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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】ばね定数検出システム
(51)【国際特許分類】
   F01L 3/10 20060101AFI20230703BHJP
   F16F 1/06 20060101ALI20230703BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
F01L3/10 B
F01L3/10 Z
F16F1/06 L
G01N3/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019163729
(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公開番号】P2021042684
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】京徳 信夫
(72)【発明者】
【氏名】永洞 真康
(72)【発明者】
【氏名】大藤 薫
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-211333(JP,A)
【文献】特開平7-332040(JP,A)
【文献】特開2008-240669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 3/00- 7/18
F01L 11/00-11/06
F01L 15/00-35/04
F16F 1/00- 6/00
G01N 3/00- 3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに用いられ且つ変位量に応じてばね定数が第1所定ばね定数又は第2所定ばね定数に変化するバルブスプリングの変位量とばね定数との特性を検出するばね定数検出システムにおいて、
前記バルブスプリングの変位量を変更調整可能な変位調整手段と、
前記バルブスプリングを調整可能な加振振動数で加振する加振手段と、
前記バルブスプリングの振動状態を検出する振動状態検出手段と、
前記変位調整手段による前記バルブスプリングの変位量及び前記加振手段による該バルブスプリングの加振振動数の何れか一方を一定とし且つ他方を変更調整して前記振動状態検出手段によって検出された該バルブスプリングの振動状態が該バルブスプリングの共振状態を示す場合に該バルブスプリングの変位量における該バルブスプリングのばね定数が前記第1所定ばね定数及び第2所定ばね定数の何れかであるかを該共振時の加振振動数に基づいて判定するばね定数判定手段と、を備えたことを特徴とするばね定数検出システム。
【請求項2】
前記第2所定ばね定数が前記第1所定ばね定数より大きく、前記バルブスプリングのばね定数が変位量の増加に伴って前記第1所定ばね定数から前記第2所定ばね定数に変化する場合に、
前記加振手段が前記第2所定ばね定数に応じた固有振動数を加振振動数として前記バルブスプリングを加振し且つ前記変位調整手段による前記バルブスプリングの変位量を次第に増加調整する状態で前記振動状態検出手段によって検出された該バルブスプリングの振動状態が該バルブスプリングの共振状態を示す場合に、前記ばね定数判定手段は、その状態におけるバルブスプリングの変位量で該バルブスプリングのばね定数が前記第1所定ばね定数から前記第2所定ばね定数に変化したと判定することを特徴とする請求項1に記載のばね定数検出システム。
【請求項3】
前記第2所定ばね定数が前記第1所定ばね定数より大きく、前記バルブスプリングのばね定数が変位量の増加に伴って前記第1所定ばね定数から前記第2所定ばね定数に変化する場合に、
前記変位調整手段による前記バルブスプリングの変位量を一定とし且つ前記加振手段による加振振動数を前記第1所定ばね定数に応じた固有振動数よりも小さい加振振動数から前記第2所定ばね定数に応じた固有振動数よりも大きな加振振動数まで増加調整する状態で前記振動状態検出手段によって検出された該バルブスプリングの振動状態が該バルブスプリングの共振状態を示す場合に、前記ばね定数判定手段は、その状態におけるバルブスプリングの加振振動数が前記第1所定ばね定数に応じた固有振動数相当であれば該バルブスプリングのばね定数は第1所定ばね定数であると判定し、前記第2所定ばね定数に応じた固有振動数相当であれば該バルブスプリングのばね定数は第2所定ばね定数であると判定することを特徴とする請求項1に記載のばね定数検出システム。
【請求項4】
エンジンに用いられ且つ変位量に応じてばね定数が変化するバルブスプリングの変位量とばね定数との特性を検出するばね定数検出システムにおいて、
前記バルブスプリングの変位量を変更調整可能な変位調整手段と、
前記バルブスプリングを調整可能な加振振動数で加振する加振手段と、
前記バルブスプリングの振動状態を検出する振動状態検出手段と、
前記変位調整手段によって前記バルブスプリングの変位量が所定変位量に調整され且つ該バルブスプリングが前記加振手段によって所定の加振振動数で加振された状態で前記振動状態検出手段によって検出された該バルブスプリングの振動状態が該バルブスプリングの共振状態を示す場合に該バルブスプリングの加振振動数を該バルブスプリングの所定変位量における固有振動数として該固有振動数と前記所定変位量とから前記バルブスプリングのばね定数を算出するばね定数算出手段と、を備えたことを特徴とするばね定数検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ばね定数検出システム、特に、車両のエンジンに用いられるバルブスプリングのばね定数を検出するばね定数検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの吸排気バルブは、エンジン様式に応じてロッカーアームやプッシュロッドを介して、又はそれらを介さずに、吸排気カムによって開閉される。バルブスプリングは、これら吸排気バルブを閉弁位置に復帰・保持するために用いられる。このバルブスプリングには、例えば下記特許文献1に記載されるように、バルブスプリングの変位量に応じてばね定数が変化するものがある。変位量に応じてばね定数が変化するバルブスプリングでは多くの場合、バルブスプリングの変位量が大きくなると、比較的小さな第1所定ばね定数から比較的大きな第2所定ばね定数に変化する。これは、周知のように、バルブスプリング自体のサージング、すなわち自励振動を抑制するためであり、例えば、エンジンに組付けられた状態では、バルブスプリングは比較的大きな第2所定ばね定数の範囲でのみ伸縮変位する。なお、下記特許文献1では、第1所定ばね定数と第2所定ばね定数の間に、第1所定ばね定数より僅かに大きい更なるばね定数の変位領域を設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-169730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように、変位量に応じてばね定数が変化するバルブスプリングでは、例えば、第1所定ばね定数から第2所定ばね定数に変化する変位量に個体差が生じる。吸排気バルブの開弁時におけるバルブスプリングの変位量は一定であるから、ばね定数が変化する変位量が異なると、同じ変位量であっても荷重、すなわち吸排気バルブを開閉する力が異なることになり、例えばカムシャフトの複数のカムに生じる反力にばらつきが生じて、エンジン回転時のバランスが乱れるおそれがある。このばね定数の変化点、換言するとばね定数の切り替わり変位量を求めるには、例えば、ばねを変位させながら荷重と変位量をプロットして、その傾きが変化したことで検出しなければならず、相応の手間と時間が必要となる。したがって、ばね定数が変化するバルブスプリングの変位量とばね定数の特性、特にばね定数切り替わり変位量を簡易に検出できるシステムが求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ばね定数が変化するバルブスプリングの変位量とばね定数の特性を検出することが可能なばね定数検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のばね定数検出システムは、
エンジンに用いられ且つ変位量に応じてばね定数が第1所定ばね定数又は第2所定ばね定数に変化するバルブスプリングの変位量とばね定数との特性を検出するばね定数検出システムにおいて、
前記バルブスプリングの変位量を調整可能な変位調整手段と、前記バルブスプリングを調整可能な加振振動数で加振する加振手段と、前記バルブスプリングの振動状態を検出する振動状態検出手段と、前記変位調整手段による前記バルブスプリングの変位量及び前記加振手段による該バルブスプリングの加振振動数の何れか一方を一定とし且つ他方を変更調整して前記振動状態検出手段によって検出された該バルブスプリングの振動状態が該バルブスプリングの共振状態を示す場合に該バルブスプリングの変位量における該バルブスプリングのばね定数が前記第1所定ばね定数及び第2所定ばね定数の何れであるかを該共振時の加振振動数に基づいて判定するばね定数判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、バルブスプリングの変位量とバルブスプリングの加振振動数の何れか一方を一定とし且つ他方を変更調整した状態でバルブスプリングに共振が生じたら、共振発生時の加振振動数をバルブスプリングの固有振動数とすることで、その状態におけるバルブスプリングの変位量と固有振動数の特性を求めることができる。ばねの固有振動数(共振周波数)はばね定数をばね質量で除した値の平方根で決まるので、求められた固有振動数が、第1所定ばね定数に応じた固有振動数であるか、又は、第2所定ばね定数に応じた固有振動数であるかを判定することにより第1所定ばね定数又は第2ばね定数の何れであるかを判定することができ、これにより、上記により求められたバルブスプリングの変位量とばね定数の特性を検出することができる。したがって、従来の荷重-変位量プロット法に対し、ばね定数切り替わり変位量を簡易に検出することができる。
【0008】
また、本発明の他の構成は、前記第2所定ばね定数が前記第1所定ばね定数より大きく、前記バルブスプリングのばね定数が変位量の増加に伴って前記第1所定ばね定数から前記第2所定ばね定数に変化する場合に、前記加振手段が前記第2所定ばね定数に応じた固有振動数を加振振動数として前記バルブスプリングを加振し且つ前記変位調整手段による前記バルブスプリングの変位量を次第に増加調整する状態で前記振動状態検出手段によって検出された該バルブスプリングの振動状態が該バルブスプリングの共振状態を示す場合に、前記ばね定数判定手段は、その状態におけるバルブスプリングの変位量で該バルブスプリングのばね定数が前記第1所定ばね定数から前記第2所定ばね定数に変化したと判定することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、バルブスプリングのばね定数が第1所定ばね定数から第2所定ばね定数に変化する変位量を適正に検出することができ、例えば、変位量-ばね定数特性の近しいバルブスプリングを選択して同一のエンジンに用いることで、エンジン回転時のバランスを向上することが可能となる。
【0010】
また、本発明の他の構成は、前記第2所定ばね定数が前記第1所定ばね定数より大きく、前記バルブスプリングのばね定数が変位量の増加に伴って前記第1所定ばね定数から前記第2所定ばね定数に変化する場合に、前記変位調整手段による前記バルブスプリングの変位量を一定とし且つ前記加振手段による加振振動数を前記第1所定ばね定数に応じた固有振動数よりも小さい加振振動数から前記第2所定ばね定数に応じた固有振動数よりも大きな加振振動数まで増加調整する状態で前記振動状態検出手段によって検出された該バルブスプリングの振動状態が該バルブスプリングの共振状態を示す場合に、前記ばね定数判定手段は、その状態におけるバルブスプリングの加振振動数が前記第1所定ばね定数に応じた固有振動数相当であれば該バルブスプリングのばね定数は第1所定ばね定数であると判定し、前記第2所定ばね定数に応じた固有振動数相当であれば該バルブスプリングのばね定数は第2所定ばね定数であると判定することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、所定変位量におけるバルブスプリングのばね定数が第1所定ばね定数であるか、又は、第2所定ばね定数であることを適正に検出することができるので、例えば、その結果から求めたばね定数切り替わり変位量の近しいバルブスプリングを選択して同一のエンジンに用いることで、エンジン回転時のバランスを向上することが可能となる。
【0012】
また、本発明の他の構成は、エンジンに用いられ且つ変位量に応じてばね定数が変化するバルブスプリングの変位量とばね定数との特性を検出するばね定数検出システムにおいて、
前記バルブスプリングの変位量を調整可能な変位調整手段と、前記バルブスプリングを調整可能な加振振動数で加振する加振手段と、前記バルブスプリングの振動状態を検出する振動状態検出手段と、前記変位調整手段によって前記バルブスプリングの変位量が所定変位量に調整され且つ該バルブスプリングが前記加振手段によって所定の加振振動数で加振された状態で前記振動状態検出手段によって検出された該バルブスプリングの振動状態が該バルブスプリングの共振状態を示す場合に該バルブスプリングの加振振動数を該バルブスプリングの所定変位量における固有振動数として該固有振動数と前記所定変位量とから前記バルブスプリングのばね定数を算出するばね定数算出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、バルブスプリングの変位量を所定変位量とすると共にバルブスプリングの加振振動数を所定の加振振動数とした状態でバルブスプリングに共振が生じたら、共振発生時の加振振動数をバルブスプリングの固有振動数とすることで、その状態におけるバルブスプリングの変位量と固有振動数の特性を求めることができる。ばねの固有振動数(共振周波数)はばね定数をばね質量で除した値の平方根で決まるので、求められた固有振動数からばね定数を算出することができ、これにより、上記により求められたバルブスプリングの変位量とばね定数の特性を検出することができる。したがって、従来の荷重-変位量プロット法に対し、ばね定数切り替わり変位量を簡易に検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、バルブスプリングの変位量-ばね定数の特性を適正に検出することができ、例えば、ばね定数切り替わり変位量の近しいバルブスプリングを選択して同一のエンジンに用いることで、エンジン回転時のバランスを向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のばね定数検出システムの一実施の形態を示す概略構成図である。
図2図1の制御装置で実行される演算処理の一例を示すフローチャートである。
図3図1の制御装置で実行される演算処理の他の例を示すフローチャートである。
図4】バルブスプリングのばね定数の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明のばね定数検出システムの一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、この実施の形態のばね定数検出システムの概略構成図である。この実施の形態では、例えば、不等ピッチ圧縮コイルばねからなるバルブスプリングSをばね定数検出対象とした。このバルブスプリングSでは、例えば図4に示すように、変位量に応じてばね定数が変化し、予め設定されたばね定数切り替わり変位量までは比較的小さな第1所定ばね定数であり、このばね定数切り替わり変位量以上の領域では比較的大きな第2所定ばね定数に変化する。
【0017】
このばね定数検出システムは、バルブスプリングSの変位量を調整する変位調整手段として加圧装置1を備えて構成される。この加圧装置1は、軸線が上下向きに配設されたバルブスプリングSの下端を支持する支持台部12と、そのバルブスプリングSの上端部を下方に押圧する押圧台部11を備え、図示しないアクチュエータによって押圧台部11を下降させることにより、バルブスプリングSを圧縮して自由長から所定量だけ変位させることができる。この加圧装置1によるバルブスプリングSの変位量は、任意に設定することもできるし、次第に増加或いは次第に減少するように設定することも可能である。
【0018】
この実施の形態では、バルブスプリングSの上端部と加圧装置1の押圧台部11の間に加振手段としての加振装置2を介装した。この加振装置2は、例えばピエゾ素子で構成され、このピエゾ素子に所定周期で電圧を印加することにより、その体積膨張・収縮によってバルブスプリングSをその所定周期の逆数、すなわち所定振動数で加振することができる。したがって、この加振装置2への印加電圧周期を変更することで、バルブスプリングSの加振振動数を変更調整することができる。この加振装置2によるバルブスプリングSの加振変位は、例えばピエゾ素子に印加される電圧から予め求めることができる。
【0019】
また、この実施の形態では、バルブスプリングSの下端部と支持台部12の間に振動状態検出手段としての振動センサ3を介装した。この振動センサ3は、例えばピエゾ素子で構成され、このピエゾ素子の出力電圧の変化からバルブスプリングSの振動状態、例えば振動数を検出することができる。また、このピエゾ素子の出力電圧の大きさから、バルブスプリングSの振動変位を検出することもでき、例えば上記加振装置2によるバルブスプリングSの加振変位よりも大きな振動変位が検出された場合には、バルブスプリングSが共振状態にあると判定することができる。
【0020】
上記加圧装置1によるバルブスプリングSの変位量やピエゾ素子からなる加振装置2への印加電圧は、制御装置4によって制御される。また、振動センサ3からの出力信号は制御装置4に入力される。この制御装置4は、例えば高度な演算処理機能を有するコンピュータシステムを備えて構成される。このコンピュータシステムは、既存のコンピュータシステムと同様に、演算処理を行う演算処理装置に加えて、例えばプログラムやデータを記憶する記憶装置や、各種センサからの信号を入力したり、後述するディスプレイなどの外部装置に信号を出力したりするための入出力装置を備えて構成される。
【0021】
図2は、図1の制御装置4で行われる演算処理の一例を示すフローチャートである。この演算処理は、バルブスプリングSのばね定数検出操作開始で開始され、まずステップS11で、個別の演算処理に従って、上記加振装置2により、予め設定された所定加振振動数でバルブスプリングSを加振する。この実施の形態では、この所定加振振動数を、バルブスプリングSの比較的大きな上記第2所定ばね定数に応じた固有振動数とした。ばねの固有振動数(共振周波数)は、ばね定数とばねの質量から一意に決まる。
【0022】
次にステップS12に移行して、上記加圧装置1によりバルブスプリングSを予め設定された所定変位量まで変位させる。この所定変位量は、上記ばね定数切り替わり変位量よりも小さな変位量とする。
【0023】
次にステップS13に移行して、上記加振装置2によるバルブスプリングSの加振変位よりも上記振動センサ3で検出されたバルブスプリングSの振動変位が大きいか否かを判定することにより、バルブスプリングSが共振状態にあるか否かを判定し、バルブスプリングSが共振状態にある場合にはステップS14に移行し、そうでない場合にはステップS15に移行する。
【0024】
上記ステップS15では、加圧装置1によるバルブスプリングSの変位量を所定変位量ずつ変更してから上記ステップS13に移行する。この実施の形態におけるバルブスプリングSの変位量の変更は、例えば微小変位変更量ずつ、バルブスプリングSの変位量を増加することで行われる。
【0025】
上記ステップS14では、共振検出時のバルブスプリングSの変位量を所定加振振動数での変位量に設定してから演算処理を終了する。この実施の形態では、所定加振振動数を第2所定ばね定数に応じた固有振動数としているので、共振が検出されたときのバルブスプリングSの変位量は、バルブスプリングSのばね定数が上記第1所定ばね定数から第2所定ばね定数に切り替わる変位量に相当する。
【0026】
この演算処理によれば、ばね定数検出開始からバルブスプリングSは第2所定ばね定数に応じた固有振動数を加振振動数として加振される。前述のように、ばねの固有振動数は、ばね定数をばねの質量で除した値の平方根で一意に決まる。そして、その状態で、バルブスプリングSの変位量が次第に増加調整され、バルブスプリングSが共振状態になったときのバルブスプリングSの変位量が、第1所定ばね定数から第2所定ばね定数へのばね定数切り替わりの変位量に設定される。すなわち、この実施の形態のバルブスプリングSは、予め設定されたばね定数切り替わり変位量で第1所定ばね定数と第2所定ばね定数とが切り替わるように設定されているが、実際のバルブスプリングSのばね定数切り替わり変位量には個体差がある。上記演算処理によって、バルブスプリングSのばね定数切り替わり変位量を検出することができれば、そのバルブスプリングSの変位量とばね定数の特性を得ることができる。その結果、例えば、変位量-ばね定数特性の近しいバルブスプリングSを同一のエンジンに用いることで、エンジン回転時のバランスを向上することができる。
【0027】
この演算処理によるばね定数検出システムの変形例として、例えば、第1所定ばね定数に応じた固有振動数を加振振動数としてばね定数検出開始からバルブスプリングSを加振し、バルブスプリングSの変位量を自由長から次第に増加調整し、バルブスプリングSが共振状態しなくなったときのバルブスプリングSの変位量を、第1所定ばね定数から第2所定ばね定数へのばね定数切り替わりの変位量に設定するようにしてもよい。更には、ばね定数検出開始時にバルブスプリングSを上記ばね定数切り替わり変位量より大きな変位量で変位させておき、そこからバルブスプリングSの変位量を次第に減少調整し、第1所定ばね定数における固有振動数で共振し始めたり、第2ばね定数における固有振動数での共振が終了したりした時点の変位量をばね定数切り替わり変位量に設定するようにしてもよい。
【0028】
以上は、バルブスプリングSの加振振動数を一定とし、変位量を増加調整してバルブスプリングSの変位量とばね定数の特性を検出する例である。この実施の形態のばね定数検出システムは、バルブスプリングSの変位量を一定とし、加振振動数を例えば増加調整してバルブスプリングSの変位量とばね定数の特性を検出することもできる。例えば、変位調整手段としての加圧装置1によるバルブスプリングSの変位量を所定変位量一定とし且つ加振装置2による加振振動数を次第に増加調整し、その状態で、振動センサ3によって検出されたバルブスプリングSの振動状態が第1所定ばね定数に応じた固有振動数で共振した場合にはその状態におけるバルブスプリングSの変位量での該バルブスプリングSのばね定数は該第1所定ばね定数であり、第2所定ばね定数に応じた固有振動数で共振した場合にはその状態におけるバルブスプリングSの変位量での該バルブスプリングSのばね定数は該第2所定ばね定数であると判定することができる。
【0029】
図3は、図1の制御装置4で行われる演算処理の一例を示すフローチャートである。この演算処理は、バルブスプリングSのばね定数検出操作開始で開始され、まずステップS21で、上記加圧装置1によってバルブスプリングSを加圧することにより、バルブスプリングSを予め設定された所定変位量まで変位させる。
【0030】
次にステップS22に移行して、個別の演算処理に従って、上記加振装置2により、予め設定された所定加振振動数でバルブスプリングSを加振する。この実施の形態では、この所定加振振動数を、バルブスプリングSの上記第1所定ばね定数に応じた固有振動数よりも小さい加振振動数とした。
【0031】
次にステップS23に移行して、上記加振装置2によるバルブスプリングSの加振変位よりも上記振動センサ3で検出されたバルブスプリングSの振動変位が大きいか否かを判定することにより、バルブスプリングSが共振状態にあるか否かを判定し、バルブスプリングSが共振状態にある場合にはステップS24に移行し、そうでない場合にはステップS25に移行する。
【0032】
上記ステップS25では、加振装置2によるバルブスプリングSの加振振動数を所定振動数ずつ変更してから上記ステップS23に移行する。この実施の形態におけるバルブスプリングSの加振振動数の変更は、例えば微小振動数変更量ずつ、上記第2所定ばね定数に応じた固有振動数よりも大きな加振振動数まで、バルブスプリングSの加振振動数を増加することで行われる。
【0033】
上記ステップS24では、共振検出時のバルブスプリングSの加振振動数を所定変位量での固有振動数に設定してから演算処理を終了する。この固有振動数は、比較的小さな上記第1所定ばね定数に応じた固有振動数であるか、又は、比較的大きな上記第2所定ばね定数に応じた固有振動数であるかの何れかである。第1所定ばね定数に応じた固有振動数も、第2所定ばね定数に応じた固有振動数も、既知であるから、共振が生じたときの固有振動数から、その状態でのバルブスプリングSの変位量におけるばね定数を判定により特定することができる。
【0034】
この演算処理によれば、例えば、ばね定数検出開始でバルブスプリングSの変位量をばね定数切り替わり変位量よりも大きな所定変位量とし、加振装置2によるバルブスプリングSの加振振動数を増加調整する状態で、バルブスプリングSが第2所定ばね定数に応じた固有振動数相当の加振振動数で共振すれば、その変位量でのバルブスプリングSのばね定数は第2所定ばね定数であると判定することができる。ばねの固有振動数は、ばね定数をばねの質量で除した値の平方根値であるから、第2所定ばね定数に応じた固有振動数は第1所定ばね定数に応じた固有振動数よりも大きい。したがって、上記演算処理によって、バルブスプリングSの変位量がばね定数切り替わり変位量以上の領域でそのばね定数が第2所定ばね定数であることを検出することができれば、そのバルブスプリングSの変位量とばね定数の特性を得ることができる。その結果、例えば、ばね定数切り替わり変位量の近しいバルブスプリングSを同一のエンジンに用いることで、エンジン回転時のバランスを向上することができる。
【0035】
図4は、上記不等ピッチ圧縮コイルばねからなるバルブスプリングSの変位量-荷重特性の一例を示す説明図であり、図中の曲線の傾きがばね定数に相当する。この傾きの小さい領域におけるばね定数が上記第1所定ばね定数であり、傾きの大きい領域におけるばね定数が上記第2所定ばね定数であり、その切り替わり変位量が上記ばね定数切り替わり変位量である。これらのばね定数そのものの個体差は小さいが、ばね定数切り替わり変位量については個体差がある(図は誇張されている)。例えば、図の実線のばね定数特性と二点鎖線のばね定数特性では、同じ変位における荷重、すなわち変位に必要な力が異なる。この力の差は、吸排気バルブを駆動するカムシャフトのカムに作用する反力の差となるので、例えば、複数のカムに係る反力が相違するとエンジン回転時のバランスが乱れるおそれがある。これに対し、ばね定数切り替わり変位量が近しいバルブスプリングSを同一のエンジンに用いることで、エンジン回転時のバランスを向上することが可能となる。
【0036】
このように、この実施の形態のばね定数検出システムでは、バルブスプリングSの変位量とバルブスプリングSの加振振動数の何れか一方を一定とし且つ他方を変更調整した状態でバルブスプリングSに共振が生じたら、共振発生時の加振振動数をバルブスプリングSの固有振動数とすることで、その状態におけるバルブスプリングSの変位量と固有振動数の特性を求めることができる。ばねの固有振動数(共振周波数)はばね定数をばね質量で除した値の平方根で決まるので、求められた固有振動数が、第1所定ばね定数に応じた固有振動数であるか、又は、第2所定ばね定数に応じた固有振動数であるかを判定することにより第1所定ばね定数又は第2ばね定数の何れであるかを判定することができ、これにより、求められたバルブスプリングSの変位量とばね定数の特性を検出することができる。
【0037】
また、第2所定ばね定数に応じた固有振動数を加振振動数としてバルブスプリングSを加振し且つバルブスプリングSの変位量を次第に増加調整する状態でバルブスプリングSに共振が生じたら、その状態におけるバルブスプリングSの変位量でバルブスプリングSのばね定数が第1所定ばね定数から第2所定ばね定数に変化したと判定する。これにより、バルブスプリングSのばね定数が第1所定ばね定数から第2所定ばね定数に変化する変位量を適正に検出することができ、例えば、ばね定数切り替わり変位量の近しいバルブスプリングSを選択して同一のエンジンに用いることで、エンジン回転時のバランスを向上することが可能となる。
【0038】
また、バルブスプリングSの変位量を一定とし且つ加振振動数を第1所定ばね定数に応じた固有振動数よりも小さい加振振動数から第2所定ばね定数に応じた固有振動数よりも大きな加振振動数まで増加調整する状態でバルブスプリングSに共振が生じた場合に、その加振振動数が第1所定ばね定数に応じた固有振動数相当であればバルブスプリングSのばね定数は第1所定ばね定数であると判定し、第2所定ばね定数に応じた固有振動数相当であればバルブスプリングSのばね定数は第2所定ばね定数であると判定する。これにより、所定変位量でのバルブスプリングSのばね定数が第1所定ばね定数であるか、又は、第2所定ばね定数であることを適正に検出することができるので、例えば、その結果から求めたばね定数切り替わり変位量の近しいバルブスプリングSを選択して同一のエンジンに用いることで、エンジン回転時のバランスを向上することが可能となる。
【0039】
以上、実施の形態に係るばね定数検出システムについて説明したが、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、バルブスプリングSの変位量及びバルブスプリングSの加振振動数の何れか一方を一定とし且つ他方を変更調整してばね定数が第1所定ばね定数であるか又は第2所定ばね定数であるかを判定した。しかしながら、バルブスプリングSのばね質量が既知であれば、バルブスプリングSの加振時固有振動数が分かれば、前述の関係から、共振時のばね定数を求めることができる。したがって、本件発明のばね定数検出システムでは、バルブスプリングSの変位量が所定変位量に調整され且つバルブスプリングSが所定の加振振動数で加振された状態でバルブスプリングSの振動状態が共振状態を示す場合に、そのバルブスプリングSの加振振動数をバルブスプリングSの所定変位量における固有振動数として、その固有振動数と所定変位量とからバルブスプリングSのばね定数を算出することも可能である。また、バルブスプリングは、第1、第2所定ばね定数までに限定せず、更に多段のばね定数を有するバルブスプリングにも適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 加圧装置(変位調整手段)
2 加振装置(加振手段)
3 振動センサ(振動状態検出手段)
4 制御装置
S バルブスプリング
図1
図2
図3
図4