(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
F16L 37/088 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
F16L37/088
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021083772
(22)【出願日】2021-05-18
【審査請求日】2021-09-14
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518073158
【氏名又は名称】テーイー オートモーティブ(フルダブリュック) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アイリス バーセル
(72)【発明者】
【氏名】カイ ブべ
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ローデ
(72)【発明者】
【氏名】ハラルド ノブロック
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ファ チュ
(72)【発明者】
【氏名】チョン-ホ リム
(72)【発明者】
【氏名】トン-ヒョク リ
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ヨン オム
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第202012102296(DE,U1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0242508(US,A1)
【文献】国際公開第2019/036233(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01770321(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/088
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの流体伝導要素を接続するための、特に2つの自動車管路を接続するためのコネクタ(1)であって、
雌差込み部(2)と、
前記雌差込み部(2)に
軸方向に差し込むことができる雄差込み部(3)と
を備え、
前記雄差込み部(3)は、少なくとも1つのリテーナ
(4)により、前記雄差込み部(3)が前記雌差込み部(2)に差し込まれた状態で前記雌差込み部(2)に固定可能であり、
前記リテーナ
(4)は、前記雌差込み部(2)に接続されており、
インジケータ要素(9)であって、前記雄差込み部(3)が前記
リテーナ(4)を介して前記雌差込み部(2)に適切に又は完全に固定された状態に到達したことを表示するインジケータ要素(9)を少なくとも1つ有し、
前記インジケータ要素(9)は前記リテーナ(4)から軸方向に離れた位置に配置されており、
前記雄差込み部(3)が前記雌差込み部(2)に挿入されると、前記インジケータ要素(9)は、傾斜(10)上を摺動し、且つ、径方向外方へ変位し、
前記傾斜(10)は、前記雄差込み部(3)の外面上に設けられており、且つ、前記雄差込み部(3)の軸方向において登りになっており、
前記インジケータ要素(9)では、径方向において、インジケータ部分(12)が前記雌差込み部(2)のインジケータ開口(11)から突出し、
前記インジケータ要素(9)が少なくとも1つの径方向外側位置にあることにより、又は、前記インジケータ部分(12)が前記雌差込み部(2)の前記インジケータ開口(11)から突出していることにより、
前記雄差込み部(3)が前記雌差込み部(2)に適切に固定された状態であることが表示され、
前記インジケータ要素(9)は、少なくとも2つの、好ましくは2つのインジケータ足部(17)を有し、
前記インジケータ要素(9)は、該インジケータ足部を用いて、登りになっている前記傾斜(10)上を摺動し、
前記2つのインジケータ足部(17)はそれぞれ、好ましくは、前記インジケータ要素(9)のインジケータ脚部(16)につながっており、
前記インジケータ脚部(17)は、インジケータ基部に弾力的に接続されており、力の作用により、前記インジケータ脚部(17)を互いに近づく方へ又は互いから離れる方へ移動可能である
コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタであって、
前記雄差込み部(3)が完全に差し込まれている又は固定されているとき、前記リテーナ(4)は、前記雄差込み部(3)の止めフランジ(5)の後側で係合し、特に、前記雄差込み部(3)の固定溝(6)に係合する
コネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のコネクタであって、
前記リテーナ(4)は、U字型に形成されており、
前記リテーナ(4)は、Uブラケット(7)と、前記Uブラケット(7)に接続される2つのU脚部(8)とを備え、
前記雄差込み部(3)が前記雌差込み部(2)に固定された状態であるとき、
前記U脚部(8)は、前記雄差込み部(3)の前記止めフランジ(5)の後側で係合し、特に、前記雄差込み部(3)の前記固定溝(6)に係合する
コネクタ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のコネクタであって、
前記傾斜(10)は、前記雄差込み部(3)上に一体に成形される
コネクタ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のコネクタであって、
前記傾斜(10)は、前記雄差込み部(3)の挿入方向とは逆向きに登りになっている
コネクタ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコネクタであって、
前記傾斜(10)は、連続的に、特に無段階で登りになっており、
前記傾斜(10)は、好ましくは、15°~45°で登りになっている
コネクタ。
【請求項7】
請求項1乃6のいずれか1項に記載のコネクタであって、
前記傾斜(10)は、前記雄差込み部(3)の周囲を少なくとも50%だけに延在しており、
前記傾斜(10)は、好ましくは、前記雄差込み部(3)の周囲全体に延在する
コネクタ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のコネクタであって、
前記傾斜(10)は、前記リテーナ(4)用の止めフランジ(5)を有するか又は該止めフランジ(5)を成している
コネクタ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のコネクタであって、
前記インジケータ要素(9)は、前記雌差込み部(2)に設けられており、且つ、前記雌差込み部(2)の壁内のインジケータ開口(11)を通っている
コネクタ。
【請求項10】
請求項9に記載のコネクタであって、
前記インジケータ要素(9)は、前記傾斜(10)上を摺動するときに、前記雌差込み部(2)の前記インジケータ開口(11)を通って径方向外方へ変位可能である
コネクタ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のコネクタであって、
前記雄差込み部(3)が前記固定された状態にあり且つ前記インジケータ要素(9)が前記径方向外側位置にあるときに、
前記リテーナ(4)の一部分が、前記インジケータ要素(9)の突出している前記インジケータ部分(12)と前記雌差込み部(2)の外面から突出しているフランジ片(15)との間に配置される
コネクタ。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のコネクタであって、
前記インジケータ要素(9)は、少なくとも2つ、好ましくは2つあり、
好適には、該インジケータ要素は、前記雌差込み部(2)に設けられており、
特に、該インジケータ要素はそれぞれ、前記雌差込み部(2)の壁内のインジケータ開口(11)を通っている
コネクタ。
【請求項13】
請求項1に記載のコネクタであって、
前記インジケータ要素(9)は、前記雌差込み部(2)の壁内のインジケータ開口(11)を通っており、
前記インジケータ開口(11)は、半径方向内側部分よりも広い半径方向外側部分を画定するように階段状となっており、
前記インジケータ要素(9)は、カムを有し、
該カムは、前記インジケータ要素(9)が少なくとも一つの半径方向外側位置に位置するときに、前記半径方向外側部分に収容され、
前記カムは前記インジケータ要素(9)が半径方向内側に戻るのを制限する
コネクタ。
【請求項14】
請求項13に記載のコネクタであって、
前記インジケータ要素(9)の前記インジケータ足部(17)は、前記傾斜(10)の傾斜角に応じて傾いている
コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの流体伝導要素を接続するための、特に2つの自動車管路を接続するためのコネクタに関する。コネクタは、雌差込み部と、雌差込み部に差し込むことができる雄差込み部とを備える。雄差込み部は、少なくとも1つの固定要素を介して雌差込み部に固定可能である。基本的に、本発明によるコネクタは、異なる設計を有してもよく、特に、いわゆるVDAコネクタ又はいわゆるSAEコネクタとすることができる。本発明によるコネクタが高速コネクタ又はクイックコネクタであることは、本発明の範囲内である。
【背景技術】
【0002】
上述の種類のコネクタは、様々な構成で実用化されていることから公知である。これらのコネクタが特に2つの自動車管路を接続するために使用される場合、雄差込み部と雌差込み部との間に接続が正確且つ機能的に信頼できることが保証されなければならない。これについては、よく問題が生じる。公知のコネクタの多くは、雄差込み部と雌差込み部とが正確且つ機能的に信頼に足る態様で接続していることを容易に確認できないという欠点を有する。様々な検知システムが既に存在しており、それらは全て、雄差込み部と雌差込み部とが正確に接続していることを明確に表示することを意図している。しかしながら、これらの公知の検知手段の多くは、比較的高価であるか又は高額な製造費を掛けるしか実現することができない。例えば、比較的高価な電気検知部品を使用することが公知である。この点に関して、改良の必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このことに鑑み、本発明は、冒頭で記載した種類のコネクタであって、雄差込み部と雌差込み部とが正しく接続されていることを明確且つ機能的に信頼できる態様で表示可能であり、検知手段を簡易且つ安価に実施可能なコネクタを特定するという技術的問題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この技術的問題を解決するために、本発明は、2つの流体伝導要素を接続するための、特に2つの自動車管路を接続するためのコネクタを教示する。本コネクタは、雌差込み部と、この雌差込み部に差し込むことができる雄差込み部とを備えており、雄差込み部は、少なくとも1つの固定要素を介して雌差込み部に固定可能である。また、インジケータ要素を少なくとも1つ有し、このインジケータ要素は、雄差込み部が固定要素を介して雌差込み部に適切に又は完全に固定された状態に到達したことを表示する。雄差込み部が雌差込み部に挿入されると、インジケータ要素が径方向外方へ変位し、インジケータ要素が少なくとも1つの径方向外側位置にあることにより、雄差込み部が雌差込み部に適切に固定された状態であることが表示される。雄差込み部が雌差込み部に挿入されるとインジケータ要素がカラーによって径方向外方へ変位することは、本発明の範囲内である。
【0005】
本発明の好適な実施形態によれば、雌差込み部又は雄差込み部又はその両方が、少なくとも1種類のプラスチックからなる又は実質的に少なくとも1種類のプラスチックからなる。雌差込み部又は雄差込み部又はその両方に適したプラスチックの候補としては、特にポリアミド、又は、ポリフェニレンスルファイド(PPS)が挙げられる。原則として、雌差込み部又は雄差込み部又はその両方の材料以外のプラスチックについても、本発明の範囲内であり、例えばポリプロピレン等のポリオレフィンや、ポリウレタンが挙げられる。雄差込み部と雌差込み部とが異なる種類のプラスチックから作成されることも可能である。
【0006】
本発明の特別に好適な実施形態は、リテーナが固定要素として雌差込み部に接続されており、このリテーナにより、雄差込み部が雌差込み部に差し込まれた状態のときに雄差込み部を雌差込み部に固定可能となることを特徴としている。この目的で、雌差込み部は、好適には、少なくとも1つの凹部、好ましくは対向する2つの凹部を有し、リテーナは、雄差込み部に作用可能となるように各凹部を貫通する。雄差込み部が完全に差し込まれた又は固定された状態のとき、リテーナは、好ましくは雄差込み部の止めフランジの後側で係合し、非常に好ましくは雄差込み部の固定溝に係合する。リテーナは、好適には、金属、特に金属線からなり、又は、実質的に金属、特に金属線からなる。リテーナが、鋼製、特に鋼線製であり、又は実質的に鋼製、特に鋼線製であることが有用なことが分かっている。一方、原則として、リテーナは、プラスチックからなってもよい。
【0007】
本発明の特別に有用な実施形態は、リテーナがU字型に形成されており、且つ、Uブラケットと、このUブラケットに接続される2つのU脚部とを備えることを特徴としている。雌差込み部が、対向する2つの凹部を有し、U脚部が雄差込み部に作用できるようこれらの凹部をリテーナのU脚部が貫通することが推奨される。好適には、雄差込み部が雌差込み部に固定された状態であるとき、U脚部は、雄差込み部の止めフランジの後側で係合し、特別に好ましくは雄差込み部の固定溝に係合する。2つのU脚部はUブラケットに弾力的な態様で接続されていることが推奨される。雄差込み部が雌差込み部に挿入されると、雄差込み部の外面に配置される(好適には周方向の)カラー又は突起により、特に止めフランジにより、リテーナの2つのU脚部が径方向外方へ押圧され、続いて、雄差込み部が雌差込み部に更に挿入されると、これらのU脚部が周方向のカラー又は突起の後側で、特に雄差込み部の止めフランジの後側で係合することは、本発明の範囲内である。その後、雄差込み部は、雌差込み部に完全に又は適切に固定される。
【0008】
雄差込み部に(好ましくは雄差込み部の周囲を完全に取り囲む)カラーが設けられ、カラーの側面が、雄差込み部の表面に対して略垂直に又は直角に延在していることは、本発明の範囲内である。雄差込み部のカラーは、好適には、雄差込み部が固定状態であるときリテーナが後方から係合するものであり、これにより、カラーは、雄差込み部の止めフランジをなすか又はこれを有するものである。
【0009】
本発明の特別に好適な実施形態においては、雄差込み部が雌差込み部に挿入されると、本発明によるインジケータ要素が、傾斜上を摺動し、径方向外方へ変位する。この傾斜が雄差込み部の外面上に設けられており、且つ、好ましくは雄差込み部上に一体に成形されることは、本発明の範囲内である。更に、傾斜が、雄差込み部の軸方向において登りになっており、好ましくは雄差込み部を雌差込み部へ挿入する方向とは逆向きに登りになっていることは、本発明の範囲内である。傾斜は、好適には、連続的に、特に無段階で登りになっている。傾斜が15°~45°で登りになっており、好ましくは20°~35°で登りになっていることが有用であると分かった。本発明の、推奨される実施形態においては、傾斜は、雄差込み部の周囲を、少なくとも50%だけに延在しており、特に少なくとも60%だけに延在しており、好ましくは少なくとも75%だけに延在しており、より好ましくは少なくとも90%だけに延在している。本発明の非常に特別に好適な実施形態は、傾斜が雄差込み部の周囲全体に延在することを特徴としている。
【0010】
原則として、本発明による傾斜は、2つの差込み部間の接続に関して他には何も機能を果たさず且つ本発明によるインジケータ要素用にのみ設けられる、部品又は好ましくは雄差込み部上に一体に成形された部品とすることができる。本発明の好適な実施形態においては、傾斜は、リテーナ用の止めフランジを有するか又はこの止めフランジを成している。この実施形態は、本発明の範囲内で有用であると分かった。本発明の特別に好適な実施形態は、傾斜が、幾つかの機能を果たすということ、つまり、雄差込み部が挿入されるとリテーナのUブラケットを径方向外方へ押圧する突起の機能を果たす一方で、雄差込み部が雌差込み部内に更に押し込まれるとリテーナのUブラケットがその後側で係合する止めフランジの機能を果たし、さらに、インジケータ要素用の傾斜の機能をも果たすことを特徴としている。この実施形態は、本発明の範囲内で特に有用であることが分かった。
【0011】
本発明によるインジケータ要素は、好適には、プラスチックからなる又は実質的にプラスチックからなる。好ましくは、インジケータ要素は、一体の要素であり、好ましくは一体のプラスチック要素である。インジケータ要素が雌差込み部に設けられており、且つ、好ましくは、雌差込み部の壁内のインジケータ開口を通っていることは、本発明の範囲内である。推奨される本発明の実施形態においては、インジケータ要素は、雄差込み部が雌差込み部に挿入される前に雌差込み部の壁内に固定され、特に、雌差込み部の壁内に掛止され、好ましくは僅かにのみ掛止される。言うまでもないことであるが、インジケータ要素は、雌差込み部の壁内で固定又は掛止されるのは、雄差込み部が挿入されると本発明におけるインジケータ要素を径方向外方へ変位できることが条件である。この点に関して、雄差込み部が雌差込み部内に押し込まれたときのインジケータ要素の固定又は掛止は、インジケータ要素が径方向に変位するために、いわば解除される。
【0012】
本発明によれば、インジケータ要素は、雄差込み部が雌差込み部に挿入されると傾斜上を摺動し、径方向外方へ変位する。インジケータ要素が、傾斜上を摺動するときに、雌差込み部のインジケータ開口を通って径方向外方へ変位することは、本発明の範囲内である。本発明によれば、インジケータ要素の径方向変位は、インジケータ要素が径方向外側位置に到達するまで行われるものであり、インジケータ要素がこの径方向外側位置にあることにより、雄差込み部が雌差込み部に適切に又は完全に固定された状態であることが表示される。インジケータ要素では、その径方向外側位置にあるとき、インジケータ部分が径方向外方へ突出することは、本発明の範囲内である。インジケータ要素では、好適には、インジケータ部分が雌差込み部のインジケータ開口から突出する。インジケータ要素がこの位置又は径方向外側位置にあることにより、雄差込み部が雌差込み部に適切に又は完全に固定された状態であることが表示される。
【0013】
雄差込み部が挿入されていないときに又は雄差込み部が雌差込み部から外された後に、径方向外側位置に位置するインジケータ要素をその開始位置に復帰させることができる又は押し戻すことができることも、本発明の範囲内である。好適には、インジケータ要素は、その後、雌差込み部の壁内のその固定状態又はロック状態に復帰させることができる又は押し戻すことができる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、雄差込み部が固定状態であり且つインジケータ要素が径方向外側位置にあるとき、リテーナの一部分(特に、リテーナのUブラケット、又は、リテーナのUブラケットの一部分)が、インジケータ要素の突出しているインジケータ部分と雌差込み部の外面から突出している少なくとも1つのフランジ片との間に配置される。このようにして、リテーナもその位置に安定させる又は固定することができる。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、インジケータ要素は、少なくとも2つ、好ましくは2つある。2つのインジケータ要素は、好適には、雌差込み部に設けられており、好ましくは、インジケータ要素のそれぞれが雌差込み部の壁内のインジケータ開口を通っている。インジケータ要素が少なくとも2つある場合、又は、インジケータ要素が2つある場合についても、インジケータ要素に関する上述の実施形態は全て部分的に組み合わせて又は組み合わせて選択的に実施可能であることは、本発明の範囲内である。
【0016】
インジケータ要素が少なくとも1つのインジケータ足部を有し、インジケータ要素がこのインジケータ足部を用いて傾斜上を又は登りになっている傾斜上を摺動することが推奨される。本発明の特別に好適な実施形態によれば、インジケータ要素は、少なくとも2つ、好ましくは2つのインジケータ足部を有し、インジケータ要素は、これらのインジケータ足部を用いて、登りになっている傾斜上を摺動する。これらのインジケータ足部又はこれらの2つのインジケータ足部は、好ましくは、インジケータ足部それぞれがインジケータ要素のインジケータ脚部につながっている。2つのインジケータ脚部は、好適には、互いに平行に又は略平行に配置される。以下のことが推奨される。インジケータ脚部は、インジケータ要素のインジケータ基部につながっており、インジケータ基部は、好ましくは、インジケータ部分を有しているか又はインジケータ部分となっており、インジケータ要素が径方向外側位置にあることで、雄差込み部が完全に又は適切に接続された状態であることがこのインジケータ部分により表示される。
【0017】
インジケータ脚部がインジケータ基部に弾力的に接続され、力の作用により、インジケータ脚部を互いに近づく方へ又は互いから離れる方へ移動可能であることが推奨される。好適には、少なくとも1つのインジケータ脚部に、好ましくは両方のインジケータ脚部に、掛止要素が1つずつ接続される。雄差込み部がまだ押し込まれていないときは、インジケータ要素を、この掛止要素又はこれらの掛止要素を介して雌差込み部の壁内に保持又は掛止することができる。雄差込み部が押し込まれたときに、掛止を解除可能であり、インジケータ要素は径方向外方へ変位可能である。この掛止の解除は、特に、インジケータ脚部に弾力的な設計を与えることで実現することが好ましい。
【0018】
好適な実施形態においては、インジケータ要素は少なくとも1つのインジケータ足部を有し、インジケータ要素はこのインジケータ足部を用いて傾斜上を摺動可能であることが示されている。本発明の一実施形態においては、インジケータ要素のインジケータ足部は、傾斜の傾斜角に応じて傾いているように設計されている。
【0019】
本発明は、雄差込み部が雌差込み部に適切に又は完全に固定された状態であることを、本発明によるコネクタを用いて、明確且つ機能的に信頼できる態様で表示可能であるという知見に基づいている。本発明によるインジケータ要素はこのために供されるものであり、更に、推奨される本発明の実施形態においては、インジケータ要素は、コネクタの他の部品の色、特に雌差込み部の色とは相違する特別な色を有することができる。雄差込み部が適切に又は完全に固定された状態であることの表示が、妨害又は制約無しに可能である。本発明による表示手段又は検知手段は、非常に簡易且つ安価に実施できることも強調されるべきである。とりわけ、以前から公知のコネクタの構成や設計を著しく変更する必要がない。従って、本発明による手段は、製造の手間や製造費用の低減につながる。本発明による表示手段を実施するための材料費も比較的低い。本発明による手段の実施は、とりわけ、このようなコネクタに関連する規格に従っている。本発明によるインジケータ要素は、バーコード類のための情報媒体としても使用できることにも言及されるべきである。
【0020】
以下では、ただ1つの例示的実施形態を示す図面を参照して、本発明を、より詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の機能的位置にある場合の、本発明によるコネクタの縦断面を示す。
【
図2】第2の機能的位置にある場合の、
図1の物体を示す。
【
図3】第1の機能的位置にある場合の、インジケータ要素の領域における
図1のコネクタの横断面を示す。
【
図4】第2の機能的位置にある場合の、
図3の物体を示す。
【
図5】リテーナが収容された、コネクタの雌差込み部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図は、2つの流体伝導要素を接続するためのコネクタ1であって、特に、2つの自動車管路(例示的実施形態では更なる詳細は記載せず)を接続するためのコネクタ1を示す。コネクタ1は、雌差込み部2と、この雌差込み部2に差し込むことができる雄差込み部3とを有する。好適な実施形態によれば、図示するコネクタは、いわゆるVDAコネクタである。雄差込み部3は、雌差込み部2に完全に挿入されると、固定要素を介して雌差込み部2に固定される。固定要素は、好ましくは且つ例示的実施形態においては、U字型リテーナ4である。好適には、U字型リテーナは、雌差込み部2と接続しており、雌差込み部2の対向する2つの細孔形凹部21を通過する(
図5)。好ましくは且つ例示的実施形態においては、リテーナ4は、雄差込み部3が完全に又は適切に挿入されると雄差込み部3の止めフランジ5の後側で係合する。好ましくは且つ例示的実施形態においては、リテーナ4は、雄差込み部3の固定溝6に係合する(
図2)。推奨する態様として且つ図における例示的実施形態に示すように、U字型リテーナ4は、Uブラケット7と、Uブラケット7に接続される2つのU脚部8とを有する。U脚部8はそれぞれ、雌差込み部2の対向する2つの細孔形凹部21のうちの1つを通って延びることが好ましい(
図5)。好適には且つ例示的実施形態においては、2つのU脚部8は、雄差込み部3が完全に固定されると、雄差込み部3の止めフランジ5の後側で係合して、雄差込み部3の固定溝6に係合する。
【0023】
本発明によれば、雄差込み部3が雌差込み部2に適切に又は完全に固定された状態に到達したことを表示するインジケータ要素9が設けられている。この適切に又は完全に固定された状態は、固定要素又はリテーナ4を介して実現する。雄差込み部3が雌差込み部2に挿入されると、インジケータ要素9は傾斜10上を摺動する。ここで、インジケータ要素は径方向外方へ変位し、インジケータ要素9が最終的に径方向外側位置にあることにより、雄差込み部3が雌差込み部2に適切に固定された状態であることが表示される(
図2及び
図4)。
【0024】
好ましくは且つ図における例示的実施形態においては、傾斜10は、雄差込み部3の外面上に設けられるものであり、この傾斜10は、雄差込み部3上に一体に成形されることが推奨される。好ましくは且つ例示的実施形態においては、傾斜10が、雌差込み部2の軸方向において又は雄差込み部3の軸方向において登りになっており、特に好ましくは且つ例示的実施形態においては、雄差込み部3の挿入方向とは逆向きに登りになっている。傾斜10が連続的に及び無段階に登りになっており、好ましくは15°~45°で登りになっていることは、本発明の範囲内である。例示的実施形態において、傾斜10は約25°で登りになっている。好適には且つ例示的実施形態においては、傾斜10は雄差込み部3の周囲全体に延在する。
【0025】
図は、本発明の特別に好適な実施形態を示しており、傾斜10がリテーナ4用の止めフランジ5を成しているか又は止めフランジ5を有する。雄差込み部3が雌差込み部2内に完全に又は適切に差し込まれると、リテーナ4のU脚部8は、好ましくは且つ例示的実施形態においては、傾斜10の止めフランジ5の後側で係合する。この傾斜は、インジケータ要素9の径方向変位をも担う。
【0026】
インジケータ要素9は、雌差込み部2に設けられており、好ましくは且つ例示的実施形態においては、雌差込み部2の壁内のインジケータ開口11を通って延在していることは、本発明の範囲内である。好適には且つ例示的実施形態においては、インジケータ要素9は、傾斜10上を摺動するときに、雌差込み部2のインジケータ開口11を通って径方向外方へ変位する。有用な実施形態によれば且つ例示的実施形態においては、インジケータ要素9では、その径方向外側位置にあるとき、インジケータ部分12が外方へ突出する(
図2及び
図4参照)。例示的実施形態では、インジケータ要素9では、インジケータ部分12がインジケータ開口11から突出する。
【0027】
雄差込み部3は、好ましくは且つ例示的実施形態においては、以下のように雌差込み部2に接続される。雄差込み部3が雌差込み部2内に押し込まれると、リテーナ4の2つのU脚部8(
図5)は、まず、雄差込み部3の傾斜10により外方へ押圧される。同時に、インジケータ要素9が、傾斜10上を摺動し、径方向外方へ変位する。最終的に、U脚部8は、傾斜10の止めフランジ5の後側で係合し、好ましくは固定溝6に係合する。このように雄差込み部3が雌差込み部2に適切に又は完全に固定された状態のとき、インジケータ要素9はその径方向外側位置にあり、インジケータ要素9は、好適には、そのインジケータ部分12が雌差込み部2のインジケータ開口11を通って突出する(
図2及び
図4)。
【0028】
好ましくは且つ例示的実施形態においては(特に
図3及び
図4参照)、インジケータ要素9の径方向変位中、インジケータ部分12は2つの案内突片13、14により案内される。この案内突片13、14は、雌差込み部2の周方向においてインジケータ部分12に隣接して配置されている。インジケータ部分12は、好適には、2つの案内突片13、14間において形状嵌合式(formschlussig)の態様で収容される。好ましくは且つ例示的実施形態においては、インジケータ要素9が径方向外側位置にあるとき、インジケータ要素9の表面又はインジケータ部分12の表面は、案内突片13、14(
図4)の表面と同一平面に続いている。
【0029】
推奨される本発明の実施形態によれば且つこの実施形態においては、雄差込み部3が固定状態のとき又はインジケータ要素9が径方向外側位置にあるとき、U字型リテーナ4のUブラケット7の一部分が、インジケータ要素9の突出しているインジケータ部分12と雌差込み部の表面から突出しているフランジ片15との間に配置される。フランジ片15が雌差込み部2に一体に成形されることは、本発明の範囲内である。更に、案内突片13、14が雌差込み部2に一体に成形されることは、本発明の範囲内である。
【0030】
本発明の好適な実施形態は、インジケータ要素9が2つあり、これらのインジケータ要素9が、好適には、雌差込み部2の周方向において互いに隣接して配置されていることを特徴としている。2つのインジケータ要素9はそれぞれ、好ましくは、雌差込み部2の壁内のインジケータ開口11を通っている。
【0031】
好ましくは且つ例示的実施形態においては、インジケータ要素9は、インジケータ脚部16を2つ有し、これらのインジケータ脚部16は、好ましくは互いに平行である。インジケータ脚部16それぞれの下端にインジケータ足部17がつながっている。2つのインジケータ脚部16はその上部にて、インジケータ要素9のインジケータ部分12につながっている。好ましくは且つ例示的実施形態においては、インジケータ要素9の各インジケータ脚部16に掛止カム18が設けられており、雄差込み部3がまだ固定されていないとき、インジケータ脚部16はそれぞれこの掛止カムを介して雌差込み部2の壁内で(僅かに)掛止されている。雄差込み部3が雌差込み部2に挿入されて傾斜10がインジケータ要素9に作用すると、雌差込み部2におけるインジケータ要素の掛止が解除され、本発明によれば径方向外方へ変位する。インジケータ要素9のインジケータ足部17が傾斜10の傾斜角に応じて傾いているということも、本発明の範囲内である。
【0032】
図から以下のことも理解することができる。好適な実施形態においては、雌差込み部2内に従来の態様で封止リング19を配置し、この封止リングが、例示的実施形態においては雌差込み部2内でスペーサリング20により保持されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0033】
1 コネクタ、2 雌差込み部、3 雄差込み部、4 リテーナ
5 フランジ、6 固定溝、7 Uブラケット、8 U脚部、9 インジケータ要素、10 傾斜
11 インジケータ開口、12 インジケータ部分、13,14 案内突片、15 フランジ片
16 インジケータ脚部、17 インジケータ足部、18 掛止カム、19 封止リング、20 スペーサリング、21 凹部