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特許7304762転写装置およびそれを備える画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】転写装置およびそれを備える画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20230630BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20230630BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20230630BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
G03G21/16 147
G03G15/16 103
G03G21/00 310
G03G15/01 114
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019137856
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021021821
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168217
【弁理士】
【氏名又は名称】大村 和史
(72)【発明者】
【氏名】中川 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山内 浩一
(72)【発明者】
【氏名】立木 啓史
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-035185(JP,A)
【文献】特開平08-292654(JP,A)
【文献】特開2011-138040(JP,A)
【文献】特開2004-102123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
G03G 15/16
G03G 21/00
G03G 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の懸架ローラによって周回移動可能に懸架された転写ベルト、
前記転写ベルトと、トナー像が形成される像担持体とを離接させる第1離接機構、
前記転写ベルトに潤滑剤を供給する潤滑剤供給部材
前記第1離接機構の離接動作に連動して、前記転写ベルトと、前記潤滑剤供給部材とを離接させる第2離接機構、および
前記第1離接機構の離接動作に連動して移動する移動部材を備え、
前記第2離接機構は、前記移動部材の移動に連動して作動するアーム部材を含み、
前記潤滑剤供給部材は、前記アーム部材に取り付けられる、転写装置。
【請求項2】
前記転写装置のフレーム部材に取り付けられ、前記アーム部材を回動可能に支持する軸支部材と、前記アーム部材および前記移動部材を連結する連結部材とをさらに備える、請求項記載の転写装置。
【請求項3】
前記複数の懸架ローラのうちの1つは、前記転写ベルトに一定の張力を与えるとともに、当該転写ベルトから受ける荷重に応じて回転軸方向に対して垂直な方向に移動可能なテンションローラであり、
前記テンションローラは、前記移動部材として機能する、請求項1または2記載の転写装置。
【請求項4】
前記第1離接機構は、移動可能に設けられるリンク部材と、前記転写ベルトを挟んで前記像担持体と対向する位置に配置され、前記リンク部材の位置に連動して、当該転写ベルトを押圧する押圧位置と、当該転写ベルトから離れる第1離間位置との間で変位可能とされる中間転写ローラと、を含み、
前記リンク部材は、前記移動部材として機能する、請求項記載の転写装置。
【請求項5】
前記第1離接機構は、移動可能に設けられるリンク部材と、前記リンク部材を移動させるためのカム部材と、前記転写ベルトを挟んで前記像担持体と対向する位置に配置され、前記リンク部材の位置に連動して、当該転写ベルトを押圧する押圧位置と、当該転写ベルトから離れる第1離間位置との間で変位可能とされる中間転写ローラと、を含み、
前記カム部材は、前記移動部材として機能する、請求項記載の転写装置。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載の転写装置を備える、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は転写装置およびそれを備える画像形成装置に関し、特にたとえば、像担持体から中間転写ベルトにトナー像を一次転写する一次転写ユニットを有する、転写装置およびそれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、背景技術の画像形成装置の一例が開示される。背景技術の画像形成装置は、転写装置において中間転写ベルトを介して記録媒体にトナー像の転写を行う、所謂中間転写方式を採用している。また、背景技術の画像形成装置は、記録媒体にトナー像を転写した後に中間転写ベルト上に残留したトナーを中間転写ベルトから除去するためのクリーニングブレードを備える。
【0003】
さらに、背景技術の画像形成装置には、クリーニングブレードの鳴き、ビビリ、めくれ等を防止するために、中間転写ベルトに潤滑性付与剤を塗布するための塗布部材が設けられており、この塗布部材は、専用のソレノイドによって中間転写ベルトに対して接離可能に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-271142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、背景技術の画像形成装置では、塗布部材を中間転写ベルトに対して接離させるための専用の駆動源を設けるので、装置の大型化および製造コストの増大につながってしまう。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、転写装置およびそれを備える画像形成装置を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、潤滑性塗布部材と中間転写ベルトとを離接させるための専用の駆動源を設ける必要が無く、製造コストの低減および装置の小型化を図ることができる、転写装置およびそれを備える画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、複数の懸架ローラによって周回移動可能に懸架された転写ベルト、転写ベルトと、トナー像が形成される像担持体とを離接させる第1離接機構、転写ベルトに潤滑剤を供給する潤滑剤供給部材、第1離接機構の離接動作に連動して、転写ベルトと、潤滑剤供給部材とを離接させる第2離接機構、および第1離接機構の離接動作に連動して移動する移動部材を備え、第2離接機構は、移動部材の移動に連動して作動するアーム部材を含み、潤滑剤供給部材は、アーム部材に取り付けられる、転写装置である。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に従属する転写装置であって、転写装置のフレーム部材に取り付けられ、アーム部材を回動可能に支持する軸支部材と、アーム部材および移動部材を連結する連結部材とをさらに備える。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属する転写装置であって、複数の懸架ローラのうちの1つは、転写ベルトに一定の張力を与えるとともに、当該転写ベルトから受ける荷重に応じて回転軸方向に対して垂直な方向に移動可能なテンションローラであり、テンションローラは、移動部材として機能する。
【0012】
第4の発明は、第1の発明に従属する転写装置であって、第1離接機構は、移動可能に設けられるリンク部材と、転写ベルトを挟んで像担持体と対向する位置に配置され、リンク部材の位置に連動して、当該転写ベルトを押圧する押圧位置と、当該転写ベルトから離れる第1離間位置との間で変位可能とされる中間転写ローラとを含み、リンク部材は、移動部材として機能する。
【0013】
第5の発明は、第1の発明に従属する転写装置であって、第1離接機構は、移動可能に設けられるリンク部材と、リンク部材を移動させるためのカム部材と、転写ベルトを挟んで像担持体と対向する位置に配置され、リンク部材の位置に連動して、当該転写ベルトを押圧する押圧位置と、当該転写ベルトから離れる第1離間位置との間で変位可能とされる中間転写ローラとを含み、カム部材は、移動部材として機能する。
【0014】
第6の発明は、第1ないし第5のいずれかの発明の転写装置を備える、画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、潤滑性塗布部材と中間転写ベルトとを離接させるための専用の駆動源を設ける必要が無く、製造コストの低減および装置の小型化を図ることができる。
【0016】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1はこの発明の第1実施例である画像形成装置の全体を正面から見た場合の概略構成を示す図解図である。
図2図2(A)は待機状態の中間転写ユニットの概略断面図である。図2(B)は単色印字状態の中間転写ユニットの概略断面図である。図2(C)はカラー印字状態の中間転写ユニットの概略断面図である。
図3図3(A)は、待機状態の中間転写ユニットの一部を拡大した拡大図である。図3(B)は、単色印字状態の中間転写ユニットの一部を拡大した概略断面図である。図3(C)は、カラー印字状態の中間転写ユニットの一部を拡大した概略断面図である。
図4図4は、第2実施例の中間転写ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図5図5(A)は待機状態の中間転写ユニットの一部を示す概略断面図である。図5(B)は印字状態の中間転写ユニットの一部を示す概略断面図である。
図6図6(A)は第3実施例における待機状態の中間転写ユニットの概略断面図である。図6(B)は第3実施例における単色印字状態の中間転写ユニットの概略断面図である。図6(C)は第3実施例におけるカラー印字状態の中間転写ユニットの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施例]
図1は、この発明の一実施例である画像形成装置10の全体を正面から見た概略構成図である。
【0019】
図1に示される第1実施例の画像形成装置10は、カラープリンタであって、電子写真方式によって用紙(記録媒体)に多色または単色の画像を形成する。ただし、画像形成装置10は、プリンタに限定される必要はなく、カラー印刷が可能なコピー機またはファクシミリ或いはこれらの機能を備えた複合機であってもよい。
【0020】
なお、この明細書では、画像形成装置10を正面から見た場合の水平方向のうち、向かって左側を左方向に規定し、向かって右側を右方向に規定する。また、画像形成装置10を上方(下方)から見た場合の奥行き方向のうち、画像形成装置10の正面側を前方向(正面方向)に規定し、画像形成装置10の背面側を後方向(背面方向)に規定する。
【0021】
先ず、画像形成装置10の基本構成について概略的に説明する。図1に示すように、画像形成装置10は、感光体ドラム12、現像装置14、帯電器16、クリーニングユニット18、露光装置20、中間転写ユニット22、2次転写ローラ24および定着ユニット26等のコンポーネントを備え、給紙トレイ28から搬送される用紙上に画像を形成し、画像形成済みの用紙を排出トレイ30に排出する。用紙上に画像を形成するための印刷画像データとしては、外部コンピュータから入力される画像データが利用される。ただし、画像形成装置10がスキャナ機能を備える場合には、印刷画像データとしては、外部から入力される画像データのみならず、スキャナによって原稿から読み取った画像データを利用することもできる。
【0022】
上述の各コンポーネントは、画像形成装置10の筐体10a内に収容される。また、画像形成装置10の筐体10a内には、CPUおよびメモリ等を含む制御部10bが設けられる。制御部10bは、画像形成装置10の各部位に制御信号を送信し、画像形成装置10に種々の動作を実行させる。
【0023】
ここで、画像形成装置10において扱われる画像データは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のカラー画像に応じたものである。このため、感光体ドラム12、現像装置14、帯電器16およびクリーニングユニット18のそれぞれは、各色に応じた4種類の潜像を形成するように4個ずつ設けられ、これらによって4つの画像ステーションが構成される。たとえば、4つの画像ステーションは、中間転写ベルト36の表面の走行方向(周回移動方向)に1列に並んで配置され、中間転写ベルト36の表面の走行方向における下流側から、つまり2次転写ローラ24に近い側から、ブラック用、シアン用、マゼンタ用およびイエロー用の順に配置される。ただし、各色の配置順は、適宜変更可能である。
【0024】
なお、符号における文字Y、M、CおよびKは、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色の画像ステーションにおける構成要素に対応する。また、符号における文字Y、M、CおよびKは、構成要素を色別に区別する必要がある場合に付しており、区別が不要な場合は省略する。
【0025】
各画像ステーションにおいて、感光体ドラム12の回転方向回り(図1では時計回り)に、帯電器16、現像装置14およびクリーニングユニット18がこの順序で配置される。現像装置14に含まれる現像ローラの回転軸および帯電器16の回転軸は、感光体ドラム12の回転軸と平行に並ぶように配置される。また、クリーニングユニット18に含まれるクリーニング部材(図示せず)の長手方向は、感光体ドラム12の回転軸方向と一致するように配置される。ただし、図1においては、感光体ドラム12の回転軸方向は、画像形成装置10を背面から見た場合の奥行き方向(前後方向)である。
【0026】
感光体ドラム12は、導電性を有する基体の表面に感光層(光導電層)が形成された像担持体であって、図示しない駆動部によって軸線回りに回転可能に支持される。
【0027】
現像装置14は、感光体ドラム12の表面に形成された静電潜像をトナーによって顕像化する(トナー像を形成する)ものである。この現像装置14には、トナー供給パイプ34を介して、トナーカートリッジ32が接続される。トナーカートリッジ32は、未使用のトナーおよびキャリアを貯蔵する容器であって、現像装置14の上方に設けられて、現像装置14にトナーを供給(補給)すると共にキャリアを補給する。トナー供給パイプ34は、トナーカートリッジ32と現像装置14に形成されるトナー補給口とを連結(接続)する。
【0028】
帯電器16は、感光体ドラム12の表面を所定の極性および電位に帯電させる装置である。帯電器16としては、ブラシ型帯電装置、ローラ型帯電装置、コロナ放電装置、イオン発生装置などを用いることができる。
【0029】
クリーニングユニット18は、感光体ドラム12から中間転写ベルト36にトナー像が転写された後に、感光体ドラム12の表面に残存するトナーを除去すると共に回収し、感光体ドラム12の表面を浄化する。したがって、たとえば、クリーニングユニット18は、トナーを掻き取るための板状部材であるクリーニング部材と、掻き取ったトナーを回収するための回収容器とを備える。
【0030】
露光装置20は、現像装置14の下方に設けられる。露光装置20は、レーザ出射部および反射ミラー等を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)として構成され、帯電された感光体ドラム12の表面を露光することによって、画像データに応じた静電潜像を感光体ドラム12の表面に形成する。
【0031】
中間転写ユニット22は、中間転写ベルト36、駆動ローラ38、従動ローラ40、4つの中間転写ローラ(1次転写ローラ)42、クリーニングブレード52および潤滑剤塗布ローラ(潤滑剤供給部材)54等を備え、感光体ドラム12の上方に配置される。なお、中間転写ユニット22の具体的な構成については後述する。
【0032】
また、中間転写ベルト36を挟んで駆動ローラ38と対向する位置には、2次転写ローラ24が配置される。2次転写ローラ24には、図示しない転写電源が接続され、画像形成時には、この転写電源によって2次転写ローラ24に電圧(2次転写電圧)が印加される。そして、電圧が印加された2次転写ローラ24によって形成される転写電界の作用により、中間転写ベルト36と2次転写ローラ24との間の2次転写ニップ域を用紙が通過する間に、中間転写ベルト36の外周面に形成されたトナー像が用紙に転写(2次転写)される。すなわち、中間転写ユニット22および2次転写ローラ24が協働して転写装置として機能する。その後、中間転写ベルト36の表面に残存したトナーは、クリーニングブレード52によって除去される。
【0033】
定着ユニット26は、ヒートローラおよび加圧ローラ等を備え、2次転写ローラ24の上方(用紙搬送方向下流側)に配置される。ヒートローラは、所定の定着温度となるように設定されており、ヒートローラと加圧ローラとの間の定着ニップ域を用紙が通過することによって、用紙に転写されたトナー像が溶融、混合および圧接されて、用紙に対してトナー像が熱定着される。
【0034】
また、画像形成装置10の筐体10a内には、給紙トレイ28に載置された用紙を2次転写ローラ24および定着ユニット26を経由させて排出トレイ30に送るための用紙搬送路が形成される。この用紙搬送路には、搬送ローラ44,46,48およびレジストローラ50等の用紙搬送手段が適宜配置される。
【0035】
画像形成時には、給紙トレイ28に載置された用紙が図示しないピックアップローラによって1枚ずつ用紙搬送路に導かれ、搬送ローラ44によってレジストローラ50まで搬送される。そして、レジストローラ50によって、用紙の先端と中間転写ベルト36上のトナー像の先端とが整合するタイミングで2次転写ローラ24に用紙が搬送され、用紙上にトナー像が転写される。その後、定着ユニット26を通過することによって用紙上の未定着トナーが熱で溶融して固着され、搬送ローラ46,48を経て排出トレイ30上に用紙が排出される。
【0036】
図2(A)は待機状態の中間転写ユニット22の概略構成を示す正面図である。図2(B)は単色印字状態の中間転写ユニット22の概略構成を示す正面図である。図2(C)はカラー印字状態の中間転写ユニット22の概略構成を示す正面図である。図3(A)は、待機状態の中間転写ユニット22の一部を拡大した拡大図である。図3(B)は、単色印字状態の中間転写ユニット22の一部を拡大した概略断面図である。図3(C)は、カラー印字状態の中間転写ユニット22の一部を拡大した概略断面図である。
【0037】
図2(A)~図2(C)に示すように、中間転写ベルト36は、可撓性を有する無端状のベルトであって、カーボンブラック等の導電性材料を適宜配合した合成樹脂等によって構成される。中間転写ベルト36は、駆動ローラ38および従動ローラ40等の複数のローラ(懸架ローラ)によって懸架(張架)され、その表面(外周面)が感光体ドラム12の表面に対し当接または離間できるように配置される。そして、中間転写ベルト36は、駆動ローラ38の回転駆動に伴い、所定方向(図1では反時計回り)に回転(周回移動)する。
【0038】
駆動ローラ38は、図示しない駆動部によってその軸線回りに回転可能に設けられる。従動ローラ(テンションローラ)40は、中間転写ベルト36の周回移動に伴って回転する。ただし、駆動ローラ38および従動ローラ40の回転軸は、感光体ドラム12の回転軸と平行である。また、従動ローラ40は、付勢部材56によって駆動ローラ38の反対側に向けて付勢されており、中間転写ベルト36に一定の張力を与えて中間転写ベルト36の弛みを防止する。付勢部材56は、たとえば圧縮ばね等であり、中間転写ユニット22のフレーム部材に取り付けられた支持部材220に支持され、中間転写ベルト36の表面の走行方向、すなわち駆動ローラ38と従動ローラ40とを結ぶ方向(左右方向)に伸縮可能に設けられる。また、従動ローラ40は、中間転写ベルト36からの荷重に応じて付勢部材56が伸縮することによって、従動ローラ40の回転軸方向に対して垂直な方向(付勢部材56の伸縮方向、すなわち駆動ローラ38と従動ローラ40とを結ぶ方向)に移動する。
【0039】
中間転写ローラ42は、中間転写ベルト36を挟んで各感光体ドラム12と対向する位置(各感光体ドラム12の上方)にそれぞれ配置され、中間転写ベルト36の内周面に圧接されて中間転写ベルト36の周回移動に伴い回転する。図示は省略するが、この中間転写ローラ42には、転写バイアスを印加する転写電源が接続される。画像形成時には、感光体ドラム12の表面に形成されたトナー像を構成するトナーの帯電極性とは逆極性の電圧が中間転写ローラ42に印加される。これによって、感光体ドラム12と中間転写ベルト36との間に転写電界が形成され、この転写電界の作用によって、感光体ドラム12に形成されたトナー像が中間転写ベルト36の外周面に転写される。たとえば、カラー画像を形成する場合には、各感光体ドラム12に形成された各色のトナー像が中間転写ベルト36に順次重ねて転写(1次転写)されて、中間転写ベルト36の外周面に多色のトナー像が形成される。
【0040】
クリーニングブレード52は、中間転写ベルト36の周回移動方向において2次転写ニップ域と最も上流側の画像ステーション(たとえばイエロー用の画像ステーション)との間に設けられ、用紙へのトナー像の転写後(用紙が2次転写ニップ域を通過した後)に中間転写ベルト36の外周面に残留したトナー(残留トナー)および中間転写ベルト36の外周面に付着している紙粉などを除去するための部材である。この第1実施例では、クリーニングブレード52は、中間転写ベルト36を挟んで従動ローラ40と対向する位置に設けられる。このクリーニングブレード52は、長尺の矩形板状の弾性部材であって、中間転写ベルト36の幅方向(周回移動方向と直交する方向)に延びるように設けられる。また、クリーニングブレード52は、その先端角部が中間転写ベルト36の外周面に対してカウンタ方向に所定圧で当接するように設けられて、中間転写ベルト36の外周面に残留したトナーを機械的に掻き取って除去する。
【0041】
潤滑剤塗布ローラ54は、中間転写ベルト36の周回移動方向において2次転写ニップ域とクリーニングブレード52との間に設けられ、中間転写ベルト36の外周面に当接されて中間転写ベルト36の周回移動に伴い回転する。第1実施例では、潤滑剤塗布ローラ54は、中間転写ベルト36の上部(用紙への転写後の戻り側部分)であって、従動ローラ40の近傍に設けられる。この潤滑剤塗布ローラ54は、たとえばスポンジローラであり、潤滑剤塗布ローラ54には、液体状の潤滑材が含浸される。たとえば、液体状の潤滑材としては、シリコンオイルやフッ素オイル等を用いることができる。したがって、潤滑剤塗布ローラ54が中間転写ベルト36の外周面に当接することによって、潤滑剤塗布ローラ54に含浸される潤滑材が中間転写ベルト36に塗布される。
【0042】
また、中間転写ユニット22は、第1離接機構58を備え、各中間転写ローラ42は、第1離接機構58によって、中間転写ベルト36を押圧する押圧位置と、中間転写ベルト36から離れる第1離間位置との間で変位可能とされる。
【0043】
第1離接機構58は、カム部材60、ブラック用リンク部材(単色用移動部材)62およびカラー用リンク部材(カラー用移動部材)64等を備える。
【0044】
カム部材60は、図示しない駆動部(駆動モータ)の駆動力によって回転する単一の駆動軸に取り付けられ、この駆動軸を中心に回転する。駆動軸は、中間転写ベルト36の周回移動方向に直交する方向(感光体ドラム12の回転軸方向)に延びるように設けられ、駆動モータから駆動力を伝達されることで回転する。駆動モータは、ステッピングモータ等の汎用のモータであって、上述した制御部10bによって制御される。
【0045】
この第1実施例では、カム部材60は、板カムであり、その外周面は、カム部材60の位相(回転角度)によって、駆動軸からの距離が変化するように曲線状に形成される。なお、カム部材60は、他の形態のカムを用いてもよい。たとえば、カム部材60として、正面カムまたは両面カム等を用いることができる。
【0046】
ブラック用リンク部材62およびカラー用リンク部材64のそれぞれは、長手方向が中間転写ベルト36の表面の走行方向と平行(左右方向)となるように配置され、その長手方向に所定範囲内で移動自在である。
【0047】
ブラック用リンク部材62は、カム部材60よりもブラック用画像ステーション側(駆動ローラ38側)に設けられ、図示しない付勢部材によってカム部材60側に付勢される。さらに、ブラック用リンク部材62のカム部材60側の端部には、従節ピンが設けられる。従節ピンは、カム部材60の外周面に当接しており、カム部材60が回転することによって、従節ピンと駆動軸との距離が変化する。ブラック用リンク部材62は、付勢部材の付勢力に抗して、または付勢部材の付勢力によって、従節ピンと駆動軸との距離に応じて、その長手方向(左右方向)に移動する。
【0048】
カラー用リンク部材64は、カム部材60を挟んでブラック用リンク部材62の反対側、すなわち、カム部材60よりもシアン用画像ステーション側(従動ローラ40側)に設けられており、少なくともシアン用画像ステーションからイエロー用画像ステーションまで延びる。また、カラー用リンク部材64は、図示しない付勢部材によってカム部材60側に付勢される。さらに、カラー用リンク部材64のカム部材60側の端部には、カム部材60の外周面に当接する従節ピンが設けられる。カラー用リンク部材64は、付勢部材の付勢力に抗して、または付勢部材の付勢力によって、従節ピンと駆動軸との距離に応じて、中間転写ベルト36の走行方向(左右方向)に移動する。
【0049】
また、ブラック用リンク部材62には、1つのローラ作動アーム620が取り付けられ、カラー用リンク部材64には、3つのローラ作動アーム640M、640C、640Yが取り付けられる。ローラ作動アーム620は、ブラック用画像ステーションに対応する位置に配置され、ローラ作動アーム640Mは、マゼンタ用画像ステーションに対応する位置に配置され、ローラ作動アーム640Cは、シアン用画像ステーションに対応する位置に配置され、ローラ作動アーム640Yは、イエロー用画像ステーションに対応する位置に配置される。
【0050】
ただし、ローラ作動アーム620と、ローラ作動アーム640M、640C、640Yとは、それぞれ同じ部材で構成される。ローラ作動アーム620,640は、アーム部材、連結部材および軸支部材を有する。アーム部材の一方端には、各画像ステーションに対応する中間転写ローラ42が回動可能に取り付けられる。連結部材は、アーム部材の他方端を、ブラック用リンク部材62またはカラー用リンク部材64と連結する。軸支部材は、中間転写ユニット22のフレーム部材(図示せず)に取り付けられ、アーム部材を回動可能に支持(軸支)する。すなわち、アーム部材は、軸支部材を中心に回動可能に支持される。
【0051】
ここで、アーム部材の他方端(ブラック用リンク部材62またはカラー用リンク部材64との連結部分)は、ブラック用リンク部材62またはカラー用リンク部材64の移動に応じて、左右方向に平行移動する。このとき、アーム部材は、軸支部材を中心に回動するので、アーム部材の一方端、すなわち中間転写ローラ42が上下方向に移動する。図2(A)~図2(C)に示すように、ブラック用リンク部材62またはカラー用リンク部材64が右方向(第1の方向)に移動すると、中間転写ローラ42が上方に移動する。すなわち、中間転写ローラ42が中間転写ベルト36から離れる方向に移動する。一方、ブラック用リンク部材62またはカラー用リンク部材64が左方向(第2の方向)に移動すると、中間転写ローラ42が下方に移動する。すなわち、中間転写ローラ42が中間転写ベルト36に当接(押圧)する方向に移動する。ただし、3つのローラ作動アーム640M、640C、640Yは、いずれもカラー用リンク部材64に連結されているので、カラー用リンク部材64が移動すると、3つのローラ作動アーム640M、640C、640Yが同時に移動(回動)する。
【0052】
上述したように、ブラック用リンク部材62またはカラー用リンク部材64は、カム部材60の回転角度に応じて移動されるので、カム部材60の回転角度を制御することによって、各中間転写ローラ42を中間転写ベルト36に対して離接させることができる。
【0053】
また、ブラック用リンク部材62と、カラー用リンク部材64とは個別に移動させることができる。したがって、ブラック用の中間転写ローラ42Kと、マゼンタ用、シアン用およびイエロー用の中間転写ローラ(以下、まとめて「カラー用の中間転写ローラ」ということがある。)42M、42C、42Yとを、中間転写ベルト36に対して選択的に離接させることができる。
【0054】
図2(A)に示す例では、ブラック用リンク部材62は、カム部材60から最も離れた位置に位置し、カラー用リンク部材64は、カム部材60に最も近い位置に位置する。第1実施例では、ブラック用リンク部材62およびカラー用リンク部材64のこれらの位置を、待機位置という。つまり、待機位置とは、ブラック用リンク部材62の従節ピンとカム部材60の駆動軸との距離が、最も長くなる位置である。また、待機位置とは、カラー用リンク部材64の従節ピンと、カム部材60の駆動軸との距離が、最も短くなる位置でもある。このように、ブラック用リンク部材62およびカラー用リンク部材64の両方が待機位置に位置する場合には、全ての中間転写ローラ42が中間転写ベルト36から離間する状態(待機状態)となる。この待機状態では、中間転写ベルト36と各感光体ドラム12とは離間する。
【0055】
図2(B)は、待機状態からカム部材60の回転角度が変化した状態を示す。このとき、カラー用リンク部材64は移動せずに待機位置に位置する。一方、ブラック用リンク部材62は、カム部材60に近づく方向(第2の方向)に待機位置から所定距離移動し、所定の位置(作動位置)に位置する。上述したように、ブラック用リンク部材62が第2の方向に移動すると、ローラ作動アーム620の一方端部が下方に移動するので、ブラック用の中間転写ローラ42Kが中間転写ベルト36を押圧する。このように、カラー用リンク部材64が待機位置に位置し、ブラック用リンク部材62が作動位置に位置する場合には、カラー用の中間転写ローラ42M、42C、42Yは中間転写ベルト36から離間し、ブラック用の中間転写ローラ42Kは中間転写ベルト36を押圧する状態(単色印字状態)となる。この単色印字状態では、中間転写ベルト36とカラー用の感光体ドラム12M、12C、12Yとは離間し、中間転写ベルト36とブラック用の感光体ドラム12Kとは当接する。
【0056】
図2(C)は、単色印字状態からカム部材60の回転角度が変化した状態を示す。このとき、ブラック用リンク部材62は単色印字状態から移動せずに作動位置に位置する。また、カラー用リンク部材64は、カム部材60から離れる方向(第2の方向)に待機位置から所定距離移動し、作動位置に位置する。このように、ブラック用リンク部材62およびカラー用リンク部材64の両方が作動位置に位置する場合には、全ての中間転写ローラ42が中間転写ベルト36を押圧する状態(カラー印字状態)となる。このカラー印字状態では、中間転写ベルト36と全ての感光体ドラム12Kとが当接する。
【0057】
この画像形成装置10では、印刷ジョブが実行されないときは、中間転写ユニット22は、待機状態とされ、モノクロ印刷ジョブが実行されるときは、中間転写ユニット22は、単色印字状態とされ、カラー印刷ジョブが実行されるときは、中間転写ユニット22は、カラー印字状態とされる。ただし、モノクロ印刷ジョブおよびカラー印刷ジョブが終了(完了)したときは、中間転写ユニット22は、待機状態とされる。
【0058】
さらに、中間転写ユニット22は、第2離接機構70を備え、潤滑剤塗布ローラ54は、第2離接機構70によって、中間転写ベルト36に当接する当接位置と、中間転写ベルト36から離れる第2離間位置との間で変位可能とされる。
【0059】
第2離接機構70は、軸支部材72およびアーム部材74等を備え、従動ローラ40の近傍に設けられる。軸支部材72は、中間転写ユニット22のフレーム部材(図示せず)に取り付けられ、アーム部材74を感光体ドラム12の回転軸と平行な軸回りに回動可能に支持(軸支)する。すなわち、アーム部材74は、軸支部材72を支点として感光体ドラム12または従動ローラ40等と平行に回動(傾動)可能に支持される。ただし、アーム部材74の回動軸は、従動ローラ40の回動軸よりも下側であって、かつ、従動ローラ40の回動軸よりも駆動ローラ38の反対側(左側)に配置される。
【0060】
アーム部材74は、上下方向に延びる板状の部材であり、一方端部に潤滑剤塗布ローラ54が回動可能に取り付けられ、他方端部において軸支部材72に軸支される。ただし、潤滑剤塗布ローラ54は、従動ローラ40の回動軸よりも上側であって、かつ、従動ローラ40の回動軸よりも駆動ローラ38側(右側)に配置される。したがって、潤滑剤塗布ローラ54は、中間転写ベルト36の上方に位置する。
【0061】
また、アーム部材74は、一方端部と、軸支部材72に軸支される部分(この実施例では他方端部)との間に形成されたガイド孔742を有する。
【0062】
ガイド孔742は、上下方向に延びる長孔(スロット孔)である。このガイド孔742には、従動ローラ40の軸部材402が嵌合される。ただし、ガイド孔742の左右方向の大きさ(幅)は、軸部材402の外径よりも僅かに大きく設定される。したがって、軸部材402は、ガイド孔742内を移動可能である。つまり、アーム部材74のガイド孔742と従動ローラ40の軸部材402とが、従動ローラ40とアーム部材74とを連結する連結部として機能する。上述したように、従動ローラ40は、付勢部材56の伸縮方向、すなわち駆動ローラ38と従動ローラ40とを結ぶ方向に移動可能であるので、アーム部材74は、従動ローラ40の移動に連動して傾動(作動)する。具体的には、アーム部材74は、従動ローラ40が駆動ローラ38に近づく方向に移動する場合、駆動ローラ38に近づく方向に傾動し、従動ローラ40が駆動ローラ38から離れる方向に移動する場合、駆動ローラ38から離れる方向に傾動する。
【0063】
そして、アーム部材74が傾動することによって、その一方端部に取り付けられた潤滑剤塗布ローラ54が上下方向に移動する。具体的には、アーム部材74が駆動ローラ38に近づく方向に傾動することによって、潤滑剤塗布ローラ54が下方向、すなわち中間転写ベルト36に当接する方向に移動し、アーム部材74が駆動ローラ38から離れる方向に傾動することによって、潤滑剤塗布ローラ54が上方向、すなわち中間転写ベルト36から離れる方向に移動する。
【0064】
ただし、図2(A)および図3(A)に示すように、印刷ジョブが実行されないとき、すなわち待機状態では、従動ローラ40が駆動ローラ38から最も離れた状態となる。このとき、アーム部材74は、駆動ローラ38から最も離れた状態となり、潤滑剤塗布ローラ54は、中間転写ベルト36から離間した状態となる。したがって、印刷ジョブが実行されないときは、中間転写ベルト36に潤滑材が塗布されない。
【0065】
一方、図2(B)および図3(B)に示すように、モノクロ印刷ジョブが実行されるとき、すなわち単色印字状態では、ブラック用の中間転写ローラ42Kが中間転写ベルト36を押圧することによって、中間転写ベルト36の周回移動経路が下側に変位する。このとき、中間転写ベルト36の周囲長は変化しないので、従動ローラ40にかかる荷重が増大する。したがって、従動ローラ40が、付勢部材56の収縮方向、すなわち駆動ローラ38に近づく方向に移動し、これに連動して、アーム部材74が駆動ローラ38に近づく方向に傾動する。これに伴い、潤滑剤塗布ローラ54が中間転写ベルト36に当接する方向に移動し、潤滑剤塗布ローラ54と中間転写ベルト36とが当接する状態となる。以上のように、モノクロ印刷ジョブが実行されるときには、潤滑剤塗布ローラ54と中間転写ベルト36とが当接し、中間転写ベルト36に潤滑材が塗布される。
【0066】
また、図2(C)および図3(C)に示すように、カラー印刷ジョブが実行されるとき、すなわちカラー印字状態では、全ての中間転写ローラ42が中間転写ベルト36を押圧する。このため、単色印字状態よりも中間転写ベルト36の周回移動経路が下側に大きく変位し、これによって、単色印字状態よりも従動ローラ40にかかる荷重が増大する。したがって、従動ローラ40は、単色印字状態よりも駆動ローラ38に近づく方向に移動し、これに連動して、アーム部材74が駆動ローラ38に近づく方向に傾動し、潤滑剤塗布ローラ54と中間転写ベルト36とが当接する状態となる。したがって、カラー印刷ジョブが実行されるときは、中間転写ベルト36に潤滑材が塗布される。ただし、アーム部材74は、単色印字状態よりも、潤滑剤塗布ローラ54が中間転写ベルト36に当接する方向に移動する。したがって、モノクロ印刷ジョブが実行されるときよりも、潤滑剤塗布ローラ54が中間転写ベルト36に当接する圧力(当接圧)が大きくなる。
【0067】
そして、モノクロ印刷ジョブおよびカラー印刷ジョブが終了(完了)したときは、カム部材60の回転角度が変更されて単色印字状態またはカラー印字状態から待機状態となり、潤滑剤塗布ローラ54が中間転写ベルト36から離間する。
【0068】
以上のように構成した中間転写ユニット22であれば、第2離接機構70は、中間転写ローラ42と中間転写ベルト36とを離接させる第1離接機構58の離接動作に連動して、潤滑剤塗布ローラ54と中間転写ベルト36とを離接させる。したがって、潤滑剤塗布ローラ54と中間転写ベルト36とを離接させるための専用の駆動源を設ける必要が無く、製造コストの低減および装置の小型化を図ることができる。
【0069】
また、第1実施例によれば、第2離接機構70は、第1離接機構58の離接動作に連動して作動するアーム部材74を含み、潤滑剤塗布ローラ54は、アーム部材74に取り付けられるので、簡単な構成で、潤滑剤塗布ローラ54と中間転写ベルト36とを離接させることができる。
【0070】
さらに、第1実施例によれば、第2離接機構70は、中間転写ベルト36に一定の張力を与えるための従動ローラ(テンションローラ)40の移動に連動して作動するので、中間転写ユニット22が通常備える構成部品の動作を利用して、潤滑剤塗布ローラ54と中間転写ベルト36とを離接させることができる。
【0071】
さらにまた、第1実施例によれば、中間転写ユニット22のフレーム部材に取り付けられ、アーム部材74の他方端部を回動可能に支持する軸支部材と、従動ローラ40とアーム部材74とを連結する連結部材とを備えるので、簡単な構成で、潤滑剤塗布ローラ54と中間転写ベルト36とを離接させることができる。
[第2実施例]
第2実施例の画像形成装置10は、第2離接機構70の構成が異なる以外は、第1実施例の画像形成装置10と同じであるため、第1実施例と異なる内容について説明し、重複した説明については省略することにする。
【0072】
図4は、第2実施例の中間転写ユニット22の概略構成を示す斜視図である。図5(A)は待機状態の中間転写ユニット22の一部を示す概略断面図である。図5(B)は印字状態の中間転写ユニット22の一部を示す概略断面図である。
【0073】
第2実施例では、図4に示すように、潤滑剤塗布ローラ54および第2離接機構70は、ブラック用リンク部材62の上方、すなわちブラック用画像ステーションの上方に設けられる。
【0074】
図5(A)および図5(B)に示すように、アーム部材74は、左右方向(中間転写ベルト36の上側部分における中間転写ベルト36の周回移動方向)に延びる。また、アーム部材74の回動軸(アーム部材74の他方端部)は、中間転写ベルト36の上側部分(転写後の戻り側部分)よりも下側に配置される。潤滑剤塗布ローラ54(アーム部材74の一方端部)は、中間転写ベルト36の上側部分よりも上側に配置される。
【0075】
また、アーム部材74は、付勢部材76によって下方に向けて付勢される。付勢部材76は、たとえば圧縮ばね等であり、中間転写ユニット22のフレーム部材22R,22L(図4参照)に取り付けられた支持部材222に支持され、上下方向(潤滑剤塗布ローラ54と中間転写ベルト36とが離接する方向)に伸縮する。
【0076】
さらに、アーム部材74の下面74aは、アーム部材74の下方に位置するブラック用リンク部材62の上面に当接する。具体的には、アーム部材74の下面74aは、ブラック用リンク部材62の上面に形成された突起622の上面622aに当接する。これによって、アーム部材74の下方への移動が規制される。
【0077】
ただし、アーム部材74の下面74aおよびブラック用リンク部材62の突起622の上面622aは、互いに当接する部分が、カム部材60から離れる方向に(右側に向かって)上り勾配となる傾斜面となっている。したがって、アーム部材74は、ブラック用リンク部材62の移動に連動して上下に移動(作動)する。
【0078】
ただし、第2実施例では、ブラック用リンク部材62がカム部材60に最も近い位置が、ブラック用リンク部材62の待機位置であり、ブラック用リンク部材62がカム部材60から離れる方向(第1の方向)に待機位置から所定距離移動した位置がブラック用リンク部材62の作動位置である。
【0079】
ブラック用リンク部材62が待機位置から作動位置に(第1の方向に)移動すると、アーム部材74の一方端部が下方に移動する。すなわち、潤滑剤塗布ローラ54が下方向(中間転写ベルト36に当接する方向)に移動する。一方、ブラック用リンク部材62が作動位置から待機位置に(第2の方向に)移動すると、アーム部材74の一方端部が上方に移動する。すなわち、潤滑剤塗布ローラ54が上方向(中間転写ベルト36から離間する方向)に移動する。
【0080】
ここで、図5(A)に示すように、印刷ジョブが実行されないとき、すなわち待機状態では、ブラック用リンク部材62は、待機位置に位置する。このとき、潤滑剤塗布ローラ54は、中間転写ベルト36から離間した状態となる。したがって、印刷ジョブが実行されないときは、中間転写ベルト36に潤滑材が塗布されない。
【0081】
一方、図5(B)に示すように、モノクロ印刷ジョブが実行されるときまたはカラー印刷ジョブが実行されるとき、すなわち単色印字状態またはカラー印字状態では、ブラック用リンク部材62は、待機位置から作動位置に移動する。このとき、アーム部材74の一方端部、すなわち潤滑剤塗布ローラ54が下方に移動し、潤滑剤塗布ローラ54が中間転写ベルト36に当接する。したがって、モノクロ印刷ジョブが実行されるときまたはカラー印刷ジョブが実行されるときは、中間転写ベルト36に潤滑材が塗布される。
【0082】
この第2実施例によれば、第1実施例と同様に、潤滑剤塗布ローラ54と中間転写ベルト36とを離接させるための専用の駆動源を設ける必要が無く、製造コストの低減および装置の小型化を図ることができる。
【0083】
また、第2実施例によれば、第2離接機構70は、ブラック用の中間転写ローラ42Kを作動させるための部材であるブラック用リンク部材62の移動に連動して作動するので、中間転写ユニット22が通常備える構成部品の動作を利用して、潤滑剤塗布ローラ54と中間転写ベルト36とを離接させることができる。
【0084】
なお、中間転写ユニット22が画像形成装置10の筐体10aに対して挿抜される際の案内部材(ガイド部材)を、支持部材222として機能させても良い。この案内部材は、中間転写ユニット22のフレーム部材22R,22Lのそれぞれに固定され、中間転写ユニット22の挿抜方向(前後方向)に延びる部材であって、中間転写ユニット22が画像形成装置10の筐体10aに対して挿抜される場合に、筐体10aの内部に設けられた本体側のガイド部材に当接して、中間転写ユニット22の挿抜時のガイドとして機能するとともに、中間転写ユニット22が画像形成装置10の筐体10aに挿入(装着)された場合に中間転写ユニット22の位置を規制する機能も有する。この案内部材としては、たとえば断面U字状の部材(ガイドレール)を用いることができる。この案内部材の下面に付勢部材76を係止することによって、案内部材を支持部材222として機能させることができる。
[第3実施例]
第3実施例の画像形成装置10は、第2離接機構70の構成が異なる以外は、第2実施例の画像形成装置10と同じであるため、第2実施例と異なる内容について説明し、重複した説明については省略することにする。
【0085】
図6(A)は第3実施例における待機状態の中間転写ユニット22の概略断面図である。図6(B)は第3実施例における単色印字状態の中間転写ユニット22の概略断面図である。図6(C)は第3実施例におけるカラー印字状態の中間転写ユニット22の概略断面図である。
【0086】
第3実施例では、図6(A)~図6(C)に示すように、第1離接機構58において、ブラック用の中間転写ローラ42Kの離接動作を行うための構成部品(ブラック用リンク部材62およびローラ作動アーム620等)が省略される。そして、第3実施例では、ブラック用の中間転写ローラ42Kは、中間転写ベルト36を常に押圧する位置に固定的に設けられる。このため、印刷ジョブが実行されるか否かに関わらず、中間転写ベルト36とブラック用の感光体ドラム12Kとは常に当接する。
【0087】
また、第3実施例では、潤滑剤塗布ローラ54および第2離接機構70は、カム部材60の上方に設けられる。
【0088】
さらに、第3実施例では、アーム部材74は下方に向かって突出する突起を有し、この突起の下面74bは、カム部材60の位相(回転角度)によって、カム部材60の外周面に当接する。これによって、アーム部材74の下方への移動が規制される。
【0089】
ただし、カム部材60が回転することによって、アーム部材74の下面74bとカム部材60の駆動軸との距離が変化する。このとき、アーム部材74は、アーム部材74の下面74bとカム部材60の駆動軸との距離に応じて、付勢部材76の付勢力に抗するように、または付勢部材76の付勢力によって傾動(作動)する。すなわち、アーム部材74は、カム部材60の回転に連動して傾動する。
【0090】
ここで、図6(A)に示すように、印刷ジョブが実行されないとき、すなわち待機状態では、アーム部材74は、カム部材60によって押し上げられた状態となり、カム部材60の駆動軸から最も離れた位置に位置する。このとき、潤滑剤塗布ローラ54は、中間転写ベルト36から離間した状態となる。したがって、印刷ジョブが実行されないときは、中間転写ベルト36に潤滑材が塗布されない。
【0091】
一方、図6(B)および図6(C)に示すように、モノクロ印刷ジョブが実行されるときまたはカラー印刷ジョブが実行されるとき、すなわち単色印字状態またはカラー印字状態では、アーム部材74とカム部材60とは当接しない。このとき、付勢部材76の付勢力によって、アーム部材74の一方端部が下方に移動し、潤滑剤塗布ローラ54が中間転写ベルト36に当接する。したがって、モノクロ印刷ジョブが実行されるときまたはカラー印刷ジョブが実行されるときは、中間転写ベルト36に潤滑材が塗布される。
【0092】
この第3実施例によれば、第2実施例と同様に、潤滑剤塗布ローラ54と中間転写ベルト36とを離接させるための専用の駆動源を設ける必要が無く、製造コストの低減および装置の小型化を図ることができる。
【0093】
また、第3実施例によれば、第2離接機構70は、カム部材60の移動に連動して作動するので、中間転写ユニット22が通常備える構成部品の動作を利用して、潤滑剤塗布ローラ54と中間転写ベルト36とを離接させることができる。
【0094】
以上説明したように、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。上で挙げた具体的な実施例は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0095】
10 …画像形成装置
12 …感光体ドラム
22 …転写装置
36 …中間転写ベルト
42 …中間転写ローラ
54 …潤滑剤塗布ローラ
58 …第1離接機構
70 …第2離接機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6