(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】火力調節装置
(51)【国際特許分類】
F23K 5/00 20060101AFI20230704BHJP
F23N 1/00 20060101ALI20230704BHJP
F23N 5/26 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
F23K5/00 301C
F23N1/00 102A
F23N5/26 U
F23N5/26 V
F23N5/26 W
(21)【出願番号】P 2020015985
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】柘植 真吾
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-206524(JP,A)
【文献】特開平05-306815(JP,A)
【文献】実開昭61-172272(JP,U)
【文献】特開2014-173749(JP,A)
【文献】特開2017-009242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/00 - 5/22
F23N 1/00 - 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナへの供給ガス量を可変する、弁筐内に進退自在に設けられたニードル弁と、操作レバーの揺動に連動して回転する、弁筐の外側に設けられたカム板と、ニードル弁に固定され、カム板に形成されたカム孔に係合するピンとを備え、カム板の回転でカム孔とピンとを介してニードル弁が進退し、バーナへの供給ガス量が調節されるようにした火力調節装置であって、カム板が所定の回転範囲に回転されたときにクリック感を与えるクリック機構を備えるものにおいて、
カム板の弁筐側を向く面を裏面、この面と反対側の面を表面、カム板の裏面に対向する弁筐又は弁筐に対し固定の部材をカム板対向部材として、クリック機構は、カム板対向部材に設けられた、カム板側に突出する突起と、カム板の表面側に配置された、カム板と一緒に回転する板バネとで構成され、板バネの一部に、カム板側に突出する凸部が設けられ、突起又は凸部がカム板に形成した透孔を通して板バネ又はカム板対向部材に常時圧接し、カム板が前記所定の回転範囲に回転されたときに、凸部が突起に当接して乗り上げることでクリック感が与えられるようにしたことを特徴とする火力調節装置。
【請求項2】
請求項1記載の火力調節装置であって、前記弁筐の外面に、前記ピンが挿通される、前記ニードル弁の進退方向に長手のガイド孔が形成されたガイド板が固定されるものにおいて、ガイド板で前記カム板対向部材が構成されることを特徴とする火力調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナへの供給ガス量を可変する、弁筐内に進退自在に設けられたニードル弁と、操作レバーの揺動に連動して回転する、弁筐の外側に設けられたカム板と、ニードル弁に固定され、カム板に形成されたカム孔に係合するピンとを備え、カム板の回転でカム孔とピンとを介してニードル弁が進退し、バーナへの供給ガス量が調節されるようにした火力調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の火力調節装置として、特許文献1により、カム板が所定の回転範囲に回転されたときにクリック感を与えるクリック機構を備えるものが知られている。このもので、クリック機構は、弁筐に対し回り止めした状態でカム板の表面に対向配置され、カム板側に突出する凸部が一部に設けられた板バネと、凸部を受け入れるようにカム板に形成した円弧状の長孔の中間部に切残した当片部とで構成され、カム板が所定の回転範囲に回転されたときに凸部が当片部に当接して乗り上げることでクリック感が与えられるようにしている。また、従来、カム板の押えネジの頭部とカム板との間に皿バネを介設し、この皿バネを軽く圧縮することで、カム板に適度な回転負荷を与えるようにしている。
【0003】
上記従来例のものでは、カム板をクリック感が与えられる所定の回転範囲を超えて回転させる際、凸部が当片部を乗り越えて、凸部による当片部の押圧が急に解除され、当片部に振動を生ずる。そして、この振動がカム板に伝わることで、カム孔とピンとを介してニードル弁も振動し、ガス量のバラツキを生ずることがある。また、カム板に回転負荷を与えるための皿バネを設ける場合には、部品点数が増す不具合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、カム板をクリック感が与えられる所定の回転範囲を超えて回転させる際のカム板の振動を防止でき、且つ、部品点数を削減してコストダウンも図ることができるようにした火力調節装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、バーナへの供給ガス量を可変する、弁筐内に進退自在に設けられたニードル弁と、操作レバーの揺動に連動して回転する、弁筐の外側に設けられたカム板と、ニードル弁に固定され、カム板に形成されたカム孔に係合するピンとを備え、カム板の回転でカム孔とピンとを介してニードル弁が進退し、バーナへの供給ガス量が調節されるようにした火力調節装置であって、カム板が所定の回転範囲に回転されたときにクリック感を与えるクリック機構を備えるものにおいて、カム板の弁筐側を向く面を裏面、この面と反対側の面を表面、カム板の裏面に対向する弁筐又は弁筐に対し固定の部材をカム板対向部材として、クリック機構は、カム板対向部材に設けられた、カム板側に突出する突起と、カム板の表面側に配置された、カム板と一緒に回転する板バネとで構成され、板バネの一部に、カム板側に突出する凸部が設けられ、突起又は凸部がカム板に形成した透孔を通して板バネ又はカム板対向部材に常時圧接し、カム板が前記所定の回転範囲に回転されたときに、凸部が突起に当接して乗り上げることでクリック感が与えられるようにしたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、カム板をクリック感が与えられる所定の回転範囲を超えて回転させる際、凸部が突起を乗り越えて、凸部による突起の押圧が急に解除され、突起の振動を生じても、突起はカム板から分離独立しているため、突起の振動がカム板に伝わることはない。従って、カム板を所定の回転範囲を超えて回転させる際のカム板の振動を防止して、この振動に起因するガス量のバラツキを防止できる。更に、板バネとカム板対向部材とが突起又は凸部を介して常時圧接するため、カム板対向部材に対する板バネの摩擦力でカム板に回転負荷を付与できる。そのため、回転負荷を付与する上記従来例の皿バネを省略でき、部品点数を削減してコストダウンも図ることができる。
【0008】
ところで、火力調節装置では、一般的に、弁筐の外面に、上記ピンが挿通される、ニードル弁の進退方向に長手のガイド孔が形成されたガイド板が固定される。この場合、ガイド板でカム板対向部材を構成して、部品共用化を図ることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態の火力調節装置を具備するバルブユニットの斜視図。
【
図3】
図1のバルブユニットのニードル弁を配置した部分の側面図。
【
図5】
図1のバルブユニットの一部を分解した状態の斜視図。
【
図7】カム板の回転位置と供給ガス量及びカム板の回転負荷との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1、
図2に示す本発明の実施形態の火力調節装置Aは、大容量の主バーナBaと小容量の副バーナBbとを有するコンロバーナBへの供給ガス量を可変するものである。この火力調節装置Aは、下部前端に、図示省略したコンロ本体の前面の点消火釦に押されて動く操作部材11が組付けられたバルブユニット1の上部に設けられている。バルブユニット1の下部には、図示しないが、電磁安全弁とその下流側の開閉弁とが組み込まれており、操作部材11を後方に押し操作したときに電磁安全弁が強制開弁されると共に開閉弁が開弁されて、コンロバーナBにガスが供給される。
【0011】
火力調節装置Aは、バルブユニット1の上部の弁筐2内に、
図4に示す如く、前後方向に進退自在に設けられた主バーナBa用の第1ニードル弁3
1と副バーナBb用の第2ニードル弁3
2とを備えている。弁筐2には、主バーナBaに連なる第1ガス出口21
1と、副バーナBbに連なる第2ガス出口21
2と、第1ガス出口21
1に第1弁孔22
1を介して連通する、前後方向に長手で弁筐2の前方(
図4で右方)に開口する第1弁室23
1と、第2ガス出口21
2に第2弁孔22
2を介して連通する、前後方向に長手で弁筐2の前方に開口する第2弁室23
2と、開閉弁を通過したガスを第1弁室23
1に流入させる第1ガス入口24
1と、開閉弁を通過したガスを第2弁室23
2に流入させる第2ガス入口24
2とが形成されている。そして、第1と第2の各弁室23
1,23
2に、第1と第2の各ニードル弁3
1,3
2が前方から摺動自在に挿入されている。
【0012】
第1と第2の各ニードル弁31,32は、後端部に、第1と第2の各弁孔221,222に嵌合可能なニードル部31a,32aと、各ニードル部31a,32aが各弁孔221,222に嵌合した状態でもガスを流すバイパス孔31b,32bとを有している。また、第1弁室231は、後部を小径とした段付き形状に形成されており、第1弁室231の大径部分231aに第1ガス入口241が設けられている。第1ニードル弁31のニードル部31aから若干前方に離れた部分には、第1弁室231の後部の小径部分231bに嵌合可能なOリング31cが装着されている。そして、Oリング31cが第1弁室231の小径部分231bに嵌合している状態では、主バーナBaにガスが供給されず、第1ニードル弁31の前方への移動で、Oリング31cが第1弁室231の小径部分231bから大径部分231aに変位したときに、主バーナBaへのガス供給が開始されるようにしている。
【0013】
図1乃至
図5を参照して、火力調節装置Aは、更に、図示省略したコンロ本体の前面前方に突出する操作レバー4の揺動に連動して回転する、弁筐2の外側に設けられたカム板5と、第1と第2の各ニードル弁3
1,3
2に固定され、カム板5に形成された第1と第2の各カム孔51
1,51
2に係合する第1と第2の各ピン6
1,6
2とを備えている。カム板5には、弁筐2の上面に突設したボス部25に外嵌する軸支孔52が形成されており、ボス部25を支点にしてカム板5が回転する。また、弁筐2の外面、即ち、上面には、カム板5の下に位置するガイド板7が固定されている。ガイド板7には、第1と第2の各ピン6
1,6
2が挿通される、第1と第2の各ニードル弁3
1,3
2の進退方向たる前後方向に長手の第1と第2の各ガイド孔71
1,71
2が形成されている。尚、各ガイド孔71
1,71
2は、各ニードル弁3
1,3
2が若干回転しながら前後方向に移動するように、前後方向に対し若干横方向に傾いている。また、操作レバー4は、カム板5に一体に設けられている。
【0014】
カム板5を
図1、
図2に示す最小火力位置から同図で反時計回り方向に回転させると、第1カム孔51
1と第1ピン6
1とを介して第1ニードル弁3
1が
図4に示す位置から前方に移動して、主バーナBaへの供給ガス量が
図7のa線で示す如く変化すると共に、第2カム孔51
2と第2ピン6
2とを介して第2ニードル弁3
2が
図4に示す位置から前方に移動して、副バーナBbへの供給ガス量が
図7のb線で示す如く変化する。
【0015】
ここで、カム板5が主バーナBaへのガス供給が開始される回転位置を含む所定の回転範囲θaでゆっくりと回転されると、主バーナBaでの逆火を生ずる恐れがある。そのため、カム板5がこの回転範囲θaに回転されたときにクリック感を与えて、この回転範囲θaでカム板5が勢いよく回転されるようにすることが望まれる。
【0016】
そこで、本実施形態では、カム板5が上記回転範囲θaに回転されたときにクリック感を与えるクリック機構8を設けている。以下、カム板5の弁筐2側を向く面(下面)を裏面、この面と反対側の面(上面)を表面、カム板5の裏面に対向する弁筐2又は弁筐2に対し固定の部材をカム板対向部材として、クリック機構8について詳述する。クリック機構8は、カム板対向部材に設けられた、カム板5側、即ち、上側に突出する突起81と、カム板5の表面側に配置された板バネ82とで構成されている。尚、本実施形態では、ガイド板7でカム板対向部材が構成され、突起81はガイド板7に形成されている。板バネ82には、弁筐2の上面の上記ボス部25にカム板5の軸支孔52と共に外嵌する軸支孔821が形成されている。そして、ボス部25に螺着する押えネジ83で板バネ82を上方から押えている。突起81は、
図6に示す如く、カム板5に形成した透孔53を通して板バネ82の先端部822に下方から常時圧接している。更に、板バネ82には、カム板5に形成した係止孔54と切欠き55に係合する爪部823,824が設けられており、板バネ82がカム板5と一緒に回転する。
【0017】
また、板バネ82の一部、即ち、先端部822の周方向中央部には、カム板5側、即ち、下側に突出する凸部825が設けられている。そして、カム板5が上記回転範囲θaに回転されたときに、凸部825が突起81に当接して乗り上げることで、カム板5の回転負荷が
図7のc線で示すように増加してクリック感が与えられるようにしている。そのため、カム板5の上記回転範囲θaでは、増加した回転負荷に抗するように操作レバー4に加える力を強くすることになり、カム板5が勢いよく回転されて、主バーナBaでの逆火を防止することができる。
【0018】
ここで、カム板5をクリック感が与えられる上記回転範囲θaを超えて回転させる際、凸部825が突起81を乗り越えて、凸部825による突起81の押圧が急に解除され、突起81の振動を生じ勝ちである。然し、突起81の振動を生じても、突起81はカム板5から分離独立しているため、突起81の振動がカム板5に伝わることはない。従って、カム板5を上記回転範囲θaを超えて回転させる際のカム板5の振動を防止して、この振動に起因するガス量のバラツキを防止できる。
【0019】
更に、カム板5と一緒に回転する板バネ82とカム板対向部材であるガイド板7に設けた突起81とが常時圧接するため、突起81に対する板バネ82の摩擦力でカム板5に回転負荷を付与できる。また、本実施形態では、板バネ82の先端部822の突起81による押し上げに伴い板バネ82の軸支孔821の周辺部分に押えネジ83を支点にして作用する下方への押圧力でカム板5の軸支孔52の周辺部分がボス部25の周囲の弁筐部分に押し付けられるため、弁筐2に対するカム板5の摩擦力によってもカム板5に回転負荷が付与される。従って、回転負荷を付与する上記従来例の皿バネを省略でき、部品点数を削減してコストダウンを図ることができる。また、突起81をガイド板7に形成することで、部品を共用化でき、一層のコストダウンを図ることができる。
【0020】
ところで、弁筐2に、上記第1と第2の各ガイド孔711,712に相当するガイド孔を形成して、ガイド板7を省略し、弁筐2自体でカム板対向部材を構成して、弁筐2に一体に突起81を形成することも可能である。然し、弁筐2は、一般的に、アルミダイキャスト製とするため、これにガイド孔や突起81を形成したのでは、耐久性を確保することが困難になる。従って、上記実施形態の如くガイド板7を設けて、ガイド板7でカム板対向部材を構成し、ガイド板7に突起81を形成することが望ましい。
【0021】
また、上記実施形態では、
図3に示す如く、ガイド板7が、弁筐2の第1と第2の各弁室23
1,23
2を形成した前部の上面から浮いており、また、カム板5もガイド板7の上面から浮いている。そこで、弁筐2の前端上面に、ガイド板7の下面に当接する突起部26を突設し、板バネ82から突起81に作用する下方への押圧力でガイド板7が下方に撓むことを防止できるようにし、更に、ガイド板7の前端にカム板5の前端部下面に当接する突起部72を設けて、操作レバー4を操作する際に、操作レバー4が下方に傾くことを防止できるようにしている。
【0022】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、カム板対向部材(ガイド板7)に設けた突起81がカム板5に形成した透孔53を通して板バネ82に常時圧接しているが、突起81をカム板5の表面に達しないように形成し、板バネ82に設ける凸部825を大きくして、凸部825がカム板5に形成した透孔53を通してカム板対向部材に常時圧接するようにしてもよい。この場合も、カム板5が所定の回転範囲θaに回転されたときに、凸部825が突起81に当接して乗り上げることでクリック感が与えられるようにする。
【0023】
また、上記実施形態の火力調節装置Aは、第1と第2の一対のニードル弁31,32を備えているが、単一のニードル弁を備える火力調節装置にも同様に本発明を適用できる。更に、上記実施形態では、カム板5に操作レバー4が一体に形成されているが、カム板5を操作レバー4と別体とし、操作レバー4の揺動で適宜の連動機構を介してカム板5が回転するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
A…火力調節装置、B…コンロバーナ(バーナ)、2…弁筐、31,32…ニードル弁、4…操作レバー、5…カム板、511,512…カム孔、53…透孔、61,62…ピン、7…ガイド板、711,712…ガイド孔、8…クリック機構、81…突起、82…板バネ、825…凸部。