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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/02 20060101AFI20230627BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20230627BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20230627BHJP
   F15B 11/17 20060101ALI20230627BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20230627BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
F15B11/02 M
F15B11/08 C
F15B11/028 G
F15B11/17
E02F9/20 Q
E02F9/22 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019035774
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020139574
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 貴雅
(72)【発明者】
【氏名】清水 自由理
(72)【発明者】
【氏名】平工 賢二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏政
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 哲平
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-145603(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145528(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/02
F15B 11/08
F15B 11/028
F15B 11/17
E02F 9/20
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油を貯留するタンクと、
両傾転型の油圧ポンプからなる複数の閉回路ポンプと、
前記複数の閉回路ポンプと同数の片傾転型の油圧ポンプからなる複数の開回路ポンプと、
少なくとも1つの片ロッド式油圧シリンダおよび少なくとも1つの油圧モータを含む複数の油圧アクチュエータと、
前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示するための操作装置と、
前記複数の閉回路ポンプを前記複数の油圧アクチュエータに閉回路状に接続する複数の閉回路切換弁と、
前記複数の開回路ポンプの吐出ポートを前記片ロッド式油圧シリンダのキャップ室に接続する複数のキャップ側切換弁と、
前記複数の開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられた複数の比例弁と、
前記キャップ室の圧力を検出するキャップ圧力センサと、
前記片ロッド式油圧シリンダのロッド室の圧力を検出するロッド圧力センサと、
前記操作装置、前記キャップ圧力センサ、および前記ロッド圧力センサからの入力に基づいて、前記複数の閉回路切換弁および前記複数のキャップ側切換弁を制御すると共に、前記複数の閉回路ポンプおよび前記複数の開回路ポンプの各吐出流量、ならびに前記複数の比例弁の開口面積を制御するコントローラとを備えた建設機械において、
前記複数の開回路ポンプの吐出ポートを前記ロッド室に接続する複数のロッド側切換弁と、
前記キャップ室と前記タンクとを接続するキャップ側排出流路と、
前記キャップ側排出流路に設けられたメータアウト弁と、
チャージポンプと、
前記チャージポンプの吐出ポートに接続されたチャージラインと、
前記チャージラインに設けられたチャージ用リリーフ弁と、
前記チャージラインの圧力を検出するチャージ圧力センサとを更に備え、
前記コントローラは、
前記キャップ室の圧力が前記ロッド室の圧力より高い状態で前記片ロッド式油圧シリンダを縮み側に駆動すると同時に前記油圧モータを駆動する場合に、
前記複数の開回路ポンプのうち前記片ロッド式油圧シリンダに接続されていない特定の開回路ポンプが前記ロッド室に接続されるように前記複数のキャップ側切換弁および前記複数のロッド側切換弁を制御し、
前記複数の比例弁のうち前記特定の開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられた特定の比例弁を閉口し、
前記メータアウト弁を開口し、
前記チャージラインの圧力が前記チャージ用リリーフ弁の設定圧よりも低く設定された所定の圧力を下回ったときに、前記メータアウト弁の開口面積を縮小させる
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
作動油を貯留するタンクと、
両傾転型の油圧ポンプからなる複数の閉回路ポンプと、
前記複数の閉回路ポンプと同数の片傾転型の油圧ポンプからなる複数の開回路ポンプと、
少なくとも1つの片ロッド式油圧シリンダおよび少なくとも1つの油圧モータを含む複数の油圧アクチュエータと、
前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示するための操作装置と、
前記複数の閉回路ポンプを前記複数の油圧アクチュエータに閉回路状に接続する複数の閉回路切換弁と、
前記複数の開回路ポンプの吐出ポートを前記片ロッド式油圧シリンダのキャップ室に接続する複数のキャップ側切換弁と、
前記複数の開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられた複数の比例弁と、
前記キャップ室の圧力を検出するキャップ圧力センサと、
前記片ロッド式油圧シリンダのロッド室の圧力を検出するロッド圧力センサと、
前記操作装置、前記キャップ圧力センサ、および前記ロッド圧力センサからの入力に基づいて、前記複数の閉回路切換弁および前記複数のキャップ側切換弁を制御すると共に、前記複数の閉回路ポンプおよび前記複数の開回路ポンプの各吐出流量、ならびに前記複数の比例弁の開口面積を制御するコントローラとを備えた建設機械において、
前記複数の開回路ポンプの吐出ポートを前記ロッド室に接続する複数のロッド側切換弁と、
前記キャップ室と前記タンクとを接続するキャップ側排出流路と、
前記キャップ側排出流路に設けられたメータアウト弁と、
チャージポンプと、
前記チャージポンプの吐出ポートに接続されたチャージラインと、
前記チャージラインに設けられたチャージ用リリーフ弁と、
前記チャージラインの圧力を検出するチャージ圧力センサとを更に備え、
前記コントローラは、
前記キャップ室の圧力が前記ロッド室の圧力より高い状態で前記片ロッド式油圧シリンダを縮み側に駆動すると同時に前記油圧モータを駆動する場合に、
前記複数の開回路ポンプのうち前記片ロッド式油圧シリンダに接続されていない特定の開回路ポンプが前記ロッド室に接続されるように前記複数のキャップ側切換弁および前記複数のロッド側切換弁を制御し、
前記複数の比例弁のうち前記特定の開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられた特定の比例弁を閉口し、
前記メータアウト弁を開口し、
前記チャージラインの圧力が前記チャージ用リリーフ弁の設定圧よりも低く設定された所定の圧力を下回ったときに、前記特定の開回路ポンプの吐出流量を増加させる
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
作動油を貯留するタンクと、
両傾転型の油圧ポンプからなる複数の閉回路ポンプと、
前記複数の閉回路ポンプと同数の片傾転型の油圧ポンプからなる複数の開回路ポンプと、
少なくとも1つの片ロッド式油圧シリンダおよび少なくとも1つの油圧モータを含む複数の油圧アクチュエータと、
前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示するための操作装置と、
前記複数の閉回路ポンプを前記複数の油圧アクチュエータに閉回路状に接続する複数の閉回路切換弁と、
前記複数の開回路ポンプの吐出ポートを前記片ロッド式油圧シリンダのキャップ室に接続する複数のキャップ側切換弁と、
前記複数の開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられた複数の比例弁と、
前記キャップ室の圧力を検出するキャップ圧力センサと、
前記片ロッド式油圧シリンダのロッド室の圧力を検出するロッド圧力センサと、
前記操作装置、前記キャップ圧力センサ、および前記ロッド圧力センサからの入力に基づいて、前記複数の閉回路切換弁および前記複数のキャップ側切換弁を制御すると共に、前記複数の閉回路ポンプおよび前記複数の開回路ポンプの各吐出流量、ならびに前記複数の比例弁の開口面積を制御するコントローラとを備えた建設機械において、
前記複数の開回路ポンプの吐出ポートを前記ロッド室に接続する複数のロッド側切換弁と、
チャージポンプと、
前記チャージポンプの吐出ポートに接続されたチャージラインと、
前記チャージラインに設けられたチャージ用リリーフ弁と、
前記チャージラインの圧力を検出するチャージ圧力センサとを更に備え、
前記コントローラは、
前記ロッド室の圧力が前記キャップ室の圧力より高い状態で前記片ロッド式油圧シリンダを伸び側に駆動すると同時に前記油圧モータを駆動する場合に、
前記複数の開回路ポンプのうち前記片ロッド式油圧シリンダに接続されていない特定の開回路ポンプが前記ロッド室に接続されるように前記複数のキャップ側切換弁および前記複数のロッド側切換弁を制御し、
前記複数の比例弁のうち前記特定の開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられた特定の比例弁を開口し、
前記チャージラインの圧力が前記チャージ用リリーフ弁の設定圧よりも低く設定された所定の圧力を下回ったときに、前記特定の比例弁の開口面積を縮小させる
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
作動油を貯留するタンクと、
両傾転型の油圧ポンプからなる複数の閉回路ポンプと、
前記複数の閉回路ポンプと同数の片傾転型の油圧ポンプからなる複数の開回路ポンプと、
少なくとも1つの片ロッド式油圧シリンダおよび少なくとも1つの油圧モータを含む複数の油圧アクチュエータと、
前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示するための操作装置と、
前記複数の閉回路ポンプを前記複数の油圧アクチュエータに閉回路状に接続する複数の閉回路切換弁と、
前記複数の開回路ポンプの吐出ポートを前記片ロッド式油圧シリンダのキャップ室に接続する複数のキャップ側切換弁と、
前記複数の開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられた複数の比例弁と、
前記キャップ室の圧力を検出するキャップ圧力センサと、
前記片ロッド式油圧シリンダのロッド室の圧力を検出するロッド圧力センサと、
前記操作装置、前記キャップ圧力センサ、および前記ロッド圧力センサからの入力に基づいて、前記複数の閉回路切換弁および前記複数のキャップ側切換弁を制御すると共に、前記複数の閉回路ポンプおよび前記複数の開回路ポンプの各吐出流量、ならびに前記複数の比例弁の開口面積を制御するコントローラとを備えた建設機械において、
前記複数の開回路ポンプの吐出ポートを前記ロッド室に接続する複数のロッド側切換弁と、
チャージポンプと、
前記チャージポンプの吐出ポートに接続されたチャージラインと、
前記チャージラインに設けられたチャージ用リリーフ弁と、
前記チャージラインの圧力を検出するチャージ圧力センサとを更に備え、
前記コントローラは、
前記キャップ室の圧力が前記ロッド室の圧力より高い状態で前記片ロッド式油圧シリンダを縮み側に駆動すると同時に前記油圧モータを駆動する場合に、
前記複数の開回路ポンプのうち前記片ロッド式油圧シリンダに接続されていない特定の開回路ポンプが前記キャップ室に接続されるように前記複数のキャップ側切換弁および前記複数のロッド側切換弁を制御し、
前記複数の比例弁のうち前記特定の開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられた特定の比例弁を開口し、
前記チャージラインの圧力が前記チャージ用リリーフ弁の設定圧よりも低く設定された所定の圧力を下回ったときに、前記特定の比例弁の開口面積を縮小させる
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルなどの建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械の分野では、油圧シリンダ等の油圧アクチュエータからの戻り油を作動油タンクに戻す油圧回路(以下、「開回路」と称する)を用いたものが主流であるが、近年、燃料消費量低減のために、油圧シリンダ(以下、「シリンダ」と称する)もしくはポンプと油圧モータの油圧回路の絞り要素を減らすとともに、シリンダもしくは油圧モータからの戻り油を両傾転ポンプ(以下、「ポンプ」と称する)に戻し、ポンプとシリンダ、もしくはポンプと油圧モータとを閉回路状に接続した回路(以下、「閉回路」と称する)の開発が進められている。また、開回路と閉回路を併設する油圧回路も提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、両方向に作動油の流出入が可能な2つの流出入ポートを有する少なくとも1つの閉回路用作動油流出入制御部と第1作動油室および第2作動油室を有する少なくとも1つの片ロッド式油圧シリンダとを備え前記閉回路用作動油流出入制御部の2つの流出入ポートが前記第1作動油室および前記第2作動油室に閉回路状に接続された複数の閉回路と、作動油タンクから作動油を流入する流入ポートおよび作動油を流出する流出ポートを有する少なくとも1つの開回路用作動油流出入制御部と前記開回路用作動油流出入制御部から流出される作動油の供給先を切り換える開回路切換部とを備えた複数の開回路と、前記閉回路用作動油流出入制御部、前記開回路用作動油流出入制御部および前記開回路切換部を制御するコントローラと、を具備する作動機械の駆動装置であって、前記複数の開回路のうちの少なくとも1つの前記開回路切換部の作動油が流出される側と、前記複数の閉回路のいずれかに接続された連結管路を具備したことを特徴とする作業機械の駆動装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-48899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、閉回路ポンプと開回路ポンプおよび比例弁とを対で配置することで、閉回路ポンプで油圧シリンダを伸長方向に駆動する際に、油圧シリンダの受圧面積差によって生じる不足分の作動油を開回路ポンプから補充することができ、閉回路ポンプで油圧シリンダを縮小方向に駆動する際に、油圧シリンダの受圧面積差によって生じる余剰分の作動油を比例弁を介してタンクに排出することができる。一方、油圧モータには油圧シリンダのような受圧面積差がないため、油圧モータを駆動する際には、閉回路ポンプのみが使用され、当該閉回路ポンプと対をなす開回路ポンプおよび比例弁は未使用の状態となる。しかしながら、油圧シリンダと油圧モータを同時に駆動する複合動作時に油圧シリンダの速度を増速したい場合、未使用の開回路ポンプおよび比例弁が存在するにも関わらず、それらを使用することができない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、閉回路ポンプと開回路ポンプおよび比例弁とを対で配置した油圧システムが搭載され、油圧シリンダと油圧モータを同時に駆動する際に未使用の開回路ポンプまたは比例弁を用いて油圧シリンダの速度を増速できる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、作動油を貯留するタンクと、両傾転型の油圧ポンプからなる複数の閉回路ポンプと、前記複数の閉回路ポンプと同数の片傾転型の油圧ポンプからなる複数の開回路ポンプと、少なくとも1つの片ロッド式油圧シリンダおよび少なくとも1つの油圧モータを含む複数の油圧アクチュエータと、前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示するための操作装置と、前記複数の閉回路ポンプを前記複数の油圧アクチュエータに閉回路状に接続する複数の閉回路切換弁と、前記複数の開回路ポンプの吐出ポートを前記片ロッド式油圧シリンダのキャップ室に接続する複数のキャップ側切換弁と、前記複数の開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられた複数の比例弁と、前記キャップ室の圧力を検出するキャップ圧力センサと、前記片ロッド式油圧シリンダのロッド室の圧力を検出するロッド圧力センサと、前記操作装置、前記キャップ圧力センサ、および前記ロッド圧力センサからの入力に基づいて、前記複数の閉回路切換弁および前記複数のキャップ側切換弁を制御すると共に、前記複数の閉回路ポンプおよび前記複数の開回路ポンプの各吐出流量、ならびに前記複数の比例弁の開口面積を制御するコントローラとを備えた建設機械において、前記複数の開回路ポンプの吐出ポートを前記ロッド室に接続する複数のロッド側切換弁と、前記キャップ室と前記タンクとを接続するキャップ側排出流路と、前記キャップ側排出流路に設けられたメータアウト弁と、チャージポンプと、前記チャージポンプの吐出ポートに接続されたチャージラインと、前記チャージラインに設けられたチャージ用リリーフ弁と、前記チャージラインの圧力を検出するチャージ圧力センサとを更に備え、前記コントローラは、前記キャップ室の圧力が前記ロッド室の圧力より高い状態で前記片ロッド式油圧シリンダを縮み側に駆動すると同時に前記油圧モータを駆動する場合に、前記複数の開回路ポンプのうち前記片ロッド式油圧シリンダに接続されていない特定の開回路ポンプが前記ロッド室に接続されるように前記複数のキャップ側切換弁および前記複数のロッド側切換弁を制御し、前記複数の比例弁のうち前記特定の開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられた特定の比例弁を閉口し、前記メータアウト弁を開口し、前記チャージラインの圧力が前記チャージ用リリーフ弁の設定圧よりも低く設定された所定の圧力を下回ったときに、前記メータアウト弁の開口面積を縮小させるものとする。
また、本発明は、作動油を貯留するタンクと、両傾転型の油圧ポンプからなる複数の閉回路ポンプと、前記複数の閉回路ポンプと同数の片傾転型の油圧ポンプからなる複数の開回路ポンプと、少なくとも1つの片ロッド式油圧シリンダおよび少なくとも1つの油圧モータを含む複数の油圧アクチュエータと、前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示するための操作装置と、前記複数の閉回路ポンプを前記複数の油圧アクチュエータに閉回路状に接続する複数の閉回路切換弁と、前記複数の開回路ポンプの吐出ポートを前記片ロッド式油圧シリンダのキャップ室に接続する複数のキャップ側切換弁と、前記複数の開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられた複数の比例弁と、前記キャップ室の圧力を検出するキャップ圧力センサと、前記片ロッド式油圧シリンダのロッド室の圧力を検出するロッド圧力センサと、前記操作装置、前記キャップ圧力センサ、および前記ロッド圧力センサからの入力に基づいて、前記複数の閉回路切換弁および前記複数のキャップ側切換弁を制御すると共に、前記複数の閉回路ポンプおよび前記複数の開回路ポンプの各吐出流量、ならびに前記複数の比例弁の開口面積を制御するコントローラとを備えた建設機械において、前記複数の開回路ポンプの吐出ポートを前記ロッド室に接続する複数のロッド側切換弁と、前記キャップ室と前記タンクとを接続するキャップ側排出流路と、前記キャップ側排出流路に設けられたメータアウト弁と、チャージポンプと、前記チャージポンプの吐出ポートに接続されたチャージラインと、前記チャージラインに設けられたチャージ用リリーフ弁と、前記チャージラインの圧力を検出するチャージ圧力センサとを更に備え、前記コントローラは、前記キャップ室の圧力が前記ロッド室の圧力より高い状態で前記片ロッド式油圧シリンダを縮み側に駆動すると同時に前記油圧モータを駆動する場合に、前記複数の開回路ポンプのうち前記片ロッド式油圧シリンダに接続されていない特定の開回路ポンプが前記ロッド室に接続されるように前記複数のキャップ側切換弁および前記複数のロッド側切換弁を制御し、前記複数の比例弁のうち前記特定の開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられた特定の比例弁を閉口し、前記メータアウト弁を開口し、前記チャージラインの圧力が前記チャージ用リリーフ弁の設定圧よりも低く設定された所定の圧力を下回ったときに、前記特定の開回路ポンプの吐出流量を増加させるものとする。
また、本発明は、作動油を貯留するタンクと、両傾転型の油圧ポンプからなる複数の閉回路ポンプと、前記複数の閉回路ポンプと同数の片傾転型の油圧ポンプからなる複数の開回路ポンプと、少なくとも1つの片ロッド式油圧シリンダおよび少なくとも1つの油圧モータを含む複数の油圧アクチュエータと、前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示するための操作装置と、前記複数の閉回路ポンプを前記複数の油圧アクチュエータに閉回路状に接続する複数の閉回路切換弁と、前記複数の開回路ポンプの吐出ポートを前記片ロッド式油圧シリンダのキャップ室に接続する複数のキャップ側切換弁と、前記複数の開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられた複数の比例弁と、前記キャップ室の圧力を検出するキャップ圧力センサと、前記片ロッド式油圧シリンダのロッド室の圧力を検出するロッド圧力センサと、前記操作装置、前記キャップ圧力センサ、および前記ロッド圧力センサからの入力に基づいて、前記複数の閉回路切換弁および前記複数のキャップ側切換弁を制御すると共に、前記複数の閉回路ポンプおよび前記複数の開回路ポンプの各吐出流量、ならびに前記複数の比例弁の開口面積を制御するコントローラとを備えた建設機械において、前記複数の開回路ポンプの吐出ポートを前記ロッド室に接続する複数のロッド側切換弁と、チャージポンプと、前記チャージポンプの吐出ポートに接続されたチャージラインと、前記チャージラインに設けられたチャージ用リリーフ弁と、前記チャージラインの圧力を検出するチャージ圧力センサとを更に備え、前記コントローラは、前記ロッド室の圧力が前記キャップ室の圧力より高い状態で前記片ロッド式油圧シリンダを伸び側に駆動すると同時に前記油圧モータを駆動する場合に、前記複数の開回路ポンプのうち前記片ロッド式油圧シリンダに接続されていない特定の開回路ポンプが前記ロッド室に接続されるように前記複数のキャップ側切換弁および前記複数のロッド側切換弁を制御し、前記複数の比例弁のうち前記特定の開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられた特定の比例弁を開口し、前記チャージラインの圧力が前記チャージ用リリーフ弁の設定圧よりも低く設定された所定の圧力を下回ったときに、前記特定の比例弁の開口面積を縮小させるものとする。
また、本発明は、作動油を貯留するタンクと、両傾転型の油圧ポンプからなる複数の閉回路ポンプと、前記複数の閉回路ポンプと同数の片傾転型の油圧ポンプからなる複数の開回路ポンプと、少なくとも1つの片ロッド式油圧シリンダおよび少なくとも1つの油圧モータを含む複数の油圧アクチュエータと、前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示するための操作装置と、前記複数の閉回路ポンプを前記複数の油圧アクチュエータに閉回路状に接続する複数の閉回路切換弁と、前記複数の開回路ポンプの吐出ポートを前記片ロッド式油圧シリンダのキャップ室に接続する複数のキャップ側切換弁と、前記複数の開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられた複数の比例弁と、前記キャップ室の圧力を検出するキャップ圧力センサと、前記片ロッド式油圧シリンダのロッド室の圧力を検出するロッド圧力センサと、前記操作装置、前記キャップ圧力センサ、および前記ロッド圧力センサからの入力に基づいて、前記複数の閉回路切換弁および前記複数のキャップ側切換弁を制御すると共に、前記複数の閉回路ポンプおよび前記複数の開回路ポンプの各吐出流量、ならびに前記複数の比例弁の開口面積を制御するコントローラとを備えた建設機械において、前記複数の開回路ポンプの吐出ポートを前記ロッド室に接続する複数のロッド側切換弁と、チャージポンプと、前記チャージポンプの吐出ポートに接続されたチャージラインと、前記チャージラインに設けられたチャージ用リリーフ弁と、前記チャージラインの圧力を検出するチャージ圧力センサとを更に備え、前記コントローラは、前記キャップ室の圧力が前記ロッド室の圧力より高い状態で前記片ロッド式油圧シリンダを縮み側に駆動すると同時に前記油圧モータを駆動する場合に、前記複数の開回路ポンプのうち前記片ロッド式油圧シリンダに接続されていない特定の開回路ポンプが前記キャップ室に接続されるように前記複数のキャップ側切換弁および前記複数のロッド側切換弁を制御し、前記複数の比例弁のうち前記特定の開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられた特定の比例弁を開口し、前記チャージラインの圧力が前記チャージ用リリーフ弁の設定圧よりも低く設定された所定の圧力を下回ったときに、前記特定の比例弁の開口面積を縮小させるものとする。
【0008】
以上のように構成した本発明によれば、片ロッド式油圧シリンダと油圧モータを同時に駆動する場合に、片ロッド式油圧シリンダに接続されていない特定の開回路ポンプおよび特定の比例弁が片ロッド式油圧シリンダに接続され、特定の開回路ポンプの吐出ポートとタンクとを接続する流路に設けられた特定の比例弁(未使用の比例弁)の開口面積が制御される。これにより、片ロッド式油圧シリンダと油圧モータを同時に駆動する際に、未使用の開回路ポンプまたは未使用の比例弁を用いて片ロッド式油圧シリンダの速度を増速することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、閉回路ポンプと開回路ポンプおよび比例弁とを対で配置した油圧システムが搭載された建設機械において、片ロッド式油圧シリンダと油圧モータを同時に駆動する際に、未使用の開回路ポンプまたは未使用の比例弁を用いて片ロッド式油圧シリンダの速度を増速することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施例に係る建設機械の一例としての油圧ショベルの側面図である。
図2図1に示す油圧ショベルに搭載された油圧システムの概略構成図である。
図3図2に示すコントローラの機能ブロック図である。
図4A図3に示すアクチュエータ割り当て流量演算部の制御フローを示す図(1/2)である。
図4B図3に示すアクチュエータ割り当て流量演算部の制御フローを示す図(2/2)である。
図5図4Aおよび図Bに示す制御を実行した場合の油圧システムの動作を示す図である。
図6】本発明の第2の実施例における油圧システムの概略構成図である。
図7A】本発明の第2の実施例におけるアクチュエータ流量割り当て演算部の制御フローを示す図(1/2)である。
図7B】本発明の第2の実施例におけるアクチュエータ流量割り当て演算部の制御フローを示す図(2/2)である。
図8図7Aおよび図7Bに示す制御を実行した場合の油圧システムの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【実施例1】
【0012】
本発明の第1の実施例に係る油圧ショベルについて、図1図5を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施例に係る油圧ショベルの側面図である。
【0014】
図1において、油圧ショベル100は、左右方向の両側にクローラ式の走行装置8を備えた下部走行体103と、下部走行体103上に旋回可能に取り付けられた上部旋回体102とを備えている。上部旋回体102は、油圧モータである旋回モータ7によって駆動される。
【0015】
上部旋回体102の前側には、例えば掘削作業等を行うための作動装置であるフロント作業機104の基端部が回動可能に取り付けられている。フロント作業機104は、上部旋回体102の前側に上下方向に回動可能に連結されたブーム2と、ブーム2の先端部に上下、前後方向に回動可能に連結されたアーム4と、アーム4の先端部に上下、前後方向に回動可能に連結されたバケット6とを備えている。ブーム2、アーム4、およびバケット6は、片ロッド式油圧シリンダであるブームシリンダ1、アームシリンダ3、およびバケットシリンダ5によってそれぞれ駆動される。
【0016】
上部旋回体102上には、オペレータが搭乗するキャブ101が設けられている。キャブ101内には、ブーム2、アーム4、バケット6および上部旋回体102を操作するためのレバー52(図2に示す)が配置されている。
【0017】
図2は、図1に示す油圧ショベル100に搭載された油圧システムの概略構成図である。なお、説明の簡略化のため、図2では、アームシリンダ3および旋回モータ7の駆動に関わる部分のみを示し、その他のアクチュエータの駆動に関わる部分は省略している。
【0018】
図2において、油圧システム300は、アームシリンダ3と、旋回モータ7と、アームシリンダ3および旋回モータの各動作方向および各要求速度を指示する操作装置としてのレバー52と、動力源であるエンジン9と、エンジン9の動力を配分する動力伝達装置10と、動力伝達装置10によって配分された動力で駆動される両傾転型の油圧ポンプ(以下、閉回路ポンプ)12,13、片傾転型の油圧ポンプ(以下、開回路ポンプ)14,15、およびチャージポンプ11と、油圧ポンプ12~15と油圧アクチュエータ3,7との接続を切換可能な切換弁40~47と、比例弁48,49と、コントローラ51とを備えている。
【0019】
動力源であるエンジン9は、動力を配分する動力伝達装置10に接続されている。動力伝達装置10には、チャージポンプ11、閉回路ポンプ12,13、および開回路ポンプ14,15が接続されている。
【0020】
閉回路ポンプ12,13は、一対の入出力ポートを持つ両傾転斜板機構と、両傾転斜板の傾斜角を調整するレギュレータ12a,13aとを備えている。レギュレータ12a,13aは、コントローラ51からの信号により、閉回路ポンプ12,13の両傾転斜板の傾転角を調整する。閉回路ポンプ12,13は、傾転斜板の傾転角を調整することにより、一対の入出力ポートからの作動油の吐出方向および吐出流量を制御できる。閉回路ポンプ12,13は、圧油の供給を受けると油圧モータとしても機能する。
【0021】
開回路ポンプ14,15は、吐出ポートおよび吸込ポートを持つ片傾転斜板機構と、片傾転斜板の傾斜角を調整するレギュレータ14a,15aとを備えている。レギュレータ14a,15aは、コントローラ51からの信号により、開回路ポンプ14,15の片傾転斜板の傾転角を調整する。開回路ポンプ14,15は、片傾転斜板の傾転角を調整することにより、吐出ポートからの作動油の吐出流量を制御できる。
【0022】
チャージポンプ11は、チャージラインとしての流路212に圧油を補充する。
【0023】
閉回路ポンプ12の一対の入出力ポートには流路200,201が接続され、流路200,201には切換弁40,41が接続されている。切換弁40,41は、コントローラ51からの信号により、流路の連通と遮断を切り換える。コントローラ51からの信号が無い場合は、切換弁40,41は遮断状態である。
【0024】
切換弁40は、流路210を介してアームシリンダ3のキャップ室3aに接続され、流路211を介してアームシリンダ3のロッド室3bに接続されている。コントローラ51からの信号により切換弁40が連通状態になると、閉回路ポンプ12は、流路200,201、切換弁40、および流路210,211を介して、アームシリンダ3と接続されることにより閉回路を構成する。
【0025】
切換弁41は、流路213を介して旋回モータ7の一側の入出力ポートに接続され、流路214を介して旋回モータ7の他側の入出力ポートに接続されている。コントローラ51からの信号により切換弁41が連通状態になると、閉回路ポンプ12は、流路200,201、切換弁41、および流路213,214を介して、旋回モータ7と接続されることにより閉回路を構成する。
【0026】
閉回路ポンプ13の一対の入出力ポートには流路202,203が接続され、流路202,203には切換弁42,43が接続されている。切換弁42,43は、コントローラ51からの信号により、流路の連通と遮断を切り換える。コントローラ51からの信号が無い場合は、切換弁42,43は遮断状態である。
【0027】
切換弁42は、流路210を介してアームシリンダ3のキャップ室3aに接続され、流路211を介してアームシリンダ3のロッド室3bに接続されている。コントローラ51からの信号により切換弁42が連通状態になると、閉回路ポンプ13は、流路202,203、切換弁42、および流路210,211を介して、アームシリンダ3と接続されることにより閉回路を構成する。
【0028】
切換弁43は、流路213を介して旋回モータ7の一側の入出力ポートに接続され、流路214を介して旋回モータ7の他側の入出力ポートに接続されている。コントローラ51からの信号により切換弁43が連通状態になると、閉回路ポンプ13は、流路202,203、切換弁43、および流路213,214を介して、旋回モータ7と接続されることにより閉回路を構成する。
【0029】
開回路ポンプ14の吐出ポートは、流路204を介して切換弁44,45、およびリリーフ弁21に接続されている。開回路ポンプ14の吐出ポートをタンク25に接続する流路215には、比例弁48が設けられている。開回路ポンプ14の吸込ポートは、タンク25に接続されている。
【0030】
リリーフ弁21は、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をタンク25に逃がし回路を保護する。
【0031】
切換弁44,45は、コントローラ51からの信号により、流路の連通と遮断を切り換える。コントローラ51からの信号が無い場合は、切換弁44,45は遮断状態である。
【0032】
切換弁44は、流路210を介してアームシリンダ3のキャップ室3aに接続されている。
【0033】
切換弁45は、流路211を介してアームシリンダ3のロッド室3bに接続されている。
【0034】
比例弁48は、コントローラ51からの信号により、開口面積を変化させ、通過流量を制御する。コントローラ51からの信号が無い場合、比例弁48は最大開口面積に保持される。また、切換弁44,45が遮断状態の時、コントローラ51は、開回路ポンプ14の吐出流量を最小流量に制御し、この最小流量の作動油がタンク25に排出されるように比例弁49を微小に開口する。
【0035】
開回路ポンプ15の吐出ポートは、流路205を介して切換弁46,47、およびリリーフ弁22に接続されている。開回路ポンプ15の吐出ポートをタンク25に接続する流路216には、比例弁49が設けられている。開回路ポンプ15の吸込ポートは、タンク25に接続されている。
【0036】
リリーフ弁22は、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をタンク25に逃がし回路を保護する。
【0037】
切換弁46,47は、コントローラ51からの信号により、流路の連通と遮断を切り換える。コントローラ51からの信号が無い場合は、切換弁46,47は遮断状態である。
【0038】
切換弁46は、流路210を介してアームシリンダ3のキャップ室3aに接続されている。
【0039】
切換弁47は、流路213を介してアームシリンダ3のロッド室3bに接続されている。
【0040】
比例弁49は、コントローラ51からの信号により、開口面積を変化させ、通過流量を制御する。コントローラ51からの信号が無い場合、比例弁49は最大開口面積に保持される。また、切換弁46,47が遮断状態の時、コントローラ51は、開回路ポンプ15の吐出流量を最小流量に制御し、この最小流量の作動油がタンク25に排出されるように比例弁49を微小に開口する。
【0041】
チャージポンプ11の吐出ポートは、チャージライン212を介して、チャージ用リリーフ弁20、およびチャージ用チェック弁26,27,28a,28b,29a,29bに接続されている。
【0042】
チャージポンプ11の吸込ポートは、タンク25に接続されている。
【0043】
チャージ用リリーフ弁20は、チャージ用チェック弁26,27,28a,28b,29a,29bのチャージ圧力を設定する。
【0044】
チャージ用チェック弁26は、流路200,201の圧力がチャージ用リリーフ弁20で設定したチャージ圧力を下回った場合に開弁し、流路200,201にチャージポンプ11の圧油を補充する。
【0045】
チャージ用チェック弁27は、流路202,203の圧力がチャージ用リリーフ弁20で設定したチャージ圧力を下回った場合に開弁し、流路202,203にチャージポンプ11の圧油を補充する。
【0046】
チャージ用チェック弁28a,28bは、流路210,211の圧力がチャージ用リリーフ弁20で設定したチャージ圧力を下回った場合に開弁し、流路210,211にチャージポンプ11の圧油を補充する。
【0047】
チャージ用チェック弁29a,29bは、流路213,214の圧力がチャージ用リリーフ弁20で設定したチャージ圧力を下回った場合に開弁し、流路213,214にチャージポンプ11の圧油を補充する。
【0048】
流路200,201に設けられたリリーフ弁30a,30bは、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をチャージライン212に逃がし回路を保護する。
【0049】
流路202,203に設けられたリリーフ弁31a,31bは、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をチャージライン212に逃がし回路を保護する。
【0050】
アームシリンダ3は、作動油の供給を受けて伸縮作動する片ロッド式油圧シリンダである。アームシリンダ3の伸縮方向は作動油の供給方向に依存する。
【0051】
流路210,211に設けられたリリーフ弁32a,32bは、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をチャージライン212に逃がし回路を保護する。
【0052】
流路210,211に設けられたフラッシング弁34は、流路内の余剰油をチャージライン212に排出する。
【0053】
旋回モータ7は、作動油の供給を受けて回動する油圧モータである。旋回モータ7の回動方向は作動油の供給方向に依存する。
【0054】
流路213,214に設けられたリリーフ弁33a,33bは、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をチャージライン212に逃がし回路を保護する。
【0055】
流路210,211に設けられたフラッシング弁35は、流路内の余剰油をチャージライン212に排出する。
【0056】
流路210に接続された圧力センサ60aは、流路210の圧力を検出し、コントローラ51に入力する。圧力センサ60aは、流路210の圧力を検出することにより、アームシリンダ3のキャップ室3aの圧力を検出する。
【0057】
流路211に接続された圧力センサ60bは、流路211の圧力を検出し、コントローラ51に入力する。圧力センサ60bは、流路211の圧力を検出することにより、アームシリンダ3のロッド室3bの圧力を検出する。
【0058】
流路213に接続された圧力センサ61aは、流路213の圧力を検出し、コントローラ51に入力する。圧力センサ61aは、流路213の圧力を検出することにより、旋回モータ7の一側の入出力ポートの圧力を検出する。
【0059】
流路214に接続された圧力センサ61bは、流路214の圧力を検出し、コントローラ51に入力する。圧力センサ61bは、流路214の圧力を検出することにより、旋回モータ7の他側の入出力ポートの圧力を検出する。
【0060】
レバー52は、オペレータによるレバー操作量をコントローラ51に入力する。
【0061】
図3にコントローラ51の機能ブロックを示す。コントローラ51は、要求速度演算部51a、チャージ圧力演算部51b、アクチュエータ割り当て流量演算部51c、ポンプ信号出力部51d、切換弁信号出力部51e、比例弁信号出力部51f、メータアウト弁信号出力部51gから構成される。
【0062】
要求速度演算部51aは、レバー52の入力から、アクチュエータの動作方向および要求速度を演算し、アクチュエータ割り当て流量演算部51cに制御信号を入力する。
【0063】
チャージ圧力演算部51bは、圧力センサ60a,60b,61a,61bの値を基に、チャージ圧力を演算し、アクチュエータ割り当て流量演算部51cに制御信号を入力する。
【0064】
アクチュエータ割り当て流量演算部51cは、要求速度演算部51aからの制御信号、圧力センサ60a,60b,61a,61bの値、およびチャージ圧力演算部51bからの制御信号を基に、各アクチュエータの駆動に必要なポンプ数を演算し、ポンプ信号出力部51dに制御信号を入力する。同時に、各アクチュエータを駆動するための流路を形成するために、切換弁信号出力部51e、比例弁信号出力部51f、メータアウト弁信号出力部51gに制御信号を入力する。
【0065】
ポンプ信号出力部51dは、アクチュエータ割り当て流量演算部51cからの制御信号を基に、レギュレータ12a~15aに信号を出力する。
【0066】
切換弁信号出力部51eは、アクチュエータ割り当て流量演算部51cからの制御信号を基に、切換弁40~47に信号を出力する。
【0067】
比例弁信号出力部51fは、アクチュエータ割り当て流量演算部51cからの制御信号を基に、比例弁48,49に信号を出力する。
【0068】
メータアウト弁信号出力部51gは、アクチュエータ割り当て流量演算部51cからの制御信号を基に、メータアウト弁50に信号を出力する。
【0069】
図4Aおよび図4Bにアクチュエータ割り当て流量演算部51c内の制御フローを示す。
【0070】
レバー52の入力が開始されると、ステップ111にて単独動作か否かを判定する。単独動作の場合、ステップ112にてアーム操作か否かを判定する。アーム操作の場合、ステップ113にてアームの伸ばし操作か否かを判定する。アーム伸ばし操作の場合、ステップ114にて、閉回路ポンプ12,13、開回路ポンプ14,15の吐出流量を制御する。ステップ115では、切換弁40,42,44,46を開口し、切換弁41,43,45,47を閉口する。ステップ116では、比例弁48,49を閉口し、ステップ117にてフローを終了する。
【0071】
ステップ114~116により、閉回路ポンプ12,13および開回路ポンプ14,15から吐出された作動油がアームシリンダ3のキャップ室3aに供給され、アームシリンダ3のロッド室3bから排出された作動油が閉回路ポンプ12,13に吸収され、アームシリンダ3が伸長動作する。
【0072】
ステップ113にてアーム伸ばし操作ではない(すなわち、アーム縮め操作)と判定した場合、ステップ118にて閉回路ポンプ12,13の吐出流量を制御し、開回路ポンプ14,15の吐出流量を最小傾転に制御する。ステップ119では、切換弁40,42,44,46を開口し、切換弁41,43,45,47を閉口する。ステップ120では、比例弁48,49の開口面積を制御し、ステップ117にてフローを終了する。
【0073】
ステップ118~120により、閉回路ポンプ12,13から吐出された作動油がアームシリンダ3のロッド室3bに供給され、アームシリンダ3のキャップ室3aから排出された作動油の一部が閉回路ポンプ12,13に吸収され、残りの一部が比例弁48,49を介してタンク25に排出され、アームシリンダ3が縮小動作する。
【0074】
ステップ112にてアーム操作ではない(すなわち、旋回単独操作)と判定した場合、ステップ121にて、閉回路ポンプ12,13の吐出流量を制御し、開回路ポンプ14,15の吐出流量を最小傾転に制御する。ステップ122では、切換弁41,43を開口し、切換弁40,42,44,45,46,47を閉口する。ステップ123では、比例弁48,49を微小に開口し、ステップ117にてフローを終了する。
【0075】
ステップ121~123により、閉回路ポンプ12,13から吐出された作動油が旋回モータ7の一側の入出力ポートに供給され、旋回モータ7の他側の入出力ポートから排出された作動油が閉回路ポンプ12,13に吸収され、旋回モータ7が回転動作する。
【0076】
ステップ111にて単独操作ではない(すなわち、複合操作)と判定した場合、ステップ124にてアーム伸ばし操作を含んでいるか否かを判定する。アーム伸ばし操作を含んでいる場合、ステップ125にてチャージ圧力が所定の圧力Pよりも高いか否かを判定する。ここで、所定の圧力Pとは、任意に設定できるチャージ圧力の下限値であり、0よりも大きく、かつチャージ用リリーフ弁20の設定圧未満の値に設定する。より具体的には、チャージ用チェック弁26,27,28a,28b,29a,29bを介して流路200~203,210,211,213,214に圧油を補充する際にキャビテーションが発生しない程度の圧力(例えばチャージ用リリーフ弁20の設定圧の60~90%)に設定することが望ましい。チャージ圧力が所定の圧力Pよりも高い場合、アームシリンダ3のロッド室3bの圧力がキャップ室3aの圧力よりも高いか否かを判定する。ロッド室3bの圧力の方が高いと判定した場合、ステップ127にて閉回路ポンプ12,13、開回路ポンプ14の吐出流量を制御し、開回路ポンプ15の吐出流量を最小傾転に制御する。ステップ128では、切換弁40,43,44,47を開口し、切換弁41,42,45,46を閉口する。ステップ129では、比例弁48を閉口し、比例弁49の開口面積を制御し、ステップ117にてフローを終了する。
【0077】
ステップ127~129により、閉回路ポンプ12および開回路ポンプ14からアームシリンダ3のキャップ室3aに作動油が供給され、アームシリンダ3のロッド室3bから排出された作動油の一部が閉回路ポンプ12に吸収され、残りの一部が比例弁49を介してタンク25に排出され、アームシリンダ3が伸長動作する。同時に、閉回路ポンプ13から旋回モータ7の一側の入出力ポートに作動油が供給され、旋回モータ7の他側の入出力ポートから排出された作動油が閉回路ポンプ13に吸収され、旋回モータ7が回転動作する。このとき、アームシリンダ3の高圧側のロッド室3bの作動油が未使用の開回路ポンプ15に対応する特定の比例弁49を介してタンク25に排出されるため、アームシリンダ3の伸長速度を増速することが可能となる。
【0078】
ステップ126にてロッド室3bの圧力がキャップ室3aの圧力よりも高くないと判定した場合、または、ステップ125にてチャージ圧力が所定の圧力Pよりも高くないと判定した場合、ステップ130にて閉回路ポンプ12,13、開回路ポンプ14の吐出流量を制御し、開回路ポンプ15の吐出流量を最小傾転に制御する。ステップ131では、切換弁40,43,44を開口し、切換弁41,42,45,46,47を閉口する。ステップ132では、比例弁48を閉口し、比例弁49を微小に開口し、ステップ117にてフローを終了する。これにより、閉回路ポンプ12および開回路ポンプ14からアームシリンダ3の低圧側のキャップ室3aに作動油が供給され、アームシリンダ3のロッド室3bから排出された作動油が閉回路ポンプ12に吸収され、アームシリンダ3が伸長動作する。同時に、閉回路ポンプ13から旋回モータ7の一側の入出力ポートに作動油が供給され、旋回モータ7の他側の入出力ポートから排出された作動油が閉回路ポンプ13に吸収され、旋回モータ7が回転動作する。
【0079】
ステップ124にてアーム伸ばし操作を含んでいないと判定した場合、ステップ133にて、閉回路ポンプ12,13の吐出流量を制御し、開回路ポンプ14,15の吐出流量を最小傾転に制御する。ステップ134では、切換弁40,43,44を開口し、切換弁41,42,45,46,47を閉口する。ステップ135では、比例弁48の開口面積を制御し、比例弁49を微小に開口し、ステップ117にてフローを終了する。
【0080】
ステップ133~135により、閉回路ポンプ12からアームシリンダ3のロッド室3bに作動油が供給され、アームシリンダ3のキャップ室3aから排出された作動油の一部が閉回路ポンプ12に吸収され、残りの一部が比例弁48を介してタンク25に排出され、アームシリンダ3が縮小動作する。同時に、閉回路ポンプ13から旋回モータ7の一側の入出力ポートに作動油が供給され、旋回モータ7の他側の入出力ポートから排出された作動油が閉回路ポンプ13に吸収され、旋回モータ7が回転動作する。
【0081】
図5に、図4Aおよび図4Bに示した制御フローを実行した場合の油圧システム300の動作を示す。図5は、アーム操作と旋回操作の2複合操作を行う際の、レバー52の入力、閉回路ポンプ12,13の吐出流量、切換弁40,43の開閉状態、開回路ポンプ14,15の吐出流量、切換弁44,46の開閉状態、比例弁48,49の開度、アームシリンダ3の圧力、旋回モータ7の圧力、アームシリンダ3の速度、旋回モータ7の速度をそれぞれ示している。
【0082】
時刻T1にて、オペレータによりレバー52に対してアーム4を伸ばす操作、上部旋回体102を回動する操作が開始される。レバー52の入力から、要求速度が演算され、要求速度通りに動作するために、閉回路ポンプ12,13の吐出流量が上昇する。閉回路ポンプ12,13の吐出流量をアクチュエータへと導くために、切換弁40,43が開口される。アーム4を伸ばす動作では、アームシリンダ3のキャップ室に作動油を供給し、ロッド室から作動油を排出する。油圧シリンダの受圧面積差による作動油の減少を補うために、開回路ポンプ14の吐出流量を制御する。開回路ポンプ15は最小傾転に保たれている。開回路ポンプ14の吐出する作動油をアクチュエータへと導くために、切換弁44を開口する。アームシリンダ3キャップ側圧力は作動油の供給に伴い上昇する。
【0083】
時刻T2にて、閉回路ポンプ12,13の吐出流量が最大になるが、アームシリンダ3の速度は、要求速度よりも低い。アームシリンダ3の速度を上昇させるためには、アームシリンダ3のロッド室から排出する作動油を増加する必要がある。このとき、アームシリンダ3のロッド室3b内の圧力がキャップ室3a内の圧力よりも高いため、ロッド室3b内の作動油をタンク25に排出することができれば、アームシリンダ3の速度を増速することができる。
【0084】
時刻T2にて切換弁46を開口するとともに、比例弁49の開口面積を制御し、アームシリンダ3のロッド室から排出される作動油を、比例弁49を介してタンク25へと排出する。アームシリンダ3のロッド室から排出する流量が増加することによる、チャージ圧力の低下を防止するため、開回路ポンプ14の吐出流量を増加させる。
【0085】
時刻T3にて開回路ポンプ14の吐出流量が最大になる。開回路ポンプ14による吐出流量を増やすことができないため、比例弁49の開口面積を制御し、チャージ圧力がチャージ下限圧Pを下回らないようにする。
【0086】
時刻T4にて比例弁49の開度を一定にすることで、チャージ圧力が下限圧Pを下回らないように制御する。
【0087】
以上のように制御することで、アームシリンダ3の速度を増加することができるとともに、回路内の作動油の排出流量が増加する場合でも、チャージ圧力が負圧になることを防止することができる。
【0088】
本実施例では、作動油を貯留するタンク25と、両傾転型の油圧ポンプからなる複数の閉回路ポンプ12,13と、複数の閉回路ポンプ12,13と同数の片傾転型の油圧ポンプからなる複数の開回路ポンプ14,15と、少なくとも1つの片ロッド式油圧シリンダ3および少なくとも1つの油圧モータ7を含む複数の油圧アクチュエータ3,7と、複数の油圧アクチュエータ3,7の動作を指示するための操作装置52と、複数の閉回路ポンプ12,13を複数の油圧アクチュエータ3,7に閉回路状に接続する複数の閉回路切換弁40~43と、複数の開回路ポンプ14,15の吐出ポートを片ロッド式油圧シリンダ3のキャップ室3aに接続する複数のキャップ側切換弁44,46と、複数の開回路ポンプ14,15の吐出ポートとタンク25とを接続する流路215,216に設けられた複数の比例弁48,49と、キャップ室3aの圧力を検出するキャップ圧力センサ60aと、片ロッド式油圧シリンダ3のロッド室3bの圧力を検出するロッド圧力センサ60bと、操作装置52、キャップ圧力センサ60a、およびロッド圧力センサ60bからの入力に基づいて、複数の閉回路切換弁40~43および複数のキャップ側切換弁44,46を制御すると共に、複数の閉回路ポンプ12,13および複数の開回路ポンプ14,15の各吐出流量、ならびに複数の比例弁48,49の開口面積を制御するコントローラ51とを備えた建設機械100において、複数の開回路ポンプ14,15の吐出ポートをロッド室3bに接続する複数のロッド側切換弁45,47を備え、コントローラ51は、片ロッド式油圧シリンダ3と油圧モータ7とを同時に駆動する場合に、複数の開回路ポンプ14,15のうち片ロッド式油圧シリンダ3に接続されていない特定の開回路ポンプ15が前記片ロッド式油圧シリンダに接続されるようにキャップ側切換弁46および複数のロッド側切換弁47を制御し、特定の開回路ポンプ15の吐出ポートとタンク25とを接続する流路に設けられた特定の比例弁49の開口面積を制御する。
【0089】
以上のように構成した本実施例によれば、片ロッド式油圧シリンダ3と油圧モータ7とを同時に駆動する場合に、片ロッド式油圧シリンダ3に接続されていない特定の開回路ポンプ15および特定の比例弁49が片ロッド式油圧シリンダ3に接続され、特定の開回路ポンプ15の吐出ポートとタンク25とを接続する流路に設けられた特定の比例弁49の開口面積が制御される。これにより、片ロッド式油圧シリンダ3と油圧モータ7を同時に駆動する際に、未使用の開回路ポンプ15または未使用の比例弁49を用いて片ロッド式油圧シリンダ3の速度を増速することが可能となる。
【0090】
また、本実施例に係る油圧ショベル100は、チャージポンプ11と、チャージポンプ11の吐出ポートに接続されたチャージライン212と、チャージライン212に設けられたチャージ用リリーフ弁20と、チャージライン212の圧力を検出するチャージ圧力センサ62とを更に備え、コントローラ51は、ロッド室3bの圧力がキャップ室3aの圧力より高い状態で片ロッド式油圧シリンダ3を伸び側に駆動すると同時に油圧モータ7を駆動する場合に、特定の開回路ポンプ15がロッド室3bに接続されるようにキャップ側切換弁46およびロッド側切換弁47を制御し、特定の比例弁49を開口し、チャージライン212の圧力がチャージ用リリーフ弁20の設定圧よりも低く設定された所定の圧力Pを下回ったときに、特定の比例弁49の開口面積を縮小させる。これにより、片ロッド式油圧シリンダ3の低圧側のキャップ室3aに開回路ポンプ14から作動油が供給されると共に、チャージライン212の圧力を所定の圧力P以上に保持しつつ、片ロッド式油圧シリンダ3の高圧側のロッド室3bの作動油が未使用の比例弁49を介してタンク25に排出されるため、キャップ室3aが負圧になることを防ぎつつ片ロッド式油圧シリンダ3の伸長速度を増速することが可能となる。
【実施例2】
【0091】
本発明の第2の実施例に係る油圧ショベルについて、図6図8を用いて説明する。
【0092】
図6は、本実施例における油圧システムの概略構成図である。
【0093】
図6において、本実施例における油圧システムは、片ロッド式油圧シリンダ3のキャップ室3aとタンク25とを接続するキャップ側排出流路217と、キャップ側排出流路217に設けられたメータアウト弁50とを更に備えている。
【0094】
図7Aおよび図7Bに、本実施例におけるアクチュエータ割り当て流量演算部51c(図3に示す)の制御フローを示す。
【0095】
レバー52の入力が開始されると、ステップ301にて単独操作か否かを判定する。単独操作の場合、ステップ302にてアーム操作か否かを判定する。アーム操作の場合、ステップ303にてアームの縮め操作か否かを判定する。アーム縮め操作の場合、ステップ304にて閉回路ポンプ12,13の吐出流量を制御し、開回路ポンプ14,15の吐出流量を最小傾転に制御する。ステップ305では、切換弁40,42,44,46を開口し、切換弁41,43,45,47を閉口する。ステップ306では、比例弁48,49の開口面積を制御し、ステップ307にてフローを終了する。
【0096】
ステップ304~306により、閉回路ポンプ12,13からアームシリンダ3のロッド室3bに作動油が供給され、アームシリンダ3のキャップ室3aから排出された作動油の一部が閉回路ポンプ12,13に吸収され、残りの一部が比例弁48,49を介してタンク25に排出され、アームシリンダ3が縮小動作する。
【0097】
ステップ303にてアーム縮め操作ではないと判定した場合、ステップ308にて閉回路ポンプ12,13、開回路ポンプ14,15の吐出流量を制御する。ステップ309では、切換弁40,42,44,46を開口し、切換弁41,43,45,47を閉口する。ステップ310では、比例弁48,49を閉口し、ステップ307にてフローを終了する。
【0098】
ステップ308~310により、閉回路ポンプ12,13および開回路ポンプ14,15から吐出された作動油がアームシリンダ3のキャップ室3aに供給され、アームシリンダ3のロッド室3bから排出された作動油が閉回路ポンプ12,13に吸収され、アームシリンダ3が伸長動作する。
【0099】
ステップ302でアーム操作ではない(すなわち、旋回単独操作)と判定した場合、ステップ311にて、閉回路ポンプ12,13の吐出流量を制御し、開回路ポンプ14,15の吐出流量を最小傾転に制御する。ステップ312では、切換弁41,43を開口し、切換弁40,42,44,45,46,47を閉口する。ステップ313では、比例弁48,49を微小に開口し、ステップ307にてフローを終了する。
【0100】
ステップ311~313により、閉回路ポンプ12,13から吐出された作動油が旋回モータ7の一側の入出力ポートに供給され、旋回モータ7の他側の入出力ポートから排出された作動油が閉回路ポンプ12,13に吸収され、旋回モータ7が回転動作する。
【0101】
ステップ301にて単独操作ではない(すなわち、複合操作)と判定した場合、ステップ314にてアームの縮め操作を含んでいるか否かを判定する。アーム縮め操作を含んでいると判定した場合、ステップ315にてチャージ圧力が所定の圧力Pよりも高いか否かを判定する。ステップ315にてチャージ圧力が所定の圧力Pよりも高いと判定した場合、ステップ316にてアームシリンダ3のキャップ室3aの圧力がロッド室3bの圧力よりも高いか否かを判定する。キャップ室3aの圧力の方が高いと判定した場合、ステップ317にて閉回路ポンプ12,13、開回路ポンプ15の吐出流量を制御し、開回路ポンプ14の吐出流量を最小傾転に制御する。ステップ318では、切換弁40,43,44,47を開口し、切換弁41,42,45,46を閉口する。ステップ319では、比例弁48の開口面積を制御し、比例弁49を閉口する、ステップ320では、メータアウト弁50の開口面積を制御し、ステップ307にてフローを終了する。
【0102】
ステップ317~320により、閉回路ポンプ12および開回路ポンプ15からアームシリンダ3のロッド室3bに作動油が供給され、アームシリンダ3のキャップ室3aから排出された作動油の一部が閉回路ポンプ12に吸収され、残りの一部が比例弁48およびメータアウト弁50を介してタンク25に排出され、アームシリンダ3が縮小動作する。同時に、閉回路ポンプ13から旋回モータ7の一側の入出力ポートに作動油が供給され、旋回モータ7の他側の入出力ポートから排出された作動油が閉回路ポンプ13に吸収され、旋回モータ7が回転動作する。このとき、アームシリンダ3の高圧側のキャップ室3aの作動油が比例弁48およびメータアウト弁50を介してタンク25に排出されると共に、低圧側のロッド室3bに未使用の開回路ポンプ15から作動油が補充されるため、ロッド室3bが負圧になることを防ぎつつアームシリンダ3の縮小速度を増速することが可能となる。
【0103】
ステップ316にてキャップ室3aの圧力がロッド室3bの圧力よりも高くないと判定した場合、または、ステップ315にてチャージ圧力が所定の圧力Pよりも高くないと判定した場合、ステップ322にて閉回路ポンプ12,13の吐出流量を制御し、開回路ポンプ14,15の吐出流量を最小傾転に制御する。ステップ323では、切換弁40,43,44を開口し、切換弁41,42,45,46,47を閉口する。ステップ324では、比例弁48の開口面積を制御し、比例弁49を微小に開口し、ステップ307にてフローを終了する。これにより、閉回路ポンプ12からアームシリンダ3のロッド室3bに作動油が供給され、アームシリンダ3のキャップ室3aから排出された作動油の一部が閉回路ポンプ12に吸収され、残りの一部が比例弁48を介してタンク25に排出され、アームシリンダ3が縮小動作する。同時に、閉回路ポンプ13から旋回モータ7の一側の入出力ポートに作動油が供給され、旋回モータ7の他側の入出力ポートから排出された作動油が閉回路ポンプ13に吸収され、旋回モータ7が回転動作する。
【0104】
ステップ314にてアーム縮め操作を含んでいないと判定した場合、ステップ325にて閉回路ポンプ12,13の吐出流量を制御し、開回路ポンプ14,15の吐出流量を最小傾転に制御する。ステップ326では、切換弁40,43,45を開口し、切換弁41,42,44,45,46,47を閉口する。ステップ327では、比例弁48の開口面積を制御し、比例弁49を微小に閉口し、ステップ307にてフローを終了する。
【0105】
ステップ325~327により、閉回路ポンプ12からアームシリンダ3のキャップ室3aに作動油が供給され、アームシリンダ3のロッド室3bから排出された作動油の一部が閉回路ポンプ12に吸収され、残りの一部が比例弁48を介してタンク25に排出され、アームシリンダ3が伸長動作する。同時に、閉回路ポンプ13から旋回モータ7の一側の入出力ポートに作動油が供給され、旋回モータ7の他側の入出力ポートから排出された作動油が閉回路ポンプ13に吸収され、旋回モータ7が回転動作する。
【0106】
図8図7Aおよび図7Bに示した制御フローを実行した場合の油圧システム300の動作を示す。第1の実施形態と同様に、アーム4と上部旋回体102を同時に動作する複合動作を例に説明する。
【0107】
図8は、アームと旋回動作の2複合操作(アームダンプ、旋回)を行う際の、レバー52の入力、閉回路ポンプ12,13の吐出流量、切換弁40,43の開閉状態、開回路ポンプ14,15の吐出流量、切換弁44,46の開閉状態、比例弁48,49の開度、メータアウト弁50の開度、チャージ圧力、アームシリンダ3の圧力、旋回モータ7の圧力、アームシリンダ3の速度、旋回モータ7の速度をそれぞれ示している。
【0108】
時刻T1にて、オペレータによりレバー52の操作が開始されると、レバー52からの入力に応じて、閉回路ポンプ12,13の吐出流量が増加する。このとき、切換弁40はアームシリンダ3との流路を形成するために、開状態となり、切換弁43は旋回モータ7との流路を形成するために開状態となる。閉回路ポンプ側のこの他の切換弁41,42は閉状態である。アームシリンダ3を縮める動作であるため、開回路ポンプ14は吐出しておらず、切換弁44を開口し、比例弁48の開口面積を制御し、アームシリンダ3から排出される作動油を比例弁48からタンク25へと排出している。旋回モータ7には開回路ポンプ15を使用しないため、吐出流量は最小傾転に制御されており、この開回路ポンプ15の最小吐出流量分の作動油をタンク25に排出するため、比例弁49は微小に開口する。
【0109】
時刻T2にて、閉回路ポンプ12,13の吐出流量が最大になる。この時、アームシリンダ3の速度は、要求速度を満たしていない。アームシリンダ3のキャップ室3aの圧力は、ロッド室3bよりも高圧であるため、アームシリンダ3の速度を上昇させるためには、アームシリンダ3のキャップ室3aから排出する作動油の流量を増やす必要がある。
【0110】
時刻T2で、メータアウト弁50を開口してアームシリンダ3のキャップ室3aとタンク25間に流路を形成し、キャップ室3aからの作動油をタンク25へと排出する。このとき、回路内の作動油が不足し、チャージ圧力が下がることを防ぐために、切換弁47を開口し、開回路ポンプ15からアームシリンダ3のロッド室3bへと作動油を吐出する。
【0111】
本実施例に係る建設機械100は、片ロッド式油圧シリンダ3のキャップ室3aとタンク25とを接続するキャップ側排出流路217と、キャップ側排出流路217に設けられたメータアウト弁50とを更に備え、コントローラ51は、キャップ室3aの圧力がロッド室3bの圧力より高い状態でアームシリンダ3を縮み側に駆動すると同時に旋回モータ7を駆動する場合に、特定の開回路ポンプ15がロッド室3bに接続されるようにキャップ側切換弁46およびロッド側切換弁47を制御し、特定の開回路ポンプ15に対応する特定の比例弁49を閉口し、メータアウト弁50を開口し、チャージライン212の圧力がチャージ用リリーフ弁20の設定圧よりも低く設定された所定の圧力Pを下回ったときに、メータアウト弁50の開口面積を縮小させる、または、特定の開回路ポンプ15の吐出流量を増加させる。
【0112】
以上のように構成した本実施例によれば、チャージライン212の圧力を所定の圧力P以上に保持しつつ、片ロッド式油圧シリンダ3の高圧側のキャップ室3aの作動油が比例弁48およびメータアウト弁50を介してタンク25に排出されると共に、低圧側のロッド室3bに未使用の開回路ポンプ15から作動油が補充されるため、ロッド室3bが負圧になることを防ぎつつ片ロッド式油圧シリンダ3の縮小速度を増速することが可能となる。
【0113】
なお、本実施例では、片ロッド式油圧シリンダ3のキャップ室3aからの排出をメータアウト弁50で行い、開回路ポンプ15の吐出流量を片ロッド式油圧シリンダ3のロッド室3bに導くよう制御したが、メータアウト弁50がない場合には、以下のように構成しても良い。
【0114】
コントローラ51は、キャップ室3aの圧力がロッド室3bの圧力より高い状態で片ロッド式油圧シリンダ3を縮み側に駆動すると同時に油圧モータ7を駆動する場合に、特定の比例弁49がキャップ室3aに接続されるようにキャップ側切換弁46およびロッド側切換弁47を制御し、特定の比例弁49を開口し、チャージライン212の圧力がチャージ用リリーフ弁20の設定圧よりも低く設定された所定の圧力Pを下回ったときに、特定の比例弁49の開口面積を縮小させる。これにより、チャージライン212の圧力を所定の圧力P以上に保持しつつ、片ロッド式油圧シリンダ3の高圧側のキャップ室3aの作動油が未使用の比例弁49を介してタンク25に排出されるため、ロッド室3bが負圧になることを防ぎつつ片ロッド式油圧シリンダ3の縮小速度を増速することが可能となる。
【0115】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。さらに、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0116】
1…ブームシリンダ、2…ブーム、3…アームシリンダ、3a…キャップ室、3b…ロッド室、4…アーム、5…バケットシリンダ、6…バケット、7…旋回モータ、8…走行装置、10…動力伝達装置、11…チャージポンプ、12…閉回路ポンプ、12a…レギュレータ、13…閉回路ポンプ、13a…レギュレータ、14…開回路ポンプ、14a…レギュレータ、15…開回路ポンプ、15a…レギュレータ、20…チャージ用リリーフ弁、25…タンク、26,27,28a,28b,29a,29b…チャージ用チェック弁、30a,30b,31a,31b,32a,32b,33a,33b…リリーフ弁、34,35…フラッシング弁、40~43…閉回路切換弁、44,46…キャップ側切換弁、45,47…ロッド側切換弁、48,49…比例弁、50…メータアウト弁、51…コントローラ、51a…要求速度演算部、51b…チャージ圧力演算部、51c…アクチュエータ割り当て流量演算部、51d…ポンプ信号出力部、51e…切換弁信号出力部、51f…比例弁信号出力部、51g…メータアウト弁信号出力部、52…レバー(操作装置)、60a…圧力センサ(キャップ圧力センサ)、60b…圧力センサ(ロッド圧力センサ)、61a,61b…圧力センサ、62…チャージ圧力センサ、100…油圧ショベル(建設機械)、101…キャブ、102…上部旋回体、103…下部走行体、104…フロント作業機、200~205,210,211…流路、212…流路(チャージライン)、213~216…流路、217…キャップ側排出流路、300…油圧システム。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8