(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ラミネート電池
(51)【国際特許分類】
H01M 12/06 20060101AFI20230628BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20230628BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20230628BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20230628BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20230628BHJP
H01M 50/124 20210101ALI20230628BHJP
H01M 4/06 20060101ALI20230628BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20230628BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20230628BHJP
【FI】
H01M12/06 A
H01M12/08 K
H01M12/06 B
H01M50/105
H01M10/04 Z
H01M50/121
H01M50/124
H01M4/06 P
H01M50/474
H01M50/46
(21)【出願番号】P 2021554161
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2020035092
(87)【国際公開番号】W WO2021079658
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2019194506
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】北川 知
(72)【発明者】
【氏名】水畑 宏隆
(72)【発明者】
【氏名】佐多 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 章人
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/118627(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/06
H01M 12/08
H01M 50/10
H01M 10/04
H01M 4/06
H01M 50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極およびセパレータを外装部材内で積層配置したラミネート電池であって、
前記外装部材は、第1樹脂フィルムおよび第2樹脂フィルムを貼り合わせて構成されており、
前記セパレータは、前記第1樹脂フィルムおよび前記第2樹脂フィルムの間に配置され、その周縁部が前記第1樹脂フィルムに溶着されており、
前記セパレータと前記第1樹脂フィルムとの間は、前記セパレータと前記第1樹脂フィルムとの溶着部によって外周が形成され、前記正極を収容する正極収容部となっており、
前記セパレータと前記第2樹脂フィルムとの間は、前記第1樹脂フィルムと前記第2樹脂フィルムとの溶着部によって外周が形成され、前記負極を収容する負極収容部となっており、
前記負極は、粒子状の負極活物質を含むことを特徴とするラミネート電池。
【請求項2】
正極、負極およびセパレータを外装部材内で積層配置したラミネート電池であって、
前記外装部材は、第1樹脂フィルムおよび第2樹脂フィルムを貼り合わせて構成されており、
前記正極は、前記第1樹脂フィルムに対向して配置される第1正極と、前記第2樹脂フィルムに対向して配置される第2正極とを含み、
前記セパレータは、前記第1樹脂フィルムおよび前記第2樹脂フィルムの間に配置され、周縁部が前記第1樹脂フィルムに溶着される第1セパレータと、周縁部が前記第2樹脂フィルムに溶着される第2セパレータとを含み、
前記第1セパレータと前記第1樹脂フィルムとの間は、前記第1セパレータと前記第1樹脂フィルムとの溶着部によって外周が形成され、前記第1正極を収容する正極収容部となっており、
前記第2セパレータと前記第2樹脂フィルムとの間は、前記第2セパレータと前記第2樹脂フィルムとの溶着部によって外周が形成され、前記第2正極を収容する正極収容部となっており、
前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間は、前記第1樹脂フィルムと前記第2樹脂フィルムとの溶着部によって外周が形成され、前記負極を収容する負極収容部となっており、
前記負極は、粒子状の負極活物質を含むことを特徴とするラミネート電池。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載のラミネート電池であって、
前記負極は、電解液に前記負極活物質が分散されたスラリーであることを特徴とするラミネート電池。
【請求項4】
請求項
3に記載のラミネート電池であって、
前記負極活物質の重量に対する前記電解液の重量の比が、0.3~2.0であることを特徴とするラミネート電池。
【請求項5】
請求項
2から
4の何れか1項に記載のラミネート電池であって、
前記負極は、前記負極活物質の一部と接触した第1集電体をさらに備え、
前記第1集電体は、前記外装部材から外部に露出している第1リード部と電気的に接続されていることを特徴とするラミネート電池。
【請求項6】
請求項
1から
5の何れか1項に記載のラミネート電池であって、
前記正極は、触媒層を含む空気極を含むものであり、
前記外装部材は、前記正極との対向側に空気取込口を有しており、
前記正極と前記空気取込口の間に撥水膜が配置されていることを特徴とするラミネート電池。
【請求項7】
請求項
2に記載のラミネート電池であって、
前記第1正極は、酸素還元能を有する触媒を含む空気極であり、
前記第2正極は、酸素発生能を有する触媒を含む充電極であり、
前記外装部材は、前記第1正極との対向側に空気取込口を有し、前記第2正極との対向側に空気放出口を有しており、
前記第1正極と前記空気取込口との間および前記第2正極と前記空気放出口との間に撥水膜が配置されていることを特徴とするラミネート電池。
【請求項8】
請求項
1または
2に記載のラミネート電池であって、
前記正極収容部の容積は、前記負極収容部の容積よりも小さいことを特徴とするラミネート電池。
【請求項9】
請求項
1または
2に記載のラミネート電池であって、
前記正極収容部の容積は、前記負極収容部の容積の0.05~0.25倍であることを特徴とするラミネート電池。
【請求項10】
請求項
1または
2に記載のラミネート電池であって、
前記第1樹脂フィルムの面積に対する前記セパレータの面積の比率は、0.55~0.95であることを特徴とするラミネート電池。
【請求項11】
請求項
6または
7に記載のラミネート電池であって、
前記空気取込口の開口面積を含む前記第1樹脂フィルムの面積に対する前記セパレータの面積の比率は、0.55~0.95であることを特徴とするラミネート電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、正極、負極およびセパレータを外装部材内で積層配置したラミネート電池に関する。
【0002】
本出願は、2019年10月25日に日本に出願された特願2019-194506号に優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0003】
近年、正極、負極およびセパレータを外装部材内で積層配置した構成(負極と正極との間にセパレータを配置した構成)のラミネート電池が実用化されている。このようなラミネート電池においては、袋状セパレータを負極活物質または正極活物質の収容部として用いるものがある。例えば、特許文献1には、側辺に集電端子接続用タブを有する正極と負極とが積層され、該正極および負極少なくとも一方の電極が袋状セパレータで包装されている角形アルカリ蓄電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
負極活物質として亜鉛などの金属を利用するラミネート電池において、袋状セパレータを負極収容部とする場合、袋状セパレータに集電体と粒子状の負極活物質(例えば亜鉛粉)を封入することがある。例えば、
図10に示すラミネート電池は、2枚のセパレータを溶着により貼り合わせた袋状セパレータ103に、集電体および負極活物質(例えば亜鉛粉)からなる負極101が収容されている。袋状セパレータ103は、2枚の樹脂フィルムを溶着により貼り合わせた外装部材104内に収容されており、外装部材104内において袋状セパレータ103の外側が正極収容部とされている。すなわち、正極102は袋状セパレータ103の両側において、セパレータと樹脂フィルムとの間に配置されている。
【0006】
負極活物質として亜鉛などの金属を利用する場合、放電反応により金属が酸化物に酸化する過程で負極活物質の体積変化(膨張)が生じる。
図10に示すラミネート電池において、負極101の負極活物質が膨張すると、容積の制限された袋状セパレータ103に内部から圧力がかかり、袋状セパレータ103の封止箇所(溶着部)が破れる虞がある。袋状セパレータ103の封止が破れると、負極活物質が正極収容部へと流れ出し、正極102との短絡が生じる虞がある。
【0007】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、放電時の負極活物質の膨張に伴う負極活物質と正極との短絡を防止できるラミネート電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示の第1の態様であるラミネート電池は、正極、負極およびセパレータを外装部材内で積層配置したラミネート電池であって、前記外装部材となる外部ケースと、前記外部ケースの内部に配置され、前記セパレータを有する内部ケースとを有しており、前記内部ケースの内側が前記正極を収容する正極収容部、前記内部ケースの外側が前記負極を収容する負極収容部となっており、前記負極は、粒子状の負極活物質を含むことを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、外部ケースに比べて容積の小さい内部ケースの内側を正極収容部とすることで、放電によって負極活物質に膨張が生じても、正極収容部においては内部圧力が増加することはなく、正極収容部で破損が生じることがない。そして、正極収容部である内部ケースが破損しなければ、負極活物質が負極収容部から正極収容部側へ流れ出すこともなく、正極と負極活物質との短絡が生じることを防止できる。
【0010】
また、上記の課題を解決するために、本開示の第2の態様であるラミネート電池は、正極、負極およびセパレータを外装部材内で積層配置したラミネート電池であって、前記外装部材は、第1樹脂フィルムおよび第2樹脂フィルムを貼り合わせて構成されており、前記セパレータは、前記第1樹脂フィルムおよび前記第2樹脂フィルムの間に配置され、その周縁部が前記第1樹脂フィルムに溶着されており、前記セパレータと前記第1樹脂フィルムとの間は、前記セパレータと前記第1樹脂フィルムとの溶着部によって外周が形成され、前記正極を収容する正極収容部となっており、前記セパレータと前記第2樹脂フィルムとの間は、前記第1樹脂フィルムと前記第2樹脂フィルムとの溶着部によって外周が形成され、前記負極を収容する負極収容部となっており、前記負極は、粒子状の負極活物質を含むことを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、セパレータと第1樹脂フィルムとの溶着部によって外周が形成される正極収容部は、第1樹脂フィルムと第2樹脂フィルムとの溶着部によって外周が形成される負極収容部に比べて容積が小さくなるが、放電によって負極活物質に膨張が生じても、正極収容部においては内部圧力が増加することはなく、正極収容部で破損が生じることがない。そして、正極収容部が破損しなければ、負極活物質が負極収容部から正極収容部側へ流れ出すこともなく、正極と負極活物質との短絡が生じることを防止できる。
【0012】
また、上記の課題を解決するために、本開示の第3の態様であるラミネート電池は、正極、負極およびセパレータを外装部材内で積層配置したラミネート電池であって、前記外装部材は、第1樹脂フィルムおよび第2樹脂フィルムを貼り合わせて構成されており、前記正極は、前記第1樹脂フィルムに対向して配置される第1正極と、前記第2樹脂フィルムに対向して配置される第2正極とを含み、前記セパレータは、前記第1樹脂フィルムおよび前記第2樹脂フィルムの間に配置され、周縁部が前記第1樹脂フィルムに溶着される第1セパレータと、周縁部が前記第2樹脂フィルムに溶着される第2セパレータとを含み、前記第1セパレータと前記第1樹脂フィルムとの間は、前記第1セパレータと前記第1樹脂フィルムとの溶着部によって外周が形成され、前記第1正極を収容する正極収容部となっており、前記第2セパレータと前記第2樹脂フィルムとの間は、前記第2セパレータと前記第2樹脂フィルムとの溶着部によって外周が形成され、前記第2正極を収容する正極収容部となっており、前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間は、前記第1樹脂フィルムと前記第2樹脂フィルムとの溶着部によって外周が形成され、前記負極を収容する負極収容部となっており、前記負極は、粒子状の負極活物質を含むことを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、第1セパレータと第1樹脂フィルムとの溶着部または第2セパレータと第2樹脂フィルムとの溶着部によって外周が形成される正極収容部は、第1樹脂フィルムと第2樹脂フィルムとの溶着部によって外周が形成される負極収容部に比べて容積が小さくなるが、放電によって負極活物質に膨張が生じても、正極収容部においては内部圧力が増加することはなく、正極収容部で破損が生じることがない。そして、正極収容部が破損しなければ、負極活物質が負極収容部から正極収容部側へ流れ出すこともなく、正極と負極活物質との短絡が生じることを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本開示のラミネート電池は、放電によって負極活物質に膨張が生じた場合、正極収容部で破損が生じることを防止でき、正極と負極活物質との短絡が生じることを防止できるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1に係るラミネート電池の概略構成を示す図であり、(a)はラミネート電池の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図2】放電による
図1のラミネート電池の形状変化を説明する断面図である。
【
図3】実施の形態1に係る他のラミネート電池の概略構成を示す図であり、(a)はラミネート電池の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図4】実施の形態2に係るラミネート電池の概略構成を示す図であり、(a)はラミネート電池の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図5】放電による
図4のラミネート電池の形状変化を説明する断面図である。
【
図6】(a)~(h)は、
図4のラミネート電池に対する好適な製造方法の一例を示す図である。
【
図7】実施の形態3に係るラミネート電池の概略構成を示す図であり、(a)はラミネート電池の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図8】放電による
図7のラミネート電池の形状変化を説明する断面図である。
【
図9】(a)~(i)は、
図7のラミネート電池に対する好適な製造方法の一例を示す図である。
【
図10】放電による従来のラミネート電池の形状変化を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施の形態1〕
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態1に係るラミネート電池10の概略構成を示す図であり、(a)はラミネート電池10の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【0018】
図1に示すように、ラミネート電池10は、外装部材として樹脂製の電池ケース11を有しており、この電池ケース11の内部に、正極収容ケース12、正極13、負極14およびセパレータ15を備えている。また、電池ケース11の内部には、電解液16も充填される。尚、説明の便宜上、
図1における図中上方を、ラミネート電池10における上方と仮定して、以下説明する。
【0019】
正極収容ケース12は、開口121を有する樹脂製のケース(好ましくは絶縁性の樹脂フィルムにて形成)であり、その内部に正極13が収容される。正極13は、集電体131に正極活物質層132を積層した形態とされている。開口121は、正極収容ケース12における負極14との対向側に形成されている。集電体131の一部は、正極収容ケース12および電池ケース11の外側に延伸され、ラミネート電池10のリード部133となっている。但し、リード部133は、必ずしも集電体131の一部でなくてもよく、集電体131と電池ケースの外側に露出したリード133とが電気的に接続されていればよい。
【0020】
負極14は、集電体141と負極活物質142とによって形成されている。尚、
図1では、負極活物質142を集電体141の周囲に層状に形成されるように記載しているが、実際には負極活物質142は亜鉛などの金属粉が使用される。すなわち、負極活物質142は、負極収容部内に電解液16と共に充填されている。集電体141の一部は、電池ケース11の外側に延伸され、ラミネート電池10のリード部143となっている。但し、リード部143は、必ずしも集電体141の一部でなくてもよく、集電体141と電池ケースの外側に露出したリード143とが電気的に接続されていればよい。
【0021】
セパレータ15は、正極収容ケース12の開口121を覆うようにして、正極収容ケース12の外面に接着(例えば溶着)されている。セパレータ15は、電解液16を通過させながら、正極13および負極14の短絡を防止するものである。
【0022】
ラミネート電池10は、正極収容ケース12とセパレータ15とで囲まれる内部空間を正極収容部としている。そして、電池ケース11の内部空間のうち、正極収容部の外部となる空間を負極収容部としている。
【0023】
電解液16は、少なくとも正極13と負極14との間に介在し、正極13と負極14との間で電荷を移動させる電解質である。
【0024】
本実施の形態1に係るラミネート電池10において、各部材の材料などは特に限定されるものではなく、ラミネート電池の分野において従来用いられているものが使用可能である。例えば、セパレータ15には多孔質ポリオレフィンフィルムを用いることができる。また、セパレータ15は、イオン交換膜を用いることもできる。また、負極において使用される負極活物質には、亜鉛粒子などが利用可能であるが、ラミネート電池10が二次電池である場合には、負極活物質は酸化亜鉛粒子を含むものであってもよい。正極において使用される正極活物質にはオキシ水酸化ニッケルなどを用いることができる。
【0025】
ラミネート電池10において、放電時には負極14において使用される負極活物質142が体積変化(膨張)を生じ、これに伴ってラミネート電池10の形状も変化する。
図2は、放電によるラミネート電池10の形状変化を説明する断面図である。
【0026】
図2に示すように、放電によって負極活物質142が膨張した場合、この膨張によって正極収容部を形成する正極収容ケース12およびセパレータ15にも変形が生じる。但し、正極収容部に生じるこの変形は、外部の負極活物質142の膨張に沿って強要されるものであり、正極収容部の内部での膨張によるものではない。このため、正極収容部においては、内部から圧力がかかることもなく、正極収容部の溶着部などで破損が生じることもない。
【0027】
尚、ラミネート電池10における負極収容部、すなわち電池ケース11は、正極収容部に比べて容積が大きく、その上部にはある程度のスペースも含んでいるため、負極活物質142の膨張が生じたとしても、内部圧力の増加を抑制する変形が容易である。このため、り、負極活物質142の膨張によって電池ケース11が破損することはない。
【0028】
以上のように、本実施の形態1に係るラミネート電池10は、外部ケース(電池ケース11)と内部ケース(正極収容ケース12およびセパレータ15)との二重構造を有し、内部ケースに正極13を収容した構成である。このため、内部ケースの外側に収容される負極14において負極活物質142が膨張しても、この膨張によって内部ケースが破損することを防止できる。内部ケースが破損しなければ、負極活物質142が負極収容部から流れ出すこともなく、正極13と負極活物質142との短絡が生じることを防止できる。尚、ラミネート電池10が二次電池である場合には、充放電サイクルが繰り返されることによって負極活物質142の膨張が顕著となるため、本開示の適用が好適である。
【0029】
また、
図1に示すラミネート電池10では、電池ケース11および正極収容ケース12を樹脂製のケースとしているが、
図3に示すラミネート電池10’のように、樹脂フィルムやセパレータを袋状に貼り合わせた電池ケース11’および正極収容ケース12’を用いる構成であってもよい。すなわち、ラミネート電池10’において、電池ケース11’は2枚の樹脂フィルムを袋状に貼り合わせて形成され、正極収容ケース12’は1枚の樹脂フィルムと1枚のセパレータとを袋状に貼り合わせて形成されている。正極収容ケース12’では、負極14と対向する側にセパレータが配置される。この構成では、正極収容ケース12’において開口121を設けることは不要となる。
【0030】
〔実施の形態2〕
上記実施の形態1では、一般的な電池に本開示を適用した場合の構成を開示したが、本実施の形態2では金属空気電池に本開示を適用した場合の好適な構成について説明する。
【0031】
図4は、本実施の形態2に係るラミネート電池20の概略構成を示す図であり、(a)はラミネート電池20の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【0032】
図4に示すように、ラミネート電池20は、第1樹脂フィルム21および第2樹脂フィルム22を貼り合わせて外装部材(電池ケース)を構成しており、この外装部材の内部に空気極23、金属負極24、セパレータ25および撥水膜26を備えている。また、外装部材の内部には、電解液(図示省略)も充填される。
【0033】
第1樹脂フィルム21は、空気を取り込むための開口として空気取込口211が形成されている。また、第1樹脂フィルム21は、公知のラミネート電池に採用される樹脂フィルムを用いることができる。より具体的には、第1樹脂フィルム21は、第2樹脂フィルム22との溶着が可能であり、耐アルカリ性に優れた熱可塑性樹脂により形成されることが好ましく、例えばポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系の樹脂フィルムを用いることができる。なお、補強のために、第1樹脂フィルム21および第2樹脂フィルム22の外気側に対して、ナイロンあるいはポリエチレンテレフタレートなどの樹脂フィルム層やアルミニウム箔あるいはステンレス箔などの金属フィルム層を積層した構成であってもよい。また、第1樹脂フィルム21の厚さは、特に限定されないが、0.02mm~0.25mmが好ましい。第1樹脂フィルム21の厚さが0.02mm未満であれば、溶着時に十分に溶け合わず接合強度が不足する恐れがあり、一方で、第1樹脂フィルム21の厚さ0.25mmを超えると、フィルムが伸びにくくなるため、電池が膨張した際に溶着部に応力が集中し、溶着部が剥がれる恐れがある。また、第1樹脂フィルム21に対して、空気取込口211の開口率は10%~70%であることが好ましい。
【0034】
セパレータ25は第1樹脂フィルム21に対向して配置され、セパレータ25の周縁部が第1樹脂フィルム21の周縁部に溶着されている。セパレータ25は、第1樹脂フィルム21と溶着可能な部材であれば、金属空気電池の分野で一般的に用いられるセパレータ材料を用いることができる。セパレータ25の厚さは、特に限定されないが、0.05mm~0.4mmが好ましい。セパレータ25の厚さが0.05mm未満であれば、負極活物質の体積変換に伴いセパレータ25が破断する恐れがあり、一方で、セパレータ25の厚さが0.4mmを超えると、内部抵抗の増加の結果、電池出力が低下する恐れがある。
【0035】
第1樹脂フィルム21とセパレータ25との間は第1収容部S21となり、第1収容部S21には空気極23および撥水膜26が収容される。より具体的には、撥水膜26は空気取込口211を覆うようにして第1樹脂フィルム21に溶着されている。空気極23は、撥水膜26とセパレータ25との間に配置されている。空気極23および撥水膜26の詳細は後述する。
【0036】
第2樹脂フィルム22は、第1樹脂フィルム21と反対側においてセパレータ25と対向して配置される。また、第2樹脂フィルム22の周縁部は、セパレータ25と溶着されていてもよい。第2樹脂フィルム22は、第1樹脂フィルム21で用いられる樹脂フィルムから適宜用いることができる。第2樹脂フィルム22の厚さは、第1樹脂フィルム22と同様の理由で、0.02mm~0.25mmであることが好ましい。
【0037】
第2樹脂フィルム22とセパレータ25との間は第2収容部S22となり、第2収容部S22には金属負極24が収容される。金属負極24の詳細については後述する。尚、第2収容部S22においては、セパレータ25の周縁部が第2樹脂フィルム22の周縁部に溶着されていてもよい。但し、セパレータ25および第2樹脂フィルム22が溶着されている場合であっても、第2収容部S22の外周を形成しているのは、第1樹脂フィルム21と第2樹脂フィルム22との溶着部である。
【0038】
ラミネート電池20において、セパレータ25は第1樹脂フィルム21(空気取込口211を含む)および第2樹脂フィルム22に比べて一回り小さい面積とされている。このため、セパレータ25と第1樹脂フィルム21とを貼り合わせて形成される第1収容部S21は、第1樹脂フィルム21と第2樹脂フィルム22とを貼り合わせて形成される第2収容部S22に比べて容積が小さくなる。このように構成されることで、第1収容部S21に比べて容積の大きい第2収容部S22は、内部にある程度の余剰スペースも含んでいるため、金属負極24の膨張が生じたとしても、第2収容部S22内部の圧力増加を抑制する変形が容易となる効果が得られる。例えば、セパレータ25の面積は、25cm2~240cm2であることが好ましく、空気取込口211の開口面積を含む第1樹脂フィルム21および第2樹脂フィルム22の面積は、30cm2~250cm2であることが好ましい。また、空気取込口211の開口面積を含む第1樹脂フィルム21の面積に対するセパレータ25の面積の比率は、0.55~0.95であることが好ましい。また、第1収容部S21の容積は、第2収容部S22の容積の0.05倍~0.25倍であることが好ましい。
【0039】
撥水膜26は、空気取込口211からの電解液の漏洩を防ぐために設けられており、気液分離機能を有する。撥水膜26は、空気取込口211を覆うように第1樹脂フィルム21に溶着などで固定される。撥水膜26の材料は、金属空気電池の分野で一般的に用いられ、第1樹脂フィルム21に固定できる材料であれば特に限定されない。撥水膜26の厚さは、0.05mm~0.5mmであることが好ましい。
【0040】
空気極23は、集電体231および集電体231と接する触媒層232により構成されている。集電体231の一部は、外装部材の外側に延伸され、ラミネート電池20のリード部233となっている。集電体231は、金属空気電池の分野で一般的に用いられる材料であれば特に限定しない。また、集電体231の厚さは、0.05mm~0.5mmであることが好ましい。
【0041】
触媒層232は、少なくとも空気極触媒を含む。空気極触媒は、少なくとも酸化還元能を有する触媒である。空気極触媒としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の導電性カーボン、白金などの金属、酸化マンガンなどの金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これにより、空気極触媒上において、酸素ガスと水と電子とが共存する三相界面を形成することが可能になり、放電反応を進行させることができる。ラミネート電池20が一次電池である場合、触媒層232は、二酸化マンガンなどの触媒を含むものとすることができる。また、ラミネート電池20が二次電池である場合、触媒層232が酸素還元能を有する空気極触媒だけでなく、酸素発生能を有する触媒を含んでいてもよく、酸素発生能と酸素還元能との両方を有するBi-functional触媒を含んでいてもよい。
【0042】
触媒層232に含まれる空気極触媒の質量割合は、触媒層232の5質量%以上であることが好ましい。空気極触媒層は、空気極触媒以外に結着剤を含んでいてもよい。また、触媒層232には、ポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤を用いることができる。触媒層232の厚みは、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0043】
金属負極24は、集電体241と負極活物質242とによって形成されている。より具体的には、ラミネート電池20の第2収容部S22に、集電体241と粒子状の負極活物質242(例えば、亜鉛または酸化亜鉛)を別途投入して金属負極24が形成されている。集電体241の一部は、外装部材の外側に延伸され、ラミネート電池20のリード部243となっている。集電体241の厚みは0.05mm~0.50mmであることが好ましい。また、負極活物質242の結着性やレオロジー特性を向上するための樹脂添加剤などが適宜含まれていてもよい。
【0044】
負極活物質24は、金属空気電池の分野で一般的に用いられる材料から適宜採用される。例えば、負極活物質24は、カドミウム種・リチウム種・ナトリウム種・マグネシウム種・鉛種・亜鉛種・錫種・アルミニウム種・鉄種などの金属種を用いることができる。負極活物質242は、充電されることで還元されるため、金属酸化物の状態であってもよい。
【0045】
負極活物質242は、平均粒子径が1nm~500μmであることが好ましい。より好ましくは5nm~300μmであり、さらに好ましくは100nm~250μmであり、特に好ましくは、200nm~200μmである。上記平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0046】
また、第2収容部S22には、負極活物質24に用いられている金属種によって適宜選択される電解液(不図示)が収容されている。金属負極24は、電解液に負極活物質24が分散されたスラリーであってもよい。その場合、負極活物質24の重量に対する電解液の重量の比は0.3~2.0であることが好ましい。
【0047】
本実施の形態2に係るラミネート電池20では、第1樹脂フィルム21、第2樹脂フィルム22、空気極23、金属負極24、セパレータ25、撥水膜26および電解液の何れも、ラミネート電池や金属空気電池の分野において従来用いられているものが使用可能である。
【0048】
尚、上記説明では、ラミネート電池20が金属空気電池である場合を例示したが、ラミネート電池20が一般的な電池である場合には、空気極23に代えて正極を用いる構成としてもよい。この場合の正極は、触媒層232に代えて正極活物質層を備えたものとなる。また、ラミネート電池20が一般的な電池である場合は、空気取込口211および撥水膜26は不要となる。
【0049】
ラミネート電池20においても、放電時には金属負極24において使用される負極活物質242が体積変化(膨張)を生じ、これに伴ってラミネート電池20の形状も変化する。
図5は、放電によるラミネート電池20の形状変化を説明する断面図である。
【0050】
図5に示すように、放電によって金属負極24が膨張した場合、この膨張によって第2収容部S22に変形が生じる。但し、第2収容部S22は、第1収容部S21に比べて容積が大きく、その上部にはある程度のスペースも含んでいるため、金属負極24の膨張が生じたとしても、内部圧力の増加を抑制する変形が容易である。尚、第2収容部S22においてセパレータ25と第2樹脂フィルム22との周縁部同士が溶着されている場合であっても、第2収容部S22の外周を形成しているのは、第1樹脂フィルム21と第2樹脂フィルム22との溶着部である。したがって、金属負極24の膨張による第2収容部S22の内部圧力の増加によって、セパレータ25と第2樹脂フィルム22との溶着部が剥がれることは許容される。この場合、セパレータ25と第2樹脂フィルム22との溶着部が剥がれることで第2収容部S22の容積が増加するが、さらに外側における第1樹脂フィルム21と第2樹脂フィルム22との溶着部までが剥がれることはなく、第2収容部S22の破損に至ることはない。
【0051】
一方、容積が小さい第1収容部S21では、収容されているのが正極(すなわち空気極23)である。このため、第2収容部S22の変形に沿うような変形が第1収容部S21に生じたとしても、その変形は第1収容部S21の内部での膨張によるものではない。このため、第1収容部S21においては、内部圧力が増加することもなく、第1収容部S21の溶着部(セパレータ25と第1樹脂フィルム21との溶着部)などで破損が生じることもない。
【0052】
以上のように、本実施の形態2に係るラミネート電池20は、容積に差のある第1収容部S21と第2収容部S22とを備え、容積の小さい第1収容部S21側に正極(すなわち空気極23)を収容し、容積の大きい第2収容部S22側に負極(すなわち金属負極24)を収容した構成である。このため、金属負極24の膨張によって第1収容部S21および第2収容部S22が破損することを防止でき、負極活物質242が第2収容部S22から流れ出して空気極23と短絡することを防止できる。
【0053】
〔ラミネート電池20の製造方法例〕
続いて、
図6を参照して、ラミネート電池20に対する好適な製造方法の一例を説明する。
【0054】
まず、
図6(a)に示すように、第1樹脂フィルム21に空気取込口211を形成する(空気取込口211の形成された第1樹脂フィルム21を準備する)。そして、
図6(b)に示すように、空気取込口211を覆うようにして、撥水膜26を第1樹脂フィルム21に溶着する。このとき、撥水膜26は空気取込口211よりも一回り大きい面積とされ、撥水膜26を空気取込口211の縁部分で積層して溶着する。
【0055】
続いて、
図6(c)に示すように、撥水膜26上に空気極23の触媒層232を積層する。さらに、
図6(d)に示すように、触媒層232上に空気極23の集電体231を積層し、これらをプレスで圧着する。尚、集電体231におけるリード部233の両面には、タブフィルム27が貼付されていてもよい。タブフィルム27は、ラミネート電池20においてリード部233の周囲からの電解液の液漏れを防止するものである。タブフィルム27の材料は特に限定されるものではなく、ラミネート電池の分野において従来用いられているものが使用可能であるが、ブチルゴムが好適に使用できる。タブフィルム27は、第1樹脂フィルム21とも溶着されていることが好ましい。但し、ラミネート電池20において、タブフィルム27は必須の構成ではない。
【0056】
続いて、
図6(e)に示すように、集電体231上にセパレータ25を積層し、セパレータ25を第1樹脂フィルム21に溶着する。このとき、セパレータ25は撥水膜26よりも一回り大きい面積とされ、セパレータ25が第1樹脂フィルム21に重なる部分で溶着する。尚、タブフィルム27が使用されている場合は、セパレータ25はタブフィルム27とも重なる部分で溶着される。
【0057】
続いて、
図6(f)に示すように、セパレータ25上に金属負極24の集電体241を積層する。集電体241におけるリード部243の両面にも、タブフィルム27が貼付されていてもよい。
【0058】
続いて、
図6(g)に示すように、集電体241に対向するように第2樹脂フィルム22を積層し、下辺を除く3つの各辺を溶着する。このとき、2つの側辺では少なくとも樹脂フィルム同士(第1樹脂フィルム21および第2樹脂フィルム22)が重なった部分を熱溶着する。また、上辺では、少なくとも第1樹脂フィルム21、第2樹脂フィルム22、セパレータ25(およびタブフィルム27)が重なる部分を熱溶着する。
【0059】
最後に、
図6(h)に示すように、溶着されていない1辺(下辺)の開口より、亜鉛粉および電解液を入れたのち、その辺を溶着する。このとき、セパレータ25は第1樹脂フィルム21と既に溶着されているため、投入された亜鉛粉が第1収容部S21(第1樹脂フィルム21とセパレータ25との間の空間)に入り込むことはない。下辺では樹脂フィルム同士(第1樹脂フィルム21および第2樹脂フィルム22)が重なった部分を熱溶着する。電解液は、セパレータ25を介して、空気極まで浸透する。
【0060】
上述の製造方法では、外装部材を構成する樹脂フィルム(ここでは第1樹脂フィルム21)にセパレータ25を溶着するため、
図6(g)の工程までは部材の積層および溶着のみで電池を組み立てることができる。このため、製造工程の簡略化が可能となり、低コスト化を実現できる。
【0061】
〔実施の形態3〕
上記実施の形態1および2では、一次電池(または2極式の二次電池)に本開示を適用した場合の構成を開示したが、本実施の形態3では、2つの正極(第1正極と第2正極)と、2つの正極の間に金属負極とを備えた3極式の二次電池に本開示を適用した場合の好適な構成について説明する。また、以下の説明では、金属負極と、2つの正極として空気極および充電極を備えた3極式の金属空気二次電池に本開示を適用した場合を例示するが、2つの空気極と、2つの空気極の間に金属負極を備えた金属空気一次電池、金属空気電池ではない一般的な電池にも本開示の構成は適用可能である。
【0062】
図7は、本実施の形態3に係るラミネート電池30の概略構成を示す図であり、(a)はラミネート電池30の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【0063】
図7に示すように、ラミネート電池30は、第1樹脂フィルム31および第2樹脂フィルム32を貼り合わせて外装部材(電池ケース)を構成しており、この外装部材の内部に空気極(第1正極)33、金属負極34、充電極(第2正極)35、第1セパレータ36、第2セパレータ37、第1撥水膜38および第2撥水膜39を備えている。また、外装部材の内部には、電解液(図示省略)も充填される。
【0064】
第1セパレータ36は第1樹脂フィルム31に対向して配置され、第1セパレータ36の周縁部が第1樹脂フィルム31の周縁部に溶着されている。第1樹脂フィルム31と第1セパレータ36との間は第1収容部S31となり、第1収容部S31には空気極33および第1撥水膜38が収容される。より具体的には、第1樹脂フィルム31には、空気を取り込むための開口として空気取込口311が形成されており、第1撥水膜38は空気取込口311を覆うようにして第1樹脂フィルム31に溶着されている。空気極33は、第1撥水膜38と第1セパレータ36との間に配置されている。
【0065】
第2セパレータ37は第2樹脂フィルム32に対向して配置され、第2セパレータ37の周縁部が第2樹脂フィルム32の周縁部に溶着されている。第2樹脂フィルム32と第2セパレータ37との間は第3収容部S33となり、第3収容部S33には充電極35および第2撥水膜39が収容される。より具体的には、第2樹脂フィルム32には、空気を放出するための開口として空気放出口321が形成されており、第2撥水膜39は空気放出口321を覆うようにして第2樹脂フィルム32に溶着されている。充電極35は、第2撥水膜39と第2セパレータ37との間に配置されている。
【0066】
さらに、第1セパレータ36と第2セパレータ37とが対向して配置された状態で、第1樹脂フィルム31および第2樹脂フィルム32の周縁部同士が溶着される。そして、第1セパレータ36と第2セパレータ37との間の空間は、第1樹脂フィルム31と第2樹脂フィルム32との溶着によって第2収容部S32となり、第2収容部S32には金属負極34が収容される。尚、第2収容部S32においては、対向する第1セパレータ36および第2セパレータ37の周縁部同士が溶着されていてもよい。但し、第1セパレータ36および第2セパレータ37が溶着されている場合であっても、第2収容部S32の外周を形成しているのは、第1樹脂フィルム31と第2樹脂フィルム32との溶着部である。
【0067】
ラミネート電池30において、第1セパレータ36および第2セパレータ37は第1樹脂フィルム31および第2樹脂フィルム32に比べて一回り小さい面積とされている。このため、第1セパレータ36と第1樹脂フィルム31とを貼り合わせて形成される第1収容部S31、および第2セパレータ37と第2樹脂フィルム32とを貼り合わせて形成される第3収容部S33は、第1樹脂フィルム31と第2樹脂フィルム32とを貼り合わせて形成される第2収容部S32に比べて容積が小さくなる。
【0068】
ラミネート電池30では、第1撥水膜38および第2撥水膜39は、空気取込口311および空気放出口321からの電解液の漏洩を防ぐために設けられており、気液分離機能を有する。空気極33は、集電体331および触媒層332により構成されており、実施の形態2における空気極23と同様の構成とすることができる。充電極35は、集電体351および触媒層352により構成されており、触媒層352は、例えば、導電性の多孔性担体と、該多孔性担体に担持された充電極触媒とを含んでいてもよい。この充電極触媒は、酸素発生能を有する触媒(ニッケルなど)であり、ラミネート電池30の充電時に充電反応を進行させるものである。触媒層352は、例えば発泡ニッケルからなる。集電体331および351の一部は、外装部材の外側に延伸され、ラミネート電池30のリード部333および353となっている。また、発泡ニッケルを集電体331としても用いることができ、この場合、一つの発泡ニッケルで集電体331および触媒層332を含む。
【0069】
充電極35の厚みは、0.2mm~2mmであることが好ましい。
【0070】
金属負極34は、集電体341と負極活物質342とによって形成されている。より具体的には、ラミネート電池30の第2収容部S32に、集電体341と負極活物質342(例えば、亜鉛)の金属粒子を別途投入して金属負極34が形成されている。集電体341の一部は、外装部材の外側に延伸され、ラミネート電池30のリード部343となっている。
【0071】
本実施の形態3に係るラミネート電池30では、第1樹脂フィルム31、第2樹脂フィルム32、空気極33、金属負極34、充電極35、第1セパレータ36、第2セパレータ37、第1撥水膜38、第2撥水膜39および電解液の何れも、ラミネート電池や金属空気二次電池の分野において従来用いられているものが使用可能である。
【0072】
尚、上記説明では、ラミネート電池30が金属空気二次電池である場合を例示したが、ラミネート電池30が一般的な二次電池である場合には、空気極33に代えて放電用の第1正極を用い、充電極35に代えて充電用の第2正極を用いる構成としてもよい。この場合の第1正極および第2正極は、触媒層332および352に代えて正極活物質層を備えたものとなる。また、ラミネート電池30が一般的な二次電池である場合は、空気取込口311、空気放出口321、第1撥水膜38および第2撥水膜39は不要となる。
【0073】
さらに、上記説明では、ラミネート電池30が金属空気二次電池である場合を例示したが、ラミネート電池30が金属空気一次電池である場合には、充電極35に代えて、空気極33を用いる構成としてもよい。この場合、金属負極34の表裏に各々空気極33が配置されたものとなる。
【0074】
ラミネート電池30においても、放電時には金属負極34において使用される負極活物質が体積変化(膨張)を生じ、これに伴ってラミネート電池30の形状も変化する。
図8は、放電によるラミネート電池30の形状変化を説明する断面図である。
【0075】
図8に示すように、放電によって金属負極34が膨張した場合、この膨張によって第2収容部S32に変形が生じる。但し、第2収容部S32は、第1収容部S31および第3収容部S33に比べて容積が大きく、その上部にはある程度のスペースも含んでいるため、金属負極34の膨張が生じたとしても、内部圧力の増加を抑制する変形が容易である。尚、第2収容部S32において第1セパレータ36および第2セパレータ37の周縁部同士が溶着されている場合であっても、第2収容部S32の外周を形成しているのは、第1樹脂フィルム31と第2樹脂フィルム32との溶着部である。したがって、金属負極34の膨張による第2収容部S32の内部圧力の増加によって、第1セパレータ36および第2セパレータ37の溶着部が剥がれることは許容される。この場合、第1セパレータ36および第2セパレータ37の溶着部が剥がれることで第2収容部S32の容積が増加するが、さらに外側における第1樹脂フィルム31と第2樹脂フィルム32との溶着部までが剥がれることはなく、第2収容部S32の破損に至ることはない。
【0076】
一方、容積が小さい第1収容部S31および第3収容部S33では、収容されているのが正極(すなわち空気極33および充電極35)である。このため、第2収容部S32の変形に沿うような変形が第1収容部S31および第3収容部S33に生じたとしても、その変形は第1収容部S31および第3収容部S33の内部での膨張によるものではない。このため、第1収容部S31および第3収容部S33においては、内部から圧力がかかることもなく、第1収容部S31および第3収容部S33の溶着部(第1セパレータ36と第1樹脂フィルム31との溶着部、および第2セパレータ37と第2樹脂フィルム32との溶着部)などで破損が生じることもない。
【0077】
以上のように、本実施の形態3に係るラミネート電池30は、容積に差のある第1収容部S31および第3収容部S33と第2収容部S32とを備え、容積の小さい第1収容部S31および第3収容部S33を正極収容部とし、容積の大きい第2収容部S32を負極収容部とした構成である。このため、金属負極34の膨張によって第1収容部S31~第3収容部S33が破損することを防止でき、負極活物質342が第2収容部S32から流れ出して空気極33や充電極35と短絡することを防止できる。
【0078】
〔ラミネート電池30の製造方法例〕
続いて、
図9を参照して、ラミネート電池30に対する好適な製造方法の一例を説明する。
【0079】
まず、
図9(a)に示すように、第1樹脂フィルム31に空気取込口311を形成する(空気取込口311の形成された第1樹脂フィルム31を準備する)。そして、
図9(b)に示すように、空気取込口311を覆うようにして、第1撥水膜38を第1樹脂フィルム31に溶着する。このとき、第1撥水膜38は空気取込口311よりも一回り大きい面積とされ、第1撥水膜38を空気取込口311の縁部分で積層して溶着する。
【0080】
続いて、
図9(c)に示すように、第1撥水膜38上に空気極33の触媒層332を積層する。さらに、
図9(d)に示すように、触媒層332上に空気極33の集電体331を積層し、これらをプレスで圧着する。尚、集電体331におけるリード部333の両面には、タブフィルム40が貼付されていてもよい。
【0081】
続いて、
図9(e)に示すように、集電体331上に第1セパレータ36を積層し、第1セパレータ36を第1樹脂フィルム31に溶着する。このとき、第1セパレータ36は第1撥水膜38よりも一回り大きい面積とされ、第1セパレータ36が第1樹脂フィルム31に重なる部分で溶着する。尚、タブフィルム40が使用されている場合は、第1セパレータ36はタブフィルム40とも重なる部分で溶着される。
【0082】
続いて、
図9(f)に示すように、第1セパレータ36上に金属負極34の集電体341を積層する。集電体341におけるリード部343の両面にも、タブフィルム40が貼付されていてもよい。
【0083】
さらに、
図9(a)~(e)で説明したのと同じ手順で、第2樹脂フィルム32、第2撥水膜39、充電極35(触媒層352および集電体351)および第2セパレータ37を積層および溶着したものを作成する(
図9(g)参照)。但し、充電極35におけるリード部353の位置は、空気極33および金属負極34におけるリード部333および343とは重なり合わないようにずらした位置とする。
【0084】
図9(f)の工程で得られた積層体と
図9(g)の工程で得られた積層体とを、第1セパレータ36および第2セパレータ37が金属負極34の集電体341を挟んで対向するように積層し、下辺を除く3つの各辺を溶着する(
図9(h)参照)。このとき、2つの側辺では少なくとも樹脂フィルム同士(第1樹脂フィルム31および第2樹脂フィルム32)が重なった部分を熱溶着する。また、上辺では、少なくとも第1樹脂フィルム31、第2樹脂フィルム32、第1セパレータ36、第2セパレータ37(およびタブフィルム40)が重なる部分を熱溶着する。
【0085】
最後に、
図9(i)に示すように、溶着されていない1辺(下辺)の開口より、亜鉛粉および電解液を入れたのち、その辺を溶着する。このとき、第1セパレータ36は第1樹脂フィルム31と既に溶着されており、第2セパレータ37は第2樹脂フィルム32と既に溶着されているため、投入された亜鉛粉が第1収容部S31および第3収容部S33に入り込むことはない。下辺では樹脂フィルム同士(第1樹脂フィルム31および第2樹脂フィルム32)が重なった部分を熱溶着する。
【0086】
上述の製造方法では、外装部材を構成する樹脂フィルム(第1樹脂フィルム31および第2樹脂フィルム32)に第2収容部となるセパレータ(第1セパレータ36および第2セパレータ37)を溶着するため、
図9(h)の工程までは部材の積層および溶着のみで電池を組み立てることができる。すなわち、2枚のセパレータを袋状に加工したり、袋状セパレータに負極を収納したり、外装部材に袋状セパレータを収納したりする工程が不要となる。このため、製造工程の簡略化が可能となり、低コスト化を実現できる。
【0087】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。