(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 6/00 20060101AFI20230703BHJP
G01F 23/292 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
F24F6/00 A
F24F6/00 E
F24F6/00 F
G01F23/292 B
(21)【出願番号】P 2020535837
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2019031143
(87)【国際公開番号】W WO2020032108
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2018151489
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山田 慶太郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 光義
(72)【発明者】
【氏名】石川 朋弘
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-047087(JP,A)
【文献】特開2015-183981(JP,A)
【文献】特開2016-099256(JP,A)
【文献】特開2015-045436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/00
G01F 23/292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1底面を有する筐体と、
前記筐体に着脱可能となるように前記第1底面上に配置され、水を貯留する貯水トレイと、
前記第1底面の上方から前記第1底面に向けて直下に出射した光が前記第1底面または前記貯水トレイの第2底面から反射した反射光を受けることにより、前記第1底面または前記第2底面までの距離を測定する測距センサと、を備え、
前記第1底面には、前記反射光が前記測距センサに到達する時間を遅延させる光学的効果を生じさせる光学的効果部が設けられていることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記光学的効果部は、前記第1底面において光が照射される光照射領域に形成された凹部であり、
前記凹部は、光の入射方向に対して傾斜する傾斜面をその底部に有していることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記光学的効果部は、前記第1底面において光が照射される光照射領域に形成された凹凸であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記光学的効果部は、前記第1底面において光が照射される光照射領域に光吸収性の高い色が付された着色部であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記測距センサによって測定された、前記第1底面および前記第2底面を含む測定対象面までの距離と、所定の閾値とを比較して、前記距離が前記閾値より長いときに前記貯水トレイが前記筐体に装着されていないと判定する一方、前記距離が前記閾値より短いときに前記貯水トレイが前記筐体に装着されていると判定するトレイ装着判定部をさらに備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯水トレイの装着を光学的に検知する空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
加湿機は、蒸発させる水を貯えるためのトレイを内部に備えている。トレイは、水を蒸発させるために所定量以上の水を貯える必要がある。水を直接注ぎ込むタイプのトレイを備える加湿機では、ユーザが、トレイの貯水量を把握し、貯水量が所定の水量より少なくなると、トレイに水を補充しなければならない。このため、トレイにおける水位を測定する手法に様々な改良が試みられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水槽内の水位を光学式の測距センサを用いて測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国公開特許公報「特開2016-99256号(2016年5月30日公開)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トレイを筐体に対して着脱可能に設ける加湿機では、トレイを筐体から外して持ち運びできる。これにより、トレイに水道の蛇口から直接水を入れることができる。ただし、このような加湿機では、トレイが筐体から外された状態で動作しても、加湿された空気を放出できない。あるいは、トレイが筐体から外された状態では、ヤカンなどから加湿機本体への給水ができない。
【0006】
そこで、上記の水位を光学的に測定する技術をトレイの有無検知に応用することが考えられる。具体的には、トレイの上方に配置された測距センサから出射された光の反射により、トレイの有無を検知する。
【0007】
トレイが筐体の下部に装着され、かつトレイに水が貯えられている状態では、測距センサがトレイにおける水位を測定するので、トレイが筐体に装着されていることが検知できる。ただし、トレイが空の状態では、測距センサは、出射した光が測定対象面(筐体の底面またはトレイの底面)に反射した光を受光することで測定した距離を、予め設定された閾値と比較して、閾値に対する長短に基づいて、トレイの有無を検知する。具体的には、測定距離が閾値より長ければ、トレイが装着されていないことを検知し、測定距離が閾値より短ければ、トレイが装着されていることを検知する。
【0008】
しかしながら、筐体の下部に配置されたトレイの底面と筐体の底面とが非常に近い距離にある場合、上記の測距センサを用いて閾値に対する長短に基づいてトレイの有無を検知するのは非常に困難である。また、上記の光の反射で距離を測るタイプの測距センサは、外部環境(温湿度、周りの壁、測定対象面の材質など)に影響を受けやすく、上記のような近い距離の差を誤差と区別して検出するのは難しい。
【0009】
そこで、トレイの装着の有無を検知しやすくするために、トレイの底面と筐体の底面との距離を長くすることが考えられる。例えば、筐体の底面に凹部を形成することにより、上記の距離を少しでも長くすることができる。
【0010】
しかしながら、筐体の底部の厚さが限られているため、凹部をより深く形成することによって上記の距離を長くすることにも限界がある。このため、測距センサから筐体の底面までの距離と、測距センサからトレイの底面までの距離とを区別できる程度に深い凹部を形成することは筐体の構造上難しい。
【0011】
本発明の一態様は、トレイの装着の有無をより正確に検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る空気調和機は、第1底面を有する筐体と、前記筐体に着脱可能となるように前記第1底面上に配置され、水を貯留する貯水トレイと、前記第1底面の上方から前記第1底面に向けて直下に出射した光が前記第1底面または前記貯水トレイの第2底面から反射した反射光を受けることにより、前記第1底面または前記第2底面までの距離を測定する測距センサと、を備え、前記第1底面には、前記反射光が前記測距センサに到達する時間を遅延させる光学的効果を生じさせる光学的効果部が設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、トレイの装着の有無をより正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1~3に係る加湿機の外観構成を示す斜視図である。
【
図3】上記加湿機の内部構造を示す分解斜視図である。
【
図5】上記加湿機の下部の構造における一部を示す斜視図である。
【
図6】上記加湿機における制御系の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔加湿機〕
本発明の実施形態1~3に共通して使用する加湿機100の基本構成について、
図1~
図4に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態1~3に係る加湿機100の外観構成を示す斜視図である。
図2は、加湿機100の外観構成を示す正面図である。
図3は、加湿機の内部構造を示す分解斜視図である。
図4は、
図2のA-A線矢視断面図である。
【0017】
図1~
図4に示すように、加湿機100(空気調和機)は、筐体1と、電気稼働部2と、上部カバー3と、貯水トレイ4とを備えている。なお、以降の説明において、
図2に示す筐体1の右側を右部と称し、筐体1の左側を左部と称する。
【0018】
筐体1において、電気稼働部2は上側に配置され、貯水トレイ4は下側に配置されている。筐体1は、電気稼働部2および貯水トレイ4の側部を覆うように形成されている。また、
図2に示すように、筐体1における一方の上部側面には、外部の空気を取り入れる吸気口11が設けられている。
図4に示すように、吸気口11は、グリル12によって通気可能となるように覆われている。
【0019】
電気稼働部2は、電気によって稼働する部分であり、
図3および
図4に示すように、保持フレーム21、シロッコファン22、モータ(図示せず)、ヒータ(図示せず)などを有している。
【0020】
保持フレーム21は、ファン保持部23と、電気部品保持部24とを有している。ファン保持部23は、モータを保持することにより、シロッコファン22を回転可能に保持する部分である。電気部品保持部24は、電気部品であるヒータなどを保持する部分である。
【0021】
保持フレーム21の上端部において、左部側には、加湿された空気を吹き出す吹出口211が設けられ、右部側には、貯水トレイ4に供給する水を流し込む給水口212が設けられている。また、保持フレーム21の右部側には、給水溝213が設けられている。給水溝213は、給水口212から貯水トレイ4の右部側の上端に至る範囲に上下方向に形成されている。このように構成される給水溝213は、筐体1における右部側の内壁とで管状の給水路を形成することによって、給水口212から貯水トレイ4に水を導く。
【0022】
図3に示すように、保持フレーム21の底部において、シロッコファン22によって送られた空気を貯水トレイ4へ放出する通気口214が設けられている。通気口214は、グリル215によって通気可能となるように覆われている。
【0023】
図1に示すように、上部カバー3は、筐体1の上端の開口部に配置されている。上部カバー3は、ディフューザ31と、案内板32と、操作・表示パネル33とを有している。
【0024】
ディフューザ31は、保持フレーム21の吹出口211から吹き出された空気を拡散させるために設けられている。ディフューザ31は、上部カバー3に着脱可能に設けられている。
【0025】
案内板32は、上方から注ぎ込まれる水を保持フレーム21の給水口212に案内するために設けられている。このため、案内板32は、給水口212の側に下り傾斜となるように形成されている。
【0026】
操作・表示パネル33は、ユーザが操作を行うための各種の操作ボタン(運転ボタンなど)と、加湿機100の動作状態(運転ON・OFF、タイマー動作など)を表示するランプ(LED)とを含んでいる。
【0027】
貯水トレイ4は、上述の給水路を介して供給された水を貯留するためのトレイであり、大容量に構成されている。貯水トレイ4には、貯えた水を気化するための気化フィルタ5(
図3)が配置されている。また、貯水トレイ4は、筐体1に着脱可能に設けられており、引き出し形式で筐体1に装着される。貯水トレイ4には、貯水トレイ4を持ち運びするための把手43が設けられている。把手43は、貯水トレイ4の両側壁に回動可能に取り付けられている。
【0028】
上記のように構成される加湿機100においては、シロッコファン22の回転によって発生した送風力によって、筐体1の吸気口11から取り込まれた空気が、ヒータによって加熱されて貯水トレイ4に導かれる。貯水トレイ4においては、気化フィルタ5が、貯えられた水を全体に吸い上げている。貯水トレイ4に導かれた空気は、気化フィルタ5を通過することにより、水分を含んだ状態で放出される。気化フィルタ5に吹き込まれる空気が暖められているため、気化フィルタ5による気化効率を高めることができる。
【0029】
気化フィルタ5を通過した水分を含む空気は、シロッコファン22の背後側の通路(図示せず)を通り抜けて吹出口211に送り出され、ディフューザ31を介して外部に放出される。
【0030】
なお、加湿機100におけるファンは、シロッコファン22には限定されない。ファンとしては、ターボファン、クロスフローファン、軸流ファン、斜流ファンなどを用いてもよい。
【0031】
また、以降に説明する実施形態1~3は、加湿機100に限らず、それぞれ空気調和機である、除湿機、除湿機能および/または加湿機能を有する空気清浄機などにも適用可能である。除湿機は、除湿の結果生じた水を貯留するために貯水トレイ4と同様な貯水トレイを備えている。
【0032】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1について、
図4および
図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0033】
図5は、加湿機100の下部の構造における一部を示す斜視図である。
【0034】
図4に示すように、加湿機100は、測距センサ6を備えている。
【0035】
測距センサ6は、光学式の距離測定センサであり、発光部から光を出射してその光が測定対象面に反射した反射光を受光部で受けるまでの時間に基づいて、測距センサ6から測定対象面までの距離を測定する。測距センサ6としては、ToF(Time of Flight)方式測距センサが用いられる。
【0036】
測距センサ6は、保持フレーム21の底部に配置されている。測距センサ6は、筐体1の底面13(第1底面)に向けて直下に光を照射するように、保持フレーム21の底部に、発光部および受光部を下方に向けて取り付けられている。
【0037】
一方、筐体1の底面13には、測距センサ6からの光が照射される光照射領域に凹部14が形成されている。凹部14は、方形に形成されているが、その形状は方形には限定されない。
【0038】
また、凹部14の底部には、入射光を測距センサ6に向かって反射しないように、測距センサ6からの光の入射方向に対して傾斜する傾斜面14a(光学的効果部)が形成されている。傾斜面14aは、後述するように、傾斜面14aに反射した光が測距センサ6に到達する時間を遅延させる光学的効果を生じさせる。
【0039】
続いて、加湿機100の制御系について説明する。
図6は、その制御系の構成を示すブロック図である。
【0040】
図6に示すように、加湿機100は、制御系として、上述の測距センサ6以外に、記憶部7と、報知部8と、制御部9(トレイ装着判定部)とを備えている。
【0041】
記憶部7は、筐体1の底面13までの距離と、貯水トレイ4の底面44(第2底面)までの距離とを判別するための所定の閾値を記憶している。
【0042】
報知部8は、貯水トレイ4が筐体1に装着されていないことを報知するために設けられている。報知部8は、例えば、貯水トレイ4が筐体1に装着されていないときに、操作・表示パネル33において報知用に設けられた非装着ランプを点灯させる。
【0043】
制御部9は、測距センサ6によって測定された測定対象面(底面13または底面44)までの距離である測定距離と、記憶部7に記憶された閾値とを比較する。制御部9は、その比較の結果、閾値に対する測定距離の長短に基づいて、筐体1における貯水トレイ4の有無を判定する。具体的には、制御部9は、測定距離が閾値より長いときに貯水トレイ4が筐体1に装着されていないと判定する一方、測定距離が閾値より短いときに貯水トレイ4が筐体に装着されていると判定する。なお、ここでは、貯水トレイ4が水を貯えていない空の状態であることを想定している。
【0044】
続いて、上記のように構成される加湿機100による貯水トレイ4の筐体1への装着または非装着の判定動作について説明する。
【0045】
ユーザが加湿機100を使用している状態において、貯水トレイ4が筐体1に装着されていない場合、底面13における凹部14の傾斜面14aが測定対象面となる。この場合は、まず、測距センサ6から出射された光が傾斜面14aに照射される。その光は、傾斜面14aによって、入射方向とは異なる斜めの方向に反射され、貯水トレイ4の内側壁などにも反射されてから測距センサ6に達する。測距センサ6は、傾斜面14aからの反射光を受けて、測定距離を算出して出力する。
【0046】
それゆえ、測距センサ6が光を出射してから反射光を受けるまでの時間が、反射光が測距センサ6に直接戻ってくる場合の時間と比べて長い。したがって、凹部14が傾斜面14aを有することにより、測定距離が測距センサ6と傾斜面14aとの実際の距離よりも長く測定される。
【0047】
制御部9は、測定距離を記憶部7に記憶されている閾値と比較する。この場合、制御部9は、測定距離が閾値より長いと判定することから、貯水トレイ4が筐体1に装着されていないと判定する。制御部9は、この判定に基づいて報知部8に、貯水トレイ4が非装着であることを報知するように指示する。報知部8は、この指示を受けて、操作・表示パネル33における上述の非装着ランプを点灯させる。これにより、ユーザは、貯水トレイ4が非装着であることを認識できる。
【0048】
ユーザが加湿機100を使用している状態において、貯水トレイ4が筐体1に装着されている場合、貯水トレイ4の底面44が測定対象面となる。この場合、測距センサ6からの出射光は、水平面である底面44で反射されると、測距センサ6に直接戻る。測距センサ6は、底面44からの反射光を受けて、測定距離を算出して出力する。
【0049】
制御部9は、測定距離を閾値と比較する。この場合、制御部9は、測定距離が閾値より短いと判定することから、貯水トレイ4が筐体1に装着されていると判定する。制御部9は、この判定に基づいて報知部8に、貯水トレイ4が非装着であることを報知する指示を与えない。したがって、報知部8は、操作・表示パネル33における上述の非装着ランプを点灯させない。これにより、ユーザは、加湿機100が貯水トレイ4の装着された通常の使用状態であることを認識する。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る加湿機100は、筐体1の底面13に、測距センサ6からの光の入射方向に対して傾斜する傾斜面14aを有する凹部14を有している。測距センサ6の出射光をこの傾斜面14aに照射すると、傾斜面14aからの反射光は、上述のように、平坦面からの反射光よりも遅れて測距センサ6に達する。
【0051】
これにより、測距センサ6による測定距離が、測距センサ6と傾斜面14aとの実際の距離よりも長くなる。それゆえ、さらに深く形成した凹部14の底部と測距センサ6との距離を測定した場合と、同等の測定距離が得られる。したがって、筐体1の構造上、凹部14の深さに限界があっても、測距センサ6と傾斜面14aとの測定距離を実際の距離よりも長くすることにより、当該測定距離と、測距センサ6と底面44との測定距離との差を大きくすることができる。よって、筐体1の底部の厚く形成するような加湿機100の大型化を抑えつつ、貯水トレイ4の装着または非装着をより正確に判定することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、測距センサ6が貯水トレイ4の装着または非装着の判定のために用いられている。しかしながら、貯水トレイ4に貯えられた水の水位を検知するために設けられ測距センサ6を、貯水トレイ4の装着または非装着の判定と兼用してもよい。このように構成する場合、測距センサ6と貯水トレイ4における水面との測定距離が閾値よりも短いので、制御部9は、貯水トレイ4が筐体1に装着されていると判定できる。
【0053】
ここで、具体例について説明する。なお、以下に挙げる距離の値は、一例であって本発明を限定するものではない。
【0054】
測距センサ6と貯水トレイ4の底面44との距離が20cmであるとすると、測距センサ6を構成するToFセンサの測定距離には、20cmの距離の測定において±0.5cmの誤差が現れる可能性がある。このため、光の往復時間で測定される測定距離には、上記の誤差の倍の1cm程度の誤差が含まれる。また、筐体1の底面13と貯水トレイ4の底面44との距離は、およそ1.3cmである。したがって、この距離と上記の誤差との差は僅かである。
【0055】
温度、底面13および底面44に生じた僅かな傷、振動などの影響により、上記の誤差が拡大すると、底面13と底面44との小さい距離差を測距センサ6によって区別できなくなる虞がある。底面13に浅い凹部を設けても、同様に上記の距離差を区別できない可能性が高い。
【0056】
これに対し、本実施形態に係る上述の構成では、傾斜面14aまでの測定距離を実際の距離より長く測定するので、上記の距離差を大きくすることができる。これにより、凹部14が十分に深くなくても、測距センサ6の誤差の影響を受けることなく、筐体1における貯水トレイ4の装着または非装着を判定することができる。また、上記の距離差が大きくなるので、閾値の設定を容易にすることができる。
【0057】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、
図4および
図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。また、本実施形態では、実施形態1と異なる部分について説明する。
【0058】
図4および
図5に示す凹部14の傾斜面14aには、図示しない凹凸(光学的効果部)が形成されている。凹凸の形状としては、シボのような形状などが挙げられるが、特定の形状に限定されない。
【0059】
傾斜面14aに凹凸が形成されることにより、凹凸で光が入射方向とは異なる方向に反射される。それゆえ、反射光が測距センサ6に達する時間をより遅延させることができる。したがって、貯水トレイ4の有無検知をより高精度に行うことができる。
【0060】
なお、傾斜面14aを有する凹部14に代えて平坦面を有する凹部を底面13に設ける構成において、平坦面に凹凸が形成されてもよい。このような構成においても、反射光が測距センサ6に直接達しないので、測定距離を長くすることができる。それゆえ、測距センサ6の誤差の影響を受けることなく貯水トレイ4の有無検知を行うことができる。
【0061】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、
図4および
図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。また、本実施形態では、実施形態1と異なる部分について説明する。
【0062】
図4および
図5に示す凹部14の傾斜面14aには、光吸収性の高い色が付されている。傾斜面14aに付される色としては、測距センサ6が発する光の波長に対する吸収率が高い色が選ばれる。例えば、黒は、光の波長に関わらず、ほぼ同じ吸収率を示すので、光の波長に左右されないという観点から、傾斜面14aに付される色として好ましい。また、傾斜面14aに付される色としては、光を反射しにくいという観点から、暗色系の色が好ましく、黒がより好ましい。
【0063】
ただし、傾斜面14aに付される色は、筐体1の色および貯水トレイ4の色が明るい色である場合、この色とは異なる色であることが好ましい。
【0064】
傾斜面14aが光吸収性の高い色を付された着色部(光学的効果部)であることにより、傾斜面14aでは、直進する反射光の量が減少することによって、乱反射光の割合が大きくなる。これにより、反射光が測距センサ6に達する時間をより遅延させることができる。したがって、貯水トレイ4の有無検知をより高精度に行うことができる。
【0065】
なお、傾斜面14aを有する凹部14に代えて平坦面を有する凹部を底面13に設ける構成において、平坦面に上記のような色が付されてもよい。このような構成においても、測距センサ6に直接到達する反射光の割合が少ないので、測距センサ6が当該反射光を検出できず、乱反射光を検出する。それゆえ、測定距離を長くすることができる。したがって、測距センサ6の誤差の影響を受けることなく貯水トレイ4の有無検知を行うことができる。
【0066】
なお、本実施形態の構成を、上述の実施形態2の構成に適用してもよい。
【0067】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る空気調和機は、第1底面(底面13)を有する筐体1と、前記筐体1に着脱可能となるように前記第1底面上に配置され、水を貯留する貯水トレイ4と、前記第1底面の上方から前記第1底面に向けて直下に出射した光が前記第1底面または前記貯水トレイ4の第2底面(底面44)から反射した反射光を受けることにより、前記第1底面または前記第2底面までの距離を測定する測距センサ6と、を備え、前記第1底面には、前記反射光が前記測距センサ6に到達する時間を遅延させる光学的効果を生じさせる光学的効果部が設けられている。
【0068】
上記の構成によれば、第1底面からの反射光は、光学的効果の影響を受けて、通常よりも遅れて測距センサに達する。これにより、第1底面までの距離の測定値(測定距離)が、実際の距離よりも長くなる。それゆえ、測定距離を長くするために第1底面に凹部を深く形成した状態での凹部までの測定距離と同等の測定距離が得られる。このため、筐体の構造上、底面に形成できる凹部の深さに限界があっても、第1底面までの測定距離と、第2底面までの測定距離との差がより大きくなる。したがって、測距センサの測定誤差の影響を受けることなく、貯水トレイの装着または非装着を判定することができる。
【0069】
よって、筐体の大型化を抑えつつ、貯水トレイの装着または非装着をより確実に判定することができる。
【0070】
本発明の態様2に係る空気調和機は、上記態様1において、前記光学的効果部が、前記第1底面において光が照射される光照射領域に形成された凹部14であり、前記凹部14が、光の入射方向に対して傾斜する傾斜面14aをその底部に有していてもよい。
【0071】
上記の構成によれば、傾斜面に入射した光は、入射方向とは異なる斜めの方向に反射され、貯水トレイの内側壁などにも反射されてから測距センサに達する。これにより、反射光が測距センサに到達する時間を遅延させることができる。
【0072】
本発明の態様3に係る空気調和機は、上記態様1または2において、前記光学的効果部が、前記第1底面において光が照射される光照射領域に形成された凹凸であってもよい。
【0073】
上記の構成によれば、傾斜面に入射した光は、入射方向とは異なる斜めの方向に反射され、貯水トレイの内側壁などにも反射されてから測距センサに達する。これにより、反射光が測距センサに到達する時間を遅延させることができる。
【0074】
本発明の態様4に係る空気調和機は、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記光学的効果部は、前記第1底面において光が照射される光照射領域に光吸収性の高い色が付された着色部であってもよい。
【0075】
上記の構成によれば、光が着色部に入射するとその多くが着色部に吸収されるので、直進する反射光の量が減少することによって、乱反射光の割合が大きくなる。これにより、反射光が測距センサに達する時間をより遅延させることができる。
【0076】
本発明の態様5に係る空気調和機は、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記測距センサ6によって測定された、前記第1底面および前記第2底面を含む測定対象面までの距離と、所定の閾値とを比較して、前記距離が前記閾値より長いときに前記貯水トレイ4が前記筐体1に装着されていないと判定する一方、前記距離が前記閾値より短いときに前記貯水トレイ4が前記筐体1に装着されていると判定するトレイ装着判定部(制御部9)をさらに備えていてもよい。
【0077】
上記の構成によれば、光が着色部に入射するとその多くが着色部に吸収されるので、直進する反射光の量が減少することによって、乱反射光の割合が大きくなる。これにより、反射光が測距センサに達する時間をより遅延させることができる。
【0078】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 筐体
4 貯水トレイ
6 測距センサ
13 底面(第1底面,測定対象面)
14 凹部
14a 傾斜面(光学的効果部,着色部)
44 底面(第2底面,測定対象面)
100 加湿機(空気調和機)