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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】核酸分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20230628BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALN20230628BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20230628BHJP
【FI】
G01N35/02 Z
C12Q1/68
C12M1/34 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022527346
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2020020856
(87)【国際公開番号】W WO2021240675
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三山 敏史
(72)【発明者】
【氏名】石塚 隼司
(72)【発明者】
【氏名】宮田 仁史
(72)【発明者】
【氏名】庄司 智広
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特許第6068227(JP,B2)
【文献】特許第5687514(JP,B2)
【文献】特開2011-50344(JP,A)
【文献】特開昭62-35445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
C12Q 1/68
C12M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象となる核酸試料を含有する試料容器と、前記核酸試料を観察する撮像手段と、前記試料容器を移動させるステージ機構と、を有し、
前記ステージ機構は、2つの並進手段と、少なくとも1つの回転手段とを有し、2つの並進手段のうち、一方を回転手段の上面に設置し、他方を回転手段の下面に設置することを特徴とする核酸分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載する核酸分析装置であって、
前記回転手段の上面に設置される並進手段は、ベース部と、前記ベース部と相対的に変位する並進テーブルと、を有し、
前記回転手段は、回転中心を中心に回転変位する回転テーブルを有し、
前記並進手段のベース部と前記回転テーブルとが同一であることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載する核酸分析装置であって、
前記回転手段の下面に設置される並進手段は、ステージベースと相対的に変位する並進テーブルと、を有し、
前記回転手段は、ベース部と、前記ベース部と相対的に回転方向に変位する回転テーブルと、を有し、
前記並進テーブルと前記回転手段のベース部とが同一であることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載する核酸分析装置であって、
観察時は、前記2つの並進手段が互いに直交することを特徴とする核酸分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載する核酸分析装置であって、
交換時は、前記2つの並進手段の移動方向が同一となることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載する核酸分析装置であって、
前記回転手段の上面に設置される並進手段は、2つの試料容器を搭載することを特徴とする核酸分析装置。
【請求項7】
請求項5に記載する核酸分析装置であって、
交換時は、前記回転手段の上面に設置される並進手段の並進テーブルに搭載される2つの試料容器が、光学ベースから露出することを特徴とする核酸分析装置。
【請求項8】
請求項6に記載する核酸分析装置であって、
前記回転手段の上面に設置される前記並進手段に搭載される2つの試料容器のうち、一方の試料容器で撮像を実施し、他方の試料容器で伸張反応及び蛍光標識反応を実施することを特徴とする核酸分析装置。
【請求項9】
請求項8に記載する核酸分析装置であって、
伸張反応及び蛍光標識反応を実施する試料容器が、光学ベースから露出することを特徴とする核酸分析装置。
【請求項10】
請求項8に記載する核酸分析装置であって、
試薬を分注する分注ノズル、前記分注ノズルを所望位置に移動するアーム部、を有することを特徴とする核酸分析装置。
【請求項11】
請求項10に記載する核酸分析装置であって、
分析に要する試薬を保管する試薬保管部を有することを特徴とする核酸分析装置。
【請求項12】
請求項1に記載する核酸分析装置であって、
前記試料容器は、試薬が流通する流路を有することを特徴とする核酸分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA(デオキシリボ核酸)又はRNA(リボ核酸)などの核酸の塩基配列を特定するために使用される核酸分析装置に関する。特に、分析対象となる核酸試料に試薬を反応させる機能と、核酸試料又はその反応産物を光学的に検出する機能と、を有する核酸分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、核酸分析装置においては、試料容器であるフローセルを使用し、平面基板に分析対象となるDNA断片を数多く担持し、これら数多く担持されるDNA断片の塩基配列をパラレルに特定する方法が提案されている。
【0003】
この方法では、DNA断片が数多く担持されるフローセルに、塩基に対応する蛍光色素付き基質を導入し、フローセルに励起光を照射し、個々のDNA断片から発生する蛍光を撮像手段により検出し、塩基配列を特定する。
【0004】
そして、核酸分析装置では、核酸に蛍光標識をした相補的なプローブ(核酸の断片)を、DNAポリメラーゼやDNAリガーゼにより、伸長させる。伸長反応ごとに蛍光を検出することにより、多数の核酸について、並列して、塩基配列を特定する。
【0005】
また、大量のDNA断片を分析するため、通常、分析領域を複数の検出視野に分割し、励起光を一回照射するごとに、検出視野を変更しつつ、全ての分析領域を分析し、塩基配列を特定する。
【0006】
こうした技術分野の背景技術として、特許第6068227号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、液体を吸引・吐出する分注ノズルと、分注ノズルを所望位置に移動するノズル駆動部と、分注ノズルの先端が液面に接触したことにより液面を検知する液面検知部と、注入口、注入口に接続された反応流路、及び反応流路に接続された廃液流路を有する流路系を有する反応ユニットと、有する核酸分析装置が記載されている(段落0010参照)。
【0007】
また、こうした技術分野の背景技術として、特許5687514号公報(特許文献2)がある。特許文献2には、水平駆動ステージに冷媒循環型の温度調整ユニットを搭載し、温度調整ユニットにより、フローセルの設置面温度を所定の温度に調整する核酸配列解析装置が記載されている(段落0008参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6068227号公報
【文献】特許第5687514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、水平面内で2次元方向へ駆動可能なステージにフローセルを搭載する核酸分析装置が記載され、特許文献2にも、特許文献1と同様に、水平面内で2次元方向へ駆動可能なステージに、フローセルを搭載する核酸配列解析装置(核酸分析装置)が記載されている。
【0010】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載される核酸分析装置は、一方向への並進動作を単一の並進手段のみで実施するため、例えば、複数枚のフローセルを取り扱う場合には、必要とされる移動量が大きくなり、ステージが大型化し、装置が大型化するといった課題があった。
【0011】
そこで、本発明は、例えば、複数枚のフローセルを取り扱う場合であっても、必要とされる移動量を大きくすることがなく、ステージ機構を小型化し、装置を小型化する核酸分析装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するため、本発明の核酸分析装置は、分析対象となる核酸試料を含有する試料容器と、核酸試料を観察する撮像手段と、試料容器を移動させるステージ機構と、有し、ステージ機構は、2つの並進手段と、少なくとも1つの回転手段とを有し、2つの並進手段のうち、一方を回転手段の上面に設置し、他方を回転手段の下面に設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば、複数枚のフローセルを取り扱う場合であっても、必要とされる移動量を大きくすることがなく、ステージ機構を小型化し、装置を小型化する核酸分析装置を提供することができる。
【0014】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果については、下記する実施例の説明により、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1に記載する核酸分析装置1の概略構成を説明する説明図である。
図2】実施例1に記載する核酸分析装置1の分析手段を説明する斜視図である。
図3】実施例1に記載するステージ機構10の回転手段200を中心に展開したものを上部から見て説明する斜視図である。
図4】実施例1に記載するステージ機構10の回転手段200を中心に展開したものを下部から見て説明する斜視図である。
図5】実施例1に記載する撮像中の分析手段の動作を説明する上面図である。
図6】実施例1に記載する撮像中の分析手段の動作を説明する斜視図である。
図7】実施例1に記載する試料容器60の概略構成を説明する説明図である。
図8】実施例1に記載する核酸試料の交換時に90°回転テーブル205を回転させた状態を説明する斜視図である。
図9】実施例1に記載する核酸試料の交換位置への移動後の各テーブルの状態を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を、図面を使用して説明する。なお、実質的に同一又は類似の構成には、同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。また、本実施例は、本発明の原理に則り、本発明を分かりやすく説明するため、本発明を具体的に説明するものであり、本発明を限定的に解釈するものではない。
【0017】
また、本実施例は、DNA断片を分析対象とするが、DNAの他、RNAやたんぱく質などを分析対象としてもよく、本実施例は、生体関連物質の全般に使用することができる。
【実施例1】
【0018】
まず、実施例1に記載する核酸分析装置1の概略構成を説明する。
【0019】
図1は、実施例1に記載する核酸分析装置1の概略構成を説明する説明図である。
【0020】
核酸分析装置1は、核酸の塩基配列を特定(分析)する装置であり、分析手段として、分析対象となる核酸試料に試薬を反応させる機能と、核酸試料又はその反応産物を光学的に検出する機能と、を有する分析手段を有する。
【0021】
そして、核酸分析装置1は、核酸試料を含有(封入)する長方形状の試料容器(フローセル)をセットし、タッチパネルなどの表示装置や入力装置を有する、所定のユーザインタフェースを介して、装置の動作を開始させ、自動的に核酸分析を実施し、塩基配列を特定する装置である。
【0022】
核酸分析装置1は、塩基配列を特定するため、蛍光標識がされた核酸試料を観察(分析)する撮像手段20と、分析対象となる核酸試料を含有する試料容器60を移動させるステージ機構10と、を有する分析手段を有する。
【0023】
なお、ステージ機構10は、少なくとも2つの試料容器60(実施例1では、2つの試料容器)を搭載し、試料容器60の全ての分析領域を撮像(観察)するため、又は、試料容器60を交換するため、試料容器60を移動させる。
【0024】
また、核酸分析装置1は、分析に要する試薬(蛍光標識のための試薬)を保管する試薬保管部80を有する。
【0025】
そして、核酸分析装置1は、試薬を、試薬保管部80から試料容器60へ送液するための送液手段70を有する。送液手段70は、核酸上に蛍光標識をさせるための試薬を吸引し、吐出する(分注する)分注ノズル701及び分注ノズル701を所望位置に移動するアーム部702を有する。
【0026】
核酸分析装置1は、核酸の塩基配列の伸張に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:Polymerase Chain Reaction)法を使用する。PCR法は、反応溶液の温度を、予め定められた条件に従って、制御することにより、所望の核酸の塩基配列を選択的に増幅することができる手法である。この手法を実施するため、核酸分析装置1は、反応溶液の温度を制御する温度調整機構(図示せず)を有する。
【0027】
次に、実施例1に記載する核酸分析装置1の分析手段であるステージ機構10及び撮像手段20を説明する。
【0028】
図2は、実施例1に記載する核酸分析装置1の分析手段を説明する斜視図である。
【0029】
分析手段は、蛍光標識がされた核酸試料を光学的に観察する撮像手段20と、撮像手段20を保持(支持)する光学ベース(光学支持部材)30と、2つの試料容器60A及び試料容器60Bと、2つ試料容器60A及び試料容器60Bを搬送する(移動させる)ステージ機構10と、ステージ機構10を保持するステージベース40と、これら構成要素の重量を保持し、外部からの振動を遮断する除振マウント50と、を有する。
【0030】
核酸分析装置1は、撮像手段20による撮像範囲は微小であるため、試料容器(フローセル)60の分析領域を複数の検出視野に分割し、検出視野を変更しつつ、全ての分析領域を観察する。このため、ステージ機構10を、図2中、XY方向へ微小量移動し、局所的に撮像する動作を繰り返す。これにより、全ての分析領域を観察することができる。
【0031】
ステージ機構10は、回転手段200の上面に設置される第一の並進手段100と、回転手段200の下面に設置される第二の並進手段300と、を有する。
【0032】
第二の並進手段300は、全体を固定するベース部(ステージベース40)と相対的に変位する並進テーブルと、並進テーブルを滑らかに支持する並進スライダと、並進移動のための動力を発生させるモータなどの駆動手段と、駆動手段の動力を伝達するボールねじなどの直動機構と、を有する。
【0033】
回転手段200は、ベース部(第二の並進手段300の並進テーブル)と、ベース部と相対的に回転方向に変位する回転テーブルと、回転テーブルを滑らかに支持するクロスローラベアリングなどの回転スライダと、回転移動のための動力を発生させるモータなどの駆動手段と、駆動手段の動力を伝達する歯車機構と、を有する。なお、実施例1では、1つの回転手段200が設置される。
【0034】
第一の並進手段100は、ベース部(回転手段200の回転テーブル)と、ベース部と相対的に変位し、積載対象(試料容器60など)を移動させる並進テーブルと、並進テーブルを滑らかに支持する並進スライダと、並進移動のための動力を発生させるモータなどの駆動手段と、駆動手段の動力を伝達するボールねじなどの直動機構と、を有する。
【0035】
撮像手段20は、図示せぬCCDやCMOSイメージセンサなどの撮像素子と、撮像素子に連結され、図示せぬキセノンランプなどの光源と、光源から照射される励起光を集光する図示せぬ光学レンズと、を有する。
【0036】
そして、撮像手段20は、光源から試料容器60に励起光を照射することにより、試料容器60の反応流路に保持される核酸試料(DNA断片)から発生する蛍光を検出する。
【0037】
2つの試料容器60A及び試料容器60Bは、一般的にフローセルと呼称され、その内部には、核酸試料(DNA断片)を固定し、試薬が流通する流路が形成される。
【0038】
また、核酸分析装置1は、2つの試料容器60A及び試料容器60Bの内部に、核酸に対応する蛍光色素付き基質を導入して蛍光標識をし、塩基を伸長反応させる試薬を流す送液手段70を有する。
【0039】
なお、実施例1では、送液手段70は、分注ノズル701及び分注ノズル701を所望位置に移動するアーム部702を有する、所謂、分注機構であるが、送液手段70の内部に配管を設置し、2つの試料容器60A及び試料容器60Bに、直接、ポンプにより、試薬を送液してもよい。
【0040】
このように、核酸分析装置1は、分析対象となる核酸試料を含有する試料容器60と、核酸試料を観察する撮像手段20と、試料容器60を移動させるステージ機構10と、有し、ステージ機構10は、2つの並進手段(100及び300)と、少なくとも1つの回転手段200とを有し、2つの並進手段(100及び300)のうち、一方を回転手段200の上面に設置し、他方を回転手段200の下面に設置する。
【0041】
これにより、複数枚の試料容器60を取り扱う場合であっても、必要とされる移動量を大きくすることがなく、ステージ機構10を小型化し、装置を小型化することができる。
【0042】
なお、ステージ機構10には、以下の4つの移動が要求される。
(1)試料容器60の全ての分析領域を観察するため、検出視野を変更するための移動、
(2)2つ試料容器60A及び試料容器60Bのうち、観察対象を切り替えるための移動、
(3)蛍光標識のための試薬を注入する際に、分注機構の動作範囲内への試料容器60の移動、
(4)観察完了後の試料容器60を交換するための移動。
【0043】
実施例1によれば、こうした移動においても、必要とされる移動量を大きくすることがなく、ステージ機構10を小型化し、装置を小型化することができる。
【0044】
また、核酸分析装置1は、試料容器60を使用し、平面基板に分析対象となる核酸試料を担持させ、核酸試料の核酸の塩基配列をパラレルに特定する。
【0045】
そして、試料容器60に、核酸に蛍光色素付き基質を導入し(蛍光標識反応させ)、試料容器60に励起光を照射し、個々の核酸試料(DNA断片)から発生する蛍光を撮像手段20により検出する(蛍光観察する)。
【0046】
この際、核酸に蛍光色素付き基質を導入し、核酸に蛍光標識をした相補的なプローブ(核酸の断片)を、DNAポリメラーゼやDNAリガーゼにより、DNAの塩基を伸長(増幅)させる(伸張反応させる)。
【0047】
これにより、伸長反応ごとに蛍光を検出し、多数の核酸について、並列して、核酸の塩基配列を特定する。
【0048】
また、分析領域を複数の検出視野に分割し、励起光を一回照射するごとに、検出視野を変更しつつ、全ての分析領域を分析し、塩基配列を特定する。
【0049】
そして、新たな伸長反応を使用し、新たな蛍光色素付き基質を導入し、上記と同様な手順により、全ての分析領域を分析し、塩基配列を特定する。これを繰り返すことにより、効率よく塩基配列を特定することができる。
【0050】
次に、実施例1に記載するステージ機構10の回転手段200の回転テーブル205を中心に展開したものを説明する。
【0051】
図3は、実施例1に記載するステージ機構10の回転手段200を中心に展開したものを上部から見て説明する斜視図である。
【0052】
図4は、実施例1に記載するステージ機構10の回転手段200を中心に展開したものを下部から見て説明する斜視図である。
【0053】
ステージ機構10は、第一の並進手段100として、ベース部(回転テーブル205)と、ベース部と相対的に変位し、試料容器60A及び試料容器60Bを設置し、試料容器60A及び試料容器60Bを移動させる第一の並進テーブル103と、第一の並進テーブル103を滑らかに支持する第一の並進スライダ105と、並進移動のための動力を発生させるモータなどの駆動手段である第一の駆動モータ101と、第一の駆動モータ101の動力を伝達するボールねじなどの第一の直動機構102と、を有する。
【0054】
第一の並進テーブル103は、第一の直動機構102及び第一の駆動モータ101により、並進移動する。
【0055】
そして、第一の並進手段100は、図3中、X軸方向へ移動し、少なくとも試料容器60Aの分析領域を、観察する並進移動領域を有する。
【0056】
また、ステージ機構10は、回転手段200として、ベース部(第二の並進テーブル303)と、ベース部と相対的に回転方向に変位する回転テーブル205(回転中心を中心に回転変位する回転テーブル205)と、回転テーブル205を滑らかに支持するクロスローラベアリングなどの回転スライダ204と、回転移動のための動力を発生させるモータなどの駆動手段である回転モータ201と、駆動手段の動力を伝達する歯車機構である第一の歯車202及び第二の歯車203と、を有する。
【0057】
回転テーブル205は、第一の歯車202及び第二の歯車203と、回転モータ201とにより、回転移動する。
【0058】
そして、回転手段200は、試料容器60A及び試料容器60Bの位置を切り替えるため、少なくとも180°以上を回転する回転移動領域を有する。
【0059】
ここで、ステージ機構10は、厚さ方向の寸法を抑制し、更に、部品点数を低減するため、回転テーブル205が第一の並進手段100のベース部としての役割を担い、回転テーブル205と第一の並進手段100のベース部とが同一である。
【0060】
つまり、第一の並進テーブル103は、第一の並進スライダ105を介して、回転テーブル205と直接連結する。これにより、回転手段200により、第一の並進手段100の移動方向を変化させることができる。
【0061】
ステージ機構10は、第二の並進手段300として、ベース部(ステージベース40)と相対的に変位し、試料容器60A及び試料容器60Bを移動させる第二の並進テーブル303と、第二の並進テーブル303を滑らかに支持する第二の並進スライダ304と、並進移動のための動力を発生させるモータなどの駆動手段である第二の駆動モータ301と、第二の駆動モータ301の動力を伝達するボールねじなどの第二の直動機構302と、を有する。
【0062】
第二の並進テーブル303は、第二の直動機構302及び第二の駆動モータ301により、並進移動する。
【0063】
そして、第二の並進手段300は、図3中、Y軸方向へ移動し、少なくとも試料容器60Aの分析領域を、観察する並進移動領域を有する。
【0064】
ここで、ステージ機構10は、厚さ方向の寸法を抑制し、更に、部品点数を低減するため、第二の並進テーブル303が回転手段200のベース部としての役割を担い、第二の並進テーブル303と回転手段200のベース部とが同一である。
【0065】
つまり、回転テーブル205は、回転スライダ204を介して、第二の並進テーブル303と直接連結する。これにより、回転手段200により、第二の並進手段300の移動方向を変化させることができる。
【0066】
また、ステージ機構10は、観察される核酸が注入される試料容器60A及び試料容器60Bを、加熱・冷却する温調ユニット(温度調整機構)400を有する。なお、温調ユニット400は、試料容器60A及び試料容器60Bのそれぞれに設置される。
【0067】
温調ユニット400は、反応溶液が注入される試料容器60A及び試料容器60Bの設置台としても使用されると共に、試料容器60A及び試料容器60Bの温度を、適切な反応温度や観察温度に調整するために使用される。
【0068】
また、温調ユニット400は、内部にペルチェ素子を有し、試料容器60A及び試料容器60Bの温度を、適正な反応温度や観察温度に調整することができる。また、温調ユニット400は、ペルチェ素子の冷却のため、ヒートシンク401を有する。ヒートシンク401は、導電性の高い金属ブロックで構成される。ヒートシンク401の内部には、冷媒液(純水や不凍液など)の循環に使用する流路が形成される。
【0069】
これにより、核酸分析装置1は、一方の試料容器60では蛍光観察を実施し、他方の試料容器60では伸張反応及び蛍光標識反応を実施することができ、装置のスループットを向上することができる。また、核酸分析装置1は、2つの試料容器60A及び試料容器60Bを設置することにより、分析対象となる核酸試料の量も増加させることができる。
【0070】
実施例1によれば、核酸分析装置1は、回転手段200により、その上面及び下面に設置される2つの並進手段(100及び300)の移動方向を同一とし、2つの並進手段(100及び300)を同一方向へ移動させることができる。
【0071】
これにより、核酸分析装置1は、所定の方向へ試料容器60を移動させる動作を、2つの並進手段(100及び300)により、実現することができる。このため、核酸分析装置1は、それぞれの並進手段(100及び300)の必要移動量は小さくなる。そして、核酸分析装置1は、それぞれの並進手段(100及び300)を小型化することができ、装置を小型化することができる。
【0072】
また、核酸分析装置1は、回転動作により、2つの試料容器60A及び試料容器60Bに対して、観察対象を切り替えることができる。これにより、非観察対象の試料容器が退避するための領域を確保する必要がなく、分析手段を小型化することができる。
【0073】
次に、実施例1に記載する撮像中(試料分析時又は観察時)の分析手段の動作を説明する。
【0074】
図5は、実施例1に記載する撮像中の分析手段の動作を説明する上面図である。
【0075】
図6は、実施例1に記載する撮像中の分析手段の動作を説明する斜視図である。
【0076】
核酸分析装置1は、設置されている(回転手段200の上面に設置される並進手段100に搭載されている)2つの試料容器60のうち、一方の試料容器60Aでは、試料容器60Aの撮像(核酸(塩基)の蛍光観察)を実施し、他方の試料容器60Bでは、核酸(塩基)の伸張反応及び蛍光標識反応を実施する。
【0077】
核酸分析装置1では、試料容器60Aについて、図5中、fxとfyとで示される分析領域を、全て観察するため(全域撮像するため)、ステージ機構10を、点線矢印で示すように、X方向及びY方向へ、移動させる。
【0078】
ここで、回転テーブル205は、第一の並進テーブル103が、図5中、X方向へ移動可能な状態となる位置で停止している。
【0079】
そして、この状態では、試料容器60Aを、第一の並進手段100でX方向に、第二の並進手段300でY方向に、移動させる。
【0080】
核酸分析装置1は、撮像手段20の検出視野ごとに、撮像処理を、N回繰り返す。ここで、Nは、検出視野の数である。検出視野は、分析領域(全体)をN個に分割した際の個々の領域に相当する。検出視野の大きさは、1回の蛍光観察により、2次元センサで観察(検出)可能な大きさであり、光学系の設計により設定される。
【0081】
核酸分析装置1は、N箇所の検出視野を、第一の並進手段100及び第二の並進手段300により、撮像手段20(光源)から励起光が照射される位置に、試料容器60Aを合わせ、所定の露光時間において撮像手段20で撮像を実施するため、逐次、移動、停止を繰り返す。
【0082】
核酸分析装置1は、設置されている2つの試料容器60のうち、一方の試料容器60Aで、撮像を実施し、他方の試料容器60Bで、伸張反応及び蛍光標識反応を実施する。
【0083】
伸張反応及び蛍光標識反応に使用される試薬は、前述の通り、分注機構を使用し、試料容器60へ注入してもよいが、配管及びポンプを使用し、試料溶液60へ送液してもよい。なお、ここでは、分注機構により、反応溶液(試薬)が試料容器60へ注入される。
【0084】
試料容器60は、その上面に、分注機構(分注ノズル701)により、試薬を注入する注入口61を有する。
【0085】
また、核酸分析装置1における、光学ベース30の幅30Yと回転テーブル205の回転中心Cとは、分注機構が、試料容器60Bに対して、上部よりアクセス可能なように、設定される。つまり、試料容器60B(伸張反応及び蛍光標識反応を実施する試料容器60B)は、光学ベース30から露出する位置に設置され、光学ベース30の幅30Yよりも外側に設置される。
【0086】
つまり、光学ベース30は、ステージ機構10に搭載される2つの試料容器60A及び試料容器60Bのうち、一方の試料容器60の上部が開放されるように設置される。
【0087】
これにより、分注機構により、直接、試料容器60Bの注入口61に、試薬を注入することができる。
【0088】
次に、実施例1に記載する試料容器60の概略構成を説明する。
【0089】
図7は、実施例1に記載する試料容器60の概略構成を説明する説明図である。
【0090】
試料容器60は、その上面に、分注機構により、試薬を注入する注入口61を有する。注入口61は、傾斜面を有し、分注機構(分注ノズル701)が挿入される際、その案内を実施する。
【0091】
注入口61から注入された試薬は、核酸試料が固定されている流路62を流通し、内部に充填(注入)される。そして、試薬を交換する際は、注入口61から、次の試薬を注入することにより、既に充填されている試薬は押し出され、排出口63から、外に排出される。
【0092】
ここで、試料容器60Bの分注領域への移動は、ステージ機構10のXY平面内での位置決めにより実施される。試薬の分注が完了すると、試料容器60Bの温調ユニット400により、その内部のペルチェ素子に供給する電流量を制御し、試料容器60Bの温度を、試薬による伸長反応に適した温度に、制御する。
【0093】
そして、一方の試料容器60Aで、撮像を実施し、他方の試料容器60Bで、伸張反応及び蛍光標識反応を実施する。
【0094】
これらが完了した後、他方の試料容器60Bで、撮像を実施するため、回転モータ201を回転させ、回転ステージ205を180°回転させる。この回転動作により、試料容器60Bは、撮像手段20によって撮像可能な位置へ移動し、試料容器60Aは、分注機構により試薬が分注可能な位置へ移動する。
【0095】
このとき、試料容器60Aは、分注機構が上部よりアクセス可能なように、光学ベース30から露出する位置に設置され、光学ベース30の幅30Yよりも外側に設置される。
【0096】
このように、2つの試料容器60A及び試料容器60Bは、互いに位置が切り替わり、それぞれ撮像と伸張反応及び蛍光標識反応とが実施される。これを必要な処理回数実施し、核酸試料を観察し、塩基配列を特定する。
【0097】
このように、核酸分析装置1は、回転動作により、2つの試料容器60A及び試料容器60Bに対して、観察対象を切り替えることができる。これにより、単なる並進手段の組合せによる並進動作では必要となる、非観察対象の試料容器が退避するための領域を確保する必要がなく、分析手段を小型化することができる。
【0098】
最後に、実施例1に記載する核酸試料の交換時に90°回転テーブル205を回転させ、核酸試料の交換位置への移動後の各テーブルの状態を説明する。
【0099】
図8は、実施例1に記載する核酸試料の交換時に90°回転テーブル205を回転させた状態を説明する斜視図である。
【0100】
図9は、実施例1に記載する核酸試料の交換位置への移動後の各テーブルの状態を説明する斜視図である。
【0101】
2つの試料容器60A及び試料容器60Bの観察が完了した後に、試料容器60を取外し、次の分析対象となる新たな試料容器60と交換するため、作業者が、試料容器60にアクセス可能な位置に、試料容器60を移動させる。
【0102】
ここでアクセス可能な位置とは、図8及び図9中、W方向であって、2つの試料容器60A及び試料容器60Bが、共に、光学ベース30から露出される位置である。
【0103】
観察時は、第一の並進スライダ105と第二の並進スライダ304との向きが直交する状態(例えば、図3参照)である。これを交換時は、第一の並進手段100と第二の並進手段300とを、回転テーブル205を回転させることにより、図8に示すように、第一の並進テーブル103と第二の並進テーブル303とが、共に、図8中、W方向に移動可能なように、第一の並進スライダ105と第二の並進スライダ304との向きを一致させる。
【0104】
つまり、核酸分析装置1は、観察時は、2つの並進手段(100及び300)が互いに直交し、交換時は、2つの並進手段(100及び300)の移動方向が同一となる。
【0105】
その後、図9に示すように、第二の並進手段300によって、回転テーブル205及び第一の並進手段100を、図9中、W方向に移動させ、更に、第一の並進手段100により、第一の並進テーブル103を、図9中、W方向に移動させる。
【0106】
つまり、交換時は、回転手段200の上面に設置される並進手段100の第一の並進テーブル103に搭載される2つの試料容器60A及び試料容器60Bが、光学ベース30から完全に露出する。
【0107】
これにより、試料容器60A及び試料容器60Bが、光学ベース30の外側へ完全に露出し、作業者は、試料容器60を交換することができる。
【0108】
このように、核酸分析装置1は、2つの並進手段(100及び300)により、試料容器60を移動させる。これにより、核酸分析装置1は、それぞれの並進手段(100及び300)に必要とされる移動量を低減することができる。
【0109】
そして、核酸分析装置1は、回転手段200により、その上面及び下面に設置される2つの並進手段(100及び300)の移動方向を同一とし、2つの並進手段(100及び300)を同一方向へ移動させることができる。
【0110】
これにより、核酸分析装置1は、所定の方向へ試料容器60を移動させる動作を、2つの並進手段(100及び300)により、実現することができる。このため、核酸分析装置1は、それぞれの並進手段(100及び300)の必要移動量を小さくすることができる。そして、核酸分析装置1は、それぞれの並進手段(100及び300)を小型化することができ、装置を小型化することができる。
【0111】
なお、本発明は上記した実施例1に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例1は本発明を分かりやすく説明するために、具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。
【0112】
また、実施例1では、当業者が本発明を実施するために、その説明がなされているが、他の実施形態も可能であり、本発明の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく、構成の変更や多様な要素の置き換えが可能である。従って、特許請求の範囲の記述を、実施例1の記載に限定して解釈してはならない。
【符号の説明】
【0113】
1・・・核酸分析装置、10・・・ステージ機構、20・・・撮像手段、30・・・光学ベース、40・・・ステージベース、50・・・除振マウント、60・・・試料容器、70・・・送液手段、100・・・第一の並進手段、101・・・第一の駆動モータ、102・・・第一の直動機構、103・・・第一の並進テーブル、105・・・第一の並進スライダ、200・・・回転手段、201・・・回転モータ、202・・・第一の歯車、203・・・第二の歯車、204・・・回転スライダ、205・・・回転テーブル、300・・・第二の並進手段、301・・・第二の駆動モータ、302・・・第二の直動機構、303・・・第二の並進テーブル、304・・・第二の並進スライダ、400・・・温調ユニット、401・・・ヒートシンク、701・・・分注ノズル、702・・・アーム部。
図1
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