(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】使い捨て手術用ドレープ
(51)【国際特許分類】
A61B 46/20 20160101AFI20230629BHJP
A61F 9/007 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
A61B46/20
A61F9/007 200Z
(21)【出願番号】P 2021559461
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 US2020023492
(87)【国際公開番号】W WO2020191120
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-11-22
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521437792
【氏名又は名称】アート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アカホシ,タカユキ
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0030702(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0318027(US,A1)
【文献】米国特許第06345622(US,B1)
【文献】特開2008-086823(JP,A)
【文献】特開平06-343654(JP,A)
【文献】特開平03-264058(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0224081(US,A1)
【文献】特表2018-532480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 46/20
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使い捨て手術用ドレープ(20)であって、
上面及び患者に接触するようになっている下面を有する、可撓性材料のベースシート(24)と、
前記ベースシート(24)を貫通して形成され、それぞれ所定の長さを有し、前記患者の一方及び他方の眼の近位に位置決め可能な第1及び第2の手術用開口部(28,30)と、
前記ベースシートの下面に形成され、前記第1及び第2の手術用開口部(28,30)の近位に位置し、前記手術用開口部(28,30)を少なくとも部分的に取り囲み、前記ベースシート(24)の少なくとも一部を前記患者に対して固定するために前記患者に前記ベースシートの下面を取り付けることを可能にする、取付けゾーン(32)と、
前記患者の前記眼を保護するために前記手術用開口部(28,30)のうちの一方に位置決めするようになっている少なくとも1つの保護パッチ(40)と
を備え、
前記少なくとも1つの保護パッチ(40)は、1つの表面に適用された感圧接着剤を有するポリマーシートを備え、細長いスリット(44)を画定しており、それにより、前記第1及び第2の手術用開口部(28,30)をそれぞれ前記患者の前記眼に合わせて前記患者に前記ベースシート(24)を位置決めした後、前記保護パッチ(40)は、前記手術用開口部(28,30)のうちの一方の上に適用可能であり、前記感圧接着剤により前記ベースシート(24)に取り外し可能に固定可能である、
使い捨て手術用ドレープ(20)。
【請求項2】
前記取付けゾーン(32)が、感圧接着剤を含む、請求項1記載の使い捨て手術用ドレープ(20)。
【請求項3】
前記取付けゾーン(32)が、前記第1及び第2の手術用開口部(28,30)の周囲に延在している、請求項2記載の使い捨て手術用ドレープ(20)。
【請求項4】
前記第1及び第2の手術用開口部(28,30)のうちの一方の近位に位置決めされた少なくとも1つの取外し可能な小袋(52)をさらに備える、請求項1記載の使い捨て手術用ドレープ(20)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの取外し可能な小袋(52)は、前記第1及び第2の手術用開口部(28,30)のうちの前記一方に面する開口部を画定している、請求項4記載の使い捨て手術用ドレープ(20)。
【請求項6】
前記第1及び第2の手術用開口部(28,30)のそれぞれの近位に位置決めされた一対の取外し可能な小袋(52)をさらに備える、請求項1記載の使い捨て手術用ドレープ(20)。
【請求項7】
前記保護パッチ(40)の前記感圧接着剤は、前記保護パッチ(40)の外周に設けられており、それにより、前記保護パッチ(40)により画定された前記スリット(44)を取り囲む接着剤のない領域を画定している、請求項1記載の使い捨て手術用ドレープ(20)。
【請求項8】
前記第1及び第2の手術用開口部(28,30)が、前記ベースシート(24)の外側縁により覆われないままである程度に、前記ベースシート(24)が前記外側縁で折り畳まれている、請求項1記載の使い捨て手術用ドレープ(20)。
【請求項9】
少なくとも1つの手術用開口部(28,30)を有する手術用ドレープ(20)と共に使用するための保護パッチ(40)であって、
1つの表面に適用された感圧接着剤を有し、細長いスリット(44)を画定しているポリマーシートを備え、それにより、前記保護パッチ(40)は、前記手術用ドレープ(20)の前記少なくとも1つの手術用開口部(28,30)上に適用されるように構成されている、保護パッチ(40)。
【請求項10】
前記感圧接着剤は、前記保護パッチ(40)の取り外しに伴って前記手術用ドレープ(20)の材料が実質的に除去されることなしに、前記保護パッチ(40)が前記手術用ドレープ(20)に取り外し可能に固定されるように選択されている、請求項
9記載の保護パッチ(40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、眼科的手術を含む手術の分野に関し、とりわけ、人間の眼の手術中、特に両眼手術中に使用するための、及び他の外科手術中に使用するための、使い捨て手術用ドレープに関する。この手術用ドレープは、患者に取り付けるようになっている第1及び第2の手術用開口部を画定しているベースシートと、ドレープが患者に配置された後に手術用開口部のうちの一方の上に適用することができる少なくとも1つの保護パッチとを備える。
【背景技術】
【0002】
眼が老化したり、病気になったり又は傷付いたりすると、眼の生来の水晶体を除去する必要がある場合がある。このような除去は、白内障手術では一般的であり、白内障手術では、曇った水晶体が除去される。眼の生来の水晶体の除去により、患者の焦点合わせされた視力の喪失又は変化が生じるであろう。眼鏡、コンタクトレンズ又は人工レンズの埋込みが、患者の視力を回復させるのに必要であろう。
【0003】
眼の生来の水晶体を除去する間、医師は、概して、眼に1つ以上の小さな切開を行い、切開部に振動針を挿入する。超音波水晶体乳化吸引術として知られているプロセスで水晶体を切除するために、この針は、ねじれ、長手方向、楕円又は混合モードで、超音波速度で振動させられる。この針は、概して、破砕した水晶体粒子を眼から除去するための1つ以上の吸引通路を含む。また、水晶体を切除するために、レーザーを使用する場合がある。
【0004】
この外科手術は、概して、患者の眼の上に置かれる眼科用ドレープを使用して行われる。眼科用ドレープは、手術が行われる眼の上に位置することになる1つの開口部を有する。ドレープは、手術用器具を挿入するための開口部を有し、ドレープを患者の皮膚に固定するための接着剤を有する場合がある。局部麻酔又は局所麻酔が眼に適用される。しかしながら、外科手術に耐えられない一部の患者又は閉所恐怖症を患っている可能性がある一部の患者には、全身麻酔が必要な場合がある。手術されていない眼の遮られた視界は、このような閉所恐怖症をさらに悪化させる場合がある。局所麻酔と比較した場合、全身麻酔により、外科手術にかなりの費用が掛かってしまう場合があり、患者の健康にさらにリスクをもたらす場合があり得る。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、広範囲の可能な用途を有する使い捨て手術用ドレープに関する。本発明の発明者は、本ドレープを眼科的外科手術、特に両眼手術に特に適しているようにすることができ、眼科的手術を受けている患者の閉所恐怖症を最小限に抑えるように構成することができることを見出した。特に、このドレープはベースシートを含み、このベースシートは、一対の手術用開口部と、患者へのベースシートの固定を容易にするための接着剤、好ましくは感圧接着剤とを有する。このドレープは、手術中に各手術用開口部を順次に覆うために、同じく接着剤、好ましくは感圧接着剤を備えた1つ以上の保護パッチを含む。各保護パッチは、そこを通して外科手術を行うことができるスリットを画定している一方、他方の手術用開口部は、患者の閉所恐怖症を最小限に抑えるか又は防ぐために開放されていて、遮られないままになっている。患者の一方の眼に手術を行った後に、保護パッチを取り外し、他方の手術用開口部に新たな保護パッチを適用して、患者の他方の眼に外科手術を行うことが可能となる。
【0006】
本発明によれば、両眼手術を含む眼科的手術に特に有用な使い捨て手術用ドレープが提供される。このドレープは、薄い可撓性材料のベースシートを有する。ベースシートは、上面と、患者に接触するようになっている下面と、少なくとも1つの縁部とを有する。
【0007】
手術での使用を容易にするために、本手術用ドレープのベースシートは、ベースシートを貫通して形成され、それぞれ所定の長さを有し、患者の一方及び他方の眼の近位に位置するようになっている第1及び第2の手術用開口部を含む。ベースシートの下面に形成されて感圧接着剤を含む取付けゾーンは、第1及び第2の手術用開口部の近位に位置し、好ましくは、手術用開口部を少なくとも部分的に取り囲んでいる。このようにして、取付けゾーンは、外科手術を行うための所望の位置でベースシートを患者に固定するために、患者にベースシートの下面を取り付けることを容易にする。好ましい実施形態では、取付けゾーンは、ベースシートの下面で第1及び第2の手術用開口部の全周に延在している。
【0008】
本発明によれば、本手術用ドレープは、患者の眼を保護するために、手術用開口部の一方に位置決めされ、これを実質的に覆うための少なくとも1つの保護パッチをさらに含む。各保護パッチは、1つの表面に適用された感圧接着剤を有するポリマーシートの形態を有し、そこを通して外科手術が行われる細長いスリットを画定している。各保護パッチ上の感圧接着剤は、好ましくは、保護パッチの外周に設けられており、それにより、保護パッチにより画定されたスリットを取り囲む接着剤のない領域を画定している。
【0009】
このため、第1及び第2の開口部をそれぞれ患者の眼に合わせて患者にベースシートを位置決めした後、保護パッチのうちの1つを手術用開口部のうちの一方の上に適用することができ、保護パッチに設けられた感圧接着剤によりベースシートに取り外し可能に固定することができる。外科手術が保護パッチを通して行われた後、パッチを取り外し、廃棄することができ、新たな保護パッチが他方の手術用開口部に適用され得る。そして、患者の他方の眼に外科手術を行うことができる。
【0010】
本発明の説明された好ましい実施形態では、この手術用ドレープは、ベースシートにより画定された第1及び第2の開口部のうちの一方の近位に位置決めされる少なくとも1つの取外し可能な小袋をさらに含む。取外し可能な小袋は、好ましくは、それが近位に位置決めされる手術用開口部のうちの一方に面する開口部を画定している。好ましい形態では、この使い捨て手術用ドレープは、ベースシートにより画定された第1及び第2の手術用開口部それぞれの近位に位置決めされる一対の取外し可能な小袋を含む。
【0011】
効率的な使用を容易にするために、第1及び第2の手術用開口部が、手術用ドレープのベースシート外側縁により覆われないままである程度に、ベースシートがその外側縁で折り畳まれる。
【0012】
本発明によれば、両眼手術のために患者を覆う方法は、上面及び患者に接触するようになっている下面を有する可撓性材料のベースシートと、このベースシートを貫通して形成された第1及び第2の手術用開口部とを備える手術用ドレープを提供する工程を含む。手術用開口部は、それぞれ所定の長さを有し、手術用開口部は、患者の一方及び他方の眼の近位に(その上に位置合わせされて)位置決め可能である。手術用ドレープは、ベースシートの下面に形成され、第1及び第2の手術用開口部の近位に位置し、好ましくは、手術用開口部を少なくとも部分的に取り囲み、ベースシートの少なくとも一部を患者に対して固定するように患者にベースシートの下面を取り付けるための取付けゾーンをさらに含む。
【0013】
本方法は、患者の眼を保護するために手術用開口部のうちの一方に位置決めするようになっている少なくとも1つの保護パッチを提供することをさらに含む。各保護パッチは、1つの表面に適用された感圧接着剤を有するポリマーシートを備え、細長いスリットを画定している。取付けゾーンが患者に固定されるように、第1及び第2の開口部をそれぞれ患者の眼に合わせて患者にベースシートを位置決めした後、保護パッチを手術用開口部の一方の上に適用し、保護パッチを感圧接着剤によりベースシートに取り外し可能に固定する。
【0014】
好ましい実施では、本方法は、第1及び第2の手術用開口部のうちの一方の近位に位置決めされるように、少なくとも1つの取外し可能な小袋をベースシート上に提供することを含む。各小袋は、感圧接着剤によりベースシートに取り外し可能に固定され、外科手術で使用される手術用装置に吸引されない平衡塩溶液のいくらかのオーバーフローを捕集するように設計されている。
【0015】
本方法は、外科手術が患者の一方の眼に行われた後、次いで、その眼に対する保護パッチ及び取外し可能な小袋がベースシートから取り外されることを企図している。その後、別の保護パッチ及び別の小袋を他方の手術用開口部及び患者の他方の眼に対してベースシートに適用することができる。
【0016】
本発明の別の特徴は、患者における閉所恐怖症を低減する及び/又は最小限に抑えるための低コストの使い捨て手術用ドレープを提供することである。
【0017】
本発明の別の態様では、患者の上にドレープを位置決めし、それに続けて、患者を覆うようにドレープを広げることを容易にするために、折り畳まれた手術用ドレープが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】展開形態及び折畳み形態の両方で示された、本発明の原理を具体化する使い捨て手術用ドレープの概略的な平面図である。
【
図2】本発明に係る使い捨て手術用ドレープのベースシートに選択的に固定することができる一対の保護パッチの概略的な平面図である。
【
図3】
図1の本使い捨て手術用ドレープの概略的な裏面図であり、患者にドレープを取り外し可能に固定するための取付けゾーンを示す。
【
図4】
図2に示された保護パッチのうちの一方の概略的な平面図である。
【
図5】
図2に示された保護パッチのうちの一方の概略的な裏面図であり、保護パッチに設けられた感圧接着剤からの2つの実施形態の保護層の除去を示す。
【
図6】所望の外科手術のために患者に対して展開し、患者に固定するための、折り畳まれた状態の本手術用ドレープを示す概略図である。
【
図7】所望の外科手術に備えて展開された状態にあり、患者の所定の位置にある本手術用ドレープを示す概略図である。
【
図8】
図7と同様の概略図であり、患者の一方の眼に対する外科手術中の本手術用ドレープを示し、保護パッチが、患者の一方の眼の実質的に上でドレープのベースシートに貼り付けられ、灌流流体を捕集するために、一対の除去可能な小袋が、各眼に隣り合った位置でドレープのベースシートに貼り付けられたところを示す。
【
図9】
図8と同様の概略図であり、患者の一方の眼に対する外科手術の完了を示し、患者の一方の眼に隣り合ったパッチ及び小袋の取り外しを示す。
【
図10】
図9と同様の概略図であり、患者の他方の眼に対して外科手術を行うために使用される本手術用ドレープを示し、保護パッチが、患者の他方の眼の実質的に上でドレープのベースシートに貼り付けられたところを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面及び詳細な説明を参照して、より良く理解される。
【0020】
本発明では、種々の形態の実施形態が可能であるが、現在好ましい実施形態を図面に示し、以下に説明する。当然ながら、本開示は、本発明の例示とみなすべきものであり、本発明を図示した特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0021】
本使い捨て手術用ドレープは、眼科的外科手術、特に両眼手術に関連して使用するのに特に適している。ただし、記載するように、手術用ドレープの特徴により、中心静脈カテーテル法(CVC)、他のカテーテル法、麻酔法及び他の外科手術を含む他の手術にこの手術用ドレープを有利に使用することが可能である。
【0022】
図1は、本発明の原理を具体化する眼科的手術に特に有用な使い捨て手術用ドレープ20の平面図である。ドレープ20は、薄い可撓性の材料で形成されたほぼ長方形のベースシート24で形成されている。ベースシート24は、薄葉紙、織物、流体透過性及び非流体透過性ポリマー並びに/又はそれらの複合材料から形成することができる。好ましくは、ベースシート24は、1回の使用後に廃棄される軽量で耐水性の紙で構成されている。別の好ましい形態では、ベースシート24は、複合不織布であるSMS(スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド)布を含む。ドレープ20は、ほぼ長方形のベースシート24を有する必要はなく、外科手術を受ける患者の領域に適合するように、各種の形状、例えば、多角形、円形、楕円形又は不規則な形状のいずれかを有していてもよい。
【0023】
ベースシート24は、(
図1において見える)上面、(
図3において見える)下面及びそれらの間の縁部を有する。下面は、眼科的手術を受けている患者の顔面上に位置決め可能であり、顔面と接触する。
【0024】
図1に見られるように、ベースシート24は、眼科的手術中に患者の眼の上にそれぞれ位置決めされるようになっている、ベースシート24を貫通した第1及び第2の手術用開口部28,30を画定している。開口部28,30は、概して、ベースシート24から切り取られてベースシート24に初めから形成されているか、又は弱化させられた若しくは穿孔された領域に沿ってベースシート24を引き裂く若しくは裂開することにより後で形成される。また、開口部28,30は、手術用器具によるベースシート24の切開又は穿孔により形成されてもよい。開口部28,30は、概して、円形、楕円形又は細長いスロット形状である。好ましくは、開口部28,30は、閉所恐怖症の可能性を最小限に抑えるために、患者の周囲の視野を遮らないのに十分な大きさである。
【0025】
図3に見られるように、ドレープ20の裏面図は、そのベースシート24の下面を示し、ドレープ20は、好ましくは、外科手術中にベースシート24を除去可能に患者の顔面に貼り付け、固定することができるように、開口部28,30を少なくとも部分的に取り囲む感圧接着剤を備える取付けゾーン32をさらに有する。好ましい形態では、取付けゾーンは、開口部28,30の全周に延在している。保護層34は、使用前に接着剤を新しい状態に維持するために、取付けゾーン32の感圧接着剤に除去可能に固定されている。取付けゾーン32は、手術用開口部28,30を完全に取り囲んで示されているが、取付けゾーン32は、代わりに、手術用開口部28,30を部分的にのみ取り囲んで提供されてもよいし、ベースシートの下面の他の箇所に配置されてもよい。
【0026】
特に、第1及び第2の手術用開口部28,30を設けることにより、外科手術が容易になり、外科手術が一方の眼に対して行われている間、他方の眼が覆われていないままにしておくことができるため、患者が経験するおそれがあるある種の閉所恐怖症を望ましく最小限に抑えられる。本発明者は、両眼手術中等に連続して使用される一対の手術用開口部を設けることにより、手術中に他方の眼の視界がベースシート24により遮られないため、閉所恐怖症患者の不安を望ましく最小限に抑えることができることを見出した。このような立体視を患者に提供することにより、全身麻酔に代わる低コストの方法を提供することができ、不安な閉所恐怖症の患者の動きを減らすことができる。
【0027】
ドレープ20の別の重要な特徴は、手術されていない眼により見られる固視灯によって、眼の位置をより良好に制御することができることである。従来技術では、手術中に手術される眼の位置を制御するために、従来の固視灯が顕微鏡に組み込まれていた。しかしながら、顕微鏡の明るい照明及び手術される眼の低視力のため、このような固視灯は理想的ではなかった。手術されていない眼が、手術中でない方の開口部を通して見ることができる場合、手術されていない眼は、手術中に眼の位置を導くのに役立つ可能性がある。
【0028】
本発明によれば、
図2、
図4及び
図5を参照すると、本手術用ドレープ20は、患者の眼を保護するために、手術用開口部28,30のうちの一方に位置し、これを覆うための少なくとも1つの保護パッチ40をさらに備える。好ましくは、ドレープ20は、一対の保護パッチ40を備え、各保護パッチは、患者の各眼に対して行われる手術に1回使用され得る。
【0029】
各保護パッチ40は、1つの表面に適用された感圧接着剤42(
図5に見られる)を有するポリマーシートを含み、外科手術を行う際の細長いスリット44を画定している。
図2に示されたように、各保護パッチ40上の感圧接着剤は、好ましくは、その外周に設けられており、それにより、保護パッチにより画定されたスリット44を取り囲む接着剤のない領域が画定される。好ましくは、
図5に示されたように、各保護パッチ40には、使用前に感圧接着剤42を新しい状態に維持するために、除去可能な保護層46が設けられている。
図5は、接着剤42を覆うための、パッチ40の全体にわたって広がる層材の形態の保護層46と、パッチ40の外周にのみ延在する除去可能なストリップ材の形態の保護層46との2つの取り得る実施形態を示す。
【0030】
図7からさらに分かるように、ドレープ20は、好ましくは、ベースシート24の上面に、少なくとも1つ、より好ましくは、一対の取外し可能な小袋又は区画52をさらに備える。各小袋52は、好ましくは、手術用開口部28,30それぞれの近位に位置し、各小袋の開口部は、各手術用開口部に面する。各小袋52は、外科手術に使用される手術用装置に吸引されない平衡塩類溶液のオーバーフローを捕集するように設計されている。概して、平衡塩類溶液は、眼内の圧力を維持するための灌流液として、手術を受けている眼に適用される。次いで、平衡塩類溶液は、概して、衛生廃棄のために1つ以上の管腔を通して吸引される。このような管腔に吸引されない過剰な平衡塩類溶液は、ベースシート24上に集まる場合がある。小袋52は、平衡塩類溶液の蓄積を排除するか又は少なくとも抑制するのに役立つ。あるいは、小袋52は、ドレープ20が患者の顔面に掛けられ、取り付けられるときに、種々の手術用ツール、器具及び/又は供給品を保持することができる。小袋52は、ベースシート24の上面への熱溶着、接着又は縫合により、ドレープと一体に形成され得る。好ましくは、小袋52は、閉所恐怖症の感覚を増大させるおそれがある呼吸に対する障害を低減するために、患者の顔面上のベースシート24の重量を低減するように取り外し可能である。本発明の1つの好ましい形態では、小袋52は、手術の直前に患者の特定の眼に隣り合わせて貼り付けられ、次いで、小袋52は、手術の直後に取り外される。
【0031】
以下に、患者を覆うための、例えば、両眼手術のための、本眼科用ドレープ20の使用方法を説明する。この点に関して、好ましくは、第1及び第2の手術用開口部28,30が、ベースシート24の外側縁により覆われないままとなるように、この外側縁が折り畳まれるやり方で、ドレープ20は折り畳まれている(
図6)ことに留意されたい。これにより、患者へのドレープ20の配置及び患者の顔面へのドレープの取付けゾーン32の固定が容易になり、所望の外科手術を行うことができるようになる。
【0032】
取付けゾーン32から保護層34を除去してその感圧接着剤を露出させた後、手術用ドレープ20が患者の顔面に置かれ、取付けゾーンの接着剤により固定される。次いで、
図7に示されたように、ベースシート24の下面が患者に取り付けられ、ドレープ20が所定の位置にある状態で、ベースシート24の外側縁が展開され得る。このようにして、患者は、外科手術を行うために所望の形式で覆われる。手術用開口部28,30はそれぞれ、患者の眼の近位に位置決めされる。
【0033】
図8に示されたように、本方法は、次いで、患者の眼を保護するために、手術用開口部28,30の一方に位置決めされる少なくとも1つの保護パッチ40が設けられることを含む。保護パッチ40の保護層46は、感圧接着剤42を露出させるために除去される。第1及び第2の開口部28,30それぞれを患者の眼に合わせて患者にベースシート24を位置決めした後に、保護パッチ40を手術用開口部の一方の上に(
図8では開口部30の上に)適用し、このようにして、保護パッチ40は、感圧接着剤によりベースシート24に除去可能に固定される。続いて、保護パッチ40のスリット44を通して外科手術が行われ、一方、他方の眼は覆われていないままである。
【0034】
上記されたように、好ましい形態では、少なくとも1つの取外し可能な小袋52が、第1及び第2の手術用開口部28,30のうちの一方の近位に位置決めされて、ベースシート24上に設けられる。このため、
図8に示されたように、小袋52は、外科手術に使用される手術用装置に吸引されない平衡塩類溶液のオーバーフローを捕集するために、開口部30の近位に示されている。
【0035】
図9に示されたように、本方法では、患者の一方の眼に外科手術が行われた後に、保護パッチ40及び当該一方の眼に隣り合った取外し可能な小袋52が、ベースシート24から取り外され、廃棄されることが企図されている。好ましくは、ドレープのベースシート24がパッチ40の取り外し時に適所に残るように、パッチ40の取り外し時にドレープのベースシート24のいかなる材料も実質的に動かさないように、保護パッチ40の接着剤は選択される。その後、
図10に示されたように、第2の新たな保護パッチ40が、患者の他方の眼における、当該他方の手術用開口部28上のベースシート24に適用される。
【0036】
上記された実施形態は、患者が都合よく快適に呼吸することを容易にするようにドレープと患者との間に高さ及びクリアランスを提供するために、ノーズクリップ又は同様のスペーサ要素を備えてもよいことが企図されている。
【0037】
前述の説明では、本手術用ドレープを眼科的外科手術に関連して説明してきたが、当然ながら、最小接着フィルムにより提供される取付けゾーンを含む本手術用ドレープは、他のタイプの外科手術にも有利に使用することができる。
【0038】
例として、中心静脈カテーテル法(CVC)では、予防可能な罹患及び死亡と関連するカテーテル関連血流感染を予防するために最大限の無菌バリア予防策が必要である。使い捨て手術用ドレープは、治療標準として推奨されているが、特にこの目的のためのものは、自由に入手可能でもなく、費用効果もない。本使い捨てドレープは、この目的で有利に使用することができる。
【0039】
本使い捨て手術用ドレープは、適切なサイズ、例えば、約7cm×9cmの手術用開口部28,30を有する70cm×70cmの平均サイズを備えることができる。
【0040】
本使い捨て手術用ドレープは、理想的な選択肢を提供し、最適なレベルの無菌性を保証する。取付けゾーン32によって設けられた接着領域は、ドレープを安定した位置に保つように機能し、それにより、複数のドレープが必要になることがない。現在のほとんどの使い捨てドレープは、低リント及び耐摩耗性布地から作製され、それらの非穿孔設計のためにレベル4の液体バリア性能を有し、したがって、リネン布ドレープと比較して、吸収品質が不十分である。使い捨てドレープの不在下で使用されるポリエチレンドレープは、完全に非吸収性であり、適所に安定したままではない。手術用開口部に隣り合わせて設けられた小袋52は、灌流流体を捕集するように設計されており、内頸静脈挿管の間、小袋は、皮下管の拡張後に生じる血液の細流を捕集し、首及び肩領域の汚損及び汚染と、ドレープ上の細流が床に向かって術者の足下に流下してしまうこととを防止することができる。
【0041】
使い捨て手術用ドレープは、CVC専用のものとは対照的に、費用効果がより高い。
【0042】
また、本手術用ドレープを、鎖骨下、大腿及び末梢挿入型中心カテーテルラインカテーテル法にもうまく使用することができる。また、本手術用ドレープを脊椎又は硬膜外麻酔処置及び他の局所ブロックの間の分離にも使用することができる。神経軸遮断の間、透けている接着領域の長手方向は、脊柱の長さ方向に沿って配置されることが望ましく、その結果、困難な場合でも、2~3個の棘間空間へのアクセスを容易に行うことができる。小袋52は、後端方向に配置されることが望ましい。最良の利益は、硬膜外手術においてカテーテルを挿入した後にTuohy針を除去する際に見られる。通常では、手術台を汚損する背中からの血液の細流が生じる。
【0043】
まとめると、本手術用ドレープは、各種の望ましい利益を提供する。ドレープは、費用効果があり、患者を覆い、保護するのに非常に効率的に使用することができる。予め切断されたスリット44を有する保護パッチ40が、ベースシート24とは別個に提供されるため、ベースシートが患者の適所に留まっている間に、保護パッチを患者のまぶたを覆うように容易に貼り付けることができる。保護パッチは、大きなドレープ本体には固定されていない。
【0044】
患者の両眼を開いたままにすることができるため、本手術用ドレープは、患者が経験する場合がある閉所恐怖症を望ましく最小限に抑えられる。両眼が覆われていなければ、覆われていない眼により、手術が行われている眼の位置を導き、その位置を固定することが可能となる。
【0045】
本発明者は、ドレープ20の大きなベースシート24とは別個に1つ以上の保護パッチ40を提供することにより、従来技術のドレープと比較して、ドレープ20を製造するコストが削減されるだけでなく、従来技術のドレープと比較して、より容易かつ効率的に患者への適用が行われることを見出した。本発明の広範な一形態では、1つ以上のパッチ40をドレープ20のベースシート24とは別個に販売あるいは何等かの方法で提供することができる。
【0046】
また、本手術用ドレープの使用は、麻酔及び集中治療室における種々の処置のための日常的な使用にも推奨される。
【0047】
示された好ましい実施形態は、説明の目的のためだけに本明細書に含まれており、本発明の最も広い概念を限定するものとして何ら解釈されるべきではない。