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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】微生物脱臭装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/38 20060101AFI20230703BHJP
   B01D 53/85 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
B01D53/38 110
B01D53/85 ZAB
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019045125
(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公開番号】P2020146616
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】599039212
【氏名又は名称】株式会社ミライエ
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】島田 義久
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-013885(JP,A)
【文献】実開平06-081617(JP,U)
【文献】特許第6445665(JP,B1)
【文献】特開2001-334124(JP,A)
【文献】特開2014-4522(JP,A)
【文献】特開平11-309334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/85、
53/92、53/96、
53/02-53/12
A61L 9/00- 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物保持担体としての発泡材を収容する中空の脱臭槽を備え、該脱臭槽に空気を送り込んで、該空気の含有する臭い成分を前記脱臭槽に収容された前記発泡材に生息する微生物によって分解脱臭する微生物脱臭装置であって、
前記脱臭槽は、前記空気が一方側から他方側に通過する空気流路を形成し、
前記空気流路において、
前記発泡材が充填された脱臭部と、
前記脱臭部の上側、下側又は中間に隣接して該脱臭部の上面、下面又は中間の全面を塞ぐように設けられ、前記発泡材が充填された状態の前記脱臭部よりも通気抵抗が高く、所定の厚さを有する繊維状の通気抵抗層として形成されて前記空気流路を流れる前記空気の通気抵抗を高める通気抵抗部と、
前記脱臭部、及び/又は、前記通気抵抗部に隣接又は近接して設けられた、前記脱臭槽に送り込まれた前記空気を一時的に貯留する部屋としてのチャンバー部とを備え、
前記空気流路を流れる前記空気の流通が、前記通気抵抗部によって通気抵抗が高められた結果、前記空気は前記チャンバー部において前記脱臭部の略全面に広がった状態で前記脱臭部に送り込まれるように構成されたことを特徴とする微生物脱臭装置。
【請求項2】
前記通気抵抗部は、前記通気抵抗層に加え、前記脱臭槽の内周部の壁面から内方に向けて突設された通気抵抗突部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の微生物脱臭装置。
【請求項3】
前記チャンバー部は、前記脱臭槽における前記脱臭部の下方に設けられ、
前記空気流路は前記脱臭槽の下方から上方に前記空気を流す状態に構成され、
前記チャンバー部には、該チャンバー部に前記空気を導入する導入部が設けられると共に、該導入部から流入した前記空気を水平方向に拡散させるための空気流路としての拡散路が形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の微生物脱臭装置。
【請求項4】
前記拡散路は、複数のU字溝によって形成されたことを特徴とする請求項に記載の微生物脱臭装置。
【請求項5】
前記チャンバー部の上側には、前記発泡材の前記チャンバー部への落下を防ぐための略メッシュ状の落下防止部材が設けられたことを特徴とする請求項3又は4に記載の微生物脱臭装置。
【請求項6】
前記発泡材に散水するための水を導通させる散水用配管を備えると共に、
前記脱臭槽の下方には、散水された前記水を貯留する貯水槽が設けられ、
前記散水用配管は、前記脱臭槽に沿って配設されると共に、前記貯水槽に貯留した水を循環して散水できるように配設されたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の微生物脱臭装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物保持担体によって空気の臭い成分を脱臭するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高濃度の悪臭が発生する堆肥化処理施設、排水処理施設など、悪臭の発生を伴う種々の施設においては、発生した悪臭をそのまま大気中に放出してしまうと近隣住民などから苦情が発生してしまうので、地域との調和を図るには、臭気対策が必要不可欠となっている。従来、悪臭を除去するための装置としては、脱臭槽内に微生物保持担体を収容し、この微生物保持担体を収容した脱臭槽に悪臭を含む空気を送り込んで、微生物保持担体に生息する微生物によって臭い成分を分解脱臭する脱臭装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
また、従来、この微生物保持担体を、軽量気泡コンクリートに代表される多孔質のポーラスによって構成した脱臭装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-176239号公報
【文献】特開2005-7369号公報
【文献】特開2011-56339号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、軽量気泡コンクリートは非常に高額であるため、特許文献3に記載の発明は、装置の価格が高くなってしまい、広く普及することが難しいという問題がある。
【0006】
一方、たとえば発泡材など、価格の安い材料を多孔質のポーラスとして形成し、このポーラスを微生物保持担体として用い、この微生物保持担体を脱臭槽に収容した脱臭装置を構築することで、従来の問題を解決することも考えられる。ここで、大型のプラントなど、大量の悪臭が発生する施設に対応する場合、大型の脱臭槽を備えた大型の脱臭装置を構築する必要がある。しかし、脱臭槽が大型化すると、脱臭槽に送り込んだ空気が脱臭槽の一部ばかりを通過してしまうような事態が起きやすくなる。そのため、特許文献1乃至3に記載の発明は、大型の脱臭槽を備えた大型の装置において、空気が通過しない部分の微生物保持担体における微生物の分解脱臭が十分に発揮されず、脱臭効果が十分に発揮されなくなるという問題が生ずる。一方で、脱臭槽内部の空気を強制的に撹拌する撹拌装置等で脱臭槽全体に空気を行き渡らせるような構成の脱臭装置においては、大型のファンやファンを回転させる大型の電動機等を備えた撹拌装置が必要となるため、脱臭装置全体のコストが高騰してしまうという問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、大型の脱臭槽を備えた大規模な装置であっても、製造コストの高騰を抑止しつつ、分解脱臭機能を十分に発揮させることができる微生物脱臭装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、微生物保持担体としての発泡材を収容する中空の脱臭槽を備え、該脱臭槽に空気を送り込んで、該空気の含有する臭い成分を前記脱臭槽に収容された前記発泡材に生息する微生物によって分解脱臭する微生物脱臭装置であって、前記脱臭槽は、前記空気が一方側から他方側に通過する空気流路を形成し、前記空気流路において、前記発泡材が充填された脱臭部と、前記脱臭部の上側、下側又は中間に隣接して該脱臭部の上面、下面又は中間の全面を塞ぐように設けられ、前記発泡材が充填された状態の前記脱臭部よりも通気抵抗が高く、所定の厚さを有する繊維状の通気抵抗層として形成されて前記空気流路を流れる前記空気の通気抵抗を高める通気抵抗部と、前記脱臭部、及び/又は、前記通気抵抗部に隣接又は近接して設けられた、前記脱臭槽に送り込まれた前記空気を一時的に貯留する部屋としてのチャンバー部とを備え、前記空気流路を流れる前記空気の流通が、前記通気抵抗部によって通気抵抗が高められた結果、前記空気は前記チャンバー部において前記脱臭部の略全面に広がった状態で前記脱臭部に送り込まれるように構成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の構成に加え、前記通気抵抗部は、前記通気抵抗層に加え、前記脱臭槽の内周部の壁面から内方に向けて突設された通気抵抗突部を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記チャンバー部は、前記脱臭槽における前記脱臭部の下方に設けられ、前記空気流路は前記脱臭槽の下方から上方に前記空気を流す状態に構成され、前記チャンバー部には、該チャンバー部に前記空気を導入する導入部が設けられると共に、該導入部から流入した前記空気を水平方向に拡散させるための空気流路としての拡散路が形成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の構成に加え、前記拡散路は、複数のU字溝によって形成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項又はに記載の構成に加え、前記チャンバー部の上側には、前記発泡材の前記チャンバー部への落下を防ぐための略メッシュ状の落下防止部材が設けられたことを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1乃至の何れか一つに記載の構成に加え、前記発泡材に散水するための水を導通させる散水用配管を備えると共に、前記脱臭槽の下方には、散水された前記水を貯留する貯水槽が設けられ、前記散水用配管は、前記脱臭槽に沿って配設されると共に、前記貯水槽に貯留した水を循環して散水できるように配設されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、脱臭部の上側、下側又は中間に隣接して該脱臭部の上面、下面又は中間の全面を塞ぐように設けられ、発泡材が充填された状態の脱臭部よりも通気抵抗が高く、所定の厚さを有する繊維状の通気抵抗層として形成されて空気流路を流れる空気の通気抵抗を高める通気抵抗部と、脱臭部、及び/又は、通気抵抗部に隣接又は近接して設けられた、脱臭槽に送り込まれた空気を一時的に貯留する部屋としてのチャンバー部とを備え、空気流路を流れる空気の流通が、通気抵抗部によって通気抵抗が高められた結果、空気はチャンバー部において脱臭部の略全面に対応して広がった状態で脱臭部に送り込まれるように構成されたことにより、脱臭槽に送り込まれた空気がチャンバー部の略全体に拡散した状態で脱臭部に送り込まれることとなり、脱臭部全域の微生物保持担体に臭気を伴う空気が接触しやすくなる。そのため、空気撹拌装置等による脱臭槽内の空気の強制的な撹拌を行わなくても、脱臭部全域において微生物による臭気の分解脱臭が行われ、効率の高い脱臭を行うことができる。これにより、大型の脱臭槽を備えた大規模な装置であっても、製造コストの高騰を抑止しつつ、分解脱臭機能を十分に発揮させることができる。
【0016】
また、請求項に記載の発明によれば、通気抵抗部は、脱臭部の上側、下側又は中間に隣接して該脱臭部の上面、下面又は中間の全面を塞ぐように設けられ、発泡材が充填された状態の脱臭部よりも通気抵抗が高く、所定の厚さを有する繊維状の通気抵抗層として形成されたことにより、空気流路全域にわたって容易な空気の流通が妨げられた結果、脱臭槽に送り込まれた臭気を伴う空気は脱臭部全域に行き渡りやすくなり、また、脱臭槽を流れる空気の流速が抑制されて、脱臭部全域の微生物保持担体に、臭気を伴う空気を長時間接触させることができる。そのため、大型の脱臭槽を備えた大規模な装置であっても、脱臭部全域において微生物による臭気の分解脱臭を効率よく行わせ、一層高い分解脱臭機能を発揮させることができる。
【0017】
請求項に記載の発明によれば、通気抵抗部は、通気抵抗層に加え、脱臭槽の内周部の壁面から内方に向けて突設された遮蔽突部を備えたことにより、空気の流通しやすい脱臭槽内部の壁面部近傍の空気の流通を抑止する機能を一層高め、その結果、脱臭槽に送り込まれた臭気を伴う空気は脱臭槽内部に滞留して脱臭槽全域に一層行き渡りやすくなる。これにより、大型の脱臭槽を備えた大規模な装置であっても、製造コストの高騰を抑止しつつ、一層高い分解脱臭機能を発揮させることができる。
【0018】
請求項に記載の発明によれば、チャンバー部は、脱臭槽における脱臭部の下方に設けられ、空気流路は脱臭槽の下方から上方に空気を流す状態に構成され、チャンバー部には、チャンバー部に空気を導入する導入部が設けられると共に、導入部から流入した空気を水平方向に拡散させるための空気流路としての拡散路が形成されたことにより、導入部から送り込まれた空気を、チャンバー部において水平方向に拡散させて脱臭部に送り込むことができる。これにより、臭気を伴う空気は脱臭槽全域に一層行き渡りやすくなる。これにより、大型の脱臭槽1を備えた大規模な装置であっても、製造コストの高騰を抑止しつつ、一層高い分解脱臭機能を発揮させることができる。
【0019】
請求項に記載の発明によれば、拡散路は、複数のU字溝によって形成されたことにより、拡散路を低コストに構築し、かつ、導入部から送り込まれた空気を、チャンバー部において水平方向に拡散させる構造を容易に構築することができる。
【0020】
請求項に記載の発明によれば、チャンバー部の上側には、発泡材の前記チャンバー部への落下を防ぐための略メッシュ状の落下防止部材が設けられたことにより、発泡材がチャンバー部に落下してチャンバー部内の空気流路を塞いでしまい、臭気を伴う空気が脱臭槽に行き渡らなくなる事態を簡易な構造で確実に抑止できる。
【0021】
請求項に記載の発明によれば、散水された水を貯留する貯水槽を脱臭槽の下方に設け、脱臭部に散水する水を循環させながら使用することができる。また、散水用配管は脱臭槽に沿って配設されることにより、散水させる水を導通させる散水用配管は脱臭槽内の微生物の発する熱でおのずと暖められることになる。そのため、微生物脱臭装置を寒冷地で使用する場合においても、散水用配管を導通する水の凍結を簡易かつ確実に抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この実施の形態1に係る微生物脱臭装置、及び微生物脱臭装置を用いる施設の全体構成を模式的に示す図である。
図2】同上微生物脱臭装置の構造を模式的に示す断面図である。
図3】同上微生物脱臭装置(収容部に収容したもの)を、チャンバー部の位置で切断した状態を模式的に示す断面図である。
図4】同上微生物脱臭装置(収容部に収容したもの)を、パレット及び落下防止部材の位置で切断した状態を模式的に示す断面図である。
図5】この実施の形態2に係る微生物脱臭装置に用いる流通用筐体部を模式的に示す図である。
図6】この実施の形態3に係る微生物脱臭装置の構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[発明の実施の形態1]
以下、この発明の実施の形態1について図1乃至図4を参照して説明する。
【0024】
[微生物脱臭装置の設置態様]
図1に示すとおり、この実施の形態1の微生物脱臭装置1Aは、各種施設100に排気管200によって接続された状態で設置されている。
【0025】
各種施設100は、悪臭を含む空気を発生する、装置、施設、設備などである。具体的には、たとえば、各種施設100は、高濃度の悪臭が発生する堆肥化処理施設、排水処理施設などであるが、悪臭を含む空気を発生するものであれば、これら以外のどのようなものであってもよい。各種施設100は、悪臭を伴う空気を大量に排出する大型の施設や装置であることが想定されるが、これに限定されず、小型の施設や装置であってもよい。
【0026】
排気管200は、耐圧性、耐腐食性を有する材質、たとえば金属や塩化ビニール等の材質で形成され、内部に空気を通過させることができるパイプ、チューブ、ホース等である。排気管200の途中には、各種施設100側から微生物脱臭装置1A側に空気を強制的に送気する送風機300と、排気管200を開閉するバルブ400が設けられている。
【0027】
[微生物脱臭装置の構成]
図1乃至図4に示す、微生物脱臭装置1Aは、大型の装置、たとえば縦・横10メートル、高さ3メートル程度の大きさの略直方体の装置として形成される。ただし、内部に「微生物保持担体」としての発泡材17(後述)を保持して空気を脱臭できるものであれば、微生物脱臭装置1Aの大きさや形状はどのようなものでもよい。
【0028】
図3及び図4に示すとおり、この微生物脱臭装置1Aは、箱形の収容部500に収容されて使用されることが考えられる。この収容部500には、微生物脱臭装置1Aを駆動させるための電動機や電気ケーブルや各種配線や各種配管等が収容される。
【0029】
図1に示す、この実施の形態1の微生物脱臭装置1Aは、略直方体の脱臭槽1を備える。脱臭槽1は、内部に発泡材17(後述)等を保持できて、耐圧性と耐腐食性の高い材質、たとえば金属、硬質の樹脂、鉄筋コンクリート等によって形成される。
【0030】
図1に示すとおり、脱臭槽1は、下方から順に、貯水槽2、チャンバー部3、「通気抵抗部」としての通気抵抗層4、脱臭部5が設けられている。
【0031】
貯水槽2は、周囲が密閉された容器状に形成されている。貯水槽2の内部には、発泡材17(後述)に散水するための水が貯留される。貯水槽2には、一部に配管挿通孔6が開口形成され、配管挿通孔6には貯水槽2に貯留された水を導通させるための散水用配管7が挿通されている(散水用配管7の詳細は後述する。)。
【0032】
貯水槽2の内部には、マイクロバブル発生装置8が設けられている。このマイクロバブル発生装置8は、貯水槽2の内部の水に微細な気泡を発生させる機能を奏する。
【0033】
チャンバー部3は、隔壁9を介して貯水槽2の上側に、内部が中空の部屋として形成されており、脱臭槽1に送り込まれた空気を一時的に貯留する機能を奏する。
【0034】
図3に示す通り、チャンバー部3の一部には、チャンバー部3に空気を導入する「導入部」としての挿通孔10が貫通形成され、この挿通孔10には、チャンバー部3に臭気を含んだ空気を流入させるための排気管200が挿通されている。
また、図3に示す通り、チャンバー部3の内部には、コンクリートや硬質の樹脂等、剛性と耐腐食性の高い材質によって形成されたU字溝11が複数配設されて、流通路12を形成している。流通路12は、排気管200に近い箇所では、排気管200からチャンバー部3に流入した空気を水平方向(図3の平面方向)に拡散する拡散路13を構成している。
【0035】
具体的には、たとえば、図3に示すように、拡散路13において、第1行U字溝11a,11aの開口部11e,11eと第2行U字溝11b,11bの開口部11e,11eとが水平方向にずれた状態で(図3において上下方向にずれた状態で)配設されている。同様に、第2行U字溝11b,11bの開口部11e,11eと第3行U字溝11c,11cの開口部11e,11eと、及び、第3行U字溝11c,11cの開口部11e,11eと第4行U字溝11d,11dの開口部11e,11eとも、水平方向にずれた状態で配設されている。これにより、拡散路13を導通する空気は、図3の矢印で示すように流れることで、水平方向に拡散しながらチャンバー部3の内部を流れる。ただし、拡散路13におけるU字溝11の配置は図3の示すもの以外でもよい。また、拡散路13は、U字溝11以外の材質で構成してもよい。
【0036】
図2に示す通り、チャンバー部3の上側には、隔壁3aが設けられている。この隔壁3aには、通気孔部3bが開口形成されている。隔壁3aの上方には、脱臭槽1の内壁から内方に向けて設置突部14が突設され、図4に示す通り、設置突部14の上側にはパレット15が配置されている。このパレット15は、剛性と耐腐食性の高い材質、たとえば硬質の樹脂等で形成された、空気を流通させる升目状の間隙部15aが複数設けられている。
【0037】
図4に示す通り、パレット15の上側には、落下防止部材16が敷設されている。この落下防止部材16は、柔軟性があり耐腐食性の高い材質、たとえば軟質の樹脂等によって略メッシュ状に形成されている。落下防止部材16の網目の大きさは、空気を流通させつつ、大半の発泡材17がチャンバー部3に落下しないように保持できる程度、たとえば直径2ミリメートル程度の大きさに形成される。ただし、落下防止部材16の網目は、大半の発泡材17がチャンバー部3に落下しない程度の大きさであればどのような大きさであってもよい。なお、図4は、図示の簡略化のため、パレット15の一部のみの上側に落下防止部材16が配設された状態を示しているが、実際には落下防止部材16はパレット15の上側全域を覆う。
【0038】
パレット15及び落下防止部材16が配設されることにより、排気管200からチャンバー部3に流入した空気を上方の通気抵抗層4や脱臭部5に流しつつ、発泡材17がチャンバー部3に落下することを防止することができる。
【0039】
パレット15及び落下防止部材16の上方には、通気抵抗層4が配設されている。この通気抵抗層4は、発泡材17が配設された状態の脱臭部5よりも通気抵抗の高い材質、たとえば岩綿4aが、水平方向略全域にわたって所定の厚さ(たとえば数センチメートルから数十センチメートル程度の厚さ)の、チャンバー部3側から見て脱臭部5の略全面を塞ぐ層として形成されている。
【0040】
なお、通気抵抗層4は、通気抵抗の高い材質や物質(たとえば不織布や不織布状の物質など)であれば、岩綿4a以外のどのような材質や物質で形成されていてもよい。また、この実施の形態1では、通気抵抗層4は水平方向略全域に配設したが、通気抵抗が高く、脱臭部5に流入する空気の流速を低下させることのできれば、どのような位置やどのような形状に配設されていてもよい。たとえば、通気抵抗層4は水平方向の一部、たとえば平面視略中央部のみや平面視周縁部のみや平面視で排気管200が配設された側のみに配設されていてもよいし、脱臭部5の上側に通気抵抗層4が設けられていてもよい。
【0041】
図1及び図2に示す通り、この実施の形態1では、通気抵抗層4には、岩綿4aと、脱臭部5を構成する発泡材17とが混在する状態に構成されている。これは、岩綿4aのみで形成した通気抵抗層4が経年変化して通気抵抗が大きくなり過ぎることを抑止するためである。しかし、通気抵抗層4には、発泡材17が混在しない態様に構成されていてもよい。
【0042】
図1及び図2に示す通り、通気抵抗層4の上方には、通気抵抗層4に接して、脱臭部5が設けられている。脱臭部5には、発泡材17が多数充填されて、所定の厚さ(たとえば1メートル~3メートル程度の厚さ。ただしこれより厚くても薄くてもよい。)の層状に形成されている。なお、図1及び図2は、記載の簡略化のため、脱臭部5の一部のみに発泡材17を示しているが、実際は、発泡材17は脱臭部5の略全域に充填される。
【0043】
脱臭部5を構成する個々の発泡材17は、たとえば直径5ミリメートル~数十ミリメートル程度の大きさの多孔質のポーラスである。発泡材17の個々の孔部(図示せず)の口径は約数マイクロメートル~約数十マイクロメートル程度である。発泡材17の個々の孔部(図示せず)には、脱臭効果のある微生物(悪臭の元となる化学物質(たとえばアンモニアや硫化水素など)を生分解する微生物(たとえば、アンモニアを分解する硝化菌や亜硝化菌、硫化水素を分解する硫黄細菌など)が多数生息できるようになっている。
【0044】
なお、この実施の形態の発泡材17は、たとえば、ガラス瓶を主原料としたリサイクルガラスを焼成して発泡させ、1グラムあたりの表面積が約80平方メートル程度、に形成されている。これにより、低コストで、少ない容積に大量の微生物を生息させて高い脱臭効果を得られる発泡材17を形成できる。また、発泡材17は、通気抵抗の少ない構成となっている。これにより、送風機300の送気抵抗が過大になるのを抑止し、送風機300を駆動させる電気代を削減できる効果を奏する。
【0045】
この実施の形態の発泡材17は、上述のとおり、リサイクルガラスの焼成により形成する。発泡材17をこのように構成することで、発泡材をコンクリートで形成した場合(上記[特許文献3]参照)のように、アンモニアや硫化水素などのガスに対する腐食性によって経年劣化が生ずる可能性を抑止したり、発泡材を木チップのような有機物で形成した場合のように、微生物分解による経年劣化が生ずる可能性を抑止することができる。
【0046】
なお、発泡材17は、価格が安く、表面積の大きい材料で形成されることが望ましいが、発泡材17としての機能を果たす部材であれば、どのような部材(たとえば、木材やセラミック等)で形成されていてもよい。
【0047】
脱臭部5に位置して、脱臭槽1の内壁には、「通気抵抗部」としての通気抵抗突部18が突設されている。この通気抵抗突部18は、脱臭槽1の内部において、空気の流量が多くなりがちな、脱臭槽1の内壁の略全域に設けられている。ただし、通気抵抗突部18は、脱臭槽1を下方から上方に向かって流れる空気の流速を低下させるものであれば、どのような位置にどのような態様で設けられていてもよい。たとえば、通気抵抗突部18が、平面視において、排気管200の設けられた位置近傍のみに設けられていてもよい。
【0048】
脱臭槽1の脱臭部5の上方には、開口部19が開口形成されている。そして、脱臭槽1の内部は、空気が「一方側」としての下側(チャンバー部3)から「他方側」としての上側(開口部19)に通過する空気流路20を形成している。すなわち、脱臭槽1の内部の空気流路20においては、図1に矢印で示すように、空気が下側から上側に通過する。ただし、空気流路20の「一方側」と「他方側」はどのような位置であってもよい。たとえば、「一方側」が脱臭槽1の上方で、「他方側」が脱臭槽1の下方であってもよいし、「一方側」が脱臭槽1の一側面で、「他方側」が脱臭槽1の他側面であってもよい。
【0049】
また、この実施の形態1の脱臭槽1には、散水用配管7が設けられている。散水用配管7は、脱臭槽1の壁面、特に、脱臭槽1の脱臭部5に沿って配設されている。
【0050】
この散水用配管7は、一端側が貯水槽2に配設され、他端側が脱臭槽1の上方に配設されている。また、図1及び図2に示すとおり、散水用配管7の一部には、ポンプ21が設けられている。このポンプ21は、電動機(図示せず)によって駆動し、貯水槽2の内部に貯留された水を散水用配管7に吸引し、散水用配管7の下方から上方に流動させる機能を奏する。そして、散水用配管7の他端側には散水部22が設けられている。この散水部22は噴霧器として形成され、脱臭部5の上側から散水用配管7を導通した水を霧状にして脱臭部5に滴下させる。ただし、散水部22は脱臭部5に水を滴下させ得る構成ならばどのような態様でもよく、たとえば、散水部22を散水用配管7に開口された一又は複数の小さい穴部として形成したりしてもよい。
【0051】
また、散水用配管7には、網状のストレーナー23が設けられている。このストレーナー23は、散水用配管7の内部を水と一緒に流れる微細な発泡材17を濾過し、除去して回収するための機能を奏する。
【0052】
[微生物脱臭装置の使用態様]
次に、この実施の形態1の微生物脱臭装置1Aの使用態様について説明する。
【0053】
この実施の形態1においては、各種施設100において発生した悪臭を含む空気は、バルブ400を開くと、送風機300の送気により、排気管200を経て微生物脱臭装置1Aのチャンバー部3に送り込まれる。チャンバー部3の上側には、通気孔部3bが開口形成された隔壁3aを介して通気抵抗層4が存在し、通気抵抗層4の通気抵抗の高さによってチャンバー部3に流入した空気がただちに上側に流動することが阻害されるので、チャンバー部3に流入した空気は、拡散路13を含むU字溝11の流通路12を通り、チャンバー部3内を水平方向に拡散する。
【0054】
そして、チャンバー部3の全域に拡散した空気は、通気孔部3bを通過して上方に流動する。このとき、通気抵抗層4の通気抵抗が高いので、通気抵抗層4において空気の流動が抑止され、空気の上方への流動速度が遅くなる。これにより、空気はゆっくりと上方に流動し、通気抵抗層4を通過して脱臭部5に到達し、その後も脱臭部5においてゆっくりと上方に流動する。そのため、空気の脱臭部5への滞在時間が長くなり、高い脱臭効果が奏される。
【0055】
脱臭部5に到達した空気は、発泡材17に接触すると、空気に含まれる悪臭成分が発泡材17の内部に定着し生息する微生物によって分解され、悪臭成分が除去される。ここで、排気管200からチャンバー部3に流入した空気は、チャンバー部3において水平方向略全域にわたって拡散して上方に流動し、脱臭部5に到達するので、空気は脱臭部5の水平方向略全域で発泡材17に接触する。すなわち、脱臭部5において、空気は多くの発泡材17と接触し、高い脱臭効果を奏することができる。
【0056】
さらに、脱臭部5においては、通気抵抗突部18が、空気が流れ易い脱臭槽1の内壁略全域の空気の流動を阻害するので、脱臭槽1の内壁付近で空気の流速が速くなって脱臭効果が低下する事態を抑止する。これにより、脱臭部5略全域において、ゆっくりと空気を流動させ、高い脱臭効果を奏させることができる。
【0057】
そして、脱臭部5を通過し、発泡材17の微生物によって悪臭成分が分解・脱臭された空気は、脱臭槽1の上方の開口部19から外部に放出される。このようにして、この実施の形態1の微生物脱臭装置1Aは、悪臭を含む空気の悪臭成分を除去し、脱臭した空気を外部に放出する。
【0058】
一方、この実施の形態1の微生物脱臭装置1Aは、マイクロバブル発生装置8により、貯水槽2の内部の水に微細な気泡を発生させ、気泡を含有する水を散水用配管7に流入させる。
【0059】
散水用配管7に流入した水は、下方から上方へ流動し、上側の散水部22から脱臭槽1の内部に散水される。散水された水は、脱臭槽1の内部に滴下されて、脱臭部5や通気抵抗層4の発泡材17に生息する微生物の成育に用いられる。脱臭槽1の内部に散水される水は、貯水槽2の内部でマイクロバブル発生装置8が発生した微細な気泡を含む、空気含有量の多い水であるため、発泡材17の内部や、貯水槽2に貯留された水の中で生息する微生物の成育と活動を促進させることができる。
【0060】
また、脱臭部5や通気抵抗層4からさらに滴下した水は、チャンバー部3に滴下し、さらにチャンバー部3から貯水槽2に滴下して貯水槽2に再度貯留される。このように、微生物脱臭装置1Aにおいては、水が循環して使用される。なお、散水部22から脱臭槽1の内部に散水される水の量や散水の頻度は、気温等に応じて変化させることが、発泡材17に定着して生息する微生物の生育上望ましい。例えば、気温の高い夏季は、散水部22から脱臭槽1の内部への散水の回数や1回毎の散水量を多くすることが望ましい。
【0061】
ここで、発泡材17に生息する微生物は活動時に熱を発するため、発泡材17の配設された脱臭部5や通気抵抗層4は発熱した状態となる。そして、散水用配管7は、脱臭槽1の壁面に沿って配設されているので、散水用配管7の内部を流れる水は、脱臭部5や通気抵抗層4から発せられる熱で暖められる。そのため、微生物脱臭装置1Aを寒冷地で使用するような場合であっても、散水用配管7の内部を導通する水の凍結を抑止できる。
【0062】
また、脱臭部5や通気抵抗層4に存在する微細な発泡材17は、水の滴下とともに貯水槽2に落下して貯水槽2に沈殿する。この、貯水槽2に沈殿した微細な発泡材17は、散水用配管7に設けられたストレーナー23に濾過されて除去されて、回収される。
【0063】
[作用効果]
以上、この実施の形態1においては、空気流路20を流れる空気の通気抵抗を高める通気抵抗層4と、脱臭部5、及び/又は、通気抵抗層4に隣接又は近接して設けられた、脱臭槽1に送り込まれた空気を一時的に貯留する部屋としてのチャンバー部3とを備え、空気流路20を流れる空気の流通が、通気抵抗層4によって通気抵抗が高められた結果、空気はチャンバー部3において脱臭部5の略全面に対応して広がった状態で脱臭部5に送り込まれるように構成されたことにより、脱臭槽1に送り込まれた空気がチャンバー部3の略全体に拡散した状態で脱臭部5に送り込まれることとなり、脱臭部5全域の発泡材17に臭気を伴う空気が接触しやすくなる。そのため、空気撹拌装置等による脱臭槽1内の空気の強制的な撹拌を行わなくても、脱臭部5全域において微生物による臭気の分解脱臭が行われ、効率の高い脱臭を行うことができる。これにより、大型の脱臭槽1を備えた大規模な装置であっても、製造コストの高騰を抑止しつつ、分解脱臭機能を十分に発揮させることができる。
【0064】
この実施の形態1においては、通気抵抗層4は、空気流路20における空気の流通方向に面して配設されて空気流路20の略全面を塞ぐ通気抵抗層として形成されたことにより、空気流路全域にわたって容易な空気の流通が妨げられた結果、脱臭槽1に送り込まれた臭気を伴う空気は脱臭部5全域に行き渡りやすくなり、また、脱臭槽1を流れる空気の流速が抑制されて、脱臭部5全域の発泡材17に、臭気を伴う空気を長時間接触させることができる。そのため、大型の脱臭槽1を備えた大規模な装置であっても、脱臭部5全域において微生物による臭気の分解脱臭を効率よく行わせることができる。
【0065】
なお、この実施の形態1においては、通気抵抗層4を不織布状の材質によって形成することにより、悪臭に混じった粉塵が脱臭部5に流入し、脱臭部5に配設された発泡材17の細孔を閉塞することを防ぐこともできる。
【0066】
この実施の形態1においては、通気抵抗層4に加え、脱臭槽1の内周部の壁面から内方に向けて突設された通気抵抗突部18を備えたことにより、空気の流通しやすい脱臭槽1内部の壁面部近傍の空気の流通を抑止する機能を一層高め、その結果、脱臭槽1に送り込まれた臭気を伴う空気は脱臭槽1内部に滞留して脱臭槽1全域に一層行き渡りやすくなる。これにより、大型の脱臭槽1を備えた大規模な装置であっても、製造コストの高騰を抑止しつつ、一層高い分解脱臭機能を発揮させることができる。
【0067】
この実施の形態1においては、チャンバー部3は、脱臭槽1における脱臭部5の下方に設けられ、空気流路20は脱臭槽1の下方から上方に空気を流す状態に構成され、チャンバー部3には、チャンバー部3に空気を導入する挿通孔10が設けられると共に、挿通孔10から流入した空気を水平方向に拡散させるための流通路12としての拡散路13が形成されたことにより、挿通孔10から送り込まれた空気を、チャンバー部3において水平方向に拡散させて脱臭部5に送り込むことができる。これにより、臭気を伴う空気は脱臭槽1全域に一層行き渡りやすくなる。これにより、大型の脱臭槽1を備えた大規模な装置であっても、製造コストの高騰を抑止しつつ、一層高い分解脱臭機能を発揮させることができる。
【0068】
この実施の形態1においては、拡散路13は、複数のU字溝11によって形成されたことにより、拡散路13を低コストに構築し、かつ、挿通孔10から送り込まれた空気を、チャンバー部3において水平方向に拡散させる構造を容易に構築することができる。
【0069】
この実施の形態においては、チャンバー部3の上側には、発泡材17のチャンバー部3への落下を防ぐための略メッシュ状の落下防止部材16が設けられたことにより、発泡材17がチャンバー部3に落下してチャンバー部3内の空気流路20を塞いでしまい、臭気を伴う空気が脱臭槽1に行き渡らなくなる事態を簡易な構造で確実に抑止できる。
【0070】
この実施の形態1においては、散水された水を貯留する貯水槽2を脱臭槽1の下方に設け、脱臭部5に散水する水を循環させながら使用することができる。また、散水用配管7は脱臭槽1に沿って配設されることにより、散水させる水を導通させる散水用配管7は脱臭槽1内の微生物の発する熱でおのずと暖められることになる。そのため、微生物脱臭装置1Aを寒冷地で使用する場合においても、散水用配管7を導通する水の凍結を簡易かつ確実に抑止することができる。
【0071】
[発明の実施の形態2]
図5は、この実施の形態2の微生物脱臭装置1Bの一部の構成を模式的に示す図(一部の部品を模式的に示す図)である。
【0072】
この実施の形態2においては、この実施の形態1の微生物脱臭装置1Aの隔壁3aと設置突部14とパレット15とに替えて、チャンバー部3の内部に、図5に模式的に示すような流通用筐体部24が配設された構成を有する。
【0073】
この流通用筐体部24は、この実施の形態1の微生物脱臭装置1Aのチャンバー部3とパレット15との機能を併有する。すなわち、流通用筐体部24は、排気管200からチャンバー部3に流入した空気を水平方向に拡散させる機能、及び、チャンバー部3と通気抵抗層4や脱臭部5とを通気させつつ発泡材17が下方に落下するのを防止する機能を有する。
【0074】
流通用筐体部24は、特定の形状を維持できる材質、たとえば硬質の樹脂による成形品等により、略箱形に形成されている。ただし、流通用筐体部24は、特定の形状を維持できるものであれば、樹脂以外の材質、たとえば木材や厚紙等、どのような材質で形成されていてもよい。
【0075】
図5に示す、この実施の形態の流通用筐体部24は、縦方向大きさL、横方向大きさW、高さHが、チャンバー部3の内部の縦方向大きさL、横方向大きさW、高さHと略同一となり、チャンバー部3の内部にほぼ隙間なく収容されるように形成されている。図5に示すとおり、流通用筐体部24には、チャンバー部3の挿通孔10に対応する位置に挿通孔部10aが形成されている。流通用筐体部24の上側は網目状の開口部10bが多数形成されている。開口部10bは、大半の発泡材17が落下しない程度の大きさに開口されている。
【0076】
図5に図示しないが、流通用筐体部24の内部には、樹脂成形等により、この実施の形態1のチャンバー部3の拡散路13を含む流通路12(図3参照)と同様の流通路(図示せず)が形成され、この流通路(図示せず)によって、排気管200からチャンバー部3に流入した空気は水平方向に拡散する。上記以外の微生物脱臭装置1Bの構成は、この実施の形態1の微生物脱臭装置1Aと同じである。
【0077】
この実施の形態2においては、チャンバー部3の内部に、樹脂等で形成された流通用筐体部24を設け、流通用筐体部24の内部の流通路(図示せず)によって、排気管200からチャンバー部3に流入した空気を水平方向に拡散させることにより、挿通孔10から送り込まれた空気を、チャンバー部3において水平方向に拡散させて脱臭部5に送り込む構成と、チャンバー部3と通気抵抗層4や脱臭部5とを通気させつつ発泡材17が落下するのを防止する構成とを、軽量かつ剛性が高い状態に、しかも低コストにおいて形成できる。
【0078】
[発明の実施の形態3]
図6は、この実施の形態3の微生物脱臭装置1Cの構造を模式的に示す図である。
【0079】
この実施の形態3においては、脱臭部5、及び通気抵抗層4における空気流路20が、図6に模式的に示すようなラビリンス形状(つづら折り形状)となるように形成されている。
【0080】
具体的には、この実施の形態3の脱臭部5、及び通気抵抗層4には、側面視の状態で、下方から上方に突設された下方突部25aと上方から下方に突設された上方突部25bとが、水平方向に向けて交互に配設されている。図6に示す通り、この実施の形態3において、下方突部25aは隔壁3aから上方に向けて突設されている。また、脱臭槽1の上方の一側側から他側側にかけて板状の天井部19aが設けられ、開口部19は、天井部19aよりも脱臭槽1の他側側に開口形成されている。
【0081】
この実施の形態3においては、この実施の形態1の散水部22に替えて、下方突部25aと上方突部25bとの間隙ごとに複数たとえば5個の散水部22a,22b,22c,22d,22eが設けられている。ただし、散水部22a,22b,22c,22d,22eの数は下方突部25aと上方突部25bとの間隙の数に必ずしも一致する必要はなく、脱臭部5及び通気抵抗層4に配設された発泡材17の微生物を生息させるために十分な散水ができる位置や個数が設けられていれば、散水部22a,22b,22c,22d,22eの配設位置や配設個数はどのようなものであってもよい。
【0082】
上記以外の微生物脱臭装置1Cの構成は、この実施の形態1の微生物脱臭装置1Aと同じである。
【0083】
この実施の形態3においては、チャンバー部3を経て通気孔部3bから通気抵抗層4及び脱臭部5に流入した空気は、形成された空気流路20に沿って、図6に矢印で示す経路に沿って通気抵抗層4及び脱臭部5を流れる。具体的には、通気孔部3bから通気抵抗層4及び脱臭部5に流入した空気は、下から上へ、上から下へと上下方向に進路を変えながら一側側から他側側(図6における右側から左側)へと進行し、開口部19から外部に放出される。
【0084】
この実施の形態3の微生物脱臭装置1Cは、下方突部25aと上方突部25bと、及び、隔壁3aと天井部19aとによって、通気抵抗層4及び脱臭部5の空気流路20をラビリンス状に形成したことにより、この実施の形態1のように下方突部25aと上方突部25bと、及び、隔壁3aと天井部19aとを設けない構成に比べて通気抵抗層4及び脱臭部5における空気の移動距離が長くなる。そのため、通気抵抗層4及び脱臭部5において、発泡材17(及び発泡材17に生息する微生物)に接触する空気の量が増大する。そのため、通気抵抗層4及び脱臭部5において、より高い脱臭効果を得ることができる。
【0085】
この実施の形態3においては、下方突部25aと上方突部25bとの間隙ごとに配設された22a,22b,22c,22d,22eによって脱臭部5及び通気抵抗層4に散水されることにより、下方突部25aと上方突部25bによって散水が妨げられることなく、脱臭部5及び通気抵抗層4の発泡材17に散水し、発泡材17の微生物の成育を維持させることができる
なお、この実施の形態3においては、下方突部25aを通気抵抗層4の下方の隔壁3aから上方に向けて突設し、通気抵抗層4及び脱臭部5の空気流路20をラビリンス形状としたが、これに限定されず、たとえば、下方突部25aを脱臭槽1の脱臭部5の位置の側方壁面から突設させて、脱臭部5の空気流路20のみをラビリンス形状とするような構成とすることもできる。
【0086】
以上説明した実施の形態1乃至3は本発明の一例であり、本発明が本実施の形態1乃至3のみに限定されるものではないことは、いうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0087】
この実施の形態の微生物脱臭装置1A,1B,1Cは、ざまざまな分野で、悪臭を含む空気の脱臭に用いられる。
【0088】
たとえば、微生物脱臭装置1A,1B,1Cは、馬、牛、豚、鶏等の家畜の糞から製造する家畜糞堆肥の製造施設において発生する悪臭を含む空気から悪臭を除去するために用いられる。またたとえば、微生物脱臭装置1A,1B,1Cは、製紙工場における脱水工程で発生する悪臭(硫化水素等)を除去するために用いられる。またたとえば、微生物脱臭装置1A,1B,1Cは、下水汚泥等の有機性廃棄物の処理施設等において、有機性廃棄物から製造する下水堆肥の製造において発生する悪臭を含む空気から悪臭を除去するために用いられる。さらに、微生物脱臭装置1A,1B,1Cは、これらの具体例以外のさまざまな悪臭を発生する施設や装置等の悪臭の除去に用いることができる。
【符号の説明】
【0089】
1A,1B,1C 微生物脱臭装置
1 脱臭槽
2 貯水槽
3 チャンバー部
4 通気抵抗層(通気抵抗部)
5 脱臭部
7 散水用配管
10 挿通孔(導入部)
11 U字溝
13 拡散路
16 落下防止部材
17 発泡材
18 通気抵抗突部(通気抵抗部)
19 開口部
20 空気流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6