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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20230630BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/304 648A
H01L21/304 651B
H01L21/304 651Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019093622
(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公開番号】P2020188228
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】河原 啓之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 光治
(72)【発明者】
【氏名】菊本 憲幸
(72)【発明者】
【氏名】墨 周武
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-024975(JP,A)
【文献】特開2003-092244(JP,A)
【文献】国際公開第96/25760(WO,A1)
【文献】特開2017-183666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に液膜が形成された基板を搬送する基板処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバに隣接するベース部と、
前記基板を保持するハンドと、
前記ベース部に取り付けられ、前記ベース部に対して水平方向に前記ハンドを移動させることで、前記ハンドを前記チャンバに対し進退移動可能なアームと、
前記基板を保持する前記ハンドを収容可能な内部空間を有し、前記アームにより進退移動される前記ハンドを通過させる開口を側部に有するカバー部と
を備え、
前記カバー部は、
前記内部空間を形成するカバー本体と、
水平方向に貫通しその一方端が前記開口となる中空構造を有し、前記開口を前記内部空間に連通させつつ水平方向に移動可能な状態で、前記カバー本体に係合される延伸部材と
を有し、
前記延伸部材は、前記カバー本体の前記内部空間内から外部へ延設され、前記延伸部材が前記チャンバ側に進出した状態で、前記アームが前記内部空間から前記開口を介して前記ハンドを前記チャンバ内に進入させる、基板処理装置。
【請求項2】
前記ベース部に対し前記アームと前記カバー本体とを一体的に旋回させる旋回機構を備える請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記延伸部材の先端部が前記チャンバの側壁と係合する形状となっている請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記カバー本体は、底部に液体を貯留可能である請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記内部空間に負圧を供給する負圧供給部を備える請求項1ないしのいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記アームにより、前記ハンドが前記チャンバの内部まで進入する内部位置と、前記ハンドが前記チャンバの外部にある外部位置との間で前記ハンドを進退移動させ、前記延伸部材を、前記チャンバ側に進出した進出位置と、前記進出位置よりも前記カバー本体側に後退した後退位置との間で水平移動させる制御部をさらに備える請求項1ないしのいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記延伸部材を前記カバー本体側に退避させた状態で、前記ベース部に対し前記アームと前記カバー本体とが一体的に移動する請求項1ないしのいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記チャンバとしての第1チャンバおよび第2チャンバを備え、前記液膜が形成された前記基板を前記第1チャンバから前記第2チャンバへ搬送する請求項1ないしのいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第1チャンバの内部で、水平姿勢の基板の上面に液膜を形成する処理が実行され、前記第2チャンバは、前記液膜が形成された前記基板を受け入れる請求項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第1チャンバおよび前記第2チャンバの各々には、前記ベース部に面する側壁に前記ハンドの進入を受け入れる受け入れ口が設けられ、前記延伸部材の先端部が前記受け入れ口に係合する形状となっている請求項またはに記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記アームは、前記延伸部材と前記受け入れ口とが係合した状態で、前記開口を介した前記ハンドの進退移動を実行する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記アームは、前記延伸部材と前記第1チャンバの前記受け入れ口とが係合した状態で、前記第1チャンバから前記基板を搬出する請求項1または1に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記アームは、前記延伸部材と前記第2チャンバの前記受け入れ口とが係合した状態で、前記第2チャンバへ前記基板を搬入する請求項1ないし1のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記第1チャンバでは有機溶剤による前記液膜が前記基板に形成され、前記第2チャンバでは超臨界流体により前記基板が処理される請求項ないし1のいずれかに記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液盛りされた基板を複数チャンバ間で搬送する基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、表示装置用ガラス基板等の各種基板の処理工程においては、基板に対する処理が複数のチャンバで順次実行される場合、チャンバ間での基板の搬送が必要となる。この場合において、基板表面の露出や表面に形成されている微細パターンの倒壊を防止する目的で、水平姿勢の基板に液盛りした、つまり基板上面を液膜で覆った状態で搬送されることがある。このような搬送形態においては、搬送中に基板から液体が流失し、あるいは液体が蒸発することで、基板表面が露出したり、液体成分が周囲に飛散し装置内部に付着したりすることが問題となる。
【0003】
この問題に対応するため、例えば特許文献1に記載の技術では、基板を搬送する搬送ロボット全体をカバーで覆い、さらに、基板を保持するハンドをカバー内に設けられたケースに収容している。これにより、基板上の液体が外部へ漏出することが防止されている。そして、基板をチャンバへアクセスするときのみ、ハンドがケースから外部へ進出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-092244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数チャンバ間での基板の搬送という動作の性質上、基板のチャンバへの搬入およびチャンバからの搬出のためのハンドの進退移動の他に、搬送ロボット本体がチャンバに対して移動し、所定位置に位置決めされることが必要である。このため、上記した従来技術の装置においては、搬送ロボットとチャンバとの間に相互の干渉を回避するための隙間が必要である。したがって、搬送ロボットとチャンバとの基板の受け渡しにおいて、一時的に基板がカバーから露出し保護されない状態となる。また、搬送ロボット全体をカバーに収めることから、搬送ロボットを含む基板処理装置全体が大型になるという問題もある。このように、上記従来技術は、搬送中の基板からの液体の飛散を防止するという課題に対しては、実用面で改善の余地が残されている。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、液盛りされた基板をチャンバ間で搬送する基板処理装置において、液体の飛散を確実に防止しつつ、チャンバ間での基板の搬送を実現することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の態様は、上面に液膜が形成された基板を搬送する基板処理装置であって、上記目的を達成するため、チャンバと、前記チャンバに隣接するベース部と、前記基板を保持するハンドと、前記ベース部に取り付けられ、前記ベース部に対して水平方向に前記ハンドを移動させることで、前記ハンドを前記チャンバに対し進退移動可能なアームと、前記基板を保持する前記ハンドを収容可能な内部空間を有し、前記アームにより進退移動される前記ハンドを通過させる開口を側部に有するカバー部とを備えている。
【0008】
そして、前記カバー部は、前記内部空間を形成するカバー本体と、水平方向に貫通しその一方端が前記開口となる中空構造を有し、前記開口を前記内部空間に連通させつつ水平方向に移動可能な状態で、前記カバー本体に係合される延伸部材とを有する。前記延伸部材は前記カバー本体の前記内部空間内から外部へ延設され、さらに、前記延伸部材が前記チャンバ側に進出した状態で、前記アームが前記内部空間から前記開口を介して前記ハンドを前記チャンバ内に進入させる。
【0009】
このように構成された発明では、カバー本体とチャンバとの間を、カバー本体からチャンバ側に向けて進退する延伸部材によって接続することができる。これにより、チャンバの内部空間とカバー部の内部空間とを連通させることができる。そのため、カバー部内とチャンバ内との間を移動するハンドによる基板の搬送の過程においては、ハンドにより保持される基板を周囲空間に露出させずに済む。したがって、搬送中に基板上の液体がこぼれたり蒸発したりしたとしても、周囲空間に飛散することが防止される。
【0010】
また、延伸部材がカバー本体側に退避移動することで、カバー部とチャンバとの間が離隔される。したがって、チャンバとの干渉を回避しながら、必要に応じカバー部を移動させることも可能である。これにより、チャンバ間での基板の搬送を高い自由度で実現することができる。
【0011】
また、この発明の他の態様は、前記チャンバとしての第1チャンバおよび第2チャンバを備え、前記液膜が形成された前記基板を前記第1チャンバから前記第2チャンバへ搬送する基板処理装置である。
【0012】
このように構成された発明では、上面に液膜を形成された基板が、上記のようにして第1チャンバから第2チャンバへ搬送される。このため、液膜を構成する液体を周囲に飛散させることなく基板を搬送し、第2チャンバでの処理を良好に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
上記のように、本発明では、基板を保持するハンドをカバー本体に収容しつつ、ハンドをチャンバに進入させる際には延伸部材をチャンバ側に進出させて、カバー本体の内部空間とチャンバ内部空間とを接続する。そのため、液体の飛散を確実に防止しつつ、チャンバ間での基板の搬送を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る基板処理装置の一実施形態の概略構成を示す図である。
図2】センターロボットの構成および設置環境を示す図である。
図3】湿式処理を実行する基板処理ユニットを示す図である。
図4】超臨界乾燥処理を実行する基板処理ユニットを示す図である。
図5】センターロボットの外観を示す斜視図である。
図6】チャンバへアクセスする際の基板保持ユニットの動作を示す図である。
図7】チャンバへアクセスする際の基板保持ユニットの動作を示す図である。
図8】この基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
図9】チャンバへの基板の搬出および搬入処理を示すフローチャートである。
図10】カバー部とチャンバとの接続の他の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明に係る基板処理装置の一実施形態の概略構成を示す図である。より具体的には、図1(a)は本発明の一実施形態である基板処理装置1を示す平面図であり、図1(b)は基板処理装置1を示す側面図である。なお、これらの図は装置の外観を示すものではなく、装置の外壁パネルやその他の一部構成を除外することでその内部構造をわかりやすく示した模式図である。この基板処理装置1は、例えばクリーンルーム内に設置されて基板に対し所定の処理を施すための装置である。
【0016】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体基板、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体基板の処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。
【0017】
図1(a)に示すように、基板処理装置1は、基板Sに対して処理を施す基板処理部10と、この基板処理部10に結合されたインデクサ部20とを備えている。インデクサ部20は、基板Sを収容するための容器C(複数の基板Sを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard
Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)を複数個保持することができる容器保持部21と、この容器保持部21に保持された容器Cにアクセスして、未処理の基板Sを容器Cから取り出したり、処理済みの基板を容器Cに収納したりするためのインデクサロボット22とを備えている。各容器Cには、複数枚の基板Sがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0018】
インデクサロボット22は、装置筐体に固定されたベース部221と、ベース部221に対し鉛直軸周りに回動可能に設けられた多関節アーム222と、多関節アーム222の先端に取り付けられたハンド223とを備える。ハンド223はその上面に基板Sを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0019】
基板処理部10は、平面視においてほぼ中央に配置されたセンターロボット15と、このセンターロボット15を取り囲むように配置された複数の基板処理ユニットとを備えている。具体的には、センターロボット15が配置された空間に面して複数の(この例では4つの)基板処理ユニット11A,12A,13A,14Aが配置されている。これらの基板処理ユニット11A~14Aは、それぞれ基板Sに対して所定の処理を実行するものである。これらの処理ユニットを同一の機能のものとした場合には、複数基板の並列処理が可能となる。また、機能の異なる処理ユニットを組み合わせて、1つの基板に対し異なる処理を順番に実行するように構成することもできる。
【0020】
後述するように、この実施形態の基板処理装置1は、基板Sを所定の処理液により湿式処理した後、基板Sを乾燥させるという一連の処理に使用される。この目的のために、4つの基板処理ユニットのうち2つの基板処理ユニット11A,12Aは、基板Sに対する湿式処理を担い、これを可能とするための構成を内部に備えている。また、他の2つの基板処理ユニット13A,14Aは、湿式処理後の基板Sから残存液を除去し基板Sを乾燥させる処理(乾燥処理)を担い、これを可能とするための構成を内部に備えている。
【0021】
各基板処理ユニット11A~14Aでは、基板Sに対する処理を実行する基板処理主体が、センターロボット15に面する側面に開閉自在のシャッターが設けられた処理チャンバ内に収容されている。すなわち、基板処理ユニット11Aは、処理チャンバ110と、処理チャンバ110のセンターロボット15に面する側面に設けられたシャッター111とを有する。シャッター111は処理チャンバ110のセンターロボット15に面する側面に設けられた開口部を覆うように設けられており、シャッター111が開かれると開口部が露出し、該開口部を介して基板Sの搬入および搬出が可能となる。また、処理チャンバ110内で基板Sに対する処理が実行される際には、シャッター111が閉じられることで、処理チャンバ110内の雰囲気が外部から遮断される。
【0022】
同様に、基板処理ユニット12Aは、処理チャンバ120と、処理チャンバ120のセンターロボット15に面する側面に設けられたシャッター121とを有する。また、基板処理ユニット13Aは、処理チャンバ130と、処理チャンバ130のセンターロボット15に面する側面に設けられたシャッター131とを有する。また、基板処理ユニット14Aは、処理チャンバ140と、処理チャンバ140のセンターロボット15に面する側面に設けられたシャッター141とを有する。
【0023】
そして、このように水平方向に配置された基板処理ユニットのセットが上下方向に複数段(この例では2段)配置されている。すなわち、図1(b)に示すように、基板処理ユニット11Aの下方には基板処理ユニット11Bが設けられている。基板処理ユニット11Bの構成および機能は、基板処理ユニット11Aと同じである。また、基板処理ユニット12Aの下方には、基板処理ユニット12Aと同一構成、同一機能の基板処理ユニット12Bが設けられている。同様に、基板処理ユニット13Aの下部にも基板処理ユニット13B(図2)が、また基板処理ユニット14Aの下部にも不図示の基板処理ユニットが設けられる。なお、基板処理ユニットの段数は、ここに例示する2に限定されず任意である。また1段当たりの基板処理ユニットの配設数も上記に限定されない。もちろん基板処理ユニットは1段のみであってもよい。
【0024】
図2はセンターロボットの構成および設置環境を示す図である。センターロボット15は、チャンバ間で基板を搬送する基板搬送部として機能する。さらに、センターロボット15は、インデクサロボット22から未処理の基板Sを受け取ることができ、かつ処理済みの基板Sをインデクサロボット22に受け渡すことができる。具体的には、センターロボット15は、基台部151と、回転ベース152と、支持フレーム153と、伸縮アーム154と、ハンド155と、カバー部156とを備えている。
【0025】
基台部151は、基板処理部10の底部フレームに固定されており、センターロボット15の各構成を支持している。回転ベース152は基台部151に取り付けられ、基台部151に対して鉛直軸周りに回動可能となっている。詳しくは後述するが、支持フレーム153は回転ベース152に固定されたガントリ状の枠体であり、伸縮アーム154、ハンド155およびカバー部156を一体化した基板保持ユニット150を昇降自在に支持する。
【0026】
基板保持ユニット150において、伸縮アーム154は、その回動および伸縮運動によりハンド155を水平移動させる。カバー部156は、このように水平移動する伸縮アーム154およびハンド155をその内部空間に収容する。ハンド155は、その上面に基板Sを載置して保持することができ、しかも、インデクサロボット22のハンド223との間で基板Sの受け渡しが可能な構造となっている。このような構造のハンド機構は公知であるので、詳しい説明を省略する。
【0027】
図2に破線矢印で示すように、回転ベース152が鉛直軸回りに回動し、基板保持ユニット150は上下方向に昇降する。また、伸縮アーム154の伸縮によりハンド155が水平移動する。後述するように、これらの動作の組み合わせによりハンド155の各チャンバ110等へのアクセスが実現され、各チャンバへの基板の搬入およびチャンバからの基板の搬出が可能となる。
【0028】
上記のように構成された基板処理装置1では、次のようにして基板Sに対する処理が実行される。初期状態では、容器保持部21に載置された容器Cに未処理の基板Sが収容されている。インデクサロボット22は、容器Cから1枚の未処理基板Sを取り出してセンターロボット15に受け渡す。センターロボット15は、受け取った基板Sを、当該基板Sに対する処理を実行する基板処理ユニットに搬入する。
【0029】
例えば基板処理ユニット11Aに基板Sを搬入する場合、図2に示すように、センターロボット15は、昇降ベース152により回転ベース153の高さを調整して、ハンド155に保持した基板Sを基板処理ユニット11Aの処理チャンバ110側面のシャッター111の高さに位置決めする。シャッター111が開かれ、伸縮アーム154が処理チャンバ110側面の開口部に向かって伸長することで、ハンド155に保持される基板Sが処理チャンバ110へ搬入される。伸縮アーム154が退避した後、シャッター111が閉じられて、処理チャンバ110内で基板Sに対する処理が実行される。他の基板処理ユニットへの基板Sの搬入も同様にして行うことができる。
【0030】
一方、基板処理ユニット11Aから処理済みの基板Sを取り出す際には、シャッター111が開かれた処理チャンバ110に伸縮アーム154が進入して処理済みの基板Sを取り出す。このように、基板保持ユニット150が処理チャンバ110と対向配置された状態で伸縮アーム154がハンド155を処理チャンバ110に対し進退移動させることで、処理チャンバ110へのハンド155のアクセスが実現される。取り出された基板Sについては、他の基板処理ユニットに搬入されて新たな処理が実行されてもよく、またインデクサロボット22を介して容器Cに戻されてもよい。この実施形態における具体的な処理シーケンスについては後に詳しく説明する。
【0031】
図2に示すように、センターロボット15は、側方および上方が隔壁101により外部空間から隔てられた搬送空間TSに設置されている。基板処理ユニット11Aは、処理チャンバ110のシャッター111が設けられた側面を搬送空間TSに臨ませて隔壁101の側部に取り付けられている。他の基板処理ユニットも同様である。また、基板処理ユニット11A,13Aおよび搬送空間TSの上方には、装置内に清浄な空気を供給するとともに適度なダウンフローを生じさせるためのファンフィルタユニット(FFU)103,104,105が設けられている。
【0032】
上記の他、基板処理装置1には、装置各部の動作を制御するための制御ユニット90が設けられている。制御ユニット90は、少なくともCPU(Central Processing Unit)91と、メモリ92とを含む。CPU91は、予め用意された制御プログラムを実行することで、装置各部に所定の動作を実行させる。また、メモリ92は、CPU91が実行すべき制御プログラムや、その実行により生じるデータ等を記憶する。上記したインデクサロボット22およびセンターロボット15の動作、各処理チャンバにおけるシャッターの開閉や基板Sに対する各種処理等に関わる動作は、制御プログラムを実行するCPU91によって制御される。
【0033】
図3は湿式処理を実行する基板処理ユニットを示す図である。より具体的には、図3(a)は基板処理ユニット11Aの構成を示す図であり、図3(b)および図3(c)は基板処理ユニット11Aの動作を説明するための図である。ここでは基板処理ユニット11Aの構成について説明するが、湿式処理を実行する他の基板処理ユニット11B,12A等の構成も基本的に同じである。
【0034】
基板処理ユニット11Aは、基板処理主体としての湿式処理部30を処理チャンバ110内に備えている。湿式処理部30は、基板Sの上面に処理液を供給して基板Sの表面処理や洗浄等を行う。また、湿式処理後に搬出される基板Sの上面が周囲雰囲気に露出するのを防止するために、湿式処理部30は、湿式処理後の基板Sの上面を低表面張力液の液膜で覆う、液膜形成処理を併せて実行する。
【0035】
この目的のために、湿式処理部30は、基板保持部31、スプラッシュガード32、処理液供給部33および低表面張力液供給部34を備えている。これらの動作は制御ユニット90により制御される。基板保持部31は、基板Sとほぼ同等の直径を有する円板状のスピンチャック311を有し、スピンチャック311の周縁部には複数のチャックピン312が設けられている。チャックピン312が基板Sの周縁部に当接して基板Sを支持することにより、スピンチャック311はその上面から離間させた状態で基板Sを水平姿勢に保持することができる。
【0036】
スピンチャック311はその下面中央部から下向きに延びる回転支軸313により上面が水平となるように支持されている。回転支軸313は処理チャンバ110の底部に取り付けられた回転機構314により回転自在に支持されている。回転機構314は図示しない回転モータを内蔵しており、制御ユニット90からの制御指令に応じて回転モータが回転することで、回転支軸313に直結されたスピンチャック311が1点鎖線で示す鉛直軸周りに回転する。図3においては上下方向が鉛直方向である。これにより、基板Sが水平姿勢のまま鉛直軸周りに回転される。
【0037】
基板保持部31を側方から取り囲むように、スプラッシュガード32が設けられる。スプラッシュガード32は、スピンチャック311の周縁部を覆うように設けられた概略筒状のカップ321と、カップ321の外周部の下方に設けられた液受け部322とを有している。カップ321は制御ユニット90からの制御指令に応じて昇降する。カップ321は、図3(a)に示すようにカップ321の上端部がスピンチャック311に保持された基板Sの周縁部よりも下方まで下降した下方位置と、図3(b)に示すようにカップ321の上端部が基板Sの周縁部よりも上方に位置する上方位置との間で昇降移動する。
【0038】
カップ321が下方位置にあるときには、図3(a)に示すように、スピンチャック311に保持される基板Sがカップ321外に露出した状態になっている。このため、例えばスピンチャック311への基板Sの搬入および搬出時にカップ321が障害となることが防止される。
【0039】
また、カップ321が上方位置にあるときには、図3(b)に示すように、スピンチャック311に保持される基板Sの周縁部を取り囲むことになる。これにより、後述する液供給時に基板Sの周縁部から振り切られる処理液がチャンバ110内に飛散することが防止され、処理液を確実に回収することが可能となる。すなわち、基板Sが回転することで基板Sの周縁部から振り切られる処理液の液滴はカップ321の内壁に付着して下方へ流下し、カップ321の下方に配置された液受け部322により集められて回収される。複数の処理液を個別に回収するために、複数段のカップが同心に設けられてもよい。
【0040】
処理液供給部33は、処理チャンバ110に固定されたベース331に対し回動自在に設けられた回動支軸332から水平に伸びるアーム333の先端にノズル334が取り付けられた構造を有している。回動支軸332が制御ユニット90からの制御指令に応じて回動することによりアーム333が揺動し、アーム333先端のノズル334が、図3(a)に示すように基板Sの上方から側方へ退避した退避位置と、図3(b)に示すように基板S上方の処理位置との間を移動する。
【0041】
ノズル334は制御ユニット90に設けられた処理液供給部(図示省略)に接続されており、処理液供給部から適宜の処理液が送出されるとノズル334から基板Sに向けて処理液が吐出される。図3(b)に示すように、スピンチャック311が比較的低速で回転することで基板Sを回転させながら、基板Sの回転中心の上方に位置決めされたノズル33から処理液Lqを供給することで、基板Sの上面Saが処理液Lqにより処理される。処理液Lqとしては、現像液、エッチング液、洗浄液、リンス液等の各種の機能を有する液体を用いることができ、その組成は任意である。また複数種の処理液が組み合わされて処理が実行されてもよい。
【0042】
低表面張力液供給部34も、処理液供給部33と対応する構成を有している。すなわち、凝固液供給部34は、ベース341、回動支軸342、アーム343、ノズル344等を有しており、これらの構成は、処理液供給部33において対応するものと同等である。回動支軸342が制御ユニット90からの制御指令に応じて回動することによりアーム343が揺動する。アーム343先端のノズル344は、湿式処理後の基板Sの上面Saに対して液膜を形成するための低表面張力液を供給する。
【0043】
上記した図3(b)の説明における「処理液Lq」、「アーム333」、「ノズル334」をそれぞれ「低表面張力液Lq」、「アーム343」、「ノズル344」と読み替えることにより、低表面張力液供給部34の動作が説明される。ただし吐出されるのは低表面張力液であり、一般に処理液とは異なる種類の液体である。
【0044】
処理対象となる基板上面Saが微細な凹凸パターン(以下、単に「パターン」という)を形成されたものであるとき、湿式処理後の濡れた基板Sが乾燥する過程において、パターン内に入り込んだ液体の表面張力によりパターン倒壊が生じるおそれがある。これを防止するための方法としては、パターン内の液体をより表面張力の低い液体に置換してから乾燥させる方法、基板上面Saを昇華性物質の固体で覆い昇華性物質を昇華させる昇華乾燥法、本実施形態で採用する超臨界乾燥法などがある。
【0045】
高温、高圧状態を必要とする超臨界乾燥処理を行うためには、湿式処理を行うチャンバとは別の高圧チャンバを必要とする。このため、湿式処理後の基板Sを高圧チャンバへ搬送する必要が生じる。搬送中のパターンの露出に起因する倒壊を避けるため、基板上面Saを液体または固体で覆っておくことが望ましい。このとき基板上面Saを覆う液体は、表面張力によるパターン倒壊をより確実に防止するという観点から、処理液よりも表面張力の小さい液体であることが望ましい。本明細書ではこのような性質の液体を「低表面張力液」と称している。
【0046】
この実施形態では、基板上面Saを低表面張力液の液膜で覆った状態で搬送を行う。液膜は以下のようにして形成される。図3(b)に示すように、基板Sが所定の回転速度で回転された状態で、制御ユニット90に設けられた低表面張力液供給部(図示省略)から供給される低表面張力液Lqがノズル343から吐出されることで、基板上面Saは低表面張力液の液膜LFで覆われた状態となる。低表面張力液としては、湿式処理に用いられる処理液との混和性がよく、かつこれよりも表面張力が小さいものが望ましい。例えば処理液が水を主成分とするものであるとき、イソプロピルアルコール(IPA)を好適に利用可能である。こうして基板上面Saの全体が低表面張力液の液膜LFで覆われた状態となる。
【0047】
上面Saが液膜LFで覆われた状態で基板処理ユニット11Aから搬出される基板Sは、基板処理ユニット13Aに搬送されて乾燥処理を受ける。すなわち基板処理ユニット13Aは、水平姿勢で搬入される基板Sの上面Saに形成されている液膜LFを除去し、基板Sを乾燥させる乾燥処理を、基板処理として実行する機能を有する。乾燥処理としては、基板Sを超臨界流体で覆ってから超臨界流体を(液相を介することなく)気化させ除去する、超臨界乾燥が適用される。ここでは基板処理ユニット13Aの構成について説明するが、乾燥処理を実行する他の基板処理ユニット13B,14A等の構成も基本的に同じである。
【0048】
図4は超臨界乾燥処理を実行する基板処理ユニットを示す図である。より具体的には、図4は基板処理ユニット13Aの内部構造を示す側面断面図である。超臨界乾燥処理の原理およびそのために必要な基本構成は公知であるため、ここでは詳しい説明を省略する。基板処理ユニット13Aは高圧チャンバ130を備え、その内部に、乾燥処理の実行主体としての乾燥処理部40が設けられている。乾燥処理部40では、基板Sを載置するためのステージ41が高圧チャンバ130内に設置されている。ステージ41は吸着保持または機械的保持により、上面Saが液膜に覆われた基板Sを保持する。高圧チャンバ130は高圧となるため、これに耐えるために内部構成は比較的簡素であり、また高圧に耐え得る部材が使用される。
【0049】
ステージ41の下面中央には回転支軸42が下向きに延びている。回転支軸42は高圧チャンバ130の底面に高圧シール回転導入機構43を介して挿通されている。高圧シール回転導入機構43の回転軸431は回転機構432に接続されている。このため、制御ユニット90からの制御指令に応じて回転機構432が作動すると、基板Sがステージ41と共に、1点鎖線で示す鉛直方向の回転軸周りに回転する。
【0050】
高圧チャンバ130の内部でステージ41の上方には流体分散部材44が設けられている。流体分散部材44は、平板状の閉塞板441に対し上下に貫通する貫通孔442を複数設けたものである。高圧チャンバ130の上部には二酸化炭素供給部45から二酸化炭素ガスが必要に応じて供給され、二酸化炭素ガスは流体分散部材44により整流されて、基板Sの上方から均一に基板Sに向けて供給される。
【0051】
また、高圧チャンバ130内には窒素供給部46から窒素が必要に応じて導入される。窒素は必要に応じて種々の形態で、つまり常温または昇温されたガスとして、あるいは冷却されて液化した液体窒素として、高圧チャンバ130内のガスをパージしたりチャンバ内を冷却したりする目的に応じて供給される。
【0052】
さらに、高圧チャンバ130には排出機構48が接続されている。排出機構48は、高圧チャンバ130内に導入される気体や液体等の各種流体を必要に応じて排出する機能を有する。排出機構48は、このための配管やバルブ、ポンプ等を備える。これにより、必要な場合には高圧チャンバ130内の流体を速やかに排出することができる。
【0053】
図示を省略するが、制御ユニット90は、高圧チャンバ130内の圧力や温度を検出するための構成およびこれらを所定値に制御するための構成を有している。すなわち、制御ユニット90は、高圧チャンバ130内の圧力および温度を所定の目標値に制御する機能を有している。
【0054】
次に、センターロボット15の構造について説明する。センターロボット15は、インデクサロボット22との間での基板Sの受け渡しと、チャンバ間での基板Sの移送とを担う。このうち、湿式処理ユニット11A等から乾燥処理ユニット13A等への基板Sの移送は、水平姿勢の基板Sの上面に低表面張力液の液膜LFが形成された状態で行われる。液膜LFは、湿式処理ユニット11A等から乾燥処理ユニット13A等への移送の際に基板Sの表面が露出しパターン倒壊が生じるのを防止するために形成される。しかしながら、搬送の過程で液体が基板Sから落下したり、基板Sの表面から蒸発したりすることがある。
【0055】
このようにして液体が基板Sから飛散すると装置内部を汚染することになる。特に液体に腐食性や引火性がある場合には、このような性質への対策が装置に必要となり、装置が大がかりとなりコスト上昇にもつながる。そこで、以下に説明するように、この実施形態では液膜LFが形成された基板Sを保持するハンド155の周囲をカバーで覆うことにより、液体の飛散を防止している。
【0056】
図5はセンターロボットの外観を示す斜視図である。センターロボット15は、基台部151に対しモータ等の適宜の回転機構を介して回転ベース152が取り付けられており、制御ユニット90からの制御指令に応じて回転機構が作動することで、回転ベース152は鉛直軸周りに回動する。この回転ベース152から上向きに延びる支持フレーム153に、基板保持ユニット150が取り付けられている。より具体的には、略円板形状の回転ベース152の上面に、2本の支柱1531,1532が取り付けられており、これらの支柱の上端部が梁部材1533により結合されて、全体としてガントリ型の支持フレーム153が構成される。支柱1531,1532それぞれの側面にはガイドレール1535,1536が設けられ、これらに基板保持ユニット150が装着される。
【0057】
より詳しくは、基板保持ユニット150のカバー部156の下部には水平方向に延びる支持アーム1571,1572が固定されており、支持アーム1571,1572の先端に設けられたスライダ(図示省略)がガイドレール1535,1536に昇降自在に係合する。支柱1531,1532にはボールねじ機構、リニアモータ、直動ガイド等の適宜の昇降機構が組み込まれており、制御ユニット90からの制御指令に応じて昇降機構が作動することで、基板保持ユニット150全体がガイドレール1535,1536に沿って昇降移動する。この昇降動作により、基板保持ユニット150の高さ方向位置が決定される。
【0058】
回転機構の動作により決定される回転ベース152の回転角度と、昇降機構の動作により決定される基板保持ユニット150の高さ方向位置との組み合わせによって、基板保持ユニット150の位置が決まる。このようにして、例えば1つの基板処理ユニットとの対向位置に基板保持ユニット150を位置決めすることができる。図5において、矢印D1は回転機構の作動による回転ベース152の回転方向を、矢印D2は昇降機構の作動による基板保持ユニット150の移動方向をそれぞれ示している。
【0059】
基板保持ユニット150は、各基板処理ユニットのチャンバ内にアクセスして基板Sの搬入または搬出を行う伸縮アーム154およびハンド155の周囲を、カバー部156で覆った構造を有している。次に説明するように、カバー部156は水平方向に伸縮可能な二重筒構造となっており、ハンド155の水平移動と連動して伸縮することで、チャンバに対する基板の搬入・搬出動作を実現する。図5において、矢印D3は後述するカバー部156の伸縮方向を、矢印D4はハンド155の進退方向をそれぞれ示している。
【0060】
以下では基板保持ユニット150が1つの基板処理ユニット11Aのチャンバ110にアクセスして基板を搬入または搬出する際の動作を例として説明するが、他のチャンバへのアクセスについても同様に考えることが可能である。
【0061】
図6および図7は、チャンバへアクセスする際の基板保持ユニットの動作を模式的に示す図である。より具体的には、図6はハンド155がチャンバ110にアクセスする前の状態を示しており、図6(a)は平面図、図6(b)は側面断面図である。また、図7はハンド155がチャンバ110内に進入した状態を示しており、図7(a)は平面図、図7(b)は側面断面図である。
【0062】
これらの図に示すように、伸縮アーム154はベース部1541に取り付けられた多関節アーム1542を有し、多関節アーム1542の先端に、基板Sを保持可能なフォーク状に形成されたハンド155が取り付けられている。伸縮アーム154の各関節が協調して回動することにより、伸縮アーム154は、図6(a)に示すように折りたたまれた状態と、図7(a)に示すように伸長した状態との間で形態が変化する。これにより、アーム先端に装着されたハンド155が水平移動し、矢印D4方向を進退方向として進退移動する。
【0063】
図7(a)に示すように、基板保持ユニット150がチャンバ110(より具体的にはその開口部112)との対向位置に位置決めされ、伸縮アーム154が伸長した状態では、ハンド155がチャンバ110の開口部112を介してチャンバ110内に進入した状態となる。これによりチャンバ110への基板Sの搬入、およびチャンバ110からの基板Sの搬出が可能となる。このときのハンド15の位置を「内部位置」と称することとする。一方、図6(a)に示す伸縮アーム154が折りたたまれた状態では、ハンド155はチャンバ110の外部へ退避した状態となる。このときのハンド155の位置を「外部位置」と称することとする。
【0064】
このように動作する伸縮ハンド154およびハンド155を覆うように、カバー部156が設けられている。カバー部156は、伸縮アーム154の可動範囲を内部空間に収める箱型に形成されたカバー本体1561と、両端に開口が設けられて水平方向に貫通する中空構造の筒型に形成された延伸部材1562とを備えている。延伸部材1562の両開口のうち外部に露出する側の(つまりカバー本体1561側の開口とは反対側の)開口1562aは、基板Sを保持するハンド155がカバー部156の内部空間SPから外部の空間(この例では搬送空間TS)へ進出する際の出入り口となる。
【0065】
より具体的には、カバー本体1561は、ハンド155の進退経路に当たる側面に開口1561aが設けられた箱型形状を有している。カバー本体1561の内部空間SPに伸縮アーム154が収容され、カバー本体1561の下部には伸縮アーム154を作動させるための駆動機構158が取り付けられている。駆動機構158は、制御ユニット90からの制御指令に応じて、基板保持ユニット159の可動部を作動させる。カバー本体1561の少なくとも底面については、基板Sからこぼれた液体を一時的に貯留可能とするために、外部空間(搬送空間TS)に連通する開口部を設けず、また液体を開口1561aの方向に誘導するような勾配を設けないことが望ましい。
【0066】
延伸部材1562は、ハンド155の進退方向D4に対応する両側面が開口した、つまり水平方向に貫通する中空構造の筒型形状を有している。延伸部材1562の外形寸法はカバー本体1561の開口1561aよりも少し小さく形成されており、該開口1561aの内部に延伸部材1562の一部が入り込むことで、カバー部156は二重筒構造となっている。なお、延伸部材1562は、上記とは逆に、カバー本体1561の開口1561aを外側から取り囲むような構造とされてもよい。延伸部材1562には進退ロッド1564が連結されており、進退ロッド1564は駆動機構158により、ハンド155の進退方向D4に沿って水平方向に駆動される。これにより、延伸部材1562は、カバー本体1561に対して水平方向に移動可能となっている。その移動方向D3はハンド155の進退方向D4と略同じ方向である。
【0067】
このような機構により、カバー部156全体としては方向D3に沿って所定の範囲で伸縮する構造となっている。すなわち、カバー部156は、図6(a)、図6(b)に示すように延伸部材1562がカバー本体1561内に引き込まれてチャンバ110から後退した状態と、図7(a)、図7(b)に示すように、延伸部材1562がより外部へ引き出されチャンバ110側へ進出した状態との間でその形態が変化する。以下では、図6(a)、図6(b)に示す延伸部材1562の位置を「後退位置」と称し、図7(a)、図7(b)に示す延伸部材1562の位置を「進出位置」と称することとする。
【0068】
図6(a)および図6(b)に示すように、伸縮アーム154が折りたたまれた状態では、延伸部材1562がカバー本体1561内に最も大きく入り込む方向(図において左側)に位置決めされる。このとき、カバー本体1561と延伸部材1562とが連結して形成する内部空間SPの内部に、伸縮アーム154、ハンド155およびこれに保持される基板Sの全体が収容されるように、カバー本体1561および延伸部材1562のサイズが決定されている。なお図6(a)および図7(a)では、内部構造を明示するために、カバー本体1561と延伸部材1562とを2種類の破線で表している。
【0069】
センターロボット15により基板Sの搬送過程における基板保持部150の動作は、回転機構による回動動作および昇降機構による昇降動作を含み得る。これらの動作の際に基板Sの上面に液膜が形成されている場合、振動や加減速によって基板Sから液体が落下するおそれがある。カバー本体1561および延伸部材1562により形成される内部空間SP内に基板Sを収容しておくことで、もし液体の落下があったとしても、その飛散範囲をカバー部156内に留めることが可能となる。
【0070】
図6(b)に示すように、カバー部156には排液機構1591および排気機構1592の少なくとも一方が接続されてもよい。具体的な構造の図示は省略するが、カバー部156の内部空間SPに落下した液体については、排液機構1591が適宜の排出経路を介して外部へ排出することができる。また、液体の蒸発により生じた蒸気が外部へ漏出するのを防止するために、排気機構1592が内部空間SPに微小な負圧を与えるようにしてもよい。
【0071】
また、基板Sから液体が蒸発する場合があるが、内部空間SPに蒸気が充満することで蒸発の進行を抑制することができる。このように、カバー部156は、基板Sから落下する液体の飛散および基板Sからの液体の蒸発を抑制する効果がある。この効果をより高めるために、延伸部材1562の下面には段差が設けられて、搬送空間TS(図2)に露出している開口1562aの開口面積が絞り込まれている。これにより、開口1562aを介して外部へ液体が漏出する確率を低下させることができる。
【0072】
開口1562aについては、上記効果をさらに高めるために、例えばハンド155および基板Sを通過させるために必要な最小限の開口サイズを有するスリット状の開口としたり、開口を開閉するためのシャッター部材を設けたりしてもよい。
【0073】
図6(a)に示すように、延伸部材1562がカバー本体1561側に引き込まれ後退位置にあるとき、延伸部材1562の先端はチャンバ110の側壁面から所定距離だけ離間した状態となっている。このため、点線矢印で示すように、基板保持ユニット150が回動する際にカバー部156がチャンバ110と干渉することは回避されている。つまり、センターロボット15においては、延伸部材1562を後退位置に位置決めすることで、チャンバ壁面との干渉を生じさせることなく基板保持ユニット150を回動させることが可能となっている。これにより、基板保持ユニット150を種々の方向に回動させ、任意のチャンバとの対向位置に位置決めすることが可能となる。
【0074】
一方、図7(a)に示すように、延伸部材1562がカバー本体1561から引き出された進出位置にあるとき、延伸部材1562の先端部はチャンバ110の側壁面に当接する。これにより、カバー部156の内部空間SPとチャンバ110の内部空間SPcとが連通する。そして、こうして連通した空間でハンド155が進退移動する。最終的に、ハンド155は延伸部材1562の先端部を超えてさらにチャンバ内部まで進出し、チャンバ110の内部空間SPcに露出することになる。これによりチャンバ内での基板Sの受け渡しが可能になる。
【0075】
延伸部材1562が後退位置にある状態で伸縮アーム154を伸長させると、ハンド155に保持される基板Sが一時的に外部空間(図2の搬送空間TS)に露出することになる。そのため、搬送中の基板Sから落下する液体が搬送空間TSに漏れ出したり、基板Sからの液体の蒸発が促進されたりするという問題が起こり得る。本実施形態では、延伸部材1562の移動によってカバー部156とチャンバ110との内部空間同士を接続して伸縮アーム154を伸縮させることで、このような問題を未然に回避することが可能である。
【0076】
空間の閉塞効果を高めるために、延伸部材1562の開口1562aの開口形状は、チャンバ110の開口部112の開口形状に対応したものとなっていることが望ましい。すなわち、延伸部材1562の先端部がチャンバ110に当接した状態では、延伸部材1562の開口1562aとチャンバ110の開口部112とが概ね一致することが望ましい。この実施形態では、両開口の形状およびサイズが略同一とされ、チャンバ110に対向する延伸部材1562の先端部がチャンバ110の側壁に適合した形状となっている。さらに気密性を高めるために、延伸部材1562の開口1562aの周囲を囲むようにシール部材1563が取り付けられている。なおシール部材はチャンバ110側に設けられてもよく、この場合には、チャンバ110においてシャッター111の気密性を高めるために設けられるシール部材と共用されるものであってもよい。
【0077】
カバー部156とチャンバ110との連結において必要とされる気密性は、液体の漏出や蒸発を必要十分な程度に抑えることができれば足り、したがって部材間にある程度の隙間が生じていてもよい。むしろ、気密性を確保するためにさらに複雑な機構を組み込むことは、処理中の基板Sを短時間で搬送するという目的において必ずしも有利なものとならない。
【0078】
次に、上記のように構成された基板処理装置1の動作について説明する。これまでに説明したように、この基板処理装置1は基板Sに対し湿式処理および乾燥処理を順番に実行する装置である。この処理の主な流れは、湿式処理を実行する基板処理ユニットに基板Sを搬送して処理液による処理を行った後、低表面張力液による液膜を形成し、乾燥処理を実行する基板処理ユニットにこの基板Sを搬送して液膜を除去し基板Sを乾燥させる、というものである。以下、その具体的な処理内容について説明する。
【0079】
ここでは1つの基板Sに対し基板処理ユニット11Aが湿式処理を実行し、基板処理ユニット13Aが乾燥処理を実行するものとして説明するが、湿式処理を実行する基板処理ユニットと乾燥処理を実行する基板処理ユニットとの組み合わせはこれに限定されるものではなく任意である。また、以下の説明においては、各基板処理ユニットの役割を明示するために、湿式処理を実行する基板処理ユニット11A等を「湿式処理ユニット」と、また乾燥処理を実行する基板処理ユニット13A等を「乾燥処理ユニット」と、それぞれ称することがある。
【0080】
図8はこの基板処理装置の動作を示すフローチャートである。この動作は、CPU91が予め準備された制御プログラムを実行して装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。最初に、インデクサロボット22が未処理基板を収容する容器Cの1つから1枚の未処理基板Sを取り出す(ステップS101)。そして、基板Sはインデクサロボット22からセンターロボット15に受け渡され(ステップS102)、センターロボット15は湿式処理を実行する基板処理ユニット(湿式処理ユニット)11Aに基板Sを搬入する(ステップS103)。
【0081】
基板Sが搬入された基板処理ユニット11Aは、基板Sに対し湿式処理を実行する(ステップS104)。湿式処理の内容は、先に説明したように、基板Sに処理液を供給して基板上面Saの加工や洗浄を行うというものである。湿式処理後の基板Sに対しては、低表面張力液による液膜LFを形成するための液膜形成処理が実行される(ステップS105)。
【0082】
液膜形成処理により上面Saに液膜LFが形成された基板Sは、センターロボット15により基板処理ユニット11Aから取り出されて、乾燥処理を実行する基板処理ユニット(乾燥処理ユニット)13Aに搬入される。すなわち、基板処理ユニット11Aから基板処理ユニット13Aに基板Sを移送する、移送処理が行われる(ステップS106)。移送処理は、湿式処理ユニット11Aからの基板Sの搬出と、乾燥処理ユニット13Aへの基板Sの搬入とを含む。これらの処理内容については後に詳述する。
【0083】
基板Sが搬入された基板処理ユニット13Aは、基板Sに対し、付着している液体を除去して基板Sを乾燥させる乾燥処理を実行する(ステップS107)。基板処理ユニット13Aでは、超臨界流体を用いた超臨界乾燥処理が実行される。すなわち、高圧チャンバ130内に二酸化炭素供給部45から二酸化炭素が導入され、チャンバ内圧を十分に高めることで二酸化炭素が液化する。または、液状の二酸化炭素が高圧チャンバ130に導入されてもよい。液状の二酸化炭素は基板上面Saを覆う。液化した二酸化炭素は有機溶剤をよく溶かす。したがって、パターン内に残存するIPA等の溶解液は液状の二酸化炭素によって置換される。
【0084】
続いて、高圧チャンバ130内の温度および圧力が、二酸化炭素を超臨界状態とする条件に調整される。これにより高圧チャンバ130内の二酸化炭素が超臨界流体となる。超臨界状態の流体は極めて流動性が高く表面張力が小さい。特に二酸化炭素から生成された超臨界流体は、IPA、アセトン等の有機溶剤をよく溶かす。このため、二酸化炭素の超臨界流体は微細なパターンの奥深くまで入り込み、残存する有機溶剤成分をパターン内から運び去る。比較的低圧、低温で超臨界状態となる点も、二酸化炭素が超臨界乾燥処理に適している理由の1つである。
【0085】
そして、高圧チャンバ130内が急激に減圧されることにより、超臨界流体は液相を経ることなく直接気化し基板Sから除去される。これにより、基板Sは液体成分が完全に除去されて乾燥した状態となる。パターン内に残存する液体成分は超臨界流体によって置換され、超臨界流体が直接気化することにより、パターン内の液体の表面張力に起因するパターン倒壊の問題は回避される。
【0086】
処理後の基板Sはセンターロボット15により基板処理ユニット13Aから搬出される(ステップS108)。取り出された処理後の基板Sはセンターロボット15からインデクサロボット22へ受け渡され(ステップS109)、インデクサロボット22は基板Sを容器Cの1つへ収容する(ステップS110)。処理済みの基板Sが収容される容器Cは、未処理状態の当該基板Sが収容されていた容器でもよく、また別容器でもよい。
【0087】
さらに処理すべき基板がある場合には(ステップS111においてYES)、ステップS101に戻り、次の基板Sに対し上記した処理が実行される。処理すべき基板がなければ(ステップS111においてNO)、処理は終了する。
【0088】
以上、1枚の基板Sを処理する場合の流れについて説明したが、実際の装置では複数基板に対する処理が並行して実行される。すなわち、1枚の基板Sが1つの基板処理ユニット内で処理を受けている間、同時にインデクサロボット22およびセンターロボット15による他の基板の搬送、ならびに他の基板処理ユニットによる基板処理の少なくとも1つを並行して実行することが可能である。
【0089】
より具体的には、例えばステップS102において基板Sがインデクサロボット22からセンターロボット15に受け渡された後では、インデクサロボット22は新たに容器Cにアクセスして他の基板を取り出すことが可能である。また例えば、ステップS103において1枚の基板Sが基板処理ユニット11Aに搬入された後、センターロボット15は他の基板を他の基板処理ユニットに搬入する、あるいは他の基板処理ユニットで処理された他の基板を搬出することが可能である。
【0090】
したがって、複数枚の基板Sに対し順次処理を行う必要がある場合には、各基板Sを処理するための装置各部の動作シーケンスを適宜に調節することで、複数枚の基板への処理を並行して進行させる。こうすることで、基板処理装置1全体としての処理のスループットを向上させることが可能となる。具体的な動作シーケンスは、処理の仕様、上記各ステップの所要時間や同時処理の可否等に応じて適切に定められる必要がある。
【0091】
図9はチャンバへの基板の搬出および搬入処理を示すフローチャートである。この処理は、上記した基板処理動作の移送処理(ステップS106)として実行されるものである。移送処理は、湿式処理ユニットである基板処理ユニット11Aからの基板Sの搬出処理と、乾燥処理ユニットである基板処理ユニット13Aへの当該基板Sの搬入処理とを含む。これらの2つの処理の間で、センターロボット15の各部の動作は基本的に同じである。すなわち、搬出処理ではハンド155が基板Sを保持しない状態でチャンバ内へ進入し基板Sを保持して戻ってくるのに対し、搬入処理では基板Sを保持したハンド155がチャンバ内に進入し基板Sを残して戻ってくるという違いはあるが、その間の一連の動作は同じである。
【0092】
初期状態において、基板保持ユニット150は適宜の初期位置に位置決めされ、延伸部材1562が後退位置に、ハンド155が外部位置にそれぞれ位置決めされている(ステップS201)。したがって基板保持ユニット150はチャンバから離間した状態にある。基板処理ユニット11Aからの基板Sの搬出動作では、この時点でハンド155は基板を保持していない。一方、基板処理ユニット11Aへの基板Sの搬入動作では、この時点でハンド155は液盛りされた基板Sを保持している。搬入動作については後述することとし、以下ではまず搬出動作について説明する。
【0093】
この状態から、制御ユニット90からの制御指令に応じた回転機構と昇降機構との協調動作により、基板保持ユニット150がアクセス対象のチャンバ110との対向位置に位置決めされる。具体的には、カバー部156の開口が対象チャンバ110の開口112と対向する位置となるように、基板保持ユニット150の位置が設定される(ステップS202)。延伸部材1562が後退位置に、ハンド155が外部位置にあるため、基板保持ユニット150とチャンバとの干渉は生じない。
【0094】
続いてチャンバ110のシャッター111が開かれ(ステップS203)、延伸部材1562が後退位置から進出位置に移動位置決めされることで、カバー部156の内部空間SPとチャンバ110の内部空間SPcとが接続される(ステップS204)。なお、これらの順序は逆でもよい。すなわち、延伸部材1562が進出位置に位置決めされてからシャッター111が開かれてもよい。
【0095】
この状態から伸縮アーム154を作動させてハンド155をチャンバ110内に進入させ(ステップS205)、ハンド155がチャンバ110内の機構から基板Sを受け取る(ステップS206)。チャンバ内の処理機構とハンドとの間での基板Sの受け渡し方法としては種々のものが公知であり、本実施形態でも任意の方法を採用することができる。
【0096】
基板Sの受け取り後、伸縮アーム154を折りたたみ、ハンド155をチャンバ外へ移動させることで(ステップS207)、基板Sをチャンバ110から搬出することができる。次に、延伸部材1562を後退させてチャンバ110から離間させ(ステップS208)、シャッター111が閉じられることで(ステップS209)、チャンバ110からの基板Sの搬出が完了する。この場合においても、シャッターを閉じてから延伸部材1562を離間させる構成でも構わない。
【0097】
引き続き、基板Sを次工程(乾燥処理)の実行主体である基板処理ユニット13Aのチャンバ130に搬入する。この時点では、カバー部156に収容されたハンド155に、上面に液膜が形成された基板Sが保持されており、カバー部156はチャンバ110との対向位置に位置決めされている。チャンバ130への搬入処理では、この状態を初期状態として上記と同様の処理が実行される。すなわち、カバー部156がアクセス対象であるチャンバ130との対応位置に移動位置決めされ(ステップS202)、シャッター11が開かれるとともに延伸部材1562が進出位置に移動することで、カバー部156とチャンバ130とが連結される(ステップS203、S204)。
【0098】
この状態でハンド155がチャンバ130内に進入して基板Sを内部の処理機構に受け渡し(ステップS205、S206)、ハンド155および延伸部材が順次後退してチャンバ130から離間し(ステップS207、S208)シャッター131が閉じられることで(ステップS209)、チャンバ130への基板Sの搬入が完了する。
【0099】
これらの搬出、搬入処理においては、搬送される基板Sの上面には液膜が形成されている。搬送時の振動等により基板Sから液体がこぼれたり液体が蒸発したりする可能性があるが、たとえそのような事態においても液体はカバー部156の内部空間SPに留められており、搬送空間TSへの液体の漏出は回避される。
【0100】
なお、上記したチャンバ110からの基板Sの搬出動作では、ステップS205においてチャンバ110内に進入するハンド155は基板Sを保持していない。このため液体の漏出は起こり得ず、その意味においては延伸部材1562の進出による内部空間の連結(ステップS204)およびその解除(ステップS208)は必須でない。同様に、チャンバ130への基板Sの搬入動作では、搬入後にチャンバ130から退出するハンド155は基板Sを保持しておらず、したがって延伸部材1562の動作は必ずしも必要でない。
【0101】
このように、図9に示す動作は、状況に応じてステップS204、S208を省略するように構成されてもよい。このようにすると、液膜を形成される前の基板Sをチャンバ110に搬入する処理(図8のステップS103)、および乾燥処理後の基板Sをチャンバ130から搬出する処理(図8のステップS108)に対しても、上記と同様の動作を適用することが可能となる。もちろん、このように液体漏出のおそれのない搬送においても延伸部材1562を動作させても構わない。
【0102】
以上のように、この実施形態においては、チャンバ間で基板Sを搬送するセンターロボット15において、伸縮アーム154およびハンド155を覆うカバー部156を設けることで、基板S上に液盛りされた液体がこぼれて搬送空間TSに流出することが防止されている。そのため、搬送空間TSに配置される種々の部材に液体が付着することが防止される。したがって、搬送空間TSに配置される部材には高い耐薬品性、防滴性が求められない。このことは装置の小型化、低コスト化にも資するものである。
【0103】
以上説明したように、上記実施形態のセンターロボット15においては、回転ベース152および回転機構が一体として本発明の「旋回機構」として機能している。また、伸縮アーム154(より具体的には多関節アーム1542)が本発明の「アーム」として機能し、排気機構1592が本発明の「負圧供給部」に相当している。また、延伸部材1562の先端部の開口1562aが、本発明の「開口」に相当している。
【0104】
また、本実施形態の基板処理装置1は本発明の「基板処理装置」として機能している。基板処理装置1において、湿式処理ユニット11Aの処理チャンバ110が本発明の「第1チャンバ」に相当する一方、乾燥処理ユニット13Aの処理チャンバ130が本発明の「第2チャンバ」に相当している。これらはいずれも本発明の「チャンバ」に相当するものである。またチャンバ開口部112等が、本発明の「受け入れ口」として機能している。
【0105】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、カバー部156とチャンバ110等との連結において、カバー部156の延伸部材1562の先端部が、シール部材1563を介してチャンバ110の側面に当接する構成となっている。しかしながら、カバー部156の内部空間SPとチャンバ110の内部空間SPcとを接続するための形態としてはこれに限定されず、例えば以下のような構成とすることもできる。
【0106】
図10はカバー部とチャンバとの接続の他の態様を示す図である。なお、これらの変形例は上記実施形態の延伸部材1562およびチャンバ110の少なくとも一方の形状の軽微な変更により実現されるものである。このため、延伸部材およびチャンバに付す符号を上記実施形態と同じとすることで説明を省略する。例えば図10(a)に示すように、延伸部材1562の先端部がチャンバ110側の開口112の内部に入り込んで両者が係合する構成であってもよい。この場合において、点線で示すように、延伸部材1562の先端がチャンバ110の内部空間SPcまで延びていてもよい。また、図10(b)に示すように、延伸部材1562の先端部がチャンバ110側の開口112の周囲に設けられた窪みと係合する構成であってもよい。
【0107】
また、単に液体の搬送空間TSへの漏出を回避するという目的においては、延伸部材1562とチャンバ110とが当接している必要は必ずしもない。例えば図10(c)に示すように、延伸部材1562の先端がチャンバ110の内部空間SPcまで延びていれば、たとえ延伸部材1562の先端部から液体が落下したとしても、チャンバ内部空間SPcに留められ外部へ流出することが回避される。したがって、延伸部材1562とチャンバ110との間に隙間があっても問題ない。
【0108】
また、上記実施形態の処理で使用される各種の化学物質は一部の例を示したものであり、上記した本発明の技術思想に合致するものであれば、これに代えて種々のものを使用することが可能である。
【0109】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る基板処理装置は、例えば、ベース部に対しアームとカバー本体とを一体的に旋回させる旋回機構を備えていてよい。このような構成によれば、ハンドに保持される基板をカバー部内に収容した状態で搬送することができるので、液体の流出を防止しつつ、基板を種々の方向へ搬送することが可能である。
【0110】
また例えば、延伸部材の先端部がチャンバの側壁と係合する形状となっていてもよい。このような構成によれば、延伸部材とチャンバの側壁とが係合することで、液体の流出がより確実に防止される。
【0111】
また例えば、カバー本体は、底部に液体を貯留可能な構造とされてよい。このような構成によれば、仮に基板から液体がこぼれたとしても、液体をカバー部内に留めて外部への流出を防止することが可能である。
【0112】
また例えば、延伸部材は、カバー本体の内部空間から外部へ延設されていてよい。このような構成によれば、カバー本体に対し延伸部材を引き出す(あるいは引き込む)ことによりカバー部の伸縮を実現することが可能である。また、延伸部材の内部を通過する基板から液体が落下したとしても、液体は延伸部材の底面を介してカバー本体に流れ、外部への流出は避けられる。
【0113】
また例えば、内部空間に負圧を供給する負圧供給部が設けられてもよい。このような構成によれば、カバー部の内部で液体が蒸発したとしても、その蒸気が外部へ漏出するのを防止することができる。
【0114】
また例えば、ハンドがチャンバの内部まで進入する内部位置と、ハンドがチャンバの外部にある外部位置との間でハンドを進退移動させ、延伸部材は、チャンバ側に進出した進出位置と、進出位置よりもカバー本体側に後退した後退位置との間で水平移動する構成とされてもよい。またこの動作を実現するための制御部がさらに設けられてもよい。このような動作を組み合わせることで、チャンバ内へのハンドのアクセスと、チャンバに対するカバー本体の移動位置決めとを両立させることができる。
【0115】
また、本発明に係る基板処理装置において、例えば、第1チャンバおよび第2チャンバの各々には、ベース部に面する側面にハンドの進入を受け入れる受け入れ口が設けられ、延伸部材の先端部が受け入れ口に係合する形状となっていてよい。カバー部側の延伸部材とチャンバ側の受け入れ口とが互いに係合することで、液体の流出を効果的に防止することができる。
【0116】
また例えば、基板処理装置は、延伸部材と受け入れ口とが係合した状態で、内部位置と外部位置との間でハンドを移動させる構成であってよい。このような構成によれば、ハンドの移動の際の振動等により基板から液体がこぼれたとしても、液体はカバー部およびチャンバのいずれかの内部空間に留められ、外部へ流出することは避けられる。
【0117】
また例えば、基板処理装置は、延伸部材と第1チャンバの受け入れ口とが係合した状態で、第1チャンバから基板を搬出する構成であってよい。第1チャンバから搬出される基板には液膜が形成されており、このような基板を搬出する際に延伸部材と第1チャンバの受け入れ口とを係合させておくことで、仮に基板から液体がこぼれたとしても外部へ流出することは回避される。
【0118】
また例えば、基板処理装置は、延伸部材と第2チャンバの受け入れ口とが係合した状態で、第2チャンバへ基板を搬入する構成であってよい。第2チャンバへ搬入される基板には液膜が形成されており、このような基板を搬入する際に延伸部材と第2チャンバの受け入れ口とを係合させておくことで、仮に基板から液体がこぼれたとしても外部へ流出することは回避される。
【0119】
また例えば、基板処理装置は、延伸部材をカバー本体側に退避させた状態で、ベース部に対しアームとカバー本体とを一体的に移動させる構成であってよい。このような構成によれば、ハンドに保持される基板をカバー部の内部に収容した状態で基板を搬送することが可能であり、搬送中に基板からこぼれる液体を外部へ流出させることが回避される。
【0120】
また例えば、本発明に係る基板処理装置は、例えば、第1チャンバは有機溶剤による液膜を基板に形成し、第2チャンバは超臨界流体により基板を処理するものとして構成されてよい。超臨界流体による基板処理では、超臨界流体の表面張力が極めて小さいことから、微細パターンを有する基板に対してもパターン倒壊を起こすことなく処理を施すことが可能である。一方で、高圧を要することから第2チャンバの構造は特殊なものとなり、前工程を施すための構成を第2チャンバ内に設けることが困難である。このため、処理過程においてチャンバ間での基板の移送が必要になる。この場合、微細パターンを倒壊させることなく搬送を実現するために有機溶剤による液膜で基板表面を覆うことが有効であり、このような基板の搬送に本発明を好適に適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0121】
この発明は、互いに異なる処理を実行する複数のチャンバ間での基板の搬送を、基板表面を液膜で覆った状態で行う基板処理技術全般に適用することができる。例えば、湿式処理後の基板を超臨界乾燥処理により乾燥させる処理に好適である。
【符号の説明】
【0122】
1 基板処理装置
11A 湿式処理ユニット、基板処理ユニット
13A 乾燥処理ユニット、基板処理ユニット
15 センターロボット
110 チャンバ(第1チャンバ)
130 高圧チャンバ(第2チャンバ)
151 基台部(ベース部)
152 回転ベース(旋回機構)
154 伸縮アーム(アーム)
155 ハンド
156 カバー部
158 駆動機構
1541 ベース部
1561 カバー本体
1562 延伸部材
1562a 開口
LF 液膜
S 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10