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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】摩擦リングセット、及び軌道輪ブレーキ
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/12 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
F16D65/12 P
F16D65/12 U
F16D65/12 R
F16D65/12 B
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019569343
(86)(22)【出願日】2018-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2018065475
(87)【国際公開番号】W WO2018229043
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】202017103551.4
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519278491
【氏名又は名称】フェヴレー トランスポート ヴィッテン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Faiveley Transport Witten GmbH
【住所又は居所原語表記】Brauckstrasse 26, 58454 Witten, Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス シュトレートマン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ イムホフ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス メーラン
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-531249(JP,A)
【文献】米国特許第04281745(US,A)
【文献】独国実用新案第202009014768(DE,U1)
【文献】独国実用新案第202009013476(DE,U1)
【文献】特開2004-278796(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00062774(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道輪ブレーキ(100)を形成するために、鉄道車両向け軌道輪(1)の車輪板部(2)に配置される摩擦リングセット(200)であって、
少なくとも一つの摩擦リング部品(10)であって、摩擦リング(11)と、別体の構成部品として構成され、且つ、前記摩擦リング(11)に配置される複数の連結部品(12,13)を有し、前記連結部品(12,13)の少なくともいくつかが、前記摩擦リング(11)にフォースロック(force lock)接続され、
前記摩擦リング(11)にフォースロック接続された前記連結部品(12,13)は、そのオーバーサイズな部分(7)が、前記摩擦リング(11)の対応する開口(14)にそれぞれ押し込まれて、それぞれの前記連結部品が1つの摩擦リングのみに接続され、
前記連結部品(13)は第1の接続部品を形成し、前記軌道輪(1)の前記車輪板部(2)に前記摩擦リング部品(10)を配置した場合、前記第1の接続部品により、前記軌道輪(1)の回転軸(A)に対する回転方向(U)において、前記摩擦リング(11)は前記軌道輪(2)の前記車輪板部(2)に支持され、
前記第1の接続部品(13)は、互いに平行な二つの止め壁(19)を備えた凹部(18)を有し、前記軌道輪(1)の前記車輪板部(2)に配置した場合、前記止め壁(19)は、前記軌道輪(1)の前記回転軸(A)からの半径(R)に対し、平行に位置合わせされ、
前記第1の接続部品(13)は、ピンを使用して、前記摩擦リング(11)に対する回転に対し固定される、
摩擦リング部品(10)と、
前記軌道輪(1)の前記車輪板部(2)に配置された場合、前記軌道輪(1)の前記回転軸(A)に対する前記回転方向(U)において、前記摩擦リング部品(10)をトルク伝達するように固定する摺動用ブロック(20)と、
前記軌道輪(1)の前記車輪板部(2)に、前記摩擦リング部品(10)をフォースロック接続するための第2の接続部品(16)と、
を少なくとも備え、
前記軌道輪(1)の前記車輪板部(2)に配置された場合、前記連結部品(12,13)の少なくともいくつかが、前記摩擦リング(11)と前記車輪板部(2)の間で、前記第2の接続部品(16)によって挟装され、
前記摺動用ブロック(20)は、前記第1の接続部品(13)に対応する個数をなし、前記軌道輪(1)の前記車輪板部(2)上への配置においてそれに対応して配置され、
前記摺動用ブロック(20)は、それぞれ付随する前記第1の接続部品(13)の前記止め壁(19)に隙間をあけて隣接し、且つ、
前記摺動用ブロック(20)と前記第1の接続部品(13)は、前記軌道輪(1)の前記回転軸(A)に対する径方向(R)に、互いに対して移動可能であり、且つ、
前記摺動用ブロック(20)は、前記摩擦リング部品(10)を、前記回転方向(U)にトルク伝達するように固定する、
摩擦リングセット(200)。
【請求項2】
前記摺動用ブロック(20)はそれぞれ、前記車輪板部(2)の連結孔(28)にボルトのように配置することができる、請求項1に記載の摩擦リングセット(200)。
【請求項3】
前記摩擦リングセット(200)は、前記軌道輪(1)の前記車輪板部(2)の両側に一対で配置される二つの摩擦リング部品(10)を含む、請求項2に記載の摩擦リングセット(200)。
【請求項4】
前記摺動用ブロック(20)の少なくとも一つは、前記摩擦リング部品(10)の両方を、前記回転方向(U)にトルク伝達するように固定するように構成され、
前記軌道輪(1)の前記車輪板部(2)に配置する場合、前記連結孔(28)を貫通して延出する、請求項3に記載の摩擦リングセット(200)。
【請求項5】
前記軌道輪(1)の前記車輪板部(2)に配置する場合、前記少なくとも一つの摺動用ブロック(20)は、前記軌道輪(1)の前記回転軸(A)について軸方向にある、請求項4に記載の摩擦リングセット(200)。
【請求項6】
前記連結部品(12,13)は、シャフト(7)及びヘッド(8)を備えたボルトとして構成され、
前記シャフト(7)は前記摩擦リング(11)にフォースロック接続され、
前記軌道輪(1)の前記車輪板部(2)に配置した場合、前記ヘッド(8)は、前記車輪板部(2)に対し、前記回転軸(A)に関する軸方向の止め具を形成する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の摩擦リングセット(200)。
【請求項7】
前記摩擦リング(11)は、板状金属材から切り抜かれる、請求項1から6のいずれか1項に記載の摩擦リングセット(200)。
【請求項8】
前記摩擦リング(11)は、板状鉄材又は板状アルミニウム材から切り抜かれる、請求項7に記載の摩擦リングセット(200)。
【請求項9】
前記連結部品(12,13)及び前記摩擦リング(11)は異なる金属材から形成される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の摩擦リングセット(200)。
【請求項10】
前記連結部品(12,13)及び前記摩擦リング(11)は、溶接処理に不向きな材料の組合せとなる、請求項9に記載の摩擦リングセット(200)。
【請求項11】
前記連結部品(12)は冷却部品を形成し、
前記軌道輪(1)の前記車輪板部(2)に前記摩擦リング部品(10)を配置した場合、前記冷却部品により、前記摩擦リング(11)と前記車輪板部(2)の間に冷却気流を形成することができる、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の摩擦リングセット(200)。
【請求項12】
前記連結部品(12,13)は、ストランド材から形成される、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の摩擦リングセット(200)。
【請求項13】
記連結部品(12,13)は、鉄又はアルミニウムから形成される、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の摩擦リングセット(200)。
【請求項14】
前記摩擦リング(11)及び/又は前記連結部品(12,13)は、レーザ切断方法、ウォータジェット切断方法、又は熱切断方法によって、固体材料から切り抜かれる、又は切り取られる、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の摩擦リングセット(200)。
【請求項15】
車輪ボス(3)、及び踏面(5)を備える車輪リム部(4)を有する、軌道輪(1)を備える軌道輪ブレーキ(100)であって、
車輪板部(2)が前記車輪ボス(3)と前記車輪リム部(4)の間に延在し、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の摩擦リングセット(200)が配置され、前記第2の接続部品(16)によって、前記軌道輪(1)の前記車輪板部(2)に締結される、
軌道輪ブレーキ(100)。
【請求項16】
前記第2の接続部品(16)の少なくとも一つが、ドローボルト(22)及びロックナット(29)を備える、請求項15に記載の軌道輪ブレーキ(100)。
【請求項17】
請求項4乃至6のいずれか一項に記載の摩擦リングセット(200)を備え、
少なくとも一つの前記第2の接続部品(16)が、両方の摩擦リング部品(10)を前記車輪板部(2)に固定する、請求項16に記載の軌道輪ブレーキ(100)。
【請求項18】
少なくとも一つの前記第2の接続部品(16)が、前記車輪板部(2)の貫通孔(30)を貫通して延在し、
前記貫通孔(30)は、前記貫通孔(30)の領域に配置される前記第2の接続部品(16)の該当部の断面よりも大きな断面を有する、請求項16又は17に記載の軌道輪ブレーキ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦リングセット用の摩擦リング部品、及び、軌道輪ブレーキを形成するために、鉄道車両向け軌道輪の車輪板部に配置するための摩擦リングセットに関し、並びに、その軌道ブレーキにも関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、EP1460283A1は、軌道輪ブレーキを形成するための、鉄道車両向け軌道輪の車輪板部に配置される摩擦リング部品を開示する。摩擦リング部品は鋳鋼から作製されており、冷却フィンを形成する成型体を有し、摩擦リング部品はこの成型体と共に車輪板部の表面に隣接する。また、車輪板部の穴に通しボトルを貫通させて摩擦リング部品を互いにねじ締めするため、この成型体は、通しボルトを収容する。開示されている摩擦リング部品の形状は、比較的高価な独自の成形法をもってのみ、技術的に合理的に作製することができる。
【0003】
更に、軌道輪の車輪板部に配置する摩擦リング部品は、EP1298333B1、及びDE4417813A1にも開示されている。鋳造によって作製されるこのような摩擦リング部品では、特に摩擦リング部品が軌道輪の車輪板部に当接する成型体を有する場合、並びに、摩擦リング部品が例えば摩擦リングを冷却するための冷却フィンを必要とする場合、技術的に複雑な鋳造型が必要となる。
【0004】
そのため、鉄道車両向け軌道輪の車輪板部に配置する摩擦リング部品、並びにそれに対応する軌道輪ブレーキが記載されているDE202013103487U1により解決法が知られている。ここでは、摩擦リング部品を板状金属材料から切り抜くこと、及び、摩擦リングの穴に挿入することができ、この摩擦リングに確実に接合する、別体の連結部品を設けることが提案される。この実施形態の欠点は、(コスト効率の良い)溶接処理を適用できるように、摩擦リング及び連結部品の材料が互いに調整されていなければならないことである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、生産が容易でコスト効率の良い軌道輪ブレーキを形成するために、軌道輪の車輪板部に配置する摩擦リングセット用の摩擦リング部品を開発することである。特に、摩擦リング部品には連結部品が簡単な方式で装備可能であり、特に、この連結部品は、冷却部品及び/又は摩擦リングを車輪板部に連結可能な接続部品を形成する。
【0006】
この目的は、それぞれの特徴を有する、請求項1のプリアンブル部による摩擦リング部品、及び軌道輪ブレーキを形成するために、鉄道車両向け軌道輪の車輪板部に配置する、請求項14のプリアンブル部による摩擦リングセット、並びに請求項20のプリアンブル部による軌道輪ブレーキによって達成される。本発明の好ましい発展形は、従属クレームで明示される。
【0007】
第1の実施形態によれば、別個に形成された連結部品、又は少なくとも何らかの連結部品が、摩擦リングにフォースロック接続される。とりわけ適切なフォースロック接続は、連結部品と摩擦リングの間をねじ接続することである。しかし、軌道輪、特に軌道輪ブレーキの機械負荷下では、例えばカシメなど更なる安全装置を設けるべきである。この場合、別個に形成した連結部品を、対応する小さめの開口に圧入するか、連結部品を、例えばシャフトなど大きめの接続部を用いて、対応する開口に圧入することが特に好ましい。実現可能な実施形態は、連結部品を開口に打ち込み、且つ/又は熱圧着することであり、各連結部品が過冷却によって収縮することが好ましい。
【0008】
本明細書で提案される摩擦リング部品は、2次元の製造処理で生産することのできる摩擦リングを含む。この点に関し、DE202013103487U1の教示を参照する。連結部品の機能は種々の方法で、例えばそれ自体で冷却部品や接続部品を形成することによって、若しくは単に車輪板部の表面と摩擦リングとの間隔を保持することによって構成することもできる。この点に関しても、DE202013103487U1の教示を全て参照する。接続部品は同時に冷却部品として構成することができるが、その逆は不可であることに留意されたい。更に、原材料としての連結部品は、その機能に関わらず、部分的又はすべて同じにすることも、別のものにすることもできることに留意されたい。
【0009】
しかし、本明細書では、種々の金属材料、例えばアルミニウムと鉄、又は種々の合金のみから作製される、連結部品及び摩擦リングを提供することが提案される。この場合、連結部品及び摩擦リングは、溶接技術と相容れない材料から選択することができ、その結果、材料選択の自由度が著しく向上する。摩擦リングの材料の選択においては、摩耗特性が良好なものであるかに注意を払うべきであるが、連結部品はブレーキパッドと摩擦接触することはなく、主には、例えば車輪板部と摩擦リングの間のスペーサとしてのみ使用される。摩擦リングと車輪板部の間に距離があるため、摩擦リングを確実に十分に冷却することのできる空気流が発生する。したがって、連結部品はよりコスト効率の良い材料、及び/又は用途に適した熱膨張係数を有する材料から選択することができる。
【0010】
好適な実施形態では、連結部品のいくつかは接続部品として形成され、これらは摩擦リングがブレーキ動作の入熱によって車輪板部に対して径方向に膨張することができ、同時に車輪板部に対する回転方向において固定されるような形で構成されるため、接続部品のみによって、車輪板部と摩擦リング部品の間の相対的なねじれが防止される。ここで、接続部品は摩擦リング部品に半径方向応力が引き起こされないような形で配置される。こうした連結部品の配置により、半径方向応力が摩擦リング内で引き起こされないように、摩擦リングは外径及び内径上に存在することができる。その結果、遮蔽、すなわちブレーキ中の熱侵入による、摩擦部品の板バネのような現象が回避される。また、この配置により摩擦部品が車輪板部へ誤って取り付けされることが回避される。
【0011】
好適な実施形態では、こうした接続部品は、互いに平行な二つの止め壁、特に平行平面の止め壁を有する。この止め壁は、摩擦リング部品を軌道輪の車輪板部に配置、すなわち摩擦リング部品を軌道輪に装着する際に、軌道輪の回転軸を中心とする半径に対して平行に位置合わせされる。ここで、平行な止め壁は、以下に説明する対応する摺動用ブロックが、止め壁に支持されるような形で配置される。好適な実施形態では、この摺動用ブロックには、止め壁に対応する停止面が設けられる。例えば、この停止面は平面で、付随する止め壁に対し平行であり、各停止面の対と付随する止め壁の対は平行平面であることが好ましい。一実施形態では、止め壁の対は摺動用ブロックを受け入れるスロットを形成する。別の実施形態では、摺動用ブロックの停止面は、接続部品を受け入れるスロットを形成する。
【0012】
この接続部品の止め壁を使用することで、軌道輪の回転方向に接続部品から対応する摺動用ブロックへと力を伝達することができ、その結果摺動用ブロックは軌道輪の車輪板部に固定的に連結されることになる。例えば(種々の)熱膨張による(回転軸を中心とする)軌道輪の半径に平行な相対移動は、依然として可能である。一実施形態では、接続部品には、例えばミリングによって対応する凹部があらかじめ設けられており、他の実施形態では、接続部品をリング部品に取り付けた後でのみ、設けられる。
【0013】
好適な実施形態では、接続部品が寿命中にねじれず、場合によって摺動用ブロックに対し傾斜することを確実にすることに加え、接続部品は、例えばピンなどの連結部品を使用して摩擦リングに対し固定される。この目的のため、例えば、接続部品及び摩擦リングには、軌道輪の回転軸と平行に穴が開けられており、そこに例えばピンなどの連結部品を挿入することができる。接続部品を確実に廻り止めするためのこの機構は、接続部品を摩擦リングに取り付ける前にあらかじめ形成することも、組立て後に、例えば穿孔によって形成することもできる。
【0014】
好適な実施形態では、すべての連結部品、又は少なくともいくつかの連結部品は、ボルトとして構成される。こうしたボルトは、シャフト及びヘッドを有し、このシャフトは、摩擦リングの対応する開口にフォースロック方式で挿入できるように構成される。特にコスト効率の良い製造法では、ボルトは、例えば旋削加工処理によって回転対称部品として製造される。ここで、ヘッドは、例えば車輪板部に対する軸方向の止め具を形成することによって、連結部品の実際の機能を生み出す。こうしたボルト状の連結部品は、ストランド材から形成することが特に好ましく、また、棒材で形成することが特に好ましい。ここで、製造コスト及び余材が最小化される。
【0015】
本明細書で更に提案される摩擦リングセットは、上述の摩擦リング部品、並びに摺動用ブロック及び接続部品を含む。この摺動用ブロックは、摩擦リング部品を、軌道輪に対する回転方向にトルク伝達するように固定するように配置され、且つ、摩擦リング部品が、軌道輪又は車輪板部と摩擦リング部品の間で半径方向に相対移動できることが好ましい。例えば、部品の熱膨張によって、こうした半径方向の相対移動が発生する。摩擦リング部品は、接続部品を用いて車輪板部にフォースロック方式で装着ことができる。軌道輪の車輪板部に摩擦リングセットを連結する場合、連結部品、すなわち、冷却のために車輪板部との間に間隔を有する少なくともこれらの冷却部品は、接続部品によって車輪板部と摩擦リングの間に挟装される。挟装された連結部品は、車輪板部と摩擦リングの間で支持された相対移動が可能になるような形で構成される。その結果、少なくともその摩擦面を有する摩擦リングは、摩擦リングの回転中に、間断なくブレーキを行うことが可能であり、好ましくは摩擦力の偏りが無視できるほど、平坦なままである。
【0016】
一実施形態では、接続部品数に対応する数の摺動用ブロックが提供され、配置の際、すなわち組立て時に、摺動用ブロックが付随する接続部品の止め壁に隙間をあけて隣接するように、互いに対応して軌道輪の車輪板部に配置される。ここで、摺動用ブロックと止め壁との間の隙間は、使用する製造工程やコストを念頭に、できるだけ小さくするべきである。しかし、同時に、特に接続部品及び/又は摺動用ブロックがブレーキ動作の結果加熱される場合には、摺動用ブロックと付随する接続部品の間の半径方向の相対移動が確保されなければならない。
【0017】
好適な実施形態では、この摺動用ブロックは単に車輪板部にしっかりと固定され、摩擦リング部品及び車輪板部を用いて、軸方向に単独で固定される。摩擦リングセットは、車輪板部の両側に一対で装着することのできる、二つの摩擦リング部品を含むことが特に好ましい。この実施形態では、摩擦リングセットの摩擦リング部品は、同一の構成であることが好ましい。更に、この実施形態の摺動用ブロックは、上述したように、車輪板部を貫通して延出し、その両端部で、各摩擦リング部品の接続部品の止め壁に係合するような形で構成されることが好ましい。半径方向及び回転方向で、摺動用ブロックは車輪板部の連結孔に固定される。
【0018】
本発明の目的は、車輪ボス、及び踏面のある車輪リム部を有する軌道輪を備えた軌道輪ブレーキによっても達成される。車輪板部は車輪ボスと車輪リム部の間に延在し、摩擦リングセットは上述の実施形態にしたがって構成され、且つ、摩擦リングセットは、接続部品を用いて車輪板部と共に軌道輪に締結される。
【0019】
車輪板部に摩擦リング部品を接続するために、接続部品が設けられ、一つの車輪板部に二つの一対式摩擦リング部品が用いられる場合には、接続部品は二つの摩擦リング部品を連動させるように設けることができる。この目的のため、接続部品は、トルクによって規定される結合力を加えられるように、ロックナットを有するドローボルトとして設計することが好ましい。これにより十分に高い結合力が加えられるのと同時に、摩擦面に負荷及び負担のある状況下で、特に半径方向の熱膨張によって、摩擦リングのうちの一つ又は二つの摩擦リングが相対移動することが、上記の記載にしたがって可能となる。このことは、品質保証又は保守点検の過程で、トルクレンチによってドローボルトに対応するマーキングを行うことによって、迅速且つ安全に確認することができる。
【0020】
本発明を改良する更なる対応策について、本発明の好適な実施形態の説明と共に、図面を参照して以下により詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】摩擦リングの斜視図である。
図2】接続部品の斜視図である。
図3】冷却部品の斜視図である。
図4】未処理(ブランク)の構成部品としての摩擦リング部品の、接続部品側の斜視図である。
図5】未処理部(ブランク部)としての摩擦リング部品の、摩擦面側の斜視図である。
図6】接続部品を確実に廻り止めするためのピンである。
図7】摩擦リングにピンで固定して配置される、接続部品の詳細部の平面図である。
図8】仕上げ加工された摩擦リング部品の断面図である。
図9】仕上げられた摩擦リング部品の接続部品側の斜視図である。
図10】停止面を備えた、摺動用ブロックの斜視図である。
図11】摩擦リングセットの、接続部品で切断した断面図である。
図12】摩擦リングセットの、接続部品で切断した断面図である。
図13】軌道輪ブレーキの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、連結部品(図2及び図3参照)の側が見える状態の摩擦リング11の斜視図であり、摩擦リング11には連結部品(ここでは図示せず)が導入される開口14が設けられている。更に、複数の取り付け穴9が設けられており、これらを利用して摩擦リング11を軌道輪の車輪板部(ここでは図示せず)に連結することができる。摩擦リング11は、回転軸Aを有する。この例では、開口14及び取り付け穴9は、回転軸Aに対し回転対称に配置される。
【0023】
一例として、図2は、接続部品13を示しており、接続部品13は、図1に示すように、径方向に並んだ3つで1組の孔の組と組との間にある最大開口14のそれぞれに押し込むことが可能である。ここで、接続部品13はボルト状に構成され、開口14に押し込むシャフト7と、接続部品13が機能するためのヘッド8とを有する。ここで示す接続部品13は、まだ未処理の構成部品として示されており、凹部(図7及び図9参照)は未だ設けられていない。したがって、この未処理の構成部品は、基本的には単なる冷却部品(図9参照)としても使用することができる。
【0024】
図3は、同様に構成された、シャフト7及びヘッド8を有する冷却部品12を示す。この場合、シャフト7は図2に係る接続部品13のシャフトより小さく構成されており、図1に示す、より小さな開口14のそれぞれに押し込まれる。
【0025】
図4は、摩擦リング11に連結部品12及び連結部品13が固定された側から見た、摩擦リング部品10の斜視図を示す。なお、連結部品12及び連結部品13は各開口14に押し込まれており、開口はここでは隠れている(図1参照)。取り付け穴9は空いたままである。接続部品13の凹部は、未だ設けられていない(図7及び図9参照)。
【0026】
図5は、ここでは摩擦リング11の摩擦面15が見える状態で、図4のものと同じ摩擦リング部品10を示す。この図から、取り付け穴9は貫通孔であり、本実施形態の開口14(図1参照)は固定穴として構成されることが明確である。
【0027】
図6では、単純なピン17が示されており、連結部品(図7参照)を確実に廻り止めするために、このピンを挿入することができる。
【0028】
図7は、摩擦リング部品10の詳細図を平面図で示したものであり、例示的な接続部品13が示されている。接続部品13の左側及び右側には、複数の冷却部品12及び二つの取り付け穴9が切断図で示されている。接続部品13は、隠れている開口14(図1参照)に押し込まれており、この例では、前述の圧入後に、接続部品13に凹部18が設けられた。また、この例では、前述の圧入後に、接続部品13を回転に対し確実に固定するために、ピン17のための穴が開けられている。凹部18の止め壁19は、半径Rと平行に位置合わせされている(図9参照)。
【0029】
図8は、上述した図1から7の手順の後に機械加工された、摩擦リング部品10の断面を示す。図5で依然として示される元の形状は、一点鎖線の境界線21で表されている。ここで示す断面は二つの冷却部品12を通じて案内されており、シャフト7及びヘッド8、並びに冷却部品12がそれぞれ押し込まれる開口14の断面を見ることができる。更に、取り付け穴9が見られ、ここには外付け六角ボルトのための座繰り穴が摩擦面側から続いている。背後には、二つの連結部品12及び13も見られ、連結部品12及び13はまた、すべての連結部品12、13が共通面に平面的に構成されるように、摩擦面15のように水平にされ、且つ/又は研磨されている。
【0030】
図9は、軌道輪に装着できるように構成された、摩擦リング部品10の斜視図を示す。ここでは、特に、凹部18及びそれに対応する型枠固定部品17を備えた接続部品13に注視するべきである。例として、止め壁19は、ここで見られる回転軸Aを中心とする半径Rに対し、平行に構成されている。ここでは更に、大きい連結部品のそれぞれを接続部品13として構成するだけでなく、冷却部品12としても構成し得ることが確認できる。摺動用ブロック(例えば図10に示されているような)を伴う接続部品13は、軌道輪に対する半径方向、すなわち半径Rに沿った相対移動が可能となる。しかし、これらは同時に回転軸Aに対する回転方向Uにも、力、又はトルクを伝達してしまう。
【0031】
図10は、ここで見られる停止面23を備えた摺動用ブロック20を示しており、停止面23は、ここでは隠れている停止面の対に平行な平面である。例えば図9で示されるように、停止面23は接続部品13の凹部18の止め壁19に対応して構成される。
【0032】
図11は、対となる実施形態に係る摩擦リング部品10を車輪板部2の左側及び右側に有する、摩擦リングセット200の断面を示す。この断面図では、摺動用ブロック20及び対応する二つの接続部品13、止め壁19のうち見える部分を示す。ここでは、摺動用ブロック20は、車輪板部2の連結孔28に挿通されている。この摺動用ブロック20は、この連結孔28を貫通して延出し、その結果、各停止面23(図10参照)が、各接続部品13の止め壁19と動力係合(force engagement)するようになる。ここで背後に見られる冷却部品12、加えて接続部品13によって、摩擦リング11と車輪板部2の間に、それぞれ通気ギャップ26が作られる。ブレーキパッド(図示せず)によって摩擦力と協働するように構成された摩擦面15は、それぞれ軸方向の外側に向けて、すなわち車輪板部2から離れる方向に向いている。
【0033】
図12は、図11で示す摩擦リングセット200を通じた同様の断面図を示し、この場合、取り付け穴9に沿った断面であり、ドローボルト22及びロックナット29から形成される例示的な接続部品16を確認することができる。更に、ここではドローボルト22の横断面は、車輪板部2の貫通孔30の横断面より実質的に小さく、そのため、ドローボルト22による半径方向の位置決め、及び好ましくは回転方向の位置決めが起こらないことが確認できる。より正確には、ドローボルト22の中心線と、それとは重なり合わない貫通30の中心線によって、ドローボルト22は貫通孔30と中心合わせされておらず、その必要もないことが示されている。この切断面では、摩擦リング11に押し込まれる更なる冷却部品12も見ることができる。更に、図11の説明を参照されたい。
【0034】
図13は、軌道輪1、及び摩擦リングセット200の二つの摩擦リング部品10を含む軌道輪ブレーキ100を示す。摩擦リング部品10は、摩擦リング11、及び複数の連結部品12、13を含む。ここでは、第1の摩擦リング部品10(フランジ側)のみが見られる。第2の摩擦リング部品10(踏面側)は、この図では車輪板部2で隠れているが、同じ接続手段16によって保持される(図12参照)。この場合、軌道輪1は、踏面5及びフランジ6を形成する車輪リム部4を有し、軌道輪1はそれを利用してレール上で回転するように構成される。軌道輪1の中心にある車輪ボス(車輪ハブ)3は、軌道輪1を車軸すなわちシャフト(図示せず)に接続するために構成される。軌道輪1の回転軸Aは、摩擦リング部品10と同心状になるように位置合わせされる。車輪ボス3は、車輪板部2を介して車輪リム部4と結合される。この車輪板部2に、接続部品16及び摺動用ブロック20(本図では隠れているため、図11参照)が挿入され、連結部品12、13が回転軸Aに対する軸方向で支持される。冷却部品12は、摩擦リング11と車輪板部2の間のスペーサ部品を形成する。接続部品13は、半径Rと平行に位置合わせされた凹部を有する。この位置合わせは、摩擦リング11と共に連結部品17によって相対変形に対して固定される。その結果、摩擦リング部品10は、干渉されることなく、熱侵入により径方向に膨張することができる。すなわち、摩擦リング部品10は、軌道輪1に対して径方向の相対移動を実行することができる。
【0035】
各図及びそれに関連する説明はまた、例示的な実施形態に加え、製造方法の各工程に関する好適な順序を示す。
【0036】
ここで示す軌道輪ブレーキ又は摩擦リング部品では、コスト効率の良い製造及び材料選択の大きな自由度が実現される。
【符号の説明】
【0037】
100 軌道輪ブレーキ
200 摩擦リングセット
1 軌道輪
2 車輪板部
3 車輪ボス
4 車輪リム部
5 踏面
6 フランジ
7 シャフト
8 ヘッド
9 摩擦リングの取り付け穴
10 摩擦リング部品
11 摩擦リング
12 連結部品、冷却部品
13 連結部品、接続部品
14 摩擦リングの開口
15 摩擦リング部品の摩擦面
16 接続部品
17 連結部品又はピン
18 接続部品の凹部
19 凹部の止め壁
20 摺動用ブロック
21 摩擦リング部品の境界線
22 ドローボルト
23 摺動用ブロックの停止面
26 通気ギャップ
28 車輪板部の連結孔
29 ロックナット
30 車輪板部の貫通孔
A 回転軸
R 半径
U 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13