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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】自動運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/16 20200101AFI20230628BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20230628BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20230628BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20230628BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230628BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20230628BHJP
   G08G 1/0968 20060101ALI20230628BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
B60W30/16
B60W30/10
B60W30/09
G01C21/34
G08G1/09 H
G08G1/13
G08G1/0968
B62D6/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019102185
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020196292
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑原 敬祐
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-149254(JP,A)
【文献】特開2015-170095(JP,A)
【文献】特開2017-219925(JP,A)
【文献】特開2017-129980(JP,A)
【文献】特開2017-137001(JP,A)
【文献】特開2003-063273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/16
B60W 30/10
B60W 30/09
G01C 21/34
G08G 1/09
G08G 1/13
G08G 1/0968
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路地図情報を取得する地図情報取得部と、
自車両の現在位置である自車位置を推定する自車位置推定部と、
外部からの操作により目的地の情報を入力するルート情報入力部と、
前記自車両周辺の走行環境情報を取得する走行環境情報取得部と、
前記自車位置推定部で推定した前記自車位置と前記ルート情報入力部から入力された前記目的地とを結ぶ走行ルートを前記地図情報取得部で取得した前記道路地図情報に基づいて設定する走行ルート設定部と、
外部からの通信により前記自車両の前方を走行する先行車又は該自車両の後方を走行する後続車の走行ルートを取得する他車走行ルート取得部と、
自動運転制御部と
を備える自動運転支援装置において、
前記自動運転制御部は、
前記走行ルート設定部で設定した前記走行ルートに対して前記自車両を自動運転させるための目標進行路を生成する目標進行路生成部と、
前記走行環境情報取得部で取得した前記走行環境情報に基づき前記自車両が走行している走行車線に前記先行車又は前記後続車が検出されたか否かを判定する他車両検出判定部と、
前記他車両検出判定部で前記先行車が検出された場合、前記自車両のセット車速と前記先行車の車速との相対車速が所定しきい速度を超えているか否かを判定する相対車速判定部と、
前記相対車速判定部で前記相対車速が前記所定しきい速度を超えていると判定した場合、前記他車走行ルート取得部で取得した前記先行車の走行ルートに基づき該先行車の走行ルートが分岐路方向に設定されているか否かを判定する他車走行ルート判定部と、
前記他車走行ルート判定部で前記先行車の走行ルートが分岐路方向に設定されていると判定した場合、前記自車両は前記先行車を追い越すこと無く、前記目標進行路生成部で生成した目標進行路に沿って前記先行車を追従走行させる自動走行制御部と
前記自車両を隣接車線方向へ操舵制御させる車線変更制御部と
を有し、
前記車線変更制御部が前記自車両を前記隣接車線である追越車線へ車線変更させた後、前記他車両検出判定部が前記自車両に対して後方から接近する前記後続車を検出した場合、
前記他車走行ルート取得部は、前記後続車の走行ルートを取得し、
前記他車走行ルート判定部は、前記他車走行ルート取得部で取得した前記後続車の前記走行ルートに基づき、該走行ルートが分岐路方向に設定されているか否かを判定し、
前記自動走行制御部は、前記他車走行ルート判定部が、前記後続車の前記走行ルートが分岐路方向に設定されていると判定した場合、前記追越車線に設定されている前記目標進行路に沿って前記自車両を走行させる
ことを特徴とする自動運転支援装置。
【請求項2】
前記自動運転制御部は、前記他車走行ルート判定部が、前記先行車の走行ルートが前記分岐路方向に設定されていると判定した場合であって、該先行車が該分岐路に到達するまでの到達距離或いは到達時間が予め設定したしきい値以内と判定した場合、前記目標進行路生成部で生成した目標進行路に沿って前記先行車を追従走行させる
ことを特徴とする請求項1記載の自動運転支援装置。
【請求項3】
記車線変更制御部は、前記先行車前記分岐路方向へ操舵を開始したと推定した場合、該先行車をすり抜ける操舵制御を行う
ことを特徴とする請求項1或いは2記載の自動運転支援装置。
【請求項4】
前記車線変更制御部は、前記先行車が前記分岐路の入口に達した状態を前記先行車の前記分岐路方向への操舵開始と推定する
ことを特徴とする請求項3記載の自動運転支援装置。
【請求項5】
前記車線変更制御部は、前記他車走行ルート判定部が、前記自車両のセット車速と前記先行車の車速との相対車速が所定しきい速度を超えており、且つ、前記先行車の走行ルートが分岐路方向に設定されており、且つ該分岐路までの到達距離或いは到達時間が予め設定したしきい値を超えていると判定した場合、前記自車両を前記隣接車線方向へ操舵制御させる
ことを特徴とする請求項1或いは2記載の自動運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両のセット車速よりも前方を走行する他車両の車速が遅い場合であっても、他車両の走行ルートが分岐路方向へ設定されている場合は、当該他車両を追い越すこと無く、追従させるようにした自動運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されている自動運転支援装置は、GPS衛星を代表とするGNSS((Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)衛星等の測位衛星から受信した位置情報に基づいて高精度道路地図(ダイナミックマップ)に自車位置をマップマッチングさせる。そして、搭乗者(主に運転者)が高精度道路地図上に目的地を設定すると、運転支援ユニットは自車位置と目的地とを結ぶ走行ルートを構築する。
【0003】
その後、自車両を走行ルートに沿って自動走行させるための目標進行路を自車両から数Km先まで設定する。高精度道路地図には自動運転に必要な道路情報が記憶されている。この道路情報は、車線数情報(2車線や3車線等)、道路幅情報、カーブの曲率情報等であり、運転支援ユニットは、高精度道路地図の道路情報に基づき、自車両を、選択した走行車線の中央を走行させる目標進行路を設定する。その際、目標進行路が、本線と他の本線とを接続するジャンクションや本線に接続するインターチェンジ出口等の分岐路方向に設定されている場合、所定タイミングで自車両を分岐路方向へ自動的に車線変更させる車線変更(ALC:Auto Lane Changing)制御が実行される。
【0004】
ところで、自車両前方に、自車両のセット車速よりも遅い先行車が走行している場合、自車両は周知の追従車間距離(ACC:Adaptive Cruise Control)制御により、所定車間を維持した状態で先行車を追従する。しかし、自車両のセット車速と先行車の車速との速度差が大きい場合、運手者の意に反した追従走行となり易い。
【0005】
例えば、特許文献1(特開2003-63273号公報)には、自車両のセット車速に対して先行車の車速が設定車速以下の場合、自動操舵によって隣接する車線へ車線変更して先行車を追い越すようにした技術が開示されている。当該文献に開示されている技術によれば、自動操舵により先行車を追い越すようにしているため、運転者の負担を軽減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-63273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
又、上述した文献に開示されている技術では、先行車を追い越すに際し、隣接する車線に後続車の有無を確認し、後続車が検出された場合は、追い越しを行わずに、追従を継続させるようにしている。
【0008】
ところで、例えば、先行車が前方の分岐路方向へ進行変更をしようとしているような場合、先行車は自車両前方の走行車線から次第に外れていくため、自車両が先行車を追い越すべく自動操舵により車線変更しても、直ぐに進行方向を戻す操舵制御が行われることになり、自車両の走行安定性が損なわれる可能性がある。
【0009】
或いは、先行車が分岐路方向へ進行している状態であっても、自車両の進行路が戻されず、隣接する車線を継続して追越走行している場合には、運転者に違和感を与えてしまうことになる。
【0010】
しかし、先行車が進行路を分岐路方向へ変更しようとしているか否かは、先行車がウインカを点滅させるまで確認することができない。ウインカは分岐路の直前で点滅させる場合が多く、従って、ウインカが点滅した際には、自車両は既に車線変更を開始している場合が多く、上述したような問題を解決することは困難である。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、自動運転による走行において、自車両のセット車速よりも前方を走行する車両の車速が低いために、自車両が当該車両を追い越そうとする場合であっても、前方を走行する車両の走行状態に応じて追従走行を継続させることで、自車両の走行安定を確保し、且つ、運転者に与える違和感を軽減させることのできる自動運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、道路地図情報を取得する地図情報取得部と、自車両の現在位置である自車位置を推定する自車位置推定部と、外部からの操作により目的地の情報を入力するルート情報入力部と、前記自車両周辺の走行環境情報を取得する走行環境情報取得部と、前記自車位置推定部で推定した前記自車位置と前記ルート情報入力部から入力された前記目的地とを結ぶ走行ルートを前記地図情報取得部で取得した前記道路地図情報に基づいて設定する走行ルート設定部と、外部からの通信により前記自車両の前方を走行する先行車又は該自車両の後方を走行する後続車の走行ルートを取得する他車走行ルート取得部と、自動運転制御部とを備える自動運転支援装置において、前記自動運転制御部は、前記走行ルート設定部で設定した前記走行ルートに対して前記自車両を自動運転させるための目標進行路を生成する目標進行路生成部と、前記走行環境情報取得部で取得した前記走行環境情報に基づき前記自車両が走行している走行車線に前記先行車又は前記後続車が検出されたか否かを判定する他車両検出判定部と、前記他車両検出判定部で前記先行車が検出された場合、前記自車両のセット車速と前記先行車の車速との相対車速が所定しきい速度を超えているか否かを判定する相対車速判定部と、前記相対車速判定部で前記相対車速が前記所定しきい速度を超えていると判定した場合、前記他車走行ルート取得部で取得した前記先行車の走行ルートに基づき該先行車の走行ルートが分岐路方向に設定されているか否かを判定する他車走行ルート判定部と、前記他車走行ルート判定部で前記先行車の走行ルートが分岐路方向に設定されていると判定した場合、前記自車両は前記先行車を追い越すこと無く、前記目標進行路生成部で生成した目標進行路に沿って前記先行車を追従走行させる自動走行制御部と、前記自車両を隣接車線方向へ操舵制御させる車線変更制御部とを有し、前記車線変更制御部が前記自車両を前記隣接車線である追越車線へ車線変更させた後、前記他車両検出判定部が前記自車両に対して後方から接近する前記後続車を検出した場合、前記他車走行ルート取得部は、前記後続車の走行ルートを取得し、前記他車走行ルート判定部は、前記他車走行ルート取得部で取得した前記後続車の前記走行ルートに基づき、該走行ルートが分岐路方向に設定されているか否かを判定し、前記自動走行制御部は、前記他車走行ルート判定部が、前記後続車の前記走行ルートが分岐路方向に設定されていると判定した場合、前記追越車線に設定されている前記目標進行路に沿って前記自車両を走行させる
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、現在地から目的地までの走行ルートに対して自車両を自動運転させるための目標進行路を生成し、走行環境情報取得部で取得した走行環境情報に基づいて自車両が走行している走行車線に先行車又は後続車が検出されたか否かを判定し、先行車が検出された場合、自車両のセット車速と先行車の車速との相対車速が所定しきい速度を超えているときは、他車走行ルート取得部で取得した先行車の走行ルートに基づいて,この先行車の走行ルートが分岐路方向に設定されているか否かを判定し、分岐路方向に設定されている場合、自車両は先行車を追い越すこと無く、目標進行路に沿って先行車を追従走行させるようにしたので、無駄な車線変更制御が抑制され、自車両の走行安定を確保することができ、且つ運転者に与える違和感を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】自動運転支援システムの機能ブロック図
図2】運転支援制御ルーチンを示すフローチャート(その1)
図3】運転支援制御ルーチンを示すフローチャート(その2)
図4】運転支援制御ルーチンを示すフローチャート(その3)
図5】先行車の走行ルートと自車両の目標進行路との関係から先行車の追い越しを判定する状態を示す説明図
図6】追越車線を走行中の自車両と後続車との関係から自車両が車線を譲るか否かを判定する状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1に示す自動運転支援システムは、自車両M(図5図6参照)に搭載されている。この自動運転支援システム1は、自車両Mの現在位置(自車位置)を検出するロケータユニット11、自車両M前方の走行環境を認識するカメラユニット21、自車両M周辺の走行環境を監視する周辺監視ユニット22を有しており、この両ユニット21,22が,本発明の走行環境情報取得部としての機能を有している。尚、ロケータユニット11、及びカメラユニット21は一方が不調を来した場合には、他方のユニットで自動運転支援を一時的に継続させる冗長系が構築されている。
【0016】
更に、この自動運転支援システム1は、他車両である先行車P(図5参照、図6ではP1,P2が該当)の走行ルートを車々間通信によって受信する先行車走行ルート受信部23、他車両である後続車F(図6参照)の走行ルートを車々間通信によって受信する後続車走行ルート受信部24、及び自動運転制御部としての自動運転制御ユニット26を有している。尚、この両走行ルート受信部23,24が、本発明の他車走行ルート取得部に対応している。
【0017】
自動運転制御ユニット26は、自動運転が可能な自動運転区間を走行中にロケータユニット11とカメラユニット21とから得られた情報を比較し、現在走行中の道路形状が同一か否かを常時監視し、同一の場合に自動運転を継続させる。
【0018】
ロケータユニット11は道路地図上の自車位置を推定すると共に、この自車位置の周辺、及び前方の道路地図データを取得する。一方、カメラユニット21は自車両Mが走行している車線(自車走行車線)の左右を区画する区画線の中央の道路曲率を求めると共に、この左右区画線の中央を基準とする自車両Mの車幅方向の横位置偏差を検出する。更に、このカメラユニット21は、前方を走行する先行車を代表とする移動体や固定物等の立体物を認識し、識別する。
【0019】
ロケータユニット11は、地図ロケータ演算部12と記憶部としての高精度道路地図データベース16とを有している。この地図ロケータ演算部12、後述する前方走行環境認識部21d、周辺環境認識部22b、及び自動運転制御ユニット26は、CPU,RAM,ROM、不揮発性記憶部等を備える周知のマイクロコンピュータ、及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。
【0020】
この地図ロケータ演算部12の入力側に、GNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)受信機13、自律走行センサ14、及びルート情報入力部15が接続されている。GNSS受信機13は複数の測位衛星から発信される測位信号を受信する。又、自律走行センサ14は、トンネル内走行等GNSS衛星からの受信感度が低く測位信号を有効に受信することのできない環境において、自律走行を可能にするもので、車速センサ、ヨーレートセンサ、及び前後加速度センサ等で構成されている。すなわち、地図ロケータ演算部12は、車速センサで検出した車速、ヨーレートセンサで検出したヨーレート(ヨー角速度)、及び前後加速度センサで検出した前後加速度等に基づき移動距離と方位からローカライゼーションを行う。
【0021】
ルート情報入力部15は、搭乗者(主に運転者)が外部から操作する端末装置である。すなわち、このルート情報入力部15は、目的地や経由地の入力等、地図ロケータ演算部12において走行ルートを設定する際に必要とする一連の情報を集約して入力することができる。更に、このルート情報入力部15にて、自動運転のON/OFFを行うことも可能である。
【0022】
このルート情報入力部15は、具体的には、カーナビゲーションシステムの入力部(例えば、モニタのタッチパネル)、スマートフォン等の携帯端末、パーソナルコンピュータ等であり、地図ロケータ演算部12に対して、有線、或いは無線で接続されている。搭乗者がルート情報入力部15を操作して、目的地や経由地の情報(施設名、住所、電話番号等)の入力を行うと、この入力情報が地図ロケータ演算部12で読込まれる。
【0023】
地図ロケータ演算部12は、目的地や経由地が入力された場合、その位置座標(緯度、経度)を設定する。地図ロケータ演算部12は、自車位置を推定する自車位置推定部としての自車位置推定演算部12a、自車位置推定演算部12aで推定した自車位置を道路地図上にマップマッチングして自車両Mの現在地を特定し、その周辺の環境情報を含む道路地図情報を取得する地図情報取得部12b、自車位置から目的地(及び経由地)までの走行ルートを設定する、走行ルート設定部としての走行ルート設定演算部12cを備えている。
【0024】
又、高精度道路地図データベース16はHDD等の大容量記憶媒体であり、高精度な周知の道路地図情報(ローカルダイナミックマップ)が記憶されている。この高精度道路地図情報は、基盤とする最下層の静的情報階層上に、自動走行をサポートするために必要な付加的地図情報が重畳された階層構造をなしている。静的情報階層は、高精度3次元地図情報であり、道路情報(一般道路、高速道路等)、車線情報(1車線、2車線、3車線、追越禁止区間等)、交差点情報、3次元構造物、及び恒久的な規制情報(制限速度等)等、変化の最も少ない静的な情報が格納されている。
【0025】
一方、付加的地図情報は、3階層に区分されており、下位階層から順に、準静的情報階層、準動的情報階層、動的情報階層を有している。この各階層は時間軸での変化(変動)度合いに応じて区分され、降雨情報等、最も変化が大きく、リアルタイムに更新する必要がある情報は動的情報階層に格納される。又、渋滞情報や事故或いは工事による通行規制等の動的情報程大きく変化しないものは準静的情報階層或いは準動的情報階層に格納される。尚、この付加的地図情報は、自動運転制御ユニット26が目標進行路を生成する際に参照する。
【0026】
上述した地図情報取得部12bは、この高精度道路地図データベース16に格納されている道路地図情報から現在地及び前方の道路地図情報を取得する。
【0027】
自車位置推定演算部12aは、GNSS受信機13で受信した測位信号に基づき自車両Mの現在の位置座標(緯度、経度)を取得し、この位置座標を地図情報上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置(現在位置)を推定する。更に、自車走行車線を特定し、地図情報に記憶されている当該走行車線の道路形状を取得し、逐次記憶させる。
【0028】
更に、自車位置推定演算部12aは、トンネル内走行等のようにGNSS受信機13の感度低下により測位衛星からの有効な測位信号を受信することができない環境では、自律航法に切換え、自律走行センサ14によりローカライゼーションを行う。
【0029】
走行ルート設定演算部12cは、自車位置推定演算部12aで推定した自車位置の位置情報(緯度、経度)と、入力された目的地(及び経由地)の位置情報(緯度、経度)とに基づき、高精度道路地図データベース16に格納されているローカルダイナミックマップを参照する。そして、走行ルート設定演算部12cは、ローカルダイナミックマップ上で、自車位置と目的地(経由地が設定されている場合は、経由地を経由した目的地)とを結ぶ走行ルートを、予め設定されているルート条件(推奨ルート、最速ルート等)に従って構築する。
【0030】
一方、カメラユニット21は、自車両Mの車室内前部の上部中央に固定されており、車幅方向中央を挟んで左右対称な位置に配設されているメインカメラ21a及びサブカメラ21bからなる車載カメラ(ステレオカメラ)と、画像処理ユニット(IPU)21c、及び前方走行環境認識部21dとを有している。このカメラユニット21は、メインカメラ21aで基準画像データを撮像し、サブカメラ21bで比較画像データを撮像する。
【0031】
そして、この両画像データをIPU21cにて所定に画像処理する。前方走行環境認識部21dは、IPU21cで画像処理された基準画像データと比較画像データとを読込み、その視差に基づいて両画像中の同一対象物を認識すると共に、その距離データ(自車両Mから対象物までの距離)を、三角測量の原理を利用して算出して、前方走行環境情報を認識する。
【0032】
この前方走行環境情報には、自車両Mが走行する車線(走行車線)の道路形状(左右を区画する区画線、区画線間中央の道路曲率[1/m]、及び左右区画線間の幅(車線幅))や直前を走行する先行車Pの情報(自車両Mとの車間距離、及び相対車速)等、周知のACC制御や車線維持(ALK:Active Lane Keep))制御等の運転支援を行う際に必要とする各種情報が含まれている。
【0033】
一方、周辺監視ユニット22は、超音波センサ、ミリ波レーダやライダー(LIDAR;Light Detection and Ranging)等からなる周辺環境認識センサ22a、及びこの周辺環境認識センサ22aからの信号に基づいて自車両M周辺の移動体情報を認識する周辺環境認識部22bを有している。周辺環境認識センサ22aは自車両M周辺の移動体(併走車、後続車等)を検出するもので、移動体が後続車の場合は、自車両Mとの車間距離、及び相対車速を検出する。
【0034】
又、自動運転制御ユニット26の入力側に、上述したカメラユニット21の前方走行環境認識部21d、周辺監視ユニット22の周辺環境認識部22b、先行車走行ルート受信部23、及び後続車走行ルート受信部24が接続されている。更に、自動運転制御ユニット26は、地図ロケータ演算部12と車内通信回線(例えばCAN:Controller Area Network)を通じて双方向通信自在に接続されている。
【0035】
又、自動運転制御ユニット26の出力側に、自車両Mを走行ルートに沿って走行させる操舵制御部31、強制ブレーキにより自車両Mを減速させるブレーキ制御部32、自車両Mの車速を制御する加減速制御部33、及びモニタ、スピーカ等の報知装置34が接続されている。
【0036】
自動運転制御ユニット26は、自動運転区間において、操舵制御部31、ブレーキ制御部32、加減速制御部33を所定に制御して、GNSS受信機13で受信した自車位置を示す測位信号に基づき、自車両Mを、走行ルート設定演算部12cで構築した走行ルート上に設定した自動運転のための目標進行路に沿って自動走行させる。その際、前方走行環境認識部21dで認識した前方走行環境に基づき、周知のACC制御、及びALK制御により、制限速度内のセット車速(運転者がセットした車速)で走行させる。又、先行車Pが検出された場合は、先行車Pに対し、所定車間距離を維持した状態で追従走行させる。
【0037】
ところで、自動運転時におけるACC制御では、自車両M前方の目標進行路上に先行車Pが検出されても、先行車Pの車速(先行車速度)が自車両Mのセット車速を超えていれば、自車両Mは先行車Pに対して追従することなく、セット車速で走行させる。一方、上述したように先行車速度が自車両Mのセット車速よりも低い場合、所定車間距離に達した後は、追従走行となる。その際、自動運転制御ユニット26は、相対車速(セット車速-先行車速度)が所定車速以上の場合、速度差が大きいため、先行車を追い越す追越制御を実行させる。
【0038】
しかし、自車両Mの目標進行路が直進方向に設定されている場合であっても、先行車Pが分岐路方向へ進行路を変更するために減速していると考えられる場合、一旦、追越制御を実行させても直ぐに元の車線に戻す制御を行うことになる。そのため、追従走行を継続させた方が走行安定性を保持することができる。同様に、自車両Mの目標進行路が分岐路方向に設定されている場合、先行車を追い越した後、直ちに自車両Mの進路を変更させる制御が必要となる。従って、この場合も追従走行を継続させた方が走行安定性を保持することができる。
【0039】
そのため、本実施形態の自動運転制御ユニット26は、先行車走行ルート受信部23において車々間通信を通じて取得した、先行車Pの走行ルート(先行車走行ルート)に基づき、当該先行車走行ルートが分岐路方向へ設定されているか、直進方向かを調べ、分岐路方向へ設定されている場合は、追越制御を実行させることなく追従走行を継続させる。
【0040】
自動運転制御ユニット26で実行される追越制御は、具体的には、図2図4に示す運転支援制御ルーチンにおいて行われる。
【0041】
このルーチンは,自動運転がON、且つ、自車両Mが自動運転区間を走行中であって、ロケータユニット11とカメラユニット21とから得られた情報から現在走行中の道路形状が同一と判定した場合に起動する。
【0042】
そして、先ず、ステップS1において、地図ロケータ演算部12の走行ルート設定演算部12cで構築した走行ルート(自車走行ルート)を読込み、ステップS2で、自車両Mを自車走行ルートに沿って走行させるための目標進行路を、地図データベース16に記憶されているローカルダイナミックマップの付加的地図情報に基づいて数Km先まで生成する。目標進行路として設定する項目は、自車両Mを走行させる車線(例えば、車線が3車線の場合に何れの車線を走行させるか)、目標進行路が分岐路方向へ設定されている場合の車線変更のタイミング等である。尚、このステップS2での処理が、本発明の目標進行路生成部に対応している。
【0043】
次いで、ステップS3へ進み、自車両M前方(例えば、1~2[Km]以内)の目標進行路が追越車線(図5参照)に設定されているか否かを調べる。そして、走行車線(図5に示す3車線においては、第1車線、或いは第2車線)に設定されている場合は、ステップS4へ進み、又、追越車線に設定されている場合は、ステップS16へ分岐する。
【0044】
目標進行路が追越車線方向に設定されてないと判定されてステップS4へ進むと、自車両M前方所定距離(数百m以内)に先行車Pが認識されているか否かを、カメラユニット21の前方走行環境認識部21dに認識した前方走行環境に基づいて調べる。そして、先行車Pを検出していない場合はルーチンを抜け、現在の走行車線に設定された目標進行路に沿って自車両Mを自動走行させる。尚、このステップS4での処理、及び後述するステップS18での処理が,本発明の他車両検出判定部に対応している。
【0045】
一方、先行車Pを自車両Mの前方数百m以内に認識した場合、ステップS5へ進み、ステップS5~S13で、先行車Pを追い越すか否かの判定を行う。先ず、ステップS5では、自車両Mに設定した制限速度内のセット車速Vsetと、カメラユニット21の前方走行環境認識部21dで認識した前方走行環境に基づいて求めた先行車Pの車速(自車速Vmに車間距離Lkの変化に基づいて求めた相対車速を加算した値)Vpとの相対車速(Vset-Vp)と、判定しきい値Voとを比較する。この判定しきい値Voは、運転者が自車両Mの車速(自車速)を減速させて先行車Pに追従させても、不快感を抱かない速度であり、予め実験等で求めた固定値(例えば、5~10[Km/h]程度)であっても良いが、運転者が設定する可変値であっても良い。
【0046】
そして、Vset-Vp>Voの場合は、相対車速が大きいと判定してステップS6へ進む。又、Vset-Vp≦Voの場合は、相対車速が小さいため追従走行すべく,ステップS15へジャンプする。尚,このステップS5での処理が、本発明の相対車速判定部に対応している。
【0047】
又、ステップS6へ進むと、カメラユニット21で認識した先行車の情報に基づき求めた、自車両Mと先行車Pとの間の車間距離Lkが、予め設定した車線変更開始車間距離Lkoに達したか否かを調べる。この車線変更開始車間距離Lkoは車線変更を開始する車間距離であり、自車両Mの車速(自車速)Vmに基づき、自車速Vmが高いほど長い距離に設定される。
【0048】
そして、Lk≧Lkoの場合、未だ車線変更開始タイミングに到達していなと判断し、ステップS15へジャンプする。一方、Lk<Lkoの場合、車線変更開始タイミングに到達したと判定し、ステップS7へ進む。ステップS7では、自車両M前方の目標進行路が分岐路方向へ設定されているか否かを調べる。そして、目標進行路が分岐路方向(図5の目標進行路(1))に設定されている場合は,ステップS8へ進む。又、目標進行路が直進方向(図5の目標進行路(2))に設定されている場合は、ステップS9へジャンプする。
【0049】
ステップS8へ進むと、自車両Mから分岐点L0までの距離(分岐点到達距離)Lm(図5参照)を、自車位置とダイナミックマップの付加的地図情報とに基づいて調べ、この分岐点到達距離)Lmと分岐点到達判定しきい距離Lmo1とを比較する。尚、分岐点L0は本線と分岐路との接続部である分岐路入口に設定されている。
【0050】
この分岐点到達判定しきい距離Lmo1は、自車両Mが先行車Pを追い越した場合に、分岐点方向への進行路の変更が急ハンドルになるなど走行安定性が損なわれる可能性のある距離であり、予め実験等に基づいて求められる。そして、Lm≦Lmoの場合、車線変更は困難と判定し、ステップS15へジャンプする。又、Lm>Lmoの場合、車線変更可能と判定し、ステップS9へ進む。
【0051】
ステップS7或いはステップS8からステップS9へ進むと、先行車Pのナビゲーションシステムに設定されている走行ルート(先行車走行ルート)を、車々間通信を通じて取得する。そして、ステップS10へ進み、先行車走行ルートが分岐路方向に設定されているか否かを調べ、分岐路方向へ設定されている場合は(図5の先行車走行ルート(1))、ステップS11へ分岐する。又、先行車走行ルートが直進方向に設定されている場合は(図5の先行車走行ルート(2))、ステップS13へ進む。
【0052】
ステップS11へ進むと、先行車走行ルートに基づいて先行車Pから分岐点L0までの距離(分岐点到達距離)Lpを求め、この分岐点到達距離Lpと分岐点到達判定しきい距離Lpoとを比較する。この分岐点到達判定しきい距離Lpoは、自車両Mが先行車Pを追い越しても、先行車Pが直ぐに分岐路方向へ進行路を変更するため、先行車Pを追従走行させた方が走行安定性を確保できると判定できる距離(例えば、1000~500[m])である。そして、Lp>Lpoの場合、車線変更可能と判定し、ステップS13へ進む。又、Lp≦Lpoの場合、ステップS12へ進む。
【0053】
ステップS12では、先行車Pの分岐路方向への操舵開始のタイミングを推定する。尚、本実施形態では、先行車Pが分岐点L0を基準に操舵開始のタイミングを推定している。
【0054】
そして、Lp≦0の場合、操舵開始タイミングに達したと推定し、ステップS13へ進む。又、Lp>0の場合は、車線変更の必要なしと判定し、ステップS15へジャンプする。尚、上述したステップS5,S6,S10~S12、及び後述するステップS24,S25での処理が,本発明の他車走行ルート判定部に対応している。
【0055】
ステップS10~S12の何れかからステップS13へ進むと、隣接車線への車線変更が可能か否かを、カメラユニット21の前方走行環境認識部21dで認識した隣接車線の前方走行環境,及び周辺監視ユニット22の周辺環境認識部22bで認識した移動体情報に基づき、車線変更しようとする隣接車線に、直前走行車、並走車や予め設定した距離以内に後続車が認識されているか否かを調べる。この予め設定した距離は、自車両Mが車線変更するに際し、後続車の走行を阻害することのない充分な距離であり、予め実験等に基づいて設定されている。
【0056】
そして、直前走行車、並走車や設定距離以内に後続車が認識されている場合は、隣接車線への車線変更が困難と判定し、ステップS15へジャンプする。又、直前走行車、並走車や設定距離以内に後続車が認識されない場合は、隣接車線への車線変更が可能で判定し、ステップS14へ進む。ステップS14では、自動車線変更(ALC:Auto Lane Changing)制御を実行してステップS15へ進む。ALC制御が実行されると、先ず、車線変更する側のウインカを点滅させ、所定時間(例えば、3[sec])経過後に、自動的に操舵操作が開始され、所定時間内に車線変更が行われる。そして、隣接車線への車線変更が完了した後、ステップS15へ進む。
【0057】
又、このステップS14では、上述したステップS12で先行車Pが分岐点L0を通過したと判定した場合(Lp≦0)、先行車Pは分岐路方向への操舵を開始すると推定し、ALC制御は、ウインカを所定時間点滅させ、その後、操舵操作を行う。その際、ALC制御では、隣接車線への完全な車線変更を行わず、僅かな操舵操作により先行車をすり抜けるような走行制御を行う。すなわち、先行車Pは分岐路方向へ操舵しているため、現在の走行車線を僅かにはみ出した程度の追い越しが可能となり、運転者の運転感覚に適合した操舵制御を得ることができる。尚、このステップS14、及び後述するステップS28での処理が、本発明の車線変更制御部に対応している。
【0058】
ステップS4~S6、ステップS8,ステップS11,ステップS13或いはステップS14からステップS15へ進むと、自車両Mを目標進行路に沿って自動走行させて、ルーチンを抜ける。ステップS15では、各制御部31~33を制御動作させて、自車両Mを目標進行路に沿って自動走行させる。尚、上述したステップS14,S28とステップS15での処理が、本発明の自動走行制御部に対応している。
【0059】
その際、ステップS14において、ALC制御により車線変更した場合は、ステップS15では、車線変更した隣接車線上に目標進行路が暫定的に設定され,自車両Mは先行車Pを追い越した後、上述したステップS2で目標進行路が再構築される。
【0060】
このように、本実施形態では、自車両Mのセット車速Vsetと先行車Pの車速Vとの相対車速(Vset-Vp)が判定しきい値Voを超えていると判定した場合であっても、先行車P或いは自車両Mが、前方の所定距離以内で分岐路方向へ進行路を変更すると判定した場合は、ALC制御実行せずに、目標進行路に沿って先行車Pを追従するようにしたので、自車両Mの走行安定を確保することができる。更に、無駄なALC制御が抑制されるため、運転者に与える違和感を軽減させることができる。
【0061】
一方、上述したステップS3で目標進行路が追越車線方向へ設定されていると判定されて、ステップS16へ分岐すると、追越車線へ車線変更可能か否かを調べる。車線変更が可能か否かは、例えば、自車両Mが車線変更タイミングに達したか否か、周辺監視ユニット22で取得した周辺環境情報に基づき,自車両Mから所定距離の範囲内に追越車線を走行する後続車が認識されたか否かで判定する。そして、車線変更タイミングに達しておらず、或いは、車線変更タイミングに達した場合であっても、追越車線に並走車を認識し、或いは追越車線の所定距離範囲に後続車を認識した場合は、追い越し不可と判定し、ステップS4へ戻る。
【0062】
又、車線変更タイミングに達し、且つ,追越車線に、直前走行車、並走車や所定距離範囲に後続車が認識されない場合は、車線変更可能と判定し、ステップS17へ進む。ステップS17では、ALC制御を実行する。尚、ALC制御については、ステップS14において既述したので説明を省略する。そして、追越車線への車線変更が完了した後、ステップS18へ進む。
【0063】
ステップS18では、周辺監視ユニット22の周辺環境認識センサ22aで取得し、周辺環境認識部22bで認識した周辺環境情報に基づき、追越車線において後方から接近する後続車Fの有無を調べる。後続車が接近しているか否かは車間距離の時間的変化に基づいて判定する。後続車の接近を自車両Mと後続車Fとの相対車速で判定することも可能ではあるが、相対車速が0[Km/h]で追従された場合、接近しているか否かを正確に判定することができない。
【0064】
そして、接近する後続車ありと判定した場合は、ステップS19へ進む。又、接近する後続車が検出されない場合は、ステップS4へ戻り、追越車線を走行中における先行車認識を行う。
【0065】
ステップS19へ進むと、後続車Fと自車両Mとの車間距離Lsと接近判定しきい距離Lsoとを比較する。この接近判定しきい距離Lsoは、後続車Fが自車両Mに接近した際に、後続車Fが車線変更を行うであろうと予想される距離であり、予め実験等に基づいて設定されている。尚、この接近判定しきい距離Lsoは固定値でも良いが、自車両M、或いは後続車Fの車速に基づき、車速が高いほど長い距離に設定する可変値であっても良い。
【0066】
そして、Ls≧Lsoの場合、後続車Fは未だ遠方にあると判定し、ステップS15へ戻り、追越車線に設定されている目標進行路の走行を継続してルーチンを抜ける。
【0067】
一方、Ls<Lsoの場合、後続車Fが自車両Mに接近していると判定し、ステップS20で接近時間Timをインクリメントし(Tim←Tim+1)、ステップS21で、接近時間Timと設定時間Timoとを比較する。この設定時間Timoは、後続車Fが自車両Mに接近した場合に、後続車Fが自ら車線変更するか否かを判定する時間であり、予め実験に基づいて求めた固定値であっても良いが,後続車Fと自車両Mとの相対車速に基づいて設定する可変値であっても良い。
【0068】
そして、Tim<Timoの場合は、ステップS19へ戻り、又、Tim≧Timoの場合は設定時間Timoが経過しても後続車Fが車線変更をしないため、ステップS22へ進み、自車両Mが走行車線へ車線変更するか否か、換言すれば、自車両Mが後続車Fに進行路をゆずるか否の判定を行う。
【0069】
先ず、ステップS22では、自車両Mの目標進行路が分岐路方向に設定されているか否かを調べる。そして、目標進行路が直進の場合は、ステップS24へジャンプする。又、目標進行路が分岐路方向に設定されている場合は,ステップS23へ進む。
【0070】
ステップS23では、自車両Mと分岐路の分岐点L0までの距離(分岐点到達距離)Lm(図6参照)を、自車位置とダイナミックマップの付加的地図情報とに基づいて調べ、この分岐点到達距離Lmと車線変更開始距離Lmo2とを比較する。この車線変更開始距離Lmo2は、自車両Mを追越車線から分岐路方向へ進行させるために車線変更を開始するに必要な距離であり、予め実験等に基づいて設定されている。
【0071】
例えば、図6に示すように、道路が3車線であり、追越車線を走行している自車両Mが分岐路方向へ車線変更しようとした場合、先ず、追越車線から第2走行車線、第1走行車線へ車線変更する必要があり、各走行車線へ車線変更するに際しては、ウインカを所定時間点滅させた後、車線変更する。上述した車線変更開始距離Lmo2は、このような車線変更に必要な距離に、各走行路での余裕距離を加えた値に設定されている。従って、車線変更開始距離Lmo2は、道路の車線数によって可変される。
【0072】
そして、Lm>Lmoの場合、車線変更タイミングに達していないため、ステップS25へ進む。又、Lm≦Lmoの場合、車線変更タイミングに達したため、ステップS15へジャンプし、予め設定されている目標進行路に沿って走行させる。
【0073】
そして、ステップS22、或いはステップS23からステップS24へ進むと、後続車Fのナビゲーションシステムに設定されている走行ルート(後続車走行ルート)を、車々間通信を通じて取得する。次いで、ステップS25へ進み、後続車走行ルートが分岐路方向へ設定されているか否かを調べる。そして、後続車走行ルートが分岐路方向へ設定されている場合は、ステップS26へ分岐する。又、後続車走行ルートが直進方向に設定されている場合は、ステップS27へ進む。
【0074】
ステップS26へ進むと、後続車走行ルートに基づいて後続車Fから分岐点L0までの距離(分岐点到達距離)Lfを求め、この分岐点到達距離Lfと車線変更開始距離Lfoとを比較する。この車線変更開始距離Lfoは、後続車Fを分岐路方向へ進行させるために行うであろうと推定される距離であり、予め実験等に基づいて求められている。
【0075】
そして、Lf>Lfoの場合、後続車Fは追越車線を直進すると推定し、ステップS27へ進む。又、Lf≦Lfoの場合、後続車Fは車線変更を開始すると推定し、ステップS15へ戻り、自車両Mを目標進行路に沿って走行させて、ルーチンを抜ける。
【0076】
又、ステップS25、或いはステップS26からステップS27へ進むと、自車両Mを隣接車線(図6では第2走行車線)に車線変更させて、追越車線を後続車Fのために開ける、いわゆる車線ゆずりを行うべく、隣接車線への車線変更が可能か否かを調べる。隣接車線への車線変更が可能か否かは、カメラユニット21の前方走行環境認識部21dで認識した隣接車線の前方走行環境,及び周辺監視ユニット22の周辺環境認識部22bで認識した移動体情報に基づき、隣接車線に、直前走行車、並走車や予め設定した距離以内に後続車が認識されているか否かを調べる。この予め設定した距離は、自車両Mが車線変更するに際し、後続車の走行を阻害することのない充分な距離であり、予め実験等に基づいて設定されている。
【0077】
そして、車線変更しようとする車線に直前走行車、並走車や予め設定した距離以内に後続車が認識されている場合は、隣接車線への車線変更が困難と判定し、ステップS15へ戻り、追越車線に設定されている目標進行路に沿って自車両Mを走行させる。一方、車線変更しようとする車線に上述した車両が認識されない場合は、隣接車線への車線変更が可能と判定し、ステップS28へ進む。
【0078】
ステップS28では、ALC制御を実行してステップS15へ進む。ALC制御については、ステップS14において既述したので省略する。隣接車線に車線変更した場合、当該走行車線に目標進行路が暫定的に設定され、次のルーチン実行時にステップS2にて、目標進行路が新たに構築される。
【0079】
ところで、自車両Mが追越車線を走行している際に、接近する後続車Fが検出されない場合、プログラムは、ステップS18からステップS4へ戻り、前方を走行する先行車Pを検出する。
【0080】
従って、例えば、図6に示すように、自車両Mが第2走行車線を走行中に,前方を走行する先行車P1を追い越すために追越車線へ車線変更した際に、当該追越車線に別の先行車P2を検出した場合、当該先行車P2を対象としてステップS5~S14の処理が実行される。従って、ステップS14では、追越車線に隣接する走行車線(図6では、第2走行車線)へ車線変更するALC制御が実行される。
【0081】
このように、本実施形態では、自車両Mが追越車線を走行中に、接近する後続車Fを検出した場合、後続車Fの後続車走行ルートを読込み、後続車走行ルートが分岐路方向に設定されている場合、後続車Fは自車両Mに接近する前に車線変更すると推定し、自車両Mは、車線ゆずりを行わず追越車線を継続的に走行させるようにしたので、走行安定を確保することができるばかりでなく、無駄なALC制御が抑制されるため運転者に与える違和感を軽減させることができる。
【0082】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば,走行する道路が2車線、或いは4車線以上であっても、本実施形態を適用できることは言うまでもない。
【0083】
又、各分岐点到達距離Lm,Lp,Lfは分岐点到達時間であっても良く、この場合、各分岐点到達判定しきい距離Lmo1,Lpo、及び車線変更開始距離Lmo2,Lfoは、分岐点到達判定しきい時間Lmo1,Lpo、及び車線変更開始時間Lmo2,Lfoとなる。
【符号の説明】
【0084】
1…自動運転支援システム、
11…ロケータユニット、
12…地図ロケータ演算部、
12a…自車位置推定演算部、
12b…地図情報取得部、
12c…走行ルート設定演算部、
13…GNSS受信機、
14…自律走行センサ、
15…ルート情報入力部、
16…高精度道路地図データベース、
21…カメラユニット、
21a…メインカメラ、
21b…サブカメラ、
21c…画像処理ユニット(IPU)、
21d…前方走行環境認識部、
22…周辺監視ユニット、
22a…周辺環境認識センサ、
22b…周辺環境認識部、
23…先行車走行ルート受信部、
24…後続車走行ルート受信部、
26…自動運転制御ユニット、
31…操舵制御部、
32…ブレーキ制御部、
33…加減速制御部、
34…報知装置、
L0…分岐点、
Lf,Lm,Lp…分岐点到達距離(分岐点到達時間)、
Lfo,Lmo2…車線変更開始距離(車線変更開始時間)、
Lk,Ls…車間距離、
Lko…車線変更開始車間距離、
Lmo1,Lpo…分岐点到達判定しきい距離(分岐点到達判定しきい時間)、
Lso…接近判定しきい距離、
M…自車両、
P,P1,P2…先行車、
Tim…接近時間、
Timo…設定時間、
Vm…自車速、
Vo…判定しきい値、
Vp…先行車の車速、
Vset…セット車速
図1
図2
図3
図4
図5
図6