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特許7306826造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラム及び物理洗浄工程トラブル判定装置、並びに記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラム及び物理洗浄工程トラブル判定装置、並びに記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/00 20060101AFI20230704BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20230704BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20230704BHJP
   C02F 1/50 20230101ALI20230704BHJP
   C02F 1/52 20230101ALI20230704BHJP
   C02F 1/70 20230101ALI20230704BHJP
【FI】
B01D65/00
B01D65/02
B01D65/02 520
C02F1/44 D
C02F1/50 520B
C02F1/50 520F
C02F1/50 520P
C02F1/50 550H
C02F1/50 560E
C02F1/50 560Z
C02F1/52 Z
C02F1/70 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018524142
(86)(22)【出願日】2017-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2017022881
(87)【国際公開番号】W WO2017221984
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-03-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2016122335
(32)【優先日】2016-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016157225
(32)【優先日】2016-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】富岡 一憲
(72)【発明者】
【氏名】新谷 昌之
(72)【発明者】
【氏名】楯岡 大嗣
(72)【発明者】
【氏名】大久保 賢一
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】河本 充雄
【審判官】松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-87516(JP,A)
【文献】特開2011-189287(JP,A)
【文献】特開2011-212608(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031331(WO,A1)
【文献】特開2010-207795(JP,A)
【文献】特開2010-162504(JP,A)
【文献】特開2004-216264(JP,A)
【文献】特表2010-516458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を分離膜に透過させて処理水を得るろ過工程と、前記分離膜を複数の工程で物理的に洗浄する物理洗浄工程と、を繰り返す造水システムの前記物理洗浄工程のトラブルを判定するためにコンピュータを、
前記物理洗浄工程の運転データを入力する運転データ入力手段、
前記運転データを記録しておく運転データ記録手段、
トラブルを判定しようとする前記物理洗浄工程の空洗工程、排水工程、給水工程の少なくともいずれかの工程を選択する工程選択手段、
予め前記運転データの加工ルールを記録しておく加工ルール記録手段、
前記工程選択手段により選択された工程の前記加工ルールに基づき前記運転データ記録手段に記録された前記運転データを加工して加工データを得る手段、
予め前記加工データに関してトラブル判定を行うために設定される正常値を設定値として記録しておく設定値記録手段、
前記加工データと前記設定値を比較して前記加工データが前記設定値を逸脱した場合にトラブルと判定する物理洗浄工程トラブル判定手段、
前記トラブルの判定を出力する物理洗浄工程トラブル判定出力手段、
として機能させることを特徴とする造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項2】
前記物理洗浄工程トラブル判定出力手段が、トラブルの原因、対策の少なくとも一つを表示するものであることを特徴とする請求項1に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項3】
前記コンピュータを、前記ろ過工程と前記物理洗浄工程それぞれのデータ記録周期を異なる周期に設定する記録周期設定手段としてさらに機能させ、前記記録周期設定手段が前記ろ過工程よりも前記物理洗浄工程のデータ記録周期を短く設定することを特徴とする請求項1または2に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項4】
前記物理洗浄工程が少なくとも空洗工程、排水工程、給水工程のいずれかを有し、前記工程選択手段が前記空洗工程、前記排水工程、前記給水工程を選択するものであり、前記加工データに用いられる運転データが、前記分離膜の原水側の圧力データであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項5】
前記物理洗浄工程が、空洗工程、給水工程を有し、前記工程選択手段が、前記空洗工程、前記給水工程を選択するものであり、前記加工データに用いられる運転データが各々の工程で流入する空気、原水の流量データであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項6】
前記加工データが前記設定値を複数回連続して逸脱した場合に、前記物理洗浄工程トラブル判定手段がトラブルと判定することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項7】
被処理水を分離膜に透過させて処理水を得るろ過工程と、前記分離膜を複数の工程で物理的に洗浄する物理洗浄工程と、を繰り返す造水システムの前記物理洗浄工程のトラブルを判定する造水システムのトラブル判定装置であって、
前記物理洗浄工程の運転データを入力する運転データ入力手段と、
前記運転データを記録しておく運転データ記録手段と、
トラブルを判定しようとする前記物理洗浄工程の空洗工程、排水工程、給水工程の少なくともいずれかの工程を選択する工程選択手段と、
予め前記運転データの加工ルールを記録しておく加工ルール記録手段と、前記工程選択手段により選択された工程の前記加工ルールに基づき前記運転データ記録手段に記録された前記運転データを加工して加工データを得る手段と、
予め前記加工データに関してトラブル判定を行うために設定される正常値を設定値として記録しておく設定値記録手段と、
前記加工データと前記設定値を比較して前記加工データが前記設定値を逸脱した場合にトラブルと判定する物理洗浄工程トラブル判定手段と、
前記トラブルの判定を出力する物理洗浄工程トラブル判定出力手段と、
を備えることを特徴とする造水システムの物理洗浄工程トラブル判定装置。
【請求項8】
前記物理洗浄工程トラブル判定出力手段が、トラブルの原因、対策の少なくとも一つを表示するものであることを特徴とする請求項7に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定装置。
【請求項9】
前記ろ過工程と前記物理洗浄工程それぞれのデータ記録周期を異なる周期に設定する記録周期設定手段をさらに備え、前記記録周期設定手段が前記ろ過工程よりも前記物理洗浄工程のデータ記録周期を短く設定することを特徴とする請求項7または8に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定装置。
【請求項10】
前記物理洗浄工程が少なくとも空洗工程、排水工程、給水工程のいずれかを有し、前記工程選択手段が前記空洗工程、前記排水工程、前記給水工程を選択するものであり、前記加工データに用いられる運転データが、前記分離膜の原水側の圧力データであることを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定装置。
【請求項11】
前記物理洗浄工程が、空洗工程、給水工程を有し、前記工程選択手段が、前記空洗工程、前記給水工程を選択するものであり、前記加工データに用いられる運転データが各々の工程で流入する空気、原水の流量データであることを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定装置。
【請求項12】
前記加工データが前記設定値を複数回連続して逸脱した場合に、前記物理洗浄工程トラブル判定手段がトラブルと判定することを特徴とする請求項7~11のいずれか1項に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定装置。
【請求項13】
被処理水を分離膜に透過させて処理水を得るろ過工程と、前記分離膜を複数の工程で物理的に洗浄する物理洗浄工程と、を繰り返す造水システムの前記物理洗浄工程のトラブルを判定するためにコンピュータを、
前記物理洗浄工程の運転データを入力する運転データ入力手段、
前記運転データを記録しておく運転データ記録手段、
トラブルを判定しようとする前記物理洗浄工程の空洗工程、排水工程、給水工程の少なくともいずれかの工程を選択する工程選択手段、
予め前記運転データの加工ルールを記録しておく加工ルール記録手段、
前記工程選択手段により選択された工程の前記加工ルールに基づき前記運転データ記録手段に記録された前記運転データを加工して加工データを得る手段、
予め前記加工データに関してトラブル判定を行うために設定される正常値を設定値として記録しておく設定値記録手段、
前記加工データと前記設定値を比較して前記加工データが前記設定値を逸脱した場合にトラブルと判定する物理洗浄工程トラブル判定手段、
前記トラブルの判定を出力する物理洗浄工程トラブル判定出力手段、
として機能させることを特徴とする造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラム。
【請求項14】
前記物理洗浄工程トラブル判定出力手段が、トラブルの原因、対策の少なくとも一つを表示するものであることを特徴とする請求項13に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラム。
【請求項15】
前記コンピュータを、前記ろ過工程と前記物理洗浄工程それぞれのデータ記録周期を異なる周期に設定する記録周期設定手段としてさらに機能させ、前記記録周期設定手段が前記ろ過工程よりも前記物理洗浄工程のデータ記録周期を短く設定することを特徴とする請求項13または14に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラム。
【請求項16】
前記物理洗浄工程が少なくとも空洗工程、排水工程、給水工程のいずれかを有し、前記工程選択手段が前記空洗工程、前記排水工程、前記給水工程を選択するものであり、前記加工データに用いられる運転データが、前記分離膜の原水側の圧力データであることを特徴とする請求項13~15のいずれか1項に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラム。
【請求項17】
前記物理洗浄工程が、空洗工程、給水工程を有し、前記工程選択手段が、前記空洗工程、前記給水工程を選択するものであり、前記加工データに用いられる運転データが各々の工程で流入する空気、原水の流量データであることを特徴とする請求項13~15のいずれか1項に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラム。
【請求項18】
前記加工データが前記設定値を複数回連続して逸脱した場合に、前記物理洗浄工程トラブル判定手段がトラブルと判定することを特徴とする請求項13~17のいずれか1項に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜を用いて河川水・湖水・海水などの自然水や下廃水・工業排水を処理して処理水を得る造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラム及び物理洗浄工程トラブル判定装置、並びに記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
膜分離法は、省エネルギー・スペース、およびろ過水質向上等の特長を有するため、様々な分野での使用が拡大している。例えば、精密ろ過膜や限外ろ過膜を河川水や地下水や下水処理水から工業用水や水道水を製造する浄水プロセスへの適用や、海水淡水化逆浸透膜処理工程における前処理や、食品工業分野での製造プロセスへの適用があげられる。
【0003】
被処理水を膜ろ過すると、処理水量に伴って、膜表面や膜細孔内及び分離膜モジュール内に汚染物質の蓄積量が増大していき、処理水量・水質の低下あるいは差圧の上昇が問題となってくる。
【0004】
そこで、膜の一次側に気泡を導入し、膜を揺動させ、膜同士を触れ合わせることにより膜表面の付着物質を掻き落とす空気洗浄や、膜のろ過方法とは逆方向に処理水あるいは清澄水を圧力で押し込み、膜表面や膜細孔内に付着していた汚染物質を排除する逆圧洗浄、空気洗浄と逆圧洗浄を同時に行う空逆同時洗浄等の物理洗浄が実用化されている。
【0005】
さらに安定的かつ長期間の膜ろ過連続運転を行うため、特許文献1、2には、ろ過時の膜差圧の測定値に応じて、逆圧洗浄の洗浄時間の調整、または逆圧洗浄や空気洗浄などの物理洗浄頻度を制御する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開平11-169851号公報
【文献】日本国特開平11-319516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1~2に記載された膜ろ過差圧に応じた洗浄時間・頻度など物理洗浄制御を実施しても物理洗浄自体が正常に実施されなければ、差圧上昇を抑制できず膜ろ過の運転を十分に安定化できないといった問題があった。さらに、ろ過時間に対して通常短い時間で実施される物理洗浄のトラブルを判定するにはデータの収集周期を短い間隔に設定する必要があり、その場合、運転データ保存量が増大することでサーバー容量が圧迫されるといった問題があった。
【0008】
本発明は、物理洗浄工程時の運転データを効率的に収集・分析し、効率的に各工程でのトラブルを判定しかつ運転予測し早急に対応することで、造水システムを安定運転可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、次の特徴を有するものである。
【0010】
(1)被処理水を分離膜に透過させて処理水を得るろ過工程と、前記分離膜を複数の工程で物理的に洗浄する物理洗浄工程と、を繰り返す造水システムの前記物理洗浄工程のトラブルを判定するためにコンピュータを、記物理洗浄工程の運転データを入力する運転データ入力手段、前記運転データを記録しておく運転データ記録手段、トラブルを判定しようとする前記物理洗浄工程の各工程を選択する工程選択手段、予め前記運転データの加工ルールを記録しておく加工ルール記録手段、前記工程選択手段により選択された工程の前記加工ルールに基づき前記運転データ記録手段に記録された前記運転データを加工して加工データを得る手段、予め前記加工データに関する設定値を記録しておく設定値記録手段、前記加工データと前記設定値を比較して前記加工データが前記設定値を逸脱した場合にトラブルと判定する物理洗浄工程トラブル判定手段、前記トラブルの判定を出力する物理洗浄工程トラブル判定出力手段、として機能させることを特徴とする造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0011】
(2)前記物理洗浄工程トラブル判定出力手段が、トラブルの原因、対策の少なくとも一つを表示するものであることを特徴とする(1)に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0012】
(3)前記コンピュータを、前記ろ過工程と前記物理洗浄工程それぞれのデータ記録周期を異なる周期に設定する記録周期設定手段としてさらに機能させ、前記記録周期設定手段が前記ろ過工程よりも前記物理洗浄工程のデータ記録周期を短く設定することを特徴とする(1)または(2)に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0013】
(4)前記物理洗浄工程が逆洗工程を有し、前記工程選択手段が前記逆洗工程を選択するものであり、前記加工ルールが前記逆洗に用いられる逆洗水量または逆洗流量のデータを用いるものであることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0014】
(5)前記物理洗浄工程が少なくとも空洗工程、排水工程、給水工程のいずれかを有し、前記工程選択手段が前記空洗工程、前記排水工程、前記給水工程を選択するものであり、前記加工ルールが、前記分離膜の原水側の圧力データを用いるものであることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0015】
(6)前記物理洗浄工程が、空洗工程、給水工程を有し、前記工程選択手段が、前記空洗工程、前記給水工程を選択するものであり、前記加工ルールが各々の工程で流入する空気、原水の流量データを用いるものであることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0018】
)前記加工データが前記設定値を複数回連続して逸脱した場合に、前記物理洗浄工程トラブル判定手段がトラブルと判定することを特徴とする(1)~()のいずれかに記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0019】
)被処理水を分離膜に透過させて処理水を得るろ過工程と、前記分離膜を複数の工程で物理的に洗浄する物理洗浄工程と、を繰り返す造水システムの前記物理洗浄工程のトラブルを判定する造水システムのトラブル判定装置であって、前記物理洗浄工程の運転データを入力する運転データ入力手段と、前記運転データを記録しておく運転データ記録手段と、トラブルを判定しようとする前記物理洗浄工程工程を選択する工程選択手段と、予め前記運転データの加工ルールを記録しておく加工ルール記録手段と、前記工程選択手段により選択された工程の前記加工ルールに基づき前記運転データ記録手段に記録された前記運転データを加工して加工データを得る手段と、予め前記加工データに関する設定値を記録しておく設定値記録手段と、前記加工データと前記設定値を比較して前記加工データが前記設定値を逸脱した場合にトラブルと判定する物理洗浄工程トラブル判定手段と、前記トラブル判定を出力する物理洗浄工程トラブル判定出力手段と、を備えることを特徴とする造水システムの物理洗浄工程トラブル判定装置。
【0020】
)前記物理洗浄工程トラブル判定出力手段が、トラブルの原因、対策の少なくとも一つを表示するものであることを特徴とする()に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定装置。
【0021】
10)前記コンピュータを、前記ろ過工程と前記物理洗浄工程それぞれのデータ記録周期を異なる周期に設定する記録周期設定手段としてさらに機能させ、前記記録周期設定手段が前記ろ過工程よりも前記物理洗浄工程のデータ記録周期を短く設定することを特徴とする()または()に記載の造水システムのトラブル判定装置。
【0022】
11)前記物理洗浄工程が逆洗工程を有し、前記工程選択手段が前記逆洗工程を選択するものであり、前記加工ルールが前記逆洗に用いられる逆洗水量または逆洗流量のデータを用いるものであることを特徴とする()~(10)のいずれかに記載の物理洗浄工程造水システムのトラブル判定装置。
【0023】
12)前記物理洗浄工程が少なくとも空洗工程、排水工程、給水工程のいずれかを有し、前記工程選択手段が前記空洗工程、前記排水工程、前記給水工程を選択するものであり、前記加工ルールが、前記分離膜の原水側の圧力データを用いるものであることを特徴とする()~(10)のいずれかに記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定装置。
【0024】
13)前記物理洗浄工程が、空洗工程、給水工程を有し、前記工程選択手段が、前記空洗工程、前記給水工程を選択するものであり、前記加工ルールが各々の工程で流入する空気、原水の流量データを用いるものであることを特徴とする()~(10)のいずれかに記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定装置。
【0027】
14)前記加工データが前記設定値を複数回連続して逸脱した場合に、前記物理洗浄工程トラブル判定手段がトラブルと判定することを特徴とする()~(13)のいずれかに記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定装置。
【0028】
15)被処理水を分離膜に透過させて処理水を得るろ過工程と、前記分離膜を複数の工程で物理的に洗浄する物理洗浄工程と、を繰り返す造水システムの前記物理洗浄工程のトラブルを判定するためにコンピュータを、前記物理洗浄工程の運転データを入力する運転データ入力手段、前記運転データを記録しておく運転データ記録手段、トラブルを判定しようとする前記物理洗浄工程の各工程を選択する工程選択手段、予め前記運転データの加工ルールを記録しておく加工ルール記録手段、前記工程選択手段により選択された工程の前記加工ルールに基づき前記運転データ記録手段に記録された前記運転データを加工して加工データを得る手段、予め前記加工データに関する設定値を記録しておく設定値記録手段、前記加工データと前記設定値を比較して前記加工データが前記設定値を逸脱した場合にトラブルと判定する物理洗浄工程トラブル判定手段、前記トラブルの判定を出力する物理洗浄工程トラブル判定出力手段、として機能させることを特徴とする造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラム。
【0029】
16)前記物理洗浄工程トラブル判定出力手段が、トラブルの原因、対策の少なくとも一つを表示するものであることを特徴とする(15)に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラム。
【0030】
17)前記コンピュータを、前記ろ過工程と前記物理洗浄工程それぞれのデータ記録周期を異なる周期に設定する記録周期設定手段としてさらに機能させ、前記記録周期設定手段が前記ろ過工程よりも前記物理洗浄工程のデータ記録周期を短く設定することを特徴とする(15)または(16)に記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラム。
【0031】
18)前記物理洗浄工程が逆洗工程を有し、前記工程選択手段が前記逆洗工程を選択するものであり、前記加工ルールが前記逆洗に用いられる逆洗水量または逆洗流量のデータを用いるものであることを特徴とする(15)~(17)のいずれかに記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラム。
【0032】
19)前記物理洗浄工程が少なくとも空洗工程、排水工程、給水工程のいずれかを有し、前記工程選択手段が前記空洗工程、前記排水工程、前記給水工程を選択するものであり、前記加工ルールが、前記分離膜の原水側の圧力データを用いるものであることを特徴とする(15)~(17)のいずれかに記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラム。
【0033】
20)前記物理洗浄工程が、空洗工程、給水工程を有し、前記工程選択手段が、前記空洗工程、前記給水工程を選択するものであり、前記加工ルールが各々の工程で流入する空気、原水の流量データを用いるものであることを特徴とする(15)~(17)のいずれかに記載の物理洗浄工程造水システムのトラブル判定プログラム。
【0036】
21)前記加工データが前記設定値を複数回連続して逸脱した場合に、前記物理洗浄工程トラブル判定手段がトラブルと判定することを特徴とする(15)~(20)のいずれかに記載の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラム。
【発明の効果】
【0044】
本発明の造水システムの物理洗浄工程トラブル判定プログラムによれば、物理洗浄工程時の運転データを効率的に収集・分析し、効率的に各工程でのトラブルを判定することで、トラブル発生時に早急なトラブル対応を行うことができるため、安定的に造水システムを運転することを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、本発明が適用される造水システムの一例を示す装置概略フロー図である。
図2図2は、本発明の実施形態を示す概略図である。
図3図3は、本発明の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面に示す実施態様に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施態様に限定されるものではない。
【0047】
本発明の造水システムとは、例えば、図1に示すように、被処理水を貯留する原水槽1と、被処理液を供給する供給ポンプ2と、被処理水をろ過する分離膜3と、分離膜3を逆洗する場合用いるろ過液の一部を貯留する逆洗槽4と、ろ過液を分離膜3に供給し逆洗する逆洗ポンプ5と、分離膜3を空洗するための空洗ブロア6と、供給ポンプ2より供給される被処理液を分離膜3に供給する原水配管8と、逆洗ポンプ5より供給される逆洗液を分離膜3に供給する逆洗配管9と、空洗ブロア6より供給される空気を分離膜3に供給する空洗配管10と、逆洗時もしくは分離膜3の一次側に被処理水を供給し過剰となった場合に液が流出する逆洗排水配管11と、分離膜3の一次側の被処理水または洗浄排水を排水する排水配管12と、分離膜3からろ過水が流出するろ過水配管13と、原水配管8に設置され分離膜3への供給圧力を測定する供給圧力計21と、逆洗配管9に設置され逆洗の流量を測定する逆洗流量計22と、空洗配管10に設置され空洗の流量を測定する空洗流量計23と、ろ過水配管13に設置されろ過水圧力を測定するろ過圧力計24と、原水配管8に設置され分離膜3への供給流量を測定する供給流量計25が設けられている造水システム30である。
【0048】
被処理水とは分離膜を用いて処理する溶液のことであり、河川水、地下水、海水、下水処理水、工場廃水、培養液などが例として挙げられる。
【0049】
なお、「一次側」とは、分離膜で仕切られた空間の内、被処理水が供給される側であり、「二次側」とは、その逆である。
【0050】
分離膜で使用される分離膜の孔径としては、多孔質であれば特に限定しないが、所望の被処理水の性質や水量によって、MF膜(精密ろ過膜)を用いたり、UF膜(限外ろ過膜)を用いたり、あるいは両者を併用したりする。例えば、濁質成分、大腸菌、クリプトスポリジウム等を除去したい場合はMF膜でもUF膜のどちらを用いても構わないが、ウィルスや高分子有機物等も除去したい場合は、UF膜を用いるのが好ましい。
【0051】
分離膜の形状としては、中空糸膜、平膜、管状膜、モノリス膜等があるが、いずれでも構わない。また、分離膜の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、およびクロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリビニルアルコールおよびポリエーテルスルホンやセラミック等の無機素材からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含んでいると好ましく、さらに膜強度や耐薬品性の点からはポリフッ化ビニリデン(PVDF)がより好ましく、親水性が高く耐汚れ性が強いという点からはポリアクリロニトリルがより好ましい。
【0052】
また膜ろ過方式としては全量ろ過型モジュールでもクロスフローろ過型であっても差し支えないが、エネルギー消費量が少ないという点から全量ろ過型である方が好ましい。さらに加圧型であっても浸漬型であっても差し支えないが、高流束運転が可能であるという点から加圧型である方が好ましい。また、膜の外側から原水を供給し、内側から透過水を得る外圧式であっても、膜の内側から原水を供給し、外側から透過水を得る内圧式であっても差し支えないが、前処理の簡便さの観点から外圧式である方が好ましい。
【0053】
前記造水システム30において、ろ過時、被処理水は供給ポンプ2により、分離膜3の一次側に供給され、二次側からろ過水を得るが、ろ過時間経過に従って、分離膜のろ過抵抗、すなわち分離膜3の一次側と二次側の圧力差(以後、差圧)が上昇する。この差圧上昇を押さえるために、定期的には物理洗浄(物理洗浄工程)を行い、ろ過と物理洗浄を繰り返しながら運転するのが一般的である。
【0054】
物理洗浄はろ過を一次停止し、逆洗工程、空洗工程、排水工程、給水工程の順に実施するのが一般的であるが、逆洗工程と空洗工程を同時に実施する、排水工程後に逆洗工程を実施する、もしくはいずれかの工程を省略あるいは複数回実施しても問題無い。
【0055】
逆洗工程は、逆洗槽4と貯蓄されたろ過水を、逆洗ポンプ5により、分離膜3の二次側から一次側へと、ろ過とは反対方向に洗浄するものであり、一次側から出てくる逆洗液は逆洗排水配管11より系外に排出され、所定時間逆洗後、逆洗ポンプ5を停止して逆洗工程は終了となる。
【0056】
空洗工程は、空洗ブロア6より、空気を分離膜3の下部に加圧空気を供給し、分離膜を揺動するように洗浄する工程のことであり、所定時間空洗後、空洗ブロア6を停止して空洗工程は終了となる。なお空気発生源は、ブロアであってもコンプレッサーであっても構わないが、コンプレッサーの場合は、空気中の油分が分離膜に供給されないようオイルフリータイプであることが好ましい。
【0057】
排水工程は、逆洗工程および空洗工程にて分離膜3より取り除かれた濁質成分を系外に排出するものであり、分離膜3の下部に接続される排水配管12より系外に排出され、所定排水時間後、排水工程は終了となる。
【0058】
給水工程は、排水工程後に、分離膜3の一次側に被処理水を供給する工程であり、供給ポンプ2により、分離膜3の一次側へと被処理水が供給され、一次側が満水状態となると過剰分は逆洗排水配管11よりオーバーフローされ、所定給水時間後、給水工程は終了となる。
【0059】
なお前記物理洗浄の各工程については、通常PLCなどの制御装置により、図示はしないが、空気作動弁もしくは電動弁などの自動弁により工程を切り替えて、自動で実施されるのが一般的である。
【0060】
この様なろ過と物理洗浄とを繰り返す造水システム30において、様々な要因により急激な差圧上昇に代表されるトラブルが発生した場合、物理洗浄の各工程時間・頻度などを変更して対応するが、物理洗浄自体が正常に実施されなければ、差圧上昇を抑制できない。
【0061】
そこで本発明では、ろ過と物理洗浄を繰り返し運転する造水システムのトラブルを判定するトラブル判定プログラム、当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、管理装置、トラブル判定装置に関するものである。図2に示す通り、トラブル判定プログラム32は、下記の手段を有するコンピュータ31を機能させるものである。トラブル判定プログラム32は、コンピュータ31のメモリ、ハードディスクなどの記録装置や、後述するPLCやDCSなどの制御管理システム等に記録可能であり、記録の形態は特に限定されないが、本図では説明の便宜上、コンピュータ31の内部に収納された状態で示されている。
【0062】
造水システム30からの運転データを得るコンピュータ31は、造水システム30の運転データのうちろ過や物理洗浄に関わるデータを工程別に抜き出し入力する運転データ入力手段41を有し、運転データ入力手段41で得られる各工程での各測定値は運転データ記録手段42に記録される。運転データ記録手段42に記録されたデータは、どの工程のトラブル判定を行うかの工程選択手段43により工程毎に分割され、分割されたデータは、トラブル判定のため加工するための加工ルールを記憶しておく加工ルール記憶手段44に記憶された加工ルールに沿って、加工データを得る手段45で加工される。
【0063】
その後、トラブル判定する場合に判定値となる前記加工データに関する設定値が記録しておく設定値記録手段46に記憶された設定値と比較して、前記加工データが前記設定値を逸脱した場合にトラブル判定手段47でトラブル判定が行われる。これにより、ろ過工程が正常か、物理洗浄各工程において洗浄が正常に行われているかを判定し、逸脱する場合は判定結果を出力するトラブル判定出力手段48からトラブル判定が出力される。これにより、工程別に自動でトラブルの有無を確認し、トラブル発生時には、どの工程においてどの様なトラブルが発生しているかを瞬時に確認できる。
【0064】
なお前記加工ルールは、工程毎に関連する運転データを積算値、最大値、平均値、最小値、初期値または規定値に対しての変化量などに加工するルールであり、また加工しないルールも含まれていても問題ない。また前記運転データ入力手段はろ過や物理洗浄とは関係ない水質などの運転データを入力としても問題ない。
【0065】
トラブルが発生した場合、トラブルの原因と対策が分かると、トラブル対応を早急にできるため、停機時間も短くできさらに好ましい。そこで、本発明では、トラブルの原因と対策の少なくとも一つを表示させることを特徴としている。これにより、トラブル発生時に早急な対応が可能となり、トラブル時に造水システムの停機時間を最小限にすることが可能となる。
【0066】
また、ろ過時間に対して通常短い時間で実施される洗浄工程のデータを解析し、トラブルの診断を行うためには、データの収集(サンプリング、取得あるいは記録とも言う)周期を短い時間に設定する必要があるが、運転データの保存(記録)量が増大することで、サーバー容量が圧迫されることから、データの記録周期を短く設定できないという問題もあった。そこで、ろ過工程と洗浄工程それぞれの運転データを区別して異なる記録周期に設定するため、記録周期設定手段55をさらに設けることも好ましい態様である。前記記録周期設定手段55は、前記運転データ入力手段41の上流側に設けることが好ましい。
【0067】
前記記録周期設定手段55の記録周期としては、ろ過工程であれば数十秒~数時間単位で任意に設定してよいが、サーバー容量の圧迫を防ぐため、1分以上となるよう設定するのが好ましい。ただし、洗浄工程においてはろ過工程と比べて洗浄時間自体が短く、ろ過工程と同じ記録周期ではデータを取得することができないため、数秒~数十秒単位に設定することが好ましく、トラブル診断のためのデータ解析には5秒以下に設定することがより好ましい。このように各工程のトラブル判定可能な必要最小限の運転データを取得するようにすることでサーバー容量の増大を防ぐことができ、インターネットを経由して運転データを取得する形態の場合は、通信費も削減可能となる。
【0068】
更に、本発明では、物理洗浄の逆洗工程において、前記加工ルールが逆洗の設定時間内に使用される逆洗水のトータル水量である逆洗水量または逆洗の瞬時値である逆洗流量のデータを用いることを特徴としている。逆洗工程にとっては、逆洗流量が規定値以上となっていることは勿論のこと、逆洗水のトータル量も規定値通りであるかが重要であり、これらが規定値以下となると逆洗効果が減少し、分離膜3の差圧上昇の原因となる。例えば逆洗水量は以下の計算式により表される。
【0069】
逆洗水量(m)=逆洗流量(m/h)/3600sec×逆洗時間(sec)
【0070】
なお、逆洗水量は上記式により算出しても良いし、逆洗流量を逆洗時間分積算して算出しても良い。また前記逆洗流量は逆洗流量計22の瞬時値が用いられるのが一般的である。また逆洗流量は、逆洗の効果を向上させるため、通常のろ過流量よりも多い流量とすることが一般的である。これらを分析することで逆洗工程におけるトラブル判定が可能となる。
【0071】
また、物理洗浄の空洗工程において、造水システムによっては図1に示す空洗配管10に設置され空洗の流量を測定する空洗流量計23が設置されていない場合がある。更に造水システム30には分離膜の液位を確認するための液面計は設置されていないことが一般的である。そこで、本発明では、一般的に造水システム30には設置されている原水配管8に設置され分離膜3への供給圧力を測定する供給圧力計21の圧力データによりトラブル判定することを特徴としている。これにより、空洗流量計および分離膜3液面計が無い場合でも空洗工程時に空洗が定格流量どおり空気流量が流入していなければ、供給圧力計21の圧力データは正常時よりも低い値となり、逆に分離膜内または逆洗排水配管側で被処理水に含まれる汚濁物質で閉塞すると正常時よりも高い値となり、排水工程時に分離膜3の一次側の洗浄排水が完全に抜けきらない場合は正常時よりも高い値となり、給水工程時に、分離膜3の一次側が被処理液で満水にならない場合は正常時よりも低い値となることから、トラブル判定が可能となる。
【0072】
なお、原水配管8に設置され分離膜3への供給流量を測定する供給流量計25と、空洗配管10に設置され空洗の流量を測定する空洗流量計23が設置されている場合は、これらの流量データを用いてトラブル判定を行っても構わない。なお、判定基準は各々の流量計の瞬時値にて正常値の範囲内であるかを検知しても良いし、給水時工程に供給流量計25の流量を用いる場合は、給水流量の積算値を判定基準値としても構わない。
【0073】
逆洗工程においては、図1に図示はしないが、逆洗配管9に次亜塩素酸ナトリウム、塩酸などの薬液を注入し、逆洗効果を向上させることがあるが、この場合、薬液の注入量を規定値通り一定に保つことが好ましい。そこで、これも図1には図示しないが、逆洗配管9に設置されるpH計、残留塩素計、ORP計が設置されている場合は、いずれかの測定値が薬液により変化するので、何れかデータ用いて、正常時との比較することによりトラブル判定をすることが可能となる。
【0074】
また本発明では、加工ルールが1サイクルのろ過抵抗上昇度と、前記物理洗浄後の物理洗浄不可逆ろ過抵抗上昇度であることを特徴としている。ここで1サイクルのろ過抵抗上昇度とは、ろ過工程1サイクルで上昇するろ過抵抗(あるいはろ過差圧)のことであり、ろ過抵抗は以下の計算式で計算され、膜ファウリングの程度を示す指標である。なお、ろ過差圧は分離膜モジュールの1次側圧力から2次側圧力を差し引いた値である。
【0075】
ろ過抵抗(1/m)=ろ過差圧(Pa)/(ろ過水粘度(Pa・s)×ろ過流束(m/s))
【0076】
一方、物理洗浄後の物理洗浄不可逆ろ過抵抗上昇度も膜ファウリングの程度を示す指標であるが、こちらは物理洗浄を実施しても除去されない成分を表すものであり、総ろ過水量(m/m)を横軸とし、ろ過抵抗(1/m)を縦軸にプロットした場合に、各ろ過工程開始時のろ過抵抗を結んだ直線の傾きを指すものである。あるいは、ろ過時間を横軸とし、ろ過差圧を縦軸にプロットした場合の各ろ過工程開始時のろ過差圧を結んだ直線の傾きを指すものである。化学薬品洗浄を併用した物理洗浄も含んで構わない。これらのファウリング指標を加工ルールにより算出し、正常時を逸脱した場合にろ過工程のトラブルと判定することが可能となる。
【0077】
なお上記のトラブル判定に関しては、正常時に対して加工ルールで加工されたデータが瞬間的に逸脱した場合をトラブルとして判定しても良いし、各工程時間内において、設定した時間内継続して逸脱した場合をトラブルとして判定しても良いし、各工程時間の最終段階において逸脱した場合をトラブルと判定しても良い。さらに1つの運転データまたは加工データに対して危険度別に複数設定した設定値と比較すること好ましい態様である。危険度を分けることで対策を講じる優先度を管理者が把握することができる。
【0078】
また、トラブル判定は、各センサの値により判定するものであるが、各センサの精度、もしくはサンプリング周期のタイミングによっては、その測定時自体が真値でない場合がある。この場合、トラブル判定手段47にて、その測定値を用いて加工したデータと設定値を比較し、設定値を逸脱してしまうとトラブルと判定してしまい外乱となるが、このような外乱であってもトラブルと判定しないことが好ましい。そこで本発明では、前記の様な外乱要因を取り除くため、前記加工データが前記設定値を複数回連続して逸脱した場合に、トラブルと判定することを特徴としている。これにより、前記外乱を排除でき正確なトラブル判定が可能となる。また、前記回数の指定はしないが、回数が多すぎるとトラブル判定に時間を要し、回数が少なすぎると外乱を取り除けないので3~5回程度が好ましい。
【0079】
上述した造水システムのトラブル判定の形態は、トラブル判定プログラムであるが、コンピュータが読み取り可能な記録媒体であっても、管理装置、管理方法、トラブル判定装置であっても差し支えない。またこれらの形態は、造水システムに通常設置されているPLCやDCSなどの制御管理システムと一緒に設置されるか、制御管理システムから遠方監視装置を用いて、運転データをインターネット経由で取り出し、任意の場所に設置されるオンプレミスサーバーもしくは、クラウドサーバーに設置されるのが一般的である。トラブル判定装置は、図2図3に示す各手段を有するハードウェア装置と把握することができ、コンピュータ31と同等の構成を有し得る。
【0080】
また、本特許は図3に示すようにトラブル判定に加えて、造水システム30での運転状況が運転データ記録手段42から薬品洗浄または分離膜3を交換する時期を予測する時期予測手段51を持つこと特徴とする。具体的には運転データ記録手段42がろ過圧力、差圧、ろ過速度のうち少なくとも1つの運転データを記録するものであり、時期予測手段51において運転データ記録手段42で記録したデータから、解析手段52により過去のデータを解析する機能を有し、解析手段52で得られるろ過指標から、各データの過去変化分を計算し、ろ過特性の変化する割合を予測するろ過特性変化予測手段53を有したものである。これにより分離膜が薬品洗浄に達するまでの時期または交換までの時期を予測することが可能となる。
【0081】
更に、正常時に時期予測手段51により出力される予測曲線をグラフ表示し、周期的あるいは前記トラブル分析手段にてトラブルと判定された際に同様の手段にて予測し予測される結果を前記予測曲線グラフと共に表示することで、分離膜3の運転状況を簡易に判断することが可能となる。
【0082】
また、前記グラフ表示から、薬品洗浄日または交換日が、予め設定した指定日よりも日数か短くなった場合に通知アラームを出力またはメールなどで管理者に通知することで、前もって薬液洗浄や交換の準備をすることができ、停機時間を最小限にすることが可能となる。もしくは薬品洗浄日または交換日が予定日より早い場合に警報アラームを出す機能を有しても良い。
【0083】
前記警報アラームが発生次第、対応を行い薬液洗浄日または交換日を延期することが運転上好ましい。そこで薬品洗浄日または交換日を予定日と一致するまたは予定日よりも遅延するようろ過時間、ろ過速度などのろ過条件および/または逆洗工程時間などの物理洗浄条件を変更する運転条件変更手段54を有すると更に効果的である。かつ運転条件変更手段54は、造水システムの電気消費量、薬品消費量などの運転コストを予測し、最も運転コストが安価となる条件を決定する機能を有すると更に運転者にとっては運転コストを低減でき効率的である。
【0084】
その中でも、被処理水に添加される凝集剤、還元剤、殺菌剤、スケールコントロール剤などの薬品消費量は、全体の運転コストに与える影響が大きい。そこで運転条件変更手段54は前記薬剤の添加率を変更すること機能を有すると更に好ましい。また運転条件変更手段54で変更される薬剤の添加量以外にも、ろ過流量・時間、逆洗流量・時間、空洗流量・時間、排水時間、給水時間、物理洗浄手法などであっても構わない。
【0085】
本出願は、2016年6月21日出願の日本特許出願、特願2016-122335、2016年8月10日出願の日本特許出願、特願2016-157225に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0086】
1:原水槽
2:供給ポンプ
3:分離膜
4:逆洗槽
5:逆洗ポンプ
6:空洗ブロア
8:原水配管
9:逆洗配管
10:空洗配管
11:逆洗排水配管
12:排水配管
21:供給圧力計
22:逆洗流量計
23:空洗流量計
24:ろ過圧力計
25:供給流量計
30:造水システム
31:コンピュータ
32:トラブル判定プログラム
41:運転データ入力手段
42:運転データ記録手段
43:工程選択手段
44:加工ルール記憶手段
45:加工データを得る手段
46:設定値記録手段
47:トラブル判定手段
48:トラブル判定出力手段
51:時期予測手段
52:解析手段
53:ろ過特性変化予測手段
54:運転条件変更手段
55:記録周期設定手段

図1
図2
図3