(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】車両の自動運転支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/12 20200101AFI20230628BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20230628BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20230628BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
B60W30/12
G01C21/34
G08G1/0969
G09B29/10 A
(21)【出願番号】P 2019136010
(22)【出願日】2019-07-24
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 雅人
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-165184(JP,A)
【文献】特開2003-035541(JP,A)
【文献】国際公開第2019/043831(WO,A1)
【文献】特開2000-018956(JP,A)
【文献】特開2006-266865(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008321(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0148327(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/12
G01C 21/34
G08G 1/0969
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路地図情報を記憶する地図情報記憶部と、
自車両の現在位置である自車位置を推定する自車位置推定部と、
外部からの操作により目的地の情報を入力するルート情報入力部と、
前記自車位置推定部で推定した前記自車位置と前記ルート情報入力部から入力された前記目的地とを結ぶ走行ルートを前記地図情報記憶部に記憶されている前記道路地図情報に基づいて設定する走行ルート設定部と、
前記走行ルート設定部で設定した前記走行ルートに対して前記自車両を自動運転させるための目標経路を走行車線の中央に設定する目標経路設定部と、
前記目標経路設定部で設定した前記目標経路と一致するように前記自車両の横位置を制御しながら自動運転を実施する自動運転制御部と
を備える車両の自動運転支援装置において、
前記目標経路が設定されている前記走行車線の道路状況を取得する道路状況取得部を更に有し、
前記自動運転制御部は、
前記目標経路設定部で設定した前記目標経路が二股に分岐された分岐車線の一方に設定されているか否かを判定する分岐車線判定部と、
前記分岐車線判定部で前記目標経路が二股に分岐された前記分岐車線の一方に設定されていると判定した場合、本線と前記分岐車線とを繋ぐ分流車線の車線幅に応じて、前記目標経路が設定されている前記分岐車線側に、前記目標経路に対する前記自車両の車幅方向中心の横位置変化量を算出する目標経路横位置変化量算出部と
を有し、
前記目標経路横位置変化量算出部は、
前記目標経路設定部で設定した前記目標経路が前記本線側の前記分岐車線方向に設定されているか否かを判定する目標経路判定部と、
前記目標経路判定部で前記目標経路が前記本線側の前記分岐車線方向に設定されていると判定した場合、前記目標経路からの前記横位置変化量を、前記自車両の車幅方向中心までの長さに、前記分流車線の入口での初期値を最小値とし、該分流車線の入口から前記分岐車線の入口に達するに従い、前記自車両の車幅中央が前記分流車線の車線幅の1/4となる値に設定される横位置補正量を加算して設定する第1横位置変化量算出部と
を更に有し、
前記目標経路設定部は、前記目標経路を前記目標経路横位置変化量算出部
の前記第1横位置変化量算出部で
設定した前記横位置変化量で補正して新たな目標経路を設定する
ことを特徴とする車両の自動運転支援装置。
【請求項2】
道路地図情報を記憶する地図情報記憶部と、
自車両の現在位置である自車位置を推定する自車位置推定部と、
外部からの操作により目的地の情報を入力するルート情報入力部と、
前記自車位置推定部で推定した前記自車位置と前記ルート情報入力部から入力された前記目的地とを結ぶ走行ルートを前記地図情報記憶部に記憶されている前記道路地図情報に基づいて設定する走行ルート設定部と、
前記走行ルート設定部で設定した前記走行ルートに対して前記自車両を自動運転させるための目標経路を走行車線の中央に設定する目標経路設定部と、
前記目標経路設定部で設定した前記目標経路と一致するように前記自車両の横位置を制御しながら自動運転を実施する自動運転制御部と
を備える車両の自動運転支援装置において、
前記目標経路が設定されている前記走行車線の道路状況を取得する道路状況取得部を更に有し、
前記自動運転制御部は、
前記目標経路設定部で設定した前記目標経路が二股に分岐された分岐車線の一方に設定されているか否かを判定する分岐車線判定部と、
前記分岐車線判定部で前記目標経路が二股に分岐された前記分岐車線の一方に設定されていると判定した場合、本線と前記分岐車線とを繋ぐ分流車線の車線幅に応じて、前記目標経路が設定されている前記分岐車線側に、前記目標経路に対する前記自車両の車幅方向中心の横位置変化量を算出する目標経路横位置変化量算出部と
を有し、
前記目標経路横位置変化量算出部は、
前記目標経路設定部で設定した前記目標経路が
前記本線側の前記分岐車線方向に設定されているか否かを判定する目標経路判定部と、
前記目標経路判定部で前記目標経路が
前記本線とは反対側の路壁側の前記分岐車線方向に設定されていると判定した場合、前記分
流車線の車線幅の1/4の位置に前記横位置変化量を設定する第2横位置変化量算出部と
を更に有
し、
前記目標経路設定部は、前記目標経路を前記目標経路横位置変化量算出部の前記第2横位置変化量算出部で設定した前記横位置変化量で補正して新たな目標経路を設定する
ことを特徴とす
る車両の自動運転支援装置。
【請求項3】
道路地図情報を記憶する地図情報記憶部と、
自車両の現在位置である自車位置を推定する自車位置推定部と、
外部からの操作により目的地の情報を入力するルート情報入力部と、
前記自車位置推定部で推定した前記自車位置と前記ルート情報入力部から入力された前記目的地とを結ぶ走行ルートを前記地図情報記憶部に記憶されている前記道路地図情報に基づいて設定する走行ルート設定部と、
前記走行ルート設定部で設定した前記走行ルートに対して前記自車両を自動運転させるための目標経路を走行車線の中央に設定する目標経路設定部と、
前記目標経路設定部で設定した前記目標経路と一致するように前記自車両の横位置を制御しながら自動運転を実施する自動運転制御部と
を備える車両の自動運転支援装置において、
前記目標経路が設定されている前記走行車線の道路状況を取得する道路状況取得部を更に有し、
前記自動運転制御部は、
前記目標経路設定部で設定した前記目標経路が二股に分岐された分岐車線の一方に設定されているか否かを判定する分岐車線判定部と、
前記分岐車線判定部で前記目標経路が二股に分岐された前記分岐車線の一方に設定されていると判定した場合、本線と前記分岐車線とを繋ぐ分流車線の車線幅に応じて、前記目標経路が設定されている前記分岐車線側に、前記目標経路に対する前記自車両の車幅方向中心の横位置変化量を算出する目標経路横位置変化量算出部と
を有し、
前記目標経路横位置変化量算出部は、
前記分流車線の車線幅の1/2から前記自車両の
車幅を減算した余裕幅と予め設定した余裕幅判定値とを比較する分岐車線幅判定部と、
前記目標経路設定部で設定した前記目標経路が
前記本線側の前記分岐車線方向に設定されているか否かを判定する目標経路判定部と、
前記分岐車線幅判定部で前記余裕幅が前記余裕幅判定値よりも狭いと判定し、且つ、前記目標経路判定部で前記目標経路が
前記本線とは反対側の路壁側の前記分岐車線方向に設定されていると判定した場合、
路壁から予め設定した横位置補正量に前記自車両の車幅の1/2を加算した値から、前記分流車線の車線幅の1/2を減算して前記横位置変化量を算出する第3横位置変化量算出部と
を更に有し、
前記目標経路設定部は、前記目標経路を前記目標経路横位置変化量算出部の前記第3横位置変化量算出部で算出した前記横位置変化量で補正して新たな目標経路を設定する
ことを特徴とする車両の自動運転支援装置。
【請求項4】
前記目標経路横位置変化量算出部は、
前記自車両が、前記目標経路が設定されている前記分岐車線に近接するに従い、該自車両の車幅中央を該分岐車線に設定されている前記目標経路と一致させる前記横位置変化量を設定する過渡横位置変化量設定部を更に有する
ことを特徴とする請求項1~
3の何れか1項に記載の車両の自動運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両を自動で走行させる目標経路が、2車線が明確に区分されていない分流車線を経て、二股に分岐されている分岐車線の一方に設定されている場合、この分流車線をスムーズに通過させて一方の分岐車線に進入させるようにした車両の自動運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両に搭載されている自動運転支援装置は、GPS衛星を代表とするGNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)衛星等の測位衛星から受信した位置情報に基づいて高精度道路地図(ダイナミックマップ)に自車位置をマップマッチングさせる。そして、搭乗者(主に運転者)が高精度道路地図上に目的地を設定すると、自動運転支援装置は自車位置と目的地とを結ぶ走行ルートを構築する。
【0003】
その後、自車両を走行ルートに沿って自動走行させるための目標経路を、自車両前方の走行ルートに沿って所定距離先まで求める。走行ルートが、本線と他の本線とを接続するジャンクションや、本線に接続するインターチェンジ出口等の分岐車線方向に設定されている場合、目標経路も当該走行ルートに沿って設定される。
【0004】
従来の自動運転支援装置において、分岐車線方向に設定される目標経路は、例えば、特許文献1(特開2018-77087号公報)に開示されているように、カメラによって撮像された画像に基づき走行車線(分岐車線)を認識し、認識した走行車線の中央に設定するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本線に接続する分岐車線が、更に二股に分岐されて、それぞれが異なる他の本線等に接続されている場合、本線と分岐車線との間に分流車線が設けられる。この分流車線は、自車両が本線から分流車線に進入し、この分流車線の途中から目的とする分岐車線の方向へ容易に進路変更させることができるように設けられている。
【0007】
従って、この分流車線は、通常の1車線よりも車線幅が広く、しかも、二股に分岐された分岐車線に誘導する区画線は、走行途中での進路変更を容易にするため、明確に描画されてはいない。上述した文献に開示されている技術では、目標経路を走行車線の中央に設定するようにしているため、分流車線に設定される目標経路も、その中央に設定されることになる。
【0008】
しかし、上述したように、分流車線の車線幅は通常の1車線よりも広く、更に、二股に分岐された分岐車線に誘導する区画線が明確に描画されていなので、一つの車線幅として捕らえられるため、その中央に目標経路が設定される。その結果、従来の自動運転支援装置では、分流車線から二股に分かれた分岐車線の一方へ自車両を進行させるに際し、各分岐車線の区画線が認識されるまで、分流車線の中央を走行しているため、分岐車線に進入するに際し、急な進路変更により走行安定性が損なわれる不都合がある。
【0009】
又、運転者や搭乗者の想定する走行ルートと異なる走行になるため、運転者や搭乗者に不快感を与えてしまう。更に、自車両が進行しようとする分岐車線とは異なる方向の分岐車線へ進もうとする後続車の進行を阻害する可能性もある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、本線と二股に分岐されている分岐車線とが分流車線を介して繋がっており、この分流車線に、分岐車線方向へ導く区画線が明確に描画されていない場合であっても、分流車線に適切な目標経路を設定することができ、分流車線から分岐車線に進入する際の走行性能が安定すると共に、運転者を含む搭乗者の意思に沿った走行状態を得ることができ、しかも、自車両とは異なる分岐車線へ進もうとする後続車の進行を阻害することのない車両の自動運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、道路地図情報を記憶する地図情報記憶部と、自車両の現在位置である自車位置を推定する自車位置推定部と、外部からの操作により目的地の情報を入力するルート情報入力部と、前記自車位置推定部で推定した前記自車位置と前記ルート情報入力部から入力された前記目的地とを結ぶ走行ルートを前記地図情報記憶部に記憶されている前記道路地図情報に基づいて設定する走行ルート設定部と、前記走行ルート設定部で設定した前記走行ルートに対して前記自車両を自動運転させるための目標経路を走行車線の中央に設定する目標経路設定部と、前記目標経路設定部で設定した前記目標経路と一致するように前記自車両の横位置を制御しながら自動運転を実施する自動運転制御部とを備える車両の自動運転支援装置において、前記目標経路が設定されている前記走行車線の道路状況を取得する道路状況取得部を更に有し、前記自動運転制御部は、前記目標経路設定部で設定した前記目標経路が二股に分岐された分岐車線の一方に設定されているか否かを判定する分岐車線判定部と、前記分岐車線判定部で前記目標経路が二股に分岐された前記分岐車線の一方に設定されていると判定した場合、本線と前記分岐車線とを繋ぐ分流車線の車線幅に応じて、前記目標経路が設定されている前記分岐車線側に、前記目標経路に対する前記自車両の車幅方向中心の横位置変化量を算出する目標経路横位置変化量算出部とを有し、前記目標経路横位置変化量算出部は、前記目標経路設定部で設定した前記目標経路が前記本線側の前記分岐車線方向に設定されているか否かを判定する目標経路判定部と、前記目標経路判定部で前記目標経路が前記本線側の前記分岐車線方向に設定されていると判定した場合、前記目標経路からの前記横位置変化量を、前記自車両の車幅方向中心までの長さに、前記分流車線の入口での初期値を最小値とし、該分流車線の入口から前記分岐車線の入口に達するに従い、前記自車両の車幅中央が前記分流車線の車線幅の1/4となる値に設定される横位置補正量を加算して設定する第1横位置変化量算出部とを更に有し、前記目標経路設定部は、前記目標経路を前記目標経路横位置変化量算出部の前記第1横位置変化量算出部で設定した前記横位置変化量で補正して新たな目標経路を設定する。
本発明の一態様は、道路地図情報を記憶する地図情報記憶部と、自車両の現在位置である自車位置を推定する自車位置推定部と、外部からの操作により目的地の情報を入力するルート情報入力部と、前記自車位置推定部で推定した前記自車位置と前記ルート情報入力部から入力された前記目的地とを結ぶ走行ルートを前記地図情報記憶部に記憶されている前記道路地図情報に基づいて設定する走行ルート設定部と、前記走行ルート設定部で設定した前記走行ルートに対して前記自車両を自動運転させるための目標経路を走行車線の中央に設定する目標経路設定部と、前記目標経路設定部で設定した前記目標経路と一致するように前記自車両の横位置を制御しながら自動運転を実施する自動運転制御部とを備える車両の自動運転支援装置において、前記目標経路が設定されている前記走行車線の道路状況を取得する道路状況取得部を更に有し、前記自動運転制御部は、前記目標経路設定部で設定した前記目標経路が二股に分岐された分岐車線の一方に設定されているか否かを判定する分岐車線判定部と、前記分岐車線判定部で前記目標経路が二股に分岐された前記分岐車線の一方に設定されていると判定した場合、本線と前記分岐車線とを繋ぐ分流車線の車線幅に応じて、前記目標経路が設定されている前記分岐車線側に、前記目標経路に対する前記自車両の車幅方向中心の横位置変化量を算出する目標経路横位置変化量算出部とを有し、前記目標経路横位置変化量算出部は、前記目標経路設定部で設定した前記目標経路が前記本線側の前記分岐車線方向に設定されているか否かを判定する目標経路判定部と、前記目標経路判定部で前記目標経路が前記本線とは反対側の路壁側の前記分岐車線方向に設定されていると判定した場合、前記分流車線の車線幅の1/4の位置に前記横位置変化量を設定する第2横位置変化量算出部とを更に有し、前記目標経路設定部は、前記目標経路を前記目標経路横位置変化量算出部の前記第2横位置変化量算出部で設定した前記横位置変化量で補正して新たな目標経路を設定する。
本発明の一態様は、道路地図情報を記憶する地図情報記憶部と、自車両の現在位置である自車位置を推定する自車位置推定部と、外部からの操作により目的地の情報を入力するルート情報入力部と、前記自車位置推定部で推定した前記自車位置と前記ルート情報入力部から入力された前記目的地とを結ぶ走行ルートを前記地図情報記憶部に記憶されている前記道路地図情報に基づいて設定する走行ルート設定部と、前記走行ルート設定部で設定した前記走行ルートに対して前記自車両を自動運転させるための目標経路を走行車線の中央に設定する目標経路設定部と、前記目標経路設定部で設定した前記目標経路と一致するように前記自車両の横位置を制御しながら自動運転を実施する自動運転制御部とを備える車両の自動運転支援装置において、前記目標経路が設定されている前記走行車線の道路状況を取得する道路状況取得部を更に有し、前記自動運転制御部は、前記目標経路設定部で設定した前記目標経路が二股に分岐された分岐車線の一方に設定されているか否かを判定する分岐車線判定部と、前記分岐車線判定部で前記目標経路が二股に分岐された前記分岐車線の一方に設定されていると判定した場合、本線と前記分岐車線とを繋ぐ分流車線の車線幅に応じて、前記目標経路が設定されている前記分岐車線側に、前記目標経路に対する前記自車両の車幅方向中心の横位置変化量を算出する目標経路横位置変化量算出部とを有し、前記目標経路横位置変化量算出部は、前記分流車線の車線幅の1/2から前記自車両の車幅を減算した余裕幅と予め設定した余裕幅判定値とを比較する分岐車線幅判定部と、前記目標経路設定部で設定した前記目標経路が前記本線側の前記分岐車線方向に設定されているか否かを判定する目標経路判定部と、前記分岐車線幅判定部で前記余裕幅が前記余裕幅判定値よりも狭いと判定し、且つ、前記目標経路判定部で前記目標経路が前記本線とは反対側の路壁側の前記分岐車線方向に設定されていると判定した場合、路壁から予め設定した横位置補正量に前記自車両の車幅の1/2を加算した値から、前記分流車線の車線幅の1/2を減算して前記横位置変化量を算出する第3横位置変化量算出部とを更に有し、前記目標経路設定部は、前記目標経路を前記目標経路横位置変化量算出部の前記第3横位置変化量算出部で算出した前記横位置変化量で補正して新たな目標経路を設定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自車両を自動運転させるための目標経路が、二股に分岐された分岐車線の一方に設定されている場合、本線と分岐車線とを繋ぐ分流車線の車線幅に応じて、目標経路が設定されている分岐車線側に、目標経路に対する前記自車両の車幅方向中心の横位置変化量を算出し、この横位置変化量で目標経路を補正して新たな目標経路を設定するようにしたので、分流車線に、分岐車線方向へ導く区画線が明確に描画されていない場合であっても、分流車線に適切な目標経路を設定することができ、分流車線から分岐車線へ安定した走行性能で進入させることができる。その結果、運転者を含む搭乗者の意思に沿った走行状態を得ることができる。更に、分岐車線に適切な目標経路が設定されるため、自車両とは異なる方向の分岐車線へ進もうとする後続車の進行を阻害することもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】目標経路横位置変化量算出ルーチンを示すフローチャート
【
図4】目標経路横位置変化量算出サブルーチンを示すフローチャート
【
図5】(a)は目標経路が本線側の分岐車線に設定されている場合に車線幅の広い分流車線の走行状態を示す説明図、(b)は目標経路が路壁側の分岐車線に設定されている場合に車線幅の広い分流車線の走行状態を示す説明図
【
図6】(a)は
図5(a)における分流車線での目標経路の設定状態を示す説明図、(b)は
図5(b)における分流車線での目標経路の設定状態を示す説明図
【
図7】分岐車線の入口までの距離に応じて設定される目標経路からの本線側横位置補正量を示す特性図
【
図8】(a)は目標経路が本線側の分岐車線に設定されている場合に車線幅の狭い分流車線の走行状態を示す説明図、(b)は目標経路が路壁側の分岐車線に設定されている場合に車線幅の狭い分流車線の走行状態を示す説明図
【
図9】(a)は
図8(a)における分流車線での目標経路の設定状態を示す説明図、(b)は
図8(b)における分流車線での目標経路の設定状態を示す説明図
【
図10】車線幅の狭い分流車線から分岐車線へ進行する際の目標経路の補正を例示し、(a)は本線側の分岐車線方向へ目標経路を補正する状態を示す説明図、(b)は路壁側の分岐車線方向へ目標経路を補正する状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図1の符号1は自動運転を実施するための自動運転支援装置であり、自車両M(
図5、
図8参照)に搭載されている。この自動運転支援装置1は、ロケータユニット11とカメラユニット21と自動運転制御部としての自動運転制御ユニット26とを備えている。
【0015】
ロケータユニット11は、地図ロケータ演算部12と地図情報記憶部としての高精度道路地図データベース16とを有している。この地図ロケータ演算部12、後述する前方走行環境認識部21d、及び自動運転制御ユニット26は、CPU,RAM,ROM、不揮発性記憶部等を備える周知のマイクロコンピュータ、及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。
【0016】
この地図ロケータ演算部12の入力側に、GNSS受信機13、自律走行センサ14、及びルート情報入力部としてのルート情報入力装置15が接続されている。GNSS受信機13は複数の測位衛星から発信される測位信号を受信する。又、自律走行センサ14は、トンネル内走行等GNSS衛生からの受信感度が低く測位信号を有効に受信することのできない環境において、自律走行を可能にするもので、車速センサ、ヨーレートセンサ、及び前後加速度センサ等で構成されている。
【0017】
地図ロケータ演算部12は、車速センサで検出した車速、ヨーレートセンサで検出したヨーレート(ヨー角速度)、及び前後加速度センサで検出した前後加速度等に基づき移動距離と方位からローカライゼーションを行う。
【0018】
ルート情報入力装置15は、運転者や搭乗者が操作する端末装置である。このルート情報入力装置15は、目的地や経由地(高速道路のサービスエリア等)の設定等、地図ロケータ演算部12において走行ルートを設定する際に必要とする一連の情報を集約して入力することができる。
【0019】
このルート情報入力装置15は、具体的には、カーナビゲーションシステムの入力部(例えば、モニタのタッチパネル)、スマートフォン等の携帯端末、パーソナルコンピュータ等であり、地図ロケータ演算部12に対して、有線、或いは無線で接続されている。
【0020】
運転者や搭乗者がルート情報入力装置15を操作して、目的地や経由地の情報(施設名、住所、電話番号等)を入力すると、この入力情報が地図ロケータ演算部12で読込まれる。
【0021】
地図ロケータ演算部12は、目的地や経由地が入力された場合、その位置座標(緯度、経度)を設定する。地図ロケータ演算部12は、自車両Mの現在位置である自車位置を推定する自車位置推定部としての自車位置推定演算部12a、自車位置から目的地(及び経由地)までの走行ルートを設定する走行ルート設定部としての走行ルート設定演算部12bを備えている。
【0022】
又、高精度道路地図データベース16はHDD等の大容量記憶媒体であり、高精度な周知の道路地図情報(ローカルダイナミックマップ)が記憶されている。この高精度道路地図情報は、基盤とする最下層の静的情報階層上に、自動走行をサポートするために必要な付加的地図情報が重畳された階層構造をなしている。
【0023】
この静的情報には、道路の種別(一般道路、高速道路等)、道路形状、左右区画線、高速道路やバイパス道路等の出口、高速道路の本線からジャンクションやサービスエリアに繋がる分岐車線、及び、この分岐車線が更に二股に分岐されている場合に本線と分岐車線とを繋ぐ分流車線の入出口、及びその区間長や車線幅などの道路状況を示すデータが含まれている。又、付加的情報としては渋滞情報や事故或いは工事による通行規制等の時々刻々と変化する動的情報が含まれている。
【0024】
自車位置推定演算部12aは、GNSS受信機13で受信した測位信号に基づき自車両Mの現在の位置座標(緯度、経度)を取得し、この位置座標を地図情報上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置(現在位置)を推定する。又、当該地位情報から高精度道路地図上の走行車線を特定して当該走行車線の道路形状を取得し、不揮発性記憶部に逐次記憶させる。更に、自車位置推定演算部12aは、トンネル内走行等のようにGNSS受信機13の感度低下により測位衛星からの有効な測位信号を受信することができない環境では、自律航法に切換え、自律走行センサ14からの情報に基づいてローカライゼーションを行う。
【0025】
走行ルート設定演算部12bは、自車位置推定演算部12aで推定した自車位置の位置情報(緯度、経度)と、入力された目的地(及び経由地)の位置情報(緯度、経度)とに基づき、高精度道路地図データベース16に格納されているローカルダイナミックマップを参照する。そして、走行ルート設定演算部12bは、ローカルダイナミックマップ上で、自車位置と目的地(経由地が設定されている場合は、経由地を経由した目的地)とを結ぶ走行ルートを、予め設定されているルート条件(推奨ルート、最速ルート等)に従って構築する。
【0026】
一方、カメラユニット21は、自車両Mの車室内前部の上部中央に固定されており、車幅方向の中央(車幅中央)を挟んで左右対称な位置に配設されているメインカメラ21a及びサブカメラ21bからなる車載カメラ(ステレオカメラ)と、画像処理ユニット(IPU)21c、及び前方走行環境認識部21dとを有している。このカメラユニット21は、メインカメラ21aで基準画像データを撮像し、サブカメラ21bで比較画像データを撮像する。
【0027】
そして、この両画像データをIPU21cにて所定に画像処理する。前方走行環境認識部21dは、IPU21cで画像処理された基準画像データと比較画像データとを読込み、その視差に基づいて両画像中の同一対象物を認識すると共に、その距離データ(自車両Mから対象物までの距離)を、三角測量の原理を利用して算出して、前方走行環境情報を認識する。
【0028】
この前方走行環境情報には、自車両Mが走行する車線(走行車線)の道路形状(左右を区画する区画線、区画線間中央の道路曲率[1/m]、及び左右区画線間の幅(車線幅))、高速道路やバイパス道路等の出口、ジャンクション等の分岐車線、及びこの分岐車線と本線との間を繋ぐ分流車線の区画線間の車線幅、交差点、横断歩道、信号機、道路標識、及び路壁側障害物(電柱、電信柱、駐車車両等)が含まれる。
【0029】
又、自動運転制御ユニット26は、入力側にカメラユニット21の前方走行環境認識部21dが接続されていると共に、地図ロケータ演算部12と車内通信回線(例えばCAN:Controller Area Network)を通じて双方向通信自在に接続されている。更に、この自動運転制御ユニット26の出力側に、自車両Mを、後述する目標経路に沿って自動運転させるための車両制御系として、自車両Mの進行方向を制御する操舵制御部31、強制ブレーキにより自車両Mを減速させるブレーキ制御部32、自車両Mの車速を制御する加減速制御部33が接続されている。又、この自動運転制御ユニット26の出力側に、自動運転に関する情報を運転者に報知するモニタ、スピーカ等の報知装置34も接続されている。
【0030】
自動運転制御ユニット26は、走行ルート設定演算部12bで設定した走行ルートに、自動運転制御が許可された自動運転区間(例えば、高速道路)が設定されている場合、当該自動運転区間に自動運転を行うための目標経路を設定する。そして、自動運転区間においては、GNSS受信機13で受信した自車位置を示す測位信号に基づき、自車両Mの横位置が目標経路と一致するように、操舵制御部31、ブレーキ制御部32、加減速制御部33を所定に制御して自動運転を実施する。
【0031】
その際、前方走行環境認識部21dで認識した前方走行環境に基づき、周知の追従車間距離制御(ACC:Adaptive Cruise Control)、及び車線維持(ALK:Active Lane Keep)制御により、先行車が検出された場合は先行車に追従し、先行車が検出されない場合は制限速度内のセット車速で自車両Mを走行させる。又、目標経路が、本線から分岐する分岐車線側に設定されており、本線から分岐車線方向へ車線変更するに際しては、周知の自動車線変更(ALC:Auto Lane Changing)制御が実行される。このALC制御では、先ず、自車両Mを分岐車線が接続されている側の走行車線(
図5、
図8では第1車線)に車線変更させ、次いで、所定タイミングで自車両Mを、分岐車線の方向へ自動的に車線変更させる。
【0032】
ところで、
図5、或いは
図8に示すように、分岐車線が先方で更に二股に分岐されている場合は、本線と分岐車線との間が分流車線で繋がれている。この分流車線は、第1車線から車線変更した車両が、一方の分岐車線の方向へスムーズに進行できるようにするためのものであり、各分岐車線の方向へ導く区画線は明確に描画されていない。又、分流車線の車線幅も、
図5に示すように2台の車両が併走できる比較的広い場合もあるし、
図8に示すように、2台が併走できない比較的狭い場合もある。
【0033】
この分流車線の車線幅は、ダイナミックマップの静的情報に記憶されている場合は、当該静的情報から取得する。或いは、カメラユニット21で撮像した走行環境情報から分流車線の情報を取得するようにしても良い。
【0034】
目標経路を車線幅の中央に設定している従来のものでは、2台の車両が併走できる車線幅の広い分流車線であっても、分流車線の車線幅の中央を目標経路に設定するようになり、運転者の想定している走行ルートと異なるため、違和感を覚えさせてしまう。又、自車両Mの進行方向とは異なる分岐車線方向へ進もうとする後続車の進行を阻害することにもなる。
【0035】
そのため、自動運転制御ユニット26は、分流車線に設定されている目標経路を車線幅に応じて最適な横位置に変化させて、自車両Mが進行する分岐車線方向へ連続させるようにした。この自動運転制御ユニット26で設定する分流車線での目標経路の横位置変化は、具体的には、
図3に示す目標経路横位置変化量算出ルーチンにおいて求められる。
【0036】
図3に示すルーチンについて説明する前に、
図2に示す目標経路設定ルーチンに基づいて目標経路を設定する処理について簡単に説明する。尚、この目標経路設定ルーチンでは、走行ルート上に目標経路を設定するが、走行ルート設定演算部12bで設定する走行ルートは、道路状況に応じて時々刻々と変化するため、このルーチンは、所定演算周期毎に繰り返し実行することで、最新の走行ルートを取得する。
【0037】
図示しない自動運転スイッチをONすると、
図2に示すルーチンが起動し、ステップS1で、地図ロケータ演算部12の走行ルート設定演算部12bで設定した走行ルートを読込む。次いで、ステップS2へ進み、走行ルートが設定されているか否かを調べ、未だ設定されていない場合は、そのままルーチンを抜ける。
【0038】
一方、走行ルートが設定されている場合は、ステップS3へ進み、設定されている走行ルート上に、自動運転制御により自車両Mを進行させるための目標経路を設定してルーチンを抜ける。その際、目標経路横位置変化量算出ルーチンで算出した目標経路の横位置を修正する横位置変化量(オフセット量)WOFFSETを読込み、オフセット量WOFFSETが算出されている場合、ステップS3では、目標経路をオフセット量WOFFSETで補正して、新たな目標経路を設定する。尚、このステップS3での処理が、本発明の目標経路設定部に対応している。
【0039】
そして、自動運転制御ユニット26は、ステップS3で設定した目標経路に自車両Mの横位置を一致させるべく、各制御部31~33を所定に制御動作させて自動運転を実施する。
【0040】
ステップS3で設定する目標経路は自車両Mから所定距離先(例えば、3~5[Km])まで設定するもので、自車両Mが走行する車線(走行車線)の中央に設定される。又、この目標経路は、自車両Mを、走行ルートに沿って運転者の操作によらず自動的に走行させるために必要な制御条件も設定する。この制御条件としては、走行車線(2車線であれば、第1走行車線、第2走行車線)の何れの中央を走行させるか、分岐車線(或いは分流車線)方向に目標経路が設定されている場合は、車線変更させる際の開始タイミング等がある。
【0041】
尚、走行ルートが自動運転区間以外の場合は、自動運転制御ルーチン自体が起動せず、運転者は、カーナビゲーションシステムのモニタに表示された走行ルートに沿って手動運転を行う。その際、直進方向の走行では、周知のACC制御とALK制御による運転支援制御が実行される。
【0042】
上述したステップS3で設定した目標経路は、
図3に示す目標経路横位置変化量算出ルーチンで読込まれる。このルーチンは、
図2に示す自動運転制御ルーチンにおいて目標経路が設定された後に、所定演算周期毎に実行される。又、このルーチンでは、目標経路が分岐車線方向に設定されており、この分岐車線が本線と分
流車線を介して繋がれている場合に、分流車線に設定されている目標経路の横位置を、自車両Mの進行方向と分流車線の車線幅とに応じて修正する横位置変化量(オフセット量)を設定する。尚、以下においては、便宜的に、本線が2車線で、第1車線に分岐車線が接続されている態様で説明する。
【0043】
即ち、先ず、ステップS11で目標経路を読込み、ステップS12へ進み、この目標経路が分岐方向へ設定されているか否かを調べる。そして、目標経路が分岐方向へ設定されている場合は、ステップS13へ進む。又、目標経路が直進方向の場合はルーチンを抜ける。
【0044】
ステップS13へ進むと、自車両Mの現在位置から分岐車線側への入口である分岐点P1(
図5、
図8参照)までの距離(分流車線到達距離)Ldと車線変更タイミング距離L1とを比較する。この車線変更タイミング距離L1は、自車両Mを本線の第1車線から分岐方向への車線変更を開始する距離(70~100[m]程度)である。
【0045】
そして、Ld≧L1の場合は、未だ、車線変更のタイミングに達していないため、そのままルーチンを抜ける。又、Ld<L1の場合は、車線変更のタイミングに達したと判定し、ステップS14へ進む。尚、自車両Mが車線変更のタイミングに達すると、自動運転制御ユニット26は、周知のALC制御により車線変更を開始し、自車両Mを本線の第1車線から分岐方向へ車線変更させる。
【0046】
ステップS14へ進むと、分岐先の分岐車線は二股に分岐されているか否かを、ダイナミックマップの静的情報を参照して調べる。そして、分岐車線が分岐されていない場合は、分流車線は設けられていないため、ルーチンを抜ける。一方、分岐車線が二股に分岐されている場合、本線と分岐車線とは分流車線を介して繋がっていると判定し、ステップS15へ進む。尚、ステップS12,S14での処理が、本発明の分岐車線判定部に対応している。
【0047】
ステップS15では、分流車線の車線幅(分流車線幅)WLANEと横位置変化量算出判定値W1とを比較する。この横位置変化量算出判定値W1は横位置変化量(オフセット量)を算出する必要があるか否かを判定する値であり、通常の1車線の車線幅(3~4[m]程度)に対応している。
【0048】
又、分流車線幅WLANEは、路壁側と本線側とに描画された区画線間の距離であり、ダイナミックマップの静的情報から取得する。従って、この静的情報が本発明の道路状況取得部に対応している。或いは、カメラユニット21で撮像した走行環境情報から区画線間を認識することができる場合は、その情報に基づいて分流車線幅WLANEを求めるようにしてもよい。この場合、カメラユニット21が、本発明の道路状況取得部に対応する。
【0049】
そして、WLANE≦W1の場合、横位置変化量を求める必要が無いのでルーチンを抜ける。その結果、
図2のステップS3で求めた、車線中央に設定した目標経路が適用される。
【0050】
又、WLANE>W1の場合は、ステップS16へ進む。ステップS16では、分流車線上に設定されている目標経路の横位置を補正する横位置変化量(オフセット量)WOFFSETを算出する。尚、目標経路は分流車線幅の中央(WLANE/2)に設定されており、オフセット量WOFFSETは目標経路を基準(WOFFSET=0)とする横位置変化量となる。この場合、本実施形態では、目標経路から車線側のオフセット量WOFFSETを正値(プラス)とし、路壁側のオフセット量WOFFSETを負値(マイナス)として表す。又、このステップS16での処理が、本発明の目標経路横位置変化量算出部に対応している。
【0051】
この横位置変化量は、
図4に示す目標経路横位置変化量算出サブルーチンで算出される。このサブルーチンでは、先ず、ステップS21で、分流車線が2台の車両を併走させることのできる車線幅を有しているか否かを、分流車線幅WLANEと車両の車幅との関係から調べる。尚、本実施形態では、自車両Mを乗用車とし、車幅Wcarを1.8[m]程度に設定しているが、これに限定されるものではない。又、このステップS21での処理が、本発明の分岐車線幅判定部に対応している。
【0052】
そこで、先ず、分流車線幅WLANEを2車線に分割して、1車線当たりの車線幅(WLANE/2)を求め、この車線幅(WLANE/2)から車幅Wcarを減算して、分流車線に対する自車両Mの余裕幅((WLANE/2)-Wcar)を求める。そして、この余裕幅と余裕幅判定値W2(0.2~0.5[m]程度)と比較する。
【0053】
そして、(WLANE/2)-Wcar>W2の場合は併走可能と判定し、ステップS22へ進む。又、(WLANE/2)-Wcar≦W2の場合は併走するスペースが無いと判定し、ステップS23へ分岐する。
【0054】
ステップS22へ進むと、目標経路が設定されている分岐車線は、本線側か否かを調べる。そして、本線側に設定されている場合は、ステップS24へ進む。又、目標経路が本線とは反対の路壁側に設定されている場合は、ステップS25へ分岐する。尚、このステップS22、及び後述するステップS23での処理が、本発明の目標経路判定部に対応している。
【0055】
ステップS24へ進むと、本線側の分岐車線へ進行させるためのオフセット量WOFFSETを、
WOFFSET←(Wcar/2)+Xp1
から算出して(
図6(a)参照)、ステップS28へ進む。ここで、Wcar/2は自車両Mの車幅中央、Xp1は本線側横位置補正量である。尚、このステップS24での処理が、本発明の第1横位置変化量算出部に対応している。
【0056】
この本線側横位置補正量Xp1は、自車両Mが分岐車線の入口である分岐点P2に到達するまでの距離(分岐車線到達距離)Lbに基づいて設定する可変値である。尚、本実施形態では、
図5、
図8に示すように、この分岐点P2を、分岐車線を区画する区画線の描画が開始された位置に設定している。これは区画線が描画されている位置では、目標経路が分岐車線の中央に設定されるからである。又、分岐点P1-P2の区間を分流車線として設定している。
【0057】
図5(a)に示すように、目標経路が本線側の分岐車線上に設定されている場合、例えば、手動運転により自車両Mを運転する運転者は、本線側に沿って自車両Mを走行させようとする。その際、自車両Mに近接する、本線の第1車線を走行する後続車Fを検出した場合、当該後続車Fが自車両Mの前方に割り込むことが予測される。そのため、運転者は自車両Mを意識的に中央寄りに移動させて走行する。又、後続車Fが割込をする可能性は分岐車線到達距離Lbが短くなるに従い低くなる。
【0058】
従って、
図7に示すように、この本線側横位置補正量Xp1は、分岐点P1における初期値を最小値とし、分岐点P2に到達した際に、自車両Mの車幅中央(Wcar/2)が分流車線幅WLANEの1/4となる値に設定される。この場合、分流車線の区間(P1-P2)は、道路毎に異なるが、
図7に示すように、分岐点P1,P2における本線側横位置補正量Xp1の値を固定値とすれば、その間を結ぶ線の傾きを設定することで、分岐車線到達距離Lbに応じた適正な本線側横位置補正量Xp1を得ることができる。
【0059】
又、ステップS22からステップS25へ分岐すると、路壁側の分岐車線へ進行させるためのオフセット量WOFFSETを、
WOFFSET←-WLANE/4
から算出して(
図6(b)参照)、ステップS28へ進む。路壁側の分岐車線に進入する場合、自車両Mを路壁側に沿って走行させるが、後続車が本線側から自車両Mの前方に割り込む可能性は低いと考えられるため、分流車線幅WLANEの半分の中央(WLANE/4)を走行させる。尚、このステップS25での処理が、本発明の第2横位置変化量算出部に対応している。
【0060】
一方、ステップS21からステップS23へ分岐すると、目標経路が設定されている分岐車線は、本線側か否かを調べる。そして、本線側に設定されている場合は、ステップS26へ進む。又、目標経路が路壁側に設定されている場合は、ステップS27へ分岐する。
【0061】
ステップS26へ進むと、オフセット量WOFFSETを0、即ち、
図8(a)、
図9(a)に示すように、目標経路をオフセットすることなく、ステップS28へ進む。従って、このステップS26での処理は省略しても良い。
【0062】
又、ステップS27へ分岐すると、オフセット量WOFFSETを
WOFFSET←-(WLANE/2)+(Wcar/2)+Xp2
から算出して(
図8(b)、
図9(b)参照)、ステップS28へ進む。
【0063】
ここで、Xp2は路壁側横位置補正量である。目標経路が路壁側の分岐車線に設定されている場合、この分岐車線にスムーズに進入させるには、なるべく路壁に近い方に沿って走行した方が良いが、実際の走行に際しては、路壁から一定の余裕幅を確保する必要がある。従って、路壁側に一定幅の路肩が存在する場合、この路壁側横位置補正量Xp2は小さい値に設定しても良い。尚、このステップS27での処理が、本発明の第3横位置変化量算出部に対応している。
【0064】
そして、ステップS24~S27の何れかからステップS28へ進むと、分岐点P2までの分岐車線到達距離Lbが、予め設定した横位置変化量修正距離L2(例えば、50~10[m])に達したか否かを調べる。そして、未だ、分岐車線到達距離Lbが横位置変化量修正距離L2に到達していない場合は(Lb>L2)、ルーチンを抜ける。
【0065】
又、分岐車線到達距離Lbが横位置変化量修正距離L2に到達した場合は(Lb≦L2)、ステップS29へ進む。ステップS29では、分岐点P2で、分岐車線に設定されている目標経路に、自車両Mの車幅中央を一致させる横位置変化量(オフセット量)WOFFSETを求めて、ルーチンを抜ける。尚、このステップS29での処理が、本発明の過渡横位置変化量設定部に対応している。
【0066】
このオフセット量WOFFSETは演算周期毎に求められる。自動運転制御ユニット26は、このオフセット量WOFFSETに基づき、目標経路が本線側の分岐車線に設定されている場合(
図10(a)参照)、或いは、目標経路が路壁側の分岐車線に設定されている場合(
図10(b)参照)の何れであっても、自車両Mが横位置変化量修正距離L2に到達したとき(Lb≦0)から操舵制御部31に対し、分岐点P2に設定されている何れかの分岐車線の車線幅中央に設定した目標経路に向けて、自車両Mを矢印で示すように進行させる操舵信号を送信する。その結果、二股に分岐されている分岐車線の一方に設定されている目標経路の方向へ自車両Mをスムーズに誘導させることができる。
【0067】
このように、本実施形態によれば、自車両Mが本線の第1車線から分流車線を経て二股に分岐された分岐車線の一方へ自動運転により走行するに際し、分流車線に、分岐車線方向へ導く区画線が明確に描画されていない場合であっても、分流車線の車線幅と自車両Mが進行する分岐車線の方向とに基づいて、分流車線に目標経路を設定するようにしたので、この分流車線に適切な目標経路を設定することができ、分流車線から分岐車線に進入する際に安定した走行性能を得ることができる。そのため、運転者を含む搭乗者の意思に沿った走行状態を得ることができる。
【0068】
更に、自車両Mが進む分岐車線方向に対応した目標経路が設定されるため、自車両Mの進む分岐車線とは異なる分岐車線方向へ進もうとする後続車Fの進行を阻害することもない。
【0069】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば分流車線が第2車線、或いは道路が3車線の場合は第3車線に接続されている場合であっても、本発明を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…自動運転支援装置、
11…ロケータユニット、
12…地図ロケータ演算部、
12a…自車位置推定演算部、
12b…走行ルート設定演算部、
13…GNSS受信機、
14…自律走行センサ、
15…ルート情報入力装置、
16…高精度道路地図データベース、
21…カメラユニット、
21a…メインカメラ、
21b…サブカメラ、
21c…画像処理ユニット(IPU)、
21d…前方走行環境認識部、
26…自動運転制御ユニット、
31…操舵制御部、
32…ブレーキ制御部、
33…加減速制御部、
34…報知装置、
F…後続車、
L1…車線変更タイミング距離、
L2…横位置変化量修正距離、
Lb…分岐車線到達距離、
Ld…分流車線到達距離、
M…自車両、
P1,P2…分岐点、
WLANE…分流車線幅、
WOFFSET…横位置変化量(オフセット量)、
Wcar…車幅、
W1…横位置変化量算出判定値、
W2…余裕幅判定値、
Xp1…本線側横位置補正量、
Xp2…路壁側横位置補正量