有形成分に関連付けて、記憶装置212に記憶してもよい。
【0035】
搬送用駆動部225は、搬送部20B(図1参照)に設けられたモータ等を、ラック7(または、容器4)を搬送するために駆動する。制御部210は、搬送用駆動部225の動作を制御する。
【0036】
操作部226は、たとえば、本体20Aに設けられたハードウェアボタン等によって実現される。操作部226は、当該操作部226が操作されると、操作されたボタン等の種類に応じた信号をCPU211へ出力する。
【0037】
入力インターフェイス227は、キーボード、マウスまたはゲームパッド等の任意の入力装置に接続され得る。ある局面において、USB(Universal Serial Bus)端子、PS/2端子およびBluetooth(登録商標)モジュール等が入力インターフェイス227として使用されてもよい。
【0038】
出力インターフェイス228は、ブラウン管ディスプレイ、液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の任意の出力装置に接続され得る。ある局面において、USB(Universal Serial Bus)端子、D-sub端子、DVI(Digital Visual Interface)端子およびHDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)端子等が出力インターフェイス228として使用されてもよい。
【0039】
図3は、分析装置20における検体の分析の工程の一例を示す図である。検体の分析は、主に図3に示される5つの工程(工程(i)~(v))を含む。工程(i)は、試料の調製である。より具体的には、検体ごとに検体容器であるプレパラート70が準備される。プレパラート70は、貯留部71と、凹部72と、カバーガラス73とを含む。カバーガラス73は、凹部72を覆う。工程(i)では、容器4(図1参照)から検体(の一部)が抽出されて貯留部71へ注入され、さらに、貯留部71へ薬剤(たとえば、染色液)が注入される。これにより、貯留部71において試料が調製される。薬剤の添加は省略され得る。つまり、工程(i)では、検体(の一部)の貯留部71への注入のみが実行され得る。
【0040】
工程(ii)は、貯留部71において調製された試料(検体+薬剤)の混合、および、加熱(加温)である。当該混合および加熱は、公知の技術によって実現されてもよい。加熱によって、試料は、分析に適した、予め設定された温度まで加熱される。混合および加熱の少なくとも一方は、不要な場合には省略され得る。
【0041】
工程(iii)は、貯留部71内の試料の、凹部72への導入である。より具体的には、貯留部71内の検体は、たとえば毛細管現象によって、凹部72へと導入される。試料の導入を促進するために、カバーガラス73に刺激が加えられてもよい。
【0042】
工程(iv)は、検体(試料)の撮像である。より具体的には、撮像装置223は、凹部72へ導入された検体(試料)を、カバーガラス73の上方から撮像する。当該画像の撮像は、オートフォーカス機能により自動化されていてもよい。工程(v)は、工程(iv)で撮像された画像の解析である。解析の一例は、検体(試料)における所定の成分の含有量の特定を含む。
【0043】
工程(i)~(iii)は、分析装置20の試料調製部222によって実行される。試料の画像の撮像(工程(iv))は、撮像装置223によって実行される。撮像装置223は、試料の画像を取得するためのカメラを含む。カメラは、たとえば、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ、3CCDイメージセンサ、または、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサである。撮像装置223のカメラによって撮像される面積は、当該カメラの解像度および/またはレンズの倍率に依存する。たとえば、生物顕微鏡(例、オリンパス光学社製BX-50)に20倍の対物レンズを装着して、CCDカメラ(例、ソニー社製XC-003)で撮像する場合には被写体の撮像範囲が0.0432mmとなる(横0.24mm、縦0.18mm)。工程(v)は、制御部210によって実行される。
【0044】
図4は、分析装置20を上面から見た内部機構の一例を示す図である。最初に、分析装置20の内部機構について説明する。分析装置20は、図1の構成に加えて、センサー401A,401B,401Cと、カセット403と、搬送機構404と、搬送台405と、撮像台406と、保持部407と、廃棄容器408と、薬剤入れ409と、洗浄部410とを備える。保持部407は、外壁407Aと、脱落防止部品407Bとを含む。
【0045】
センサー401A,401B,401Cは、それぞれ溝250の壁面付近まで運ばれてきたラック7を検出する。溝250は、2つの区画(区画(A),区画(B))に分けられており、1以上のラック7が区画(A)にセットされる。ラック7は、溝250の壁面等に設けられた搬送用駆動部225によって、区画(A)から区画(B)に1つずつ搬送される。センサー401A,401B,401Cは、それぞれラック7の進行方向となる溝250の壁面に設けられている。ある局面において、ラック7は、区画(B)にセットされて、区画(A)に搬送されてもよい。
【0046】
カセット403は、検体の分析に使用されるプレパラート70を格納する。分析装置20は、検体の分析毎にプレパラート70をカセット403から取り出す。図4の例では、カセット403は、4つの格納部を備える。それぞれの格納部は、たとえば、40枚のプレパラート70を格納できる。カセット403は、駆動部(図示せず)により、搬送機構404の進行方向に対して垂直に駆動される。搬送機構404の正面に位置する格納部内のプレパラート70が搬送台405に押し出される。
【0047】
搬送機構404は、直動機構であり、カセット403の格納部に格納されたプレパラート70を搬送台405まで押し出す。プレパラート70は、搬送台405の上で試料の調製を行なわれる。その後、搬送機構404は、搬送台405上のプレパラート70を撮像台406まで押し出す。
【0048】
搬送台405は、プレパラート70が搬送される通路である。プレパラート70は、搬送機構404によって、一旦、搬送台405の中央に配置される。プレパラート70は、搬送台405上で試料の調製を行なわれてから、搬送機構404によって、撮像台406に押し出される。
【0049】
撮像台406は、撮像装置223がプレパラート70内の試料を撮像するための台である。撮像台406の上部には、撮像装置223が配置されている。撮像装置223は、撮像台406上に配置されたプレパラート70内の試料を撮像する。
【0050】
保持部407は、撮像台406上に配置されたプレパラート70を保持し、プレパラート70の位置を調整する。保持部407は、駆動部(図示せず)と接続されている。当該駆動部により、保持部407は、撮像装置223の撮像方向に対して垂直方向、すなわち撮像台406に対して水平方向に移動することができる。保持部407が移動することにより、プレパラート70の撮像装置223に対する位置も調整される。
【0051】
外壁407Aは開口部を有しており、プレパラート70は、搬送機構404によって、当該開口部から外壁407Aの内部に挿入される。外壁407Aは、内部に挿入されたプレパラート70を3方向から囲む。脱落防止部品407Bは、バネなどの弾性体を含み、外壁407Aの開口部の一部を塞ぐことで、外壁407Aの内部のプレパラート70の脱落を防止する。また、脱落防止部品407Bは、プレパラート70の進行方向に相対する面に傾斜が設けられている。搬送機構404がプレパラート70を保持部407に向かって押し出すと、脱落防止部品407Bの傾斜面がプレパラート70に押圧される。そして、脱落防止部品407Bは、プレパラート70が開口部から外壁407Aの内部に押し込まれることを妨げない位置に移動する。プレパラート70が外壁407A内に押し込まれると、脱落防止部品407Bは、元の位置に戻り、外壁407A内のプレパラート70が外壁407A内から脱落しないようにする。
【0052】
廃棄容器408は、撮像後のプレパラート70が廃棄される。撮像完了後、保持部407は、駆動部によって、撮像台406から廃棄容器408までスライド移動する。保持部407が廃棄容器408までスライド移動すると、保持部407の内部のプレパラート70は、廃棄容器408内に落下する。プレパラート70が廃棄容器408内に落下した後、保持部407は、撮像台406まで戻る。
【0053】
薬剤入れ409は、検体と混ぜ合わされて試料を作成するための薬剤(例えば、試料中の有形成分の視認性を高めるための染色液等)が入っている。搬送台405の上部には、後述する可動式の検体取得部が設けられている。検体取得部は、薬剤入れ409から薬剤を取得し、搬送台405上のプレパラート70に薬剤を入れる。検体取得部は、同様に、分析装置20の中央に配置される検査対象の容器4から、検体を取得し、搬送台405上のプレパラート70に検体を入れる。
【0054】
洗浄部410は、検体取得部の先端を洗浄する。検体取得部は、洗浄部410内で、内部から洗浄液を排出することで、検体取得部の先端を洗浄する。洗浄部410は、洗浄液用の排水溝を有する。
【0055】
次に、図5図15を参照して、分析装置20の内部機構および各機構の動作手順について詳細に説明する。図5は、分析装置20の内部機構の動作手順(1)の一例を示す図である。動作手順(1)において、溝250にセットされたラック7は、溝250の壁面等に設けられた搬送用駆動部225によって、矢印501の方向に搬送される。センサー401Aが、ラック7を検出すると、ラック7の搬送の向きが変わり、ラック7は、矢印502の方向に搬送される。ラック7が搬送されることにより、分析対象のスピッツ503は、分析装置20の中央に運ばれてくる。
【0056】
図6は、分析装置20の内部機構の動作手順(2)の一例を示す図である。動作手順(2)において、搬送機構404は、矢印601の方向に駆動する。そして、搬送機構404は、カセット403から、1枚のプレパラート70を搬送台405の中央に押し出す。搬送機構404は、プレパラート70を搬送台405の中央に押し出した後、そのままの位置で停止する。
【0057】
図7は、分析装置20の内部機構の動作手順(3)の一例を示す図である。動作手順(3)において、検体取得部701は、薬剤入れ409から薬剤を取得し、矢印702の向きに移動し、搬送台405上のプレパラート70に薬剤を供給する。
【0058】
図8は、分析装置20の内部機構の動作手順(4)の一例を示す図である。動作手順(4)において、検体取得部701は、プレパラート70に薬剤を供給した後、矢印801の向きに移動し、洗浄部410に検体取得部701の先端を入れて、洗浄処理を行なう。検体取得部701は、内部から洗浄液を排出することで、検体取得部701の先端の吸い取り口を洗浄する。
【0059】
図9は、分析装置20の内部機構の動作手順(5)の一例を示す図である。動作手順(5)において、検体取得部701は、洗浄処理の完了後、矢印901の向きに移動し、分析対象のスピッツ503から、検体を取得する。
【0060】
図10は、分析装置20の内部機構の動作手順(6)の一例を示す図である。動作手順(6)において、検体取得部701は、検体取得の完了後、矢印1001の向きに移動し、搬送台405上のプレパラート70に検体を供給する。動作手順(6)までの処理によって、図3の工程(i)~(iii)において説明した撮像対象の試料が調製される。
【0061】
図11は、分析装置20の内部機構の動作手順(7)の一例を示す図である。動作手順(7)において、検体取得部701は、プレパラート70に検体を供給した後、矢印1101の向きに移動し、洗浄部410に検体取得部701の先端を入れて、洗浄処理を行なう。検体取得部701は、内部から洗浄液を排出することで、検体取得部701の先端の吸い取り口を洗浄する。なお、図11に示すように、実際には、2枚以上のプレパラート70が搬送台405に搬送されてもよい。
【0062】
図12は、分析装置20の内部機構の動作手順(8)の一例を示す図である。動作手順(8)において、プレパラート70に試料(検体+薬剤)が供給された後、搬送機構404は、矢印1201の方向に駆動する。そして、搬送機構404は、搬送台405上のプレパラート70を保持部407内に挿入する。2枚以上のプレパラート70が搬送台405にある場合、搬送機構404は、搬送台405にある全てのプレパラート70を保持部407の方向に押し出す。
【0063】
ある局面において、脱落防止部品407Bは、プレパラート70と対面する位置に傾斜面を設けられていてもよい。さらに、プレパラート70の脱落防止部品407Bと接する位置にも傾斜面が設けられていてもよい。搬送機構404が、2枚のプレパラート70を保持部407に向けて押し出した場合、1枚目のプレパラート70の傾斜面は、脱落防止部品407Bの傾斜面と接することで、脱落防止部品407Bを開口部の外側に押し出す。脱落防止部品407Bは、開口部の外側に移動するため、1枚目のプレパラート70の外壁407A内への移動を妨げない。
【0064】
1枚目のプレパラート70が完全に外壁407A内に入った後、脱落防止部品407Bは、元の位置に戻り、続けて2枚目のプレパラート70の傾斜面と接することで、2枚目のプレパラート70が外壁407A内に移動することを阻害する。このように、分析装置20は、脱落防止部品407Bおよびプレパラート70の両方に傾斜面を備えることで、搬送機構404の押し出し量を精密に制御することなく、プレパラート70が2枚同時に撮像台406に供給され、保持部407が詰まることを防止し得る。
【0065】
図13は、分析装置20の内部機構の動作手順(9)の一例を示す図である。動作手順(9)において、保持部407は、撮像装置223の撮像方向に対して垂直になる2軸方向(矢印1301の2軸方向)に動くことで、撮像装置223に対するプレパラート70の位置を調整する。撮像装置223は、プレパラート70に対して上下方向に移動することで、撮像装置223のレンズのフォーカスを調整する。撮像装置223は、プレパラート70の位置の調整および撮像装置223のレンズのフォーカスの調整が完了した後に、プレパラート70内の検体(試料)を撮像する。なお、図13以降の動作時に、分析装置20は、後続のプレパラート70に対して、図5~11までの動作を実施し得る。
【0066】
図14は、分析装置20の内部機構の動作手順(10)の一例を示す図である。動作手順(10)において、保持部407は、プレパラート70内の検体(試料)の撮像の完了後、廃棄容器408の位置(矢印1401の方向)に動くことで、プレパラート70を廃棄する。
【0067】
図15は、分析装置20の内部機構の動作手順(11)の一例を示す図である。動作手順(11)において、動作手順(1)~(14)が完了する毎に、次の検査対象の容器4が分析装置20の中央に来るように、ラック7が矢印1501~1503の向きに運ばれていく。
【0068】
次に、撮像台406上のプレパラート70の位置の調整方法について説明する。撮像台406上のプレパラート70の位置の調整方法として、撮像台406自体を移動させる方法と、撮像台406上のプレパラート70を移動させる方法とが考えられる。最初に、図16および図17を参照して、撮像台406自体を移動させる方法について説明する。
【0069】
図16は、撮像台406を上面から見た、撮像台406自体を移動させる方法の一例を示す図である。撮像台406自体を移動させる場合、分析装置20は、たとえば、なんらかの機構を用いて、プレパラート70の貯留部71および凹部72以外の2カ所(たとえば、部位1601および部位1602)をプレパラート70の上面から押圧して、プレパラート70を撮像台406上で固定する必要がある。分析装置20は、プレパラート70を撮像台406上で固定した後、撮像台406の位置をX,Y方向に調整することで、撮像装置223に対するプレパラート70の位置を調整し得る。
【0070】
図17は、撮像台406を側面から見た、撮像台406自体を移動させる方法の一例を示す図である。プレパラート70が部位1601および部位1602を上方から押圧されることにより、たとえば、プレパラート70の中央部分等に歪みが生じることがある。この歪みが原因で、プレパラート70に対する撮像装置223のレンズのフォーカスが合いにくくなる場合がある。
【0071】
また、プレパラート70を押圧する機構には、バネ等の弾性体が使用される。これらの弾性体が、撮像装置223のレンズのフォーカスが合いにくくなる原因となることがある。たとえば、部位1601および部位1602を押圧する機構の弾性力が、時間が経過することで不均一になることで、プレパラート70に歪みが生じ、その結果、プレパラート70に対する撮像装置223のレンズのフォーカスが合いにくくなる場合がある。
【0072】
上記のように、撮像台406自体を移動させる方法を採用した場合、プレパラート70を押圧する機構が原因で、撮像装置223のレンズのフォーカスが合いにくくなる場合がある。そこで、分析装置20は、プレパラート70を撮像台406に固定せずに、保持部407を利用して、プレパラート70を撮像台406で移動させる方法を採用し得る。
【0073】
次に、図18図21を参照して、撮像台406上のプレパラート70を移動させる方法について説明する。図18は、撮像台406を上面から見た、撮像台406上のプレパラート70を移動させる方法の一例を示す図である。
【0074】
保持部407は、保持部407を駆動させる駆動部によって撮像台406上を2軸方向に移動し得る。保持部407が移動することにより、外壁407A内のプレパラート70も保持部407と同じ方向に移動する。脱落防止部品407Bは、弾性体1803を介して、外壁407Aと接続されている。脱落防止部品407Bは、保持部407の移動時に、外壁407A内の開口部からプレパラート70が出るのを防止する。当該構成により、分析装置20は、プレパラート70の上面を押圧することなく、撮像装置223に対するプレパラート70の位置を調整することができる。プレパラート70は上面を押圧されず歪みが発生しないため、プレパラート70に対する撮像装置223のレンズのフォーカスは合いやすくなる。
【0075】
図19は、撮像台406を上面から見た、プレパラート70を外壁407A内に挿入する方法の一例を示す第1の図である。図19に示す例では、搬送機構404は、2枚のプレパラート70を保持部407に向けて押し出している。脱落防止部品407Bは、通常、外壁407Aの開口部の一部を塞ぐ位置にある。搬送機構404がプレパラート70を外壁407Aの開口部に挿入してきたとき、脱落防止部品407Bの傾斜面1901は、プレパラート70の傾斜面1902によって押圧され、弾性体1803が縮む。その結果、脱落防止部品407Bは、外壁407Aの開口部の外側にスライドする。その後、脱落防止部品407Bの傾斜面1901は、プレパラート70の側面1903によって外壁407Aの開口部の外側に押圧され続けるため、プレパラート70の外壁407A内への移動を阻害しない。
【0076】
図20は、撮像台406を上面から見た、プレパラート70を外壁407A内に挿入する方法の一例を示す第2の図である。1枚目のプレパラート70が完全に外壁407A内に移動すると、脱落防止部品407B、弾性体1803により元の位置に戻る。元の位置に戻った脱落防止部品407Bは、外壁407A内の開口部から1枚目のプレパラート70が出るのを防止する。さらに、脱落防止部品407Bの傾斜面1901は、2枚目のプレパラート70の傾斜面1902と接することで、2枚目のプレパラート70の外壁407A内への移動を阻害する。当該構成により、分析装置20は、搬送機構404の押し出し量を精密に制御することなく、プレパラート70が2枚同時に撮像台406に供給され、保持部407が詰まることを防止し得る。
【0077】
図21は、撮像台406を上面から見た、外壁407A内のプレパラート70を廃棄する方法の一例を示す図である。保持部407は、プレパラート70の撮像完了後、廃棄容器408の上まで移動する。当該移動により、プレパラート70は、廃棄容器408に自然落下する。保持部407は、プレパラート70が廃棄容器408に自然落下した後、元の位置に戻る。
【0078】
以上説明したように、分析装置20は、保持部407を備えることにより、プレパラート70を押圧することなく撮像装置223に対する位置合わせができる。当該構成により、撮像装置223は、プレパラート70にフォーカスを合わせやすくなる。
【0079】
さらに、保持部407は、プレパラート70の挿入、位置の調整および廃棄において、2次元的な動作のみを行なう。そのため、分析装置20は、連続して、高速に検体を撮像し、かつ、分析を行なうことができる。
【0080】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
4 容器、7 ラック、20 分析装置、20A 本体、20B 搬送部、70 プレパラート、71 貯留部、72 凹部、73 カバーガラス、210 制御部、212 記憶装置、221 通信部、222 試料調製部、223 撮像装置、224 バーコードリーダー、225 搬送用駆動部、226 操作部、227 入力インターフェイス、228 出力インターフェイス、250 溝、401A,401B,401C センサー、403 カセット、404 搬送機構、405 搬送台、406 撮像台、407 保持部、407A 外壁、407B 脱落防止部品、408 廃棄容器、409 薬剤入れ、410 洗浄部、503 分析対象のスピッツ、701 検体取得部、1601,1602 部位、1803 弾性体、1901,1902 傾斜面、1903 側面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図19
図20
図21