(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】フィルムロール梱包体
(51)【国際特許分類】
B65D 85/672 20060101AFI20230704BHJP
B65D 81/24 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
B65D85/672
B65D81/24 F
(21)【出願番号】P 2019105870
(22)【出願日】2019-06-06
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】早野 知子
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-212165(JP,A)
【文献】特開平06-278775(JP,A)
【文献】特開2002-362631(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038940(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/672
B65D 81/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムロールの外周面全面に、熱伝導率が0.050W/m・K以下である樹脂シートAと、少なくとも片面に金属膜が積層された樹脂シートBとを順に有
し、かつ前記樹脂シートAが前記樹脂シートB側に吸湿材を備えることを特徴とする、フィルムロール梱包体。
【請求項2】
前記樹脂シートAの水蒸気透過率が100g/(m
2・24h)未満である、請求項1に記載のフィルムロール梱包体。
【請求項3】
前記樹脂シートAの厚みが0.1mm以上5.0mm以下である、請求項1または2に記載のフィルムロール梱包体。
【請求項4】
前記樹脂シートAがポリオレフィン樹脂シートである請求項1~3のいずれかに記載のフィルムロール梱包体。
【請求項5】
前記フィルムロールがポリエステルフィルムロールである、請求項1~4のいずれかに記載のフィルムロール梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シワの発生の抑制に優れたフィルムロール梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からフィルム、特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、および耐薬品性を有するため、光学フィルム、保護フィルム、離型フィルム等として好適に用いられている他、包装材料、転写材料、磁気テープ、電絶フィルム、および金属ラミネートなどの一般工材分野などにも用いられている。このようなポリエステルフィルムは、紙や金属製の巻き取りコアを軸にロール状に巻き取られたフィルムロールの状態で保管されることが一般的である。
【0003】
また、近年のフィルムの高品質要求が高まる中、フィルムロールの保管状態によってフィルムの物性に影響を与えることが知られており、保管方法の検討もなされてきた。例えば、フィルムロールの表面に金属膜が積層されたフィルムで覆い、梱包材の内部にシリカゲルを同梱して湿度環境を一定に保ち、フィルムのオリゴマー析出量を抑制する梱包方法(例えば、特許文献1)や、蒸着フィルムとポリエチレン樹脂シートでフィルムロールの表面を覆い、フィルムの劣化を抑制する梱包方法(例えば、特許文献2)、ナイロンやポリエチレン製の積層ラップフィルムと金属膜が積層されたフィルムでフィルムロールの表面を覆い、フィルムのヘーズや熱収縮率の変化を抑制する梱包方法(例えば、特許文献3)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-175440号公報
【文献】特開平6-278775号公報
【文献】特開2014-162550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に示すこれらの方法では、フィルムからのオリゴマー析出やフィルムの劣化等の軽減が可能であるが、例えば、急激な外気温変化によるフィルムの品位低下やシワの発生については十分に検討がなされていなかった。本発明は上記事情に鑑みて、外気温変化等の保管環境による影響を軽減し、フィルムロールのシワの発生を抑制するフィルムロール梱包体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有する樹脂シートを用いることにより、シワの発生を抑制する点で優れたフィルムロール梱包体を製造できることを見出した。すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1) フィルムロールの外周面全面に、熱伝導率が0.050W/m・K以下である樹脂シートAと、少なくとも片面に金属膜が積層された樹脂シートBとを順に有することを特徴とする、フィルムロール梱包体。
(2) 前記樹脂シートAの水蒸気透過率が100g/(m2・24h)未満である、(1)に記載のフィルムロール梱包体。
(3) 前記樹脂シートAの厚みが0.1mm以上5.0mm以下である、(1)または(2)に記載のフィルムロール梱包体。
(4) 前記樹脂シートAがポリオレフィン樹脂シートである(1)~(3)のいずれかに記載のフィルムロール梱包体。
(5) 前記フィルムロールがポリエステルフィルムロールである、(1)~(4)のいずれかに記載のフィルムロール梱包体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フィルムロールのシワの発生を抑制するフィルムロール梱包体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施態様に係るフィルムロール梱包体、およびその梱包工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のフィルムロール梱包体は、フィルムロールの外周面全面に、熱伝導率が0.050W/m・K以下の樹脂シートAと、少なくとも片面に金属膜が積層された樹脂シートBとを順に有することを特徴とする。なお、以下熱伝導率が0.050W/m・K以下の樹脂シートA、および少なくとも片面に金属膜が積層された樹脂シートBを、それぞれ単に樹脂シートA、および樹脂シートBということがある。
【0010】
本発明においてフィルムとは、樹脂を主成分とするシート状の成型体をいい、フィルムロールとはフィルムをコアに巻き取ったものをいう。また、フィルムロールの外周面とは、フィルムロールのフィルム部分を円柱に見立てたときに、その側面に相当する面をいう。フィルムロールの外周面全面に樹脂シートAと樹脂シートBとを順に有するとは、面積換算でフィルムロールの外周面の99%が樹脂シートAと樹脂シートBとで被覆されており、かつ樹脂シートAの外側に樹脂シートBが位置する状態をいう。なお、樹脂シートAと樹脂シートBでのフィルムロールの外周面の被覆率は高ければ高いほど好ましく、100%であることが最も好ましい。また、主成分とは、対象物の全構成成分を100質量%としたときに50質量%より多く含まれる成分をいい、以下同様に解釈することができる。
【0011】
本発明のフィルムロール梱包体におけるフィルムに用いることができる樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、およびポリカーボネート等の樹脂が挙げられる。中でも、フィルムロールとした際の、フィルム外部からの熱影響によるシワの発生を抑制する効果は、特にフィルムがポリエステルフィルムである際に顕著となる。そのため、本発明のフィルムロール梱包体においては、フィルムロールがポリエステルフィルムロールであることが好ましい。ここでポリエステルフィルムロールとは、フィルムロールを構成するフィルムがポリエステルフィルム(ポリエステルを主成分とするフィルム)であるフィルムロールをいう。
【0012】
ポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称である。本発明のフィルムロール梱包体におけるフィルムに好適に用いることができるポリエステルとしては、例えば、エチレンテレフタレート、エチレン-2,6-ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、および1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレートから選ばれた少なくとも1種の構成単位を主要構成単位とするものが挙げられる。ここで主要構成単位とは、ポリエステルを構成する全構成単位を100モル%としたときに、50モル%を超えて含まれる構成単位をいう。なお、本発明のフィルムロール梱包体におけるフィルムは、本発明の効果を損なわない限り、これら構成樹脂の1種のみを含んでも2種以上含んでもよい。
【0013】
なお、本発明のフィルムロール梱包体におけるフィルムは、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤および架橋剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
【0014】
本発明のフィルムロール梱包体は、フィルムロールの外周面全面に、熱伝導率が0.050W/m・K以下である樹脂シートAと、少なくとも片面に金属膜が積層された樹脂シートBとを順に有することが重要である。このような態様とすることで、樹脂シートBの金属膜により酸素や水蒸気の透過が抑えられ、樹脂シートAにより外気温の変化による影響が低減されるため、フィルムロールを構成するフィルムにシワが発生するのを軽減することができる。
【0015】
本発明のフィルムロール梱包体において、樹脂シートBは、主に酸素や水蒸気の透過を抑制する役割を担う。樹脂シートBを構成する樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリパラフィン、ポリエステル等の各樹脂を単独でまたは複数組み合わせて用いることができる。さらに、これら樹脂を主成分とするシート上の少なくとも片面に金属膜を積層することにより、樹脂シートBを得ることができる。金属膜としては、例えばアルミニウム箔、銀箔、銅箔等を用いることができ、金属膜の樹脂シートへの積層方法としては、上記金属箔をラミネートする方法や、これらの金属を蒸着させる方法を用いることができる。
【0016】
本発明のフィルムロール梱包体において、樹脂シートAは、外気温の変化による影響を低減させる役割を担う。樹脂シートAに相当するシートが存在しない場合や、樹脂シートAに代えて熱伝導率が0.050W/m・Kよりも大きいシートでフィルムロールの外周面全面を覆った場合は、外気の温度変化がフィルムロールへ及ぼす影響が大きくなり、保管期間中においてフィルムロールにシワなどの外観不良を生じさせる。特に、フィルムロールを覆う樹脂シートの熱伝導率が0.050W/m・Kを超える場合は、フィルムロールが急激な外気温の変化の影響を受けやすくなり、その表層にシワが発生する。さらに、一度フィルムロールの表層にシワが発生すると内側に向かってシワの転写が連鎖するため、やがて内側のフィルムにもシワが生じる。このようなシワは、光学用フィルムのようにフィルム上にハードコートなどの後加工を行う場合においては、特に著しく品位に影響を及ぼす。上記観点から、樹脂シートAの熱伝導率は0.040W/m・K以下が好ましい。また、樹脂シートAの熱伝導率の下限に特に制限はないが、実現可能性の観点から0.010W/m・Kとなる。
【0017】
樹脂シートの熱伝導率は、JIS A 1412-2:1999 6.2に準じて測定することができる。測定機は、測定が可能なものであれば特に制限されず、例えば、英弘精機株式会社製の熱伝導率測定装置HC-074を使用することができ、本測定機を使用する場合の具体的な測定条件、手順は以下のとおりである。先ず、樹脂シートを200mm×200mm角の大きさにカットして測定試料とし、これを温度20℃、湿度65%RHの標準状態にて24hr放置する。その後、測定試料を測定機に入れ、プレートの温度差24℃(高温のプレート温度は37℃、低温のプレート温度は13℃)、平均温度25℃の条件にて熱伝導率(W/m・K)を測定する。
【0018】
急激な外気温の変化による影響は、フィルムロール梱包体を一定の環境下から他の環境下へ移動した際に表層の梱包材を通してフィルムロールに外気温が間接的に伝わることや、一定の環境下から他の環境下へ移動させて梱包材を切開した際にフィルムロールに外気が直接接触すること等によって生じる。このとき、フィルムロールが外部環境に比べて高温側であっても低温側であっても、フィルムロールのシワが生じる。
【0019】
樹脂シートAに用いられる樹脂としては、例えば、ポリエチレン(熱伝導率:0.33~0.52W/m・K)やポリプロピレン(熱伝導率:0.12W/m・K)等のポリオレフィン、ポリスチレン(熱伝導率:0.10W/m・K)、ポリアミド/ナイロン610(熱伝導率:0.22W/m・K)、ウレタン樹脂(熱伝導率:0.21W/m・K)、エポキシ樹脂(熱伝導率:0.15~0.21W/m・K)などがある。上記樹脂の中でもポリオレフィンは、耐熱性や耐寒性に優れるためフィルムロールへの熱影響を与えにくい点や、さらには紫外線の遮断性にも優れるためフィルムロールの紫外線劣化を軽減できる点で好適である。すなわち、上記観点から樹脂シートAはポリオレフィン樹脂シートであることが好ましい。
【0020】
但し、前述した樹脂は、いずれも樹脂自体の熱伝導率が0.100W/m・Kを超える。そのため、これらの樹脂を単にシート化しただけでは熱伝導率が0.050W/m・K以下とはならず、樹脂シートAを得るためには樹脂シートに熱伝導率を下げる処置を施すことが必要となる。熱伝導率を調整する処置としては、例えば、樹脂シートの内部に空隙を形成させる方法を用いることができる。
【0021】
樹脂シートの内部に空隙を構成する方法としては、例えば、樹脂シート製造時に樹脂シートのマトリックスとなる樹脂中に当該樹脂とは非相溶な樹脂等を核材として添加し、製膜した樹脂シートを少なくとも一方向に延伸する方法や、樹脂シートのマトリックスとなる樹脂中に発泡剤を添加して押出形成する方法などが挙げられる。このとき、樹脂シート内の空隙率を高くすることによりシートの熱伝導率を低くすることができ、樹脂シート内の空隙率を高くするには、非相溶な樹脂等を核材とする場合においては核材の量を増やせばよく、発泡剤を用いる場合は発泡剤の量を増やせばよい。但し、空隙率を高くしすぎると水蒸気透過率が悪化するため、大気中の水分が樹脂シートAを透過することによって、高湿度下での保管の際にフィルムロール表面に吸湿によるシワを発生させることがある。そのため、樹脂シートAの空隙率は、水蒸気透過率が後述する好ましい範囲となる程度に調整することが好ましい。
【0022】
また、本発明のフィルムロール梱包体は、フィルムロール表面のシワ等を軽減する観点から、樹脂シートAの水蒸気透過率が100g/(m2・24h)未満であることが好ましい。水蒸気透過率が100g/(m2・24h)以下であることにより、高湿度下での保管の際にフィルムロール表面の吸湿によるシワの発生やブロッキングなどの表面異常を軽減することができる。上記観点から、樹脂シートAの水蒸気透過率は60g/(m2・24h)以下であることが好ましい。また、樹脂シートAの水蒸気透過率の下限値は特に制限されないが、実現可能性の観点から10g/(m2・24h)となる。
【0023】
樹脂シートAの水蒸気透過率は、温度40℃、湿度90%RH、測定面積50cm2の条件で、差圧法により測定することができる。測定機は、測定が可能なものであれば特に制限されず、例えば、テクノロックス社製の水蒸気透過率測定装置(機種名:DELTAPERM(登録商標))を使用することができる。
【0024】
樹脂シートAの水蒸気透過率を100g/(m2・24h)以下とする方法は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、例えば、シートに空隙を形成する方法や、樹脂シートAの厚みを調整する方法を用いることができる。より具体的には、樹脂シートAの空隙率を低くすることや、樹脂シートAの厚みを厚くすることにより、樹脂シートAの水蒸気透過率を小さくすることができる。
【0025】
さらに、本発明の効果を損なわずにフィルムロールに巻き付ける際の作業性を向上させる観点から、樹脂シートAの厚みが0.1mm以上5.0mm以下であることが好ましい。樹脂シートAの厚みが0.1mm以上であることにより、外気温の変化による影響を低減させる効果が保たれ、樹脂シートAの厚みが5.0mm以下であることにより、樹脂シートAの厚みが過多となることによる梱包作業の作業性低下が抑えられる。また、水蒸気透過率の観点から、厚みは1.0mm以上5.0mm以下であることが好ましい。
【0026】
樹脂シートAの厚みは、ダイヤルゲージを用い、JIS K 7130:1992 A-2法に準じて、樹脂シートを10枚重ねた状態で測定した厚みの値を10で除することにより測定することができる。
【0027】
次に、本発明のフィルムロール梱包体の製造方法について、フィルムロールが二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムロールである例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下PETの融点をTm(℃)、PETのガラス転移温度をTg(℃)ということがある。
【0028】
先ずPETペレットを押出機にて加熱溶融し、押出し口金ダイよりTm~(Tm+70)℃の温度でシート状に冷却ドラム上へ吐出し、20~90℃の冷却ドラムで急冷固化して無配向フィルムを得る。無配向フィルムを得た後、これを走行方向(縦方向)に(Tg-10)~(Tg+70)℃の温度で2.0~15.0倍、好ましくは3.0~8.0倍に延伸し、次いで走行方向と面内で直交する方向(横方向、若しくは幅方向ということがある。)にTg~(Tg+70)℃の温度で2.0~15.0倍、好ましくは3.0~8.0倍に延伸する。さらに必要に応じて、縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。延伸終了後、二軸延伸後のフィルムを(Tg+70)~(Tm-10)℃の温度(例えば180~250℃)で1~60秒間、熱固定結晶化を行って寸法安定性を付与し、二軸配向PETフィルムを得る。
【0029】
得られた二軸配向PETフィルムを、フィルムの走行張力を200~300N/mとして巻き取りコアに巻き、PETフィルムロールを得る。巻き取りコアとしては、繊維強化プラスチック、紙、および金属製のものを用いることができる。PETフィルムの幅は、フィルムの製造装置やフィルムの幅方向のスリット条件によるため、特段限定されるものではないが、一般的にフィルムロールとして保管される場合は300mm以上であり、フィルムの製造設備の観点から2,000mm以下であることが一般的である。巻き取るフィルムの長さも特段限定されず、例えば、5,000mm以上、さらには10,000mm以上とすることができる。また、フィルムの厚みも特に制限されず、例えば、使用用途等を考慮して1μm以上500μmとすることができる。
【0030】
以下、得られたフィルムロールを梱包することで、本発明のフィルムロール梱包体を得る。以下、本発明の一実施態様に係るフィルムロール梱包体、およびその梱包工程を示す模式図である
図1を参照しながら、本発明のフィルムロール梱包体を得る方法について説明する。先ず、二軸配向PETフィルム1が巻き取りコア2に巻かれたフィルムロール3の外周面4の全面に。樹脂シートA5として空隙が形成された発泡ポリエチレン樹脂シート(熱伝導率:0.050W/m・K以下)を巻き始め部(図示しない)から巻き終わり部6まで長手方向に50mm以上重なるように巻き、セロハンテープ7で取り付ける。なお、このとき必要に応じて樹脂シートAの巻き始めをフィルムロールの表面にセロハンテープ7で固定してもよい。
【0031】
次に、樹脂シートAの表面に梱包体の表面に吸湿材8をセロハンテープ7(図示しない)で貼り付ける。吸湿材8としては、公知のもの、例えばシリカゲル、塩化カリウム、および酸化カリウムなどを用いることができ、より具体的な例としては、OZO化学技研のOZO(吸湿率180~200%)等が挙げられる。吸湿剤8を設けるか否かは任意であるが、吸湿剤8を設けることにより樹脂シートA5および樹脂シートB9(後述)を透過した酸素や水蒸気に起因するフィルム2のシワを軽減できるため、設けることが好ましい。また、吸湿材8の貼付位置も任意であるが、直接フィルムロール3の上に貼り付けると外周面4上に設ける樹脂シートA5で圧迫され、フィルム2の外観が損なわれるため、樹脂シートA5と樹脂シートB9との間が好ましい。このような態様とすることで、樹脂シートA5と樹脂シートB9の間に介在する空気、フィルムロール3のフィルム2間中に巻き込まれた空気、および樹脂シートB9や樹脂シートA5を透過した空気が除湿され、湿気によるフィルムロール3(フィルム2)のシワの発生が軽減される。
【0032】
その後、樹脂シートA5による被覆と吸湿剤8の貼付が済んだフィルムロール3(以下、被覆後のフィルムロール10ということがある。)を少なくとも片面に金属膜が積層された樹脂シートB9で覆う。樹脂シートB9は、外周面4全面を覆うものであれば、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、最終的な梱包体を隙間がない状態とするために、両端部が開放されたチューブ状、コの字型の袋状のものを好適に用いることができる(
図1においては後者の態様を表示)。これらの樹脂シートBの開口部を輪ゴムや紐等の留め具で縛って塞ぐことで、フィルムロール梱包体11を得ることができる。なお、樹脂シートB9は、水蒸気バリア製の観点から、その透湿度が5.0g/(m
2・24h)以下であることが好ましい。
【0033】
本発明のフィルムロール梱包体は、フィルムロールの外周面全面に、熱伝導率が0.050W/m・K以下である樹脂シートAと、少なくとも片面に金属膜が積層された樹脂シートBとを順に有することにより、酸素や水蒸気の透過や、外気温の変化による影響が低減されるため、フィルムロールを構成するフィルムにおけるシワの発生を軽減することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。各項目の測定方法等は以下のとおりである。
【0035】
(評価方法)
<樹脂シートの熱伝導率>
JIS A 1412-2:1999 6.2に準じて測定した。測定機は、英弘精機株式会社製の熱伝導率測定装置HC-074を使用し、具体的な測定条件、手順は以下のとおりである。先ず、樹脂シートを200mm×200mm角の大きさにカットして測定試料とし、これを温度20℃、湿度65%RHの標準状態にて24hr放置した。その後、測定試料を測定機に入れ、プレートの温度差24℃(高温のプレート温度は37℃、低温のプレート温度は13℃)、平均温度25℃の条件にて熱伝導率の測定を行った。同様の測定を合計3回行い、得られた値の平均値を樹脂シートの熱伝導率(W/m・K)とした。
【0036】
<樹脂シートの水蒸気透過率>
温度40℃、湿度90%RH、測定面積50cm2の条件でテクノロックス社製の水蒸気透過率測定装置(機種名:DELTAPERM(登録商標))を使用して、差圧法により測定した。測定サンプル数は水準当たり2つ、測定回数は各測定サンプルについて5回とし、得られた10回の測定値の平均値を樹脂シートの水蒸気透過率(g/(m2・24h))とした。
【0037】
<樹脂シートの厚み>
ダイヤルゲージを用い、JIS K 7130:1992 A-2法に準じて、樹脂シートを10枚重ねた状態で任意の5ヶ所について厚みを測定し、その平均値を10で除して得られた値を樹脂シートの厚み(mm)とした。
【0038】
<ヒートショックシワ発生試験>
本試験により、梱包材を切開した際に、フィルムロールに外気が直接接触することによる影響を評価した。以下、試験方法について説明する。先ず、フィルムロール梱包体を気温10℃の状態で一晩保管し、その後30℃に設定された恒温槽へ瞬時に搬入した。5時間後に恒温槽からフィルムロール梱包体を取り出し、その場で梱包をはがしてフィルムロール表層のシワの有無を目視で確認し、その発生本数を数えた。シワの発生が観察された場合は、さらにフィルムを10m以上巻き出して目視でシワの有無を確認した。得られた結果より以下の基準で評価し、○と△を合格とした。
〇:シワの発生本数が0本であった。
△:シワの発生本数1~2本であり、かつ巻き出し長10m以内で全てのシワが消失していた。
×:シワの発生本数が3本以上、若しくは巻き出し長10m以上でも消失しないシワが少なくとも1本観察された。
【0039】
<長期保管後検査>
本検査により、保管環境の変化がフィルムロールに及ぼす影響を評価した。以下、検査方法について説明する。先ず、フィルムロール梱包体を常温環境温度に設定した恒温槽に搬入した。その後、恒温槽の温度を3℃/2時間の昇温速度で15℃昇温させ、その温度を4時間維持した後、3℃/2時間の降温速度で常温環境温度との差が1℃未満になるまで降温させた。恒温槽と常温環境温度(外部の温度)との差が1℃未満となった状態で、フィルムロール梱包体を取り出し、その場で梱包をはがしてフィルムロール表層のシワの有無を目視で確認し、その発生本数を数えた。シワの発生が観察された場合は、さらにフィルムを10m以上巻き出して目視でシワの有無を確認した。得られた結果より以下の基準で評価し、○と△を合格とした。
〇:シワの発生本数が0本であった。
△:シワの発生本数1~2本であり、かつ巻き出し長10m以内で全てのシワが消失していた。
×:シワの発生本数が3本以上、若しくは巻き出し長10m以上でも消失しないシワが少なくとも1本観察された。
【0040】
(二軸配向PETフィルムの製造)
二軸配向PETフィルムは以下の手順で製造した。実質的に外部添加粒子を含有しないPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥して押出機に供給し、285℃で溶融した後、ステンレス鋼繊維を焼結圧縮した平均目開き5μmのフィルターと平均目開き14μmのステンレス鋼粉体を焼結したフィルターとで順に濾過した。その後、溶融PETをT字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。こうして得られた無配向PETフィルムを90℃に加熱して長手方向に3.4倍延伸し、一軸配向PETフィルムとした。この一軸配向PETフィルムの幅方向両端部をクリップで把持してテンター装置の予熱ゾーンに導き、雰囲気温度120℃で乾燥・予熱後、連続的に120℃の延伸ゾーンで幅方向に3.5倍に延伸した。得られた二軸延伸後のPETフィルムを引き続き230℃の加熱ゾーンで10秒間熱処理した後、230℃から160℃まで冷却しながら7%の弛緩処理を施し、続けて160℃~120℃に冷却しながら幅方向に0.5%の再延伸を実施して二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0041】
(実施例1)
幅1,400mm、直径7mmの繊維強化プラスチック(FRP)製のコアに、厚み50μm、幅1,300mm、長さ5,000mの二軸配向ポリエステルフィルムを巻き付け、2本のポリエステルフィルムロールを取得した。それぞれ、そのポリエステルフィルムロールの外周面上に、幅1,300mm、長さ2.2m、厚み1mm、熱伝導率0.035W/m・K、透湿度58g/(m2・24h)の発泡性ポリエチレンシート(樹脂シートAに相当)を、ポリエステルフィルムロール外周面を全て覆い、かつ巻き始めと巻き終わりが長手方向に50mm重なるように巻き付けた。なお、このとき巻き始め部分と巻き終わり部分をテープで動かないよう固定した。その上に吸湿剤OZO(OZO化学技研製)をフィルムロールの端部から200mm内側を中心として両端部にセロハンテープで取り付けた。その後、樹脂シートAで被覆したポリエステルフィルムロールを、片面にアルミ蒸着を施したチューブ状の防湿シート(樹脂シートBに相当)中に挿入し、ポリエステルフィルムロールの両端部を輪ゴムで固定して2本のポリエステルフィルムロール梱包体を得た。それぞれのフィルムロールを用いて、ヒートショックシワ発生試験、長期保管後検査のそれぞれを実施した。評価結果を表1に表す。
【0042】
(実施例2、実施例3)
実施例1の発泡性ポリエチレンシートを表1に記載のものに代えた以外は、実施例1と同様にして2本のポリエステルフィルムロール梱包体を取得し、各項目の評価を行った。評価結果を表1に表す。
【0043】
(比較例1)
実施例1の発泡性ポリエチレンシートをポリエステルフィルムロールの外周上に設けず、吸湿材をポリエステルフィルムロールの表層上にセロハンテープで直接貼り付けた以外は実施例1と同様にして、2本のポリエステルフィルムロール梱包体を取得し、各項目の評価を行った。評価結果を表1に表す。
【0044】
(比較例2)
防湿シートを設けない以外は実施例1と同様にして、2本のポリエステルフィルムロール梱包体を取得し、各項目の評価を行った。評価結果を表1に表す。
【0045】
(比較例3)
実施例1の発泡性ポリエチレンシートに代えて、アルミ蒸着ポリエステルフィルム“メタルミー”(登録商標)S25μm(東レフィルム加工製)を、蒸着面を外側にしてポリエステルフィルムロールの外周面上に設けたこと以外は実施例1と同様にして、2本のポリエステルフィルムロール梱包体を取得し、各項目の評価を行った。評価結果を表1に表す。
【0046】
(比較例4)
実施例1の発泡性ポリエチレンシートに代えてポリエチレンフィルムを用いた以外は実施例1と同様にして、2本のポリエステルフィルムロール梱包体を取得し、各項目の評価を行った。評価結果を表1に表す。
【0047】
【0048】
表中、PEはポリエチレンを、PETはポリエチレンテレフタレートを表す。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、外気温変化等の保管環境による影響を軽減し、フィルムロールのシワの発生を抑制するフィルムロール梱包体を提供することを目的とする。本発明のフィルムロール梱包体のフィルムは、シワの発生が少なく高品位であるため、光学フィルム、保護フィルム、離型フィルム等として好適に用いることができる他、包装材料、転写材料、磁気テープ、電絶フィルム、および金属ラミネートなどの一般工材分野などにも用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1:二軸配向PETフィルム
2:コア
3:フィルムロール
4:外周面
5:樹脂シートA
6:巻き終わり部
7:セロハンテープ
8:吸湿剤
9:樹脂シートB
10:被覆後のフィルムロール
11:フィルムロール梱包体