(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】車体
(51)【国際特許分類】
B62D 25/04 20060101AFI20230704BHJP
B62D 25/02 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
B62D25/04 D
B62D25/02 A
(21)【出願番号】P 2020204132
(22)【出願日】2020-12-09
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祥子
(72)【発明者】
【氏名】小金丸 裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 唯史
(72)【発明者】
【氏名】神村 信哉
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-207288(JP,A)
【文献】特開2008-018735(JP,A)
【文献】特開2018-039473(JP,A)
【文献】特開2008-284936(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106494513(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0108790(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010055444(DE,A1)
【文献】特開2002-037196(JP,A)
【文献】特開2005-104193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/04
B62D 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックドアの側方に配置されており、上下方向に延びている後部ピラーと、
屋根の側方にて車体前後方向に延びており、後端が前記後部ピラーに連結されているルーフサイドレールと、
前記後部ピラーと前記ルーフサイドレールに連結されているサイドインナパネルと、
を備えており、
前記ルーフサイドレールは筒状であり、前記サイドインナパネルの上端よりも車室内に張り出して
おり、
前記ルーフサイドレールの後端の左右両側から延長部が延びており、2個の前記延長部が前記後部ピラーを挟んでいる、車体。
【請求項2】
前記サイドインナパネルはクォーターガラスが取り付けられる窓孔を備えている、請求項
1に記載の車体。
【請求項3】
前記ルーフサイドレールの車室側の後部と前記サイドインナパネルが一枚の金属板で作られている、請求項1
または2に記載の車体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、自動車の車体に関する。特に、車体の後部の強度を高める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1と特許文献2に、バックドアと、バックドアの側方に配置されている後部ピラーと、屋根の側方にて車体前後方向に延びているルーフサイドレールを備えている車体が開示されている。ルーフサイドレールの後端は後部ピラーに連結されている。後部ピラーはDピラーと呼ばれることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-207288号公報
【文献】特開2008-284936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ルーフサイドレールの後端と後部ピラーの連結部分の周辺の構造は、車体の後部の強度に影響を与える。本明細書は、車体の後部の強度を高める技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する車体は、後部ピラーと、ルーフサイドレールと、サイドインナパネルを備える。後部ピラーは、バックドアの側方に配置されており、上下方向に延びている。ルーフサイドレールは、屋根の側方にて車体前後方向に延びており、後端が後部ピラーに連結されている。サイドインナパネルは、後部ピラーとルーフサイドレールに連結されている。ルーフサイドレールは筒状であり、サイドインナパネルの上端よりも車室内に張り出している。ルーフサイドレールがサイドインナパネルの上端よりも車室内に張り出していることによって、ルーフサイドレールが走行中の後部ピラーの振動(後部ピラーの上部の車幅方向の振動)を抑える効果が増す。別言すれば、上記の構造によって、車体のロール軸回りのねじれ振動モードに対する車体後部の剛性が高くなる。すなわち、車体の後部の強度が向上する。なお、ここで、「車体中心」とは、車幅方向における車体の中心を意味する。
【0006】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】後部ピラーとその周辺を車室側から見た図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して実施例の車体10を説明する。
図1は、車体10の後部の斜視図である。なお、車体10に不図示のエンジンなどを加えた自動車全体を自動車2と称する。
図1を含む各図において、矢印UPは車体上方向を示し、矢印FRは車体前方向を示し、矢印RHは車体右方向を示す。車体10は、ルーフパネル14、ルーフクロスメンバ15、バックドア12、ルーフサイドレール30、後部ピラー20、サイドアウタパネル50、及び、リアドア18を有している。ルーフクロスメンバ15はルーフパネル14に隠れているため、破線で描いてある。右側のルーフサイドレール30と後部ピラー20はサイドアウタパネル50に隠れているため、破線で描いてある。左側のルーフサイドレールと後部ピラーは図示を省略した。ルーフクロスメンバ15、ルーフサイドレール30、後部ピラー20は、車体10の強度を確保するための骨格である。
【0009】
バックドア12は、ルーフパネル14の後端の下部に配置されている。バックドア12は、車体後端の開口を開閉する。ルーフクロスメンバ15は、バックドア12の上方に配置されており、車幅方向に延びている。後部ピラー20は、バックドア12の側方に配置されており、車体の上下方向に延びている。後部ピラー20は、車体10の後部開口の側縁に沿って延びている。後部ピラー20の上端はルーフクロスメンバ15に連結されている。図示は省略しているが、後部ピラー20の下端は、車体の下部を構成する骨格(例えばリアサイドメンバ)に連結されている。
【0010】
ルーフサイドレール30は、ルーフパネル14の側方にて、車体10の前後方向に延びている。
【0011】
図示は省略しているが、左側の後部ピラーの上端もルーフクロスメンバ15に連結されている。すなわち、ルーフクロスメンバ15は、一対の後部ピラーの上端を連結する。車体10は左右一対の後部ピラーと、左右一対のルーフサイドレールを有しているが、左右の後部ピラー(および左右のルーフサイドレール)の構造は等しいので、以下では、右側の後部ピラー20と右側のルーフサイドレール30について説明する。
【0012】
後部ピラー20は、バックドア12とリアドア18の間に配置されている。後部ピラー20は、クォーターガラス51の後方に位置する。なお、「クォーターガラス」は、リアドア18の後方で車体10(サイドアウタパネル50と後述するサイドインナパネル40)に嵌め殺しになっている窓ガラスである。
【0013】
図2は、後部ピラー20を車室内から見た図を示している。なお、バックドア12の図示は省略した。ルーフサイドレール30の後端が後部ピラー20に連結している。ルーフサイドレール30と後部ピラー20にサイドインナパネル40が連結している。サイドインナパネル40は、車室空間の後部側面を構成する。サイドインナパネル40にはクォーターガラス51が嵌められる窓孔40aが設けられている。サイドインナパネルの下側にはリアホイールハウスパネル53が備えられている。
【0014】
図3に、
図2のIII-III線に沿った断面を示す。ルーフサイドレール30は、サイドレールアウタパネル30aとサイドレールインナパネル30bで構成されている。サイドレールアウタパネル30aとサイドレールインナパネル30bは、それらの上部と下部が張り合わされている。ルーフサイドレール30は筒状をなしている。別言すれば、ルーフサイドレール30は中空の梁である。ルーフサイドレール30の上端には、サイドアウタパネル50とルーフパネル14が連結されている。ルーフサイドレール30の下端はサイドインナパネル40の上端40bに連結されている。なお、
図2のルーフサイドレール30の後部(ルーフサイドレール後部30c)では、サイドレールインナパネル30bは、サイドインナパネル40とつながっている。別言すれば、ルーフサイドレール後部30cでは、サイドレールインナパネル30bとサイドインナパネル40は、一枚の金属板で作られている。サイドレールインナパネル30bは、ルーフサイドレール後部30cと、ルーフサイドレール後部30cよりも前方の部位に分かれているが、両者は接合されており、構造上、サイドレールインナパネル30bは、フロントピラー(Aピラー)から後部ピラー20までつながっている。
図2に示されているように、ルーフサイドレール後部30cよりも前の部位では、ルーフサイドレール30の下端は、後部ドア用の車体開口の縁に相当する。
【0015】
車体10の外側側面は、サイドアウタパネル50で覆われている(
図1参照)。サイドアウタパネル50により、自動車2の外からは、ルーフサイドレール30とサイドインナパネル40が見えないようになっている。
【0016】
ルーフサイドレール30は筒状であり、サイドインナパネル40の上端40bよりも車室内に張り出している。
図3にて示す幅Wdが、ルーフサイドレール30が上端40bから張り出している範囲に相当する。
【0017】
ルーフサイドレール30がサイドインナパネル40の上端よりも車室側に張り出している構造の利点を説明する。この構造によって、ルーフサイドレール30の後端がわずかに車体10の中心(車幅方向の中心)の側にずれる。この構造により、走行中、ルーフサイドレール30が後部ピラー20の振動(後部ピラー20の上部の車幅方向の振動)を抑える効果が増す。別言すれば、上記の構造により、車体のロール軸回りのねじれ振動モードに対する車体後部の剛性が高くなる。すなわち、車体10の後部の強度が向上する。走行中の後部ピラー20の振動が抑えられることで、サイドインナパネル40の振動も抑えられ、走行中の車内の静粛性が向上する。
【0018】
また、上記の構造により、微小ラップ衝突のときにルーフサイドレール30の後端が車体10の中心の方向へ倒れ込むことが抑えられる。その結果、衝突の際に車室後部の変形(車体10の後部の変形)が抑えられる。
【0019】
図4に、
図2のIV-IV線に沿った断面を示す。
図4は、ルーフサイドレール30と後部ピラー20の連結部におけるルーフサイドレール30と後部ピラー20の断面を示している。後部ピラー20も筒状である、別言すれば、後部ピラー20は中空の梁である。
図4では後部ピラー20の断面形状を簡略化して描いてある。
【0020】
図5にルーフサイドレール30の後部の斜視図を示す。ルーフサイドレール30の後端の左右両側から後方へ向けて延長部31a、31bが延びている。延長部31aはサイドレールアウタパネル30aの後端から後方へ延びており、延長部31bはサイドレールインナパネル30bの後端から後方へ延びている。2個の延長部31a、31bが後部ピラー20を挟んでいる。延長部31a、31bは、それぞれ、スポット溶接32で後部ピラー20に接合されている。この構造によりルーフサイドレール30と後部ピラー20の連結箇所の強度が増す。延長部31a、31bのそれぞれと後部ピラー20は、複数のスポット溶接で接合されていてもよい。
【0021】
これまでに説明した技術に関する留意点を述べる。実施例の自動車2は、ハッチバックタイプであり、Aピラー(フロントピラー)、Bピラー(センターピラー)、Cピラーのほかに、後部ピラー20(Dピラー)を備えており、後部ピラー20は、バックドア12の側方に位置している。本明細書が開示する技術は、セダンタイプの自動車に適用することもできる。その場合、Cピラーが実施例の自動車2の後部ピラー20に相当する。すなわち、セダンタイプの自動車に本明細書が開示する技術を適用した場合、ルーフサイドレールの後端がCピラーに連結しているとともに、ルーフサイドレールがサイドインナパネルの上端よりも車室内に張り出している構造が得られる。
【0022】
図1~
図5では、ルーフサイドレール30や後部ピラー20を簡略化して描いてある。特に、
図4では、後部ピラー20を単純な矩形筒型に描いてある。
図5では、ルーフサイドレール30を単純な矩形筒型に描いてある。ルーフサイドレール30や後部ピラー20は、多角形の筒型であってよい。ルーフサイドレール30や後部ピラー20は、断面が多角形の中空の梁である。
【0023】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0024】
2 :自動車
10 :車体
12 :バックドア
14 :ルーフパネル
15 :ルーフクロスメンバ
18 :リアドア
20 :後部ピラー
30 :ルーフサイドレール
30a :サイドレールアウタパネル
30b :サイドレールインナパネル
30c :ルーフサイドレール後部
31a、31b :延長部
32 :スポット溶接
40 :サイドインナパネル
40a :窓孔
40b :上端
50 :サイドアウタパネル
51 :クォーターガラス
52 :縦メンバ
53 :リアホイールハウスパネル