(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】溶接ガン及び溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 11/11 20060101AFI20230704BHJP
B23K 11/30 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
B23K11/11 510
B23K11/30 307
(21)【出願番号】P 2019129483
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】坂本 登
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-050449(JP,A)
【文献】特開平07-284953(JP,A)
【文献】実開平02-011677(JP,U)
【文献】特開平09-150277(JP,A)
【文献】特開2013-071173(JP,A)
【文献】特開2015-185345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/00 - 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下動可能な一対の可動アームと、前記一対の可動アームに配設される一対の溶接電極と、を有し、前記一対の溶接電極をワークの片面側に当接させて溶接を行う態様及び前記一対の溶接電極にて前記ワークを挟持して溶接を行う態様が可能な溶接ガンであって、
前記一対の溶接電極は、それぞれ前記一対の可動アームに対して軸支されると共に、回転自在なローラー形状であり、
前記一対の可動アームの一方の可動アームに配設される前記一対の溶接電極の一方の溶接電極が、前記一対の可動アームの他方の可動アームに配設される前記一対の溶接電極の他方の溶接電極よりも下方までスライドするように、
少なくとも前記一方の可動アームは
、スライド機構を有し、
前記スライド機構は、
前記一方の可動アームを下方へとスライドさせるガイド溝を備えると共に、前記一方の可動アームを支持するプレート部と、
前記一方の可動アームを前記ガイド溝の形状に沿って可動させるリンク機構と、を有し、
前記ガイド溝は、前記プレート部の上下方向へと延在する上下溝と、前記上下溝と連続し、前記他方の可動アーム側へと向けて斜め下方へと延在する斜め溝と、を有していることを特徴とする溶接ガン。
【請求項2】
前記一方の溶接電極と前記他方の溶接電極との間に前記ワークを挟持して溶接を行う態様では、
前記ワークは、前記一方の溶接電極のラジアル方向の外周面と前記他方の溶接電極のラジアル方向の外周面との間に挟持されることを特徴とする請求項
1に記載の溶接ガン。
【請求項3】
前記一方の溶接電極は、スラスト方向に延在する第1の溶接円柱部と、前記第1の溶接円柱部と同一軸心であると共に、前記第1の溶接円柱部よりも小径の第2の溶接円柱部と、を有し、
前記ワークは、前記一方の溶接電極の前記第2の溶接円柱部のラジアル方向の外周面と前記他方の溶接電極のラジアル方向の外周面との間に挟持されることを特徴とする
請求項2に記載の溶接ガン。
【請求項4】
前記一方の溶接電極と前記他方の溶接電極との間に前記ワークを挟持して溶接を行う態様では、
前記ワークは、前記一方の溶接電極のスラスト方向の側面と前記他方の溶接電極のスラスト方向の側面との間に挟持されることを特徴とする
請求項1に記載の溶接ガン。
【請求項5】
上下動可能な一対の可動アームと、前記一対の可動アームに配設され、前記一対の可動アームに対して回転自在なローラー形状の一対の溶接電極と、少なくとも前記一対の可動アームの一方の可動アームに配設されるスライド機構と、を有
し、
前記スライド機構は、前記一方の可動アームを下方へとスライドさせるガイド溝を備えると共に、前記一方の可動アームを支持するプレート部と、前記一方の可動アームを前記ガイド溝の形状に沿って可動させるリンク機構と、を有し、前記ガイド溝は、前記プレート部の上下方向へと延在する上下溝と、前記上下溝と連続し、前記一対の可動アームの他方の可動アーム側へと向けて斜め下方へと延在する斜め溝と、を有する溶接ガンを用いた溶接方法であって、
前記スライド機構を介して前記一方の可動アームに配設される前記一対の溶接電極の一方の溶接電極を、
前記他方の可動アームに配設される前記一対の溶接電極の他方の溶接電極よりも下方までスライド可能とすることで、前記一方の溶接電極及び前記他方の溶接電極をワークの片面側に当接させて溶接を行う態様及び前記一方の溶接電極と前記他方の溶接電極との間に前記ワークを挟持して溶接を行う態様を可能とすることを特徴とする溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車パネル等のワークを溶接する際に、ワーク形状に応じてワークを挟持して溶接する態様やワークの片側から溶接する態様等を容易に実施可能な溶接ガン及び溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の抵抗溶接機100として、
図8に示す構造が知られている。
図8(A)及び
図8(B)は、従来の抵抗溶接機100を説明する側面図である。
【0003】
図8(A)に示す如く、抵抗溶接機100は、主に、一対の溶接電極101,102と、一対の溶接電極101,102と連結し、一対の溶接電極101,102の位置を移動させる移動機構103と、を有している。
【0004】
溶接電極101,102は、それぞれ中間部が支持され、上に向いた電極面101a,102aと、下に向いた電極面101b,102bと、を備えている。そして、移動機構103は、溶接電極101を縦方向にスライド移動させる第1縦型スライド機構104と、溶接電極102を縦方向にスライド移動させる第2縦型スライド機構105と、溶接電極102を横方向にスライド移動させる横動スライド機構106と、を備えている。
【0005】
図示したように、シリーズスポット溶接を行う場合には、待機位置にある溶接電極101,102の下にワーク107をセットする。そして、第1縦型スライド機構104及び第2縦型スライド機構105を下方に移動させ、左右一対の溶接電極101,102を横に並べた状態にてワーク107を加圧し、通電することで溶接を行う。
【0006】
図8(B)に示す如く、ダイレクトスポット溶接を行う場合には、第1縦型スライド機構104を稼働させ、溶接電極101を下方へ移動させると共に、横動スライド機構106を稼働させ、溶接電極102を溶接電極101側へと横移動させる。そして、溶接電極101の上に向いた電極面101aと溶接電極102の下に向いた電極面102bを対向させた後、その間にワーク107をセットする。その後、第2縦型スライド機構105を稼働させ、溶接電極102を下方に移動させ、上記電極面101a,102bにてワーク107を加圧し、通電することで溶接を行う(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図8(A)及び
図8(B)に示す如く、抵抗溶接機100では、移動機構103を、適宜、稼働させることで、溶接電極101,102にてワーク107を挟持してダイレクトスポット溶接を行い、あるいは、ワーク107の片面に溶接電極101,102を横に並べてシリーズスポット溶接を行うことができる。
【0009】
しかしながら、溶接電極101,102では、上に向いた電極面101a,102aと、下に向いた電極面101b,102bと、を備え、上記電極面101a,102a,101b,102bの方向をワーク107に応じて変更することができない。そのため、ワーク107を左右方向にて挟持して溶接する際には、抵抗溶接機100自体を90度回転させなければならないという課題がある。
【0010】
また、抵抗溶接機100自体を90度回転させることで溶接対応できる場合は良いが、ワーク107周辺に抵抗溶接機100を回転させるスペースが無い場合には、ワーク107に対して溶接を行うことが出来ず、ワーク107の形状に応じて、溶接対応に制限を受けてしまうという課題がある。
【0011】
更には、抵抗溶接機100では、移動機構103は、第1縦型スライド機構104と、第2縦型スライド機構105と、横動スライド機構106と、を備え、上記機構104,105,106を、適宜、稼働させることで、溶接電極101,102の各電極面101a,102a,101b,102bの位置を調整している。そのため、溶接電極101,102の構造が複雑となると共に、移動機構103の構造も複雑となるという課題がある。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、自動車パネル等のワークを溶接する際に、ワークの形状に応じて、ワークを挟持して溶接する態様やワークの片側から溶接する態様等を容易に実施可能な溶接ガン及び溶接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の溶接ガンでは、上下動可能な一対の可動アームと、前記一対の可動アームに配設される一対の溶接電極と、を有し、前記一対の溶接電極をワークの片面側に当接させて溶接を行う態様及び前記一対の溶接電極にて前記ワークを挟持して溶接を行う態様が可能な溶接ガンであって、前記一対の溶接電極は、それぞれ前記一対の可動アームに対して軸支されると共に、回転自在なローラー形状であり、前記一対の可動アームの一方の可動アームに配設される前記一対の溶接電極の一方の溶接電極が、前記一対の可動アームの他方の可動アームに配設される前記一対の溶接電極の他方の溶接電極よりも下方までスライドするように、少なくとも前記一方の可動アームは、スライド機構を有し、前記スライド機構は、前記一方の可動アームを下方へとスライドさせるガイド溝を備えると共に、前記一方の可動アームを支持するプレート部と、前記一方の可動アームを前記ガイド溝の形状に沿って可動させるリンク機構と、を有し、前記ガイド溝は、前記プレート部の上下方向へと延在する上下溝と、前記上下溝と連続し、前記他方の可動アーム側へと向けて斜め下方へと延在する斜め溝と、を有していることを特徴とする。
【0015】
本発明の溶接ガンでは、前記一方の溶接電極と前記他方の溶接電極との間に前記ワークを挟持して溶接を行う態様では、前記ワークは、前記一方の溶接電極のラジアル方向の外周面と前記他方の溶接電極のラジアル方向の外周面との間に挟持されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の溶接ガンでは、前記一方の溶接電極は、スラスト方向に延在する第1の溶接円柱部と、前記第1の溶接円柱部と同一軸心であると共に、前記第1の溶接円柱部よりも小径の第2の溶接円柱部と、を有し、前記ワークは、前記一方の溶接電極の前記第2の溶接円柱部のラジアル方向の外周面と前記他方の溶接電極のラジアル方向の外周面との間に挟持されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の溶接ガンでは、前記一方の溶接電極と前記他方の溶接電極との間に前記ワークを挟持して溶接を行う態様では、前記ワークは、前記一方の溶接電極のスラスト方向の側面と前記他方の溶接電極のスラスト方向の側面との間に挟持されることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の溶接方法では、上下動可能な一対の可動アームと、前記一対の可動アームに配設され、前記一対の可動アームに対して回転自在なローラー形状の一対の溶接電極と、少なくとも前記一対の可動アームの一方の可動アームに配設されるスライド機構と、を有し、前記スライド機構は、前記一方の可動アームを下方へとスライドさせるガイド溝を備えると共に、前記一方の可動アームを支持するプレート部と、前記一方の可動アームを前記ガイド溝の形状に沿って可動させるリンク機構と、を有し、前記ガイド溝は、前記プレート部の上下方向へと延在する上下溝と、前記上下溝と連続し、前記一対の可動アームの他方の可動アーム側へと向けて斜め下方へと延在する斜め溝と、を有する溶接ガンを用いた溶接方法であって、前記スライド機構を介して前記一方の可動アームに配設される前記一対の溶接電極の一方の溶接電極を、前記他方の可動アームに配設される前記一対の溶接電極の他方の溶接電極よりも下方までスライド可能とすることで、前記一方の溶接電極及び前記他方の溶接電極をワークの片面側に当接させて溶接を行う態様及び前記一方の溶接電極と前記他方の溶接電極との間に前記ワークを挟持して溶接を行う態様を可能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の溶接ガンでは、一方の溶接電極は、他方の溶接電極に対して同じ高さ位置から下方側まで移動することが可能となり、1つの溶接ガンにて、一対の溶接電極をワークの片面側に当接させて溶接を行う態様及び一対の溶接電極にてワークを挟持して溶接を行う態様を実現することができる。
【0023】
また、本発明の溶接ガンでは、一方の溶接電極は、スライド機構を介して簡易に他方の溶接電極よりも下方まで移動すると共に、一方の溶接電極のラジアル方向の外周面と他方の溶接電極のラジアル方向の外周面とが対向することができる。
【0024】
本発明の溶接ガンでは、一方の溶接電極のラジアル方向の外周面と他方の溶接電極のラジアル方向の外周面とが対向し、上記2つの外周面間にワークを挟持した溶接態様を実現することができる。
【0025】
また、本発明の溶接ガンでは、一方の溶接電極の第2の溶接円柱部は、ワークの狭い空間内にも挿入可能となる。そして、一方の溶接電極の第2の溶接円柱部のラジアル方向の外周面と他方の溶接電極の外周面との間にワークを挟持した溶接態様を実現することができる。
【0026】
本発明の溶接ガンでは、ワークの形状に応じて、一方の溶接電極または他方の溶接電極のどちらか一方を下方へとスライド移動することで、1つの溶接ガンにて、一対の溶接電極にてワークを挟持して溶接を行う態様を実現することができる。
【0027】
本発明の溶接ガンでは、他方の溶接電極は、スライド機構を介して簡易に一方の溶接電極よりも下方まで移動すると共に、他方の溶接電極のラジアル方向の外周面と一方の溶接電極のラジアル方向の外周面とが対向することができる。
【0028】
また、本発明の溶接ガンでは、一方の溶接電極と他方の溶接電極とは同じ高さ位置にて、それぞれの対向する側面にてワークを挟持し、溶接を行うことができる。
【0029】
本発明の溶接方法では、一方の溶接電極及び他方の溶接電極をワークの片面側に当接させて溶接を行う態様及び一方の溶接電極と他方の溶接電極との間にワークを挟持して溶接を行う態様を1つの溶接ガンにて容易に実現することができる。
【0030】
また、本発明の溶接方法では、一対の溶接電極を移動させながら連続して電流を流すことでシーム溶接を実現すると共に、パルス通電を行うことで、各溶接打点毎に加圧状態を開放することなく、連続スポット溶接を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態である溶接ガンを説明する側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態である溶接方法を説明する(A)側面図、(B)側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態である溶接ガンの溶接電極を説明する(A)斜視図、(B)側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態である溶接方法を説明する(A)側面図、(B)側面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態である溶接ガンを説明する側面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態である溶接方法を説明する(A)側面図、(B)側面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態である溶接方法を説明する(A)側面図、(B)側面図である。
【
図8】従来の抵抗溶接機を説明する(A)側面図、(B)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
最初に、本発明の一実施形態に係る溶接ガン10及び溶接方法について図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0033】
図1は、本実施形態の溶接ガン10を説明する側面図である。
図2(A)及び
図2(B)は、本実施形態の溶接ガン10を用いた溶接方法を説明する側面図である。
図3(A)は、本実施形態の溶接ガン10の溶接電極41を説明する斜視図である。
図3(B)は、本実施形態の溶接ガン10の溶接電極41を説明する側面図である。
図4(A)及び
図4(B)は、本実施形態の溶接ガン10を用いた溶接方法を説明する側面図である。
【0034】
図1に示す如く、溶接ガン10は、自動車の組み立てライン等において、溶接ロボット(図示せず)のアーム20の先端に配設されて使用される。そして、溶接ガン10は、主に、トランス11と、上下方向へと伸縮する一対の可動アーム12,13と、一対の可動アーム12,13の先端側に配設される一対の溶接電極14,15と、可動アーム13内に組み込まれるスライド機構16と、電流経路となる配線板17と、一対の可動アーム12,13の動きをサポートする一対のシャント18,19と、を有している。
【0035】
トランス11は、溶接ガン10の上端側に配設され、溶接時に溶接ロボットから供給される電流を増幅し、一対の溶接電極14,15へと供給する。トランス11は、溶接ガン10に搭載可能なサイズへと小型化されると共に、軽量化されている。そして、トランス11は、溶接の効率化や少電力化を実現している。
【0036】
可動アーム12は、溶接側アームである。そして、可動アーム12は、主に、溶接ガン10の上下方向に伸縮するエアシリンダ12Aと、エアシリンダ12Aの伸縮用のシャフトの先端側に配設される電極支持ブラケット12Bと、を有している。
【0037】
可動アーム13は、アース側アームである。そして、可動アーム13は、主に、溶接ガン10の上下方向に伸縮するエアシリンダ13Aと、エアシリンダ13Aの伸縮用のシャフトの先端側に配設される電極支持ブラケット13Bと、を有している。
【0038】
溶接電極14は、溶接側電極である。溶接電極14は、例えば、電気伝導率や熱伝導率に優れた銅合金材から形成され、ローラー形状である。詳細は後述するが、溶接電極14の回転軸14A(
図3(A)参照)は、可動アーム12の電極支持ブラケット12Bに対して軸受け(図示せず)を介して軸支されている。そして、溶接電極14は、ワーク31(
図2(A)参照)に接触した状態にて回転移動することができる。
【0039】
溶接電極15は、アース側電極である。溶接電極15は、例えば、電気伝導率や熱伝導率に優れた銅合金材から形成され、ローラー形状である。詳細は後述するが、溶接電極15の回転軸15A(
図3(A)参照)は、可動アーム13の電極支持ブラケット13Bに対して軸受け(図示せず)を介して軸支されている。そして、溶接電極15は、ワーク31に接触した状態にて回転移動することができる。
【0040】
スライド機構16は、主に、可動アーム13の電極支持ブラケット13Bを略上下方向へと可動自在に支持する一対のプレート部16Aと、可動アーム13のエアシリンダ13Aと電極支持ブラケット13Bとの間に配設されるリンク機構16Bと、を有している。
【0041】
一対のプレート部16Aは、例えば、鉄板等の鋼板から形成された略長方形の板状体であり、可動アーム12,13を固定するブラケット21に対して固定されている。プレート部16Aには、略くの字を逆にした形状のガイド溝22,23が、略平行に形成されている。そして、ガイド溝22,23に対しては、一対のプレート部16Aを架橋するように、両端にローラー24が配設された支持ピン(図示せず)が配設されている。図示したように、電極支持ブラケット13Bの後端側は、一対のプレート部16A間にて、上記2本の支持ピンに対して2箇所固定されている。
【0042】
リンク機構16Bは、主に、エアシリンダ13Aのシャフトの先端に固定される第1のアーム部25と、第1のアーム部25の下端側に回動自在に連結される第2のアーム部26と、を有している。そして、第2のアーム部26の下端側は、電極支持ブラケット13Bの前端側に固定されている。
【0043】
この構造により、エアシリンダ13Aのシャフトが伸びる動作に連動して、電極支持ブラケット13Bは、ガイド溝22,23の形状に沿って案内される。具体的には、電極支持ブラケット13Bは、エアシリンダ13Aの伸び始めは、上下溝22A,23Aに案内され、溶接電極14,15間の水平方向の離間幅R1を維持しながら下方へとスライド移動する。その後、エアシリンダ13Aの伸びに対応し、電極支持ブラケット13Bは、斜め溝22B,23Bに案内され、溶接電極15が、溶接電極14側へと近づく様に斜め下方側へとスライド移動する。
【0044】
配線板17は、電気伝導率や熱伝導率に優れた銅板から形成され、一対の可動アーム12,13の側面等に配設されている。配線板17の一端側はトランス11の電極と電気的に接続し、配線板17の他端側はシャント18,19と電気的に接続している。そして、配線板17は、板状体として形成されることで、溶接時の大電流を流すことができる。
【0045】
シャント18,19は、電気伝導率や熱伝導率に優れる銅板から形成されている。シャント18,19は、薄板の銅板が積層して形成されることで可撓性に優れ、可動アーム12,13の動きに追従して変形することができる。そして、シャント18,19の一端側は配線板17と電気的に接続し、シャント18,19の他端側は溶接電極14,15と電気的に接続している。シャント18,19は、溶接作業時に溶接電極14から溶接電極15へと大電流を流すことができる。
【0046】
図2(A)では、袋構造のワーク31の片面側に対して板状体のワーク32を溶接する態様、例えば、シリーズスポット溶接やインダイレクトスポット溶接による溶接態様を示している。そして、ワーク31の形状が袋構造の場合には、ワーク31,32の溶接箇所を溶接電極14,15にて挟持することが出来ず、ワーク31の片面側に溶接電極14,15を並べて配設して溶接を行う。尚、以下の溶接方法の説明では、適宜、
図1を参照する。
【0047】
最初に、
図1に示すように、溶接ガン10では、可動アーム12,13のエアシリンダ12A,13Aは、それぞれ最も縮んだ状態であり、溶接電極14,15同士が、同じ高さ位置にて対向した状態である。
【0048】
次に、
図2(A)に示すように、ワーク32をワーク31上面に配設した後、溶接ロボット(図示せず)のアーム20(
図1参照)を移動させ、溶接電極14を所望の溶接箇所であるワーク32の上面に接触させる。そして、可動アーム12側では、所望の加圧状態となるまでエアシリンダ12Aを伸ばし、溶接電極14の下面側のラジアル方向の外周面にて、ワーク32の上面を加圧する。
【0049】
一方、可動アーム13側でも、可動アーム12側の溶接電極14とワーク32とが接触した状態にて、同時にエアシリンダ13Aを伸ばし、溶接電極15の下面側のラジアル方向の外周面にて、ワーク31の上面を加圧する。そして、ワーク31の片面側に対して溶接電極14,15を並べて配設すると共に、溶接電極14,15にてワーク31,32を加圧した状態を整える。尚、矢印35にて示すように、可動アーム13は、水平方向の離間幅R1(
図1参照)を維持した状態にて、上下溝22A,23Aに案内され、上下方向へとスライド移動する。
【0050】
次に、溶接ロボット内の制御装置(図示せず)では、溶接電極14,15による加圧力の測定値が設定条件値に達した時点にて、溶接条件に基づき所望の時間電流を流す。点線の矢印33にて示すように、溶接側の溶接電極14からアース側の溶接電極15へと大電流を流すことで、溶接電極14の直下のワーク31,32の境界面を中心にナゲット34が形成される。
【0051】
図2(B)では、袋構造のワーク31の端部の重畳領域を溶接する態様、例えば、ダイレクトスポット溶接による溶接態様を示している。そして、ワーク31の端部の重畳領域では、その上下方向へと溶接電極14,15を配設するスペースを有し、ワーク31の溶接箇所を溶接電極14,15にて挟持することが出来る。尚、以下の溶接方法の説明では、適宜、
図1を参照する。
【0052】
最初に、
図1に示すように、溶接ガン10では、可動アーム12,13のエアシリンダ12A,13Aは、それぞれ最も縮んだ状態であり、溶接電極14,15同士が、同じ高さ位置にて対向した状態である。
【0053】
次に、
図2(B)に示すように、可動アーム13側では、エアシリンダ13Aを最も伸した状態とすることで、電極支持ブラケット13Bは、ガイド溝22,23の形状に沿って案内され、溶接電極15が、溶接電極14よりも下方側まで移動すると共に、溶接電極14の下面側のラジアル方向の外周面と溶接電極15の上面側のラジアル方向の外周面とが対向した状態とする。尚、矢印36にて示すように、可動アーム13は、それぞれ上下溝22A,23A及び斜め溝22B,23Bに案内され、上下方向へとスライド移動した後、斜め下方向へとスライド移動する。
【0054】
次に、溶接ロボット(図示せず)のアーム20(
図1参照)を移動させ、溶接電極15の上面側のラジアル方向の外周面を、所望の溶接箇所であるワーク31の重畳領域の下面に接触させる。そして、可動アーム12側では、エアシリンダ12Aを伸ばすことで、溶接電極14の下面側のラジアル方向の外周面が、ワーク31の所望の溶接箇所の上面と接触すると共に、ワーク31の上面を加圧する。この作業により、ワーク31の溶接箇所は、溶接電極14,15にて挟持された状態となる。
【0055】
次に、溶接ロボット内の制御装置(図示せず)では、溶接電極14,15による加圧力の測定値が設定条件値に達した時点にて、溶接条件に基づき所望の時間電流を流す。点線の矢印37にて示すように、溶接側の溶接電極14からアース側の溶接電極15へと大電流を流すことで、溶接電極14の直下のワーク31の重畳領域の境界面を中心にナゲット38が形成される。
【0056】
ここで、
図2(A)では、溶接電極14,15は、それぞれ下面側のラジアル方向の外周面にてワーク31,32の上面を加圧した状態にて、紙面の手前側から奥側あるいは紙面の奥側から手前側へ向けて、回転移動することができる。そして、溶接電極14,15が、ワーク31,32の上面を加圧しながら回転移動する際に、溶接ロボット側では、連続して大電流を流すことで、ワーク31,32に対してシーム溶接を行うことができる。
【0057】
一方、溶接電極14,15が、ワーク31,32の上面を加圧しながら回転移動する際に、溶接ロボット側では、パルス通電を行うことで、各溶接打点毎に上記加圧状態を開放することなく、連続スポット溶接を行うことができる。
【0058】
尚、
図2(B)においても、同様に、ワーク31の重畳領域を挟持する溶接電極14,15を紙面の手前側から奥側あるいは紙面の奥側から手前側へ向けて、回転移動することで、上記シーム溶接や連続スポット溶接を行うことができる。
【0059】
次に、
図3(A)及び
図3(B)を用いて、溶接ガン10に装着する溶接電極41について説明する。尚、溶接電極41は、
図1に示す溶接電極14,15の変形例であり、少なくとも溶接側電極またはアース側電極のどちらか一方に採用することができる。
【0060】
図3(A)に示す如く、溶接電極41は、例えば、電気伝導率や熱伝導率に優れた銅合金材から形成され、ローラー形状である。そして、溶接電極41は、主に、電極支持ブラケット12B,13B(
図3(B)参照)に回転自在に支持される回転軸41Aと、ワーク51(
図4(A)参照)に当接する第1の溶接円柱部41B及び第2の溶接円柱部41Cと、を有している。
【0061】
一方、溶接電極14,15は、主に、それぞれ電極支持ブラケット12B,13B(
図1参照)に回転自在に支持される回転軸14A,15Aと、ワーク31,32(
図2(A)参照)に当接する溶接円柱部14B,15Bと、を有している。
【0062】
図示したように、溶接電極41では、第1の溶接円柱部41Bのスラスト方向の先端側に第2の溶接円柱部41Cが連続して形成されている。そして、一点鎖線42にて示すように、回転軸41A、第1の溶接円柱部41B及び第2の溶接円柱部41Cは、同一軸心上に配列されている。
【0063】
図3(B)に示す如く、第2の溶接円柱部41Cのラジアル方向の径L2は、第1の溶接円柱部41Bのラジアル方向の径L1よりも小さくなる。そして、第2の溶接円柱部41Cのスラスト方向の幅W2は、第1の溶接円柱部41Bのスラスト方向の幅W1よりも広くなる。
【0064】
図4(A)に示す如く、溶接電極14は、可動アーム12の電極支持ブラケット12Bに軸支され、溶接側電極として用いられる。一方、溶接電極41は、可動アーム13の電極支持ブラケット13Bに軸支され、アース側電極として用いられる。そして、
図2(A)を用いて上述したように、ワーク51,52の片面側に溶接電極14,41を並べて配設して溶接を行う場合には、溶接電極41では、第1の溶接円柱部41Bの下面側のラジアル方向の外周面が、所望の溶接箇所のワーク52の上面と接触して配置される。
【0065】
図4(B)に示す如く、溶接電極41を用いた場合でも、溶接電極14,41間にワーク54,55を挟持して溶接を行うことができる。そして、
図2(B)を用いて上述したように、所望の溶接箇所において、溶接側の溶接電極14では、その下面側のラジアル方向の外周面が、ワーク54の上面と接触して配置され、アース側の溶接電極41では、その上面側のラジアル方向の外周面が、ワーク55の下面と接触して配置される。
【0066】
このとき、溶接時の電流経路は、溶接電極14,41の対向領域となるが、第2の溶接円柱部41Cの幅W2(
図3(B)参照)は、第1の溶接円柱部41Bの幅W1(
図3(B)参照)より広くなると共に、第2の溶接円柱部41Cの径L2(
図3(B)参照)は、第1の溶接円柱部41Bの径L1(
図3(B)参照)よりも小さくなることで、様々なワーク55の形状に対しても溶接を行うことができる。
【0067】
具体的には、ワーク55の形状が、
図4(B)に示すように、断面略コの字形状の場合には、
図2(A)や
図2(B)を用いて上述した溶接態様が難しいが、溶接電極41を用いることで、ワーク54,55の溶接が可能となる。
【0068】
即ち、図示したように、ワーク55の中空部55A内には、その径L1の大きさから第1の溶接円柱部41Bを挿入することは出来ないが、第2の溶接円柱部41Cを挿入することはできる。
図2(B)を用いて上述したように、溶接電極14と溶接電極41の第2の溶接円柱部41Cとの間にワーク54,55の所望の溶接箇所を挟持することで、ナゲット56を形成することができる。
【0069】
尚、溶接電極14,41が、ワーク54,55に対して紙面の手前側から奥側あるいは紙面の奥側から手前側へ向けて、スライド移動することで、上記シーム溶接や連続スポット溶接を行うことができる。
【0070】
次に、本発明の他の実施形態に係る溶接ガン60及び溶接方法について図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。また、溶接ガン60は、主に、
図1に示す溶接ガン10とは、その可動アーム61,62の構造が異なるため、その他の構造に関しては、同一の符番を用いて上記説明を参照し、繰り返しの説明は省略する。
【0071】
図5は、本実施形態の溶接ガン60を説明する側面図である。
図6(A)及び
図6(B)は、本実施形態の溶接ガン60を用いた溶接方法を説明する側面図である。
図7(A)及び
図7(B)は、本実施形態の溶接ガン60を用いた溶接方法を説明する側面図である。
【0072】
図5に示す如く、溶接ガン60は、自動車の組み立てライン等において、溶接ロボット(図示せず)のアーム20(
図1参照)の先端に配設されて使用される。そして、溶接ガン60は、主に、トランス11と、上下方向へと伸縮する一対の可動アーム61,62と、一対の可動アーム61,62の先端側に配設される一対の溶接電極14,15と、可動アーム61,62内に組み込まれるスライド機構63,64と、電流経路となる配線板17と、一対の可動アーム61,62の動きをサポートする一対のシャント18,19と、を有している。
【0073】
可動アーム61は、溶接側アームである。そして、可動アーム61は、主に、溶接ガン60の上下方向に伸縮するエアシリンダ61Aと、エアシリンダ61Aの伸縮用のシャフトの先端側に配設される電極支持ブラケット61Bと、を有している。
【0074】
可動アーム62は、アース側アームである。そして、可動アーム62は、主に、溶接ガン60の上下方向に伸縮するエアシリンダ62Aと、エアシリンダ62Aの伸縮用のシャフトの先端側に配設される電極支持ブラケット62Bと、を有している。
【0075】
スライド機構63は、主に、可動アーム61の電極支持ブラケット61Bを略上下方向へと可動自在に支持する一対のプレート部63Aと、可動アーム61のエアシリンダ61Aと電極支持ブラケット61Bとの間に配設されるリンク機構63Bと、を有している。
【0076】
スライド機構64は、主に、可動アーム62の電極支持ブラケット62Bを略上下方向へと可動自在に支持する一対のプレート部64Aと、可動アーム62のエアシリンダ62Aと電極支持ブラケット62Bとの間に配設されるリンク機構64Bと、を有している。
【0077】
尚、一対のプレート部63A,64Aの構造は、一対のプレート部16Aの構造と実質同一であり、リンク機構63B,64Bの構造は、リンク機構16Bの構造と実質同一である。図示したように、一対のプレート部63A,64Aは、それぞれガイド溝22,23が形成され、ガイド溝22,23には、両端にローラー24が配設された支持ピン(図示せず)が配設されている。そして、電極支持ブラケット61B,62Bの後端側は、それぞれ一対のプレート部63A,64A間にて、上記2本の支持ピンに対して2箇所固定されている。
【0078】
また、リンク機構63B,64Bは、それぞれ第1のアーム部25と、第1のアーム部25の下端側に回動自在に連結される第2のアーム部26と、を有し、第2のアーム部26の下端側は、それぞれ電極支持ブラケット61B,62Bの前端側に固定されている。
【0079】
図6(A)では、ワーク71の端部の重畳領域を溶接する態様、例えば、ダイレクトスポット溶接による溶接態様を示している。そして、ワーク71の端部の重畳領域では、溶接ガン60の前後方向にて、所望の溶接箇所を溶接電極14,15にて挟持して溶接を行う。尚、以下の溶接方法の説明では、適宜、
図1を参照する。
【0080】
最初に、
図5に示すように、溶接ガン60では、可動アーム61,62のエアシリンダ61A,62Aは、それぞれ最も縮んだ状態から同じストローク量だけ伸ばした状態とし、溶接電極14,15のスラスト方向の側面14C,15C同士が、同じ高さ位置にて対向した状態である。
【0081】
具体的には、
図6(A)に示すように、可動アーム61,62では、エアシリンダ61A,62Aを一定量伸ばすことで、電極支持ブラケット61B,62Bは、ガイド溝22,23の形状に沿って下方へと案内される。
【0082】
本実施形態では、支持ピン(図示せず)両端のローラー24が、上下溝22A,23Aを通過し、斜め溝22B,23Bまで到達することで、溶接電極14,15が、それぞれ溶接ガン60の中央側へとスライド移動する。そして、溶接電極14,15の側面14C,15Cが対向した状態を維持しながら、側面14C,15Cの下端側にて、ワーク71の所望の溶接箇所を挟持する。尚、矢印72,73にて示すように、可動アーム61,62は、それぞれ上下溝22A,23A及び斜め溝22B,23Bに案内され、上下方向へとスライド移動した後、斜め下方方向へとスライド移動する。
【0083】
次に、
図6(B)に示すように、可動アーム61,62(
図6(A)参照)では、エアシリンダ61A,62A(
図6(A)参照)を伸ばし、ワーク71の所望の溶接箇所を加圧し、溶接ロボット内の制御装置(図示せず)では、溶接電極14,15による加圧力の測定値が設定条件値に達した時点にて、溶接条件に基づき所望の時間電流を流す。点線の矢印74にて示すように、溶接側の溶接電極14からアース側の溶接電極15へと大電流を流すことで、溶接電極14,15のワーク71の重畳領域の境界面を中心にナゲット75が形成される。
【0084】
ここで、
図6(A)に示すように、プレート部63A,64Aのガイド溝22,23において、上下溝22Aと斜め溝22Bとの成す角度θ1は、上下溝23Aと斜め溝23Bとの成す角度θ2よりも大きくなる。例えば、角度θ1は46度であり、角度θ2は45度である。尚、角度θ1,θ2の大きさは、角度θ1>角度θ2を満たすと共に、ワーク71の挟持し易さや加圧条件等を考慮して、任意の設計変更が可能である。
【0085】
この構造により、溶接電極14,15の側面14C,15Cの離間距離は、上端側から下端側に向けて狭くなるため、ワーク71は、溶接電極14,15の側面14C,15Cの下端側にてしっかりと挟持されると共に、加圧される。
【0086】
その結果、溶接電極14,15の側面14C,15Cとワーク71との接触面積も狭くなり、加圧力が分散し難くなり、所望の加圧力が得られ易くなる。
【0087】
また、溶接ガン60においても、溶接電極14,15が、ワーク71に対して紙面の手前側から奥側あるいは紙面の奥側から手前側へ向けて、回転移動することで、上記シーム溶接や連続スポット溶接を行うことができる。そして、溶接電極14,15の側面14C,15Cとワーク71との接触面積も狭くなることで、接触抵抗が小さくなり、溶接電極14,15も回転し易くなる。
【0088】
図7(A)では、
図2(A)を用いて上述したように、袋構造のワーク81の片面に対して板状体のワーク82を溶接する態様を示している。そして、ワーク81の片面側に溶接電極14,15を並べて配設して溶接を行う。尚、以下の溶接方法の説明では、適宜、
図5を参照する。
【0089】
図7(A)に示すように、ワーク82をワーク81上面に配設した後、溶接ロボット(図示せず)のアーム20(
図1参照)を移動させ、溶接電極14を所望の溶接箇所であるワーク82の上面に接触させる。そして、可動アーム61,62では、エアシリンダ61A,62Aを伸ばし、ワーク81の片面側に対して溶接電極14,15を並べて配設すると共に、溶接電極14,15にてワーク81,82を加圧した状態を整える。
【0090】
次に、溶接ロボット内の制御装置(図示せず)では、溶接電極14,15による加圧力の測定値が設定条件値に達した時点にて、溶接条件に基づき所望の時間電流を流す。点線の矢印83にて示すように、溶接側の溶接電極14からアース側の溶接電極15へと大電流を流すことで、溶接電極14の直下のワーク81,82の境界面を中心にナゲット84が形成される。
【0091】
図7(B)では、
図2(B)を用いて上述したように、袋構造のワーク81の端部の重畳領域を溶接する態様を示している。そして、ワーク81の端部の重畳領域では、所望の溶接箇所を溶接電極14,15にて挟持している。尚、以下の溶接方法の説明では、適宜、
図5を参照する。
【0092】
図7(B)に示すように、可動アーム側62では、エアシリンダ62Aを最も伸びた状態とすることで、溶接電極15が、溶接電極14よりも下方側まで移動すると共に、溶接電極14の下面側のラジアル方向の外周面と溶接電極15の上面側のラジアル方向の外周面とが対向した状態となる。
【0093】
次に、溶接ロボット(図示せず)のアーム20(
図1参照)を移動させ、溶接電極15の上面側のラジアル方向の外周面を、所望の溶接箇所であるワーク81の重畳領域の下面に接触させる。そして、可動アーム61側では、エアシリンダ61Aを伸ばすことで、溶接電極14の下面側のラジアル方向の外周面が、ワーク81の所望の溶接箇所の上面と接触すると共に、ワーク81の上面を加圧する。この作業により、ワーク81の溶接箇所は、溶接電極14,15にて挟持された状態となる。
【0094】
次に、溶接ロボット内の制御装置(図示せず)では、溶接電極14,15による加圧力の測定値が設定条件値に達した時点にて、溶接条件に基づき所望の時間電流を流す。点線の矢印85にて示すように、溶接側の溶接電極14からアース側の溶接電極15へと大電流を流すことで、溶接電極14の直下のワーク81の重畳領域の境界面を中心にナゲット86が形成される。
【0095】
上述したように、
図7(A)及び
図7(B)に示す溶接態様においても、溶接ガン60では、溶接電極14,15を紙面の手前側から奥側あるいは紙面の奥側から手前側へ向けて、回転移動することで、上記シーム溶接や連続スポット溶接を行うことができる。また、
図3及び
図4を用いて上述したように、溶接電極41を少なくとも溶接側電極またはアース側電極のどちらか一方に採用することで、上述した効果と同様な効果を得ることができる。
【0096】
尚、本実施形態では、溶接ガン10,60が、自動車の組み立てライン等において、溶接ロボット(図示せず)のアーム20(
図1参照)の先端に配設されて使用される場合について説明したが、この場合に限定されるものではない。例えば、溶接ガン10,60が、溶接装置自体に組み込まれた状態にて使用される場合でも良い。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
10,60 溶接ガン
11 トランス
12,13,61,62 可動アーム
12A,13A,61A,62A エアシリンダ
12B,13B,61B,62B 電極支持ブラケット
14,15,41 溶接電極
14A,15A,41A 回転軸
14B,15B 溶接円柱部
14C,15C 側面
16,63,64 スライド機構
16A,63A,64A プレート部
16B,63B,64B リンク機構
22,23 ガイド溝
22A,23A 上下溝
22B,23B 斜め溝
31,32,51,52,54,55,71,81,82 ワーク
34,38,53,56,75,84,86 ナゲット
41B 第1の溶接円柱部
41C 第2の溶接円柱部