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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】深溝玉軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/58 20060101AFI20230704BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20230704BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20230704BHJP
   F16C 33/80 20060101ALI20230704BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20230704BHJP
   F16J 15/3232 20160101ALN20230704BHJP
【FI】
F16C33/58
F16C19/06
F16C33/78 D
F16C33/80
F16J15/447
F16J15/3232 201
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019139108
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021021456
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健人
(72)【発明者】
【氏名】石和田 博
(72)【発明者】
【氏名】傳寳 功哲
(72)【発明者】
【氏名】ビンアブドゥルハリム アハマドフィルダウス
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-092861(JP,A)
【文献】特開2008-190599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/58 - 33/64
F16C 19/06
F16C 33/72 - 33/82
F16J 15/447
F16J 15/3232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径面に外輪軌道溝が設けられた外輪と、
外径面に内輪軌道溝が設けられた内輪と、
前記外輪軌道溝及び前記内輪軌道溝間に転動自在に配設された複数の玉と、
前記玉の側方に配置されて前記外輪と前記内輪との間を封止するシール部材と、
を備える深溝玉軸受であって、
前記内輪の外径と前記シール部材の内径との間の径方向寸法は、前記外輪の肉厚より大きく、
前記内輪の肉厚は、前記外輪の肉厚より大きく、
前記玉のピッチ円直径は、前記内輪の内径と前記外輪の外径との中間径より大きく、
前記シール部材は、芯金と、前記芯金を覆う弾性材料からなるシール部とを備え、
前記芯金は、前記シール部より軸方向外側に配置され、
前記シール部は、前記芯金の外周縁を覆い半径方向外方に突出して形成された外周縁部と、前記芯金の内周縁から半径方向内方に向かって延出するリップ部と、前記芯金の内側面に固着され、前記外周縁部と前記リップ部とを連結する側部とを有し、
前記側部は、軸方向内側に向かって突出し、前記内輪の外径面及び前記内輪のシール溝の側面との縁部に非接触で近接配置される補助リップ部とを有する、
深溝玉軸受。
【請求項2】
前記玉の軸方向中心線上において、前記内輪軌道の外径と前記内輪の内径との間の径方向寸法をf、前記玉の直径をg、前記外輪軌道溝の内径と前記外輪の外径との間の径方向寸法をhとしたとき、各寸法間の関係は、f>g>hとなる、
請求項1に記載の深溝玉軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深溝玉軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンファン、冷却ファン、換気扇、クリーナー、洗濯機などの家電用モータや、汎用モータ、サーボモータ、ステッピングモータなどの産業用モータ、及び工作機械のスピンドルやエンコーダなどの回転軸は、転がり軸受により回転自在に支承されている。このような用途に使用される転がり軸受では、ラジアル荷重のほかに、両方向のアキシアル荷重を負荷することができ、摩擦トルクが小さく、高速回転する部分や低騒音・低振動が要求される用途に適している深溝玉軸受が多く使用されており、前記深溝玉軸受は、軌道が円弧状の深い溝になっており、軸方向両側にシール部材が取り付けられ、軸受空間内にグリースが封入されている。
【0003】
また、洗濯機などのモータに使用される単列玉軸受として、内輪の肉厚を外輪の肉厚の1.5倍以上として内輪の剛性を高め、内輪のクリープ発生を防止した深溝玉軸受が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-13116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンコーダでは、スリットが切られたディスクを用いて、位置情報の読み取りを行なっている。また、そのスリットは、幅が年々狭くなっている為、ディスクの汚染により読み取りエラーが生じる場合がある。エンコーダなどに使用される転がり軸受の深溝玉軸受では、グリース漏れの抑制や、塵の発生低下が要求されており、さらなる改良が求められている。
特許文献1に記載の単列玉軸受は、内輪に設けられたシール溝に非接触で近接配置されたシール部材を備えているが、グリース漏れや、発生する塵の抑制に対して考慮したものではない。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、グリース漏れを抑制すると共に、長寿命化を可能とする深溝玉軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
内径面に外輪軌道溝が設けられた外輪と、
外径面に内輪軌道溝が設けられた内輪と、
前記外輪軌道溝及び前記内輪軌道溝間に転動自在に配設された複数の玉と、
前記玉の側方に配置されて前記外輪と前記内輪との間を封止するシール部材と、
を備える深溝玉軸受であって、
前記内輪の外径と前記シール部材の内径との間の径方向寸法は、前記外輪の肉厚より大きく、
前記内輪の肉厚は、前記外輪の肉厚より大きく、
前記玉のピッチ円直径は、前記内輪の内径と前記外輪の外径との中間径より大きい、
深溝玉軸受。
【発明の効果】
【0008】
本発明の深溝玉軸受によれば、従来の深溝玉軸受と比べて、内輪の外径とシール部材の内径との間の径方向寸法は、外輪の肉厚より大きいので、グリース漏れを効果的に抑制して深溝玉軸受を長寿命化することができる。
また、内輪の肉厚が、外輪の肉厚より大きくなり、玉のピッチ円直径は、内輪の内径と外輪の外径との中間径より大きいので、玉の個数を増やすことができ、深溝玉軸受の負荷容量が向上して寿命が長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る深溝玉軸受の要部断面図である。
図2図1の深溝玉軸受における玉同士の間隔を示す説明図である。
図3】第1変形例に係る深溝玉軸受の要部断面図である。
図4】第2変形例に係る深溝玉軸受の要部断面図である。
図5】第3変形例に係る深溝玉軸受の要部断面図である。
図6】第4変形例に係る深溝玉軸受の要部断面図である。
図7】第5変形例に係る深溝玉軸受の要部断面図である。
図8】第6変形例に係る深溝玉軸受の要部断面図である。
図9】第7変形例に係る深溝玉軸受の要部断面図である。
図10】第8変形例に係る深溝玉軸受の要部断面図である。
図11】第9変形例に係る深溝玉軸受の要部断面図である。
図12】第10変形例に係る深溝玉軸受の要部断面図である。
図13】第11変形例に係る深溝玉軸受の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る深溝玉軸受の一実施形態及び変形例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の深溝玉軸受10は、内径面に外輪軌道溝11aを有する外輪11と、外径面に内輪軌道溝12aを有する内輪12と、外輪軌道溝11aと内輪軌道溝12aとの間に転動自在に配置された複数の玉13と、玉13を円周方向に所定の間隔で保持する樹脂製の冠型保持器14と、外輪11の内径面の軸方向両側に固定されて、軸受空間Sを密封する一対のシール部材15と、を備える。軸受空間S内には、予めグリースが封入されている。
本実施形態では、外輪軌道溝11a及び内輪軌道溝12aは、玉13の軸方向中心線CLが、深溝玉軸受10の軸方向中間位置となるように、外輪11及び内輪12に形成されている。
【0012】
シール部材15は、鋼板などの金属板により略円環状に形成された芯金16と、芯金16に固着されたゴムなどの弾性材料からなるシール部17とを有する。
【0013】
シール部17は、芯金16の外周縁を覆い半径方向外方に突出して形成された外周縁部17aと、芯金16の内周縁から半径方向内方に向かって延出した円環状のリップ部17bと、芯金16の内側面16aに固着され、外周縁部17aとリップ部17bとを連結する側部17cと、を有する。即ち、芯金16は、シール部材15が深溝玉軸受10に取り付けられた状態で、シール部17より軸方向外側に配置されている。これにより、シール部17の弾性材料に染み込んだグリースの油分が染み出した場合でも、芯金16により軸方向外側に漏れるのを抑制できる。
【0014】
外周縁部17aは、外輪11の軸方向端部に形成されたシール取付溝11eに圧入などによって係止されて、シール部材15を外輪11に固定する。
【0015】
リップ部17bは、内輪12のシール溝12dに軸方向内側から摺接しており、シール部材15は、接触シールを構成している。また、側部17cの径方向中間には、補助リップ部17eが軸方向内側に向かって突出して形成されている。補助リップ部17eは、内輪12の外径面12b及びシール溝12dの側面12fとの縁部12eに非接触で近接配置されている。なお、本実施形態では、縁部12eは、面取りが施されている。
【0016】
これにより、本実施形態のシール部材15は、リップ部17bと補助リップ部17eとによって、外輪11と内輪12との間の軸受空間Sを外部から封止する。
【0017】
ここで、本実施形態の深溝玉軸受10では、内輪12の肉厚cは、外輪11の肉厚dより大きく設定されている(c>d)。内輪12の肉厚cが、外輪11の肉厚dより大きいことで、玉13のピッチ円直径PCDは、内輪12の内径と外輪11の外径との中間径MDより大きい。即ち、前記軸受10の外径と内径を同じ寸法とした場合、内輪12の肉厚cを大きくすることで、外輪11と内輪12の肉厚が同じ標準的な深溝玉軸受と比べて、ピッチ円直径PCDが大きくなり、玉13の個数を増やすことができ、負荷容量を高めて長寿命化が可能となる。また、深溝玉軸受10は、軸方向寸法を小さくしたい場合、玉13の個数を増やすことで、直径gが小さい玉13を用いた場合でも、負荷容量を高めることが可能となり、この結果、深溝玉軸受10の軸方向寸法を小さくすることができる。
なお、内輪12の肉厚cは、内輪12の肩部の外径面12bと内輪12の内径面12cとの間の径方向寸法であり、外輪11の肉厚dは、外輪11の肩部の内径面11bと外輪11の外径面11cとの間の径方向寸法とする。
【0018】
また、内輪12の外径とシール部材15の内径との間の径方向寸法bが外輪11の肉厚dより大きく設定されている(b>d)。これにより、内輪12のシール溝12dの側面12fとシール部材15との径方向における重なり寸法が大きくなる。即ち、シール溝12dの側面12fとシール部17の側部17cとの間に形成されるラビリンス隙間がリップ部17bと補助リップ部17eとの間で径方向に長く形成され、グリースの漏れを抑制できる。
【0019】
また、内輪12の外径とシール部材15の内径との間の径方向寸法bは、内輪12の内径とシール部材15の内径との間の径方向寸法eより大きくなっている(b>e)。したがって、径方向に長い上記ラビリンス隙間を容易に形成することができる。
【0020】
また、内輪軌道溝12aの外径と内輪12の内径との間の径方向寸法をf、玉13の直径をg、外輪軌道溝11aの内径と外輪11の外径との間の径方向寸法をhとしたとき、各寸法間の関係は、f>g>hの関係になっている。これにより、内輪12に嵌合する図示しない軸の慣性を小さくすることができる。
【0021】
さらに、玉13の半径i(=g/2)は、玉13の軸方向端面と外輪11の軸方向端面11dまでの軸方向寸法jより大きく(i>j)より大きな径の玉13を使用するので、軸方向長さが同じである場合、標準的な深溝玉軸受と比較して負荷容量が向上して、長寿命化が可能となる。
【0022】
また、図2も参照して、玉13の直径gは、隣接する玉13同士の周方向間隔kより大きくして(g>k)、より多くの玉13を配設しているので、隣接する玉13同士の周方向間隔kより小さいもの(g<k)より、各玉13が受ける荷重が分散されて小さくなるため、各玉13の寿命を延ばすことができる。
【0023】
さらに、内輪12の外径とシール部材15の芯金16の内径との間の径方向寸法pは、シール部材15の芯金16の内径とシール部材15の内径との間の径方向寸法nより大きいので(p>n)、シール部材15を深溝玉軸受10に取付けた際のシール部材15の変形が抑制されて、グリース漏れをさらに減少できる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の深溝玉軸受10は、内輪12の外径とシール部材15の内径との間の径方向寸法bが外輪11の肉厚dより大きく設定されている(b>d)ので、内輪12のシール溝12dの側面12fとシール部材15との径方向における重なり寸法が大きくなり、封入されたグリースの漏れが抑制される。
【0025】
また、上記構成は、内輪12の肉厚cが、外輪11の肉厚dより大きいことで与えられ、玉13のピッチ円直径PCDは、内輪12の内径と外輪11の外径との中間径MDより大きいので、玉の個数を増やすことができ、深溝玉軸受の負荷容量が向上して寿命が長くなる。
【0026】
また、内輪12の外径とシール部材15の内径との間の径方向寸法bが、内輪12の内径とシール部材15の内径との間の径方向寸法eより大きいので(b>e)、グリース漏れがより抑制される。
【0027】
また、内輪12の肉厚cを外輪11の肉厚dに対して大きくすることで(c>d)、内輪12のシール溝12dの側面12fの径方向長さを大きくすることができ、ラビリンス性能が向上してグリース漏れがさらに抑制される。
【0028】
以下、本発明の各変形例に係る深溝玉軸受について図面を参照して説明する。なお、各変形例の深溝玉軸受の説明では、上記実施形態のものと異なる部分について主に説明し、寸法関係を含め、上記実施形態と同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0029】
(第1変形例)
図3に示すように、第1変形例の深溝玉軸受10aでは、シール部材15Aのリップ部17bがシール溝12dと接触しない非接触シールを構成している。したがって、リップ部17b及び補助リップ部17eの両方を非接触シールとすることで、回転トルクを軽減することができる。
【0030】
(第2変形例)
図4に示すように、第2変形例の深溝玉軸受10bでは、シール部材15Bは、リップ部17bと補助リップ部17eとの間に、シール溝12dの側面12fと非接触な複数の他の補助リップ部17fを備える。これにより、シール部材15Bによる密封性能をさらに向上することができる。
【0031】
(第3変形例)
図5に示すように、第3変形例の深溝玉軸受10cでは、軸方向一方側にシール部材15C(金属シールド)がシール取付溝11eに固定されている。したがって、内輪12と非接触なシール部材15Cを軸方向一方側に用いることで、回転トルクを軽減することができる。
【0032】
(第4変形例)
図6に示すように、第4変形例の深溝玉軸受10dでは、シール部材15Dは、芯金16がシール部17の軸方向内側に配置されている。この場合、シール部材15Dは、補助リップ部17eが芯金16に別途接合されてもよいし、或いは、補助リップ部17eを有しない構成であってもよい。
【0033】
(第5変形例)
図7に示すように、第5変形例の深溝玉軸受10eでは、樹脂製の保持器14の代わりに、鋼製の保持器14Aが使用されている。これにより、保持器14Aの耐久性が向上し、深溝玉軸受10eの寿命が長くなる。
【0034】
(第6変形例)
図8に示すように、第6変形例の深溝玉軸受10fでは、鋼製の玉13の代わりに、セラミック製の玉13Aが使用されており、これにより、玉13Aの長寿命化を図ることができる。
【0035】
(第7変形例)
図9に示すように、第7変形例の深溝玉軸受10gでは、シール部材15Eのリップ部17bが内輪12の側面12fに軸方向外側から摺接する(内当たり)。リップ部17bが内輪12の側面12fに内当たりすることで、深溝玉軸受10gに予圧が付与される方向に応じて、リップ部17bと側面12fとの接触面圧を適切に維持することができる。また、シール部材15Eを用いることで、深溝玉軸受10g内の空気の流れ方向に応じて、シール性に有利に作用させることができる。
なお、シール部材15Eは、軸方向一方側にのみ設け、軸方向他方側には、上記実施形態の外当たりのシール部材15が設けられてもよい。
【0036】
(第8変形例)
図10に示すように、第8変形例の深溝玉軸受10hでは、外輪11の外径面11cに形成されたOリング溝11gに2本のOリング20が装着されている。Oリング20は、外輪11が内嵌する不図示のハウジングとの摩擦力により、外輪11のクリープ発生を防止する。
【0037】
(第9変形例)
図11に示すように、第9変形例の深溝玉軸受10iでは、内輪12のシール溝12d側面12fに、軸方向に突出する複数の突起部12hが環状に設けられている。複数の突起部12hは、シール部17の側部17cとの間に非接触シールを形成してグリース漏れをさらに抑制する。
【0038】
(第10変形例)
図12に示すように、第10変形例の深溝玉軸受10jでは、内輪12のシール溝12dの側面12fが、径方向外方に向かって軸方向幅が次第に狭くなる、断面略台形状に形成されている。これにより、内輪12の加工性を向上することができる。
【0039】
(第11変形例)
図13に示すように、第11変形例の深溝玉軸受10kでは、玉13が外輪11及び内輪12に対して軸方向にオフセットされて配置されている。具体的には、玉13の軸方向中心線CLから深溝玉軸受10kの一方の端面21aまでの軸方向寸法lが、玉13の軸方向中心線CLから深溝玉軸受10kの他方の端面21bまでの軸方向寸法mより大きく設定されている(l>m)。
【0040】
従って、玉13の軸方向中心線CLから深溝玉軸受10kの一方の端面21aまでの軸方向寸法lが大きく設定された一方の端面21a側では、保持器14とシール部材15との干渉が生じ難くなる。また、保持器14とシール部材15との干渉の虞がない他方の端面21b側では、軸方向寸法を短くすることができ、深溝玉軸受10kの軸方向長さが短くなる。
【0041】
なお、本発明は、前述した実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0042】
また、上記実施形態及び各変形例では、通常、内輪12及び外輪11は、焼入れ、焼き戻しなどの熱処理が施されて硬度向上が図られている。ただし、本発明の深溝玉軸受は、該熱処理を浸炭窒化処理に変更することで、内輪12及び外輪11の表面硬さをさらに向上させることができ、内輪12及び外輪11の表面(内輪軌道溝12a及び外輪軌道溝11a)の疲労寿命の向上を図ることができる。なお、浸炭窒化処理は、内輪12にのみ施されてもよい。
【0043】
また、本実施形態のように、冠型保持器14を用いる場合、シール部材15が軸方向両側で異なるなど、深溝玉軸受が軸方向において非対称である場合や、深溝玉軸受周囲の部品(例えば、エンコーダ)の配置に応じて、冠型保持器14の組み込み方向は図1と反対方向としてもよい。即ち、冠型保持器14の円環部が配置される側を玉13に対して反対側にしてもよい。この場合、グリースを封入する方向も、保持器14の組み込み方向の変更に応じて変更される。
【0044】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 内径面に外輪軌道溝が設けられた外輪と、
外径面に内輪軌道溝が設けられた内輪と、
前記外輪軌道溝及び前記内輪軌道溝間に転動自在に配設された複数の玉と、
前記玉の側方に配置されて前記外輪と前記内輪との間を封止するシール部材と、
を備える深溝玉軸受であって、
前記内輪の外径と前記シール部材の内径との間の径方向寸法は、前記外輪の肉厚より大きく、
前記内輪の肉厚は、前記外輪の肉厚より大きく、
前記玉のピッチ円直径は、前記内輪の内径と前記外輪の外径との中間径より大きい、
深溝玉軸受。
この構成によれば、内輪とシール部材との径方向重なり寸法を大きくすることができ、シール性能が向上してグリース漏れが抑制され、深溝玉軸受を長寿命化することができ、また、ピッチ円直径を大きくすることで、玉の個数を増やすことができ、深溝玉軸受の負荷容量が向上して寿命が長くなる。
【0045】
(2) 前記シール部材は、芯金と、前記芯金を覆う弾性材料からなるシール部とを備え、
前記芯金は、前記シール部より軸方向外側に配置される、
(1)に記載の深溝玉軸受。
この構成によれば、封入されたグリースの漏れ出しが芯金により効果的に防止される。
【符号の説明】
【0046】
10 深溝玉軸受
11 外輪
11a 外輪軌道溝
12 内輪
12a 内輪軌道溝
13,13A 玉
15,15A,15B,15C,15D,15E シール部材
16 芯金
17 シール部
b 内輪の外径とシール部材の内径との間の径方向寸法
c 内輪の肉厚
d 外輪の肉厚
MD 内輪の内径と外輪の外径との中間径
PCD ピッチ円直径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13