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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20230704BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20230704BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60W30/09
B60T7/12 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019108448
(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公開番号】P2020201734
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 悠
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/158911(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/003295(WO,A1)
【文献】再公表特許第2017/013750(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
B60W 30/09
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両周辺の障害物情報を取得する障害物情報取得部と、
前記障害物情報に基づいて走行中に障害物との衝突を防ぐために自動で制動制御を行う自動制動制御部と、
自車両が走行中の走行車線に隣接する車線を走行中の並進車両が衝突回避動作を行ったか否かを判断する判断部と、
を備え、
前記障害物情報は前記並進車両の運動情報を含み、
前記判断部が前記障害物情報に基づいて前記並進車両が衝突回避動作を行ったと判断した場合に、前記自動制動制御部は制動制御を開始し、
前記自動制動制御部は、前記並進車両が交差点、カーブ、又は横断歩道周辺で衝突回避動作を行ったと前記判断部が判断した場合に、道路横断方向から見て前記並進車両の前端位置を通り前記道路横断方向に平行なライン上であって自車両の進行経路上の位置を停止目標位置とし、前記停止目標位置より手前で止まれる範囲内で速度を低減する制御を行う
車両制御装置。
【請求項2】
前記判断部は、
前記並進車両が所定値以上の減速度で減速した場合、
前記並進車両が通常走行を逸脱する舵角の操舵をした場合、
前記並進車両が交差点、カーブ、又は横断歩道において停止した場合、
のうち、少なくとも一つを満たしたとき、衝突回避動作を行ったと判断する
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記自動制動制御部は、さらに前記判断部が操舵を予測させる状況であると判断したことを条件の1つとして、制動制御を開始する
請求項1又は請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記自動制動制御部は、速度を低減する制御における減速度を前記並進車両の減速度以上の減速度とする
請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両制御装置に関し、特に自動ブレーキ等の制動制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車において、ステレオカメラ等を用いて障害物を認識して自動制動をかけるシステムが普及している
特許文献1では、死角となる停止車両の側方を通過する際に、ドライバへ注意を促し、減速を行う技術が開示されている。
特許文献2では、追従走行に関して、V2V通信(Vehicle-to-Vehicle通信:車車間通信)で先行車のブレーキ液圧情報を取得して自車両の減速を始める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2017/199529号公報
【文献】特開2005-319986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで右左折レーンが複数車線ある交差点で、右左折する際に自車両と同様に曲がる並進車両がある場合に、その並進車両によって自車両には死角が生ずる。
この死角に横断する自転車などがいる場合に、車両制御システムが障害物を認識できないことにより自動ブレーキ制御が行われないおそれがある。
そこで本発明は、このように障害物自体を認識できない場合でも危険を回避できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両制御装置は、自車両周辺の障害物情報を取得する障害物情報取得部と、前記障害物情報に基づいて走行中に障害物との衝突を防ぐために自動で制動制御を行う自動制動制御部と、自車両が走行中の走行車線に隣接する車線を走行中の並進車両が衝突回避動作を行ったか否かを判断する判断部と、を備え、前記障害物情報は前記並進車両の運動情報を含み、前記判断部が前記障害物情報に基づいて前記並進車両が衝突回避動作を行ったと判断した場合に、前記自動制動制御部は制動制御を開始し、前記自動制動制御部は、前記並進車両が交差点、カーブ、又は横断歩道周辺で衝突回避動作を行ったと前記判断部が判断した場合に、道路横断方向から見て前記並進車両の前端位置を通り前記道路横断方向に平行なライン上であって自車両の進行経路上の位置を停止目標位置とし、前記停止目標位置より手前で止まれる範囲内で速度を低減する制御を行うようにする。
即ち並進車両の衝突回避動作、例えば停止等を検知した場合に、自車両も制動を開始するようにする。また、停止位置が並進車両の車両前端よりも前に出ないようにする。
【0006】
上記した車両制御装置においては、前記判断部は、前記並進車両が所定値以上の減速度で減速した場合、前記並進車両が通常走行を逸脱する舵角の操舵をした場合、前記並進車両が交差点、カーブ、又は横断歩道において停止した場合のうち、少なくとも一つを満たしたとき、衝突回避動作を行ったと判断することが考えられる。
並進車両が所定値以上の減速度で減速した場合とは、急停止するような場合である。
並進車両が通常走行を逸脱する舵角の操舵をした場合とは、交差点やカーブ等における通常の走行に必要な操舵ではない操舵(例えば衝突回避の操舵)を行った可能性がある場合である。
交差点やカーブ又は横断歩道において停止した場とは、並進車両が横断者等を認識して停止した場合である。
【0007】
上記した車両制御装置においては、前記自動制動制御部は、さらに前記判断部が操舵を予測させる状況であると判断したことを条件の1つとして、制動制御を開始することが考えられる。
操舵が予測されない状況、例えば直線道路上で並進車両が減速したような場合は、制動制御を行わない。
【0009】
上記した車両制御装置においては、前記自動制動制御部は、速度を低減する制御における減速度を前記並進車両の減速度以上の減速度とすることが考えられる。
減速の開始が並進車両よりも後のタイミングとなるため、より大きい減速度(より急激な制動が行われる減速度)で制動を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、並進車両によって死角になっている位置に障害物があったような場合、つまり自車両が障害物を認識できないような場合でも制動を開始することができ、適切な停止により衝突等を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態の車両制御装置のブロック図である。
図2】実施の形態の運転支援制御部の機能構成の説明図である。
図3】並走して交差点を左折するシーンの説明図である。
図4】並走してカーブに差し掛かるシーンの説明図である。
図5】実施の形態の車両制御装置の処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<車両制御装置の構成>
図1は、本発明に係る実施の形態としての車両制御装置1の構成概要を示したブロック図である。なお、図1では、車両制御装置1の構成のうち主に本発明に係る要部の構成のみを抽出して示している。
【0013】
車両制御装置1は、自車両に設けられた撮像部2、画像処理部3、メモリ4、運転支援制御部5、表示制御部6、エンジン制御部7、トランスミッション制御部8、ブレーキ制御部9、センサ・操作子類10、表示部11、エンジン関連アクチュエータ12、トランスミッション関連アクチュエータ13、ブレーキ関連アクチュエータ14、ステアリング制御部15、ステアリング関連アクチュエータ16、バス17、及び通信部20を備えて構成されている。
【0014】
画像処理部3は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータで構成され、撮像部2が自車両の進行方向(本例では前方)を撮像して得られた撮像画像データに基づき、車外環境の認識に係る所定の画像処理を実行する。画像処理部3による画像処理は、例えば不揮発性メモリ等とされたメモリ4を用いて行われる。
【0015】
撮像部2には、二つのカメラ部が設けられている。各カメラ部は、それぞれカメラ光学系とCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子とを備えて構成され、前記カメラ光学系により前記撮像素子の撮像面に被写体像が結像されて受光光量に応じた電気信号が画素単位で得られる。
【0016】
各カメラ部は、いわゆるステレオ撮像法による測距が可能となるように設置されている。そして各カメラ部で得られた電気信号はA/D変換や所定の補正処理が施され、画素単位で所定階調による輝度値を表すデジタル画像信号(撮像画像データ)として画像処理部3に供給される。
【0017】
画像処理部3は、ステレオ撮像により得られた各撮像画像データに基づく各種の画像処理を実行し、自車両の前方の立体物データや白線データ等の前方情報を認識し、これら認識情報等に基づいて自車両走行路を推定する。さらに、画像処理部3は、認識した立体物データ等に基づいて自車両走行路上の先行車両の検出を行う。
【0018】
具体的に、画像処理部3は、ステレオ撮像された各撮像画像データに基づく処理として、例えば以下のような処理を行う。先ず、各撮像画像データとしての撮像画像対に対し、対応する位置のずれ量(視差)から三角測量の原理によって距離情報を生成する。そして、距離情報に対して周知のグルーピング処理を行い、グルーピング処理した距離情報を予め記憶しておいた三次元的な道路形状データや立体物データ等と比較することにより、白線データ、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データ、車両等の立体物データ、一時停止線、交通信号機、踏切、横断歩道、レーン等を抽出する。
また、撮像部2の視野角、配置等によっては、画像処理部3は自車両と並進する並進車両を抽出する場合もある。
【0019】
このように画像処理部3は撮像部2の撮像画像に基づいて周囲の物体を認識するとともに、その挙動を認識することもできる。例えば並進車両の速度、加速度(加速又は減速による正負の加速度)、進行方向の変化、ウインカー点滅等を認識することも可能である。
【0020】
画像処理部3は、上記のような各種の周囲環境の情報を例えば撮像画像データのフレームごとに算出し、算出した情報を逐次、メモリ4に記憶(保持)させる。
【0021】
なお撮像部2は、前方を撮像するカメラに加えて車両後方や側方を撮像するカメラを備えることも想定される。例えば車両側方に向けたカメラを備えることで、例えば並進車両の状況などをより確実に認識できる。
【0022】
運転支援制御部5は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータで構成され、メモリ4に保持された画像処理部3による画像処理の結果や、センサ・操作子類10で得られる検出情報、操作入力情報等、さらには通信部20による通信情報などに基づき、運転支援のための各種の制御処理(以下「運転支援制御処理」と表記)を実行する。
【0023】
この運転支援制御部5は、同じくマイクロコンピュータで構成された表示制御部6、エンジン制御部7、トランスミッション制御部8、ブレーキ制御部9の各制御部とバス17を介して接続されており、これら各制御部との間で相互にデータ通信を行うことが可能とされる。運転支援制御部5は、上記の各制御部のうち必要な制御部に対して指示を行って運転支援に係る動作を実行させる。
【0024】
運転支援制御部5が実行する運転支援制御としては、例えばレーンキープ制御、衝突被害軽減ブレーキ制御(AEB:Autonomous Emergency Braking )、車間距離制御付クルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)などが想定されるが、特に本実施の形態の運転支援制御部5としては、運転支援制御処理の一つとして、後述するように並進車両に応じたブレーキ制御を行う。
【0025】
運転支援制御部5は、実行する運転支援制御に応じて目標加速度や目標停止位置(目標減速度)を設定した場合は、これらに基づいて、エンジン制御部7に対する要求トルク、ブレーキ制御部9に対するブレーキ液圧、トランスミッション制御部8に対する変速比をそれぞれ求め、出力を行う。
また運転支援制御部5は目標操舵角を設定した場合は、その目標挿舵角の操舵量をステアリング制御部15に指示する。
これら要求トルク、ブレーキ液圧、変速比、操舵量などに基づいてエンジン制御部7、ブレーキ制御部9、トランスミッション制御部8、ステアリング制御部15が動作することで運転支援動作が実現される。
【0026】
センサ・操作子類10は、自車両に設けられた各種のセンサや操作子を包括的に表している。センサ・操作子類10が有するセンサとしては、自車両の速度(自車両速)を検出する車速センサ10a、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサ10b、アクセルペダルの踏込み量からアクセル開度を検出するアクセル開度センサ10c、操舵角を検出する舵角センサ10d、ヨーレート(Yaw Rate)を検出するヨーレートセンサ10e、加速度を検出するGセンサ10f、ブレーキペダルの操作/非操作に応じてON/OFFされるブレーキスイッチ10g、周囲状況を検出できるミリ波レーダー10h、位置検出部10iなどがある。
【0027】
ミリ波レーダー10hによれば、離れた対象物との距離や速度、角度を測定することができることから、例えば並進車両の速度、加速度、右左折等の操舵状況などを検出することも可能である。
【0028】
位置検出部10iは、例えば全地球衛星航法システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)用の受信器などとされ、現在位置情報を取得する。
例えばメモリ4に横断歩道や交通信号機などの各種の道路情報やレーン情報等を含む地図情報が記憶されていることで、運転支援制御部5は地図情報と現在位置情報から、地図上で現在位置を特定し、またレーンの状態等を認識することもできる。
【0029】
なお、図示は省略したが、センサ・操作子類10は、他のセンサとして、例えばエンジンへの吸入空気量を検出する吸入空気量センサ、吸気通路に介装されてエンジンの各気筒に供給する吸入空気量を調整するスロットル弁の開度を検出するスロットル開度センサ、エンジン温度を示す冷却水温を検出する水温センサ、車外の気温を検出する外気温センサや、自車両走行路の勾配を検出する勾配センサ等も有する。
【0030】
また、操作子としては、エンジンの始動/停止を指示するためのイグニッションスイッチや、前述した運転支援制御関連の操作を行うための操作子、自動変速機における自動変速モード/手動変速モードの選択や手動変速モード時におけるシフトアップ/ダウンの指示を行うためのセレクトレバーや、後述する表示部11に設けられたMFD(Multi Function Display)における表示情報の切り換えを行うための表示切換スイッチなどがある。
【0031】
表示部11は、運転者の前方に設置されているメータパネル内に設けられたスピードメータやタコメータ等の各種メータやMFD、及びその他運転者に情報提示を行うための表示デバイスを包括的に表している。MFDには、自車両の総走行距離や外気温、瞬間燃費等といった各種の情報を同時又は切り換えて表示可能とされる。
【0032】
表示制御部6は、センサ・操作子類10における所定のセンサからの検出信号や操作子による操作入力情報等に基づき、表示部11による表示動作を制御する。例えば、運転支援制御部5からの指示に基づき、運転支援の一環として表示部11(例えばMFDの所定領域)に所定の注意喚起メッセージを表示させることが可能とされている。
【0033】
エンジン制御部7は、センサ・操作子類10における所定のセンサからの検出信号や操作子による操作入力情報等に基づき、エンジン関連アクチュエータ12として設けられた各種アクチュエータを制御する。
エンジン関連アクチュエータ12としては、例えばスロットル弁を駆動するスロットルアクチュエータや燃料噴射を行うインジェクタ等のエンジン駆動に係る各種のアクチュエータが設けられる。
【0034】
例えば、エンジン制御部7は、前述したイグニッションスイッチの操作に応じてエンジンの始動/停止制御を行う。また、エンジン制御部7は、エンジン回転数センサ10bやアクセル開度センサ10c等の所定のセンサからの検出信号に基づき、燃料噴射タイミング、燃料噴射パルス幅、スロットル開度等の制御も行う。
またエンジン制御部7は、運転支援制御部5が目標加速度に基づき計算・出力した要求トルクと、自動変速機の変速比とに基づき、目標とするスロットル開度を例えばマップ等から求め、求めたスロットル開度に基づきスロットルアクチュエータの制御(エンジンの出力制御)を行う。
【0035】
トランスミッション制御部8は、センサ・操作子類10における所定のセンサからの検出信号や操作子による操作入力情報等に基づき、トランスミッション関連アクチュエータ13として設けられた各種のアクチュエータを制御する。
トランスミッション関連アクチュエータ13としては、例えば自動変速機の変速制御を行うためのアクチュエータが設けられる。
【0036】
例えば、トランスミッション制御部8は、前述したセレクトレバーによって自動変速モードが選択されている際には、所定の変速パターンに従い変速信号を上記のアクチュエータに出力して変速制御を行う。また、トランスミッション制御部8は、手動変速モードの設定時には、セレクトレバーによるシフトアップ/ダウン指示に従った変速信号を上記のアクチュエータに出力して変速制御を行う。
自動変速機がCVT(Continuously Variable Transmission:無段変速機)とされる場合、上記の自動変速モード設定時の変速制御としては、変速比を連続的に変化させる制御が行われる。
【0037】
ブレーキ制御部9は、センサ・操作子類10における所定のセンサからの検出信号や操作子による操作入力情報等に基づき、ブレーキ関連アクチュエータ14として設けられた各種のアクチュエータを制御する。
ブレーキ関連アクチュエータ14としては、例えば、ブレーキブースターからマスターシリンダへの出力液圧やブレーキ液配管内の液圧をコントロールするための液圧制御アクチュエータ等、ブレーキ関連の各種のアクチュエータが設けられる。
【0038】
例えば、ブレーキ制御部9は、運転支援制御部5から出力された液圧の指示情報に基づき、上記の液圧制御アクチュエータを制御して自車両を制動させる。またブレーキ制御部9は、所定のセンサ(例えば車軸の回転速度センサや車速センサ10a)の検出情報から車輪のスリップ率を計算し、スリップ率に応じて上記の液圧制御アクチュエータにより液圧を加減圧させることで、所謂ABS(Antilock Brake System)制御を実現する。
【0039】
ステアリング制御部15は、例えば運転支援制御部5から与えられた目標の操舵量に応じて必要なステアトルクを求め、ステアリング関連アクチュエータ16を制御することで、必要な自動操舵を実現する。
【0040】
通信部20は,いわゆるV2V通信(車車間通信)や、ネットワーク通信を行う通信部としている。運転支援制御部5は通信部20によって受信した他車の情報を取得することができる。また通信部20はインターネット等のネットワーク通信により各種情報、例えば現在地の周辺環境情報、道路情報等を取得することもできる。
【0041】
図2には運転支援制御部5が特に本実施の形態の処理を行うために例えばソフトウエアにより設けられる機能構成を示している。運転支援制御部5は障害物情報取得部5a、自動制動制御部5b、判断部5cを有する。
【0042】
障害物情報取得部5aは、自車両周辺の障害物情報を取得する。具体的には、画像処理部3が認識した周囲環境の情報、通信部20により取得した情報、ミリ波レーダー10hにより検出した情報などにより、周囲の環境、障害物、道路状況などを取得或いは解釈する。自車両周辺の障害物情報としては、並進車両の運動情報を含む。
【0043】
判断部5cは、障害物情報取得部5aが取得する情報から、自車両が走行中の走行車線に隣接する車線を走行中の並進車両が衝突回避動作を行ったかを判断する処理を行う。
【0044】
自動制動制御部5bは上記のAEBなどのブレーキ制御を行う機能、即ち障害物情報に基づいて走行中に障害物との衝突を防ぐために自動で制動制御を行う機能を示している。特にこの自動制動制御部5bは、判断部5cが前記障害物情報に基づいて前記並進車両が衝突回避動作を行ったと判断した場合に制動制御を開始する処理を行う。
【0045】
<処理例>
以上の構成の車両制御装置1において実現される実施の形態の処理について説明する。
実施の形態の処理は、自車両が旋回中(右左折やカーブ走行のとき)に並進車両が停止した場合、自車両には死角で並進車両には見えている領域に何らかの障害物があると判断し、自車両も停止を行うようにするものである。なお、説明上、障害物とは、衝突の可能性のある全てのものを指し、人も含むものとする。
【0046】
図3図4で本例の処理が行われる状況について説明する。
図3は交差点における状況を示している。自車両30及び並進車両31は図面下方からそれぞれレーン40,41を走行してきて交差点に入り、ともに左折する状況である。自車両30及び並進車両31の左折先には横断歩道45が存在している。
このときに、横断歩道45を渡ろうとしている人や、自転車に乗った人(以下、「横断者等32」とする)がいる場合を考える。
【0047】
並進車両31の運転手又は運転支援システムにとっては、これから横断歩道45を渡ろうとする横断者等32を認識できるため、横断者等32の横断を待つために横断歩道45の手前で停車する。
ところが自車両30(自車両の運転手又は運転支援制御部5)は、並進車両31によって横断者等32の位置が死角になり、横断者等32を認識できない場合が有り得る。特に横断者等32が自転車に乗っているような場合、停止した並進車両31のかげから横断者等32がいきなり自車両30の前に現れるといったようなことも有り得る。
【0048】
そこで、このような状況を想定し、左折途中で並進車両31の衝突回避動作、具体的には減速、急操舵、停止などを検知した場合、自車両30の運転支援制御部5は、制動制御を開始するようにし、横断者等32との衝突を回避する。
【0049】
図4は片側2車線の道路のカーブの先に横断歩道45が存在する場合を示している。
自車両30及び並進車両31は図面下方からそれぞれレーン42,43を走行してきてカーブを曲がり、横断歩道45に差し掛かっている状況である。横断歩道45では横断者等32が渡ろうとしている。
この場合も自車両30からは、並進車両31によって横断者等32の位置が死角になり、横断者等32を認識できない場合が有り得る。
そこでこのような場合も、並進車両31の衝突回避動作を検知した場合、自車両30の運転支援制御部5は、制動制御を開始するようにし、横断者等32との衝突を回避する。
【0050】
図5に運転支援制御部5の処理例を示す。
この処理は図2の機能により実行される運転支援制御部5の処理例となる。ステップS101,S102,S104は障害物情報取得部5aの機能により、ステップS103,S104,S105は判断部5cの機能により、ステップS106,S107,S108は自動制動制御部5bの機能による処理を考えることができる。
運転支援制御部5は図5の処理を自車両30の少なくとも走行中に繰り返し実行する。
【0051】
ステップS101で運転支援制御部5は周囲環境の情報を取得する。例えば運転支援制御部5は、地図情報及び現在位置情報、撮像部2による撮像画像から認識される情報などにより、自車両進行経路上での交差点、カーブ、横断歩道45の存在などを確認する。
【0052】
ステップS102で運転支援制御部5は、自車両30の位置についての情報、及び並進車両31の位置についての情報を取得する。
具体的には運転支援制御部5は、並進車両31の存在、自車両30及び並進車両31の交差点やカーブまでの距離、自車両30と並進車両31の進行方向に対する前後関係などを確認する。
これらを、例えば地図情報及び現在位置情報、撮像部2による撮像画像の認識結果、ミリ波レーダー10hの検出情報などから認識する。
【0053】
ステップS103で運転支援制御部5は、右左折が発生するか否かを判定する。
この判定としては、まず自車両30の進行先での交差点やカーブの存在の確認が行われる。即ち運転支援制御部5は、周辺環境や自車両位置の情報などに基づき、所定距離内(又は所定時間以内)で自車両30が交差点やカーブに進入するか否かを確認する。
このような状況でない、即ち近々交差点やカーブに進入する状況ではないとされる場合は、ステップS103で右左折無し、と判定されてリターンとなる。つまり当該時点では本例の制動制御は開始されない。
【0054】
なお存在を判定する「カーブ」とは、例えば所定の曲率以上の曲がりの大きいカーブであることを条件とすることが考えられる。緩やかなカーブの場合(直線に近い場合)などは、並進車両31によって横断者等32が死角になることがなく、本例の処理を発揮しなくとも、通常のAEB制御により、横断者等32の認識による自動ブレーキ制御が行われることが想定されるためである。そのためステップS103で確認するカーブとは、並進車両31の存在によって横断者等32が死角に入る可能性のある曲率以上のカーブを対象とすることが考えられる。
【0055】
またステップS103では、単に交差点やカーブの判定だけでなく、その先に横断歩道45が存在するか否かをも確認してもよい。
本例の処理は、曲がった先の横断者等32を認識しにくい場合を想定しており、横断歩道45が存在しない場合、処理実行の必要性は薄い。またカーブでむやみに並進車両31の動作に応じて制動をかけることは乗車の快適性を損なうおそれがある。
その意味で、右左折先の所定距離内に横断者等32がある交差点か、曲がった先の所定距離内に横断歩道45があるカーブの存在を確認するものとしてもよい。
【0056】
また交差点に関しては、自車両30及び並進車両31が共に右折(又は左折)するという状況であるか否かという判断も行うことが望ましい。
例えば図3に示した状況で衝突の危険が生じるのは自車両30と並進車両31が共に同方向に曲がる場合である。自車両30が直進するのであれば横断者等32との衝突は起こらない。その場合、本例の制動制御を発動する必要がない。そこで、並進車両31と自車両30がともに同方向に曲がるか否かも判定する。
【0057】
自車両30に関しては、運転支援制御部5は、ナビゲーションシステム(不図示)から取得する経路情報や、運転手のウインカー操作情報、或いは右左折としてのステアリング操作等から右折又は左折判定する。
【0058】
また運転支援制御部5は並進車両31に関しては、通信部20によるV2V通信でその右折又は左折を認識することもできるし、撮像部2による撮像画像から認識できる並進車両31のウインカー点滅などを確認してもよい。もちろん画像やミリ波レーダー10hの検出により、並進車両31の右左折の開始を認識してもよい。
【0059】
また本例の処理は死角が生ずる状況に対処するものであるので、ステップS103では、並進車両31に対して自車両30が遅れて交差点やカーブに進入する状況であることの確認をおこなってもよい。
自車両30が並進車両31より先に交差点やカーブに進入して右左折する場合、死角が生じないことが想定されるためである。
【0060】
以上のようにステップS103は、あくまでも右左折時に並進車両31によって死角になる横断者等32等の存在可能性を判定するものであり、具体的な判定条件は各種考えられる。つまり、あくまで曲がった先での横断者等32の存在の可能性がある状況であるか否かとの判定がなされればよい。この判定が適切に行われることで、並進車両31の挙動に応じた自車両30の無駄な制動等も避けられる。
【0061】
これらのことからステップS103の処理例としては
・これから交差点に進入する状況であるか否か
・これからカーブに進入する状況であるか否か
・曲率が所定以上のカーブであるか否か
・曲がった先に横断歩道45があるカーブであるか否か
・曲がった先に横断歩道45がある交差点であるか否か
・自車両30及び並進車両31が同方向に曲がる状況であるか否か
・自車両30が並進車両31に対し所定時間内の遅れで交差点やカーブに進入する状況か否か
という各種条件の少なくとも一つ又は組み合わせ(アンド条件又はオア条件)が考えられる。
【0062】
なお処理の趣旨から理解されるように、判定の対象となる「並進車両31」とは、自車両が曲がる方向側のレーンを走行している車両となる。つまり左折時は自車両30より左側のレーン、右折時は自車両30より右側のレーンを走行している車両である。当然であるが、例えば自車両30が左折するときに、右側のレーンを走る並進車両についてステップS103の判定の対象とする必要はない。
【0063】
ステップS103で右左折ありの条件を満たした場合は、運転支援制御部5はステップS104,S105の監視を行う。
ステップS104では並進車両31の減速、停止動作や急操舵等の衝突回避動作を監視する。
ステップS105では右左折の完了を確認する。
【0064】
即ち運転支援制御部5は、右左折が完了するまでは、ステップS104で並進車両31の衝突回避動作を監視することになり、衝突回避動作を認識した場合はステップS106に進む。
衝突回避動作に関しては、ミリ波レーダー10hによる並進車両31の所定閾値以上のマイナス加速度(減速度)の検知、V2V通信によるブレーキ制御やステアリング制御の通知による認識、撮像部2による撮像画像からの認識などにより監視する。
【0065】
通常、右左折時には減速することになるため、ここでは通常の右左折のための若干の減速ではなく、停止のための減速という観点で検知することが望ましい。即ち並進車両31側が横断者等32を認識して停車するときの減速と考えられる所定値以上の減速度の減速を、衝突回避動作として検知する。
【0066】
また操舵により衝突を回避する場合もあるが、交差点やカーブで生ずる右左折の本来の必要な操舵に比較して、通常走行を逸脱する舵角の操舵(右左折又はカーブに応じた所定範囲内の操舵角から逸脱した舵角の操舵)を衝突回避動作とすればよい。
例えば左折や左カーブのときは、その走行に必要な舵角を越える舵角、もしくはその左折や左カーブには足りない舵角や右側への操舵が、右左折又はカーブに応じた通常走行を逸脱する舵角の操舵となる。
【0067】
もちろん並進車両31が交差点内やカーブ、さらには横断歩道45内で停止したことを検知した場合も衝突回避動作とする。
【0068】
もし以上のような並進車両31の衝突回避動作が検知されないまま右左折を完了したら、運転支援制御部5の処理はステップS105からリターンとなる。
一方、右左折完了に至る前に並進車両31の衝突回避動作を検知した場合、運転支援制御部5はステップS106に進み、並進車両31の停止位置を推定する演算を行う。
つまり並進車両31の減速時の加速度から停止位置を計算する。
【0069】
ステップS107で運転支援制御部5は、並進車両31について推定した停止位置に基づいて、自車両30の目標停止位置を決定する。そして目標停止位置を決定することにより、目標停止位置に至るまでの、現時点からの減速度を計算する。
そしてステップS108で運転支援制御部5は、計算した減速度による制動制御を開始する。これによって、自車両30からは横断者等32が認識できなくても、目標停止位置で停止されることで衝突が回避される。
【0070】
ここで目標停止位置は、例えば図3図4の目標停止位置TGPとして示す位置とすることが考えられる。
これは横断歩道45の方向(道路横断方向)から見て、並進車両31の前端位置となるラインTL1上に停止目標位置TGPを設定した例である。
【0071】
横断者等32が道路横断方向に進むと想定した場合、このラインTL1は、横断者等32の進行方向に平行なラインとなる。そしてラインTL1は、衝突回避のために停止する並進車両31の先端を通るラインである。つまり、このラインTL1を越えなければ、自車両30も横断者等32との衝突を回避できると考えることができる。そこで自車両30の進行経路上でラインTL1を目標停止位置TGPとし、この目標停止位置TGPの手前までに停止するようにする。
【0072】
このような目標停止位置TGPを設定したら、現在位置から目標停止位置TGPまでの距離と現在の速度に応じて、減速度を計算できることになる。
【0073】
なお、衝突回避のためであるので、より手前を目標停止位置としてもよい。例えば図3に示すラインTL2上などに目標停止位置を決めてもよい。ラインTL2は、停止した並進車両31の位置(推定した停止位置)において、並進車両31の車体前端に沿ったラインである。このラインTL2上に停止すれば、自車両30は、横断者等32からみてほぼ完全に並進車両31に隠れる状態で停止することになり、横断者等32との衝突/接触の可能性は更に低くできる。
【0074】
但し、目標停止位置を手前にすればするほど停止するまでの距離が短くなり、より急ブレーキがかかることとなる。乗員の乗り心地や、急ブレーキによる後続車の追突の危険を考慮すれば、あまり急ブレーキ制御を行うことは望ましく無いとも考えられる。そこで、上記の目標停止位置TGPのように、ある程度停止までの距離を稼ぎながら、横断者等32との衝突危険性を避けることのできる目標設定が望ましい。
【0075】
上述のようにステップS107では目標停止位置を決定することに応じて減速度を計算するが、目標停止位置TGPで停止するためには、並進車両31の減速度よりも高い減速度が算出されることが考えられる。並進車両31が減速を開始した後に、並進車両31寄りも前に出ないように停止させるためである。
但し、自車両30と並進車両31の位置の差や、目標停止位置によっては、停止までの距離が比較的長くとれる場合もあり、必ずしも並進車両31の減速度より高い減速度でなくても、並進車両31よりも手前で停止できる場合もある。
【0076】
なお、図5は並進車両31の衝突回避動作に応じた制動制御であり、当該制御で自車両30が停止した後は、状況に応じて運転者の操作(又は自動制御)により発進すればよいことは当然である。
また、並進車両31が交差点やカーブで停車しなかったとしても、自車両が危険な障害物(歩行者、自転車)を発見した場合は、図5の処理ではなく、運転支援制御部5によるAEB制御により、制動制御が行われることを想定している。
【0077】
<実施の形態の効果>
以上の実施の形態では次のような効果が得られる。
実施の形態の車両制御装置1は、自車両30の周辺の障害物情報を取得する障害物情報取得部5aと、障害物情報に基づいて走行中に障害物との衝突を防ぐために自動で制動制御を行う自動制動制御部5bと、自車両30が走行中の走行車線に隣接する車線を走行中の並進車両31が衝突回避動作を行ったか否かを判断する判断部5cを備える。なお障害物情報とは並進車両31の運動情報を含んでいる。そして判断部5cが障害物情報に基づいて並進車両31が衝突回避動作を行ったと判断した場合に、自動制動制御部5bは制動制御を開始するようにしている(図5参照)。
【0078】
このようにすることで、並進車両31によって死角になっている位置に障害物があった場合も制動を開始することになり、適切な停止により衝突等を回避できる。
つまり従来の自動制動システムでは、あくまで自車両30から見て障害物と認識される物体があった場合に制動を行うが、障害物が認識できないような場合でも、危険を回避でき、安全性をより向上させる。具体的には並進車両31の陰から横断する自転車等が飛び出してきたような場合でも(当該自転車等を認識していなかったとしても)、自車両は既に制動を開始しているため衝突回避ができる。
【0079】
実施の形態では判断部5cは、並進車両31が所定値以上の減速度で減速した場合、並進車両31が通常走行を逸脱する舵角の操舵をした場合、並進車両31が交差点、カーブ、又は横断歩道において停止した場合のうち、少なくとも一つを満たしたとき、衝突回避動作を行ったと判断するようにした。
これらの場合は、並進車両31が衝突の可能性を認識して必要な回避動作を行っている場合である可能性が大きいため、並進車両31のこのような動作を行ったことに応じて自車両30も制動をかけることが適切となる。
【0080】
換言すれば、これらの場合に自車両30も制動を開始するということは、無闇に並進車両31に合わせるものではなく、走行の快適性も損なわない制御となることを意味する。
例えば障害物を死角にしてしまう停止車両が存在するときにドライバへ注意を促したり減速を行うシステムでは、殆どの場合に実際には飛び出し等が発生しない状況で減速が行われてしまう。一方で実施の形態の場合、実際に危険(危険の可能性が大きいこと)を察知して制動を行うため、不要時に頻繁に制動制御が発動されるものではなく、不要なブレーキを避け、安全を保ちつつ、乗員に違和感を与えにくいものとすることができる。
【0081】
実施の形態では、自動制動制御部5bは、さらに判断部5cが操舵を予測させる状況であると判断したことを条件の1つとして、制動制御を開始するようにしている。
操舵が予測される状況とは、交差点やカーブの存在を認識した状況である。或いは更に並進車両や自車両がウインカーを出している場合などまでを含んでもよい。
このような場合に、並進車両の死角になる人や自転車に対して衝突回避を図るために制動制御が意味を持つ。そこで操舵を予測させる状況であることを制動制御開始の条件に加えることで適切なタイミングで制動制御が行われるようにする。
例えば直線道路上であれば横断者等は並進車両の死角にならないため並進車両の挙動に基づく制動は不要な制御となる。また直線道路などで並進車両が減速等したことに応じて制動制御することは、乗員にとって不快な制御ともなる。このため操舵が予測される状況にあるという条件を加えることは、無闇に制動を発動させないで快適な乗車環境を保つという効果が得られる。
【0082】
実施の形態では、自動制動制御部5bは、並進車両31が交差点又は横断歩道周辺で衝突回避動作を行ったと判断部5cが判断した場合に、道路横断方向から見て並進車両31の前端位置に相当する位置を停止目標位置とする。即ち図3図4のラインTL1上の位置である。そして自動制動制御部5bは停止目標位置より手前で止まれる範囲内で速度を低減する制御を行うようにする。つまり停止位置が並進車両31の車両前端よりも前に出ないようにする。
これにより自車両30は並進車両31の陰に隠れる状態で停止することになる。このため例え横断者等32の勢いがあったとしても衝突を避けることができる。
ここで、例えば並進車両31の車体フロント端からの延長線上としたラインTL2を停止目標とすると、急ブレーキ制御が必要になりやすいが、横断方向に平行なラインとして並進車両前端位置のラインTL1を停止目標位置とすることで、自車両にとってはブレーキ動作に余裕が生ずる。従って乗員に無闇に急ブレーキを感じさせない制御とすることができ、快適性を損なわない。
【0083】
実施の形態では、制動時の減速度は並進車両の減速度以上の減速度であるとする例を述べた。これは減速の開始が並進車両31の衝突回避動作を認識した後であって、並進車両31よりも後のタイミングとなるため、並進車両31よりは急ブレーキとする方が、より手前に止めることができるためである。即ち並進車両31より大きい減速度で制動を行うことで、自車両は並進車両の陰に隠れる状態で停止しやすいものとなる。
【0084】
なお実施の形態の構成や処理例は一例である。図1図2の構成例や図5の処理例にかかわらず変形例が各種考えられる。
特に上述もしたが、図5の処理例では、ステップS103の右左折状況の判定、ステップS104も並進車両31の衝突回避動作の判定は各種の条件の組み合わせや選択が想定される。
また図5の処理が実行されるのは交差点及びカーブを想定したが、例えばカーブでは実行せずに例えば他の処理で対応し、図5の処理は交差点に進入するときのみに実行するようなこと(或いは逆にカーブに進入するときのみ実行すること)なども考えられる。
【符号の説明】
【0085】
1 車両制御装置、2 撮像部、3 画像処理部、4 メモリ、5 運転支援制御部、5a 障害物情報取得部、5b 自動制動制御部、5c 判断部、6 表示制御部、7 エンジン制御部、8 トランスミッション制御部、9 ブレーキ制御部、10 センサ・操作子類、10a 車速センサ、10b エンジン回転数センサ、10c アクセル開度センサ、10d 舵角センサ、10e ヨーレートセンサ、10f Gセンサ、10g ブレーキスイッチ、10h ミリ波レーダー、10i 位置検出部、11 表示部、12 エンジン関連アクチュエータ、13 トランスミッション関連アクチュエータ、14 ブレーキ関連アクチュエータ、15 ステアリング制御部、16 ステアリング関連アクチュエータ、17 バス、20 通信部、30 自車両、31 並進車両、32 横断者等、40,41,42,43 レーン、45 横断歩道
図1
図2
図3
図4
図5