(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】長鎖一本鎖DNAを調製する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20230703BHJP
C12P 19/34 20060101ALI20230703BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20230703BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20230703BHJP
【FI】
C12N15/10 Z ZNA
C12P19/34 A
C12N15/63 Z
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2022000190
(22)【出願日】2022-01-04
(62)【分割の表示】P 2018528117の分割
【原出願日】2016-07-19
【審査請求日】2022-01-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年01月20日、ssODN-mediated knock-in with CRISPR-Cas forlarge genomic regions in zygotes. Nat Commun.20;7:10431にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年02月09日、株式会社バイオダイナミクス研究所の販売担当者が、自社にて、長洞 仁が発明した長鎖一本鎖DNAを調製する方法に係るキット(DS620 Long ssDNA Preparation Kit for 3.0kb(LsODN Preparation Kit))を販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年04月15日、フナコシニュース2016年04月15日号(No.609),pp.3,32にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年06月01日、フナコシニュース2016年06月01日号(No.612),p.9にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年05月26日、ゲノム編集2016(Genome Editing 2016の可能性)中央大学駿河台記念館2階281号室にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年02月26日、ウェブサイトhttps://www.funakoshi.co.jp/contents/64803にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年02月16日、ウェブサイトhttps://www.funakoshi.co.jp/contents/80479にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年04月、ウェブサイトhttps://fnkprddata.blob.core.windows.net/domestic/download/pdf/BDL._slODN_ex_flyer.pdfにて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年04月、ウェブサイトhttp://www.diagnocine.com/download/lsODNkit.pdfにて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年04月、ウェブサイトhttp://www.bio-rev.com/wp-content/uploads/2010/11/BDL_160401_BR_lsODNkit.pdfにて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年03月15日、ウェブサイトhttp://m.blog.naver.com/ostrich74/220655319395にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年03月15日、ウェブサイトhttp://blog.naver.com/ostrich74/220655319395にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年05月17日、ウェブサイトhttp://m.blog.daum.net/coresciences/108?categoryId=2にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年03月、ウェブサイトhttp://www.ibric.org/myboard/read.php?Board=new_protech&id=135251にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年03月11日、ウェブサイトhttp://www.biodynamics.co.jp/prd_ds610.htmにて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年03月11日、ウェブサイトhttp://www.biodynamics.co.jp/e/prd_ds610.htmにて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】502418929
【氏名又は名称】株式会社バイオダイナミクス研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】長洞 仁
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-523700(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0268507(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0323795(US,A1)
【文献】特表2008-511308(JP,A)
【文献】実験医学 2008年4月号、連載 効率の上がる核酸実験法、第4回 電気泳動における変性剤としての尿素の役割、[online],[検索日:2022年12月27日]、インターネット:<https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/nucleic_acid/vol4.html>
【文献】生物物理化学、2008,52,133-138頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本鎖DNAから一本鎖DNAを
調製する方法であって、
(1)(a)両端にそれぞれ少なくとも1つのニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を有する目的のDNA鎖を有する二本鎖DNAであって、前記目的のDNA鎖は前記ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を認識するニッキングエンドヌクレアーゼによって同一鎖が切断される前記二本鎖DNA、または(b)一端に少なくとも1つのニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位と、他端に少なくとも1つの配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ認識部位とを有する目的のDNA鎖を有する二本鎖DNAを提供する工程と、
(2)前記ニッキングエンドヌクレアーゼによって(a)の二本鎖DNAを切断し、または前記ニッキングエンドヌクレアーゼ及び前記配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ認識部位を認識する配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼによって(b)の二本鎖DNAを切断し、分子量の異なる少なくとも3種類の一本鎖DNAを生成する工程と、
(3)前記少なくとも3種類の一本鎖DNAに適当量の変性剤を添加して、前記一本鎖DNAを変性させる工程と、
(4)前記変性させた少なくとも3種類の一本鎖DNAと前記変性剤とを電気泳動ゲルへロードし、該電気泳動ゲル中でのゲル電気泳動によって一本鎖の状態で
分離させ、
目的の一本鎖DNAを含むバンドから一本鎖DNAを抽出することで目的の一本鎖DNAを
調製する工程と
を有し、前記(1)~(4)までの工程において、前記目的の一本鎖DNAを
調製するゲル電気泳動は前記(4)の工程のみで行う、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、二本鎖DNAが環状二本鎖DNAである方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、二本鎖DNAがOriを有する環状二本鎖DNAである方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、二本鎖DNAがプラスミドDNAである方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、
前記(1)の工程は、前記(a)であり、ここで、前記両端にそれぞれ少なくとも1つのニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位は、互いにタイプの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位であり、
前記(2)の工程は、タイプの異なるニッキングエンドヌクレアーゼによって(a)の二本鎖DNAを切断する方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、目的のDNA鎖の長さが200塩基以上である方法。
【請求項7】
請求項
1記載の方法において、
前記(4)の工程は、前記
目的の一本鎖DNAを、非変性ゲルを用いたアクリルアミドゲル電気泳動又は非変性ゲルを用いたアガロースゲル電気泳動によって
調製する工程である、方法。
【請求項8】
請求項
1記載の方法において、前記ゲル電気泳動が、変性剤を含まない非変性アガロースゲル電気泳動、変性剤を含む変性アガロースゲル電気泳動、変性剤を含まない非変性アクリルアミドゲル電気泳動、または変性剤を含む変性アクリルアミドゲル電気泳動である、方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記ゲル電気泳動が、アガロースゲル電気泳動である方法。
【請求項10】
請求項
7記載の方法において、前記非変性ゲルは、前記(2)の工程で切断した二本鎖DNAの水素結合を切断して一本鎖へ乖離させる作用を持たないゲルである、方法。
【請求項11】
請求項
7記載の方法において、前記(3)の工程の前に脱塩を行う、方法。
【請求項12】
請求項
1記載の方法において、前記変性剤が、ホルムアミド、グリセロール、ウレア、チオウレア、エチレングリコール、または水酸化ナトリウムである、方法。
【請求項13】
請求項
12記載の方法において、前記変性剤が、50%以上のグリセロールである、方法。
【請求項14】
請求項
12記載の方法において、前記変性剤が、25%のホルムアミド又は6Mのウレアである、方法。
【請求項15】
請求項
1記載の方法に用いるキットであって、(a)クローニング部位の両端にそれぞれ少なくとも1つのニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を有するプラスミドであって、前記ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を認識するニッキングエンドヌクレアーゼによって同一鎖が切断されるプラスミド、及び(b)クローニング部位の一端に少なくとも1つのニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位と、前記クローニング部位の他端に少なくとも1つの配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ認識部位と、を有するプラスミドから選択される少なくとも1つのプラスミドと、
DNAの変性のための変性剤を含有する試薬と、を有する、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長鎖の一本鎖DNAを調製する方法に関する。具体的には、本発明は、ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を有するベクターまたは目的のDNA鎖を用いて、当該認識部位を切断することにより、長鎖の一本鎖DNAを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一本鎖DNAは、DNAシークエンス、SNP解析、DNAチップ、SSCP分析SELEXなど、多くの分子生物学的実験に用いられている。その調製にはいくつかの手法が用いられており、大別して4種類の手法が知られている。1つ目は化学合成であり、近年、DNAの化学合成法が改善され、一本鎖のDNAも安価に作成できるようになっている(非特許文献1)。2つ目はλエキソヌクレアーゼを用いる手法であり、リン酸化DNAオリゴマーを用いたPCR反応によって一方の鎖の5’末端のみにリン酸を導入し、λエキソヌクレアーゼによって当該リン酸化した一方の鎖のみを分解することにより、分解されずに残ったもう一方の一本鎖DNAを取得できる(非特許文献2)。3つ目はビオチンを用いる手法であり、ビオチン化DNAオリゴマーを用いたPCR反応によって一方の鎖のみにビオチンを導入し、アルカリ変性した後、アビジン被覆磁性ビーズで目的の鎖のみを回収できる(非特許文献3)。4つ目はRNAを用いる手法であり、RNAを出発材料にして、逆転写酵素によって一本鎖DNAを取得した後、RNAをRNaseで分解することにより、一本鎖DNAを取得できる(非特許文献4)。
【0003】
しかし、上述の各手法には、実際の分子生物学的実験に用いる際にいくつかの問題点があった。例えば、1つ目の化学合成を用いた場合には、合成可能な塩基の長さは200塩基程度が限界であり(非特許文献1)、この長さは、一般的な大きさの遺伝子全体(1,000塩基前後)をコードさせるには短すぎる(非特許文献5)。また、化学合成はエラー率が非常に高いことが知られており、原核生物や真核生物の複製機構のエラー率は10-7~10-8であるものの、化学合成で作成した典型的な人工遺伝子のエラー率は10-2~10-3である(非特許文献6)。この値から計算すると、生物が200塩基の2本鎖DNAを作った場合は、99.998%~99.9998%が正しい配列であるが、同じく200塩基の2本鎖DNAを化学合成オリゴマーから作成した場合には、正しい配列を持つものはわずか13.4%~81.9%しかない。また、この人工合成遺伝子のエラー率は、現在用いることのできる種々のエラー除去技術を駆使した上での結果であり、単純に200塩基の長鎖一本鎖DNAを化学合成した場合には、この数値よりも高いエラー率となってしまう(非特許文献6)。
【0004】
また、2つ目のλエキソヌクレアーゼを用いる手法では、上記のとおり正確性の高いわけではない合成DNAオリゴマーを用いなくてはならないことに加えて、PCRを行うことに伴って目的の一本鎖DNAに変異が導入されてしまう、λエキソヌクレアーゼの副反応によって目的の一本鎖DNAも分解を受けてしまう、及びλエキソヌクレアーゼの反応が完結せずに2本鎖DNAが残存してしまうなどの問題がある(非特許文献2)。
【0005】
3つ目のビオチンを用いる方法では、2つ目の手法と同様に、正確性の高いわけではない合成DNAオリゴマーを用いなくてはならないことに加えて、PCRを行うことに伴って目的の一本鎖DNAに変異が導入されてしまう可能性があり、また、アルカリ変性後のアビジン被覆磁性ビーズで目的の鎖のみを回収する際に、変性が十分ではなく2本鎖DNAが残存してしまうなどの問題がある(非特許文献3)。
【0006】
4つ目のRNAを用いる手法でも、上記の手法と同様に、正確性の高いわけではない合成DNAオリゴマーを逆転写反応のプライマーとして用いなくてはならないことに加えて、逆転写酵素による逆転写反応の正確性は、Taq DNA ploymeraseを用いた場合の正確性と同程度であり、決して高いものではなく、変異が導入されてしまう可能性があり、また、その全体の工程は、転写によるRNAの取得、逆転写酵素によるcDNAの作出、及びRNaseによるRNAの分解となっており、複雑かつ煩雑な手順が必要となっており、その工程の途中において、逆転写反応が完結せずに途中で止まってしまったもの、すなわち5’末端に欠失を有するものができあがってしまい、正常なものと欠失を有するものとの混合物になるなどの問題があった(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Kosuri S, Church GM (2014) Large-scale de novo DNA synthesis: technologies and applications. Nat Methods. 11(5):499-507.
【文献】Wakimoto Y, Jiang J, Wakimoto H. (2014) Isolation of single-stranded DNA. Curr Protoc Mol Biol. 1;107:2.15.1-9.
【文献】Avci-Adali M, Paul A, Wilhelm N, Ziemer G, Wendel HP. (2009) Upgrading SELEX technology by using lambda exonuclease digestion for single-stranded DNA generation. Molecules. 24;15(1):1-11.
【文献】Miura H, Gurumurthy CB, Sato T, Sato M, Ohtsuka M. (2015) CRISPR/Cas9-based generation of knockdown mice by intronic insertion of artificial microRNA using longer single-stranded DNA. Sci Rep. 10.1038/srep12799.
【文献】Mashiko D1, Young SA, Muto M, Kato H, Nozawa K, Ogawa M, Noda T, Kim YJ, Satouh Y, Fujihara Y, Ikawa M. (2014) Feasibility for a large scale mouse mutagenesis by injecting CRISPR/Cas plasmid into zygotes. Dev Growth Differ. 56(1):122-9
【文献】Ma S, Saaem I, Tian J. (2012) Error correction in gene synthesis technology. Trends Biotechnol. 30(3):147-54.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年、ゲノム編集技術の発展に伴い、上述の手法では取得できない長鎖の一本鎖DNAの需要が高まっている(非特許文献4)。例えば、ラットやマウスを含む動物の受精卵を用いたゲノム編集においては、CRISPR-CASまたはTALENを用いて、ゲノム上の特定の位置や特定の遺伝子を破壊(knock out)したり、さらにはssODN(single-strand oligodeoxynucleotide; 短鎖一本鎖DNA)をドナーとして用いることによって、塩基置換やSNP変異などの小さな領域における正確な改変や導入(knock in)が行われるようになっている。その一方で、より大きな領域の改変、すなわち特定の遺伝子全体を導入したり、機能解析のためのGFPやCreリコンビナーゼなどの遺伝子全体を導入したいといった要望も存在している。
【0009】
受精卵を用いたゲノム編集の場合、細胞を用いたゲノム編集の場合のような薬剤による選択を行うことができないことから、効率よくゲノム編集を行うためには、knock in自体の効率を上げる必要がある。しかし、従来のssODNをドナーとして用いる方法は、確かに二本鎖DNAをドナーとして用いる方法に比べて導入効率が非常に高く、有用であるものの、上述のように200塩基以上の長さの一本鎖DNAを正確に作製することは技術的に困難であるため(非特許文献4)。そのため、仮に200塩基以上の長さの一本鎖DNAを作成できたとしても、二本鎖DNAが混入していたり、末端や内部に変異が導入されていたり、不均一なものであったりと、受精卵に導入するためには質的な問題を乗り越える必要があった。
【0010】
また、ゲノム編集によって目的のDNAをknock inする場合、二本鎖DNAが混入していると、ゲノム上の目的箇所以外の場所への二本鎖DNAの組み込みが起こってしまうという問題が指摘されている(非特許文献5)。
【0011】
さらに、ゲノム編集によって目的のDNAをknock inする場合、その導入効率は高くても10%~20%程度であり、受精卵を用いる場合には、個体を得るのに1ヶ月~2ヵ月を要する。また、細胞ではなく個体を扱うものであるため、手間も余計にかかってしまう。したがって、受精卵を用いたゲノム編集の基礎となるはずの一本鎖DNAに高い割合で変異や欠失が起きてしまっていては、正確なknock in個体を得るためには、大きな労力を費やしてしまうことになる。
【0012】
そのため、正確な配列を有し、均一かつ二本鎖DNAが混入しない、長鎖一本鎖DNAを調製する方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、長鎖一本鎖DNAを調製する際に、ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を用いることにより、分子生物学的実験において多用され、また、ゲノム編集の分野でも望まれている正確な長鎖一本鎖DNAを調製する方法を提供することを目的とする。
【0014】
本発明者らは、このような課題を解決するために、二本鎖DNAを元にして目的の長鎖一本鎖DNAを調製できるかどうかを検討した。そして鋭意研究を重ねた結果、目的の一本鎖DNAを有する二本鎖DNAをクローニングしたベクターに、ニッキングエンドヌクレアーゼを用いてニックを導入することにより、二本鎖DNAを変性ないし分離させて目的の長鎖一本鎖DNAを調製することができることを見出した。
【0015】
具体的には、本発明の第一の主要な観点によれば、長鎖一本鎖DNAを調製する方法であって、(1)(a)クローニング部位の両端にそれぞれ少なくとも1つのニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を有するベクターであって、前記ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を認識するニッキングエンドヌクレアーゼによって同一鎖が切断されるベクター、または(b)クローニング部位の一端に少なくとも1つのニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位と、前記クローニング部位の他端に少なくとも1つの配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ認識部位とを有するベクターに、目的のDNA鎖をクローニングする工程と、(2)前記ニッキングエンドヌクレアーゼによって、前記目的のDNA鎖がクローニングされた(a)のベクターを切断し、または前記ニッキングエンドヌクレアーゼ及び前記配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ認識部位を認識する配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼによって、前記目的のDNA鎖がクローニングされた(b)のベクターを切断し、分子量の異なる少なくとも3種類の一本鎖DNAを生成する工程と、(3)前記少なくとも3種類の一本鎖DNAに適当量の変性剤を添加して、前記一本鎖DNAを変性させる工程と、
(4)前記変性させた少なくとも3種類の一本鎖DNAを任意の分離手段によって分離させ、目的の一本鎖DNAを調製する工程とを有する、方法が提供される。
【0016】
また、本願発明の第二の主要な観点によれば、長鎖一本鎖DNAを調製する方法であって、(1)(a)両端にそれぞれ少なくとも1つのニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を有する目的のDNA鎖であって、前記ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を認識するニッキングエンドヌクレアーゼによって同一鎖が切断される目的のDNA鎖、または(b)一端に少なくとも1つのニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位と、他端に少なくとも1つの配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ認識部位とを有する目的のDNA鎖を、ベクターにクローニングする工程と、(2)前記ニッキングエンドヌクレアーゼによって、(a)の目的のDNA鎖がクローニングされたベクターを切断し、または前記ニッキングエンドヌクレアーゼ及び前記配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ認識部位を認識する配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼによって、(b)の目的のDNA鎖がクローニングされたベクターを切断し、分子量の異なる少なくとも3種類の一本鎖DNAを生成する工程と、(3)前記少なくとも3種類の一本鎖DNAに適当量の変性剤を添加して、前記一本鎖DNAを変性させる工程と、(4)前記変性させた少なくとも3種類の一本鎖DNAを任意の分離手段によって分離させ、目的の一本鎖DNAを調製する工程とを有する、方法が提供される。
【0017】
このような構成によれば、変異や末端の欠失がなく、正確な配列を有し、二本鎖DNAを混入することなく、数千塩基までの均一の長さの形の一本鎖DNAを提供することができる。
【0018】
また、本願発明の一実施形態によれば、上述の方法において、前記目的のDNA鎖が200塩基以上であることが好ましい。また、本発明の他の一実施形態によれば、前記目的のDNA鎖は、少なくとも300塩基、少なくとも400塩基、少なくとも500塩基、少なくとも600塩基、少なくとも700塩基、少なくとも800塩基、少なくとも900塩基、または少なくとも1000塩基である。
【0019】
また、本願発明の別の一実施形態によれば、前記任意の分離手段はゲル電気泳動である。この場合、ゲル電気泳動としては、変性剤を含まない非変性アガロースゲル電気泳動、変性剤を含む変性アガロースゲル電気泳動、変性剤を含まない非変性アクリルアミドゲル電気泳動、または変性剤を含む変性アクリルアミドゲル電気泳動が好ましい。
【0020】
さらに、本発明の別の一実施形態によれば、前記任意の分離手段はゲルカラムクロマトグラフィーである。この場合、本発明の一実施形態によれば、ゲルカラムクロマトグラフィーとしては、ゲル濾過カラムクロマトグラフィー、イオン交換ゲルカラムクロマトグラフィー、またはアフィニティーゲルカラムクロマトグラフィーが好ましい。
【0021】
また、本発明の一実施形態によれば、前記ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の塩基数は、少なくとも3塩基である。また、本発明の他の一実施形態によれば、前記ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位の塩基数は、3塩基、4塩基、5塩基、6塩基、または7塩基が好ましい。この場合、本発明の一実施形態によれば、ニッキングエンドヌクレアーゼとしては、Nb.BbvCI、Nb.BsmI、Nb.BtsI、Nb.BsrDI、Nt.BspQI、Nt.BbvCI、Nt.AlwI、Nt.BsmAI、Nt.BstNBI、Nt.CviPII、Nb.Mva1269I、Nt.Bpu10I、またはNb.BssSIが好ましい。
【0022】
また、本発明の他の一実施形態によれば、前記ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位には、ガイドRNAが結合することができる。この場合、前記ニッキングエンドヌクレアーゼは、Cas9のD10A変異体であることが好ましい。
【0023】
さらに、本発明の他の一実施形態によれば、前記配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ認識部位は、制限酵素およびメガヌクレアーゼからなる群から選択される酵素、またはTALENの認識部位とすることができる。この場合、前記メガヌクレアーゼは、I-CeuI、I-SceI、PI-PspI、またはPI-SceIであることが好ましい。
【0024】
さらに、本発明の他の一実施形態によれば、前記配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ認識部位には、ガイドRNAまたはガイドDNAが結合することができる。この場合、
前記配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼは、Cas9またはArgonauteであることが好ましい。
【0025】
また、本発明の別の一実施形態によれば、前記変性剤は、ホルムアミド、グリセロール、ウレア、チオウレア、エチレングリコール、または水酸化ナトリウムである。また、この場合、前記変性剤は、ホルムアミドまたはグリセロールが好ましい。
【0026】
また、本願発明の第三の主要な観点によれば、上述の本願発明の第一または第二の主要な観点の方法に用いるキットであって、(a)クローニング部位の両端にそれぞれ少なくとも1つのニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を有するベクターであって、前記ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を認識するニッキングエンドヌクレアーゼによって同一鎖が切断されるベクター、及び(b)クローニング部位の一端に少なくとも1つのニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位と、前記クローニング部位の他端に少なくとも1つの配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ認識部位とを有するベクターから選択される少なくとも1つのベクターを有する、キットが提供される。
【0027】
また、本願発明の一実施形態によれば、上述のキットであって、さらに、DNAの変性のための変性剤を含有する試薬を有する、キットが提供される。
【0028】
さらに、本願発明の第四の主要な観点によれば、上述の本願発明の第二の主要な観点の方法に用いるキットであって、ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を含まないベクターを有する、キットが提供される。
【0029】
また、本願発明の別の一実施形態によれば、上述のキットであって、さらに、DNAの変性のための変性剤を含有する試薬を有する、キットが提供される。
【0030】
なお、上記した以外の本発明の特徴及び顕著な作用・効果は、次の発明の実施形態の項及び図面を参照することで、当業者にとって明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本願発明の一実施形態に係る方法の概念模式図である。
【
図2】
図2は、本願発明の一実施形態に係る方法において用いられるベクターのプラスミドマップ(
図2A)、当該ベクターにおけるマルチクローニングサイト(
図2B)、一本鎖DNAを取得するためのクローニングの際の酵素の組合せ(
図2C)、及び全配列(
図2D、配列ID番号1)を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本願発明の一実施形態に係る方法において用いられる、λファージDNA由来の目的DNA断片の配列(1,500bp、配列ID番号2)である。
【
図4】
図4は、本願発明の一実施形態に係る方法を用いて得た電気泳動の結果である。2ヶ所のニックを導入したpLSODN-1(1.5kb断片)プラスミドにホルムアミドを加え、熱変性の後、1.2%濃度の非変性のアガロースゲルで1×TAE緩衝液を泳動液として電気泳動した。レーン1には10μg、レーン2には5μgのプラスミドをロードした。
【
図5】
図5は、本願発明の一実施形態に係る方法を用いて得た電気泳動の結果である。各レーンは、それぞれ、2ヶ所のニックを導入したpLSODN-1(1.5kb断片)プラスミド(200ng:レーン1)、及び精製した1.5kb長鎖一本鎖DNA(200ng:レーン2)である。
【
図6】
図6は、本願発明の一実施形態に係る方法において用いられるクローニングベクターpETUK (del)のプラスミドマップ(
図6A)、マルチクローニングサイトの配列(
図6B)、及び全配列(
図6C、配列ID番号3)を示す。
【
図7】
図7は、GFP遺伝子の全域配列(720塩基、配列ID番号4)である。
【
図8】
図8は、本願発明の一実施形態に係る方法を用いて得た電気泳動の結果である。2ヶ所のニックを導入したpETUK(GFP-Tyr)プラスミドにホルムアミドを加え、熱変性の後、1.0%濃度の4Mウレアアガロースゲルで同じく4Mウレア1×TAE緩衝液を泳動液として電気泳動した。レーン1がDynaMarker DNA High、レーン2がエンドヌクレアーゼ処理していないpETUK(GFP-Tyr)、レーン3がエンドヌクレアーゼ処理したpETUK(GFP-Tyr)である。
【
図9】
図9は、本願発明の一実施形態に係る方法を用いて得た、精製したGFP遺伝子の長鎖一本鎖DNA(759塩基、100ng)の電気泳動の結果である。
【
図10】
図10は、本願発明の一実施形態における、種々の変性剤を用いた場合の、2ヶ所のニックを導入したプラスミドの非変性ゲルでの電気泳動の結果である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本願発明に係る一実施形態および実施例を、図面を参照して説明する。
本願発明の一実施形態に係る長鎖一本鎖DNAを調製する方法は、上述したように、ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位、またはニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位および配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ認識部位を有するベクターを用いて目的DNAをクローニングし、適切な酵素を用いて切断し、電気泳動し、その後、目的の一本鎖DNAを含むゲルを切り出すことにより、目的の長鎖一本鎖DNAを調整する。
【0033】
また、本願発明の他の一実施形態に係る長鎖一本鎖DNAを調製する方法では、ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位、またはニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位および配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ認識部位を有する目的DNAを用いて、クローニングベクターにクローニングし、適切な酵素を用いて切断し、電気泳動し、その後、目的の一本鎖DNAを含むゲルを切り出すことにより、目的の長鎖一本鎖DNAを調整する。
【0034】
上述の従来の一本鎖DNA調製の4種類の手法の問題点を整理すると、(1)長鎖一本鎖DNAの取得の困難さの問題、(2)内部変異や末端の欠失など配列の正確性とサイズの不均一性の問題、(3)二本鎖DNAの混入の問題、(4)操作工程の煩雑さの問題、が挙げられる。本願発明に係る方法よれば、以下のように、いずれも従来の手法よりも優れたものであることが容易に理解できる。
【0035】
まず、(1)の一本鎖DNAの長さの問題については、本願発明に係る方法では、ニッキングエンドヌクレアーゼ、またはニッキングエンドヌクレアーゼと配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼとにより分子量の異なる3種類のDNA分子を生成し、その後、変性ないし分離することよって、目的の長鎖一本鎖DNAの調製を可能にしている。そして、後述の問題(3)のとおり、本願発明に係る方法では、目的の長鎖一本鎖DNAに他のDNA分子が混入することを防ぐため、分離のためにゲル電気泳動を用いる場合、目的の長鎖一本鎖DNAの大きさは、ベクターの約半分程度の大きさとすることが好ましい。すなわち、目的の長鎖一本鎖DNAが電気泳動の際にゲルの先端まで流れ、他のDNA分子と十分な距離が得られるようにして、目的のバンドのみを切り出すことを可能にしている。このような長さの制約があったとしても、例えば1万2千塩基程度のベクターを使用する場合、6千~7千塩基程度の長さの一本鎖DNAを調製することができる。このような長さの一本鎖DNAは、上述の従来の方法では得られない長さであり、また1つの構造遺伝子をコードする配列として充分な長さである。また理論的には、コスミドベクター(30kbp~45kbp)、BACベクター(~300kbp)、またはYACベクター(数Mbp)を使用する場合には、本願発明に係る方法によって、より大きな長鎖一本鎖DNAを調製することができる。
【0036】
次に、(2)の内部変異や末端の欠失の問題について、本願発明に係る方法によって調製される一本鎖DNAは、ベクターにクローニングされたDNA由来であるため、そのエラー率は、原核生物の複製機構のエラー率10-7~10-8と同程度であり、一本鎖DNAの通常の使用には無視できるほど小さい(非特許文献6)。また、本願発明に係る方法によって調製される一本鎖DNAが、塩基認識の正確性の高い制限酵素などの配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼや、制限酵素に由来するニッキングエンドヌクレアーゼによって調製されるものであるため、変異や末端の不均一性も通常の実験には無視できる範囲である。
【0037】
また、(3)の二本鎖DNAの混入の問題については、本願発明に係る方法によれば、電気泳動に際して、目的の一本鎖DNAの大きさをベクターの半分程度の大きさとし、かつ目的の一本鎖DNAがゲルの先端まで流れるように目的の一本鎖DNAの分子量を調製し、目的の一本鎖DNAと他のDNAとが充分に分離するように電気泳動を行えば、二本鎖DNAの混入は起こらない。
【0038】
そして、(4)の操作工程の煩雑さの問題については、本願発明に係る方法は非常に単純な原理を利用するものあるため、本願発明によれば、ベクターにクローニングさえされていれば、ニッキングエンドヌクレアーゼによる切断から電気泳動、バンドの切り出し抽出までを、半日、長くても一日で終えることができる。
【0039】
本願発明の一実施形態に係る方法の一連の流れを示す模式図を
図1に示した。まず、
図1Aにおいて、同一鎖側を切断できる向きでニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を有するベクターDNAに、長鎖一本鎖DNAとなる目的のDNAを、その両端に前記ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位が配置されるようにクローニングし、または同一鎖側を切断できる向きでニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位および配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ認識部位を有するベクターDNAに、長鎖一本鎖DNAとなる目的のDNAを、その両端に前記ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位および配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ認識部位がそれぞれ配置されるようにクローニングする。この際、ベクターDNAは、そのクローニング部位の両端に、複数のニッキングエンドヌクレアーゼまたは配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼの認識部位を有していてもよい。
【0040】
また、本願発明の一実施形態において、ニッキングエンドヌクレアーゼまたは配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼの認識部位は、ベクターDNAの代わりに、クローニングされる目的のDNAの両端に備えるようにすることもできる。
【0041】
続いて、
図1Bにおいて、ベクターDNAまたは目的のDNAが有するニッキングエンドヌクレアーゼ、またはニッキングエンドヌクレアーゼ及び配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼを用いて、上述の目的のDNAがクローニングされたベクターを切断する。これにより、分子量の異なる3つの一本鎖DNAが生成される。なお、切断のための酵素としてニッキングエンドヌクレアーゼのみを用いた場合には2つの直鎖状配列および1つの環状配列が生成され、ニッキングエンドヌクレアーゼと配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼとを用いた場合には3つの直鎖状配列が生成されることになる。
【0042】
ニッキングエンドヌクレアーゼや配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼを用いてベクターを切断しただけでは、その切断された配列は完全な一本鎖の状態になっているわけではなく、その相補鎖と水素結合によって結合している状態である。そのため、ニッキングエンドヌクレアーゼや配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼを用いてベクターを処理した後、上記のようにして得た試料に変性剤を加え、適当な処理を行い変性させて完全な一本鎖DNAの状態にさせる。そして、分子量の異なる3つの一本鎖DNAをアガロースゲル電気泳動に供し、分子量によって分離させる(
図1C)。この際、「適当な処理」としては、熱処理、インキュベーション、オーバーナイトで静置などが挙げられるが、変性剤によって分子量の異なる3つの一本鎖DNAが変性ないし分離するものであれば、これらに限られるものではない。このようにして分子量の異なる3つの一本鎖DNAを分離させた後、目的の一本鎖DNAのバンドを含むゲル片を切り出し、抽出することによって目的の一本鎖DNAを調製することができる(
図1D)。
図1Bからも明らかなとおり、本願発明によって分子量の異なる3つの一本鎖DNAを生成すると、目的の一本鎖DNAは、必ず一番分子量の小さい配列となるため、電気泳動後のゲルの切り出しは、一番下まで流れてきたバンドを切り出せばよい。
【0043】
本願発明において、「ニッキングエンドヌクレアーゼ」とは、ニッキング活性を有するエンドヌクレアーゼであって、特定のヌクレオチド配列を認識して、当該ヌクレオチド配列を有する二本鎖核酸のいずれか一方の鎖のみを切断することができるものをいう。このニッキングエンドヌクレアーゼにより、二本鎖DNAの一方の鎖のホスホジエステル結合が開裂する。このような活性を示す多くのエンドヌクレアーゼは、その認識配列とともに知られており、当業者であれば、これらのエンドヌクレアーゼの中から適宜選択して本願発明に使用することができる。なお、本願明細書では、ニッキングエンドヌクレアーゼを「ニッキング酵素」または「ニッカーゼ」と呼ぶことがあるが、いずれも同意である。
【0044】
本願発明の一実施形態において、ニッキングエンドヌクレアーゼの認識部位の塩基数は、少なくとも3塩基であり、4塩基、5塩基、6塩基、7塩基であっても良い。このようなエンドヌクレアーゼとしては、例えば、Nb.BbvCI(認識部位の塩基数7:5'-GC/TGAGG-3')、Nb.BsmI(認識部位の塩基数6:5'-NG/CATTC-3')、Nb.BtsI(認識部位の塩基数6:5'-NN/CACTGC-3')、Nb.BsrDI(認識部位の塩基数6:5'-NN/CATTGC-3')、Nt.BspQI(認識部位の塩基数7:5'-GCTCTTCN/-3')、Nt.BbvCI(認識部位の塩基数7:5'-CC/TCAGC-3')、Nt.AlwI(認識部位の塩基数5:5'-GGATCNNNN/N-3')、Nt.BsmAI(認識部位の塩基数5:5'-GTCTCN/N-3')、Nt.BstNBI(認識部位の塩基数5:5'-GAGTCNNNN/N-3')、Nt.CviPII(認識部位の塩基数3:5'-/CCD-3')、Nb.Mva1269I(認識部位の塩基数6:5'-G/CATTC-3')、Nt.Bpu10I(認識部位の塩基数7:5'-CC/TNAGC-3')、及びNb.BssSI(認識部位の塩基数6:5'-C/TCGTG-3')が挙げられるが(括弧内に認識部位の塩基数、およびその配列を示した。)、これらの酵素に限られるものではない。ここで、「/」は切断箇所を、「N」はA、T、G、またはCのいずれかのヌクレオチドを、「D」はA、T、またはGのいずれかのヌクレオチドを、それぞれ示す。
【0045】
また、近年、新たに人工的なニッキングエンドヌクレアーゼとしてゲノム編集に用いられるCAS9タンパク質にD10A変異を導入した、CAS9 D10Aニッカーゼが開発された(Ran FA, Hsu PD, Lin CY, Gootenberg JS, Konermann S, Trevino AE, Scott DA, Inoue A, Matoba S, Zhang Y, Zhang F.(2013)Double nicking by RNA-guided CRISPR Cas9 for enhanced genome editing specificity. Cell. 12;154(6):1380-9.)。本願発明の一実施形態においては、このような人工的に作製されたニッカーゼ(ニッキングエンドヌクレアーゼ)も用いることができる。
【0046】
ニッキングエンドヌクレアーゼとしてCAS9のD10A変異型を用いる場合、DNA二本鎖を切断することなく、一本鎖のみを切断してニックを入れるというCAS9のD10A変異型の特性を利用して、目的の一本鎖DNAを調製できる。また、CAS9のD10A変異型を用いる場合、「ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位」には、その塩基配列と相補的な配列を有するガイドRNAが結合することができる。そして、ガイドRNAとCAS9のD10A変異型との複合体が、ガイドRNAを介して二本鎖DNAの一方の鎖を認識してニックを入れる。本願発明の一実施形態において、ガイドRNAの認識配列の長さは少なくとも5塩基であり、好ましくは約20塩基である。
【0047】
また、本願発明において、「配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ」とは、特定のDNAの配列を認識して二本鎖を切断させることができるものであれば良く、種々の既知の酵素や、エンドヌクレアーゼ活性を有するタンパク質を用いることができる。また、その切断の態様は、粘着末端および平滑末端のいずれを生成するものであっても良い。例えば、本願発明の一実施形態において、「配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ」としては、種々の制限酵素や、I-CeuI、I-SceI、PI-PspI、またはPI-SceIなどのメガヌクレアーゼ、または制限酵素であるFokIをDNA切断ドメインとし、かつTALEタンパク質をDNA結合ドメインとして融合させた人工ヌクレアーゼであるTALEN(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)(Cermak T1, Doyle EL, Christian M, Wang L, Zhang Y, Schmidt C, Baller JA, Somia NV, Bogdanove AJ, Voytas DF. (2011) Efficient design and assembly of custom TALEN and other TAL effector-based constructs for DNA targeting. Nucleic Acids Res. Jul;39(12):e82.)を用いることができ、これらに限られるものではない。
【0048】
さらに、本願発明の一実施形態においては、「配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ」として、DNA切断能のみを有し、DNA結合能を有する他の分子とともに機能するタンパク質を用いることもできる。例えば、DNA結合能をガイドRNAに依存するCAS9タンパク質(Jinek M1, Chylinski K, Fonfara I, Hauer M, Doudna JA, Charpentier E. (2012) A programmable dual-RNA-guided DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity. Science. 17;337(6096):816-21.)や、DNA結合能をガイドDNAに依存するArgonauteタンパク質(Gao F, Shen XZ, Jiang F, Wu Y, Han C (2016) DNA-guided genome editing using the Natronobacterium gregoryi Argonaute. Nat Biotechnol. 34(7):768-73.)なども用いることができるが、これらに限られるものではない。また、本願発明の一実施形態において、ガイドRNAまたはガイドDNAの認識配列の長さは少なくとも5塩基であり、好ましくは約20塩基である。
【0049】
本願発明においては、上述のようなニッキングエンドヌクレアーゼを用いて、またはニッキングエンドヌクレアーゼ及び配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼの組み合せを用いて、目的のDNA鎖がクローニングされたベクターを切断し、分子量の異なる少なくとも3種類の一本鎖DNAを生成することができる。この際、ニッキングエンドヌクレアーゼまたは配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼの認識部位は、ベクター側、または目的のDNA側のいずれに存在していても良い。
【0050】
本願発明の一実施形態において、「目的のDNA鎖」、「目的の一本鎖DNA」、または「長鎖一本鎖DNA」とは、少なくとも200塩基を有する配列をいう。また、本願発明の一実施形態において、「目的のDNA鎖」、「目的の一本鎖DNA」、または「長鎖一本鎖DNA」としては、少なくとも300塩基、少なくとも400塩基、少なくとも500塩基、少なくとも600塩基、少なくとも700塩基、少なくとも800塩基、少なくとも900塩基、少なくとも1,000塩基、少なくとも1,500塩基、少なくとも2,000塩基、少なくとも2,500塩基、少なくとも3,000塩基、少なくとも3,500塩基、少なくとも4,000塩基、少なくとも4,500塩基、少なくとも5,000塩基、少なくとも5,500塩基、少なくとも6,000塩基、少なくとも6,500塩基、少なくとも7,000塩基、少なくとも7,500塩基、少なくとも8,000塩基、少なくとも8,500塩基、少なくとも9,000塩基、少なくとも9,500塩基、少なくとも10,000塩基とすることができる。
【0051】
本願発明において、「任意の分離手段」とは、分子量の異なる少なくとも3種類の一本鎖DNAを変性させた後に、当該変性した少なくとも3種類の一本鎖DNAを、個々の一本鎖DNAに分離し得る任意の手段を指す。例えば、任意の分離手段としては、ゲル電気泳動およびゲルカラムクロマトグラフィーが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0052】
また、本願発明の一実施形態において、ゲル電気泳動は、ゲルやバッファーに変性剤を含んでいても良く、また含まなくても良い。例えば、本願発明の一実施形態において用いられるゲル電気泳動としては、変性剤を含まない非変性アガロースゲル電気泳動、変性剤を含む変性アガロースゲル電気泳動、変性剤を含まない非変性アクリルアミドゲル電気泳動、または変性剤を含む変性アクリルアミドゲル電気泳動が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0053】
本願発明の一実施形態において、ゲル電気泳動を用いる場合、数千塩基もの大きさの二本鎖DNAに、Tmを低下させる物理的変性剤を加えて加熱変性させ、一本鎖DNAの状態に分離させ、通常の非変性ゲルにロードするだけで、DNAを一本鎖の状態に維持したまま電気泳動することができる。例えば、後述の実施例では、4,751塩基の二本鎖DNAを用いている。また、本発明者らは、9,547塩基の二本鎖DNAを用いた場合にも、調製された一本鎖DNAが、一本鎖の状態で電気泳動可能であることを確認している。この際、電気泳動ゲルにロードするプラスミドの濃度は、1μg/μlという高い濃度であっても、一本鎖に変性し、充分な解像度をもって、分子量の違いによって分離可能である。
【0054】
本願発明の一実施形態において、「任意の分離手段」としてゲルカラムクロマトグラフィーを用いる場合、ゲルカラムクロマトグラフィーは、任意のものを使用することができる。例えば、本願発明の一実施形態において用いられるゲルカラムクロマトグラフィーとしては、ゲル濾過カラムクロマトグラフィー、イオン交換ゲルカラムクロマトグラフィー、またはアフィニティーゲルカラムクロマトグラフィーが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0055】
また、本願発明の一実施形態において、「変性剤」とは、物理的または化学的作用によって二本鎖DNAの水素結合を切断し、一本鎖へ乖離させる作用をもつ試薬を指す。本願発明においては、上述したように、ニッキングエンドヌクレアーゼを用いて、またはニッキングエンドヌクレアーゼ及び配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼの組み合せを用いてベクターを処理して得た試料は、ニックが入っているものの、完全な一本鎖DNAに分離しているわけではない。そのため、分子量の異なる3種類の一本鎖DNAに個々に分離させるため、ニックを入れたベクターに変性剤を加える。本願発明の一実施形態において、物理的変性剤としては、例えば、溶媒の極性を下げ、核酸の塩基部分のスタッキング等の疎水性相互作用を弱めるホルムアミド、グリセロール、若しくはウレアなど、または塩基の脱プロトン化による水素結合形成の阻害を誘導するアルカリ性試薬である水酸化ナトリウムなどが挙げられるが、これに限られるものではない。また、本願発明の一実施形態において、化学的変性剤としては、例えば、核酸とシッフ塩基を形成するホルムアルデヒドやグリオキサールなどが挙げられるが、これに限られるものではない。さらに、本願発明の一実施形態において、電気泳動の際の変性剤としては、チオウレアやエチレングリコールなども使用することが可能である。
【0056】
ここで、長鎖のRNAの電気泳動の場合は、ホルムアミドなどの物理的変性剤で変性させた後、ホルムアルデヒドやグリオキサールなどの化学的変性剤によって、変性状態を共有結合的に固定化してから、同じくホルムアルデヒドを含むアガロースゲル中で電気泳動を行う。すなわち、変性状態を維持するためローディングバッファー中ばかりでなく、ゲル中でも、RNAを化学的変性剤に暴露しておく必要がある。このRNAの電気泳動の場合から推測すると、一本鎖DNAの変性ゲル電気泳動においても、電気泳動前に化学的変性剤によって変性を固定化した後、同じ化学的変性剤を加えたアガロースゲルを用いないと、相補鎖との再アニールを防ぎ、一本鎖状態を保ったままで電気泳動することはできないと考えられる。しかしながら、共有結合性の変性剤は、可逆的に結合を外すことはできるが、何らかの副反応を伴う可能性が否定できない。すなわち、化学的な変性剤を用いると、DNA中に変異を起こさせる可能性を排除できない。また、これらの化学的変性剤は極めて毒性や刺激性が強く、実際に実験を行う際には、扱いに注意が必要であり、危険かつ簡便性に欠ける。
【0057】
以上によれば、安全性、簡便性、およびDNAの損傷を防ぐという観点から、本願発明の一実施形態において、物理的変性剤のみによって長鎖一本鎖DNAを変性させた後、非変性ゲルを用いてゲル電気泳動することが好ましい。
【0058】
物理的変性剤を用いて電気泳動を行う場合、電気泳動ゲルのウエル中にある一本鎖DNAは、電気泳動が開始されると、ローディングバッファーに含まれている物理的変性剤の元を離れて、非変性ゲルの中に入っていく。本願発明者らは、非変性ゲル中に入った後の一本鎖DNAが、従来考えられていたほど容易には相補鎖と再アニールすることはないということを発見している。つまり、本発明者らは、変性した一本鎖DNAは、非変性ゲル中においても、一本鎖のまま安定的に電気泳動されるという知見を得ている。
【0059】
また、本発明者らは、非変性ゲル中で電気泳動される一本鎖DNAも、分子量に基づいて泳動され、その解像度は、一本鎖DNAの調製という本発明の用途としては、必要かつ充分であるという知見を得ている。すなわち、ゲル中の一本鎖DNAは、二本鎖DNAや化学的変性剤によって変性が固定化したRNAと同様に、安定した構造ではないことから、ゲル中で二次的な構造を形成するはずである。そのため、電気泳動の移動度と分子量の対数値(log10 M)との間にある単純で正確な比例関係は成立しないものの、本願発明は微妙な分子量の違いを分析するものではないため、そのような精緻な数学的関係性までは必要としない。
【0060】
また、本願発明の一実施形態に係る方法を実施するためのキットには、(a)クローニング部位の両端にそれぞれ少なくとも1つのニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を有するベクターであって、前記ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を認識するニッキングエンドヌクレアーゼによって同一鎖が切断されるベクター、及び(b)クローニング部位の一端に少なくとも1つのニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位と、前記クローニング部位の他端に少なくとも1つの配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼ認識部位とを有するベクターから選択される少なくとも1つのベクターが包含される。すなわち、上述の(a)及び(b)のいずれのベクターも、ベクター自体に少なくとも1つのニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位が存在しているため、目的の一本鎖DNAの元となる、クローニングされる二本鎖DNAにはニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位があってもなくても良い。
【0061】
一方で、本願発明の一実施形態においては、上述のとおり、ニッキングエンドヌクレアーゼまたは配列特異的二本鎖切断エンドヌクレアーゼの認識部位を、ベクターDNAの代わりに、クローニングされる目的のDNAの両端に備えるようにすることもでき、この場合、キットに包含されるベクターとしては、ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を含まないものが好ましい。
【0062】
また、本願発明の一実施形態において、上述のキットにはDNAの変性のための変性剤を含有することもできる。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
後述の実施例1ではマルチクローニングサイトにニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を配置したクローニングベクターを用いた場合の目的DNAのクローニング手順を、実施例2は目的DNAをクローニングしたベクターのニッキングエンドヌクレアーゼによる消化手順(
図1B)を、実施例3はニッキングエンドヌクレアーゼ処理した目的DNAをクローニングしたベクターを、変性剤により加熱変性し、非変性条件でのアガロースゲル電気泳動を行い、目的長鎖一本鎖DNAの抽出精製までの手順(
図1C及び
図1D)を、それぞれ示す。実施例4では、全域からニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を除いたベクターを用いて、GFP遺伝子全域を含む長鎖一本鎖DNAの調製を行った例を示す。実施例5では、2ヶ所のニックを導入したpLSODN-1(1.5Kb断片)プラスミドの種々の変性剤による変性の効果を示す。
【実施例1】
【0065】
クローニングベクターへの目的DNAのクローニング
実施例1では、長鎖一本鎖DNAを調製するためのモデルDNA断片としてλファージ由来の1.5kb DNA断片(λファージDNA 38,951-40,450、
図3)を用いた。クローニングベクターとしてはマルチクローニングサイトに複数のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を配置したpLSODN-1を用いた。
図2AにクローニングベクターpLSODN-1のプラスミドマップを、
図2Bにマルチクローニングサイトの配列を、
図2Cに一本鎖DNAを取得するためのクローニングの際の酵素の組合せを、
図2Dに全域の塩基配列を示す。
図2Bでは、ボックスで示すサイトがニッキングエンドヌクレアーゼサイトであり、そのニック導入位置を矢印で示す。
図2Bに示すように、中央に4種類のNbタイプのニッキングエンドヌクレアーゼサイトと1種のNtタイプのニッキングエンドヌクレアーゼサイトが、同一側のDNA鎖を切断できるように、向き合う形で配置してある。Nbタイプのニッキング酵素サイトの外側上流には、5’オーバーハング粘着末端を生じる6塩基または8塩基認識の制限酵素サイトが、Ntタイプのニッキング酵素サイトの外側下流には3’オーバーハングの粘着末端を生じる6塩基認識の制限酵素サイトが配置してある。
図2Cに示すように、長鎖一本鎖DNAを取得するための目的のDNA断片は、NbタイプとNtタイプの二つのニッキング酵素サイトの間(丸数字1、中央図)か、Ntタイプのニッキング酵素サイトと5’オーバーハング粘着末端を生じる6塩基認識の制限酵素サイトの間(丸数字2、左図)、Nbタイプのニッキング酵素と3’オーバーハングの粘着末端を生じる6塩基認識の制限酵素サイトの間(丸数字3、右図)にクローニングした。ここでは、Nb.BsrDIとNt.BspQIの2つのニッキングエンドヌクレアーゼサイトを利用した。
【0066】
まず、クローニングベクターpLSODN-1を、以下に示した配列から成る2つの合成DNAオリゴマーを用いてPCRを行うことによって、直鎖状のクローニングベクターpLSODN-1を取得した。以下の配列における下線部分は、目的DNAをベクターにクローニングするために導入した目的DNAとのホモロジー配列である。
【0067】
具体的には、400ngのクローニングベクターpLSODN-1に、上記2つの合成DNAオリゴマーを各80pmol、1×GXLバッファー(タカラバイオ株式会社)、5ユニットのPrimeSTAR GXL DNA polymerase(タカラバイオ株式会社)、それぞれ80nmolのdATP、dGTP、dTTP、dCTPを加えた、計400μlの反応液中で、PCRを行った。反応温度及び時間は、最初に95℃で1分、次に95℃で1分、55℃で1分、72℃で6分をこの順にそれぞれ16回繰り返し、最後に72℃で10分である。このPCR反応物を、1.6μg/mlのCrystal Violetを含む0.8%のアガロースゲル電気泳動に供与した。電気泳動後、青色に染まった3.2kbのDNAのバンドをカミソリで切り出し、Qiaquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン)にて精製し、50μlの10mMトリス塩酸(pH8.0)に溶解し、これを直鎖状のクローニングベクターpLSODN-1として保存した。
【0068】
一方、長鎖一本鎖DNAを取得するための目的DNAは、λファージDNAから、以下に示した配列から成る2つの合成DNAオリゴマーを用いてPCRを行うことによって取得した。以下の配列における下線部分は、目的DNAをベクターにクローニングするために導入したベクターとのホモロジー配列である。λファージDNA由来の目的DNAの配列を
図3に示す。
【0069】
具体的には、400ngのλファージDNA(プロメガ社)に、上記2つの合成DNAオリゴマーを各80pmol、1×GXLバッファー(タカラバイオ株式会社)、5ユニットのPrimeSTAR GXL DNA polymerase(タカラバイオ株式会社)、それぞれ80nmolのdATP、dGTP、dTTP、dCTPを加えた、計400μlの反応液中で、PCRを行った。反応温度及び時間は、最初に95℃で1分、次に95℃で1分、55℃で1分、72℃で3分をこの順にそれぞれ16回繰り返し、最後に72℃で10分である。このPCR反応物を、1.6μg/mlのCrystal Violetを含む0.8%のアガロースゲル電気泳動に供与した。電気泳動後、青色に染まった1.5kbのDNAのバンドをカミソリで切り出し、Qiaquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン)にて精製し、50μlの10mMトリス塩酸(pH8.0)に溶解し、これを長鎖一本鎖DNAを取得するための目的DNAとして保存した。
【0070】
次に、PCR増幅によって得られた直鎖状クローニングベクターpLSODN-1とλファージDNA由来の1.5kbの目的DNAを、PCR反応に用いた合成DNAオリゴマーによって導入した末端のホモロジー配列をもとに連結した。
【0071】
具体的には、PCR増幅によって得られた40ngの直鎖状クローニングベクターpLSODN-1に、同様にPCR増幅によって得られたλファージDNA由来の75ngの1.5kbの目的DNA、0.5μlの1 x Cloning EZ Buffer(ジーンスクリプト社)、0.5μlのClone EZ Enzyme(ジーンスクリプト社)、をそれぞれ加えた、計5μlの反応液中で22℃で20分間反応させた後、氷上に5分間静置し、連結反応を完結させた。
【0072】
続いて、連結反応液を1μl用いて、以下のようにコンピテントセル(Jet Competent Cell、株式会社バイオダイナミクス研究所)の形質転換操作を行った。まず、凍結コンピテントセル(25μl)を氷上に置いて融解した後、直ちに1μlの連結反応溶液をコンピテントセルに加え、5分後、室温の0.25mlのRecovery Medium(Jet Competent Cellに付属)にコンピテントセルを移した。そして、5分間このまま静置した後、Recovery Mediumに懸濁された菌液を、50mg/mlのアンピシリンを含むLB寒天プレート(直径8.5cm、寒天培地量25ml)に接種し、37℃で18時間、保温した。この培養によって上記LB寒天プレート上に生じた大腸菌コロニーを取り出し、50mg/mlのアンピシリンを含む3mlのLB液体培地に接種し、37℃で18時間振盪培養した。この振盪培養によって得られた菌体からQiagen Plasmid Purification Kit(株式会社キアゲン)によってプラスミドを調製した。
【0073】
上述のようにして得られたプラスミドをBsrDIおよびBspQIで消化し、アガロースゲル電気泳動分析にて1.5kbのλファージ由来の目的DNA断片が挿入され、かつABI PRISM Genetic Analyzer(アプライドバイオシステムジャパン株式会社)によりその塩基配列を調べることによりpLSODN-1ベクターのBsrDIサイトとBspQIサイトの間に正しくDNA鎖が挿入された配列を有するものを選んだ。この選択されたプラスミドを、pLSODN-1(1.5Kb断片)プラスミドとした。
【実施例2】
【0074】
目的DNAをクローニングしたベクターのニッキング酵素による消化
実施例1で作成したプラスミドpLSODN-1(1.5Kb断片)を、ニッキングエンドヌクレアーゼで消化することによって、環状二本鎖DNAの構造を持つ上記プラスミド上の、λファージ由来の目的DNAである1.5Kb断片の両端かつ一方の側の鎖のみを切断しニックを導入した。
【0075】
具体的には、100μlのプラスミドpLSODN-1(1.5Kb断片)に、1 x 3.1 NEBuffer (ニュー・イングランド・バイオラブズ社)、50ユニットのNt.BspQI、50ユニットのNb.BsrDIを加えた、計50μlの反応液中で50℃で60分間、続けて60℃で60分間反応させた。反応後は脱塩操作としてエタノール沈殿を行った。
【0076】
具体的には、2ヶ所のニックを導入した50μlのpLSODN-1(1.5Kb断片)プラスミド反応溶液に、125μlのエタノールを加えて混合した。そして、この混合液を微量高速遠心分離機にセットし、15,000rpm、10分、4℃で回転させ、沈殿させた。チューブから上清を除去した後、沈殿物に500μlの70%冷エタノールを加え、ボルテックスし、再び微量高速遠心分離機を用いて、15,000rpm、10分、4℃で回転させ、再び沈殿させた。チューブから上精を吸引除去し、さらにチューブをバキュームエバポレーターにかけ、乾固させた後、50μlの滅菌水を加えて、バッファー交換し、脱塩した2ヶ所のニックを導入したpLSODN-1(1.5Kb断片)プラスミドを得た。
【実施例3】
【0077】
変性剤による加熱変性と非変性アガロースゲル電気泳動による分離、ゲルからの抽出精製
実施例2で得られた、2ヶ所のニックを導入した20μgのpLSODN-1(1.5Kb断片)プラスミドを含む10μl水溶液に、30μlのブロモフェノールブルーを含む95%ホルムアミドを加え、終濃度71%ホルムアミド溶液とした。これを70℃で5分間熱処理した後、直ちに氷上に置き急冷した。1分間氷上に置いた後、20μl(10μg)と10μl(5μg)を1.2%濃度の非変性のアガロースゲルで1×TAE緩衝液を泳動液として電気泳動を行った。ここにおいて、ウレアやホルムアミドを含む変性アガロースゲルを用いる必要はないことに留意したい。電気泳動はブロモフェノールブルー色素が、ゲル中で適当な位置まで移動したところで止めた。電気泳動後は装置からゲルを取り出し、臭化エチジウムで染色し、紫外線下で撮影した(
図4)。撮影後、3本現れるバンドのうち、先端にくる最も分子量の小さい目的の1.5kbの一本鎖DNAのバンドを含むゲル片を切り出した。先端にあることから、他のバンドが混入している可能性はない。ゲル片の重量を測定した後、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社)を用いて目的の1.5kb一本鎖DNAを抽出した。目的の1.5kb一本鎖DNAの収率は約30%であった。精製した1.5kb一本鎖DNAは、その少量を同様の方法にて、分析スケールでの非変性アガロースゲル電気泳動を行い、他のバンドの混入はなく、高い精製度を有していることが確認された(
図5)。
【実施例4】
【0078】
クローニングベクターpETUK (del)へのGFP遺伝子のクローニング
実施例4では、ベクター骨格に加えてマルチクローニングサイトにもニッキング酵素認識部位を持たないベクターpETUK (del)を用いた。ここでは、ベクターと目的DNA断片をPCRで増幅する際に用いる合成DNAオリゴマー内にニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を組み込むことによって、目的のDNA断片の両側にニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を導入した。また、本施例では、GFP遺伝子全体をコードする一本鎖DNAを調製した。このGFP遺伝子には、ゲノム編集によるラットのチロシナーゼ(Tyr)遺伝子へのknock inの目的箇所の上流側19塩基および下流側20塩基から成るホモロジーアームが結合する。また、本実施例では一本鎖DNAの分離調製には変性ゲルであるウレアアガロースゲルを用いた。
【0079】
図6Aに、クローニングベクターpETUK (del)のプラスミドマップを、
図6Bにマルチクローニングサイトの配列を、
図6Cに全塩基配列を示した。ここでは、長鎖一本DNAの調製にはNb.BsrDIとNt.BspQIの2つのニッキング酵素サイトを利用したが、前述したようにベクター自体のマルチクローニングサイトにはこのニッキングエンドヌクレアーゼサイトがないものを用いて、PCRを行う際に用いる合成DNAオリゴマーの中に組み込むことによって、目的DNAの両側にニッキング酵素認識部位を導入した。
【0080】
まず、クローニングベクターpETUK (del)をテンプレートとして、以下に示した配列から成る2つの合成DNAオリゴマーを用いてPCRを行うことによって、直鎖状のクローニングベクターpETUK (del)を取得した。下記配列の下線部分は、目的DNAをベクターにクローニングするために導入した目的DNAとのホモロジー配列である。また、ボックスで囲った配列が、目的DNAの両側に導入されるニッキングエンドヌクレアーゼNb.BsrDIとNt.BspQIの認識配列である。
【0081】
具体的には、400ngのクローニングベクターpETUK (del)に、上記2つの合成DNAオリゴマーを各80pmol、1×GXLバッファー(タカラバイオ株式会社)、5ユニットのPrimeSTAR GXL DNA polymerase(タカラバイオ株式会社)、それぞれ80nmolのdATP、dGTP、dTTP、dCTPを加え、計400μlの反応液中で、PCRを行った。反応温度及び時間は、最初に95℃で1分、次に95℃で1分、55℃で1分、72℃で6分をこの順にそれぞれ16回繰り返し、最後に72℃で10分である。このPCR反応物を、1.6μg/mlのCrystal Violetを含む0.8%のアガロースゲル電気泳動に供与した。電気泳動後、青色に染まった2.67kbのDNAのバンドをカミソリで切り出し、Qiaquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン)で精製し、50μlの10mMトリス塩酸(pH8.0)に溶解し、これを直鎖状のクローニングベクターpETUK (del)として保存した。
【0082】
一方、長鎖一本鎖DNAを取得するための目的GFP遺伝子をpCMV-GFP-LC3 Expression Vector (Cell Biolabs. Inc)から、以下に示した配列から成る2つの合成DNAオリゴマーを用いてPCRを行うことによって取得した。以下の配列における下線部分は、GFP遺伝子をベクターにクローニングするために導入したベクター側とのホモロジー配列である。GFP遺伝子断片はベクターのマルチクローニングサイトのBamHIサイトとNotIサイトとの間にクローニングする。pCMV-GFP-LC3 Expression Vector由来のGFP遺伝子の配列を
図7に示した。また、ボックスで囲った部分は、それぞれGFPタンパク質の開始コドンと終始コドンである。
【0083】
具体的には、400ngのpCMV-GFP-LC3 Expression Vectorに、上記2つの合成DNAオリゴマーを各80pmol、1×GXLバッファー(タカラバイオ株式会社)、5ユニットのPrimeSTAR GXL DNA polymerase(タカラバイオ株式会社)、それぞれ80nmolのdATP、dGTP、dTTP、dCTPを加えた、計400μlの反応液中で、PCRを行った。反応温度及び時間は、最初に95℃で1分、次に、95℃で1分、55℃で1分、72℃で3分をこの順にそれぞれ16回繰り返し、最後に72℃で10分である。このPCR反応物を、1.6μg/mlのCrystal Violetを含む0.8%のアガロースゲル電気泳動に供与した。電気泳動後、青色に染まった0.75kbのDNAのバンドをカミソリで切り出し、Qiaquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン)で精製し、50μlの10mMトリス塩酸(pH8.0)に溶解し、これを長鎖一本鎖DNAを取得するための目的GFP遺伝子全域DNA断片として保存した。
【0084】
次に、上記PCR増幅によって得られた直鎖状クローニングベクターpETUK (del)断片とGFP遺伝子全域DNA断片を、PCR反応に用いた合成DNAオリゴマーによって導入した末端のホモロジー配列をもとに連結した。
【0085】
具体的には、PCR増幅によって得られた40ngの直鎖状クローニングベクターpETUK (del)に、同様にPCR増幅によって得られた75ngのGFP遺伝子、0.5μlの1 x Cloning EZ Buffer(ジーンスクリプト社)、0.5μlのClone EZ Enzyme(ジーンスクリプト社)を加えた、計5μlの反応液中で22℃で20分間反応後、氷上で5分間静置し、連結反応を完結させた。
【0086】
続いて、連結反応液を1μl用いて、以下のようにコンピテントセル(Jet Competent Cell、株式会社バイオダイナミクス研究所)の形質転換操作を行った。まず、凍結コンピテントセル(25μl)を氷上に置いて融解した後、直ちに1μlの連結反応溶液をコンピテントセルに加え、5分後、室温の0.25mlのRecovery Medium(Jet Competent Cellに付属)にコンピテントセルを移した。そして、5分間このまま静置した後、Recovery Mediumに懸濁された菌液を、50mg/mlのアンピシリンを含むLB寒天プレート(直径8.5cm、寒天培地量25ml)に接種し、37℃で18時間、保温した。この培養によって上記LB寒天プレート上に生じた大腸菌コロニーを取り出し、50mg/mlのアンピシリンを含む3mlのLB液体培地に接種し、37℃で18時間振盪培養した。この振盪培養によって得られた菌体からQiagen Plasmid Purification Kit(株式会社キアゲン)によりプラスミドを調製した。
【0087】
上述のようにして得られたプラスミドについてBsrDIおよびBspQIで消化し、アガロースゲル電気泳動分析にて759塩基の目的GFP遺伝子DNA断片が挿入され、かつABI PRISM Genetic Analyzer(アプライドバイオシステムジャパン株式会社)によりその塩基配列を調べ、pETUK(del)ベクターにBsrDIサイトとBspQIサイトと伴にGFP遺伝子が正しく挿入された配列を有するものを選んだ。この選択されたプラスミドを、pETUK(GFP-Tyr)プラスミドとした。
【0088】
次に、pETUK(GFP-Tyr)プラスミドを2つのニッキングエンドヌクレアーゼ(Nb.BsrDIおよびNt.BspQI)で消化し、GFP遺伝子の両端において、一方の側の鎖のみにニックを導入した。具体的には、100μgのプラスミドpETUK(GFP-Tyr)に、1 x 3.1 NEBuffer (ニュー・イングランド・バイオラブズ社)、50ユニットのNt.BspQI、及び50ユニットのNb.BsrDIを加えた、計50μl反応液中で、50℃で60分、続けて60℃で60分反応させた。反応後は脱塩操作としてエタノール沈殿を行った。
【0089】
具体的には、2ヶ所のニックを導入した50μlのpETUK(GFP-Tyr)プラスミド反応溶液に、125μlのエタノールを加えて混合した。そして、この混合液を微量高速遠心分離機にセットし、15,000rpm、10分、4℃で回転させ、沈殿させた。チューブから上清を除去した後、沈殿物に500μlの70%冷エタノールを加え、ボルテックスし、再び微量高速遠心分離機で、15,000rpm、10分、4℃で回転させ、再び沈殿させた。チューブから上精を吸引除去し、さらにチューブをバキュームエバポレーターにかけ、乾固させた後、50μlの滅菌水を加えて、バッファー交換し、脱塩した2ヶ所のニックを導入したpETUK(GFP-Tyr)プラスミドを得た。
【0090】
2ヶ所のニックを導入した20μgのpETUK(GFP-Tyr)プラスミドを含む10μl水溶液に、30μlのブロモフェノールブルーを含む95%ホルムアミドを加え、終濃度71%ホルムアミド溶液とした。これを70℃で5分間熱処理した後、直ちに氷上に置き急冷した。1分間氷上に置いた後、その一部である100ngについて、1.0%濃度の4Mウレアアガロースゲルで、4Mウレア含有1×TAE緩衝液を泳動液として分析を目的とした電気泳動を行った。電気泳動はブロモフェノールブルー色素が、ゲル中で適当な位置まで移動したところで止めた。電気泳動後は装置からゲルを取り出し、臭化エチジウムで染色し、紫外線下で撮影した(
図8)。分析的電気泳動で問題なく分離されることが確認されたことから、残りの全量を4Mウレアアガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後、臭化エチジウムで染色し、3本現れるバンドのうち、先端にくる最も分子量の小さい目的の759塩基のGFP一本鎖DNAのバンドを含むゲル片を切り出した。先端にあることから、他のバンドが混入している可能性はない。ゲル片の重量を測定した後、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社)を用いて目的の759塩基のGFP一本鎖DNAを抽出した。目的の759塩基のGFP一本鎖DNAの収率は約30%であった。精製した759一本鎖DNAは、同様の方法にて4Mウレアアガロースゲルにて電気泳動を行い、他のバンドの混入はなく、高い精製度を有していることが確認された(
図9)。
【実施例5】
【0091】
種々の変性剤を用いた場合の、2ヶ所のニックを導入したpLSODN-1(1.5kb断片)プラスミドの変性ゲルおよび非変性ゲルでの電気泳動による個々の一本鎖DNAの分離
以下に、いくつかの物理的変性剤による、ニックを導入したpLSODN-1(1.5kb断片)プラスミドの変性および非変性ゲルでの電気泳動による一本鎖DNAの出現および分離の例を示す。物理的な変性剤としてホルムアミド、グリセロール、及びウレアの例を、対照としてスクロースの場合を示す。ホルムアミド、グリセロール、及びウレアは、核酸の電気泳動用変性剤として通常用いられる試薬である。
【0092】
具体的には、種々の濃度の、2ヶ所のニックを導入したpLSODN-1(1.5kb断片)プラスミドを、種々の濃度のホムアミド、グリセロール、ウレア、またはスクロースと混合した。次に70℃で5分加熱後、氷上にて急冷した。氷上で1分間放置した後、1.2%非変性アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後は、ゲルを取出し、1.6% Crystal Violetで一晩振盪染色した。
図10にその結果を示した。
【0093】
ホルムアミドは、25%の濃度で、2ヶ所のニックを導入したpLSODN-1(1.5kb断片)プラスミドを、1μg/μlの高濃度のプラスミドであっても完全に変性させ、1.5kbの目的一本鎖DNAを与えた。グリセロールは、50%以上の濃度で、プラスミドを完全に変性させる能力があることがわかった。ウレアは6M濃度で、0.25μg/μl濃度のプラスミドを変性させることができたが、0.5μg/μl以上の濃度のプラスミドに関しては限定的であった。スクロースでは、全く変性の効果はなかった。
【0094】
その他、本発明は、さまざまに変形可能であることは言うまでもなく、上述した一実施形態に限定されず、発明の要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。
【配列表】